白馬の夢を見る

マスター:雨龍一

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2014/06/28 12:00
完成日
2014/07/08 19:48

このシナリオは3日間納期が延長されています。

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 白馬に守られて――その夢はどこの世界にも存在するようです。
 でも、その白馬って――

「なっ! なんで除けてくれないんだっ!!」
 窓から見える景色に、レイドは頭を抱えた。忌々しい白馬は、今日も我が家への道で佇んでいる。
 まるで、そこにいるのが当然のようにだ。
 しかも……
「くっ、今度は客まで追い返すのか!」
 目の前で引き返す人がいる。どうやら彼らも通ることは無理だったようだ。
 一定の条件がそろってなければ、その白馬は道を通してくれない。
 それは、ここ2週間続いている現象であった。

「お兄ちゃん、言われたとおりに頼んできたよ?」
 扉が開いたと思うと、少しそばかすが目立つ女の子が入ってきた。妹のブルーベルだ。
 唯一の家族で、道が通れる条件に入っていたとみられる妹が少し先の町から帰ってきたのだ。
「おお、愛しのブルーベルよ。無事だったか? 襲われはしなかったか?」
 先程とは別人のような顔でレイドはブルーベルへと声をかける。
「いやねぇ……襲われたのはお兄ちゃんだけでしょ? それに、ここまで送ってくれた人も単に警戒されただけだし……」
 どうやら先程引き返していった人はここまで妹を送り届けてきてくれた人物であったらしい。
 ブルーベルが不審げな視線を送った先には、ベッドの上に包帯で巻かれた男――レイドの姿があった。
「何を言うんだ! お前に近づくだけで害獣に違いないんだ!」
 大げさな身振りで訴えてくるも、やはりブルーベルは首を傾げるだけだった。
 送ってくれた人物もいっていた。珍しい幻獣だろうが、害はないだろうと。
「まぁ……フェッタにも異常に反応していたけど」
 肩を竦めつつ道を挟んで少し行ったところに住んでいる幼馴染を思い浮かべる。
 ブルーベルよりも可愛らしい、一度会ったものはみんな惹かれるような美しい子だ。
「――だが、あいつは」
 途端に苦虫を噛み潰したような顔をするレイドにブルーベルも苦笑した。
「まぁ、あれで男の子なんですものね」
 街へ一緒に行くと、男たちは必ずフェッタへと声をかける。
 その瞬間、ブルーベルは悲しくなるのを思い出す。
 そして――
「あ、あれは過去の黒歴史だぁぁぁぁぁ!!!!」
 兄の声が響き渡った。

リプレイ本文

 白馬で角。その説明で浮かべるのはユニコーンという幻獣であろう。それは、今回のハンターたちも同じ結論へと至った。
「たしか角って高値で取引されてたから、それ狙いの人が来る前に何とかするのん!」
 ぐっっと拳を握りしめるミィナ・アレグトーリア(ka0317)は青い瞳をきらきらとさせていた。
「まぁ、俺に馬をどうこうしろっておもしれぇよな」
 くすりと笑うキー=フェイス(ka0791)。彼は種馬という二つ名を持っていると豪語する男だった。

●白馬を前に
「……わぁ……ユニコーン……だぁ……」
 絵本で見たことのある一角獣――そんな馬の幻獣にシェリル・マイヤーズ(ka0509)は心を弾ませていた。
 もう、他に視線がいかない様である。
「わたしは、素通りできるのか、試してみたいわね」
 十色 エニア(ka0370)は興味津々で白馬を見つめる。この馬は、本当にユニコーンと呼ばれる存在なのだろうか。
 そして――自分はどう判断されるのであろうかと。
 その言葉に我に返ったシェリルは、見つめ続けるも、名残惜しそうに促され依頼人の家へと歩き出した。
「ふふ、くすぐったいじゃないか。良い子だな君は」
 途中、すれ違う女性陣にすり寄ってくる白馬に如月 紅葉(ka2360)は軽く抱きしめてしまう。

「わ……通れちゃった」
 エニアが通り過ぎる時、白馬は関心も示さなかった。それでも、他の男性陣の場合は挑むように警戒をされてたことを考えると……
「ははは……」
 少し出た乾いた笑いは、どんな心境なのだろうか。そっと、皆が視線を逸らしたのだった。


●残された一人
 武器を地面に置くと、ギュンター・ベルンシュタイン(ka0339)は白馬の方へと歩き出した。
 気付いてはいるのだろうが、白馬は草を食べている。
 体格といい、毛艶といい、本当に理想的な馬である。
「まったく、面倒な依頼だな。お前さんはどうしてそこにいるんだ?」
 適度に距離を置き腰を降ろし、近くの花をいじりだす。
 それは、この一帯に見られるのか、青く小さな花だった。
「お前さんみたいな立派なやつが、オレも欲しいねー……」
 ふと笑いを零すと、ちらりとこちらを見たようである。
「そうだ聞いてくれよ、この前の依頼でよー犬型のやつと戦ったんだわ」
 そして、ギュンターと白馬の不思議な時間は始まった。

●乙女候補とお話を
 お茶を出し歓迎してくれるベルにミィナは質問をした。
「森とか泉のあるとこ行かなかった?」
 ユニコーンとは静寂な森を好み、泉のある場所に存在するという噂があったはずと。
「森はいつも行きますね」
 今は、自分の名と同じ花が咲き乱れる時期、その生息地が森に入ってすぐの池に広がっているというのだ。
――どうやら2週間前もフェッタと一緒に行ったらしい。
「フェッタさんとずっと一緒だったのん?」
 少し突っ込んで聞くと、顔を若干赤らめて答える。
「ずっと……ええ、お外に行く時はいつも一緒が多いので」
「フェッタさんとは、どんな方なのですか?」
 紅茶を静かに飲んでいたメトロノーム・ソングライト(ka1267)も詳しくとばかりに突っ込んでくる。
「あ……いえ……そのぉ……」
 段々と赤く染まってくる様子に、可愛らしいと思い見つめてしまう。
 その姿に、メトロノームは静かに歌い始めた。
 それは、白馬の王子様を夢見る詩。小さく奏でる言葉の世界に、真っ赤だった顔もいつしか引き込まれていくのがわかる。
 唄が終わるころ、落ち着いた様子を見せたブルーベルに再び質問が始まった。
「……白馬さんは男の人は警戒するだけって聞いたけど、お兄さんのお怪我はどーしてこんなに……」
 酷いのだろうと。
 確かに、ここに来るまでの道でも、若干引き下がって男共を見ていた気がする白馬だ。もし狂暴ならば今頃ギュンターが危ない気もする。
 若干、それに当てはまらない男が同席している気もするが…。
「兄は……馬鹿なんです」



●魅惑の女装男子
 皆がブルーベルの家へと向かった中、シヴェルク(ka1571)とキーはフェッタの家へと向かった。
 フェッタ……彼女、いや彼に関することは向かいの家にいる住人とのことだけだ。
 前もって周辺に聞き込みをしたキーにも特に不思議な情報は来ない。
 ただ、昔から知っている者ならいいのだが、所見の男には毒だとの声が入ってきていた。
「はい……」
 呼びかけて少し経つと、中から落ち着いた声が返ってきた。声からは、女性とも男性とも判断できない。
「すみません、ハンターのシヴェルクといいますが――」
 次の瞬間空いた扉から現れた姿に――衝撃と春が一気に来たとシヴェルクは感じてしまった。
 突如動きが止まってしまったシヴェルクに深いため息を落としながら、キーはあらためて挨拶をする。そして―
「……どうも、キー=フェイスという。ちょっと時間貰っても、構わねえか?」


●困ったお兄ちゃん
「レイド、何でそんなに……妹、好き?もともと?」
「そりゃ、妹だ……大事で、好きで悪いか?」
 シェリルの言葉にレイドは鼻を鳴らしながら答えてくる。
 別室でブルーベルと話していたミィナやメトロノームも合流していた。
 レイドの気持ちはわからないでもない。でも。大事でも、好きでも……時には、干渉しすぎることは毒になる。
「子供も……大人に、なるよ……。いつまでも……子供にしてちゃ……ダメ……。レイドも、大人に……ならなきゃ……ダメ……」
 ぎゅっと裾を握りしめて見上げてくるシェリルの言葉にどきりとする。
 何かを思い出したのだろう、その瞳は潤んでいる。
「兄馬鹿もいい加減にせんと、ベルさんから口も聞いて貰えんくなるよ?」
 その言葉に、ぎょっとした視線を返してくる。ミィナは深くため息をついた。
 こいつ、もうその兆しがあるのかと。
「うち、ひとりっ子だから上の子や下の子欲しいけど、こんな窮屈なのは嫌なん」
「な、なぜだ! 俺は、俺はブルーベルをだなぁ! 妹が大事なんだぁ!」
「ぁ~、それは解るかも………ごめん、やっぱりわかんない」
 レイドの話を聞きつつも、話の殆どがいかに妹がかわいいかという言葉に変わっていくのに、さすがのエニアは引きつりつつあった。
 特に、先程から異常としか言いようがない。フェッタのことに関しては、はぐらかしているのだ。
「で、結局フェッタさんに異常に反応する心当たり……ある?」
 ニコリとした中性的なエニアの顔に、レイドは顔を赤らめる。
――こいつ、やはりその気があるのでは疑ってしまいたくなるのは何故だろう。
「ぁ~……うーん」
 ぼりぼりと頭掻く姿を見せるレイド
「ブルーベル君、あの馬が来た2週間前に何か一つ変わった事とか起きなかったかい?」
 その反応に紅葉は、代わりのお茶を持ってきたブルーベルの方を向き尋ねる。
慌てるレイドの様子を片目に、ブルーベルが一言落とした。
「それは、お兄ちゃんがフェッタちゃんを口説いた日の事でしょうか」
 それが2週間前の事件――
「そしてレイド君、君はあの馬に一方的に危害を加えようとしなかったかい?」
 確信的にも取れるいいかたの紅葉。では、その際に近くにいた白馬を利用しようとしたと?
「レイド……ユニコーンに……何か、した?」
 その言葉に、びくりと肩が揺れる。そしてにっこりと告げられたのは、謝りに行きましょうか……と、皆からの言葉だった。

●関係者集合
 ギュンターに撫でられ、大人しくしている白馬の姿に一同は驚いた。
 が、レイドが姿を現すとピクリと異常な反応を見せる。
「……このお兄さん……、妹が、とっても大事なんだって……。悪い人じゃ……ないよ?」
 そろそろと、シェリルは近づいて白馬の鼻を撫でる。
 そして、来る間に作った――ブルーベルの花冠を頭に載せた。
 その花の香りに、白馬は優しくシェリルに顔を寄せる。
「フェッタちゃん……」
 ブルーベルが向かいの家から出てきたフェッタに気付いた時、白馬が傍にいるキーとシヴェルクに警戒を示した。
「おっと……大丈夫だ。彼らは俺の仲間、だ」
 ギュンターがそう呼びかけると、白馬は少しだけ大人しくなる。そっとシェリルの前に膝を折ったのだ。
 突然の行動に驚きつつも、シェリルは嬉しそうに馬へと抱きついた。



 各自が持ち寄った情報を聞くと、事態は明確になっていく。
 つまりは……だ。

●ブルーベルの説明
 街へと行く時のフェッタは、確かにベルの前ではフリフリの格好をしていた。しかし、それが普段からというわけではないという。
 ベルの家に行く時は、フリルはついているものの、ズボン姿であり見目麗しくとも、男にも見れる中性を保っていたという。が、
「兄は、フェッタが珍しくドレスで来た2週間前に、カッコをつけて目の前にいらっしゃる白馬さんに無理やり乗ろうとしたのです」
 黒歴史――どうやら、遠い昔の話ではなくつい最近の、事件の発端となった2週間前のことらしい。
 兄の前で女装をせずに、いつも嫌がらせのように追い返されていたフェッタが、珍しく女装出迎えに来たのがことの発端だ。
 無理やり乗られたこともあり、白馬は思いっきりレイドを落とし、そこへ角で攻撃をしたらしい。
 それ以降レイドのような男を見ると警戒が激しくなり、またフェッタ側へは行かせないようにレイドを見張っているというのだ。
「あたしは……フェッタのおかげで無事なだけなんです」
 フェッタが白馬に優しくお願いしたという。
「ベルだけは自由にさせて」と。
 つまりは、白馬はフェッタのお願いを聞いている状態のようだ。
 しかし――白馬はフェッタの性別に気付いているのだろうか。


●フェッタの言い訳
 フェッタはとても良い笑みを浮かべて告げた。
「……滅びればいいんです」
 開いた眼を見た瞬間思う。殺意って目に見えるんだなと。

 幼い頃から一緒だった。そんな彼にとって小さなブルーベルは極上の天使だった。
 人々が自分に向ける視線とは違う暖かい笑顔。それだけで彼の心を彼女が得るには十分だったのだ。
「女のふりして彼女から男の視線を遠ざけるって……やばくね?」
 自分の予想が的中していたこともあり、キーは少しだけ引きつっていた。
 フェッタに異常に反応していたことから考えてはいたものの、それにしても白馬よりもフェッタの方に異常性を見つけてしまう。
 そして、語られる内容がわかったのか、白馬もまた……フェッタから微妙に視線を逸らしていたのだった。

「乙女ってね……夢を見続けてほしいんですよ」
 白馬騒動の幕を引かれた時、彼は悟る。もうこのままではいられないと。
「フェッタちゃん……」
 ふるりと震えるベルを見れば、悟らざる得ない。
「――ベル、ごめんね」
 ――白馬に乗って浚っちゃえばよかったね、と。
 腰まで長く伸びた、美しい金髪にナイフを当てた。
「――僕、男の子に戻ります」
 今まで守ってきたベルの複雑な気持ち、レイドからの厭らしい視線。
「まて、俺厭らしくないからっ! むしろ単なる被害者だからっ」
 悠々と佇む白馬の前で、ベルの前で口説くから悪いのだ。
「あんたが滅びれば……それで済んだのに」
 小さく舌打ちが聞こえた気がする。可憐な顔から紡ぎだされる数々の言葉の暴力に、心が折れてくる。
「だ、だから黒歴史だって言ったんだぁぁぁぁぁっ」
 その言葉に、ふとシヴェルクは遠い目をになり――それに気づいたキーはそっと彼の肩に手を置いたのだった。


●本当の被害者(?)
 ぽんと、ギュンターは馬の背に手を置いた。
「――お前が、一番の被害者だったな」
 すりすりと鼻を押し当ててくる。意外と健気なやつらしい。
 上に乗ったままの――はホワンと状況を見学しながらつぶやく。
「居たのは白馬の王子様じゃなくって――女装の王子様だったみたいですね」
 自分の時は、普通の白馬さんがいいなと。
「この子……連れて帰ったら……ダメ?」
 白馬に乗ったままのシェリルが問うも、首を横に振られる。
 誰だって馬は欲しい、だが……
 乗っていたシェリルを、そっとギュンターが降ろす。
「君、ずっとここにいるのは非常に勿体ない事だよ。君の立派な足はこの世界にいる女性を探しに行くための足だ。
この場に留まり続けるのは非常に勿体なく、大事な機会を失っているよ。だから、君にもっと相応しい女性を探しに旅に出たらどうかな」

 紅葉の言葉に、小さな嘶きで応えると白馬はブルーベルの花に導かれるように森の方へと去って行ったのだった。

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MVP一覧

重体一覧

参加者一覧

  • 幸せの魔法
    ミィナ・アレグトーリア(ka0317
    エルフ|17才|女性|魔術師
  • 白馬の友
    ギュンター・ベルンシュタイン(ka0339
    人間(紅)|23才|男性|聖導士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 約束を重ねて
    シェリル・マイヤーズ(ka0509
    人間(蒼)|14才|女性|疾影士

  • キー=フェイス(ka0791
    人間(蒼)|25才|男性|霊闘士
  • アルテミスの調べ
    メトロノーム・ソングライト(ka1267
    エルフ|14才|女性|魔術師
  • 狭間の住人
    シヴェルク(ka1571
    人間(紅)|16才|男性|機導師
  • 粋な若女将
    如月 紅葉(ka2360
    人間(蒼)|26才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2014/06/24 20:17:56
アイコン 相談板
ギュンター・ベルンシュタイン(ka0339
人間(クリムゾンウェスト)|23才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2014/06/28 11:15:56