ゲスト
(ka0000)
エクレール旅行記
マスター:Urodora

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~6人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 無し
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/17 22:00
- 完成日
- 2015/03/25 04:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
星。
悠久の内にある久遠、連なる輝きの海に眠る炎。
時。
皆全て、過去より出で未来に至り、そしてまた。
過去へ旅立つ。
記。
立ち、語り、進み、紡いだ後。
刻まれる証。
●旅立ち
エクレールは、ほこりをはらったあと、机の上に花をかざるといいました。
「いってくるね、おじいちゃん」
この家には、もうエクレールのほかに誰もいません。
けれど、それがさびしいわけではないのです。
エクレールはしばらく花をみつめたあと、机のひきだしから一冊のノートをとりだしました。
そのノートの表には、
「日記帳」
と、書いてあります。
エクレールがぱらぱらとページをめくり、日記の最後を開くと、
「旅に出たかったな」
そう一言書いてあります。
日記帳はエクレールのおじいさんが残したものです。
エクレールは、あるとき、おじいさんが死んでしまって一人になりました。
そしてどうするかしばらく考えました。
このままこの家で、おじいさんの思い出と生きていくのもいいかな。
そう思ったとき、みつけたのがおじいさんの残した日記帳でした。
旅。
エクレールは生まれてから遠くにいったことが一度もありません。
だから、その言葉の意味を知りたいとおもったのでした。
日記帳をみつけたエクレールは、どうするか数日なやんだあと、
「ボク、旅にでる」
そう決めました。
エクレールの飼っている小さな犬、名前をセサミといいます。
セサミがエクレールを見てしんぱいそう顔をしました。
「だいじょうぶだよ。セサミ。ボクはつよいから」
セサミはそれを聞いてうなずいたようにみえました。
準備をととのえたエクレールは、おじいさんがだいじにしていた
倉庫へいき、とびらをひらきました。
そこには三輪の足をもった機械の馬がこちらをみつめています。
「セサミ、あれは何?」
「ワン」
「ってわからないよね……」
エクレールは、めずらしそうに三輪車をさわっていましたが、この機械がのりものであることにきづきました。
そしてなにかを考えたあと。
「名前をつけようよ」
そういいました。
「わうーん」
なぜかセサミもよろこびました。しばらくエクレールは考えました。そのうちに、
「フォルテ」
うかんだ名前です。
「?」
セサミがふしぎそうな顔をします。
「わかんない、でも。それでいいきがするんだ」
「ワン」
「セサミくすぐったいよ」
セサミになめられて、エクレールは笑いました。
旅立ちの日。
エクレールはノートのタイトルを書きかえました。
そこには、
「エクレール旅行記」
と書いてあります。
「本で読んだんだ。旅にいったことを書くのを、旅行記っていうんだよ」
セサミはなぜか、エクレールをみて変なかおしました。
「セサミ、バカにしてるの?」
「わわん」
とびついてきたセサミをだきかかえたエクレールは、お気に入りのキャスケットをかぶり、風よけのゴーグルをかけます。
そして、おじいさんが残したぶかぶかのジャケットをはおると、フォルテに乗り。
「ボクは知りたいんだ」
そういいました。
青空の下、まっすぐな道がエクレールの前に広がっています。
「いこう、セサミ」
「わうん」
雲がゆっくりとながれ、鳥がはばたくとフォルテが音をあげて走り出しました。
●星祭の村
エクレールが旅をはじめて、しばらくたちました。
ある日、フォルテの調子が悪くなりました。
機械については何しらないエクレールは、フォルテを押してなんとか歩き、ある村にたちよります。
村でフォルテを見てくれたのは鍛冶屋の娘というアルケミストの見習いのおねえさんでした。
「だいぶ痛んでいるわね、整備のしかた知らないのかな」
エクレールはうなづきました。
「そっかあ、旅をしてるんだよね。それじゃ困るぞ。お姉さんが教えてあげよう」
そういうとおねえさんは、エクレールのあたまをくしゃくしゃとなでました
エクレールはおかあさんみたいだな。そう思いました。
それからしばらく、村にある酒場に宿をとったエクレールは、おねえさんからフォルテの整備のしかたを教えてもらいました。
四日ばかりたったころ、おねえさんのかおに元気がなくなりました。
「つかれてるのかな、それともボクがいるのがめいわくなのかな」
不安げなエクレールのふくのそでをセサミがひっぱります。
「だいじょうぶだよ」
でも、エクレールはしんぱいでした。
その理由が分かったのは次の日でした。
この村では、昔から数十年に一度星夜祭というものがあり、そのときに神に巫女をおくることになっているというのです。
そしてその巫女がアルケミストのおねえさんなのだそうです。
「でも、なんで悲しそうなの」
村人はひそひそとエクレールにはなします。
「巫女というのは、おもてむきの話さ、実際はいけにえだよ」
理由はよくわかりません。
しかし、いけにえをささげないと村に不幸が起きる。昔から決まっていることで、そうしなければならないことなのだそうです。
「そんなのへんだ。おねえさんはやさしいよ」
エクレールがこえをあらげると、
「村人、全ての幸せを守るためだからなあ。一人の犠牲ですむなら、悪いともいえないさ」
村人はそういうのでした。
エクレールはその足で鍛冶屋にむかいました。
「おねえさん」
「心配してくれてるのかな、私は大丈夫だからね」
むりにつくった笑顔、エクレールにはそうみえました。
「だいじょうぶじゃない、かおにかいてあるもん」
おねえさんは、うつむき、そしてゆっくり、はっきりといいました。
「帰りなさい、君には関係のないことだよ」
それは強いきょぜつでした。
鍛冶屋からでてとぼとぼと歩くエクレールはセサミにききます。
「ボクには何もできないのかな」
セサミはいぶかしげにこちらをむきます。
ことばが分からないセサミに、それでもエクレールはいいます。
「ねえ、セサミ。ほんとうに? あのおねえさんは死んでしまうの」
らくたんしているエクレールを見てセサミは、
「きゅわん」
と鳴きました。
それを聞いたエクレール、もっと悲しい気持ちになりました。
どうしていいのか分からなくなったエクレールは、ふらふらと酒場に戻るのでした。
エクレールの旅行記。
そこにこれからつづられる物語は、いったいどういうお話になるのでしょうか?
悠久の内にある久遠、連なる輝きの海に眠る炎。
時。
皆全て、過去より出で未来に至り、そしてまた。
過去へ旅立つ。
記。
立ち、語り、進み、紡いだ後。
刻まれる証。
●旅立ち
エクレールは、ほこりをはらったあと、机の上に花をかざるといいました。
「いってくるね、おじいちゃん」
この家には、もうエクレールのほかに誰もいません。
けれど、それがさびしいわけではないのです。
エクレールはしばらく花をみつめたあと、机のひきだしから一冊のノートをとりだしました。
そのノートの表には、
「日記帳」
と、書いてあります。
エクレールがぱらぱらとページをめくり、日記の最後を開くと、
「旅に出たかったな」
そう一言書いてあります。
日記帳はエクレールのおじいさんが残したものです。
エクレールは、あるとき、おじいさんが死んでしまって一人になりました。
そしてどうするかしばらく考えました。
このままこの家で、おじいさんの思い出と生きていくのもいいかな。
そう思ったとき、みつけたのがおじいさんの残した日記帳でした。
旅。
エクレールは生まれてから遠くにいったことが一度もありません。
だから、その言葉の意味を知りたいとおもったのでした。
日記帳をみつけたエクレールは、どうするか数日なやんだあと、
「ボク、旅にでる」
そう決めました。
エクレールの飼っている小さな犬、名前をセサミといいます。
セサミがエクレールを見てしんぱいそう顔をしました。
「だいじょうぶだよ。セサミ。ボクはつよいから」
セサミはそれを聞いてうなずいたようにみえました。
準備をととのえたエクレールは、おじいさんがだいじにしていた
倉庫へいき、とびらをひらきました。
そこには三輪の足をもった機械の馬がこちらをみつめています。
「セサミ、あれは何?」
「ワン」
「ってわからないよね……」
エクレールは、めずらしそうに三輪車をさわっていましたが、この機械がのりものであることにきづきました。
そしてなにかを考えたあと。
「名前をつけようよ」
そういいました。
「わうーん」
なぜかセサミもよろこびました。しばらくエクレールは考えました。そのうちに、
「フォルテ」
うかんだ名前です。
「?」
セサミがふしぎそうな顔をします。
「わかんない、でも。それでいいきがするんだ」
「ワン」
「セサミくすぐったいよ」
セサミになめられて、エクレールは笑いました。
旅立ちの日。
エクレールはノートのタイトルを書きかえました。
そこには、
「エクレール旅行記」
と書いてあります。
「本で読んだんだ。旅にいったことを書くのを、旅行記っていうんだよ」
セサミはなぜか、エクレールをみて変なかおしました。
「セサミ、バカにしてるの?」
「わわん」
とびついてきたセサミをだきかかえたエクレールは、お気に入りのキャスケットをかぶり、風よけのゴーグルをかけます。
そして、おじいさんが残したぶかぶかのジャケットをはおると、フォルテに乗り。
「ボクは知りたいんだ」
そういいました。
青空の下、まっすぐな道がエクレールの前に広がっています。
「いこう、セサミ」
「わうん」
雲がゆっくりとながれ、鳥がはばたくとフォルテが音をあげて走り出しました。
●星祭の村
エクレールが旅をはじめて、しばらくたちました。
ある日、フォルテの調子が悪くなりました。
機械については何しらないエクレールは、フォルテを押してなんとか歩き、ある村にたちよります。
村でフォルテを見てくれたのは鍛冶屋の娘というアルケミストの見習いのおねえさんでした。
「だいぶ痛んでいるわね、整備のしかた知らないのかな」
エクレールはうなづきました。
「そっかあ、旅をしてるんだよね。それじゃ困るぞ。お姉さんが教えてあげよう」
そういうとおねえさんは、エクレールのあたまをくしゃくしゃとなでました
エクレールはおかあさんみたいだな。そう思いました。
それからしばらく、村にある酒場に宿をとったエクレールは、おねえさんからフォルテの整備のしかたを教えてもらいました。
四日ばかりたったころ、おねえさんのかおに元気がなくなりました。
「つかれてるのかな、それともボクがいるのがめいわくなのかな」
不安げなエクレールのふくのそでをセサミがひっぱります。
「だいじょうぶだよ」
でも、エクレールはしんぱいでした。
その理由が分かったのは次の日でした。
この村では、昔から数十年に一度星夜祭というものがあり、そのときに神に巫女をおくることになっているというのです。
そしてその巫女がアルケミストのおねえさんなのだそうです。
「でも、なんで悲しそうなの」
村人はひそひそとエクレールにはなします。
「巫女というのは、おもてむきの話さ、実際はいけにえだよ」
理由はよくわかりません。
しかし、いけにえをささげないと村に不幸が起きる。昔から決まっていることで、そうしなければならないことなのだそうです。
「そんなのへんだ。おねえさんはやさしいよ」
エクレールがこえをあらげると、
「村人、全ての幸せを守るためだからなあ。一人の犠牲ですむなら、悪いともいえないさ」
村人はそういうのでした。
エクレールはその足で鍛冶屋にむかいました。
「おねえさん」
「心配してくれてるのかな、私は大丈夫だからね」
むりにつくった笑顔、エクレールにはそうみえました。
「だいじょうぶじゃない、かおにかいてあるもん」
おねえさんは、うつむき、そしてゆっくり、はっきりといいました。
「帰りなさい、君には関係のないことだよ」
それは強いきょぜつでした。
鍛冶屋からでてとぼとぼと歩くエクレールはセサミにききます。
「ボクには何もできないのかな」
セサミはいぶかしげにこちらをむきます。
ことばが分からないセサミに、それでもエクレールはいいます。
「ねえ、セサミ。ほんとうに? あのおねえさんは死んでしまうの」
らくたんしているエクレールを見てセサミは、
「きゅわん」
と鳴きました。
それを聞いたエクレール、もっと悲しい気持ちになりました。
どうしていいのか分からなくなったエクレールは、ふらふらと酒場に戻るのでした。
エクレールの旅行記。
そこにこれからつづられる物語は、いったいどういうお話になるのでしょうか?
リプレイ本文
●村
青空を物憂げに見上げたエアルドフリス(ka1856)は、商売にならないかもな。
そう、思いました。
しばらくすると見慣れない客の訪れに気づいたのでしょうか、子供たちが恐る恐るやってきます。
金髪に小麦色の肌のエアは、どこか異国を感じさせるのかもしれません。ものめずらしそうにながめ、ちかより、はなれ、よってきます。
その様子を見たエアは仰々しく一礼した後、薬売りの口上をおどけて話します。
子供たちは、おどけたその姿に親しみをおぼえたのでしょう。
「うちのばーちゃん、腰が痛いって」
「それじゃあ、坊やの家に連れて行ってくれないか」
エアが老婆からそれとなく祭りについて聞きます。
「巫女は常から神事に携わっている? 違うなら祭前に禊が必要でしょうな。その手の事を知らん訳でもないもんで解りますとも、仕来りは大事にせにゃならん」
「そうさね、巫女は神前に立つ前、村の近くの泉で身を清めると昔きいたよ」
「これも、導きか」
エア何かを納得しいいました。
「ここが件の村ですか、観光をするには寂しいかぎりですね」
子供たちが集まったにぎやかな通りを横目に、手元にあるボロボロの地図をのぞきこみため息をついたあと、ジョン・フラム(ka0786)はつぶやきました。
噂を聞いて村にやってくる。それを決めたまではよかったのですが、とちゅう色々な冒険がありました。
くたびれたように肉体はすぐに休めを先ほどから連呼しています。
ジョンを迷いました。
だが、ここで負けてはジョン・フラムの名折れ。とばかりにジョンは調査を先行させることを決めるのでした。
「ほう、村周辺の調査ですか」
戸口に現れた村長は、ジョンが手土産に渡したクッキーを受け取るとそう返しました。
「ええ、各地辺境地域の風俗、伝承、などを調べてまわっています」
「学者、先生か何かですかな?」
村長の問いかけにジョンは少し悩んだあと
「いいえ、呪術をたしなむ身としての興味、過去への探求かもしれません」
そう答えました。
村長は呪術という言葉を聞くと、何事か考えていたようでしたが
「ちょうど今、この村でも祭りがありましてな、気に入るかどうかは分かりませんが見てゆくとよいかもしれませんな」
「祭りですか、どのような祭りでしょうか?」
村長は星神という伝承の神に巫女が踊りと身をささげる祭り。とだけいいました。
「身というのは?」
ジョンが聞くと
「そのままの意味ですな」
村長は表情をかえずにいいました。
「そうですか、私も似たような儀式を行ったことがあります。痛ましいことですが、必要なことかもしれません、特別な理由がなければ」
ジョンの語尾がするどくなりました。
「慣わしですからな」
言葉はそこで止まります。
ジョンは詳しい成り立ち聞き出そうと思いました。
儀式を行わなければ大いなる不幸が訪れる。
何者かにささげる、その事実だけです。
捧げるということなら、何か具体的な脅威があるのかもしれない? ジョンは調査をつづけます。
●酒場
夕暮れがちかづいた酒場に美しい調べが流れています。
中央の大きなテーブルでリュートを抱えたルナ・レンフィールド(ka1565)という旅の女楽師が奏でている曲のようです。
酒場にやってきていた小柄な青年はその曲を聞き、今日の終わりを感じました。
一曲弾き終わりにぎやかさを取り戻した酒場に
「一仕事、終わった、終わった。よし、 酒だ! 親父」
青年の声がひびきました。
「兄ちゃん、子供に出す酒はないぜ」
「俺は正真正銘大人だ、好き好んで小さいわけじゃないっての」
そのような言葉を聞きなれているのでしょう、ジルボ(ka1732)はすぐに返します。
ジルボの答えをまっていましたばかりに
「酒場のマスター、一流のジョークだよ。さあ、可愛い楽師さんの曲に乾杯だ! 一杯おごるぞ」
酒場は再び喧騒につつまれました。
騒がしい酒場、カウンターに座り、ミルクを静かに飲んでいたアルルベル・ベルベット(ka2730)はマスターに聞きました。
「ずいぶん賑やかだな、何かあるのだろうか?」
生真面目、硬さを残したアルルベルを見てマスターは思います。
夕暮れの酒場でミルクを飲む綺麗な女か、ある意味絵になるな。
「村の祭りが近いからね」
「祭り? それは良いものだな」
「まあ、普通ならそうだね」
「普通?」
そこまでいうとマスターは口ごもってしまいました。
村で唯一の酒場は大忙し、つぎつぎ新しいお客がやってきます。
そしてまたお客が到着しました。
(もう夜更けですか、遅くなってしまった)
ジョン・フラムはコートを翻し、あたりを見回すと着席しました。
すっかり出来上がってしまったジルボは、リュートの奏者であるルナの元にやってきました。
機嫌と酔ったせいなのでしょうか、ジルボはいつもより砕けた調子で話しかけます
「きっきは良い曲でした。今度は楽しい曲を聞きたいかもしれないかなっと」
「ありがとうございます。楽しい曲ですかあ」
ルナは小首をかしげ、何事考えているようでした
「ジルボ。女性を誘うなら、もっと洗練されたやり方があると思うが」
聞いたことのある声に、ジルボが振り向くと先には見知った顔がありました。
「エア!」
「エアルドフリスさん」
なぜか声は同時にあがります。
「これは奇遇、ルナもいるとは、ジルボは悪酔いか……」
「お二人は知り合いなのですか?」
ルナが聞くと
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
エアはとぼけたように答えます。
「変なところで曖昧にならなくてもいんじゃねえ!」
「失敬、記憶の混乱が突然起きた」
「……わざとだろ」
「そうとも言う」
「二人とも楽しそう、私も混ぜてほしいなあ」
しばらく、三人はおしゃべりをしたあと、ルナは新しい曲を奏で始めました。
差し向かいで席に座ったジルボは何気なく質問しまた。
「そういや、子供に向けるエアの顔つうか、雰囲気は少し違うんだな」
「顔なんてものは、いくつか用意するものさ」
「エアーにはいくつあるんだー」
ジルボは軽い気持ちで聞いたのでしょう。けれどエアは、どこか遠い場所を見るような目をしました。
「なあジルボ、いくつあるかなんて顔を作る側にも分からない、そう思わないか? いいから、酔い覚ましを飲め。特別サービスで高く売るぞ、俺の腕は安くない」
「それサービスじゃねーだろ。なんか気持ちいいから後にするわ」
うつら、うつらしたジルボの記憶がとぎれとぎれになった。
その時でした。
「たすけてください」
酒場の扉が開かれたのは――。
●選択
ジルボが顔につめたいものを感じて目を覚ますと、そこには一匹の小さな犬がしっぽをふっていました。
二日酔いにしては中途半端だな、目の前の犬は夢か、と思ったとき、額に手をおかれます。
「薬が効いたか、ツケておく。しっ、今良いところだ」
ジルポは、エア言うとおり黙ってそれを見ています。
仁川 リア(ka3483)はささいな意見の行き違いからルナとやりあうことになったようです。
「協力しないといっているわけではないだろう、けどさやってる事は動物狩って食料にしてるのと対して変わりはしないよ。生贄が人の命だから駄目だ、人の命は大事にしないと駄目だ、なんて、そういうのはただの人のエゴってやつだろう」
「けれど、そんなことをこの子に言う必要はないです」
ルナの傍らでしゅんとしている少年? 少女はうつむいています。
「現実を教えて何が悪いんだよ」
「それはおかしい、強者の理屈です。奪う側にとって当然でも、奪われる側にも当たりまえだといえるんですか!」
「きみだって奪う側に立っているだろう、だからそんなことをいえるんだ」
リアの言葉にルナは一瞬、黙りました。それは事実だからです。
「それでも、何もしないで見ているだけなんて私にはできません。ただの逃げだもの……」
ルナの言葉に今度はリアが黙りました。それもまた事実だからです。
二人の言い分は最初から交わるわけがありません。
一を犠牲にすることで百を救うこと。
一を救うことで百を犠牲にすること。
この二つの戦いのようなものなのです。
にらみ合う二人、空気は悪くなっていきます。このままでは成ることも成らなくなるかもしれません。同時にうつむいたまま身動きをしない訪問者の様子も気になります。
確かエクレールといったか? しかたない仲裁に入るしかない。
エアがそう思ったときでした。
「そこまで!」
二人の間に割って入ったのは金の髪をなびかせた乙女でした。
「互いの言い分は分かった。争っても仕方ないことで争っている、それも理解した。一ついいかな?」
間に入ったアルルベルは、ルナとリアと左右に視線をやったあと、こちらにあまり興味がなさそうなジョン・フラムをみつけいいました。
「そこの貴方、名前は?」
「ジョン・フラムです。ジョンで構いませんよ」
「では、ジョン。これから私の言うことが間違っているかどうか、判断してもらいたい」
「了解しました」
ジョンが頷いたのをみて、アルルベルはいいます。
「例えば、今、混ざり合って解決できない問題がここにあるとする。その問題全てを無理に解こうとするよりも、ひとまず解決できる部分を解いたあとで考える。これについてどう思う」
「時間が有限なら、そのほうが有効かもしれません。全部を解こうとするから、解けないだけで、違う面からみれば簡単な答えがあるかもしれません」
「ジョンの言うとおり。今、語るべきは世の条理の正否ではないと思う」
アルルベルの持ってまわった言い方に、ルナとリアはきょとんしています。
「その、やれることをやってみたら良いのではないか、そう私は言いたいだけ、だよ」
どこか照れたように言ったアルルベルの発言が、その後の全てを決めました。
落ち着いたあと、エクレールはリアに聞きました。
「お兄さんは、生きていて楽しくないの?」
「そういうわけではない、命はみんな平等、生きるために犠牲は当然だ。そういいたいだけなのかもね」
「でも、ボクはじぶんが死ぬのはいやだし、だれかがいなくなるのもいやだよ。さみしいよ」
正論も皮肉はこの子にいっても効かないだろうな、リアは考えます。
自分にとって正しいこと、それだってきっと世の中の摂理をもとに、社会の一面を見ているだけなのかもしれません。
「反抗することで自分が正しい。そうしたいところもあるかもしれない、か」
「?」
「独り言。僕はきっと、きみにたいして協力はできないと思うよ」
「ううん、ボクは知りたいんだ。だから、お兄さんの言うこともおもしろいよ」
「ありがとう、なんだか」
教えられているのはどっちか分からないかもね。
いいかけましたが、ささやかなプライドが邪魔しました。
●救出
救出劇は、みんなが思っていたよりもあっけなく終わりました。
エアの情報から巫女が禊で近くの泉に向かうことを知ったことから、次の日すぐに助けることができたのです。
巫女自身、迷う気持ちもあり、彼らの保護下に素直に入りました。
「ここからでしょうね」
いつのまにか仲間になったジョンが言うとアルルベルも頷きます。
アルルベルとジョンの二人は村での調査から一つの情報を共有していました。
生贄とされるのは覚醒者の資質をもつ者らしいということ。
そして
「情報は渡したよ、後は君達次第。明日を生きようとする人達の戦いを、ね。」
リアがもたらしたのは生贄は祭壇で儀式を終えたあと、村から少し離れた場所にあるという洞窟に向かう予定だったということです。
この二つから考えられることがあります。
ただ、その前にやっておくことがありました。
「こっちだセサミ、お前はなんていうか親近感を感じるな、こいつと似てるのかな」
セサミとパルムと戯れていたジルボに、
「ジルボ出番だ、一つ頼まれて欲しいことがある」
「エア、畏まってなんだよ」
エアは言いました。エクレールと巫女を安全な場所まで送ってほしいと。
この場から離れるか迷っている巫女に、アルルベルは真剣な眼差しを向けいいました。
「古い慣わしに自ら縛られる必要はない、貴女には貴女の生きかたがあるのだから、今は私たちの言葉に従って欲しい」
「けど、村に何かあったら、私は」
「存在する……なら、倒せ、いい……だけ」
巫女の耳元で、アルルベルが何事か囁くと巫女は納得したようでした。
みんなと別れる前、エクレールはぺこりとおじぎをすると。
「あの、ありがとうございます。これを」
エクレールはかわいい包み紙のキャンディを手渡しました。
「ボクがつくったんです。あんまりおいしくないと思うけど、それとよかったら一つおねがいあります」
何があったのか話して欲しい。エクレールはそういいました。
別れ際、ルナは
「この選択が正しかったのか、私も本当は分からないんだ。でも、これで良かったんだよね」
「みんながルナさんをバカにしても、ボクはうれしかった。だからルナさんの味方だよ。けど、これからどうなるのか本当のことを教えるとやくそくして」
「約束する」
そういうとルナはエクレールをやさしく抱きしめるのでした。
「なあ、エクレールはなんで旅をしているんだ」
道中、ジルポが聞きました。エクレールはしばらく考えていましたが
「ボクには、何もないから、みつけたかったのかも」
ぽつりといいました。
「そっか、次に会う時は俺とお前の旅行記。どっちが面白いか勝負しようぜ」
「うん! 競争だね」
「そういえば、エアが気にしてたんだが、エクレールって男・女どっちなんだ」
「ボクは女の子だよ! ジルボさんとデートだってできるよ」
悪戯っぽく笑いエクレールは答え、フォルテが軽やかに走り続けるのでした。
●fairy tale 「もう一つの結末」
一つの命は救われた。
その先にあるのは、星空の祭りという災厄。
想定されるのはきっと笑えない障害だろう。
報酬はエクレールからもらった飴玉だけ、つりあうとは思えない。
だが
「未知に対する探求ですかね、偽善を善に変えるのも一興です」
「私は後始末をする義務があります。それに約束もあるから」
「なんだか楽しそうじゃん。なんでも屋の宣伝にもなるか、報酬分の働きはしないと」
「乗りかかった船ということだな、古き鎖を断ち切るのにも良いだろう」
「最後まで見届けるの僕の役目だからね」
「俺はエア。風の行くままに歩むだけ、例え答えが此処に無くとも」
そう誰にでもなく言うと、男はパイプ取りだし、煙をくゆらせた。
吹く風が紫煙を攫い、誘う。
六つの言葉、六つの影と共にその場所に向けて――。
結末は星だけが知っている。
一つ言えるのはその後、正しき星祭に戻す道へ六人の客が招かれる。
その事実だけだ。
了
青空を物憂げに見上げたエアルドフリス(ka1856)は、商売にならないかもな。
そう、思いました。
しばらくすると見慣れない客の訪れに気づいたのでしょうか、子供たちが恐る恐るやってきます。
金髪に小麦色の肌のエアは、どこか異国を感じさせるのかもしれません。ものめずらしそうにながめ、ちかより、はなれ、よってきます。
その様子を見たエアは仰々しく一礼した後、薬売りの口上をおどけて話します。
子供たちは、おどけたその姿に親しみをおぼえたのでしょう。
「うちのばーちゃん、腰が痛いって」
「それじゃあ、坊やの家に連れて行ってくれないか」
エアが老婆からそれとなく祭りについて聞きます。
「巫女は常から神事に携わっている? 違うなら祭前に禊が必要でしょうな。その手の事を知らん訳でもないもんで解りますとも、仕来りは大事にせにゃならん」
「そうさね、巫女は神前に立つ前、村の近くの泉で身を清めると昔きいたよ」
「これも、導きか」
エア何かを納得しいいました。
「ここが件の村ですか、観光をするには寂しいかぎりですね」
子供たちが集まったにぎやかな通りを横目に、手元にあるボロボロの地図をのぞきこみため息をついたあと、ジョン・フラム(ka0786)はつぶやきました。
噂を聞いて村にやってくる。それを決めたまではよかったのですが、とちゅう色々な冒険がありました。
くたびれたように肉体はすぐに休めを先ほどから連呼しています。
ジョンを迷いました。
だが、ここで負けてはジョン・フラムの名折れ。とばかりにジョンは調査を先行させることを決めるのでした。
「ほう、村周辺の調査ですか」
戸口に現れた村長は、ジョンが手土産に渡したクッキーを受け取るとそう返しました。
「ええ、各地辺境地域の風俗、伝承、などを調べてまわっています」
「学者、先生か何かですかな?」
村長の問いかけにジョンは少し悩んだあと
「いいえ、呪術をたしなむ身としての興味、過去への探求かもしれません」
そう答えました。
村長は呪術という言葉を聞くと、何事か考えていたようでしたが
「ちょうど今、この村でも祭りがありましてな、気に入るかどうかは分かりませんが見てゆくとよいかもしれませんな」
「祭りですか、どのような祭りでしょうか?」
村長は星神という伝承の神に巫女が踊りと身をささげる祭り。とだけいいました。
「身というのは?」
ジョンが聞くと
「そのままの意味ですな」
村長は表情をかえずにいいました。
「そうですか、私も似たような儀式を行ったことがあります。痛ましいことですが、必要なことかもしれません、特別な理由がなければ」
ジョンの語尾がするどくなりました。
「慣わしですからな」
言葉はそこで止まります。
ジョンは詳しい成り立ち聞き出そうと思いました。
儀式を行わなければ大いなる不幸が訪れる。
何者かにささげる、その事実だけです。
捧げるということなら、何か具体的な脅威があるのかもしれない? ジョンは調査をつづけます。
●酒場
夕暮れがちかづいた酒場に美しい調べが流れています。
中央の大きなテーブルでリュートを抱えたルナ・レンフィールド(ka1565)という旅の女楽師が奏でている曲のようです。
酒場にやってきていた小柄な青年はその曲を聞き、今日の終わりを感じました。
一曲弾き終わりにぎやかさを取り戻した酒場に
「一仕事、終わった、終わった。よし、 酒だ! 親父」
青年の声がひびきました。
「兄ちゃん、子供に出す酒はないぜ」
「俺は正真正銘大人だ、好き好んで小さいわけじゃないっての」
そのような言葉を聞きなれているのでしょう、ジルボ(ka1732)はすぐに返します。
ジルボの答えをまっていましたばかりに
「酒場のマスター、一流のジョークだよ。さあ、可愛い楽師さんの曲に乾杯だ! 一杯おごるぞ」
酒場は再び喧騒につつまれました。
騒がしい酒場、カウンターに座り、ミルクを静かに飲んでいたアルルベル・ベルベット(ka2730)はマスターに聞きました。
「ずいぶん賑やかだな、何かあるのだろうか?」
生真面目、硬さを残したアルルベルを見てマスターは思います。
夕暮れの酒場でミルクを飲む綺麗な女か、ある意味絵になるな。
「村の祭りが近いからね」
「祭り? それは良いものだな」
「まあ、普通ならそうだね」
「普通?」
そこまでいうとマスターは口ごもってしまいました。
村で唯一の酒場は大忙し、つぎつぎ新しいお客がやってきます。
そしてまたお客が到着しました。
(もう夜更けですか、遅くなってしまった)
ジョン・フラムはコートを翻し、あたりを見回すと着席しました。
すっかり出来上がってしまったジルボは、リュートの奏者であるルナの元にやってきました。
機嫌と酔ったせいなのでしょうか、ジルボはいつもより砕けた調子で話しかけます
「きっきは良い曲でした。今度は楽しい曲を聞きたいかもしれないかなっと」
「ありがとうございます。楽しい曲ですかあ」
ルナは小首をかしげ、何事考えているようでした
「ジルボ。女性を誘うなら、もっと洗練されたやり方があると思うが」
聞いたことのある声に、ジルボが振り向くと先には見知った顔がありました。
「エア!」
「エアルドフリスさん」
なぜか声は同時にあがります。
「これは奇遇、ルナもいるとは、ジルボは悪酔いか……」
「お二人は知り合いなのですか?」
ルナが聞くと
「そうかもしれないし、そうでないかもしれない」
エアはとぼけたように答えます。
「変なところで曖昧にならなくてもいんじゃねえ!」
「失敬、記憶の混乱が突然起きた」
「……わざとだろ」
「そうとも言う」
「二人とも楽しそう、私も混ぜてほしいなあ」
しばらく、三人はおしゃべりをしたあと、ルナは新しい曲を奏で始めました。
差し向かいで席に座ったジルボは何気なく質問しまた。
「そういや、子供に向けるエアの顔つうか、雰囲気は少し違うんだな」
「顔なんてものは、いくつか用意するものさ」
「エアーにはいくつあるんだー」
ジルボは軽い気持ちで聞いたのでしょう。けれどエアは、どこか遠い場所を見るような目をしました。
「なあジルボ、いくつあるかなんて顔を作る側にも分からない、そう思わないか? いいから、酔い覚ましを飲め。特別サービスで高く売るぞ、俺の腕は安くない」
「それサービスじゃねーだろ。なんか気持ちいいから後にするわ」
うつら、うつらしたジルボの記憶がとぎれとぎれになった。
その時でした。
「たすけてください」
酒場の扉が開かれたのは――。
●選択
ジルボが顔につめたいものを感じて目を覚ますと、そこには一匹の小さな犬がしっぽをふっていました。
二日酔いにしては中途半端だな、目の前の犬は夢か、と思ったとき、額に手をおかれます。
「薬が効いたか、ツケておく。しっ、今良いところだ」
ジルポは、エア言うとおり黙ってそれを見ています。
仁川 リア(ka3483)はささいな意見の行き違いからルナとやりあうことになったようです。
「協力しないといっているわけではないだろう、けどさやってる事は動物狩って食料にしてるのと対して変わりはしないよ。生贄が人の命だから駄目だ、人の命は大事にしないと駄目だ、なんて、そういうのはただの人のエゴってやつだろう」
「けれど、そんなことをこの子に言う必要はないです」
ルナの傍らでしゅんとしている少年? 少女はうつむいています。
「現実を教えて何が悪いんだよ」
「それはおかしい、強者の理屈です。奪う側にとって当然でも、奪われる側にも当たりまえだといえるんですか!」
「きみだって奪う側に立っているだろう、だからそんなことをいえるんだ」
リアの言葉にルナは一瞬、黙りました。それは事実だからです。
「それでも、何もしないで見ているだけなんて私にはできません。ただの逃げだもの……」
ルナの言葉に今度はリアが黙りました。それもまた事実だからです。
二人の言い分は最初から交わるわけがありません。
一を犠牲にすることで百を救うこと。
一を救うことで百を犠牲にすること。
この二つの戦いのようなものなのです。
にらみ合う二人、空気は悪くなっていきます。このままでは成ることも成らなくなるかもしれません。同時にうつむいたまま身動きをしない訪問者の様子も気になります。
確かエクレールといったか? しかたない仲裁に入るしかない。
エアがそう思ったときでした。
「そこまで!」
二人の間に割って入ったのは金の髪をなびかせた乙女でした。
「互いの言い分は分かった。争っても仕方ないことで争っている、それも理解した。一ついいかな?」
間に入ったアルルベルは、ルナとリアと左右に視線をやったあと、こちらにあまり興味がなさそうなジョン・フラムをみつけいいました。
「そこの貴方、名前は?」
「ジョン・フラムです。ジョンで構いませんよ」
「では、ジョン。これから私の言うことが間違っているかどうか、判断してもらいたい」
「了解しました」
ジョンが頷いたのをみて、アルルベルはいいます。
「例えば、今、混ざり合って解決できない問題がここにあるとする。その問題全てを無理に解こうとするよりも、ひとまず解決できる部分を解いたあとで考える。これについてどう思う」
「時間が有限なら、そのほうが有効かもしれません。全部を解こうとするから、解けないだけで、違う面からみれば簡単な答えがあるかもしれません」
「ジョンの言うとおり。今、語るべきは世の条理の正否ではないと思う」
アルルベルの持ってまわった言い方に、ルナとリアはきょとんしています。
「その、やれることをやってみたら良いのではないか、そう私は言いたいだけ、だよ」
どこか照れたように言ったアルルベルの発言が、その後の全てを決めました。
落ち着いたあと、エクレールはリアに聞きました。
「お兄さんは、生きていて楽しくないの?」
「そういうわけではない、命はみんな平等、生きるために犠牲は当然だ。そういいたいだけなのかもね」
「でも、ボクはじぶんが死ぬのはいやだし、だれかがいなくなるのもいやだよ。さみしいよ」
正論も皮肉はこの子にいっても効かないだろうな、リアは考えます。
自分にとって正しいこと、それだってきっと世の中の摂理をもとに、社会の一面を見ているだけなのかもしれません。
「反抗することで自分が正しい。そうしたいところもあるかもしれない、か」
「?」
「独り言。僕はきっと、きみにたいして協力はできないと思うよ」
「ううん、ボクは知りたいんだ。だから、お兄さんの言うこともおもしろいよ」
「ありがとう、なんだか」
教えられているのはどっちか分からないかもね。
いいかけましたが、ささやかなプライドが邪魔しました。
●救出
救出劇は、みんなが思っていたよりもあっけなく終わりました。
エアの情報から巫女が禊で近くの泉に向かうことを知ったことから、次の日すぐに助けることができたのです。
巫女自身、迷う気持ちもあり、彼らの保護下に素直に入りました。
「ここからでしょうね」
いつのまにか仲間になったジョンが言うとアルルベルも頷きます。
アルルベルとジョンの二人は村での調査から一つの情報を共有していました。
生贄とされるのは覚醒者の資質をもつ者らしいということ。
そして
「情報は渡したよ、後は君達次第。明日を生きようとする人達の戦いを、ね。」
リアがもたらしたのは生贄は祭壇で儀式を終えたあと、村から少し離れた場所にあるという洞窟に向かう予定だったということです。
この二つから考えられることがあります。
ただ、その前にやっておくことがありました。
「こっちだセサミ、お前はなんていうか親近感を感じるな、こいつと似てるのかな」
セサミとパルムと戯れていたジルボに、
「ジルボ出番だ、一つ頼まれて欲しいことがある」
「エア、畏まってなんだよ」
エアは言いました。エクレールと巫女を安全な場所まで送ってほしいと。
この場から離れるか迷っている巫女に、アルルベルは真剣な眼差しを向けいいました。
「古い慣わしに自ら縛られる必要はない、貴女には貴女の生きかたがあるのだから、今は私たちの言葉に従って欲しい」
「けど、村に何かあったら、私は」
「存在する……なら、倒せ、いい……だけ」
巫女の耳元で、アルルベルが何事か囁くと巫女は納得したようでした。
みんなと別れる前、エクレールはぺこりとおじぎをすると。
「あの、ありがとうございます。これを」
エクレールはかわいい包み紙のキャンディを手渡しました。
「ボクがつくったんです。あんまりおいしくないと思うけど、それとよかったら一つおねがいあります」
何があったのか話して欲しい。エクレールはそういいました。
別れ際、ルナは
「この選択が正しかったのか、私も本当は分からないんだ。でも、これで良かったんだよね」
「みんながルナさんをバカにしても、ボクはうれしかった。だからルナさんの味方だよ。けど、これからどうなるのか本当のことを教えるとやくそくして」
「約束する」
そういうとルナはエクレールをやさしく抱きしめるのでした。
「なあ、エクレールはなんで旅をしているんだ」
道中、ジルポが聞きました。エクレールはしばらく考えていましたが
「ボクには、何もないから、みつけたかったのかも」
ぽつりといいました。
「そっか、次に会う時は俺とお前の旅行記。どっちが面白いか勝負しようぜ」
「うん! 競争だね」
「そういえば、エアが気にしてたんだが、エクレールって男・女どっちなんだ」
「ボクは女の子だよ! ジルボさんとデートだってできるよ」
悪戯っぽく笑いエクレールは答え、フォルテが軽やかに走り続けるのでした。
●fairy tale 「もう一つの結末」
一つの命は救われた。
その先にあるのは、星空の祭りという災厄。
想定されるのはきっと笑えない障害だろう。
報酬はエクレールからもらった飴玉だけ、つりあうとは思えない。
だが
「未知に対する探求ですかね、偽善を善に変えるのも一興です」
「私は後始末をする義務があります。それに約束もあるから」
「なんだか楽しそうじゃん。なんでも屋の宣伝にもなるか、報酬分の働きはしないと」
「乗りかかった船ということだな、古き鎖を断ち切るのにも良いだろう」
「最後まで見届けるの僕の役目だからね」
「俺はエア。風の行くままに歩むだけ、例え答えが此処に無くとも」
そう誰にでもなく言うと、男はパイプ取りだし、煙をくゆらせた。
吹く風が紫煙を攫い、誘う。
六つの言葉、六つの影と共にその場所に向けて――。
結末は星だけが知っている。
一つ言えるのはその後、正しき星祭に戻す道へ六人の客が招かれる。
その事実だけだ。
了
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相談、或いは雑談 エアルドフリス(ka1856) 人間(クリムゾンウェスト)|30才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/03/17 20:48:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/12 21:58:20 |