ゲスト
(ka0000)
【不動】漢と怠惰と漢気全開機導砲
マスター:近藤豊

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/02/27 19:00
- 完成日
- 2015/03/04 06:25
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
マギア砦籠城戦が一つの決着を迎えた辺境ではあったが、人類と歪虚の戦いは未だ終わらない。
多くの血が大地を赤く染め、マギア砦は歪虚の手に落ちた。
しかし、人類側はCAM稼働実験場防衛を準備する時間を得る事ができた。
大きすぎる代償を払いながらも、次なる戦いに備える双方。
――そして。
生存権を巡る新たなる戦いは、意外にも早く訪れる。
「うおおおおっ! てめぇら! 気合い入れろぉ!」
「おおーーっ!」
CAM稼働実験場防衛線右翼付近に集ったドワーフの一団。
その中央でドワーフ王ヨアキム(kz0011)が雄叫びを上げる。
例によってピンク色の甲冑『GAMマークII』に身を包んで興奮状態だ。本来であればこんな馬鹿を戦力に加えたくないのだが、猫の手も借りたい状況。一応敵を殴れるだろうという理由だけで参加を認められた。
「ヨアキム様、良かったですねぇ。戦闘に加えてもらって」
「うむ。ついにこのGAMの性能を見せ付ける時がきたぞ」
執事のキュジィは、いつも以上の笑顔を浮かべる。
ブレーキ壊れた馬鹿っぷりしか自慢できる物がないヨアキムが、戦力として人類側増援に加えて貰えた。キュジィとしては、我が事のように嬉しかった。ちょっと嬉しい花いちもんめ。
「ヨアキム様が認められた……こんなに嬉しい事はありません」
「わっはっは。本番を見ておれ。各国の要人の度肝を抜いてやるわ」
「ところでヨアキム様。さっきからドワーフの皆様がせっせと何かを運び込んでいるのですが……」
ヨアキムとキュジィが話している横で、ドワーフが大量の金属片を運び込んでいる。
防衛線を強化するつもりにしては形が円形の金属片も混じっており、キュジィの脳裏に嫌な予感がし始める。
「こいつか? こいつはな……我が辺境ドワーフが対歪虚の為に開発していたイカす兵器『漢気全開機導砲』だ!」
漢気全開機導砲。
この単語だけで既にロクでもない可能性を秘めているが、キュジィは勇気をもってヨアキムに詳細を確認してみる。
「ヨアキム様、これは一体……」
「言っただろ、漢気全開機導砲だ」
「それが分からないからお聞きしたんですが」
「仕方ねぇなぁ。ほら、機導砲ってあるだろ? あれはマテリアルをエネルギーに変換して光を打ち出すだが、こいつはそのエネルギーを推進力に変換して大きな物を遠くに飛ばす事ができるんだ」
早い話、この機導砲は光線ではなく、鉄の弾や岩などの巨大な物体を撃ち出す大砲だ。
この機導砲があれば、怠惰が集まる地点を砲撃できるかもしれない。
「おお、凄いじゃないですか! これがあれば怠惰を砲撃できるんですね?」
「砲撃? いや、そんな事はしねぇぞ」
「え? じゃあ、何を飛ばすんですか?」
「わしだ。わし自らが飛び出すんだ。『ヨアキム、行きまーすっ!』って」
「…………」
どうやら、この機導砲の弾はGAMに登場したヨアキム本人だったようだ。
王様自らが弾になるという発想は、この馬鹿にしかできない。
それでも重量を考えれば敵に大きなダメージを期待できる。もっとも、撃った後でヨアキムも大砲もどうなるか分からないが……。
「こいつで打ち出されて怠惰の顔面に一発イイのを決めてやれば、ビビって逃げるに違いネェ! ぶわっはっは!」
「でも、ヨアキム様。今から機導砲組み立てて間に合うんですか?
どう考えても接敵まで間に合いませんよ?」
「……あっ」
やってしまった! という表情を浮かべるヨアキム。
正常運転なヨアキムの残念な頭にため息をついたキュジィは、早速フォローを開始する。
「分かりました。ハンターさんに機導砲護衛を打診しましょう。
余計な手間を増やしてしまったようで申し訳ないですが……」
●
「くぅ~! あんの馬鹿ドワーフ!」
ナナミ川近くでMrs.ホージーはいきり立っていた。
度重なる攻撃失敗に怒りを隠せない。このままでは歪虚一の美貌という称号が失墜してしまう。
「もう、こうなったら鎧なんてどうでもいいわ! あのドワーフと決着つけてやるんだから!」
多くの血が大地を赤く染め、マギア砦は歪虚の手に落ちた。
しかし、人類側はCAM稼働実験場防衛を準備する時間を得る事ができた。
大きすぎる代償を払いながらも、次なる戦いに備える双方。
――そして。
生存権を巡る新たなる戦いは、意外にも早く訪れる。
「うおおおおっ! てめぇら! 気合い入れろぉ!」
「おおーーっ!」
CAM稼働実験場防衛線右翼付近に集ったドワーフの一団。
その中央でドワーフ王ヨアキム(kz0011)が雄叫びを上げる。
例によってピンク色の甲冑『GAMマークII』に身を包んで興奮状態だ。本来であればこんな馬鹿を戦力に加えたくないのだが、猫の手も借りたい状況。一応敵を殴れるだろうという理由だけで参加を認められた。
「ヨアキム様、良かったですねぇ。戦闘に加えてもらって」
「うむ。ついにこのGAMの性能を見せ付ける時がきたぞ」
執事のキュジィは、いつも以上の笑顔を浮かべる。
ブレーキ壊れた馬鹿っぷりしか自慢できる物がないヨアキムが、戦力として人類側増援に加えて貰えた。キュジィとしては、我が事のように嬉しかった。ちょっと嬉しい花いちもんめ。
「ヨアキム様が認められた……こんなに嬉しい事はありません」
「わっはっは。本番を見ておれ。各国の要人の度肝を抜いてやるわ」
「ところでヨアキム様。さっきからドワーフの皆様がせっせと何かを運び込んでいるのですが……」
ヨアキムとキュジィが話している横で、ドワーフが大量の金属片を運び込んでいる。
防衛線を強化するつもりにしては形が円形の金属片も混じっており、キュジィの脳裏に嫌な予感がし始める。
「こいつか? こいつはな……我が辺境ドワーフが対歪虚の為に開発していたイカす兵器『漢気全開機導砲』だ!」
漢気全開機導砲。
この単語だけで既にロクでもない可能性を秘めているが、キュジィは勇気をもってヨアキムに詳細を確認してみる。
「ヨアキム様、これは一体……」
「言っただろ、漢気全開機導砲だ」
「それが分からないからお聞きしたんですが」
「仕方ねぇなぁ。ほら、機導砲ってあるだろ? あれはマテリアルをエネルギーに変換して光を打ち出すだが、こいつはそのエネルギーを推進力に変換して大きな物を遠くに飛ばす事ができるんだ」
早い話、この機導砲は光線ではなく、鉄の弾や岩などの巨大な物体を撃ち出す大砲だ。
この機導砲があれば、怠惰が集まる地点を砲撃できるかもしれない。
「おお、凄いじゃないですか! これがあれば怠惰を砲撃できるんですね?」
「砲撃? いや、そんな事はしねぇぞ」
「え? じゃあ、何を飛ばすんですか?」
「わしだ。わし自らが飛び出すんだ。『ヨアキム、行きまーすっ!』って」
「…………」
どうやら、この機導砲の弾はGAMに登場したヨアキム本人だったようだ。
王様自らが弾になるという発想は、この馬鹿にしかできない。
それでも重量を考えれば敵に大きなダメージを期待できる。もっとも、撃った後でヨアキムも大砲もどうなるか分からないが……。
「こいつで打ち出されて怠惰の顔面に一発イイのを決めてやれば、ビビって逃げるに違いネェ! ぶわっはっは!」
「でも、ヨアキム様。今から機導砲組み立てて間に合うんですか?
どう考えても接敵まで間に合いませんよ?」
「……あっ」
やってしまった! という表情を浮かべるヨアキム。
正常運転なヨアキムの残念な頭にため息をついたキュジィは、早速フォローを開始する。
「分かりました。ハンターさんに機導砲護衛を打診しましょう。
余計な手間を増やしてしまったようで申し訳ないですが……」
●
「くぅ~! あんの馬鹿ドワーフ!」
ナナミ川近くでMrs.ホージーはいきり立っていた。
度重なる攻撃失敗に怒りを隠せない。このままでは歪虚一の美貌という称号が失墜してしまう。
「もう、こうなったら鎧なんてどうでもいいわ! あのドワーフと決着つけてやるんだから!」
リプレイ本文
迫り来る怠惰の群れ。
歪虚に呑まれたジャイアントと骸骨を象った鎧に身を包むオーガが、北から押し寄せてくる。混沌と闇を引き連れて押し寄せる波。すべてを呑み込もうと突き進んでいく。
対して南に陣取るは、巨大な大砲の全面に立つ漢達。
その先頭には、『ショッキングピンク』という、駄菓子だったら体に悪い事間違いない色の甲冑を着たヨアキム(kz0011)が立ち塞がる。その方には自称『じりつしこうがたしえんゆにっと』の『ルル』を名乗るミルフルール・アタガルティス(ka3422)の姿もあった
「♪獅子の如く猛々しく 虚無のあるところに やってくる
ちょっとお茶目な アイツのハートは 永遠にLOVE
触れば 火傷じゃ 済まないぜ~」
「ワシは辺境でドワーフやっとる、ヨアキム言うもんですわ」
「♪我等の頼れる味方 ガッツだアツく燃え上がれっ
GAMマークII~」
ミルフルールは、自身で作詞作曲したGAMマークIIのテーマを歌い上げる。
途中の差し挟まれる関西弁のセリフもミルフルールの演出だ。これでハンターとドワーフに漢気が注入された――と二人は信じ込んでいる。
「さぁ、野郎どもっ! 辺境ドワーフの意地を見せてやれ!」
ヨアキムの叫びに呼応してドワーフの戦士達も声を上げる。
それと同時にハンター達も動き出す。
「本当に頭が痛くなりますが、仕事は仕事。
きっちり殺らせていただきますか……」
試作振動刀「オートMURAMASA」を手に前へ出た鹿東 悠(ka0725)。
前方から迫るジャイアントに対して、下段からオートMURAMASAを振り抜いた。
初撃を適確に命中させ、周囲のジャイアントに自らの存在をアピールする。
「わはは! すごい敵だ! 体が熱くて笑いが出てくるぞ!」
悠と共に前衛を務めるロウザ・ヴィレッサーナ(ka3920)は、早くも戦意を沸騰させていた。
舞い上がる砂埃が空気となって体に纏わり付く。
敵味方から発せられる熱が、ロウザをより一層熱くさせる。
「ここから先はいかせないぞ!」
スタッフを手に壁役として怠惰の前へ立ちはだかる。
周囲にはドワーフの戦士もロウザを支援すべく防御を固めている。
「相手は短期決戦を仕掛けてきます。ご注意を」
「わはは! 短期決戦っ! いいね! もっと笑っちゃうよ」
悠の呼びかけに、ロウザは更に笑顔になる。
荒れ狂う暴力の渦に身を任せつつ、ドワーフの血はロウザの中で踊り狂う。
そして――衝撃。
ジャンアインの棍棒をロウザはスタッフで防御する。
手に伝わる感覚が、ロウザを興奮させる。
「小父殿。我等も前へ出るのだ」
「おう。ヨアキム、GAMマークII。出るぞっ!」
まるでどこかのロボットアニメで聞いた台詞を吐くヨアキム。
肩に乗ったミルフルールも戦場の空気を感じ取って気合いを入れる。
こうして始まったドワーフと怠惰の戦い。
お互いの思惑をかき混ぜながら、待ち続けた。
『漢気全開機導砲』が発射できるタイミングを。
●
ここで話は、ハンターがドワーフと合流した頃に遡る。
「……あの変態、こっちへ向かっているのか。
野郎の網タイツとか吐き気以外に何を誘うってんだ……」
岩動 巧真(ka1115)は執事のキュジィ(kz0078)からの新情報にげんなりしていた。
「女性の網タイツなら見たいの?」
リラ・L=ローズレ(ka1123)は傍らで巧真をからかう。
それに対して巧真は意外な反応を見せる。
「なんだ、履いてくれんのか? よし、帰ったらお前網タイツな」
「はぁ!? ふざけた事を言わないでよ、着る訳無いじゃない!」
巧真の囁きに顔を赤らめて叫ぶリサ。恥ずかしさを誤魔化すように咳払いをする辺りに可愛さを感じてします。
「ヨアキムはん。どちらに発射するかは決めてはります?」
桐壺(ka4164)はヨアキムへ問いかける。
それに対してヨアキムは、高笑いしながら北の方を指差した。
「おう、あの辺だ」
ヨアキムが指差したのは何もない地面。
要するに撃てば敵に当たると信じ切っているようだ。
「あの、敵を密集させれば当たり易いんとちゃいます? 密集しているところに行って大立ち回りはどうでありんすえ?」
「そうですね。この機導砲、非常に漢気溢れる兵器ですが、一手間加えて見ては?
敵の真っ直中で単騎突撃して名乗りを上げるのは如何でしょう。漢気を増すという物ですよ」
桐壺とリラはヨアキムに悪魔のような囁きを呟く。
実はリラの本音は機導砲の着弾後の混乱でオーガを叩く際に囮にする為だった。
おまけにリスクも高く危険な役目なのだが……。
「いいじゃねぇか! カッコイイGAMをお目見えというじゃねぇか!」
馬鹿にリスクマネージメントは存在しない。
ただ、ひたすら目立つ事しか考えていないのだ。
こうしてヨアキムは早くも英雄のような名乗りを妄想し始める。
一方、悠はキュジィと何やら話し込んでいた。
「……をこの機導砲で撃てますか?」
「はい。角度調整は必要なので時間があれば可能です。
でも、そんなもんを撃ってどうされるのですか?」
首を捻るキュジィだったが、悠は小さく頷いた。
「保険です。うまく行けば良いのですが……」
●
ハンターと怠惰の戦いが始まって15分が経過。
数体のジャイアントは片付けられたが、大物のオーガは未だに健在。
巧真がアサルトライフルでオーガーに牽制を仕掛けていたが、そろそろ次の展開へ進む段階となったようだ。
「おら、ジジイ! さっさと乗れ! ぶっ飛ばしてやるからよ!」
巧真はヨアキムへ叫ぶ。
そう――漢気全開機導砲の発射準備が整ったのだ。
「そうか! しばし待っておれ!」
「10時方向、敵1体。こちらで対応します!
ヨアキムさんは早く後退を!」
魔導銃で迫るジャイアントを攻撃して足止めするリラ。
馬鹿が作った機導砲であったが、やはりこの戦いを左右する兵器には違いない。
「またまたすごいのだー」
ヨアキムと一緒に機導砲へ装填されるミルフルール。
どうやらミルフルールも一緒に発射されるつもりだ。さすが脳筋、危険だとか細かい事は気にしていないらしい。
「機導砲で威力がアップしたワシのパンチを味わいやがれっ!
うおおおお! 漢 気 全 開っ!!!」
――ドンっ!
周囲を奮わせる程の衝撃と轟音。
ショッキングピンクの弾丸は、強烈な勢いでオーガへ直撃。
オーガの巨体が後方へ吹き飛び、意識を吹き飛ばす事に成功したようだ。
「おー……ほんとに飛んだぞ!
じゃあ、こっちも負けられぬのだ!」
「敵は混乱している様子です。このチャンスを逃してはなりません」
何が起こったのか理解できない様子だった残るオーガーに、ロウザと悠が迫る。
オーガーが着る鎧の隙間を狙って試作振動刀「オートMURAMASA」を突き刺す悠。
突然の痛みに暴れ出すオーガ。振り回す棍棒をロウザは巧みに避けながら、意識を自分に集中させる。
「ほんに悪いけど……倒させてもらいますわ」
「火力集中だ。オーガを倒せば周りのジャイアントも逃げ出すかもしれねぇ!」
桐壺はオートマチックST43で、巧真はアサルトライフルで遠距離からオーガへ攻撃を仕掛ける。
短期決戦を挑んだ歪虚であったが、機導砲を発射まで守り切ったハンター側の方に戦況は傾いていた。そしてそれは、一つの戦いが決着する事を意味していた。
「ファイアアロー……これで終わらせる」
リラはオーガの顔面を狙ってファイアアローを放った。
オーガは顔面を射貫かれて後方へ体を投げ出した。
動かなくなったオーガを見たジャイアントは、散り散りに逃走を開始する。
「敵は逃走を開始。ひとまず戦線の維持に成功したようです」
悠は逃げていくジャイアントを見て安堵する。
まだ作戦全体は進行中であるが、自分に与えられた役目は終わらせる事ができた。
一方、ヨアキムとミルフルールと言えば。
「我は強い子だから泣かぬ……のだ」
既に半べそをかくミルフルール。
その傍らでは地面からゆっくり立ち上がるヨアキムの姿があった。
いくらGAMマークIIなる甲冑を着ていても、衝突の衝撃に耐えられなかった。ミルフルールがプロテクションを付与していなければ二人とも重傷は確定していたであろう。
「……た、怠惰どもっ! このワシが、辺境の、ドワーフ王……ヨアキム……」
「小父殿。今、回復させてやるのだ」
予定通り名乗りを上げるヨアキム。
だが、既に敵は撤退した後で、周囲に敵は存在していなかった。
「本当に名乗るのね……まあ、唆したのは私だから、生きて帰って貰わないと夢見が悪いわ」
ヨアキムの律儀さに少々驚くリラ。
今更名乗りを上げても意味はないのだが、約束を守ろうとする辺りは褒めても良いかもしれない。もっとも、その律儀さが毎回騙される理由なのだが。
一旦は決着を見たハンターとドワーフ達。
だが、ここで新たなる馬鹿がようやく到着する。
「ばばーん! 真打ちの登場よ。さぁ、あたしが来たからには勝利確定よーん」
網タイツにガーターベルト。異様にテカテカと光る肌を晒すマッシブなおっさん――Mrs.ホージーが姿を現した。
何度見ても気色悪さは拭えない。
「うわ、出やがった。本当に何度見ても慣れねぇな」
巧真は必死で吐き気を堪えていた。
●
ホージーは生粋の馬鹿であっても歪虚。
遭遇した以上、戦いは避けられない。そんな中、リラは気になっている事を聞いてみる。
「ホージーさん、何故執拗にこの人を狙うのです?」
「あら-。そんな事気になっちゃう感じ? もしかして、あたしに気があるとか?
残念だけど、あんたみたいな小娘には興味ないから」
「あ。私も興味ないから。
でも……まさか、好きだからヨアキムさんの気を引きたいとか、そういうアレですか? 乙女なんですか?」
「ちょっ! さらっと酷い事を言っているわね!
あたしは元々ドワーフが嫌いなのよ。穴蔵に潜ってゴソゴソやって。卑猥じゃない。ばっちいし。だからあたしが今日この場で汚いドワーフを消し去ってやるのよ」
どうやらホージーは単純にドワーフの事が嫌いなだけのようだ。
以前の会話から考えてもGAMのデザインが気に入って奪おうとしていた。おそらく深い理由は存在しないのだろう。
「それにしてもわろてまうわぁ」
桐壺は少し離れた場所でホージーを笑い飛ばす。
自分が笑われた事に気付いたホージー。直様鋭い眼光を桐壺に向ける。
「あら? もしかしてあたしの事かしら」
「聞こえましたん? そんなはしたない形で、よう美貌の持ち主と言い張りますなぁ。その図太い神経に頭が上がりませんわ。流石、『歪虚一の美貌』を自慢するだけありんすねぇ」
桐壺はホージーを挑発した。
単純馬鹿のホージーは何も考えずに桐壺の方へ歩みよっていく。
「へぇ、ドワーフより先に死にたい訳?」
既にキレているホージー。
だが、未だ罠に掛かった事に気付いていない。
「ようこそ。歓迎しますえ」
桐壺は、挑発が成功した事で笑みが溢れる。
ホージーは辺りを見回す。
そこは海岸。足下には砂が広がっている。
「鹿東さん! 準備できました」
「そうですか。お願いします」
キュジィが悠に向かって叫ぶ。
そして悠の合図を受け、再び機導砲が唸り声を上げる。
――ドンっ!
再び揺れる空気。
機導砲から撃ち出された『それ』はホージーの頭上を通過するような軌道を描く。
同時に悠も飛び上がり、試作振動刀「オートMURAMASA」で『それ』を叩き割る。
ちょうどホージーの頭上で『それ』が破壊され、中身が降り注ぐ。
「……ぺっぺっ。何よ、これ」
「樽に砂を入れて撃ち出していただきました。砂塗れになった気分は如何です?」
「わはは! ロウザの魔法を見せてやる! 砂嵐だ!」
さらにロウザがスコップで周囲の砂をホージーにかけまくる。
その結果、ホージーの体に砂が大量に付着する。
「こんなので私が倒せると思っている訳?」
「やってみなきゃ分からねぇよ」
巧真はホージーに向けてアサルトライフルの引き金を引く。
次の瞬間、ホージーの肩を銃弾が射貫いた。
「痛っ! ……あれ? あたしのオイルは?」
「お前のオイル、もう消費期限切れだよ」
本来であれば弾丸を含む物理攻撃はホージーに対して無効だった。
だが、砂塗れとなったホージーはオイルの効果が失われていた。
「わはは! サンドバッグだ!」
ロウザがスタッフでホージーを滅多打ちにする。
いつもならこの攻撃も無効化するのだが、見事すべてヒット。今まで攻撃を躱す努力もしていない事から避ける術も知らないのだ。
「痛っ! 痛っ! 何よ、なんでこんな事になってるのよ! あたしは歪虚一の美貌を兼ね備えているのよ! こんな所で……」
「我の力、小父殿へ託そう。きっと……小父殿の拳が光って唸る。歪虚を倒せと輝き叫ぶ! だろう」
傷が回復したヨアキムに、ミルフルールがホーリーセイバーを付与する。
走るヨアキム。
目指す先は、変態Mrs.ホージー。
光輝く拳を振り上げた瞬間、ヨアキムの耳に飛び込む謎の声。
(ホーちゃんのオイルホーちゃんのオイルホーちゃんのオイルホーちゃんのオイル……)
呪いにも似た言葉は、何故かヨアキムの拳を更に輝かせる。傷は癒えても体力は消耗していたヨアキム。その言葉のおかげで攻撃が外れる気がしない。
込められる想い。
そして――放たれる。
「うおおお! 辺境は、赤く燃えているぅぅぅ!!」
意味不明な一言と共に炸裂する拳。
ホージーの顔面を貫き、体は吹き飛ばされる。
さらに追い打ちとばかりに悠が着地地点で試作振動刀「オートMURAMASA」を振るう。
ホージーの体に大きな傷が生み出され、これが致命傷となる。
「そんな……あたしが……」
力を失って歪虚として倒れたホージー。
その傍らで悠は、そっと呟いた。
「これも仕事ですから」
●
「……あ、あれがCAM、だと……」
ヨアキムは、戦慄していた。
リラと巧真に本物のCAMを見せられ、ヨアキムは小便漏らす勢いでショックを受けている。
「何で私まで巻き込まれてるの?」
「お前が適任だからに決まってんだろ?」
リラは仕方なしにヨアキムへCAMの説明を試みるが、ヨアキムは想い描いていたCAMの違いに愕然。リラの言葉が届いているかも怪しい状態だ。
「……俺も大概、頭イカれてんな」
巧真はCAMを見ながら、口から本音が漏れる。
元CAM操縦士だからこその言葉。
本物のCAMを見れば、ヨアキムが新たな何かを生み出すかもしれない。
その想いから発せられた言葉だ。
「今更じゃないの……? アンタも私も」
イカれていると自らを称した巧真に対し、リラは自嘲気味に笑った。
歪虚に呑まれたジャイアントと骸骨を象った鎧に身を包むオーガが、北から押し寄せてくる。混沌と闇を引き連れて押し寄せる波。すべてを呑み込もうと突き進んでいく。
対して南に陣取るは、巨大な大砲の全面に立つ漢達。
その先頭には、『ショッキングピンク』という、駄菓子だったら体に悪い事間違いない色の甲冑を着たヨアキム(kz0011)が立ち塞がる。その方には自称『じりつしこうがたしえんゆにっと』の『ルル』を名乗るミルフルール・アタガルティス(ka3422)の姿もあった
「♪獅子の如く猛々しく 虚無のあるところに やってくる
ちょっとお茶目な アイツのハートは 永遠にLOVE
触れば 火傷じゃ 済まないぜ~」
「ワシは辺境でドワーフやっとる、ヨアキム言うもんですわ」
「♪我等の頼れる味方 ガッツだアツく燃え上がれっ
GAMマークII~」
ミルフルールは、自身で作詞作曲したGAMマークIIのテーマを歌い上げる。
途中の差し挟まれる関西弁のセリフもミルフルールの演出だ。これでハンターとドワーフに漢気が注入された――と二人は信じ込んでいる。
「さぁ、野郎どもっ! 辺境ドワーフの意地を見せてやれ!」
ヨアキムの叫びに呼応してドワーフの戦士達も声を上げる。
それと同時にハンター達も動き出す。
「本当に頭が痛くなりますが、仕事は仕事。
きっちり殺らせていただきますか……」
試作振動刀「オートMURAMASA」を手に前へ出た鹿東 悠(ka0725)。
前方から迫るジャイアントに対して、下段からオートMURAMASAを振り抜いた。
初撃を適確に命中させ、周囲のジャイアントに自らの存在をアピールする。
「わはは! すごい敵だ! 体が熱くて笑いが出てくるぞ!」
悠と共に前衛を務めるロウザ・ヴィレッサーナ(ka3920)は、早くも戦意を沸騰させていた。
舞い上がる砂埃が空気となって体に纏わり付く。
敵味方から発せられる熱が、ロウザをより一層熱くさせる。
「ここから先はいかせないぞ!」
スタッフを手に壁役として怠惰の前へ立ちはだかる。
周囲にはドワーフの戦士もロウザを支援すべく防御を固めている。
「相手は短期決戦を仕掛けてきます。ご注意を」
「わはは! 短期決戦っ! いいね! もっと笑っちゃうよ」
悠の呼びかけに、ロウザは更に笑顔になる。
荒れ狂う暴力の渦に身を任せつつ、ドワーフの血はロウザの中で踊り狂う。
そして――衝撃。
ジャンアインの棍棒をロウザはスタッフで防御する。
手に伝わる感覚が、ロウザを興奮させる。
「小父殿。我等も前へ出るのだ」
「おう。ヨアキム、GAMマークII。出るぞっ!」
まるでどこかのロボットアニメで聞いた台詞を吐くヨアキム。
肩に乗ったミルフルールも戦場の空気を感じ取って気合いを入れる。
こうして始まったドワーフと怠惰の戦い。
お互いの思惑をかき混ぜながら、待ち続けた。
『漢気全開機導砲』が発射できるタイミングを。
●
ここで話は、ハンターがドワーフと合流した頃に遡る。
「……あの変態、こっちへ向かっているのか。
野郎の網タイツとか吐き気以外に何を誘うってんだ……」
岩動 巧真(ka1115)は執事のキュジィ(kz0078)からの新情報にげんなりしていた。
「女性の網タイツなら見たいの?」
リラ・L=ローズレ(ka1123)は傍らで巧真をからかう。
それに対して巧真は意外な反応を見せる。
「なんだ、履いてくれんのか? よし、帰ったらお前網タイツな」
「はぁ!? ふざけた事を言わないでよ、着る訳無いじゃない!」
巧真の囁きに顔を赤らめて叫ぶリサ。恥ずかしさを誤魔化すように咳払いをする辺りに可愛さを感じてします。
「ヨアキムはん。どちらに発射するかは決めてはります?」
桐壺(ka4164)はヨアキムへ問いかける。
それに対してヨアキムは、高笑いしながら北の方を指差した。
「おう、あの辺だ」
ヨアキムが指差したのは何もない地面。
要するに撃てば敵に当たると信じ切っているようだ。
「あの、敵を密集させれば当たり易いんとちゃいます? 密集しているところに行って大立ち回りはどうでありんすえ?」
「そうですね。この機導砲、非常に漢気溢れる兵器ですが、一手間加えて見ては?
敵の真っ直中で単騎突撃して名乗りを上げるのは如何でしょう。漢気を増すという物ですよ」
桐壺とリラはヨアキムに悪魔のような囁きを呟く。
実はリラの本音は機導砲の着弾後の混乱でオーガを叩く際に囮にする為だった。
おまけにリスクも高く危険な役目なのだが……。
「いいじゃねぇか! カッコイイGAMをお目見えというじゃねぇか!」
馬鹿にリスクマネージメントは存在しない。
ただ、ひたすら目立つ事しか考えていないのだ。
こうしてヨアキムは早くも英雄のような名乗りを妄想し始める。
一方、悠はキュジィと何やら話し込んでいた。
「……をこの機導砲で撃てますか?」
「はい。角度調整は必要なので時間があれば可能です。
でも、そんなもんを撃ってどうされるのですか?」
首を捻るキュジィだったが、悠は小さく頷いた。
「保険です。うまく行けば良いのですが……」
●
ハンターと怠惰の戦いが始まって15分が経過。
数体のジャイアントは片付けられたが、大物のオーガは未だに健在。
巧真がアサルトライフルでオーガーに牽制を仕掛けていたが、そろそろ次の展開へ進む段階となったようだ。
「おら、ジジイ! さっさと乗れ! ぶっ飛ばしてやるからよ!」
巧真はヨアキムへ叫ぶ。
そう――漢気全開機導砲の発射準備が整ったのだ。
「そうか! しばし待っておれ!」
「10時方向、敵1体。こちらで対応します!
ヨアキムさんは早く後退を!」
魔導銃で迫るジャイアントを攻撃して足止めするリラ。
馬鹿が作った機導砲であったが、やはりこの戦いを左右する兵器には違いない。
「またまたすごいのだー」
ヨアキムと一緒に機導砲へ装填されるミルフルール。
どうやらミルフルールも一緒に発射されるつもりだ。さすが脳筋、危険だとか細かい事は気にしていないらしい。
「機導砲で威力がアップしたワシのパンチを味わいやがれっ!
うおおおお! 漢 気 全 開っ!!!」
――ドンっ!
周囲を奮わせる程の衝撃と轟音。
ショッキングピンクの弾丸は、強烈な勢いでオーガへ直撃。
オーガの巨体が後方へ吹き飛び、意識を吹き飛ばす事に成功したようだ。
「おー……ほんとに飛んだぞ!
じゃあ、こっちも負けられぬのだ!」
「敵は混乱している様子です。このチャンスを逃してはなりません」
何が起こったのか理解できない様子だった残るオーガーに、ロウザと悠が迫る。
オーガーが着る鎧の隙間を狙って試作振動刀「オートMURAMASA」を突き刺す悠。
突然の痛みに暴れ出すオーガ。振り回す棍棒をロウザは巧みに避けながら、意識を自分に集中させる。
「ほんに悪いけど……倒させてもらいますわ」
「火力集中だ。オーガを倒せば周りのジャイアントも逃げ出すかもしれねぇ!」
桐壺はオートマチックST43で、巧真はアサルトライフルで遠距離からオーガへ攻撃を仕掛ける。
短期決戦を挑んだ歪虚であったが、機導砲を発射まで守り切ったハンター側の方に戦況は傾いていた。そしてそれは、一つの戦いが決着する事を意味していた。
「ファイアアロー……これで終わらせる」
リラはオーガの顔面を狙ってファイアアローを放った。
オーガは顔面を射貫かれて後方へ体を投げ出した。
動かなくなったオーガを見たジャイアントは、散り散りに逃走を開始する。
「敵は逃走を開始。ひとまず戦線の維持に成功したようです」
悠は逃げていくジャイアントを見て安堵する。
まだ作戦全体は進行中であるが、自分に与えられた役目は終わらせる事ができた。
一方、ヨアキムとミルフルールと言えば。
「我は強い子だから泣かぬ……のだ」
既に半べそをかくミルフルール。
その傍らでは地面からゆっくり立ち上がるヨアキムの姿があった。
いくらGAMマークIIなる甲冑を着ていても、衝突の衝撃に耐えられなかった。ミルフルールがプロテクションを付与していなければ二人とも重傷は確定していたであろう。
「……た、怠惰どもっ! このワシが、辺境の、ドワーフ王……ヨアキム……」
「小父殿。今、回復させてやるのだ」
予定通り名乗りを上げるヨアキム。
だが、既に敵は撤退した後で、周囲に敵は存在していなかった。
「本当に名乗るのね……まあ、唆したのは私だから、生きて帰って貰わないと夢見が悪いわ」
ヨアキムの律儀さに少々驚くリラ。
今更名乗りを上げても意味はないのだが、約束を守ろうとする辺りは褒めても良いかもしれない。もっとも、その律儀さが毎回騙される理由なのだが。
一旦は決着を見たハンターとドワーフ達。
だが、ここで新たなる馬鹿がようやく到着する。
「ばばーん! 真打ちの登場よ。さぁ、あたしが来たからには勝利確定よーん」
網タイツにガーターベルト。異様にテカテカと光る肌を晒すマッシブなおっさん――Mrs.ホージーが姿を現した。
何度見ても気色悪さは拭えない。
「うわ、出やがった。本当に何度見ても慣れねぇな」
巧真は必死で吐き気を堪えていた。
●
ホージーは生粋の馬鹿であっても歪虚。
遭遇した以上、戦いは避けられない。そんな中、リラは気になっている事を聞いてみる。
「ホージーさん、何故執拗にこの人を狙うのです?」
「あら-。そんな事気になっちゃう感じ? もしかして、あたしに気があるとか?
残念だけど、あんたみたいな小娘には興味ないから」
「あ。私も興味ないから。
でも……まさか、好きだからヨアキムさんの気を引きたいとか、そういうアレですか? 乙女なんですか?」
「ちょっ! さらっと酷い事を言っているわね!
あたしは元々ドワーフが嫌いなのよ。穴蔵に潜ってゴソゴソやって。卑猥じゃない。ばっちいし。だからあたしが今日この場で汚いドワーフを消し去ってやるのよ」
どうやらホージーは単純にドワーフの事が嫌いなだけのようだ。
以前の会話から考えてもGAMのデザインが気に入って奪おうとしていた。おそらく深い理由は存在しないのだろう。
「それにしてもわろてまうわぁ」
桐壺は少し離れた場所でホージーを笑い飛ばす。
自分が笑われた事に気付いたホージー。直様鋭い眼光を桐壺に向ける。
「あら? もしかしてあたしの事かしら」
「聞こえましたん? そんなはしたない形で、よう美貌の持ち主と言い張りますなぁ。その図太い神経に頭が上がりませんわ。流石、『歪虚一の美貌』を自慢するだけありんすねぇ」
桐壺はホージーを挑発した。
単純馬鹿のホージーは何も考えずに桐壺の方へ歩みよっていく。
「へぇ、ドワーフより先に死にたい訳?」
既にキレているホージー。
だが、未だ罠に掛かった事に気付いていない。
「ようこそ。歓迎しますえ」
桐壺は、挑発が成功した事で笑みが溢れる。
ホージーは辺りを見回す。
そこは海岸。足下には砂が広がっている。
「鹿東さん! 準備できました」
「そうですか。お願いします」
キュジィが悠に向かって叫ぶ。
そして悠の合図を受け、再び機導砲が唸り声を上げる。
――ドンっ!
再び揺れる空気。
機導砲から撃ち出された『それ』はホージーの頭上を通過するような軌道を描く。
同時に悠も飛び上がり、試作振動刀「オートMURAMASA」で『それ』を叩き割る。
ちょうどホージーの頭上で『それ』が破壊され、中身が降り注ぐ。
「……ぺっぺっ。何よ、これ」
「樽に砂を入れて撃ち出していただきました。砂塗れになった気分は如何です?」
「わはは! ロウザの魔法を見せてやる! 砂嵐だ!」
さらにロウザがスコップで周囲の砂をホージーにかけまくる。
その結果、ホージーの体に砂が大量に付着する。
「こんなので私が倒せると思っている訳?」
「やってみなきゃ分からねぇよ」
巧真はホージーに向けてアサルトライフルの引き金を引く。
次の瞬間、ホージーの肩を銃弾が射貫いた。
「痛っ! ……あれ? あたしのオイルは?」
「お前のオイル、もう消費期限切れだよ」
本来であれば弾丸を含む物理攻撃はホージーに対して無効だった。
だが、砂塗れとなったホージーはオイルの効果が失われていた。
「わはは! サンドバッグだ!」
ロウザがスタッフでホージーを滅多打ちにする。
いつもならこの攻撃も無効化するのだが、見事すべてヒット。今まで攻撃を躱す努力もしていない事から避ける術も知らないのだ。
「痛っ! 痛っ! 何よ、なんでこんな事になってるのよ! あたしは歪虚一の美貌を兼ね備えているのよ! こんな所で……」
「我の力、小父殿へ託そう。きっと……小父殿の拳が光って唸る。歪虚を倒せと輝き叫ぶ! だろう」
傷が回復したヨアキムに、ミルフルールがホーリーセイバーを付与する。
走るヨアキム。
目指す先は、変態Mrs.ホージー。
光輝く拳を振り上げた瞬間、ヨアキムの耳に飛び込む謎の声。
(ホーちゃんのオイルホーちゃんのオイルホーちゃんのオイルホーちゃんのオイル……)
呪いにも似た言葉は、何故かヨアキムの拳を更に輝かせる。傷は癒えても体力は消耗していたヨアキム。その言葉のおかげで攻撃が外れる気がしない。
込められる想い。
そして――放たれる。
「うおおお! 辺境は、赤く燃えているぅぅぅ!!」
意味不明な一言と共に炸裂する拳。
ホージーの顔面を貫き、体は吹き飛ばされる。
さらに追い打ちとばかりに悠が着地地点で試作振動刀「オートMURAMASA」を振るう。
ホージーの体に大きな傷が生み出され、これが致命傷となる。
「そんな……あたしが……」
力を失って歪虚として倒れたホージー。
その傍らで悠は、そっと呟いた。
「これも仕事ですから」
●
「……あ、あれがCAM、だと……」
ヨアキムは、戦慄していた。
リラと巧真に本物のCAMを見せられ、ヨアキムは小便漏らす勢いでショックを受けている。
「何で私まで巻き込まれてるの?」
「お前が適任だからに決まってんだろ?」
リラは仕方なしにヨアキムへCAMの説明を試みるが、ヨアキムは想い描いていたCAMの違いに愕然。リラの言葉が届いているかも怪しい状態だ。
「……俺も大概、頭イカれてんな」
巧真はCAMを見ながら、口から本音が漏れる。
元CAM操縦士だからこその言葉。
本物のCAMを見れば、ヨアキムが新たな何かを生み出すかもしれない。
その想いから発せられた言葉だ。
「今更じゃないの……? アンタも私も」
イカれていると自らを称した巧真に対し、リラは自嘲気味に笑った。
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依頼相談所 リラ・L=ローズレ(ka1123) 人間(リアルブルー)|17才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/02/26 23:14:10 |
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質問卓 ロウザ・ヴィレッサーナ(ka3920) ドワーフ|10才|女性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/02/22 14:02:33 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/02/22 01:50:11 |