ゲスト
(ka0000)
Darker than Trickery
マスター:剣崎宗二

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2014/07/05 12:00
- 完成日
- 2014/07/10 22:32
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「ふむ。……いい、下がって休め」
偵察報告を聞いたバタルトゥが、跪いた部族の者に命じる。
先のハンターたちの尽力により、通商路は回復された。
逃げた一体の山羊型歪虚も、その後にマフォジョ族による掃討隊により捕捉、撃殺された。
だが、その逃げた方向が気がかりになっていたバタルトゥは、更なる捜索を命じた。
そもそも、この歪虚たちは、突如その場に出現したのか。それとも‥‥
「洞窟、か」
捜索の結果、山道の隣に、今まで記述のなかった洞窟をオイマト族は発見する。
そこを探索した所――恐らくは歪虚と推測される正体不明の敵に襲撃され、探索隊に負傷者が出たのだ。
幸いにも探索隊は熟練の戦士たちだったがために、死者を出さないまま撤退に成功したのだが、このままではいつまた歪虚がその洞窟から出現し商道を塞がないとも限らない。何とかする必要があった。
「ガルヴァンは……もう帰ったのか?」
「はっ。例年の祭り事の準備です」
溜息をつく。なんともタイミングが悪い。
洞窟の足場の悪さ。暗さ。狭さ。
それは何れも騎馬兵の力を制限する要素であった。故に歩行で最大の力を発揮するガルヴァンの事を考えたのだが――
「マフォジョ族には最も重要なお祭りだ。引き止めるわけにはいかんだろう」
「族長、もう一つお伝えしたい事があります」
「……何だ」
跪いた部族の仲間が下がらなかったのをみて、僅かにバタルトゥは眉を吊り上げる。
「――今回の敵の中には、『スキレット』が紛れ込んでいる可能性があります」
「何‥‥?」
バタルトゥの首が、僅かに揺れる。
スキレット。それは、とある部族の言葉で『ずる賢い小人』。
悪知恵が働き、他の雑魔を統制する事で知られる、一体の歪虚。
今までオイマト族は幾度もこれの撃殺を試みたが、何れもすんでの所で逃げ切られていたのである。
「敵の動きは統制が取れておりました。恐ろしいほどに。でなければ奇襲とはいえ、あの程度で我らは遅れを取りません」
「成程」
それでは、尚更不利な戦場に、騎兵である自部族の者を送り込む訳には行かない。
――そして思いつくのは、先日そのガルヴァンに賞賛されたハンターたち。
「――仕方あるまい。あの者たちを頼るしかないか」
十分に注意するように、との一筆を付け加え。依頼書が、ハンターズオフィスに届く事になる。
「さて、これはただの偶然か。それとも、また何かが――」
偵察報告を聞いたバタルトゥが、跪いた部族の者に命じる。
先のハンターたちの尽力により、通商路は回復された。
逃げた一体の山羊型歪虚も、その後にマフォジョ族による掃討隊により捕捉、撃殺された。
だが、その逃げた方向が気がかりになっていたバタルトゥは、更なる捜索を命じた。
そもそも、この歪虚たちは、突如その場に出現したのか。それとも‥‥
「洞窟、か」
捜索の結果、山道の隣に、今まで記述のなかった洞窟をオイマト族は発見する。
そこを探索した所――恐らくは歪虚と推測される正体不明の敵に襲撃され、探索隊に負傷者が出たのだ。
幸いにも探索隊は熟練の戦士たちだったがために、死者を出さないまま撤退に成功したのだが、このままではいつまた歪虚がその洞窟から出現し商道を塞がないとも限らない。何とかする必要があった。
「ガルヴァンは……もう帰ったのか?」
「はっ。例年の祭り事の準備です」
溜息をつく。なんともタイミングが悪い。
洞窟の足場の悪さ。暗さ。狭さ。
それは何れも騎馬兵の力を制限する要素であった。故に歩行で最大の力を発揮するガルヴァンの事を考えたのだが――
「マフォジョ族には最も重要なお祭りだ。引き止めるわけにはいかんだろう」
「族長、もう一つお伝えしたい事があります」
「……何だ」
跪いた部族の仲間が下がらなかったのをみて、僅かにバタルトゥは眉を吊り上げる。
「――今回の敵の中には、『スキレット』が紛れ込んでいる可能性があります」
「何‥‥?」
バタルトゥの首が、僅かに揺れる。
スキレット。それは、とある部族の言葉で『ずる賢い小人』。
悪知恵が働き、他の雑魔を統制する事で知られる、一体の歪虚。
今までオイマト族は幾度もこれの撃殺を試みたが、何れもすんでの所で逃げ切られていたのである。
「敵の動きは統制が取れておりました。恐ろしいほどに。でなければ奇襲とはいえ、あの程度で我らは遅れを取りません」
「成程」
それでは、尚更不利な戦場に、騎兵である自部族の者を送り込む訳には行かない。
――そして思いつくのは、先日そのガルヴァンに賞賛されたハンターたち。
「――仕方あるまい。あの者たちを頼るしかないか」
十分に注意するように、との一筆を付け加え。依頼書が、ハンターズオフィスに届く事になる。
「さて、これはただの偶然か。それとも、また何かが――」
リプレイ本文
●Into the Dark
「雑魔を使役する歪虚……物語的には異変の前触れとして登場させるような立ち位置でしょうかね」
カキカキ。
「以後も登場して、主人公の憎めないライバルとなる可能性もあるおいしい相手。燃えますねぇ」
メモメモ。
愛用の手帳に書き記し、パタンと閉じたのは、アシュリー・クロウ(ka1354)。
彼女はハンターであると同時に『小説家』でもある。故に、『取材』には余念は無い。
「書くのもいいが、警戒は怠るな」
最前列を歩くウィンス・デイランダール(ka0039)が冷静に伝える。
恐らくは肌で多少なりとも、異様な雰囲気を感じているのだろう。
「歪虚を倒すのは怖いっすけど、ひ、人と協力しながら戦うのはもっと怖いっすっ……だ、だけど、すこしずつ、なれてかないと……」
「がっはっは。わしもこれが初依頼じゃ。共に力試しといこうではないか!」
「ひっ!?」
ギルバート(ka2315)の大声に、思わず小さく悲鳴を上げるイェスタ・グラスバレー(ka0407)。
人間恐怖症とも言える彼は、それでも頑張り。震えながらも、四方を警戒する。
「待て」
――ギルバートの声に誘われたのか。いや、いずれ来るべき物だったか。
ミスティカ(ka2227)の鋭い視線が、松明の火に照らされて揺れる、僅かな敵影を前方に捉える。
「悪さが過ぎる歪虚には、少し、痛い目に遭わせる必要があるわね」
先手必勝。足にマテリアルの力を収束させ、一気に爆発させる。
猛烈な加速を持って、目標へ接近する彼女。しかし、やはり重装備が祟っているのか、一手で近接攻撃の射程内に入れるには、僅かに足の速さが足りない。
彼女と同時に行動したウェインは逆に、接近するためにワザと攻撃を捨て走る事に集中していた。
(「……このままじゃ横に狭くて戦えやしねぇ」)
洞窟の一番狭い所で味方にぶつかりあわないようにとの、彼なりの配慮であった。
一方、後方に構えている銃及び魔術を主力とする者は、前に進んだミスティカにのLEDライトによって照らし出された蜘蛛型の一体に狙いを定める。
「にゃは、これが私の最大火力ですが……さて、蜘蛛の丸焼きとは美味しいのでしょうか?」
集中した常闇(ka0345)の周りには、いくつもの魔方陣が空に浮かび上がっている。
その姿は正に『魔女』。無数の魔方陣を一点に集中させ、紅の炎矢として、形を成す。
「試してみるしかありませんね」
射出された炎の矢は、恐ろしい精密度を以って一直線に蜘蛛型へと飛来する。
直撃。命中した点から噴出した炎は、一瞬で歪虚を包み込み――その体力のほぼ全てを奪う。
まだ倒れた訳ではない。その敵が反撃する前に、ハンターたちは追撃する。
「……生き埋めも蜘蛛の餌もごめんだ。気乗りはしねぇが、自分から動かねぇと何も変わんねぇなら、動くしかねぇ」
迸る魔法の光。カルロ・カルカ(ka1608)の放つ魔法の矢が、その狙い通りに蜘蛛の足を打ち砕く。
「社長として……こんな所で負ける訳にはいかないからね」
背負うギルドの名を。社の名の重みを、マテリアルと共にその銃弾に乗せ。
リコ・ハユハ(ka0542)の猟銃から放たれた弾丸は、頭部から後方へと一直線に貫通し。歪虚を撃破したのである。
●その狙いは
「キキッ!?」
蜘蛛型の一体が倒れた事によりできた敵隊の穴。照らすミスティカのLEDライトが、僅かな一瞬、そこに小さなゴブリンらしき影を映し出す。
「アレが依頼者の言っていた『スキレット』かのう。できればこの機に倒してしまいたいが。――ハァァァァ!」
己の覇気を呼び起こすように、気を溜め込んだギルバートが咆哮する。
次の一撃に備え、力を蓄える。
「キーッ!」
だが、ハンターたちが再度の攻撃を開始する前に。蝙蝠人間型と残った蜘蛛型が、一斉に前に出る。
蝙蝠人間から放たれる超音波は、炎の矢と全く同じ射線を遡るようにして、常闇を狙う。
「っ!」
その常闇を庇おうとするカルロではあったが、蜘蛛の粘着弾が飛来していたため回避を余儀なくされ、それは適わず。
「にゃ……うるさいですねぇ……」
超音波の影響に眉を顰めた常闇に追撃するように、粘着弾が天井に張り付いた別の蜘蛛型から発射され、集中が途切れた彼女を捕縛する。
だが、それ以上の追撃は無く。
残った者が狙ったのは――ウィンス。
「上等だ。纏めてかかって来い」
元より囮を行うつもりだった彼にとって、これは好都合。槍の中央を持ち回転させ、如何なる方向からの攻撃にも対応するようにすると共に、洞窟壁による狭さの影響を最低限に抑える。
襲い来る蜘蛛の毒牙。槍の柄でその頭を弾き上げるようにしてかわす。が、直後に放たれた蝙蝠人間型の超音波が、彼の槍の引き戻しを僅かに遅らせ。別の一体の蹴り上げが、彼の顎を捉える。
「ちいっ……!」
直ぐに体勢を立て直そうとし、槍で続く蜘蛛たちの攻撃を捌こうとするが、超音波を受けている状態では残り二体の内一体目の粘着弾を叩き落すのが精一杯。
毒牙が、彼のふくらはぎに食い込む。
然し、歪虚たちの攻撃が少数に集中したのは、この場合好機とも言えよう。
最大の脅威である常闇を牽制しようとした蜘蛛たちの攻撃は、その分ウィンスが踏み止まる機会を作り。逆にウィンスを集中的に狙った攻撃は、その他のハンターたちが自在に攻撃できる事を意味していた。
「ま、先ずは……怯ませます!」
投擲される松明。洞窟内に可燃物がなく、また湿気も多かったが為に燃え広がりはしなかったが……ギルバート、イェスタ、そしてミスティカが投擲したそれは、一瞬、ほぼ全ての敵を怯ませる事に成功する。
即座に移動の必要がない後衛が追撃。
「……頭隠して『足』隠さず……とは、この事か」
ゴブリンであるスキレットは小柄である。故に、頭部への攻撃は周囲の歪虚に阻まれ安く、極めて狙いにくい。だが、足元なら別だ。
集中から放たれた、カルロ魔力の矢は、ゴブリンのふくらはぎを貫通し、その場に縫い付ける。
「にゃは、もう一発……」
再度魔法陣を展開、収束させ、炎の矢を打ち出す常闇。だが、無理な姿勢と超音波による集中力の乱れが重なり、矢はスキレットの太ももを掠め、地面に穴を穿つに留まる。
「キッ!?」
足を穿たれ、機動力を失い。そして常闇の一矢の威力を、その目に刻んだスキレット。その心中には、一つの思いが浮かぶ。
『目の前の敵を殲滅せねば、生きてこの場は抜けられない』
――『窮鼠猫を噛む』の諺に於ける『窮鼠』とは。要は『追い詰められた鼠』なのである。
ハンターたちの攻撃は、見事にスキレットと言う『鼠』を追い詰めたのである。
「牽制します……!」
一方。その決断を敵が下すのとほぼ同時。リコの銃弾によってバランスを崩した蜘蛛の一体へ、ギルバートが襲い掛かっていた。
「フン!!」
刀による一閃は、蜘蛛の牙によって受け止められるが。雑魔レベルの牙のみで鋼鉄の刀を完全に止められる訳がなく、刃は牙を折り、口の横を割く。
「一撃で両断するつもりじゃったのがのう。……やはり、刀と言うのはどうも軽くていかんな」
「なら、技で補えばいい」
イェスタの強化魔法を受けたウィンスの槍が、なぎ払うように蜘蛛の足を痛打し、転倒させる。
反撃とばかりに吐き出される糸弾が、彼を捉えるが――
「面白ぇ。……殴りあう気か」
全力で、至近距離から。柄を振り下ろす。
●二兎を追う者
「バラバラは、お好きかしらね?」
回り込むようにミスティカが接近。無数の剣閃がスキレットを狙う。
足を封じられたこのゴブリンにそれを回避するすべは無く、剣閃は彼を切り刻むが――
「ぐっ!?」
急にガクン、とミスティカの足元が沈む。見れば僅かに地に割れ目が開き、彼女の足を挟みこんでいた。
ハンターたちの内、半数ほどは最優先でスキレットを狙い。もう半数は蜘蛛型から撃破していく堅実な作戦を選択していた。
だが、それは、同時に両方を最速で撃破する事を放棄したと言う事を意味する。
「ぐおっ!?」
三体の蜘蛛型が一斉に、目の前の蜘蛛に槍を突き刺し、ギルバートの突き立てた刀と共にそれを撃破したウィンスに襲い掛かる。
「ぐぁ……!」
最初に受けた毒の効果もあり、ウィンスの体力は、ついに限界を迎える。
「土や石を操るというのは……こういう事なのね……」
一方。地面から隆起する岩の拳を、片腕で何とか受け止めるミスティカ。
衝撃で強引に足を地割れから抜き。飛ばされた先で壁を蹴り、再度スキレットへと襲い掛かる。
が、その前に立ちはだかるは蝙蝠人間。神速の勢いで振るわれた両拳の刃は歪虚の体に突き刺さるが、至近距離で超音波が浴びせられ、蹴りが彼女を壁に叩きつける。
「不味いわね」
回復で体力を立て直そうとするが、既に前衛の一端たるウィンスが倒れた以上。スキレットはギルバートより、より自身の脅威になりそうなミスティカを優先に攻撃するよう、指揮していた。
噛み付いてきた蜘蛛の頭部に、刃を突き立てる。絶叫を上げてその蜘蛛は離れていくが、蝙蝠型が。そして他の蜘蛛が。彼女には接近していた。
歪虚の大半がミスティカに群がり、僅かにスキレットの周囲の防備が薄くなった隙を突き。常闇とカルロの二人が、再びその撃破を狙う。
「いっしょに行きましょうか……☆」
「……仕方ない」
虚空より練成されし炎の矢と魔力の矢が、交差し、螺旋を描くように、飛んでいく。
「キキキッ!?」
それは、スキレットの腕を掠め、深い焼けどを残す。
「あらぁ?貫くつもりで撃ったのに――」
そこまで言って、常闇ははたと気づく。
周囲が。暗い。
延焼しなかった松明やランタンの光は、激戦によって有耶無耶の内に踏み潰され、消されていた。
ミスティカのライトは倒れた衝撃で回線でも切れたのか、消えてしまい――現状の戦場にある光源は、松明を投げた後予備にLEDライトを持っていたギルバートと、松明を投擲しなかったカルロのそれのみ。
前者は照らし出せる方向が限られており、ギルバートの狙いからそれは蜘蛛型に向けられていた。後者は、余りに前線から離れすぎており――故に届く光量に問題があったのだ。
「本当にちょっと暗くなってきましたね。ミステリーには適した舞台ですけど……そうやって一人ずつ消えていく、ってのは勘弁願いたいですね」
イェスタがマテリアルを以って彼女の力を強化した直後。ギルバートの一撃を回避するため後ろへ跳躍した蜘蛛型の頭上から、さらに跳躍し天井を蹴ってアシュリーが襲い掛かる。ミスティカの最後の一撃により目を損傷していた蜘蛛型にそれが回避できるはずも無く、地に叩きつけられる。
トドメの一撃。三体目の蜘蛛型を刺殺したアシュリーが、次の目標を探す。
だが、ギルバートが周囲に向かってくるりとLEDライトを回しても、敵の姿はなかった。
「どこへ行ったのじゃ……?」
●Back Attack
「避けるのですよ……!」
常闇の叫びに、カルロが反応する。
飛び掛る蜘蛛の一撃を回避し、カウンター気味にマテリアルの砲撃を叩き込む。
続く蜘蛛の牙が彼の背中を襲い、跳び蹴りが腹部を襲う。
「歪虚なら……とは思ったが……ここまで熱烈とはな……」
前から戻る味方が、先ほどの蜘蛛型に飛び掛るのを見て。カルロの意識は薄れていった。
――カルロが倒れた事による問題は、戦力の減退以外にももう一つあった。
光源の消滅、である。これでハンター側が所持する光源は、LEDライト一つとなったのだ。
「人に害をなす虫は、黙って潰されるべきじゃな」
アシュリーが刃で蜘蛛型の足を切断し、バランスを崩させた隙を突き、ギルバートの強打が蜘蛛型を地面に叩きつけられる。
「こ、来ないでくださいっ!」
至近距離から放たれたイェスタの機導砲がそれを斜め上から貫通し、四体目の蜘蛛型、撃破。
ギルバートのLEDライトが蜘蛛型に向かっている間。それより後方に居た常闇は、突如として。強烈な超音波を受ける事になる。
「にゃっ!?」
次の瞬間、足払いを受け、転倒する彼女に、蜘蛛型が這い寄る。
突き立てられる毒牙。走る痛み。だが――
「この距離まで近づけば、見えますねぇ」
ボン。蜘蛛の頭を掴んだその掌から、炎が迸る。火の矢は、蜘蛛型の頭部を原型を留めないまでに焼き尽くす。
直後、地面から突きあがる土の拳によって、常闇は天井へと叩きつけられ、そのまま地へ落下する。
●Escape
ギルバートの猛烈な刀の薙ぎ払いが、まるでハンマーの如く、蜘蛛型の一体を壁に叩きつける。
さらに踏み込みと共に体当たりするように剣を突き立て、アシュリーがそれを壁に縫い付ける。
「これで、一章終了!と言うやつですね。感想はどうですか?お返事は断末魔でどうぞ!」
だが、その直後。交差するような跳び蹴りが、今度はアシュリー自身を壁に叩きつけ。そして、壁から巨大な二本の手が生え、挟む様に彼女を押しつぶす。
「ちょっと不味いのう」
僅かにギルバートが前方に一歩、踏み出した瞬間。突如できた地の穴に足を取られ、バランスを崩す。危険を察知して振るう刃が蝙蝠人型の一体の接近を阻むが、もう一体の跳び蹴りが彼を地面に押し付ける。
「人に足を乗せるとは……無礼なやつじゃのう……!」
剛力を以って強引に、背に乗せた蝙蝠人型を持ち上げる。そして、イェスタの砲撃をそれが腕で防いだ一瞬の隙を突き、刃の一閃。その足を断つ。絶叫ををあげながら、片足だけでムーンサルトし、再度それはギルバートを踏み倒す。そして襲い来るもう一体の乱打――
リンリーン。
狙撃によって足を切られた歪虚にトドメを刺した直後。電話のベルにも似た幻聴に、リコが大きくバックステップを取る。
次の瞬間。土の拳が、彼女の居た場所を横切る。
「あ、あぶなかった……」
ギルバートが倒れ、今度こそ完全に光源が途絶えた以上。敵も残り二体とは言え、これ以上続けるのは危険だ。
暗闇の中で、イェスタと目線を合わせる。
――ハンターたちは、撤退を決断したのである。
逃げるハンターたちを、スキレットは追おうとはしなかった。
元よりこの臆病な歪虚がここまで戦闘を継続したのは、ハンターたちを倒さねば生きては帰れない、と言う思い込みによる物であったからな。
脅威が去り、臆病な性を取り戻したスキレットは、最後に残った一体の蝙蝠人型と共に、洞窟から逃げ去った。
かくして洞窟の一戦は、痛み分けとなった。
歪虚の排除には成功したものの、『彼らがどこから進入してきたのか』と言う疑問が解決しない以上、いつまた、彼らが舞い戻ってくるか分からない。
今はただ、体を休め。次の一戦に向けて考えを巡らせるべきだろう。
そう考え、ハンターたちは帰途に着いた。
「雑魔を使役する歪虚……物語的には異変の前触れとして登場させるような立ち位置でしょうかね」
カキカキ。
「以後も登場して、主人公の憎めないライバルとなる可能性もあるおいしい相手。燃えますねぇ」
メモメモ。
愛用の手帳に書き記し、パタンと閉じたのは、アシュリー・クロウ(ka1354)。
彼女はハンターであると同時に『小説家』でもある。故に、『取材』には余念は無い。
「書くのもいいが、警戒は怠るな」
最前列を歩くウィンス・デイランダール(ka0039)が冷静に伝える。
恐らくは肌で多少なりとも、異様な雰囲気を感じているのだろう。
「歪虚を倒すのは怖いっすけど、ひ、人と協力しながら戦うのはもっと怖いっすっ……だ、だけど、すこしずつ、なれてかないと……」
「がっはっは。わしもこれが初依頼じゃ。共に力試しといこうではないか!」
「ひっ!?」
ギルバート(ka2315)の大声に、思わず小さく悲鳴を上げるイェスタ・グラスバレー(ka0407)。
人間恐怖症とも言える彼は、それでも頑張り。震えながらも、四方を警戒する。
「待て」
――ギルバートの声に誘われたのか。いや、いずれ来るべき物だったか。
ミスティカ(ka2227)の鋭い視線が、松明の火に照らされて揺れる、僅かな敵影を前方に捉える。
「悪さが過ぎる歪虚には、少し、痛い目に遭わせる必要があるわね」
先手必勝。足にマテリアルの力を収束させ、一気に爆発させる。
猛烈な加速を持って、目標へ接近する彼女。しかし、やはり重装備が祟っているのか、一手で近接攻撃の射程内に入れるには、僅かに足の速さが足りない。
彼女と同時に行動したウェインは逆に、接近するためにワザと攻撃を捨て走る事に集中していた。
(「……このままじゃ横に狭くて戦えやしねぇ」)
洞窟の一番狭い所で味方にぶつかりあわないようにとの、彼なりの配慮であった。
一方、後方に構えている銃及び魔術を主力とする者は、前に進んだミスティカにのLEDライトによって照らし出された蜘蛛型の一体に狙いを定める。
「にゃは、これが私の最大火力ですが……さて、蜘蛛の丸焼きとは美味しいのでしょうか?」
集中した常闇(ka0345)の周りには、いくつもの魔方陣が空に浮かび上がっている。
その姿は正に『魔女』。無数の魔方陣を一点に集中させ、紅の炎矢として、形を成す。
「試してみるしかありませんね」
射出された炎の矢は、恐ろしい精密度を以って一直線に蜘蛛型へと飛来する。
直撃。命中した点から噴出した炎は、一瞬で歪虚を包み込み――その体力のほぼ全てを奪う。
まだ倒れた訳ではない。その敵が反撃する前に、ハンターたちは追撃する。
「……生き埋めも蜘蛛の餌もごめんだ。気乗りはしねぇが、自分から動かねぇと何も変わんねぇなら、動くしかねぇ」
迸る魔法の光。カルロ・カルカ(ka1608)の放つ魔法の矢が、その狙い通りに蜘蛛の足を打ち砕く。
「社長として……こんな所で負ける訳にはいかないからね」
背負うギルドの名を。社の名の重みを、マテリアルと共にその銃弾に乗せ。
リコ・ハユハ(ka0542)の猟銃から放たれた弾丸は、頭部から後方へと一直線に貫通し。歪虚を撃破したのである。
●その狙いは
「キキッ!?」
蜘蛛型の一体が倒れた事によりできた敵隊の穴。照らすミスティカのLEDライトが、僅かな一瞬、そこに小さなゴブリンらしき影を映し出す。
「アレが依頼者の言っていた『スキレット』かのう。できればこの機に倒してしまいたいが。――ハァァァァ!」
己の覇気を呼び起こすように、気を溜め込んだギルバートが咆哮する。
次の一撃に備え、力を蓄える。
「キーッ!」
だが、ハンターたちが再度の攻撃を開始する前に。蝙蝠人間型と残った蜘蛛型が、一斉に前に出る。
蝙蝠人間から放たれる超音波は、炎の矢と全く同じ射線を遡るようにして、常闇を狙う。
「っ!」
その常闇を庇おうとするカルロではあったが、蜘蛛の粘着弾が飛来していたため回避を余儀なくされ、それは適わず。
「にゃ……うるさいですねぇ……」
超音波の影響に眉を顰めた常闇に追撃するように、粘着弾が天井に張り付いた別の蜘蛛型から発射され、集中が途切れた彼女を捕縛する。
だが、それ以上の追撃は無く。
残った者が狙ったのは――ウィンス。
「上等だ。纏めてかかって来い」
元より囮を行うつもりだった彼にとって、これは好都合。槍の中央を持ち回転させ、如何なる方向からの攻撃にも対応するようにすると共に、洞窟壁による狭さの影響を最低限に抑える。
襲い来る蜘蛛の毒牙。槍の柄でその頭を弾き上げるようにしてかわす。が、直後に放たれた蝙蝠人間型の超音波が、彼の槍の引き戻しを僅かに遅らせ。別の一体の蹴り上げが、彼の顎を捉える。
「ちいっ……!」
直ぐに体勢を立て直そうとし、槍で続く蜘蛛たちの攻撃を捌こうとするが、超音波を受けている状態では残り二体の内一体目の粘着弾を叩き落すのが精一杯。
毒牙が、彼のふくらはぎに食い込む。
然し、歪虚たちの攻撃が少数に集中したのは、この場合好機とも言えよう。
最大の脅威である常闇を牽制しようとした蜘蛛たちの攻撃は、その分ウィンスが踏み止まる機会を作り。逆にウィンスを集中的に狙った攻撃は、その他のハンターたちが自在に攻撃できる事を意味していた。
「ま、先ずは……怯ませます!」
投擲される松明。洞窟内に可燃物がなく、また湿気も多かったが為に燃え広がりはしなかったが……ギルバート、イェスタ、そしてミスティカが投擲したそれは、一瞬、ほぼ全ての敵を怯ませる事に成功する。
即座に移動の必要がない後衛が追撃。
「……頭隠して『足』隠さず……とは、この事か」
ゴブリンであるスキレットは小柄である。故に、頭部への攻撃は周囲の歪虚に阻まれ安く、極めて狙いにくい。だが、足元なら別だ。
集中から放たれた、カルロ魔力の矢は、ゴブリンのふくらはぎを貫通し、その場に縫い付ける。
「にゃは、もう一発……」
再度魔法陣を展開、収束させ、炎の矢を打ち出す常闇。だが、無理な姿勢と超音波による集中力の乱れが重なり、矢はスキレットの太ももを掠め、地面に穴を穿つに留まる。
「キッ!?」
足を穿たれ、機動力を失い。そして常闇の一矢の威力を、その目に刻んだスキレット。その心中には、一つの思いが浮かぶ。
『目の前の敵を殲滅せねば、生きてこの場は抜けられない』
――『窮鼠猫を噛む』の諺に於ける『窮鼠』とは。要は『追い詰められた鼠』なのである。
ハンターたちの攻撃は、見事にスキレットと言う『鼠』を追い詰めたのである。
「牽制します……!」
一方。その決断を敵が下すのとほぼ同時。リコの銃弾によってバランスを崩した蜘蛛の一体へ、ギルバートが襲い掛かっていた。
「フン!!」
刀による一閃は、蜘蛛の牙によって受け止められるが。雑魔レベルの牙のみで鋼鉄の刀を完全に止められる訳がなく、刃は牙を折り、口の横を割く。
「一撃で両断するつもりじゃったのがのう。……やはり、刀と言うのはどうも軽くていかんな」
「なら、技で補えばいい」
イェスタの強化魔法を受けたウィンスの槍が、なぎ払うように蜘蛛の足を痛打し、転倒させる。
反撃とばかりに吐き出される糸弾が、彼を捉えるが――
「面白ぇ。……殴りあう気か」
全力で、至近距離から。柄を振り下ろす。
●二兎を追う者
「バラバラは、お好きかしらね?」
回り込むようにミスティカが接近。無数の剣閃がスキレットを狙う。
足を封じられたこのゴブリンにそれを回避するすべは無く、剣閃は彼を切り刻むが――
「ぐっ!?」
急にガクン、とミスティカの足元が沈む。見れば僅かに地に割れ目が開き、彼女の足を挟みこんでいた。
ハンターたちの内、半数ほどは最優先でスキレットを狙い。もう半数は蜘蛛型から撃破していく堅実な作戦を選択していた。
だが、それは、同時に両方を最速で撃破する事を放棄したと言う事を意味する。
「ぐおっ!?」
三体の蜘蛛型が一斉に、目の前の蜘蛛に槍を突き刺し、ギルバートの突き立てた刀と共にそれを撃破したウィンスに襲い掛かる。
「ぐぁ……!」
最初に受けた毒の効果もあり、ウィンスの体力は、ついに限界を迎える。
「土や石を操るというのは……こういう事なのね……」
一方。地面から隆起する岩の拳を、片腕で何とか受け止めるミスティカ。
衝撃で強引に足を地割れから抜き。飛ばされた先で壁を蹴り、再度スキレットへと襲い掛かる。
が、その前に立ちはだかるは蝙蝠人間。神速の勢いで振るわれた両拳の刃は歪虚の体に突き刺さるが、至近距離で超音波が浴びせられ、蹴りが彼女を壁に叩きつける。
「不味いわね」
回復で体力を立て直そうとするが、既に前衛の一端たるウィンスが倒れた以上。スキレットはギルバートより、より自身の脅威になりそうなミスティカを優先に攻撃するよう、指揮していた。
噛み付いてきた蜘蛛の頭部に、刃を突き立てる。絶叫を上げてその蜘蛛は離れていくが、蝙蝠型が。そして他の蜘蛛が。彼女には接近していた。
歪虚の大半がミスティカに群がり、僅かにスキレットの周囲の防備が薄くなった隙を突き。常闇とカルロの二人が、再びその撃破を狙う。
「いっしょに行きましょうか……☆」
「……仕方ない」
虚空より練成されし炎の矢と魔力の矢が、交差し、螺旋を描くように、飛んでいく。
「キキキッ!?」
それは、スキレットの腕を掠め、深い焼けどを残す。
「あらぁ?貫くつもりで撃ったのに――」
そこまで言って、常闇ははたと気づく。
周囲が。暗い。
延焼しなかった松明やランタンの光は、激戦によって有耶無耶の内に踏み潰され、消されていた。
ミスティカのライトは倒れた衝撃で回線でも切れたのか、消えてしまい――現状の戦場にある光源は、松明を投げた後予備にLEDライトを持っていたギルバートと、松明を投擲しなかったカルロのそれのみ。
前者は照らし出せる方向が限られており、ギルバートの狙いからそれは蜘蛛型に向けられていた。後者は、余りに前線から離れすぎており――故に届く光量に問題があったのだ。
「本当にちょっと暗くなってきましたね。ミステリーには適した舞台ですけど……そうやって一人ずつ消えていく、ってのは勘弁願いたいですね」
イェスタがマテリアルを以って彼女の力を強化した直後。ギルバートの一撃を回避するため後ろへ跳躍した蜘蛛型の頭上から、さらに跳躍し天井を蹴ってアシュリーが襲い掛かる。ミスティカの最後の一撃により目を損傷していた蜘蛛型にそれが回避できるはずも無く、地に叩きつけられる。
トドメの一撃。三体目の蜘蛛型を刺殺したアシュリーが、次の目標を探す。
だが、ギルバートが周囲に向かってくるりとLEDライトを回しても、敵の姿はなかった。
「どこへ行ったのじゃ……?」
●Back Attack
「避けるのですよ……!」
常闇の叫びに、カルロが反応する。
飛び掛る蜘蛛の一撃を回避し、カウンター気味にマテリアルの砲撃を叩き込む。
続く蜘蛛の牙が彼の背中を襲い、跳び蹴りが腹部を襲う。
「歪虚なら……とは思ったが……ここまで熱烈とはな……」
前から戻る味方が、先ほどの蜘蛛型に飛び掛るのを見て。カルロの意識は薄れていった。
――カルロが倒れた事による問題は、戦力の減退以外にももう一つあった。
光源の消滅、である。これでハンター側が所持する光源は、LEDライト一つとなったのだ。
「人に害をなす虫は、黙って潰されるべきじゃな」
アシュリーが刃で蜘蛛型の足を切断し、バランスを崩させた隙を突き、ギルバートの強打が蜘蛛型を地面に叩きつけられる。
「こ、来ないでくださいっ!」
至近距離から放たれたイェスタの機導砲がそれを斜め上から貫通し、四体目の蜘蛛型、撃破。
ギルバートのLEDライトが蜘蛛型に向かっている間。それより後方に居た常闇は、突如として。強烈な超音波を受ける事になる。
「にゃっ!?」
次の瞬間、足払いを受け、転倒する彼女に、蜘蛛型が這い寄る。
突き立てられる毒牙。走る痛み。だが――
「この距離まで近づけば、見えますねぇ」
ボン。蜘蛛の頭を掴んだその掌から、炎が迸る。火の矢は、蜘蛛型の頭部を原型を留めないまでに焼き尽くす。
直後、地面から突きあがる土の拳によって、常闇は天井へと叩きつけられ、そのまま地へ落下する。
●Escape
ギルバートの猛烈な刀の薙ぎ払いが、まるでハンマーの如く、蜘蛛型の一体を壁に叩きつける。
さらに踏み込みと共に体当たりするように剣を突き立て、アシュリーがそれを壁に縫い付ける。
「これで、一章終了!と言うやつですね。感想はどうですか?お返事は断末魔でどうぞ!」
だが、その直後。交差するような跳び蹴りが、今度はアシュリー自身を壁に叩きつけ。そして、壁から巨大な二本の手が生え、挟む様に彼女を押しつぶす。
「ちょっと不味いのう」
僅かにギルバートが前方に一歩、踏み出した瞬間。突如できた地の穴に足を取られ、バランスを崩す。危険を察知して振るう刃が蝙蝠人型の一体の接近を阻むが、もう一体の跳び蹴りが彼を地面に押し付ける。
「人に足を乗せるとは……無礼なやつじゃのう……!」
剛力を以って強引に、背に乗せた蝙蝠人型を持ち上げる。そして、イェスタの砲撃をそれが腕で防いだ一瞬の隙を突き、刃の一閃。その足を断つ。絶叫ををあげながら、片足だけでムーンサルトし、再度それはギルバートを踏み倒す。そして襲い来るもう一体の乱打――
リンリーン。
狙撃によって足を切られた歪虚にトドメを刺した直後。電話のベルにも似た幻聴に、リコが大きくバックステップを取る。
次の瞬間。土の拳が、彼女の居た場所を横切る。
「あ、あぶなかった……」
ギルバートが倒れ、今度こそ完全に光源が途絶えた以上。敵も残り二体とは言え、これ以上続けるのは危険だ。
暗闇の中で、イェスタと目線を合わせる。
――ハンターたちは、撤退を決断したのである。
逃げるハンターたちを、スキレットは追おうとはしなかった。
元よりこの臆病な歪虚がここまで戦闘を継続したのは、ハンターたちを倒さねば生きては帰れない、と言う思い込みによる物であったからな。
脅威が去り、臆病な性を取り戻したスキレットは、最後に残った一体の蝙蝠人型と共に、洞窟から逃げ去った。
かくして洞窟の一戦は、痛み分けとなった。
歪虚の排除には成功したものの、『彼らがどこから進入してきたのか』と言う疑問が解決しない以上、いつまた、彼らが舞い戻ってくるか分からない。
今はただ、体を休め。次の一戦に向けて考えを巡らせるべきだろう。
そう考え、ハンターたちは帰途に着いた。
依頼結果
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依頼相談掲示板 | |||
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相談をしましょうか アシュリー・クロウ(ka1354) エルフ|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/05 11:01:25 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/06/30 00:58:41 |