クルセイダーの憂鬱

マスター:秋風落葉

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/02/27 09:00
完成日
2015/03/03 05:51

みんなの思い出

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オープニング

●とある戦場にて
「さすがロザリーさん! 聖女の二つ名は伊達じゃないですね!」
「褒めていただくほどのことではありませんわ。皆を常にバックアップし、戦いが無事に終わるようにする。それがクルセイダーの役割ですもの」
 ロザリーと呼ばれた女性は自分の白銀色の髪をそっと、照れくさそうに撫でる。ある少年はそんな仕草をする彼女に対し、頬が上気することを感じながらもまくしたてる。
「でもすごいです! さっきの的確な『レジスト』! 本当に助かりました!」
「ふふ、面映いですわ……でもお役に立てたのなら何よりです」
 若いハンター達に囲まれる、麗しい女性がいた。
 彼女の名はロザリア=オルララン。愛称はロザリー。
 先程彼女がそう言ったように、クルセイダーである。
 『ヒール』、『プロテクション』、『レジスト』。
 彼女は仲間を援護し、傷を癒す為のスキルを常に身につけていた。
 やがていつからか、彼女は一帯のハンター達から【聖女】という二つ名で呼ばれるようになった。
 今日も彼女は仲間の傷を治し、前衛への援護を欠かさず行った。
 彼女がいるから皆、安心して戦える。
 二つ名に恥じぬ容姿とスタイルの持ち主である彼女は、若いハンター達のあこがれであり、信仰の対象とすら言ってもよいほどであった。
 ロザリーがハンターオフィスに足を踏み入れると誰もが彼女を尊敬のまなざしで見つめ、そして仲間に誘われることを祈るのだ。

●とある一室にて
「あああああああああああああああああ!!! ストレスですわ!」
 大きな館の一室で。
 野獣のような叫びと共に、大きなうさぎのぬいぐるみに拳がめりこんだ。
 ホブゴブリンさえ一撃でのしてしまいそうなパンチを繰り出しているのは誰であろう、聖女ロザリーその人であった。
 彼女は私物であるぬいぐるみのお腹にドスッ……ドスッ……、と重いパンチを何度も叩きこむが、その怒りが晴れた様子はない。
「ああ……そろそろ限界ですわ……わたくしは……本当は前線で戦いたいのに……雑魔どもの脳天にメイスを思い切りぶち込んでやりたいのに……【聖女】などという肩書きがそれを邪魔する……」
 うさぎのぬいぐるみから離れ、ベッドの傍らに両膝をついてシーツへと顔を埋めてしまうロザリー。一時的な怒りは去ったものの、持て余した感情は唇から言葉となってもれ出てくる。
「なぜ……なぜ……こんなことになってしまったのでしょう……ああ、わたくしも本当はエンフォーサーになって敵と切り合いたかった……もしくはベルセルクになって野獣のように戦場を駆けたかった……」
 さめざめと泣くロザリー。それを何も言わずに見つめる大きなぬいぐるみ。なお、彼女がぬいぐるみに当たるのはこれが初めてではない。しかし、そんな主をぬいぐるみは何も責めることなく優しい瞳で見つめ続けていた。
 泣き声が部屋を満たす悲しい夜。彼女の召使達もこんな時は何も言わず、ロザリーをそっとしておいてくれる。
 ――怖くて近づいて来ない、とも言う。
 突如、ロザリーは顔を上げた。
「はっ!! そうですわ!! いいことを思いつきましたわ!!」
 その瞳は、もはや涙が零れてはいなかった。

●とあるハンターオフィスにて
「頼もう!! ですわ!」
 ハンターオフィスの中にいる者達は一斉に振り向き、そして同時にぽかんと口を開けた。開かれた扉の中央に立っていたのが仮面をつけた謎の人物だったからだ。
 皆の驚きを意にも介さず、その仮面の人物はずかずかとカウンターに向かって歩いてくる。
 白銀の長い髪をなびかせて、堂々と歩いてくるその人に受付嬢はやや怯えながらも、自分の職務を思い出し、口を開いた。
「ええっと、ご用件は……」
「もちろん依頼を探しにきたのです!」
 受付嬢が震える声で問いかけた時、仮面の奥からくぐもった威勢のいい声が聞こえた。どうやら女性らしい。
「な、なるほど、それで、あなたはどのような能力を……」
「よくぞ聞いてくれました! そう! わたくしはメイスファイティン!! が得意なエンフォーサーなのですわ! もしくはストラァァァィクブロウ!! が得意なベルセルクなのですわ!!」
 まくしたてると仮面の人物は受付嬢が手に持っているファイルを取り上げ、ぱらぱらとめくる。
 やがてあるページに目を走らせると満足そうに頷き、受付嬢に紙面を突きつけた。
「依頼はこれにしますわ! 数が一杯いてメイスの振りがいがありそうですから! もちろん仲間を募集します! そう! 回復が出来る方がいらっしゃると助かりますわね! なにしろわたくしは回復など出来ませんから! 敵を殴ることだけがわたくしの能力なのですわ!」
「は、は、はい……」
 元気のいい仮面に、受付嬢はかすれた声で答えるしかない。
「うふふ……ひさしぶりですわ……腕が鳴りますわ……」
「あの、まさかとは思いますが、ひょっとしてひょっとするとあなたはロザ……」
「用件は伝えましたわよ!? では待ってますわ!」
 びし! と指を突きつけ、仮面の人物はスキップでもするかのような足取りで去っていった。
 受付嬢はまだ呆然としつつも、凪いだ湖面のように静かなオフィスの中に、一石を投じた。
「ええと、今の仮面の女性と一緒に戦いたい方がいらっしゃったら、挙手をお願いします……」

リプレイ本文


「わたくしの名はロザ……いえ、ローズマリーですわ! 今日はよろしくお願いしますわ!」
 とある廃村の近くに集まったハンター達を前に、一人の人物が頭を下げた。おそらく女性だろう。おそらくというのは、顔が仮面に覆われているためだ。
「元気の良い方ですね……私もお仕事を探していたところで、回復が出来ませんがお供させていただいても宜しいですか?」
 ラピリス・C・フローライト(ka3763)の言葉に仮面の女性は頷いた。ラピリスは今回がハンターとして初の仕事である。
「もちろんですわ! では参りましょう! 腕がなりますわ!」
 メイスをぶんぶんと振っているローズマリーへと、アクセル・ランパード(ka0448)は視線を向ける。彼はエクラ教徒であり、とある聖女の噂はもちろんのこと、今回の依頼人である目の前の仮面の人物にも心当たりがあったが……その心中を察しているかのように目を逸らした。
「依頼としては、簡単な方かな? ともかく、敵を掃討すればよいだけだし」
 クリス・ガードナー(ka1622)の呟きの通り、今回の依頼は廃村に現れた雑魔の群れを駆逐すればいいというものだ。実際、複雑な問題はないはずである。
(ローズマリーが心行くまで戦う、その手助けだ。何れにせよ時が満ちりゃ、また癒しの聖女様だろうからな。その時に活躍して貰う為にも、ガス抜きに付き合うぜ)
 ローズマリーの正体を知っているらしいアゼル=B=スティングレイ(ka3150)。もちろんその正体のことを吹聴する気はさらさらない。とはいえ、口が滑ったらご愛嬌、くらいの考えである。
「ご同道させていただきましょう。回復役の一端を担います」
 クルセイダーであるフランシスカ(ka3590)が淡々と話す。その言葉にAnbar(ka4037)が口を開いた。
「癒しは任せたぜ。俺は前線で暴れさせて貰うからな」
「もちろんですわ! お任せ……」
 フランシスカをはじめとするクルセイダー達への要請をしたAnbar。なぜかその言葉に仮面の主が答える。ハンター達はローズマリーを見返した。
「ま、間違えましたわ! わ、わたくしからもお願いしますね!」
 慌てた様子のローズマリーは、追求を避ける為か早くも廃村へと向かい始めた。ハンター達もそれに続く。
「……隠しちゃいるが、あれは『聖女』か。仲間の支援だけで満足出来る人間なんぞ、そうそう居ないと思っていたが、やっぱり、そうか。それならば、それでかまわねえ。満足するまで戦わせてやろうじゃないか」
 ローズマリーの正体に気付いたAnbarは彼女の後ろ姿を見ながら小さく呟く。
 それぞれの思惑の中、村へと足を踏み入れた一団に、雑魔の群れが押し寄せてきた。


「接敵する前に、下準備と行こうかな?」
 クリスが『攻性強化』を、フランシスカが『ホーリーセイバー』をそれぞれローズマリーに使用した。
「こ、これですわ! これが最前線で戦う戦士ってやつなのですわ!」
 なぜか一人で興奮しているローズマリー。『ホーリーセイバー』によって光輝くメイスを、仮面の奥から眩しそうに見つめている。
「新しい剣と盾、その名と持つ意味に恥じぬ動きを身につけませんとね」
 剣と盾を新調していたアクセルがそれらを構えなおす。
 ハンター達へと真っ先に駆けてきたのは野犬型の雑魔だった。多種の雑魔が入り乱れる中、最もその数が多い。

 突き進め、我らが神の名の下に。
 下せ、神の鉄槌を。進め、惡を討つ天道を。
 神の息吹は汝が身を清め、神の光は汝が路を遍く照らす。
 いざ征かん、戦いの途へ。

 アゼルが口ずさむ凱歌に導かれるように、ローズマリーは前へと出る。Anbar、アゼル、フランシスカも彼女と並ぶように前線を構築した。なぜか、マギステルであるレオナルド・テイナー(ka4157)も彼らのすぐ後ろ、前衛側へと立っていた。
 奄文 錬司(ka2722)はリボルバーを引き抜きつつ、全員に『ヒール』が届くような位置取りを心がけていた。皆がんばれー、と内心呟きながら。
 あらかじめ『地を駆けるもの』と『闘心昂揚』で己の戦闘力を強化していたAnbarが迫り来る敵の真っ只中へと飛びこんだ。ボルテクスアックスが横薙ぎに振るわれ、低級の雑魔は一振りで消し飛んだ。
 ローズマリーもAnbarに負けじと突っ込んだ。
「ストラァァァィクブロウ!」
 仮面の奥から高揚した叫びをあげるローズマリー。
 支援魔法により強化されているローズマリーとそのメイスの一撃は、野犬型の雑魔をあっさりと粉砕する。
「……どうした、姐さん、腰が引けてるぜ。そんなんじゃ存分に雑魔を喰らう事もできねえぞ!」
「なんの、まだまだですわ!」
 けしかけるようなAnbarに負けじと声を張り上げるローズマリー。
 ローズマリーへと横合いから襲い掛かろうとしていた雑魔の一体も、アゼルの『ホーリーライト』をその身に受けて吹っ飛んだ。
 ローズマリーに対して、不満も苦痛も感じさせないようにする。それがアゼルのこの戦いにおいての意気込みであった。


 ちらっ、ちらっ、と周囲を警戒しているレオナルド。村に乱立している瓦礫に隠れている雑魔を見た瞬間、レオナルドはさっと手を振る。
「隠れてたらメイスで殴れねぇだろうが」
『ウィンドスラッシュ』が彼の手から放たれ、瓦礫と共に雑魔を切りさいた。弱っていた材木はその衝撃により、雑魔を下敷きにして崩れ落ちる。レオナルドはその光景ににこにこと笑みを浮かべる。
(私も前衛で拳を振るっていたいですが、今回は仕方ありませんね)
 内心そう呟きながら放たれたラピリスの『機導砲』が一筋の光となり、野犬型の雑魔を貫いた。数を減らすことを優先している彼女の目論見通りである。
 錬司のリボルバーも火を吹き、雑魔の胴体へ命中する。
 彼は前衛と戦っている雑魔ではなく、その一歩後ろや横合いで機を窺ってる敵を主に狙っていた。そのおかげか、敵の動きはずいぶんと乱れている。
 それでも前線の間を抜き、後衛の側へと近寄ろうとする雑魔はいたが、その前に剣と盾を構えたアクセルが立ちふさがる。
「済みませんが、付き合ってもらいますよ!」
 彼は盾により野犬雑魔の攻撃を受け止めると、そのまま強く押し込んで敵の体勢を崩した。盾を用いたスキル、『シールドバッシュ』である。
 そこにクリスの銃、デリンジャー「デッドリーキッス」から弾丸が放たれる。
「……孤立しない様にだけは気をつけたいね」
 まだまだ数の多い雑魔達を眺めながら、クリスは周囲への警戒を怠ることなく呟いた。
「剣の聖導士の双刃、その身で受けていただきます」
 右手に七支刀。左手にダガーを構えるフランシスカ。彼女へと襲い掛かってきた雑魔に対し、『ホーリーセイバー』のかかった左右の武器が空中に白い軌跡を生み出した。
「ご要望通り八つ裂きにして差し上げます」
 宣言した通り、八つに切り裂かれて消滅する雑魔。ひるんだ他の雑魔は彼女から距離を取る。
「なるほど、八つ裂きよりも蜂の巣をお望みでしたか」
 そこに彼女の『シャドウブリッド』が放たれ、敵はまた一体消滅した。しかしまだまだ敵の数は多い、後衛側にも新たな雑魔が突っ込んでくる。
「私が対応しますね」
 なぜか言葉の端に喜びを滲ませながら、ラピリスが一歩前へと出た。拳に装着されているのはナックル「ヴァリアブル・デバイド」。
 野犬型の雑魔は彼女へと襲い掛かる。しかし、相手はあくまで動物の雑魔にすぎず、基本的な行動もそれに沿ったものであると予想していたラピリスは、ナックルでその攻撃を受け流しつつ、返す拳を放った。



 いつの間にか、レオナルドの背には2対4枚の翼が生えていた。彼の覚醒状態を示すそれはその時々によって白い翼であったり、黒い皮膜の翼であったりと様々な形状を取るというが、今では天使を思わせる純白の翼であった。
 乱戦の真っ只中、彼は己に『ストーンアーマー』をかける。元々肉弾戦を不得意とする彼であったが、その動きはスキルの効果によってさらに重くなってしまった。
 そこに駆け寄る一体の雑魔。飛び掛ってきた獣の爪がレオナルドを狙う。もちろん彼は回避できずにその一撃を受けた。
「やだもういたぁい! 僕ちんの顔に傷が!」
 と叫び、よろめきながら、レオナルドはローズマリーの顔をちらっ、ちらっ、と窺った。彼が受けた傷を見て、ローズマリーはレオナルドに手をかざして祈りの言葉を捧げはじめ……動きが硬直した。今の自分は『ヒール』を使用できないことを思い出したのである。
 その一瞬の空白の後、レオナルドの傷は即座に癒された。『ヒール』の効果である。しかし、それはもちろんローズマリーが放ったものではなかった。
 傷の治ったレオナルドはさっさと雑魔から距離を取る。
「それが貴女のほんとの気持ちなのね」
 ぽつりと小さな呟きを残して。
「ローズマリー!」
 呆けたように立ちすくんでいたローズマリーは己の名を呼ぶ声に現実へと引き戻された。目の前には猪型の雑魔が迫っている。危険を知らせる声のおかげで、彼女はその突進を逃れた。
「た、助かりましたわ! アゼルさん!」
 アゼルはその言葉に軽く手を振って答え、猪雑魔へとフレイルを振り下ろす。鉄塊は命中したものの、その手ごたえはあまり芳しくは無かった。
 野犬が多数を占めていた雑魔達。その数はずいぶんと減っていたが、まだ手ごわそうな敵が残っている。目立つのは先程の猪型の雑魔。数は二体。
 クリス、フランシスカ、Anbarは能力の向上を行うスキルを味方、または己に使用する。
 猪をはじめとする雑魔達はハンター達を目掛けて再び襲い掛かってきた。
 Anbarの斧が猪の胴体へと食い込む。しかし猪は痛みを怒りに変えて彼へと反撃した。突き上げるような牙の一撃を受け、よろけるAnbar。即座に錬司が『ヒール』を使用する。
 フランシスカがAnbarの隣に立ち、左右の剣を自在に振るう。先程Anbarが与えた傷を抉るように、刃は雑魔の体を刻んだ。
 アゼルとローズマリーがもう一体の猪を受け持ち、二人の得物が敵を打った。
 アクセルは後衛側に抜けてこようとしている敵を遮るように立ち、武器を突き出した。聖剣「ラストホープ」は雑魔の肉を切り裂き、消滅させる。レオナルドは『ウィンドスラッシュ』を、ラピリスとクリスは『機導砲』をそれぞれ近づく敵へと放った。
 やがて猪を含む雑魔達は壊滅し、皆がほっと一息ついたその時。
「危ない!」
 瓦礫の隙間を縫うように突然姿を見せた蛇の雑魔。それが大きな口を開けてフランシスカを一呑みにしようとする。常に周囲の状況に留意していたクリスの警告が功を奏し、フランシスカは無傷で蛇の牙から逃れた。
 必殺の一撃を避けられた蛇を囲むのは九人のハンター。巨大な蛇は決して弱い雑魔ではなかったが、それでも彼らによって撃破されるのにそう時間はかからなかった。


 戦いが終わった後スキルで傷を癒し、お互いの健闘を讃えあう中、レオナルドは一人、消滅せずに死骸が残っている雑魔達を埋葬しようと穴を掘っていた。
 ローズマリーについて思うところがあったアクセルは、仮面の人物へと話しかける。
「お疲れ様です、かなりお強いんですね」
 フランシスカも同じように彼らの側にやって来る。
「見事なメイス捌き、感服いたしました。さながら戦乙女(ヴァルキリー)ですね」
「あ、ありがとうございます! 戦いの腕を褒められたのは初めてかもしれません!」
 二人の賛辞に酔いしれるローズマリー。
「ただ……鬱憤めいた物を感じたのですが、どうかなされたんですか?」
「なななな、なんのことでしょう? わ、わたくしにはなんの悩みもありませんわ!」
「なら、ここから先は独り言です」
 アクセルは少し脇を向いて言葉を続けた。
「以前知人に行ったアドバイスですが……他人が美化したイメージが元でストレスを溜め込み、鬱憤晴らし、では問題の根本的解決には至りません。負傷者を守るため、自分が前に打って出るのも手ですね」
 ローズマリーは何も言わずに耳を傾けている。
「……自分の腕で雑魔を葬った感触はどうだ? 格別だろ。歪虚を葬るのに体裁など構っているのは馬鹿馬鹿しい、って姐さんは思わないか?」
 続いて言葉をかけてきたAnbarの顔を見返すローズマリー。確かに、最前線で戦っていたとき、メイスを振るうことで心のもやもやが晴れていったのは間違いない。
 クリスも頷き、仮面の依頼主に笑顔を見せた。
「ともかく、ローズマリーが元気そうで何よりです」
 ガス抜きって、大事ですよ。と言い添えるクリス。
 錬司も紙巻煙草を取り出しながら思う。
(聖導士ってことで癒しの術を期待されたこともあるんだろうが……さて、今後も殴りオンリーで行くつもりなのかね? ま、俺みたいに普段から酒とタバコと女で不摂生やらかしてるのと比べたら遥かにマトモだけどな)
 一歩近づく錬司。
「今回の仲間達のように、前衛で戦いつつ回復も担う、というスタイルもありだと思うがな」
 ま、あんたがクルセイダーだとしたらの話さ、と付け加えると、それ以上は何も言わずに紙巻煙草を口にする。
 聖女の噂を耳にした程度だったラピリスも、自分も前に出たいと思うタイプだからか、同好の士を見るような瞳をローズマリーに向けていた。
 フランシスカは悩み始めたらしいローズマリーに口を開く。
「攻撃は最大の防御。回復や援護だけが、味方を守り、助ける行為というわけではありません」
 『剣の聖導士』の二つ名を持つフランシスカは、その名の通り前線で敵に剣を振るっていた。しかし、敵を切り伏せることだけに囚われるのではなく、仲間の様子に気を配り、時としては支援も適宜行っていた。
「私は私の全力で以て戦う。次にご一緒する機会があれば、あなたの全力、再び頼りにさせていただきますね」
 まだ迷いがあるのか、ローズマリーは何も言わずに頷くのみだ。
「ローズマリーの正体は知らねえが。最後に祈りだけな」
 明らかに正体に気付いていたアゼルが、祈りの言葉を朗々と詠唱する。

 ――祈れ、己が信じる神に。そして進め、己が歩むべき道を。そして頼れ、時には我等を。
 生きて戦場に立つ為に。人々を生かし、立たせる為に。

 静かに聴いていたローズマリー。その耳に、とある男が口ずさむ聖歌が流れてきた。

 襤褸く廃れ忘れ去られた十字架を立て
 こんもり盛られた土はまるで殉教者の様

 雑魔を埋葬していたレオナルドの声であった。ローズマリーは彼の方を振り向く。
「さて気持ちは固まった? 聖女であろうと無かろうと十字架は立つ、ね ふふ」
 にこりと笑うレオナルドの背には、まだ覚醒状態を示す2対の翼が生えていた。
 その時ローズマリーに見えた翼は、純白のそれか、あるいは?

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重体一覧

参加者一覧

  • 救世の貴公子
    アクセル・ランパード(ka0448
    人間(紅)|18才|男性|聖導士

  • クリス・ガードナー(ka1622
    人間(蒼)|18才|男性|機導師

  • 奄文 錬司(ka2722
    人間(紅)|31才|男性|聖導士
  • 粗野で優しき姉御
    アゼル=B=スティングレイ(ka3150
    エルフ|25才|女性|聖導士
  • 幸福な日々を願う
    フローラ・ソーウェル(ka3590
    人間(紅)|20才|女性|聖導士

  • ラピリス・C・フローライト(ka3763
    エルフ|20才|女性|機導師
  • 願いに応える一閃
    Anbar(ka4037
    人間(紅)|19才|男性|霊闘士
  • 狭間へ誘う灯火
    レオナルド・テイナー(ka4157
    人間(紅)|35才|男性|魔術師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/22 21:01:40
アイコン 作戦相談の場
奄文 錬司(ka2722
人間(クリムゾンウェスト)|31才|男性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/02/27 01:03:26