ゲスト
(ka0000)
【MV】アイドルとチョコレート
マスター:cr

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/20 22:00
- 完成日
- 2015/02/28 17:46
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●マイ・ファニー・バレンタイン
ある日のハンターオフィス。受付嬢達はテキパキと書類をまとめ、整理するといったいわゆるデスクワークをこなしている。
「~♪」
そんな中受付嬢の一人、ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)は鼻歌を歌っていた。表情は緩みっぱなし。あきらかにご機嫌だ。
それもそのはず、中々手に入りにくい高級チョコレートを手に入れたのだ。早速一つ口に入れると甘く香り豊かな風味が広がる。
表情はこの世の幸せを全て手に入れたような満面の笑みに変わっている。そんな時であった。
「ご機嫌ですね。ルミさん」
受付嬢の先輩であるモア・プリマクラッセ(kz0066)に突然声をかけられ、驚いた拍子にチョコが気管に入ってしまい盛大にむせるルミであった。
●キスとバレンタイン
「美味しいチョコレートを手に入れたのですか」
「ええ! 中々手に入らないそうですよー。やっぱりそういう時期だからですかね」
「ああ、そうですね。もうすぐバレンタインデーですものね」
ここ、クリムゾンウェストにもバレンタインデーは伝わっている。ルミにとっては美味しいチョコレートを手に入れられる時期であり、恋する乙女にとっては気になる相手に告白をするきっかけになる時期であり、そして商人であるモアにとっては
「今年も沢山売らなければいけませんね」
「ああ、そうですよね……」
商売の時期であった。
●ディスコとチョコレート
「ところでルミさん、リアルブルーではバレンタインデーはどういったことが行われていたのですか?」
「そうですね……といっても、大して変わったことは無いですよ。お店でチョコレートが沢山売られるようになって、街ではバレンタインデーにちなんだ曲が流れるぐらいですか」
「曲、ですか?」
「ええ! さっき鼻歌で歌っていたのがそうですよ」
ルミが歌っていたのはリアルブルーで人気だったアイドルが歌うバレンタインデーソング。その事を聞いて、モアはすぐに今年の売り方を思いついたようだ。
「歌はいいですね。バレンタインデーならではの歌を作って、アイドル……ですか、それに歌ってもらいましょう」
「アイドルなんているのですか?」
帝国には居るという話を聞いたが、同盟では聞いたことが無い。ルミはどうするんだろうと思い、そして何やら嫌な予感が走った。
「ハンターの皆さんにやってもらいましょう」
というわけでチョコレート販売アイドルが急遽結成されることになったのである。
ある日のハンターオフィス。受付嬢達はテキパキと書類をまとめ、整理するといったいわゆるデスクワークをこなしている。
「~♪」
そんな中受付嬢の一人、ルミ・ヘヴンズドア(kz0060)は鼻歌を歌っていた。表情は緩みっぱなし。あきらかにご機嫌だ。
それもそのはず、中々手に入りにくい高級チョコレートを手に入れたのだ。早速一つ口に入れると甘く香り豊かな風味が広がる。
表情はこの世の幸せを全て手に入れたような満面の笑みに変わっている。そんな時であった。
「ご機嫌ですね。ルミさん」
受付嬢の先輩であるモア・プリマクラッセ(kz0066)に突然声をかけられ、驚いた拍子にチョコが気管に入ってしまい盛大にむせるルミであった。
●キスとバレンタイン
「美味しいチョコレートを手に入れたのですか」
「ええ! 中々手に入らないそうですよー。やっぱりそういう時期だからですかね」
「ああ、そうですね。もうすぐバレンタインデーですものね」
ここ、クリムゾンウェストにもバレンタインデーは伝わっている。ルミにとっては美味しいチョコレートを手に入れられる時期であり、恋する乙女にとっては気になる相手に告白をするきっかけになる時期であり、そして商人であるモアにとっては
「今年も沢山売らなければいけませんね」
「ああ、そうですよね……」
商売の時期であった。
●ディスコとチョコレート
「ところでルミさん、リアルブルーではバレンタインデーはどういったことが行われていたのですか?」
「そうですね……といっても、大して変わったことは無いですよ。お店でチョコレートが沢山売られるようになって、街ではバレンタインデーにちなんだ曲が流れるぐらいですか」
「曲、ですか?」
「ええ! さっき鼻歌で歌っていたのがそうですよ」
ルミが歌っていたのはリアルブルーで人気だったアイドルが歌うバレンタインデーソング。その事を聞いて、モアはすぐに今年の売り方を思いついたようだ。
「歌はいいですね。バレンタインデーならではの歌を作って、アイドル……ですか、それに歌ってもらいましょう」
「アイドルなんているのですか?」
帝国には居るという話を聞いたが、同盟では聞いたことが無い。ルミはどうするんだろうと思い、そして何やら嫌な予感が走った。
「ハンターの皆さんにやってもらいましょう」
というわけでチョコレート販売アイドルが急遽結成されることになったのである。
リプレイ本文
●
「ハンター系アイドルといえばエルちゃん! んふふー、とうとうエルちゃんもデビューライブできるんだねー」
依頼に参加し、ライブに向けて準備をするために集まったハンター達を前に、エリス・ブーリャ(ka3419)はそう堂々と宣言した。長いようで短い期間に素早く準備するため、エルの仕切りで幾つかの組に別れ、曲作り、歌詞作りに取り掛かる。
が、そこにエヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が一枚のスケッチブックを差し出した。
『とかく急いで作らないと。こういう広報系は前々から貼っとかないと効果ないわよ』
そしてエヴァは机の上に一枚の紙を置く。歌は歌えなくても、彼女には代わりに歌ってくれるものがある。かばんから取り出したのは一本の絵筆。絵の具をつけ、早速紙に向かい素早く筆を動かしていく。するとみるみるうちに絵が完成した。そこに描かれるのは歌い踊る、ハンター達、アイドル達の姿。今にも動き出しそうな華やかな絵柄は、たとえ絵と分かっても、見る人の心をぐっと引き寄せる。見守るハンター達が思わず会話するのも忘れてしまった中、ひと通りメインの絵を描き終えたエヴァは下に場所や日時の情報を記していき、そしてここで筆が止まった。
『ところでグループ名はどうなるの?』
「それじゃあ……CHOKOLって名前はどうでしょう」
一瞬の間の後、Uisca Amhran(ka0754)が上げたのは、彼女がかつて耳にしたリアルブルーのマヤ語の「熱い」という意味の言葉。さらにこれはチョコレートの語源とも言われている。その言葉を聞いて、ハンター達の心に熱いものが燃え上がった。
「かわぅいー女の子たちのバレンタイン特別ステージとかもーサイコーだよね! モアPさんわかってるぅー♪」
エヴァが描き終えた紙をある場所に運び、モアと共に待っているのはダガーフォール(ka4044)だ。
「そのPさんというのは何なのでしょう」
というモアのツッコミは「まあまあいいから~」と流す。
そんなこんなをしているうちに係員に呼び出される二人。そこには大量に印刷されたエヴァの絵があった。
二人が居たのは、ヴァリオス魔術学院。学校内にある魔術を利用した複写システムを使い、ポスターとチラシを印刷した。
「キラッキラで楽しいステージになるように、お兄やんも頑張って手伝っちゃうぞ☆」
出来上がったポスターやチラシを担ぎ上げ、早速配るために繁華街に出るダガーであった。
●
二人がステージを盛り上げるため動いている頃、残りのハンターもアイドルになる準備を始めた。
歌詞はできたがそれ以外何も準備出来ていない。まずはアイドルらしいダンスから。
「ナナちゃんに負けないあいどるさんになります」
と、アイドルが何たるかをやや間違った方向で姉に教えてられたイスカを除けば、実に心もとない。というわけでレッスン開始だ。コーチ役はもう一人、ダンスの素養があるエルだ。
「こんな感じアルか?」
お手本役のエルの振り付けを真似ているのは、李 香月(ka3948)。幼い頃から武術の訓練を受けてきた彼女にとってこの程度は朝飯前。高い身体能力を活かして空を飛ぶように舞い踊る。
「アイドル、かぁ……歌って踊って、沢山の人を楽しませればいいんだよね!」
そんな二人による高度なダンスに合わせるのは、ミルティア・ミルティエラ(ka0155)。キレよく踊る香月とは対照的に、柔らかく可愛らしく踊る。そうやってレッスンを受けつつも、
「あ、でもチョコの販促も忘れないようにしないと、一応そっちがメインだしね!」
と、元々の目的を忘れないミルティア。一方、天王寺茜(ka4080)は、
「異世界でキャンペーンガールのバイトをするなんて夢にも思わないよねえ」
と、しみじみと自分の置かれていた状況を噛み締めた。
その頃、もう一人ダンスの素養が有る静架(ka0387)はと言うと、各人が考えた歌詞に曲を付けていた。手にはリュート、本人曰く嗜み程度だそうだが、それを爪弾くと楽しげな音が流れ、メンバーが考えた歌に曲が付いていく。
「静架さん、こういったことが得意なんですね」
感情を表に出すことが苦手で表情が変わらない静架の、彼女にとっては意外な特技に驚くモア。まあそういう本人も人のことが言えないぐらい表情が変わらないのだが。
「戦場ですと娯楽が少ないので……詩歌音曲の類いが、出来れば情報収集や潜入でも重宝しますよ?」
そんなモアの驚きには、そうやって務めて冷静に返し、静架は再び曲を付ける作業に戻った。
●
本番まであと2日、アイドル達の踊りが随分と上達した頃、モアが衣装合わせのためにやって来た。
モアの用意した衣装を見て、彼女たちの表情がぱぁっ、と明るくなる。これらの衣装もアイドル達のリクエストに沿った形で用意されたものだ。
「うわあ……こんな衣装テレビでしか見たことないかも」
特に茜の喜び様は凄い。
「歌やダンスの上手いハンターさんも居ますけど、やっぱりパッと見の印象が派手だったり、可愛い方がお客さんが足を止めてくれると思うんです」
なんてモアに提案していたぐらいだ。実は茜はアイドルっぽい衣装を着れる事を楽しみに依頼へ参加したのだ。実際に現物を目の前にすると、冷静では居られない。
いや、静架だけは自分の衣装を見つつ、あくまで表情は変えずに喜んでいた。
「肉体労働なら任せろー」
その頃、ダガーは本番に向けてステージ設営に励んでいた。大量にあったチラシも配り終え、もうこのステージのことはそこら中で話題になっている。そんな中、トンテンカンテンとステージにモニュメントを作る。これは香月がアイデアを出し、エヴァがデザインを作ったものだ。みんなの努力の結晶たるステージセットを組み立て終えると、素早く布をかける。何が見られるか、それは本番までのお楽しみだ。
●
そしてあっという間に本番当日がやってきた。
「チョコルの特別ステージとなっておりまーす! 本日限りのスペシャルイベントお見逃しなく!」
と、客席側ではダガーが最後の呼び込みを行っていた頃、舞台裏ではアイドル達が集まった。一曲目のイントロが流れ始める。客席からは歓声が上がったその時、エルが手を差し出した。仲間達が手を重ね合わせ、そしてエルが声を出す。
「チョコルー、ファイトー!」
その声と共にメンバーたちはステージに飛び出した。
●
一曲目はリアルブルーでも人気だったポップス。軽快な音にここにいる皆の心が踊る。
舞台上の彼女達の身を包むフリフリのドレス。これは茜がリクエストしたものだ。こんな風に衣装を着て皆の前に立つと、まるで本物のアイドルになった気分。ハンターになった当初は敵と戦うなんてと思っていた茜だが、こんな体験ができるなら悪くない。
くるりと全員で一回転するとふわりとスカートが広がり、まるでステージ上に花が咲いたよう。
やがて曲が終わり皆で決めポーズ。そして全員で声を合わせる。
「「こんにちはー! チョコルでーす!」」
まずはご挨拶。
「わふー! 皆忙しい中来てくれてありがとうー! ボク達もいっぱい頑張って、楽しいライブにするからねー!」
と、元気一杯なのはミルティア。
「今日は一日よろしくお願いしまーす!」
と、ニッコリ笑顔で愛嬌を振りまくのは茜。しかしこれでよかったのか心配で、思わずイスカに小声で聞いてしまう。
「こ、こんなので良かったのかな? お客さん怒ったりしてない?」
「大丈夫ですよ。ほら」
二人の目に写ったのは楽しそうな観客の姿。特に最前列の子供達は大はしゃぎ。これはエヴァが背の低い子供達にもライブを楽しめるよう配慮した結果だ。
そして最後にMC役のイスカがそんな観客たちに声をかける。
「みんな、楽しんでいってね♪」
とびきりのスマイルを見せた後、彼女たちは一度ステージ裏に引っ込んでしまった。
●
ステージ上に一人残ったのは静架。レースで飾られた黒いスーツを身にまとった彼が舞台中央に進み出て、静かにリュートを爪弾き始めた。流れる落ち着いた音に乗せて、彼の歌声が広がっていく。
夕暮れ迫る街角で 二人片寄せあい
キミの手にしたショコラを 分け合い
温もりを分け与う 冬の夕暮れ
ほろ苦い 甘さに瞳細め
銀の王冠を模したアクセサリーを身につけた静架の姿に、客席の女性は王子様でも見るようなうっとりとした目で見つめている。心なしか頬も赤く染まっているようだ。
そんな彼女たちに、静架は静かに語りかける。
「誰かに普段言えないありがとうの気持ちを伝えるのも、素敵だと思います。知り合いには、何時までも若々しく元気でいてほしいからと、毎年お爺様に贈っている方も居ますし。カカオは美容も良いので、お友達同士で贈り合うのも良いのではないでしょうか?」
この言葉はこの後のチョコレート販売のための宣伝文句でも有るのだが、同時に女性陣のハートを射抜くには充分だったようだ。
●
静架が演奏を終え、後ろに下がると入れ替わるようにイスカと茜が飛び出してきた。いつの間にか最初の白いドレスではなく、二人揃いのチョコレート色のワンピースに白いオーバーニー。可愛らしいアイドルから元気を届けるアイドルに大変身。
そして笑顔を客席に振りまきながら、イスカが一体に響く大声を出した。
「それでは私達の曲、『チョコとLove☆ちゅんちゅん』聞いてください!」
その言葉と同時に舞台中央でポーズを取る二人、そして二人の歌声とともにダンスが始まる。
私のハートと同じ 沸騰直前の生クリーム
刻んだチョコをボウルに 一気にまぜまぜ
自分は歌とダンスが得意ではないから、と一歩下がる茜。しかし、イスカは歌い踊りながら茜も前に出るように巧みにコントロール。円を描き舞う二人の姿は、かき混ぜられるチョコレートクリームのよう。
生チョコとLoveだよ ちゅんちゅん☆
生チョコと完成 ちゅんちゅん☆
私の気持ち 貴方へ届け
Sparrows are twittering the love
二人が布を一枚取り去る。そこにはボウルや泡立て器を模したオブジェが置かれていた。
●
二人が下がった後、入れ替わりに舞台に出てきたのはミルティアだ。黒いセクシーな衣装に、ギターを引っさげている。そのミスマッチさが不思議な魅力を醸し出していた。
そして彼女はギターを鳴らし始め、同時に静架もリュートを弾く。2つの弦が奏でるミステリアスな音色に乗せて、ミルティアの歌声が流れ始めた。
ボクがキミを好きになって もうどれ位だろう
キミがボクを好きになるまで あとどれ位だろう
少し切なさを感じさせる詩が広がっていく。その歌声が、観客の胸を締め付け、感情を高ぶらせる。目元に少し光るものが見える者も居た。
焦がれすぎて焦げ付きそうで
ボクの心今でも迷ってる
ミルティアが最後まで歌いきり舞台上の布を取る。すると、それまであったオブジェは型に入れたチョコレートのオブジェに変わっていた。
●
ミルティアが舞台袖に下がると、エルと香月の二人がはじき出されるように元気よく飛び出してきた。リズミカルでアップテンポな曲に合わせて飛び跳ねるように踊りながら、歌声を響かせ始める。
街ゆく人に声かけて 愛想とチョコを配っちゃう
香月の得意とする武術を生かして踊る二人。激しくアクロバットな振り付けは会場の熱気を一気に盛り上げていく。
ラブリーチャーミーんふふふー その名はエルちゃん
「何でアルかー!」
と、香月が綺麗なキックを繰り出した所でフィニッシュ。客席も大盛り上がりだ。
「みんなー! エルちゃんの歌を聞いてくれてありがとー!」
そんなエルのコールと共に再び軽快な音が流れ始めた。
●
「それじゃ最後の曲、行くよー!」
全員が舞台に戻ってくる。イスカの掛け声と共に流れるその曲は、恋人のためチョコを作る女の子の気持ちを歌ったナンバー。チョコをボウルに入れたり、それをかき混ぜたり。歌詞の内容に合わせた振り付けが繰り広げられる。
「チョコレートを手作りしているような振り付けとか入れられません?」
ちょっとコミカルで、楽しい振り付けは茜のアイデア。その振り付けは受け入れられたようで、客席の子どもたちは早速真似を始めている。
流れる汗も、キラキラと輝いて今はアイドルたちを引き立てる。二曲連続ノンストップで激しいダンスを繰り広げるエルと香月だが、全く衰えない。
そして曲はサビにかかる。ステージに一列に並んだメンバーが順番に回ると手にはチョコレートが持たれている。最後に全員でモニュメントの布を取ると、そこにはチョコレートが積み上げられていた。
●
ライブが大盛況のまま終わる中、ダガーは一人広場を抜け出し、大通りの方に向かっていた。片手には看板、逆の手にはチラシ、そして肩からはギターを掛けている。
「この切ない想い今こそ伝える時甘くとろけるチョコラーテが勇気をくれる~♪」
チラシを巻きながら弾き語り、今広場で行われていることを街の人々にアピールしていくダガー。その声に、一人、二人と広場へ向かう人達の姿。
その背中を見ながら、
「バロテッリ商会プレゼンツ特別イベントにて、恋愛成就チョコレート好評発売中!」
と、もうひと押しするダガーであった。
その頃、広場では大行列が出来ていた。列の先ではアイドルたちが一列に並びステージ上のチョコを売っている。そんな列を一人エヴァが整理していた。
香月はチョコレートを渡すと手をぎゅっと握り、そのままにっこり微笑む。そんなことをしながら、
(プライドでチョコ売れるなら、プライドなんか捨てるわ!)
なんて思っていた。
一方イスカは同じように握手をしながら、
「あと5個買ってくれたらサインも付けますよ」
なんて言っていた。彼女の姉が『こうすればたくさん売れるじゃろう』なんて言っていたらしい。果たしてその通り、彼女の後ろに置かれたチョコレートの包みはみるみるうちに減っていく。
だが何よりファンのハートを掴んでいたのはエル。自分のもとに買いに来てくれた相手に、サイン入りチョコを渡しその手を握った上で、
「ねぇねぇ、そのチョコ誰のために買ったの? エルちゃんのためだよね?」
と言いつつ上目遣い。その姿にハートを持っていかれる人間が続出したようだ。
結果、チョコレートはあっという間に完売。客もいなくなり、ハンター達は誰もいなくなった広場に集まる。
そこにモアが報酬を用意してやってくる。
「本日はお疲れ様でした」
モアはねぎらいの言葉とともに、エルに話しかける。
「ところでエルさん、今日来てくれたお客さんがエルさんのことを釣り師って呼んでますよ」
それはファンのハートを一本釣りして持っていったエルに対する最大限の敬称であった。
「ハンター系アイドルといえばエルちゃん! んふふー、とうとうエルちゃんもデビューライブできるんだねー」
依頼に参加し、ライブに向けて準備をするために集まったハンター達を前に、エリス・ブーリャ(ka3419)はそう堂々と宣言した。長いようで短い期間に素早く準備するため、エルの仕切りで幾つかの組に別れ、曲作り、歌詞作りに取り掛かる。
が、そこにエヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)が一枚のスケッチブックを差し出した。
『とかく急いで作らないと。こういう広報系は前々から貼っとかないと効果ないわよ』
そしてエヴァは机の上に一枚の紙を置く。歌は歌えなくても、彼女には代わりに歌ってくれるものがある。かばんから取り出したのは一本の絵筆。絵の具をつけ、早速紙に向かい素早く筆を動かしていく。するとみるみるうちに絵が完成した。そこに描かれるのは歌い踊る、ハンター達、アイドル達の姿。今にも動き出しそうな華やかな絵柄は、たとえ絵と分かっても、見る人の心をぐっと引き寄せる。見守るハンター達が思わず会話するのも忘れてしまった中、ひと通りメインの絵を描き終えたエヴァは下に場所や日時の情報を記していき、そしてここで筆が止まった。
『ところでグループ名はどうなるの?』
「それじゃあ……CHOKOLって名前はどうでしょう」
一瞬の間の後、Uisca Amhran(ka0754)が上げたのは、彼女がかつて耳にしたリアルブルーのマヤ語の「熱い」という意味の言葉。さらにこれはチョコレートの語源とも言われている。その言葉を聞いて、ハンター達の心に熱いものが燃え上がった。
「かわぅいー女の子たちのバレンタイン特別ステージとかもーサイコーだよね! モアPさんわかってるぅー♪」
エヴァが描き終えた紙をある場所に運び、モアと共に待っているのはダガーフォール(ka4044)だ。
「そのPさんというのは何なのでしょう」
というモアのツッコミは「まあまあいいから~」と流す。
そんなこんなをしているうちに係員に呼び出される二人。そこには大量に印刷されたエヴァの絵があった。
二人が居たのは、ヴァリオス魔術学院。学校内にある魔術を利用した複写システムを使い、ポスターとチラシを印刷した。
「キラッキラで楽しいステージになるように、お兄やんも頑張って手伝っちゃうぞ☆」
出来上がったポスターやチラシを担ぎ上げ、早速配るために繁華街に出るダガーであった。
●
二人がステージを盛り上げるため動いている頃、残りのハンターもアイドルになる準備を始めた。
歌詞はできたがそれ以外何も準備出来ていない。まずはアイドルらしいダンスから。
「ナナちゃんに負けないあいどるさんになります」
と、アイドルが何たるかをやや間違った方向で姉に教えてられたイスカを除けば、実に心もとない。というわけでレッスン開始だ。コーチ役はもう一人、ダンスの素養があるエルだ。
「こんな感じアルか?」
お手本役のエルの振り付けを真似ているのは、李 香月(ka3948)。幼い頃から武術の訓練を受けてきた彼女にとってこの程度は朝飯前。高い身体能力を活かして空を飛ぶように舞い踊る。
「アイドル、かぁ……歌って踊って、沢山の人を楽しませればいいんだよね!」
そんな二人による高度なダンスに合わせるのは、ミルティア・ミルティエラ(ka0155)。キレよく踊る香月とは対照的に、柔らかく可愛らしく踊る。そうやってレッスンを受けつつも、
「あ、でもチョコの販促も忘れないようにしないと、一応そっちがメインだしね!」
と、元々の目的を忘れないミルティア。一方、天王寺茜(ka4080)は、
「異世界でキャンペーンガールのバイトをするなんて夢にも思わないよねえ」
と、しみじみと自分の置かれていた状況を噛み締めた。
その頃、もう一人ダンスの素養が有る静架(ka0387)はと言うと、各人が考えた歌詞に曲を付けていた。手にはリュート、本人曰く嗜み程度だそうだが、それを爪弾くと楽しげな音が流れ、メンバーが考えた歌に曲が付いていく。
「静架さん、こういったことが得意なんですね」
感情を表に出すことが苦手で表情が変わらない静架の、彼女にとっては意外な特技に驚くモア。まあそういう本人も人のことが言えないぐらい表情が変わらないのだが。
「戦場ですと娯楽が少ないので……詩歌音曲の類いが、出来れば情報収集や潜入でも重宝しますよ?」
そんなモアの驚きには、そうやって務めて冷静に返し、静架は再び曲を付ける作業に戻った。
●
本番まであと2日、アイドル達の踊りが随分と上達した頃、モアが衣装合わせのためにやって来た。
モアの用意した衣装を見て、彼女たちの表情がぱぁっ、と明るくなる。これらの衣装もアイドル達のリクエストに沿った形で用意されたものだ。
「うわあ……こんな衣装テレビでしか見たことないかも」
特に茜の喜び様は凄い。
「歌やダンスの上手いハンターさんも居ますけど、やっぱりパッと見の印象が派手だったり、可愛い方がお客さんが足を止めてくれると思うんです」
なんてモアに提案していたぐらいだ。実は茜はアイドルっぽい衣装を着れる事を楽しみに依頼へ参加したのだ。実際に現物を目の前にすると、冷静では居られない。
いや、静架だけは自分の衣装を見つつ、あくまで表情は変えずに喜んでいた。
「肉体労働なら任せろー」
その頃、ダガーは本番に向けてステージ設営に励んでいた。大量にあったチラシも配り終え、もうこのステージのことはそこら中で話題になっている。そんな中、トンテンカンテンとステージにモニュメントを作る。これは香月がアイデアを出し、エヴァがデザインを作ったものだ。みんなの努力の結晶たるステージセットを組み立て終えると、素早く布をかける。何が見られるか、それは本番までのお楽しみだ。
●
そしてあっという間に本番当日がやってきた。
「チョコルの特別ステージとなっておりまーす! 本日限りのスペシャルイベントお見逃しなく!」
と、客席側ではダガーが最後の呼び込みを行っていた頃、舞台裏ではアイドル達が集まった。一曲目のイントロが流れ始める。客席からは歓声が上がったその時、エルが手を差し出した。仲間達が手を重ね合わせ、そしてエルが声を出す。
「チョコルー、ファイトー!」
その声と共にメンバーたちはステージに飛び出した。
●
一曲目はリアルブルーでも人気だったポップス。軽快な音にここにいる皆の心が踊る。
舞台上の彼女達の身を包むフリフリのドレス。これは茜がリクエストしたものだ。こんな風に衣装を着て皆の前に立つと、まるで本物のアイドルになった気分。ハンターになった当初は敵と戦うなんてと思っていた茜だが、こんな体験ができるなら悪くない。
くるりと全員で一回転するとふわりとスカートが広がり、まるでステージ上に花が咲いたよう。
やがて曲が終わり皆で決めポーズ。そして全員で声を合わせる。
「「こんにちはー! チョコルでーす!」」
まずはご挨拶。
「わふー! 皆忙しい中来てくれてありがとうー! ボク達もいっぱい頑張って、楽しいライブにするからねー!」
と、元気一杯なのはミルティア。
「今日は一日よろしくお願いしまーす!」
と、ニッコリ笑顔で愛嬌を振りまくのは茜。しかしこれでよかったのか心配で、思わずイスカに小声で聞いてしまう。
「こ、こんなので良かったのかな? お客さん怒ったりしてない?」
「大丈夫ですよ。ほら」
二人の目に写ったのは楽しそうな観客の姿。特に最前列の子供達は大はしゃぎ。これはエヴァが背の低い子供達にもライブを楽しめるよう配慮した結果だ。
そして最後にMC役のイスカがそんな観客たちに声をかける。
「みんな、楽しんでいってね♪」
とびきりのスマイルを見せた後、彼女たちは一度ステージ裏に引っ込んでしまった。
●
ステージ上に一人残ったのは静架。レースで飾られた黒いスーツを身にまとった彼が舞台中央に進み出て、静かにリュートを爪弾き始めた。流れる落ち着いた音に乗せて、彼の歌声が広がっていく。
夕暮れ迫る街角で 二人片寄せあい
キミの手にしたショコラを 分け合い
温もりを分け与う 冬の夕暮れ
ほろ苦い 甘さに瞳細め
銀の王冠を模したアクセサリーを身につけた静架の姿に、客席の女性は王子様でも見るようなうっとりとした目で見つめている。心なしか頬も赤く染まっているようだ。
そんな彼女たちに、静架は静かに語りかける。
「誰かに普段言えないありがとうの気持ちを伝えるのも、素敵だと思います。知り合いには、何時までも若々しく元気でいてほしいからと、毎年お爺様に贈っている方も居ますし。カカオは美容も良いので、お友達同士で贈り合うのも良いのではないでしょうか?」
この言葉はこの後のチョコレート販売のための宣伝文句でも有るのだが、同時に女性陣のハートを射抜くには充分だったようだ。
●
静架が演奏を終え、後ろに下がると入れ替わるようにイスカと茜が飛び出してきた。いつの間にか最初の白いドレスではなく、二人揃いのチョコレート色のワンピースに白いオーバーニー。可愛らしいアイドルから元気を届けるアイドルに大変身。
そして笑顔を客席に振りまきながら、イスカが一体に響く大声を出した。
「それでは私達の曲、『チョコとLove☆ちゅんちゅん』聞いてください!」
その言葉と同時に舞台中央でポーズを取る二人、そして二人の歌声とともにダンスが始まる。
私のハートと同じ 沸騰直前の生クリーム
刻んだチョコをボウルに 一気にまぜまぜ
自分は歌とダンスが得意ではないから、と一歩下がる茜。しかし、イスカは歌い踊りながら茜も前に出るように巧みにコントロール。円を描き舞う二人の姿は、かき混ぜられるチョコレートクリームのよう。
生チョコとLoveだよ ちゅんちゅん☆
生チョコと完成 ちゅんちゅん☆
私の気持ち 貴方へ届け
Sparrows are twittering the love
二人が布を一枚取り去る。そこにはボウルや泡立て器を模したオブジェが置かれていた。
●
二人が下がった後、入れ替わりに舞台に出てきたのはミルティアだ。黒いセクシーな衣装に、ギターを引っさげている。そのミスマッチさが不思議な魅力を醸し出していた。
そして彼女はギターを鳴らし始め、同時に静架もリュートを弾く。2つの弦が奏でるミステリアスな音色に乗せて、ミルティアの歌声が流れ始めた。
ボクがキミを好きになって もうどれ位だろう
キミがボクを好きになるまで あとどれ位だろう
少し切なさを感じさせる詩が広がっていく。その歌声が、観客の胸を締め付け、感情を高ぶらせる。目元に少し光るものが見える者も居た。
焦がれすぎて焦げ付きそうで
ボクの心今でも迷ってる
ミルティアが最後まで歌いきり舞台上の布を取る。すると、それまであったオブジェは型に入れたチョコレートのオブジェに変わっていた。
●
ミルティアが舞台袖に下がると、エルと香月の二人がはじき出されるように元気よく飛び出してきた。リズミカルでアップテンポな曲に合わせて飛び跳ねるように踊りながら、歌声を響かせ始める。
街ゆく人に声かけて 愛想とチョコを配っちゃう
香月の得意とする武術を生かして踊る二人。激しくアクロバットな振り付けは会場の熱気を一気に盛り上げていく。
ラブリーチャーミーんふふふー その名はエルちゃん
「何でアルかー!」
と、香月が綺麗なキックを繰り出した所でフィニッシュ。客席も大盛り上がりだ。
「みんなー! エルちゃんの歌を聞いてくれてありがとー!」
そんなエルのコールと共に再び軽快な音が流れ始めた。
●
「それじゃ最後の曲、行くよー!」
全員が舞台に戻ってくる。イスカの掛け声と共に流れるその曲は、恋人のためチョコを作る女の子の気持ちを歌ったナンバー。チョコをボウルに入れたり、それをかき混ぜたり。歌詞の内容に合わせた振り付けが繰り広げられる。
「チョコレートを手作りしているような振り付けとか入れられません?」
ちょっとコミカルで、楽しい振り付けは茜のアイデア。その振り付けは受け入れられたようで、客席の子どもたちは早速真似を始めている。
流れる汗も、キラキラと輝いて今はアイドルたちを引き立てる。二曲連続ノンストップで激しいダンスを繰り広げるエルと香月だが、全く衰えない。
そして曲はサビにかかる。ステージに一列に並んだメンバーが順番に回ると手にはチョコレートが持たれている。最後に全員でモニュメントの布を取ると、そこにはチョコレートが積み上げられていた。
●
ライブが大盛況のまま終わる中、ダガーは一人広場を抜け出し、大通りの方に向かっていた。片手には看板、逆の手にはチラシ、そして肩からはギターを掛けている。
「この切ない想い今こそ伝える時甘くとろけるチョコラーテが勇気をくれる~♪」
チラシを巻きながら弾き語り、今広場で行われていることを街の人々にアピールしていくダガー。その声に、一人、二人と広場へ向かう人達の姿。
その背中を見ながら、
「バロテッリ商会プレゼンツ特別イベントにて、恋愛成就チョコレート好評発売中!」
と、もうひと押しするダガーであった。
その頃、広場では大行列が出来ていた。列の先ではアイドルたちが一列に並びステージ上のチョコを売っている。そんな列を一人エヴァが整理していた。
香月はチョコレートを渡すと手をぎゅっと握り、そのままにっこり微笑む。そんなことをしながら、
(プライドでチョコ売れるなら、プライドなんか捨てるわ!)
なんて思っていた。
一方イスカは同じように握手をしながら、
「あと5個買ってくれたらサインも付けますよ」
なんて言っていた。彼女の姉が『こうすればたくさん売れるじゃろう』なんて言っていたらしい。果たしてその通り、彼女の後ろに置かれたチョコレートの包みはみるみるうちに減っていく。
だが何よりファンのハートを掴んでいたのはエル。自分のもとに買いに来てくれた相手に、サイン入りチョコを渡しその手を握った上で、
「ねぇねぇ、そのチョコ誰のために買ったの? エルちゃんのためだよね?」
と言いつつ上目遣い。その姿にハートを持っていかれる人間が続出したようだ。
結果、チョコレートはあっという間に完売。客もいなくなり、ハンター達は誰もいなくなった広場に集まる。
そこにモアが報酬を用意してやってくる。
「本日はお疲れ様でした」
モアはねぎらいの言葉とともに、エルに話しかける。
「ところでエルさん、今日来てくれたお客さんがエルさんのことを釣り師って呼んでますよ」
それはファンのハートを一本釣りして持っていったエルに対する最大限の敬称であった。
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依頼相談掲示板 | |||
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控え室(相談スレッド) エリス・ブーリャ(ka3419) エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/02/19 23:39:57 |
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質問スレッド エリス・ブーリャ(ka3419) エルフ|17才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/02/18 22:54:57 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/18 09:50:35 |