• 不動

【不動】同盟軍怠惰包囲作戦・機動反転

マスター:のどか

シナリオ形態
ショート
難易度
不明
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/02/28 19:00
完成日
2015/03/09 05:27

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

「さて、いよいよだね」
 同盟海軍の船舶が待つ地点に向かう道すがら、ダニエル・コレッティ陸軍中佐は小さく咳払いをしてみせた。
 眼前には3体のCAMが、偽装工作を施された状態で運ばれている。
 搭乗者は3名。いずれも特機隊のメンバーだ。
 ジーナ・サルトリオ陸軍軍曹。
 ヴィットリオ・フェリーニ陸軍大尉。
 ディアナ・クリティア・フェリックス海軍大尉。
 創設後、CAM実験場でのお披露目を経て、正式に編成された同盟陸軍の特殊機体操縦部隊、通称「特機隊」。
 その第1小隊の主力メンバーが、今ようやくここに揃った。
「ジーナと2人で始まった特機隊だけど、ヴィオ大尉が編入して、ディアナさんも合流して、ようやく隊らしくなって来たねぇ」
 どこか感慨深い様子でうんうんと頷きながら自らの部隊を眺め、ダニエルはそう呟いた。
「隊長! 私、訓練して前よりもずっと上手くCAMを扱えるようになったんです。だから期待していてくださいね!」
 隣を歩くジーナが、そう答えた。偽装撤退中なので、今はダニエルの隣を歩いている。
 大きな戦闘を前に不安もあるのだろうが、それ以上に希望に満ちた、そんな上ずったトーンの声。
 設立メンバーである彼女は、この時を望んでいたのだろう。CAMの、そしてパイロットとしての、肩を並べて闘う仲間達の存在を。
 だからこそ戦場への不安があっても、それ以上に期待の方が大きいのだろう。
 3人のパイロット、そしてこの機体があれば、きっと凄い部隊になるに違いない。
 ヴィオ大尉もディアナさんも素敵な人達なのだから。
「――コレッティ中佐」
 暫くの間を於いて、ヴィオが声を発する。
「自分とフェリックス大尉にとっては、これが特機隊としての初任務。中佐のご采配、楽しみにさせて頂きます」
 こちらはジーナと違い、既に大小問わず多くの戦いを経験して来た身。
 流石の落ち着きと静かな闘志が上手い具合に混ざり合った、頼もしい声である。
「まー、今回俺はお留守番だから、直接どうこういう事はないんだけどね」
 とは言ったものの、ダニエルはうーんと腕を組んでひとしきり唸った後にポンと手を打って口を開く。
「基本的には好きにやって貰って構わないけど、戦場では互いのフォローを忘れないことね。それと、とりあえず生きて帰ってくること。ディアナさんの歓迎会もしないといけないしねぇ」
 それだけ言うと「俺からの指示は以上」と言って、満足げな表情を浮かべた。
「……了解。戦果を期待してください」
 そんなダニエルに対してヴィオはそれだけ言うと、静かに闘志を高め直す。
「隊長、作戦の確認ですが。合図があれば、すぐに搭乗し発進。ハンターと共に北西の包囲網へ向かい、現地の戦力と合流した上で怠惰の軍を撃滅する――以上でよろしいでしょうか」
 入れ違いに響く艶やかな声。その主は、特機隊の新隊員・ディアナだ。彼女は杖を突いて同行している。
「そんな感じだ。ただ、包囲がどの程度完了して、どの程度効果を発揮しているのか……それは現地で合流してみないと分からん。完璧な包囲の中で撃滅に集中できるかもしれないし、はたまた物凄く劣勢の中で闘う事になるかもしれない。どうなるのかは、俺にも分からないのよ」
 そう、お茶を濁すように苦笑しながら答えるダニエルであったが、それはおそらく彼の本心だ。
 実際、出てみないと分からない。
 戦場も、そしてそれに向かう道中も。
「問題ありません。状況で戦果が変動するなど二流の仕事です。敵の戦力がどうあろうと、慣れない武器を使おうと、挨拶を交わしたばかりの部隊で戦おうと」
 そう、ディアナも冷静――どちらかと言えば、ドライに近いトーンでそう答える。
「黒狐塾時代の噂はかねがね。期待しています、『カラス様』」
「『鴉』『黒羽根』――懐かしいわね。そう言えば、あなたも黒狐塾出身だったかしら、ヴィオ大尉」
 ヴィオの言葉を遠い昔の事のように口にしながら、そう切り返すディアナ。
 その正確無比な射撃の技術とトレードマークであった黒い羽飾り、黒髪黒眼の美しい風貌からそう呼ばれていた黒狐塾時代。
 しかし、ディアナは「でも」と付け加えると、それらの記憶をかき消すように言葉を続けた。
「黒鴉は既に地に落ちたわ。今の私は特機隊のディアナ・クリティア・フェリックス大尉よ。よろしくお願いするわ、ブシドー大尉」
 そう、自分に言い聞かせるように口にすると、すぐに口調をドライなそれに戻して返事をする。
「バックが居るのは単純に心強い。前は俺とジーナ先輩に任せてくれ」
「そうですよ! 難しい事はよく分からないですけれど……今回活躍できれば、きっと皆も特機隊って凄いって思ってくれると思います!」
「あー、それはありがたいね。そしたら予算ももうちょっと下りるかも」
 ヴィオの言葉にどこか的外れな返答を付け加えるジーナであったが、ダニエルの一言でなんとなく丸く収まったような気がする。
「これが特機隊……ね」
 そう呟いたディアナの言葉に篭った意味は誰も知る由は無かったが、彼女の言う通り、これが特機隊。同盟軍陸軍の未来を担う、機動兵器部隊である。

 やがて、輸送班のひとりから伝令が飛んだ。ここの地点から北西へと取って返すという。
 ついに、その時が来たのだ。ダニエルは隊員に対し、CAMへの搭乗を急かす。
 被せられた幌が外されると、そこには万全の状態で寝かされているCAMの姿があった。
「へぇ、この地点でね……ハンターさんもよろしくね」
 ダニエルは何かを悟ったが、あえてそれを口にはせず、ハンターに頭を下げた後、CAMへと向き直る。
「さて……こう言うときくらいは、隊長らしくビシッと締めてみようかな」
 特機隊の隊長は再びコホンと咳払いをすると、立ち上がったCAM3機へ向かい、こう言い放った。

「――特機隊第1小隊、出撃!」

リプレイ本文

●護送隊、反転せよ
 ゴツゴツとした荒地を2台のトラック、2騎の騎馬、そして3機のCAMが砂埃を上げながら駆け抜ける。
「うわぉっ、揺れる……っ!」
 段差でガタリと跳ねたトラックの荷台で、その縁に張り付きながらティト・カミロ(ka0975)は額に一筋の汗をかいた。
 魔導トラック――とは言ったもの、技術も性能もまだまだ質素なものである。
「まぁ、我慢だ我慢。自分の足で走らなくって良いだけマシってものだよ」
 星見 香澄(ka0866)は隣のトラックで騒ぐティトの様子を耳で聞きながら、その瞳は遥か見渡す周囲の大地へと走らせた。
「さて、右舷に雑魔2体だ。頼むよ」
 そう、短伝話に言葉を通すと同時に2発の銃声が戦場に響く。
 その銃声により遠方の雑魔が音も聞こえず倒れ伏したのを確認すると、香澄は満足げに頷いた。
「ナイスショット」
『それが仕事だからね』
 そう、受話器から漏れるのは、ネイハム・乾風(ka2961)の声だ。
 感心するように眺めるティトの隣で、彼は表情一つ変えずにライフルへと次弾を装填する。
「銃ってのは凄いよな……近づけないためなら俺でも使えそうかな?」
「威嚇だけなら簡単なもんよ。狙いをつけようとしたら、技術も要るけど……ねっ!」
 そうティトに答えながら、引き金を引く鷹代 由稀(ka4271)。
 彼女の覗き込むサイトの先で別の雑魔が1体、もんどり返って動かなくなった。
「それにしても、動いてるCAMを見るなんて久しぶりだわ……異世界で見るってのもまた、不思議な気分だけど」
 後方の接敵に意識を向けながらも、後ろをついて来るCAMへとついつい目が行ってしまう。
(……あの子、こっちを見てる?)
 ディスプレイの映像越しに、ディアナ・C・フェリックス(kz0105)は由稀と目が合った。
(いえ、見ているのはこっち……かしら)
 そう彼女が視線を配るCAMの右腕には、人間からすればあまりに長大な、CAM用のスナイパーライフルが握り込まれていた。
「近・中・遠距離の組み合わせですか。バランスのいいチームですね」
 同じように、後方を走るCAMとその装備を見上げながらユージーン・L・ローランド(ka1810)は思わず零れ出たように口を開いた。
「あれをどう見る、ジーン」
 トラックの縁に背中を預けながら、ジル・ティフォージュ(ka3873)は傍らの弟へとそう投げかけた。
「願わくば、その力が歪虚のみに向けられん事を……かな」
「なるほど、同感だ。だがなジーン、あれらとて所詮は同盟の……ならば――」
 あえてその先は言葉にしなかった。
 しかし、ユージーンには伝わったようで、こくりと頷き返す。
「その時の事を考えれば、この依頼、終始有意義に過ごせると思わないか?」
 そう言って縛り込んだ髪を風に靡かせて、ジルもまた不敵な笑みを口元に浮かべながらCAMへと視線を向けていた。
「それにしても、思ったより少ないですね、敵」
 不意に、CAMから響く少女の声。
 声の主、ジーナ・サルトリオ(kz0103)はやや肩透かしと言った様子でそう呟いていた。
「それだけ包囲網の方が上手く行っているのだろう」
 そう、ヴィットリオ・フェリーニ(kz0099)はやや宥めるような口調で年下の先輩へと答えた。
 反転行動を開始して小一時間。
 今まで大規模な歪虚の妨害活動が入る事は、そうそう無い。
 時折中規模の集団が迫ってくる事もあったが、それもすべてハンター達によって的確に対応された。
「功を急ぐのは分かるけどよ、あんた達にはこの先が本番なんだぜ?」
 そう、自らの騎馬でジーナ側に併走しながら、ジャック・エルギン(ka1522)は彼女の機体に向かって声を掛ける。
「でも、初めての隊としての任務で頑張りたいじゃないですか! そういう気持ち分かりません?」
 逆にジーナに問いかけられ、ジャックはゆっくりとその剣を抜き放ち、眼前へと掲げ上げた。
「もちろん、楽しみに決まってるじゃねーか。心の底からな」
 剣一本で余に出てやろうと家から飛び出した鍛冶屋の倅にとって、歴史に残るやもしれない一戦に名を連ねている事がどれだけ誇らしい事か。彼とて、同じであった。
「それにしても、騎馬隊と自動車の共同作戦だなんて……ホント、歴史は繰り返すって言うのかしら」
 慣れた様子で自らの愛馬を駆りながら、筱崎あかね(ka3788)はそうぼやいていた。
「その姿、何か記憶に引っかかると思ったが……そうだ、ヤブサメだな」
 そんなあかねの姿に視線を向けながら、ヴィオもまた、思い出したように口を開く。
 馬を駆り、矢を射る日本人――なるほど、彼にとっては相違なく、いつか音に聞いたブシドーの姿の1つに見えたらしい。
「正確には違いますが、説明してる暇はありませんね」
 言いながら、梓弓を引き絞る。
 ひょうふっと放たれた矢弾は山なりの軌道を描いて、とてとてと迫り来る亜人雑魔の脳天に深く突き刺さった。
「見事だ、魂を感じる」
「ありがとうございます」
 そう、残心まで忘れない彼女の姿はまさしく、遥か世代を超えた武士の面影を受け継いでいた事だろう。

「しかし、恐ろしいくらいに順調だね」
 香澄は目を酷使してこった肩を回しながらそう口にすると、見張りの交代にとユージーンへ手を振りかける。
「いや……少し待て」
 見張りを交代しかけて、それを遮るようにジルが口を開いた。
 それと同時に、ジャックもまた都合悪そうにその眉を顰める。
「空気がピリピリしてんな……」
 その2人の言葉は、これから立ちはだかる壁の存在を予期するものであった。

●対抗兵器
 それが現れたのは突然の事だった。
 初めにその姿を目したのは、もちろん見張りに徹していた香澄である。
 前方に佇む4つの人影――否、それは『人』と言うにはあまりに大きすぎる、怪物の姿であった。
 怠惰の偵察部隊だろうか。
 既に目的のナナミ河周辺では大規模な戦闘が起こっているハズであるにも関わらず、何かを探す様子で周りを見渡すように不気味な瞳を転がしていた。
「それだけ戦場が近いという事なのでしょう」
 そう口にしたユージーンの言葉に、他のハンター達は無言で息を呑んだ。
 一方、その巨体を持つのは怠惰だけではない。CAMもまた同じ事である。
 周囲を見渡していたサイクロプスの1体がピタリと此方の方角を見て、その瞳を凝らした。
「気づかれた、来るよ!」
 既に臨戦態勢でライフルの引き金を絞りながら、由稀が叫んだ。
 遠方で2体のサイクロプスが背中に担いだ弓を取り出し、矢を引く。
 その一方で別の2体のオーガが、棍棒を片手に大地を揺らしながら此方へと駆け出した。
 先手に、オーガの一体がその腕を高々と振り上げると、手に持った棍棒をジーナ機へ向けて投げつける。
 ゴウと空を切る音を響かせながら飛来した棍棒を、ジーナ機は寸ででかわしてみせた。
「あぶないなぁ、もう!」
 その攻撃とすれ違うように2発の銃声が轟く。
 銃弾はそれぞれ棍棒を投げつけ、がら空きになったオーガの腹部へ深々と打ち込まれた。
「ヘイトを稼いでくれるって言うのは助かるね。ちゃんと避けてくれるなら……」
 ネイハムは眼前の敵を見据える。
 さすが巨大なだけ体力もあるのか、倒れる様子は無い。
 それどころか、身を持って行かれるかのような衝撃と共に、トラックが激しく揺れ動いた。
「なんだ……!?」
 叫ぶティトの真上から、巨大な塊が振り下ろされる。
 身構えるように太刀を掲げ、その塊を真っ向から受け止めるティト。
 武器越しにも伝わる衝撃に、全身の骨が、筋肉が、軋みを上げる。
「こいつら、トラックを!」
 衝撃から体勢を立て直しながら、由稀はすぐに前方へと魔導銃の銃口を据える。
 あろう事かオーガ達はそれぞれ一台ずつトラックの正面へと立ちはだかり、その身をもって走行を遮ったのだ。
 ティトを襲ったのは、その状態のまま彼に振り下ろされたオーガの拳であった。
「今、引き剥がすから!」
 由稀はそのまま魔導銃を荷台の足元へと投げ捨てると、懐から拳銃を取り出して巨大な腕へと乱れ撃つ。
 が、全く動じる様子が無い。
「それなら……!」
 同じく拳銃へと持ち替えたネイハムの銃口が真正面のオーガ本体へと向く。
 放たれた銃弾が、真っ直ぐにオーガの額を捉えた。
 が、貫通までは至らなかったのか、オーガはニヤリと口を歪めると、ティトを押しつぶそうと今以上にその拳へと力を込める。
「ティトッ!」
 香澄が叫ぶも、彼らのトラックに集中する訳にもいかない。
 こちらもこちらで、オーガによる足止めを喰らっているのだ。
「離しなよ、デカブツッ!」
 彼女の機導砲が眼前のオーガの顔面を包み込む。
 当たり所が悪かったのか、オーガはその痛みに苦しむ様子で、悶えるように暴れまわる。
「効いていますね、これなら――」
 その時、ユージーンがその一撃を予期できなかったのは、攻撃に感情が宿っていなかったからだろうか。
 それでも現実は残酷に、彼の顔面目掛けて、振り回された棍棒が迫った。
 声を出す間も無く、巨大な鈍器が眼前を覆い――それでも、その衝撃が身を襲う事は無かった。
「――ッ!」
 代わりに横腹に強い衝撃を受け、荷台の上へとその身を投げ出される。
 倒れ行く視線の先に写ったのは、自らの代わりにその顔面に棍棒を受け、遥か後方へと吹き飛ぶ兄の姿であった。
「貴様……よくもッ!」
 騎馬を翻したあかねの一矢が、棍棒を振りかざしたその腕を射抜く。
 オーガは幾分落ち着いた様子でその矢を掴み、バキリと根元から折ってみせた。
「ジル……ッ!」
 状況を飲み込み、兄の姿に向かって弟が叫ぶ。
 この距離なら届く。
 早く治癒を――咄嗟に指輪を振りかざしたユージーンを、戦場に響く怒声が遮った。
「見誤るなよ、ジーン……ッ!」
 その言葉にはっとして、周囲を見渡すユージーン。
 それは遥か遠くで命からがらその身を起こすジルの言葉であった。
「お前の回復は生命線だ……その事を忘れるな!」
 その言葉が何を意味するのか、ユージーンには咄嗟ながら理解ができた。
 彼はジルの姿を瞳で追わぬようにきつくまぶたを閉じると、代わりにもう一台のトラックの荷台へと手を振りかざした。
 解き放たれたマテリアルの祈りが、ティトの軋む身体を包み込む。
「助かった! これで……もう少し踏ん張れそうだ!」
 傷を癒されたティトは雄叫びを上げるように一つ大きく声を上げると、全身全霊を持って受け止めた拳を押し返し始める。
 その力に、オーガの体が僅かに揺らいだ。
「良く押し返した、後は任せろッ!」
 体制を崩したオーガの横っ腹へとジャックの騎馬が飛び込んだ。
 高々と振り上げられた剣はマテリアルにより淡い輝きを放ち、斬ると言うよりはほぼ打ち付けるようにオーガの横っ腹へと叩き込まれる。
 その一撃にぐらりと力を失ったオーガは、大きな地響きと共に大地へと倒れ伏した。
「眼前はあと一体……!」
 由稀はすぐさま放り投げた魔導銃を掴み取ると、その照準をもう一方のオーガへと定める。
 が……その視界を別の巨大な影が遮った。
「ハンターさん達だけに、荷は負わせないんだから……ッ!」
 オーガ目掛けて一機のCAMが突進する。
 怠惰の巨人に対してすら、CAM――デュミナスの方がなおも巨大であった。
 それはまるで大人と子供のプロレスのように、CAMの渾身のエルボーを真正面から受けたオーガの体は軽々と吹き飛ばされた。
「チャンス、一斉射撃を!」
 そう叫んだ香澄の言葉と同時に、CAMとハンター達の銃器が一斉に火を噴く。
 文字通り蜂の巣となったオーガは、力なく大地へと身を横たえた。
「多少時間を食ってしまったけど、まだ取り返せます。すぐに進軍を!」
 叫ぶあかねの言葉を受けて、トラックはすぐにエンジンを唸らせた。
 その際、ユージーンは一瞬後方のジルの方へと視線を向けるも、意を決したように視線を正面へと戻す。
 今の自分の役割りを、その胸に刻んで。
「とは言え……まだあの2体が残ってるのですけどね」
 前方で弓を番える2体のサイクロプスを前に、あかねは口惜しそうに歯を食いしばる。
 これをもう一回……考えただけでも気分が悪い。
 しかし、その眼前で巨人の1体が仰け反るようにして吹き飛ばされたのが目に入った。
 それと、戦艦の主砲のような轟音が周囲に響き渡るのはほぼ同時の事である。
 驚いて音のした方へ振り返ると、他のCAMから数歩ほど後方でスナイパーライフルを構えるディアナ機の姿があった。
「フェリックス大尉、どうして足を止めた……!」
「この先、またあの巨人に足止めを喰らう可能性を考えたら、今数秒を労してでも無力化したほうが好都合だと思わないかしら?」
 ヴィオの言葉を軽くあしらいながら、ディアナ機はすぐに立ち上がるとやや全力で戦場を駆け抜け、すぐに隊列にへと追いつく。
「あの数秒で的確に狙いを付けるか……やるね」
 そう口にしたネイハムの視線の先には、背中を地に付けながら頭を押さえながら悶える巨人の姿があった。

 その後、悶える怠惰兵を含めた2体の巨人へと火力を集中したハンター達は、危なげ無く2枚目の壁を突破したのだった。

●暗雲の戦場へ
 怠惰の偵察部隊を振り切った一団の眼前に広大な戦場が広がった。
 ハンター、そして多数の同盟海軍によって敷かれた包囲陣によって、怠惰の軍勢が見事に押さえ込まれた戦場が。
「本当にありがとうございました! 皆さんのおかげで無傷でこの時を迎える事ができました!」
 感極まったようなジーナの声が辺りに響き渡る。
「その言葉は、これだけの包囲を維持している彼らにも伝えて欲しいね。おかげでこっちはかなり楽させて貰ったわけだし」
 同様に魔導銃に弾を込め終えた由稀の言葉に、ジーナはコックピットで大きく頷いてみせた。
「だが、過去形ってのは、少し気にいらねぇな」
「えっ?」
 不意のジャックのダメ出しにジーナは戸惑うように声を上げる。
「俺達はまだまだやれる。ここでお別れってのは無いぜ」
「ですけど皆さん、私達の代わりに戦闘で傷を……」
 その傷に大小はある。
 それでも、全くの無傷というハンターはここには居ない。
 皆、CAMの盾となり、剣となり、弾となり、ここまで彼らを護り通したのだ。
「俺達の身体は鉄じゃねーがよ、ハートの方はCAMより頑丈だぜ?」
 そう言ったジャックの言葉に、特機隊の3人はやや面喰らったかのように静まり返る。
 が、すぐにジーナの快活な声が響き渡った。

「――はいっ! 力を合わせて、怠惰軍を倒しましょう!」

 その言葉に応えるように、ハンター達は一斉にトラックから飛び降りるのであった。

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MVP一覧

  • 戦場の眼となりて
    星見 香澄ka0866
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギンka1522
  • 亡郷は茨と成りて
    ジル・ティフォージュka3873

重体一覧

参加者一覧

  • 戦場の眼となりて
    星見 香澄(ka0866
    人間(蒼)|25才|女性|機導師
  • 勇敢と献身に混在する無謀
    ティト・カミロ(ka0975
    人間(紅)|16才|男性|闘狩人
  • 未来を示す羅針儀
    ジャック・エルギン(ka1522
    人間(紅)|20才|男性|闘狩人
  • はるかな理想を抱いて
    ユージーン・L・ローランド(ka1810
    人間(紅)|17才|男性|聖導士
  • 白狼鬼
    ネイハム・乾風(ka2961
    人間(紅)|28才|男性|猟撃士

  • 筱崎あかね(ka3788
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • 亡郷は茨と成りて
    ジル・ティフォージュ(ka3873
    人間(紅)|28才|男性|闘狩人

  • 鷹代 由稀(ka4271
    人間(蒼)|22才|女性|猟撃士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 質問卓
ジャック・エルギン(ka1522
人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/02/24 00:40:07
アイコン 相談卓
ティト・カミロ(ka0975
人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|闘狩人(エンフォーサー)
最終発言
2015/02/28 16:24:29
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/02/25 08:17:12