ゲスト
(ka0000)
ブラストエッジ鉱山攻略戦:突入編
マスター:神宮寺飛鳥

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/07 07:30
- 完成日
- 2015/03/14 15:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
――ブラストエッジ鉱山、と呼ばれている山がある。
まだ地図の上にゾンネンシュトラール帝国の名が記されるより以前から、この近辺にはコボルドの大集落があったと言う。
王国騎士であった辺境伯は騎士団を以ってしてこの地で亜人と激戦を繰り広げ、殆どのコボルド族は散り散りとなった。
それでも彼らがなんとか守り通し、最後の領地として死守してきた場所。それがブラストエッジ鉱山である。
「ホロン~、ごはんだべよ~」
その近辺は現代でもコボルド達の領域であった。しかし数年前から移民達による開拓村が作られ、沈黙を守っていたコボルド族との闘いが再び幕を開けた。
度重なる開拓村へのコボルドの襲撃に、帝国軍は大規模殲滅作戦を決定。第七師団と第一師団指揮の下、この開拓村では殲滅戦の準備が進められていた。
その一角にある小さなテント。そこでシュシュ・アルミラは牛乳の注がれた器と芋が山盛りになったバケツを左右に持ち、明るく声を上げた。
テントの中には青いスカーフを巻いたコボルドが一匹、大人しく腰掛けている。彼こそホロン――コボルド族でありながら人間についた、裏切り者であった。
シュシュはホロンの口に芋を放り投げる。二人の奇妙な共同生活はそれなりに順調に続いていた。
ブラストエッジ鉱山は、今も複数のコボルド一族による社会が形成されている。
近々行われる事が決定している殲滅戦では、人間とコボルドの全面衝突が予想された。ホロンはそれを避ける為人間についた変わり者だった。
「シュシュ君、ホロン、いるかい?」
テントに入ってきたカルガナ・ブアナ兵長に敬礼するシュシュ。といっても形式上の物で、シュシュとカルガナは気のおけない間柄になっていた。
「ホロンから得られた幾つかの情報の裏付けが取れた。問題なく秘密の出入口も発見できたよ」
「本当だべか? じゃあ……」
「ああ。僕はとりあえずホロンの話を信じようと思う」
ホロンは人間側につくと同時、幾つかの情報を齎した。
まず、ブラストエッジ鉱山には四つの集落が存在しているという事。
北西側にある小さなイヲの集落。
東側にある中規模なジャの集落。
ジャの集落と同規模の、南に位置するベノの集落。
そして北にある最大規模の集落、マハ。
ブラストエッジ鉱山内はマハの一族が頂点となり、他の集落を支配している。
「どうやらマハの一族にとって他の三つの一族は奴隷のようなものらしい。実際開拓村の襲撃に来るのはマハ以外の連中だ」
「三ツノ集落、マハノ支配下。マハ余力残シ、反撃ニ備エル」
「この殲滅戦、やはり此方側も犠牲を覚悟しなければならないか……」
思案するカルガナ。それから改めてホロンに問う。
「マハの集落がまだ力を蓄えているのなら、なおさらこの闘いの行く先はまだわからない筈だ。ホロンは何故早々と仲間を見限ったんだい?」
「戦争、人間勝ツ。人ハ精霊ト共存シ、大イナル力持ツ。賢ク、優秀デ、ソシテ残酷。何モ考エズ、貴殿ラハ同胞ヲ惨殺スル」
目を細めるカルガナ。しかしそれは事実だ。
軍人の多くは……いや、この開拓村の住民でさえ、コボルドの事を害獣としか思っていないだろう。話し合いなど以ての外だし、殺すのに良心の呵責などありはしない。
「コボルドハ人ニ勝テナイ。人ヲ知レバ知ル程、強ク思ウ」
「だからこそ正面衝突して全滅する前に、コボルドの集落をバラバラにして事態を収束したいと……」
その話はもう何度も聞いたシュシュだったが、ホロンが何故そのような決断を下すのかは理解出来なかった。
仲間を裏切り、仲間を殺す事で仲間を救いたい。そんなやり方で本当に何かが救えるのか。
何より裏切り者となった彼はきっと許されない筈だ。仲間にも、勿論、人間達にも……。
「我信ジタナラ、兵力ヲ借リタイ。手遅レニナル前ニ」
「……残念ながら、まだ君の意見を作戦に取り入れる事は出来ない。君の存在は混乱を避ける為、他の兵にも伏せたままだしね」
そう。コボルドが裏切って仲間になりたいと言ったところで歓迎しますとは行かない。
これまでの闘いで傷ついた兵も居れば、命を奪われた民も居る。そういった感情を無視する事は出来ない。
「だけど、作戦開始を引き伸ばす事は出来る。幸いコボルドの抵抗は激しさを増している。本格的な殲滅戦はもう少し先になるだろう」
言ってからシュシュの方へ目を向け。
「シュシュ君、先ずはハンターと共にブラストエッジ鉱山の威力偵察を頼みたい」
「シュシュ達だけで、だべか?」
「帝国軍の兵力を無闇に消耗するわけにも行かないんだ。ハンターと協力し、ホロンと共に鉱山内へ突入。その後、ホロンの情報が本当に正しいのか、そして彼が信頼に足る存在なのか、闘いの中で見極めて欲しい」
ホロンと向き合うシュシュ。迷いは殆どなかった。
「了解しました。シュシュ・アルミラ、これより偵察任務を開始します!」
ホロンの願いが果たしてどんな結果にたどり着くのか。個人的な興味もある。
何よりこんな浮ついた気持ちで殲滅戦になんて参加出来ない。だからまずは確かめなければ――。
ブラストエッジ鉱山は、鋭く切り立つような岩肌が密集した特殊な地形を持つ。
森の中を抜け、ホロンの案内する秘密の出入口にやってきた。今はもう使われなくなっているという、古い通用口だ。
「なんだかこの辺、不思議な感じがするんな?」
「特殊マテリアル鉱石ガ大量ニ埋蔵シ、ソノ影響デ地質が変化シテイル」
通用口を封鎖していた岩を退かすと、内側には青白く仄かな光が満ちていた。
「これ全部鉱物性マテリアルだべか!?」
「ノ、影響ヲ受ケテイル」
薄暗いが、これならば視界を確保するのは難しくなさそうだ。
「イヲノ集落三年ブリ。記憶頼リニシスギルノハ危険」
「大丈夫。その調査をするのも仕事だべさ。さあ、行こう!」
先導するホロンに続き、ハンター達も駆け出した。青白い光に照らされた地下深く、ブラストエッジ鉱山、まずはイヲの領域へ――。
まだ地図の上にゾンネンシュトラール帝国の名が記されるより以前から、この近辺にはコボルドの大集落があったと言う。
王国騎士であった辺境伯は騎士団を以ってしてこの地で亜人と激戦を繰り広げ、殆どのコボルド族は散り散りとなった。
それでも彼らがなんとか守り通し、最後の領地として死守してきた場所。それがブラストエッジ鉱山である。
「ホロン~、ごはんだべよ~」
その近辺は現代でもコボルド達の領域であった。しかし数年前から移民達による開拓村が作られ、沈黙を守っていたコボルド族との闘いが再び幕を開けた。
度重なる開拓村へのコボルドの襲撃に、帝国軍は大規模殲滅作戦を決定。第七師団と第一師団指揮の下、この開拓村では殲滅戦の準備が進められていた。
その一角にある小さなテント。そこでシュシュ・アルミラは牛乳の注がれた器と芋が山盛りになったバケツを左右に持ち、明るく声を上げた。
テントの中には青いスカーフを巻いたコボルドが一匹、大人しく腰掛けている。彼こそホロン――コボルド族でありながら人間についた、裏切り者であった。
シュシュはホロンの口に芋を放り投げる。二人の奇妙な共同生活はそれなりに順調に続いていた。
ブラストエッジ鉱山は、今も複数のコボルド一族による社会が形成されている。
近々行われる事が決定している殲滅戦では、人間とコボルドの全面衝突が予想された。ホロンはそれを避ける為人間についた変わり者だった。
「シュシュ君、ホロン、いるかい?」
テントに入ってきたカルガナ・ブアナ兵長に敬礼するシュシュ。といっても形式上の物で、シュシュとカルガナは気のおけない間柄になっていた。
「ホロンから得られた幾つかの情報の裏付けが取れた。問題なく秘密の出入口も発見できたよ」
「本当だべか? じゃあ……」
「ああ。僕はとりあえずホロンの話を信じようと思う」
ホロンは人間側につくと同時、幾つかの情報を齎した。
まず、ブラストエッジ鉱山には四つの集落が存在しているという事。
北西側にある小さなイヲの集落。
東側にある中規模なジャの集落。
ジャの集落と同規模の、南に位置するベノの集落。
そして北にある最大規模の集落、マハ。
ブラストエッジ鉱山内はマハの一族が頂点となり、他の集落を支配している。
「どうやらマハの一族にとって他の三つの一族は奴隷のようなものらしい。実際開拓村の襲撃に来るのはマハ以外の連中だ」
「三ツノ集落、マハノ支配下。マハ余力残シ、反撃ニ備エル」
「この殲滅戦、やはり此方側も犠牲を覚悟しなければならないか……」
思案するカルガナ。それから改めてホロンに問う。
「マハの集落がまだ力を蓄えているのなら、なおさらこの闘いの行く先はまだわからない筈だ。ホロンは何故早々と仲間を見限ったんだい?」
「戦争、人間勝ツ。人ハ精霊ト共存シ、大イナル力持ツ。賢ク、優秀デ、ソシテ残酷。何モ考エズ、貴殿ラハ同胞ヲ惨殺スル」
目を細めるカルガナ。しかしそれは事実だ。
軍人の多くは……いや、この開拓村の住民でさえ、コボルドの事を害獣としか思っていないだろう。話し合いなど以ての外だし、殺すのに良心の呵責などありはしない。
「コボルドハ人ニ勝テナイ。人ヲ知レバ知ル程、強ク思ウ」
「だからこそ正面衝突して全滅する前に、コボルドの集落をバラバラにして事態を収束したいと……」
その話はもう何度も聞いたシュシュだったが、ホロンが何故そのような決断を下すのかは理解出来なかった。
仲間を裏切り、仲間を殺す事で仲間を救いたい。そんなやり方で本当に何かが救えるのか。
何より裏切り者となった彼はきっと許されない筈だ。仲間にも、勿論、人間達にも……。
「我信ジタナラ、兵力ヲ借リタイ。手遅レニナル前ニ」
「……残念ながら、まだ君の意見を作戦に取り入れる事は出来ない。君の存在は混乱を避ける為、他の兵にも伏せたままだしね」
そう。コボルドが裏切って仲間になりたいと言ったところで歓迎しますとは行かない。
これまでの闘いで傷ついた兵も居れば、命を奪われた民も居る。そういった感情を無視する事は出来ない。
「だけど、作戦開始を引き伸ばす事は出来る。幸いコボルドの抵抗は激しさを増している。本格的な殲滅戦はもう少し先になるだろう」
言ってからシュシュの方へ目を向け。
「シュシュ君、先ずはハンターと共にブラストエッジ鉱山の威力偵察を頼みたい」
「シュシュ達だけで、だべか?」
「帝国軍の兵力を無闇に消耗するわけにも行かないんだ。ハンターと協力し、ホロンと共に鉱山内へ突入。その後、ホロンの情報が本当に正しいのか、そして彼が信頼に足る存在なのか、闘いの中で見極めて欲しい」
ホロンと向き合うシュシュ。迷いは殆どなかった。
「了解しました。シュシュ・アルミラ、これより偵察任務を開始します!」
ホロンの願いが果たしてどんな結果にたどり着くのか。個人的な興味もある。
何よりこんな浮ついた気持ちで殲滅戦になんて参加出来ない。だからまずは確かめなければ――。
ブラストエッジ鉱山は、鋭く切り立つような岩肌が密集した特殊な地形を持つ。
森の中を抜け、ホロンの案内する秘密の出入口にやってきた。今はもう使われなくなっているという、古い通用口だ。
「なんだかこの辺、不思議な感じがするんな?」
「特殊マテリアル鉱石ガ大量ニ埋蔵シ、ソノ影響デ地質が変化シテイル」
通用口を封鎖していた岩を退かすと、内側には青白く仄かな光が満ちていた。
「これ全部鉱物性マテリアルだべか!?」
「ノ、影響ヲ受ケテイル」
薄暗いが、これならば視界を確保するのは難しくなさそうだ。
「イヲノ集落三年ブリ。記憶頼リニシスギルノハ危険」
「大丈夫。その調査をするのも仕事だべさ。さあ、行こう!」
先導するホロンに続き、ハンター達も駆け出した。青白い光に照らされた地下深く、ブラストエッジ鉱山、まずはイヲの領域へ――。
リプレイ本文
ブラストエッジ鉱山、イヲ族集落。
ハンター達は人気のない隠し通路の前、茂みにて様子を窺う。
「さて、俺にはコボルトの見分けがつかねぇんだが、どうしたもんかねぇ……」
「ホロンは服装で判断出来るが、四つの部族に関しては難しい所だな」
マルク・D・デメテール(ka0219)の呟きにレイス(ka1541)が頷く。
「ケケケ、同郷で異性の上司を誑し込むとはやるっすね! これで出世の足掛りは出来たっすね!」
「シュシュはそんなつもりじゃないんよ」
「いやお前、戦果も上げないで上司にも取り入らないでどうやって師団長になるつもりだったんスか?」
神楽(ka2032)のツッコミにぐうの音も出ないシュシュ。メリエ・フリョーシカ(ka1991)はホロンを見やり。
「で、結局あの亜人……失敬。ホロンは信用するんですね? シュシュ様」
「それをこれから確かめに行くんだべ?」
「いいえ、そうならそうで構いませんよ。ただ、背中から斬られるのは嫌だなと思っただけです」
ホロンは特に何も反応しない。イェルバート(ka1772)は複雑そうにその様子を見ていた。
確かにホロンの行動には疑いの余地がある。その行動が善意からだったとしても、上手くいくとは限らない。
「……悩んでも仕方ない。出来るだけ最後まで見届けよう」
「そういえばコボルドは鉱山内に住んでるみたいだけど、毒ガスとかないの?」
「場所ニヨッテハ。鉱山内ノコボルドハ毒ニ強イが、ソウイッタ場所ニハ近ツカナイ」
「毒あるんだ……訊いといてよかった」
冷や汗を流す天竜寺 舞(ka0377)。イェルバートはついでに質問する。
「そういえば、イヲの長ってどんなコボルドなの?」
「マハ以外ノ集落ハ、長ガ変ワル事モアルガ」
イヲの長は石集めのポポルと呼ばれ、特殊な獣を操ると言う。
そんな話をする傍で喜屋武・D・トーマス(ka3424)は逢見 千(ka4357)に声をかける。
「もしかして緊張してるのかしら?」
「緊張? いやー、してないと思うけど……もしかしたらしてるのかも。初依頼が洞窟探検になるとは思ってなかったし」
「その調子でどっしり構えていれば大丈夫よ」
首を傾げながらどこか他人事のように語る千に喜屋武は苦笑し、その肩をポンと叩いた。
>イヲの領域攻略開始!
>メリエは前進した!
>舞は警戒している……しかし何も起こらなかった!
>ホロンは前進した……しかし行き止まりだった!
>レイスは地図を追記した!
>喜屋武は何かに気づいた!
「行キ止マリ」
「三年ぶりだし、そんな事もあるよ。それにしても全然コボルドがいないね?」
舞は周囲を眺める。先ほどからハンター達以外に生き物の気配はない。
そんな時、喜屋武が手を上げた。
「何か聞こえない? 水の音かしら?」
音の方に向かうと、そこには湧き水があった。壁の亀裂の向こうから流れてきているらしい。
「この向こう側に水源があるのか。そういえばコボルドは飲水はどうしている?」
「地下水脈ガアル。川ハ確カ開拓村マデ続イテル。イヲ以外ノ集落ニモ」
「コボルドの飲水なら、毒ってことはなさそうね」
喜屋武は水を掬って飲んでみる。清らかで冷たかった。他にもどうやら、こうした水場があるようだ。
>メリエは前進した……しかし行き止まりだった!
>ホロンは前進した……しかし行き止まりだった!
>イェルバートは何かに気づいた!
「何か変な音がするような……」
「向こうの方、妙に明るくねぇか?」
警戒しつつ進むマルク。イェルバートが曲がり角から顔を覗かせると、行き止まりの道に大きな黒い物体が蠢いていた。
「む……虫っ?」
「いや、動物じゃねぇか?」
毛むくじゃらの生き物は蛇のように長い胴体にびっしり鳥の足のようなものを生やしている。顔らしい部分には歯剥き出しの口があり、壁をごりごり食べているようだった。
「うわー……きもっ」
「ほっといてもいいが、帰り道に出くわすと厄介だしな……倒しとくか」
背筋を震わす千。大きい音を立てるのを避け、銃以外の遠距離攻撃で倒す事にする。
レイスとイェルバートが弓を、そして舞とマルクがそれぞれダーツと短剣を投げつけると、謎の生物は仰け反り、一瞬チカチカ発光するとぐったり動かなくなった。
「うぅ、気持ち悪い……ダーツ取りに行くのかぁ」
「鉱山獣、というらしいぞ」
青ざめた舞の隣でレイスがホロンから話を聞いていた。
>新たな敵、鉱山獣を記録した!
>メリエは前進した……しかし行き止まりだった!
>ホロンは前進した……しかし行き止まりだった!
>マルスは前進した……しかし行き止まりだった!
「……ちょっと待て。どこに道があるんだ?」
分岐路に戻ってきたマルスは腕を組み周囲を眺める。三叉路全て行ってみたが、道はなかった。
ハンター達は道がどこにもない可能性は想定していなかった。イェルバートは口元に手をやり。
「さっきから一体もコボルドに遭遇しないけど、もしかしてここってイヲの集落に通じてないんじゃ?」
「ホロンの記憶によれば、この辺りから集落に続いていたようだが……道を塞がれたのかもしれんな」
レイスの言うようにホロンの記憶的にはここから集落へ入れた筈だが、今は使われなくなった出口を用心して封鎖したのかもしれない。
「まあ、ホロンが嘘をついているという可能性もありますが」
メリエの言葉にハンター達は考えこむ。と、喜屋武は空中にリトルファイアを浮かべ。
「とりあえずみんなで周囲を良く調べてみましょう」
すると、イェルバートが不自然な壁を発見した。
「ここだ。自然にかどうかわからないけど、土砂崩れで埋まってるんだ」
僅かにだが風も通っている。土砂の壁そのものはあまり分厚い物ではなさそうだ。
「こんな事ならスコップ持ってくれば良かったなー」
頬を掻く千。ハンター達はこういう状況は想定していなかった。しかし掘り進まない事にはどうにもならない。
「魔法でふっ飛ばしてみてもいいけど……」
「あまり音を立てない方がいいッスね」
神楽の言う通りという事で、喜屋武は肩を竦め後退。メリエは持っていた斧を加減しながら壁に打ち込む。
崩れた部分は手で岩をどかし、それの繰り返し。ふと、千は手持ちの剣を見つめ。
「これなら形変えれば使えるんじゃないかなー?」
ユナイテッド・ドライブ・ソードを変形させ、ツルハシのような形にして壁に打ち込む。そんな作業が暫し続き、ようやく道が開通した。
「ふっ、妙な所で採掘スキルを発揮してしまいました」
「楽しそうなのはいいが、随分時間を食っちまった。先を急ぐぞ」
額の汗を拭うメリエにマルクが告げた。
>イヲの領域第二エリアへの道が開かれた!
>マルクは前進した!
>ホロンは前進した!
先ほどまでとは雰囲気が明らかに違う。壁にはマテリアル鉱石を使った燭台が青い光で通路を照らしている。
見れば通路にはいくつか鉄製の扉があった。人間の物にも劣らない精巧な作りの鉄扉だ。
「この扉もコボルドが作ったのかしら?」
「そういえばコボルドって剣とか持ってるッスけど、あれも自作だったんスね」
感心した様子の喜屋武。神楽は扉に近づくが、南京錠のような物が扉を封鎖している。
「コボルドにも鍵をかける習慣があるんだね」
「せっかくだし開けてみよっか」
イェルバートと舞は共に解錠に挑戦。二人がかりという事もあり、鍵は程なく地べたに落ちた。
扉を開くとそこは倉庫のようだった。なんだかよくわからないクズ石の山と意味不明なガラクタが転がっている。
反対側の扉も開けてみるが、同じようなものだ。どう見てもただのクズ石で、厳重に保管するような価値は見いだせない。
「皆さん、コボルドが来ます!」
メリエの声に慌てて部屋から出る。通路の向こうから淡い明かりが見える。周囲に隠れられそうな場所はない。
「さっきの部屋に戻るか……」
レイスに続き全員でクズ石部屋の一つに戻ると、何故かコボルドも部屋に入ってくる。
コボルドは鉱山獣に乗っていた。鉱山獣は時折青く発光し、それが周囲を照らしているようだった。
コボルドは鉱山獣から降りると、クズ石を獣に食べさせている。それから思い出したように首を傾げ、扉の前に落ちていた南京錠を拾った。
「あっ」
「そうだ……戻し方までよくわかんなくて開けたままだった」
冷や汗を流す舞。イェルバートは苦笑を浮かべながら呟く。
更にもう一匹コボルドが入ってくると、二体は何か話しているようだった。
「鍵カケ番ガドッチダッタカ、口論シテイル」
「アホッスね」
クズ石山の後ろで神楽が呟く。マルクは周囲を観察し。
「どうやらあの二体だけみてぇだな。こっちにも気づいてない。仕掛けるなら今ってか?」
コボルドを捕獲出来れば詳細な情報が得られるかもしれない。何よりここは室内、多少騒いでも周囲の敵を呼び寄せる事はないだろう。
意を決しハンター達は戦いを挑む。まずイェルバートとレイスが弓矢で攻撃。コボルドは大慌てだが、鉱山獣は素早く動き出した。
一体は壁を這い上がり天井へ、もう一体はコボルド達を守るように上体を持ち上げる。
天井に上がった鉱山獣は眩く発光すると、雷撃を降り注がせた。神楽は慌てて盾を構え、ハンター達は散り散りに回避する。
「うわっ!? 何スか!?」
「そいつはお願いします! あっちを逃すとまずい!」
メリエはクズ石から飛び出し二体のコボルドへ向かう。鉱山獣は長い体で薙ぎ払ってくるが、盾でなんとか踏ん張った。
「くっ、こいつ……!?」
二体のコボルドは槍のような道具を抜きメリエへ迫る。喜屋武は筋肉に力を込め、拳を繰り出すと同時に風の衝撃を放った。
吹っ飛ぶコボルド。千はもう一体のコボルドへ駆け寄り、長い剣の形にしたユナイテッドソードで斬りつける。
「うん。やっぱ長い方が調子いいや」
「こいつの顔、どうなってるの!?」
毛むくじゃらでよくわからない。舞は近づくとグラディウスを打ち込むが、甲高い金属音と共に弾かれる。
「えっ!? 固い所があるの!?」
天井からの突進を回避しつつ短剣を投げつけるマルクだが、やはり表皮で弾かれる。
「こいつ……さっきと強度が違いすぎんぞ」
イェルバートは右手を突き出し雷撃を放つが、鉱山獣は雷撃を体表で流し、周囲に放出し受け流す。
「雷は効かないか……」
お返しにと雷撃を放つ鉱山獣。レイスはその雷をすり抜け槍を繰り出すと、今度はすんなり槍が腹を貫いた。
「はあああっ!」
マテリアルを込めた一撃で力任せに斬りつけるメリエ。のたうつ鉱山獣に喜屋武はウォーターシュートを放ち、壁に叩きつけた。
「ほっ」
そのまま壁に串刺しにする千。こうして二体の鉱山獣が動かなくなると、神楽はコボルドに銃を突きつけた。
「殺されるかここの内部構造と集落の情報を話して助かるか選べっす。解ったら頷くっす」
捕縛された二体のコボルド。喜屋武はその横に倒れる鉱山獣の死骸を見ていた。
「どうやら風属性攻撃は効かないみたいね。雷だけじゃなく私の風魔法も弾いてたから」
「最初に倒した奴に比べて妙に頑丈だったような……」
「何か条件があるのかもしれんな。最初の時との違いを考えてみればわかるかもしれん」
不気味な生き物、鉱山獣。鉱山の外では見かけた事のない奇妙な姿に舞とレイスは首を傾げる。
「鬼が出るか蛇が出るかとは考えたが、蛇のような……なんなのだろうな、これは」
一方、メリエと神楽はコボルドの尋問を行っていた。とは言え人間の言葉を理解しない個体の為、ホロンが翻訳に入る。
「腕の一本でも落としゃ口も軽くなんじゃねぇですかねぇ? なぁ?」
コボルドは怯えながら簡単に話してくれた。仲間意識はあまりないのだろうか。
話によればこの先には採掘場と、その加工場があるという。幾つか大型の溶鉱炉があり、そこに鉱山獣を使った採掘班が石を集めているらしい。
「上質ナ鉱石、マハノ物。クズ石ト質ノ悪イマテリアル鉱石ダケデ生活シテイル」
「お前達はイオの一族は、マハの一族に支配されているのだろう?」
二体のコボルドは顔を見合わせ、レイスの言葉に鳴き声を上げる。
翻訳によると、マハ族のコボルドは毎日イヲ族のコボルドを酷使し、鉱石を採掘させているという。
それは人間との戦いが始まってから更に過酷になり、今や過労で死んでしまうイオ族が後を絶たない。
更にイヲの族長はマハ族から上質な鉱石を受け取り、溺愛するペットの鉱石獣に食べさせる為、マハ族の言いなりになっているらしい。
「うーん……中々ひどい話ねぇ」
「もしお前達が俺達に協力してくれるというなら、マハ族を追い払ってやれるかもしれん」
レイスは説明した。これから殲滅戦がある事。ホロンはそれを避けようとしている事。
マハ族の支配から逃れ、マテリアル鉱石を人間と取引すれば、生存の道はあるかも知れない事……。
二匹のコボルドは顔を見合わせ、縛られたままピョコピョコ跳ねた。
「コノママデハドノミチ死ヌ。逃ゲテモ殺サレル。モシ本当ナラ、マハ族ヲ倒スノニ協力スルト」
「コボルドの言う事を信じるんですか? こいつら見ての通りアホですよ?」
「俺は敵の戦力を減らす為に約束を破って殺した方がいいと思うんすけど、裏切り者のホロンとコボルト殲滅が任務のシュシュ・アルミラ三等兵はどうしたらいいと思うっす?」
メリエと神楽の言葉にシュシュは眉の尾を下げて悩み。
「マハ族が他の部族を支配している話はホロンから聞いてただよ。もしイヲ族をマハ族から開放出来たなら、ホロンを信用する切っ掛けにもなると思う」
頷くイェルバートと喜屋武。マルスは片目を瞑り。
「確かに全面的に信用するのは危険だが、こいつらそもそも大して考える頭もねぇようだしな」
一先ず二体を信じ、案内するというその後に続く。
地図を書き進めながらハンター達が向かった先。大きな空洞に蒸気を吐き出す無数の溶鉱炉と、そこで石を運ぶコボルド達の姿が見えた。
マハ族はイヲ族に鞭を打ち、道端には死んでしまったイヲ族や鉱石獣が無造作に転がされている。
「うわー、前時代的……」
「俺達はまた戻ってくる。それまで俺達の事は秘密に出来るか?」
コクコクと頷くコボルド二体。ハンター達はしばらくそこでコボルド達の様子を観察した。
ついでに持ってきていた食料を食べつつ、コボルドにも分けてやった。
二体のコボルドは余程腹が減っていたのかあっという間に平らげると、ぺこぺこ頭を下げ、戻らないと怒られるからと出て行った。
その二体のコボルドが鞭に打たれ情けない悲鳴を上げるのを跡目に、ハンター達は来た道を引き返し始めた。
ハンター達は人気のない隠し通路の前、茂みにて様子を窺う。
「さて、俺にはコボルトの見分けがつかねぇんだが、どうしたもんかねぇ……」
「ホロンは服装で判断出来るが、四つの部族に関しては難しい所だな」
マルク・D・デメテール(ka0219)の呟きにレイス(ka1541)が頷く。
「ケケケ、同郷で異性の上司を誑し込むとはやるっすね! これで出世の足掛りは出来たっすね!」
「シュシュはそんなつもりじゃないんよ」
「いやお前、戦果も上げないで上司にも取り入らないでどうやって師団長になるつもりだったんスか?」
神楽(ka2032)のツッコミにぐうの音も出ないシュシュ。メリエ・フリョーシカ(ka1991)はホロンを見やり。
「で、結局あの亜人……失敬。ホロンは信用するんですね? シュシュ様」
「それをこれから確かめに行くんだべ?」
「いいえ、そうならそうで構いませんよ。ただ、背中から斬られるのは嫌だなと思っただけです」
ホロンは特に何も反応しない。イェルバート(ka1772)は複雑そうにその様子を見ていた。
確かにホロンの行動には疑いの余地がある。その行動が善意からだったとしても、上手くいくとは限らない。
「……悩んでも仕方ない。出来るだけ最後まで見届けよう」
「そういえばコボルドは鉱山内に住んでるみたいだけど、毒ガスとかないの?」
「場所ニヨッテハ。鉱山内ノコボルドハ毒ニ強イが、ソウイッタ場所ニハ近ツカナイ」
「毒あるんだ……訊いといてよかった」
冷や汗を流す天竜寺 舞(ka0377)。イェルバートはついでに質問する。
「そういえば、イヲの長ってどんなコボルドなの?」
「マハ以外ノ集落ハ、長ガ変ワル事モアルガ」
イヲの長は石集めのポポルと呼ばれ、特殊な獣を操ると言う。
そんな話をする傍で喜屋武・D・トーマス(ka3424)は逢見 千(ka4357)に声をかける。
「もしかして緊張してるのかしら?」
「緊張? いやー、してないと思うけど……もしかしたらしてるのかも。初依頼が洞窟探検になるとは思ってなかったし」
「その調子でどっしり構えていれば大丈夫よ」
首を傾げながらどこか他人事のように語る千に喜屋武は苦笑し、その肩をポンと叩いた。
>イヲの領域攻略開始!
>メリエは前進した!
>舞は警戒している……しかし何も起こらなかった!
>ホロンは前進した……しかし行き止まりだった!
>レイスは地図を追記した!
>喜屋武は何かに気づいた!
「行キ止マリ」
「三年ぶりだし、そんな事もあるよ。それにしても全然コボルドがいないね?」
舞は周囲を眺める。先ほどからハンター達以外に生き物の気配はない。
そんな時、喜屋武が手を上げた。
「何か聞こえない? 水の音かしら?」
音の方に向かうと、そこには湧き水があった。壁の亀裂の向こうから流れてきているらしい。
「この向こう側に水源があるのか。そういえばコボルドは飲水はどうしている?」
「地下水脈ガアル。川ハ確カ開拓村マデ続イテル。イヲ以外ノ集落ニモ」
「コボルドの飲水なら、毒ってことはなさそうね」
喜屋武は水を掬って飲んでみる。清らかで冷たかった。他にもどうやら、こうした水場があるようだ。
>メリエは前進した……しかし行き止まりだった!
>ホロンは前進した……しかし行き止まりだった!
>イェルバートは何かに気づいた!
「何か変な音がするような……」
「向こうの方、妙に明るくねぇか?」
警戒しつつ進むマルク。イェルバートが曲がり角から顔を覗かせると、行き止まりの道に大きな黒い物体が蠢いていた。
「む……虫っ?」
「いや、動物じゃねぇか?」
毛むくじゃらの生き物は蛇のように長い胴体にびっしり鳥の足のようなものを生やしている。顔らしい部分には歯剥き出しの口があり、壁をごりごり食べているようだった。
「うわー……きもっ」
「ほっといてもいいが、帰り道に出くわすと厄介だしな……倒しとくか」
背筋を震わす千。大きい音を立てるのを避け、銃以外の遠距離攻撃で倒す事にする。
レイスとイェルバートが弓を、そして舞とマルクがそれぞれダーツと短剣を投げつけると、謎の生物は仰け反り、一瞬チカチカ発光するとぐったり動かなくなった。
「うぅ、気持ち悪い……ダーツ取りに行くのかぁ」
「鉱山獣、というらしいぞ」
青ざめた舞の隣でレイスがホロンから話を聞いていた。
>新たな敵、鉱山獣を記録した!
>メリエは前進した……しかし行き止まりだった!
>ホロンは前進した……しかし行き止まりだった!
>マルスは前進した……しかし行き止まりだった!
「……ちょっと待て。どこに道があるんだ?」
分岐路に戻ってきたマルスは腕を組み周囲を眺める。三叉路全て行ってみたが、道はなかった。
ハンター達は道がどこにもない可能性は想定していなかった。イェルバートは口元に手をやり。
「さっきから一体もコボルドに遭遇しないけど、もしかしてここってイヲの集落に通じてないんじゃ?」
「ホロンの記憶によれば、この辺りから集落に続いていたようだが……道を塞がれたのかもしれんな」
レイスの言うようにホロンの記憶的にはここから集落へ入れた筈だが、今は使われなくなった出口を用心して封鎖したのかもしれない。
「まあ、ホロンが嘘をついているという可能性もありますが」
メリエの言葉にハンター達は考えこむ。と、喜屋武は空中にリトルファイアを浮かべ。
「とりあえずみんなで周囲を良く調べてみましょう」
すると、イェルバートが不自然な壁を発見した。
「ここだ。自然にかどうかわからないけど、土砂崩れで埋まってるんだ」
僅かにだが風も通っている。土砂の壁そのものはあまり分厚い物ではなさそうだ。
「こんな事ならスコップ持ってくれば良かったなー」
頬を掻く千。ハンター達はこういう状況は想定していなかった。しかし掘り進まない事にはどうにもならない。
「魔法でふっ飛ばしてみてもいいけど……」
「あまり音を立てない方がいいッスね」
神楽の言う通りという事で、喜屋武は肩を竦め後退。メリエは持っていた斧を加減しながら壁に打ち込む。
崩れた部分は手で岩をどかし、それの繰り返し。ふと、千は手持ちの剣を見つめ。
「これなら形変えれば使えるんじゃないかなー?」
ユナイテッド・ドライブ・ソードを変形させ、ツルハシのような形にして壁に打ち込む。そんな作業が暫し続き、ようやく道が開通した。
「ふっ、妙な所で採掘スキルを発揮してしまいました」
「楽しそうなのはいいが、随分時間を食っちまった。先を急ぐぞ」
額の汗を拭うメリエにマルクが告げた。
>イヲの領域第二エリアへの道が開かれた!
>マルクは前進した!
>ホロンは前進した!
先ほどまでとは雰囲気が明らかに違う。壁にはマテリアル鉱石を使った燭台が青い光で通路を照らしている。
見れば通路にはいくつか鉄製の扉があった。人間の物にも劣らない精巧な作りの鉄扉だ。
「この扉もコボルドが作ったのかしら?」
「そういえばコボルドって剣とか持ってるッスけど、あれも自作だったんスね」
感心した様子の喜屋武。神楽は扉に近づくが、南京錠のような物が扉を封鎖している。
「コボルドにも鍵をかける習慣があるんだね」
「せっかくだし開けてみよっか」
イェルバートと舞は共に解錠に挑戦。二人がかりという事もあり、鍵は程なく地べたに落ちた。
扉を開くとそこは倉庫のようだった。なんだかよくわからないクズ石の山と意味不明なガラクタが転がっている。
反対側の扉も開けてみるが、同じようなものだ。どう見てもただのクズ石で、厳重に保管するような価値は見いだせない。
「皆さん、コボルドが来ます!」
メリエの声に慌てて部屋から出る。通路の向こうから淡い明かりが見える。周囲に隠れられそうな場所はない。
「さっきの部屋に戻るか……」
レイスに続き全員でクズ石部屋の一つに戻ると、何故かコボルドも部屋に入ってくる。
コボルドは鉱山獣に乗っていた。鉱山獣は時折青く発光し、それが周囲を照らしているようだった。
コボルドは鉱山獣から降りると、クズ石を獣に食べさせている。それから思い出したように首を傾げ、扉の前に落ちていた南京錠を拾った。
「あっ」
「そうだ……戻し方までよくわかんなくて開けたままだった」
冷や汗を流す舞。イェルバートは苦笑を浮かべながら呟く。
更にもう一匹コボルドが入ってくると、二体は何か話しているようだった。
「鍵カケ番ガドッチダッタカ、口論シテイル」
「アホッスね」
クズ石山の後ろで神楽が呟く。マルクは周囲を観察し。
「どうやらあの二体だけみてぇだな。こっちにも気づいてない。仕掛けるなら今ってか?」
コボルドを捕獲出来れば詳細な情報が得られるかもしれない。何よりここは室内、多少騒いでも周囲の敵を呼び寄せる事はないだろう。
意を決しハンター達は戦いを挑む。まずイェルバートとレイスが弓矢で攻撃。コボルドは大慌てだが、鉱山獣は素早く動き出した。
一体は壁を這い上がり天井へ、もう一体はコボルド達を守るように上体を持ち上げる。
天井に上がった鉱山獣は眩く発光すると、雷撃を降り注がせた。神楽は慌てて盾を構え、ハンター達は散り散りに回避する。
「うわっ!? 何スか!?」
「そいつはお願いします! あっちを逃すとまずい!」
メリエはクズ石から飛び出し二体のコボルドへ向かう。鉱山獣は長い体で薙ぎ払ってくるが、盾でなんとか踏ん張った。
「くっ、こいつ……!?」
二体のコボルドは槍のような道具を抜きメリエへ迫る。喜屋武は筋肉に力を込め、拳を繰り出すと同時に風の衝撃を放った。
吹っ飛ぶコボルド。千はもう一体のコボルドへ駆け寄り、長い剣の形にしたユナイテッドソードで斬りつける。
「うん。やっぱ長い方が調子いいや」
「こいつの顔、どうなってるの!?」
毛むくじゃらでよくわからない。舞は近づくとグラディウスを打ち込むが、甲高い金属音と共に弾かれる。
「えっ!? 固い所があるの!?」
天井からの突進を回避しつつ短剣を投げつけるマルクだが、やはり表皮で弾かれる。
「こいつ……さっきと強度が違いすぎんぞ」
イェルバートは右手を突き出し雷撃を放つが、鉱山獣は雷撃を体表で流し、周囲に放出し受け流す。
「雷は効かないか……」
お返しにと雷撃を放つ鉱山獣。レイスはその雷をすり抜け槍を繰り出すと、今度はすんなり槍が腹を貫いた。
「はあああっ!」
マテリアルを込めた一撃で力任せに斬りつけるメリエ。のたうつ鉱山獣に喜屋武はウォーターシュートを放ち、壁に叩きつけた。
「ほっ」
そのまま壁に串刺しにする千。こうして二体の鉱山獣が動かなくなると、神楽はコボルドに銃を突きつけた。
「殺されるかここの内部構造と集落の情報を話して助かるか選べっす。解ったら頷くっす」
捕縛された二体のコボルド。喜屋武はその横に倒れる鉱山獣の死骸を見ていた。
「どうやら風属性攻撃は効かないみたいね。雷だけじゃなく私の風魔法も弾いてたから」
「最初に倒した奴に比べて妙に頑丈だったような……」
「何か条件があるのかもしれんな。最初の時との違いを考えてみればわかるかもしれん」
不気味な生き物、鉱山獣。鉱山の外では見かけた事のない奇妙な姿に舞とレイスは首を傾げる。
「鬼が出るか蛇が出るかとは考えたが、蛇のような……なんなのだろうな、これは」
一方、メリエと神楽はコボルドの尋問を行っていた。とは言え人間の言葉を理解しない個体の為、ホロンが翻訳に入る。
「腕の一本でも落としゃ口も軽くなんじゃねぇですかねぇ? なぁ?」
コボルドは怯えながら簡単に話してくれた。仲間意識はあまりないのだろうか。
話によればこの先には採掘場と、その加工場があるという。幾つか大型の溶鉱炉があり、そこに鉱山獣を使った採掘班が石を集めているらしい。
「上質ナ鉱石、マハノ物。クズ石ト質ノ悪イマテリアル鉱石ダケデ生活シテイル」
「お前達はイオの一族は、マハの一族に支配されているのだろう?」
二体のコボルドは顔を見合わせ、レイスの言葉に鳴き声を上げる。
翻訳によると、マハ族のコボルドは毎日イヲ族のコボルドを酷使し、鉱石を採掘させているという。
それは人間との戦いが始まってから更に過酷になり、今や過労で死んでしまうイオ族が後を絶たない。
更にイヲの族長はマハ族から上質な鉱石を受け取り、溺愛するペットの鉱石獣に食べさせる為、マハ族の言いなりになっているらしい。
「うーん……中々ひどい話ねぇ」
「もしお前達が俺達に協力してくれるというなら、マハ族を追い払ってやれるかもしれん」
レイスは説明した。これから殲滅戦がある事。ホロンはそれを避けようとしている事。
マハ族の支配から逃れ、マテリアル鉱石を人間と取引すれば、生存の道はあるかも知れない事……。
二匹のコボルドは顔を見合わせ、縛られたままピョコピョコ跳ねた。
「コノママデハドノミチ死ヌ。逃ゲテモ殺サレル。モシ本当ナラ、マハ族ヲ倒スノニ協力スルト」
「コボルドの言う事を信じるんですか? こいつら見ての通りアホですよ?」
「俺は敵の戦力を減らす為に約束を破って殺した方がいいと思うんすけど、裏切り者のホロンとコボルト殲滅が任務のシュシュ・アルミラ三等兵はどうしたらいいと思うっす?」
メリエと神楽の言葉にシュシュは眉の尾を下げて悩み。
「マハ族が他の部族を支配している話はホロンから聞いてただよ。もしイヲ族をマハ族から開放出来たなら、ホロンを信用する切っ掛けにもなると思う」
頷くイェルバートと喜屋武。マルスは片目を瞑り。
「確かに全面的に信用するのは危険だが、こいつらそもそも大して考える頭もねぇようだしな」
一先ず二体を信じ、案内するというその後に続く。
地図を書き進めながらハンター達が向かった先。大きな空洞に蒸気を吐き出す無数の溶鉱炉と、そこで石を運ぶコボルド達の姿が見えた。
マハ族はイヲ族に鞭を打ち、道端には死んでしまったイヲ族や鉱石獣が無造作に転がされている。
「うわー、前時代的……」
「俺達はまた戻ってくる。それまで俺達の事は秘密に出来るか?」
コクコクと頷くコボルド二体。ハンター達はしばらくそこでコボルド達の様子を観察した。
ついでに持ってきていた食料を食べつつ、コボルドにも分けてやった。
二体のコボルドは余程腹が減っていたのかあっという間に平らげると、ぺこぺこ頭を下げ、戻らないと怒られるからと出て行った。
その二体のコボルドが鞭に打たれ情けない悲鳴を上げるのを跡目に、ハンター達は来た道を引き返し始めた。
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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第一回突入編相談卓 神楽(ka2032) 人間(リアルブルー)|15才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/03/07 01:19:58 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/02 21:39:18 |