ゲスト
(ka0000)
恐ろしい隣人
マスター:秋風落葉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/03/20 19:00
- 完成日
- 2015/03/24 21:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●ゴブリンが住み着いた!
ゴブリン。
身長1.2mほどの亜人である。
性格はどちらかというと凶暴であり、大抵は粗末な武器や鎧で武装している。
人間にとっては、すこぶるやっかいな連中だ。
そして、彼らに悩まされる者達がここにも……。
「うわあっ!!」
年若い男がゴブリンに棍棒で打たれ、地に倒れた。
村人達はくやしそうにするものの、彼らに逆らうことは出来ない。
「マタ来ルカラナ」
たどたどしい人間の言葉を残し、ゴブリン達はにやにやと笑いながら、袋を担ぎなおして悠々と去っていく。彼らが背負っている袋の中は、村からの略奪品で一杯だ。
ゴブリンが去った後、何人かが男に駆け寄り、助け起こす。
とはいえ、村人の内の数名は全身に怪我をしていた。
突然やって来た彼らに逆らい、手痛い反撃を受けたのだ。
自分たちに降ってきた災厄に、暗い顔をする村人達。人の輪がいくつもできあがるが、そこから漏れてくる声は悲観的なものばかりである。
「……」
そんな中、一人の男が人々の輪に加わることなくそっと村を抜け出した。
●ゴブリンの住処
「やはりここか……」
呟いたのは先程村を抜け出した男である。
男は去っていくゴブリン達の後をつけ、彼らが住処にしたらしい村の近くの洞窟へとやって来ていた。
その身のこなしは、村人にしてはかなり洗練されたものであった。
「あの時も、俺はここでゴブリンと戦ったんだったか……あれが初めての依頼だったな……」
一瞬だけ過去に想いをはせ、男はすぐに思考を切り替えると鋭い視線を敵地へと向けた。洞窟の中からは、今日の収穫を祝って酒でも飲んでいるのか、陽気に歌う声が聞こえてくる。
「俺がもう少し若ければ良かったんだがな……今回ばかりはハンターに頼むしかないか」
男はそう一人ごちるときびすを返し、足早にその場を去った。
●依頼
「あら?」
早朝、ハンターオフィスのドアを開け、中に足を踏み入れた受付嬢は、カウンターに載せられている何枚かの紙を見て怪訝な顔をした。少なくとも、昨日の時点ではなかったはずのものである。
受付嬢は首をかしげながら、折りたたまれたそれらを開く。
「え? これは……」
書かれていたのは、ある村の近隣に住み着いたゴブリン達を殲滅して欲しいという依頼であった。受付嬢は慌てて他の紙面にも目を通す。手書きで、いくつかのことが書き付けられていた。
ゴブリン達が身につけている武器や防具についての記述。
報酬は相場どおりに支払うこと。再び村にゴブリン達が来る前に、けりをつけて欲しいこと。
そして、最後の一枚は洞窟内部の見取り図であった。
ゴブリン。
身長1.2mほどの亜人である。
性格はどちらかというと凶暴であり、大抵は粗末な武器や鎧で武装している。
人間にとっては、すこぶるやっかいな連中だ。
そして、彼らに悩まされる者達がここにも……。
「うわあっ!!」
年若い男がゴブリンに棍棒で打たれ、地に倒れた。
村人達はくやしそうにするものの、彼らに逆らうことは出来ない。
「マタ来ルカラナ」
たどたどしい人間の言葉を残し、ゴブリン達はにやにやと笑いながら、袋を担ぎなおして悠々と去っていく。彼らが背負っている袋の中は、村からの略奪品で一杯だ。
ゴブリンが去った後、何人かが男に駆け寄り、助け起こす。
とはいえ、村人の内の数名は全身に怪我をしていた。
突然やって来た彼らに逆らい、手痛い反撃を受けたのだ。
自分たちに降ってきた災厄に、暗い顔をする村人達。人の輪がいくつもできあがるが、そこから漏れてくる声は悲観的なものばかりである。
「……」
そんな中、一人の男が人々の輪に加わることなくそっと村を抜け出した。
●ゴブリンの住処
「やはりここか……」
呟いたのは先程村を抜け出した男である。
男は去っていくゴブリン達の後をつけ、彼らが住処にしたらしい村の近くの洞窟へとやって来ていた。
その身のこなしは、村人にしてはかなり洗練されたものであった。
「あの時も、俺はここでゴブリンと戦ったんだったか……あれが初めての依頼だったな……」
一瞬だけ過去に想いをはせ、男はすぐに思考を切り替えると鋭い視線を敵地へと向けた。洞窟の中からは、今日の収穫を祝って酒でも飲んでいるのか、陽気に歌う声が聞こえてくる。
「俺がもう少し若ければ良かったんだがな……今回ばかりはハンターに頼むしかないか」
男はそう一人ごちるときびすを返し、足早にその場を去った。
●依頼
「あら?」
早朝、ハンターオフィスのドアを開け、中に足を踏み入れた受付嬢は、カウンターに載せられている何枚かの紙を見て怪訝な顔をした。少なくとも、昨日の時点ではなかったはずのものである。
受付嬢は首をかしげながら、折りたたまれたそれらを開く。
「え? これは……」
書かれていたのは、ある村の近隣に住み着いたゴブリン達を殲滅して欲しいという依頼であった。受付嬢は慌てて他の紙面にも目を通す。手書きで、いくつかのことが書き付けられていた。
ゴブリン達が身につけている武器や防具についての記述。
報酬は相場どおりに支払うこと。再び村にゴブリン達が来る前に、けりをつけて欲しいこと。
そして、最後の一枚は洞窟内部の見取り図であった。
リプレイ本文
●
「なんつーテンプレなファンタジー事件……実際、ファンタジーな世界にいることを実感させられるわ。おかげでビキニアーマー着られるし。うん、女性はみんなビキニアーマーを着るべきだと思うわ」
遥・シュテルンメーア(ka0914)が口にした通り、今回の依頼は洞窟にいるゴブリン達を倒すというものだ。
「うわ、また洞窟かー。なんか洞窟に縁があるような気がするね。ゴブリンって初めて見るけどどんな敵なんだろう。できることなら倉庫の物品は無事に持ち帰ってあげたいよね。また別のゴブリンが棲みつかないように、後始末も出来ることならしていきたいけど」
先日、とある鉱山の中を探索する依頼に参加した逢見 千(ka4357)が呟く。
「それはそれとして、サクッとゴブリンをやっつけることにしましょう。連中の装備を略奪よ!」
外道な発言をしている遥の隣で、他のハンター達は紙面に目線を落としている。
「室内戦か。まあ見取り図もあるし、数以外の優位性はこっちにあるか」
受付嬢に手渡された紙を見ながら、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)が囁いた。見取り図を含め、敵の数や武装などの作戦に必要な情報が書かれた紙束は、受付嬢が朝オフィスにやって来た時、カウンターの上に置かれていたという。
「ここまで至れり尽くせりなのも珍しいですよね。お膳立てがきちんとされている以上、負けるわけには行きませんもん、頑張りましょう」
リカルドと一緒に紙面を覗き込んでいる佐倉 桜(ka0386)が意気込みを口にした。その言葉にアバルト・ジンツァー(ka0895)も頷く。
「いろいろと怪しいところもあるが、ゴブリンによる被害が出ていると言うのならば、見過ごすわけにもいかない。速やかに退治する事としよう」
この情報に誤りがなければ、彼の言う通り迅速に敵を討つことは可能だろう。
●
「さてさて、ゴブリンの皆様方には略奪の代償としてごにゃ~ぽ☆な目にあってもらいましょうかね」
ハンター達が行動を起こしたのは夜。
ユピテル(ka4051)が遠くにほの見えるゴブリン達の住処を見ながらひとりごちた。なお、『ごにゃ~ぽ』とは彼女の口癖であるが、特に深い意味はないらしい。
テトラ・H(ka4358)は深呼吸をしている。彼女はこれがハンターとして初めて参加する依頼であり、緊張してしまう自分を切り替えようとしてのことだ。
メトロノーム・ソングライト(ka1267)はそんなテトラにそっと近づき、声をかける。初陣である彼女を気遣っているのだ。
そういった行為はあまり得意ではないメトロノームではあったが、それでも彼女の言葉はテトラの緊張を多少ほぐす効果があったようだ。
ハンター達はやがて所定の位置に付く。洞窟の入り口には依頼主がもたらした情報どおり、ゴブリンが二体、歩哨として立っている。
アバルトは弓胎弓を、テトラはショートボウを構えた。
「弓は得意じゃないんだけど……選り好みはしてられないわね」
テトラの小さな呟き。
メトロノームもフェアリーワンドを取り出し、スキル行使の準備に入る。
遥は『攻性強化』をアバルト、テトラの両者へと順に使用する。そしてすぐに自分が持つディファレンスエンジンを見張りのゴブリンへと向けた。
アバルトとテトラも『強弾』を用いて敵を一撃で仕留める狙いだ。
まずはメトロノームのスキル、『スリープクラウド』による青白い雲状のガスがゴブリン達を包んだ。一体は睡魔に負けて洞窟の入り口に寄りかかる形で眠りに付き、もう一体は突然の事態に慌てて周囲へと視線をめぐらせた。危険を知らせる声を出そうというのか、大きく息を吸い込む。しかし、もう遅い。
アバルトとテトラの矢が、遥の『機導砲』による白い光線が、そのゴブリンを同時に貫いた。ゴブリンは声もなく絶命する。
まだ生きているゴブリンも、眠りに落ちているところをリカルドの試作振動刀「オートMURAMASA」によって喉を切り裂かれ、二度と目覚めることはなくなった。
「音は立てたくないからな、見かけはエグいが省エネの効率重視で行こうか」
ゴブリンの返り血を浴びながら、リカルドは呟いた。
●
洞窟内部。
リカルドが一旦先行し、右手にあるという倉庫と寝床として扱われている場所へと向かう。洞窟内はまだ明るく、ゴブリン達が動く気配があった。
幸い、リカルドの動きが気付かれることはなかったが、しかし目的である偵察もあまり効果をあげることなく彼は仲間の下へと戻る。偵察することに拘泥して敵に姿を見られては本末転倒だからだ。
ハンター達は当初の予定通り、二班に分かれた。A班は入り口から左手にある食事処を急襲、B班は入り口近くの丁字路の辺りで待機。敵の増援、もしくは逃走を防ぐのが目的だ。
A班はなるべく音を立てずに洞窟の奥へと進む。先日の略奪の際による食物を飲み食いしているのか、もう夜だというのに通路の先からは騒がしい音が聞こえる。
A班の前衛を務めるリカルド、千は得物を手に一気に突っ込んだ。
慌てたのはゴブリン達だ。突然曲がり角に姿を見せた侵入者に、一体が大声をあげる。酒に酔ってはいたものの、その体はなんとか動き、彼らはそばにある武器を手にする。
ユナイテッド・ドライブ・ソードを長剣の形にし、千は手近な敵へと切りかかる。彼女の狙いはホブゴブリン。しかし目標は部屋の奥におり、まずは経路を確保しようとしてのことである。
「ようやく抜ける。やっぱり弓は難しいって思ってたところなのよねっ」
テトラとアバルトはほぼ同時に弓から拳銃へと武器を持ち替えた。この戦場で弓の持ち味を生かすのは難しい。とはいえ、テトラのその動作は場所を鑑みたというよりも好みの問題で行われたようではあった。
アバルトは入り口付近から『威嚇射撃』による足止めを行う。テトラも彼と並んでゴブリンへとオートマチックピストルの銃口を向け、トリガーを引く。
乱戦模様となった中、一体のゴブリンはテーブル代わりの粗末な台の上を乗り超え、ハンター達へと殴りかかってきた。それを剣で受け止めたのは遥。敵の得物を受け流し、返す一撃を見舞う。
「元軍人だったから基本的な訓練はうけてたけど、整備兵だし現場での実戦経験少ないのよねえ……」
そうぼやく遥だったが、その剣さばきは中々のものであった。
リカルドは壁を背にして囲まれないようにし、機を見るやいなや『踏込』で敵の懐に飛び込んだ。棍棒を持つゴブリンの腕を、左のハンドサポーターで掴み、相手の動きが止まったところへ右手の刀を繰り出した。まずは腕を狙い、その後に喉、心臓を突く。
「恨みはないが仕事だからな。俺は戦闘狂でもないしな、せめて苦しまないように殺してやるよ」
ハンター達の活躍でゴブリンは瞬く間に数を減らし、千も目当てのホブゴブリンへと肉薄した。ホブゴブリンは咆哮をあげ、彼女に両手斧を振るう。
ゴブリンと比較するとその一撃は洗練されたものであり、千は刃をかわしきれずに腕を切り裂かれた。痛みに顔をしかめつつ、千も剣を繰り出す。ホブゴブリンはそれをすんでのところで回避した。
アバルトはホブゴブリンに狙いを定めて射撃を行う。『強弾』により威力が増した銃弾はホブゴブリンの鎧を穿ち、胸に穴を開ける。亜人は痛みに悲鳴をあげ、斧を再度振り回したが、今度は千の動きを捉えることはできなかった。
●
敵陣へと突っ込んだA班の後ろを守る形で丁字路に待機するB班。
さすがに騒ぎを聞きつけたか、彼女たちの側へとゴブリン達の気配が近づいてくる。
「来たようです」
メトロノームが仲間へと囁き、桜、ユピテルも頷いた。
ユピテルはルーメンスピアを構えて、二人を守るような位置へと移動する。
曲がり角からひょっこりと顔を出した一体のゴブリン。そこに桜は『ホーリーライト』を撃ち込んだ。
「通行止めです、悪しからず」
直撃を受けたゴブリンは見事に転び、耳障りな叫びを上げた。どうやら斥候だったらしい。その上を踏み越えるようにして続々とゴブリン達がやってくる。
メトロノームも『ファイアアロー』を行使した。彼女の詠唱が澄んだ旋律となって洞窟内に儚げに響く。
やがてメトロノームが構えるフェアリーワンドの先から迸ったのは、水晶のように美しい彼女とは対照的な、燃え盛る炎の矢だった。
魔法の矢はゴブリンの一体に命中し、絶命させる。
ユピテルは向かってくるゴブリン達を迎撃する為に踏み込んだ。
「ごにゃ~ぽ!」
掛け声と共に槍が突き出され、穂先が亜人の革鎧を抉る。しかし、まだ致命傷には至らない。
先頭にいるゴブリン二体は彼女に向かって棍棒を振るう。武器のリーチを生かした立ち回りと、あらかじめ使用しておいた『地を駆けるもの』の効果もあり、ゴブリン達の攻撃をなんとかしのぐユピテル。
得物の差があるとはいえ、完全に敵を足止めするのは難しく、ゴブリンの内の一体がユピテルの脇をすり抜け、桜へと間合いを詰めると棍棒を振るった。
桜は慌てず盾でがっちりと受け止め、さらに『シールドバッシュ』により敵を押し込む。ゴブリンはたまらず体勢を崩し、後ろに溜まっている他のゴブリン達の中に倒れこんだ。
その間にユピテルは目の前にいるゴブリンへとさらなる攻撃を繰り出し、ひるませる。
狭い通路のおかげで敵も主戦力であるホブゴブリンが出て来れず、三人のハンター達はゴブリン達を押さえ込んでいた。
そこにA班のハンター達が駆けつける。亜人達は増援を目にして浮き足立つ。
動きが一瞬止まったゴブリンの隙を逃さず、ユピテルは鋭い突きを見舞い、一体のゴブリンに傷を負わせた。
ゴブリン達は不利を悟るが、逃げ道は封鎖されている入り口だけだ。なんとか押し込もうとする亜人達だったが、数の増えたハンター達に対してそれは不可能であった。最後尾にいたゴブリンの内二体は、通路の奥へと逃げ去っていく。
相反してホブゴブリンは両手斧を構え、突っ込んでくる。残るゴブリン達もそれにならい、最後の攻勢をかけてきた。
合流したハンター達は丁字路のあたりで迎え撃つ。
メトロノームのウィンドスラッシュがホブゴブリンを切り裂いた。テトラも発砲によりゴブリンに傷を負わせる。
遥の『機導砲』による一筋のビームが敵を貫き、桜は千へと『ヒール』を使用して彼女の腕の怪我を癒した。前衛たちも敵を寄せ付けず、ゴブリン達は命を落としていく。
最後に残ったホブゴブリンが両手斧を手にリカルドへと挑みかかった。リカルドはそれを回避し、すり抜ける際に敵の膝裏を切りつけた。さきほどの魔法による傷もあり、たまらず転倒するホブゴブリンに、リカルドは銃を突きつける。
「悪いな、デカブツ。恨んでくれるなよ? レスト・イン・ピース」
リカルドの言葉と共に引き金が引かれ、ホブゴブリンは永遠の眠りへと落ちていった。
●
通路での戦いが終わった。
入り口の見張りと合わせ、倒したゴブリン達の数は十二体。先程逃げた二体がおそらく最後のゴブリンのはずだ。
ハンター達は警戒を怠らずに洞窟の奥へと進む。この先にあるのは、寝床、そして倉庫として使われている場所である。
ハンター達が曲がり角まで達すると、こちらをうかがっていた二体のゴブリンが慌てて一つの部屋の方へと逃げ込んだ。依頼人の資料では倉庫と記されていたスペースである。そこには村などから奪い取った略奪品が納められている可能性がある。ハンター達は足早に後を追った。
部屋の中ではゴブリン二体が興奮した声で喚いていた。彼らは村からの略奪品らしきものを床にならべ、その側に棍棒を持って立っており、床を指差して何かをハンター達にまくし立てていた。
これらを全てやるから見逃せと言っているのか、それともこれらを壊されたくなかったら出て行けと言っているのか。
だが、それを知る機会は結局やってこなかった。ゴブリン達の周囲に青白いガスが一瞬浮かび、それが消えた時、二体の亜人は夢の世界へと旅立っていたからだ。
前衛たちの後ろでこっそりと『スリープクラウド』を使用したメトロノームの手柄である。
もちろん眠ったゴブリンはすぐさまハンター達によって始末された。もう一つの部屋である寝床と思しき場所にも敵の姿はなく、彼らはゴブリン達の掃討に成功したのであった。
●
アバルト、桜は倉庫内にある物品をチェックしている。幸い、損傷が目立つものはない。
遥はゴブリンの身につけている革鎧を剥ぎ取っていた。どうやら、これを元にビキニアーマーを作ってもらう計画らしい。
やがて作業も終わり、ハンター達はしばしの休憩を取った。朝になってからできる限りの荷を背負い、洞窟を後にする。向かう先はもちろん今回被害にあった村だ。
村の中は陰鬱とした空気に支配されていた。略奪の被害にあい、しかもその当事者であるゴブリン達が近くに住み着いたのだから当然だ。
そこに到着した八人のハンター達。村人は突然の訪問者に目を丸くし、お互いの顔を見合わせた。
メンバーを代表する形で桜が口を開く。
「ええと、皆さんご安心ください。あなた達を悩ませていたゴブリン達は、先程わたし達が討ち果たしました」
桜の言葉の意味を村人達が理解するのにしばらくかかった。誰もハンター達に依頼が行われていたことを知らなかったのだから無理もない。
「な、なんと……!? ほ、本当なのですか!?」
まだ事態を信じられない、村の長らしき男が大声をあげた。
「は、はい。略奪された品物もほとんど無事です」
ハンター達は背負ってきた荷物を下ろす。村人達はおそるおそるといった風情で近づいてきた。そして中身を検分することしばし。
「ほ、本当だ! これ、全部ゴブリンが奪っていったものですよ!」
やがて一人の男が歓喜の声をあげ、それによりやっと夢ではないことを理解できた村人達の間から喝采が沸く。
「こ、これは……なんとお礼を申し上げてよいか。ありがとうございます!」
村長を始めとした村人達はハンターの下へと駆け寄り、満面の笑顔を見せる。
そんな中、アバルトが一人の男の側へとゆっくりと近づく。男はアバルトの顔を見つめた。男の口元にはかすかな笑みが浮かんでいる。
ハンター達が到着した際に、この男だけは全く困惑の表情を浮かべていなかったことにアバルトは気付いていた。おそらく、今回の依頼をこっそりとハンターオフィスに持ち込んだ張本人であろう。
(本人だとしても惚けるであろうな)
そう考えたアバルトは、男の前で立ち止まると淡々と話し出した。
「……見取り図などの情報、助かった。ハンターの皆が礼を言っていたと、伝えておいてくれ」
「承知した。どこの誰がやったか知らんが、そいつに必ず伝えておくよ」
アバルトの言葉に、男は軽く片目をつぶって謝意を示したのだった。
「なんつーテンプレなファンタジー事件……実際、ファンタジーな世界にいることを実感させられるわ。おかげでビキニアーマー着られるし。うん、女性はみんなビキニアーマーを着るべきだと思うわ」
遥・シュテルンメーア(ka0914)が口にした通り、今回の依頼は洞窟にいるゴブリン達を倒すというものだ。
「うわ、また洞窟かー。なんか洞窟に縁があるような気がするね。ゴブリンって初めて見るけどどんな敵なんだろう。できることなら倉庫の物品は無事に持ち帰ってあげたいよね。また別のゴブリンが棲みつかないように、後始末も出来ることならしていきたいけど」
先日、とある鉱山の中を探索する依頼に参加した逢見 千(ka4357)が呟く。
「それはそれとして、サクッとゴブリンをやっつけることにしましょう。連中の装備を略奪よ!」
外道な発言をしている遥の隣で、他のハンター達は紙面に目線を落としている。
「室内戦か。まあ見取り図もあるし、数以外の優位性はこっちにあるか」
受付嬢に手渡された紙を見ながら、リカルド=イージス=バルデラマ(ka0356)が囁いた。見取り図を含め、敵の数や武装などの作戦に必要な情報が書かれた紙束は、受付嬢が朝オフィスにやって来た時、カウンターの上に置かれていたという。
「ここまで至れり尽くせりなのも珍しいですよね。お膳立てがきちんとされている以上、負けるわけには行きませんもん、頑張りましょう」
リカルドと一緒に紙面を覗き込んでいる佐倉 桜(ka0386)が意気込みを口にした。その言葉にアバルト・ジンツァー(ka0895)も頷く。
「いろいろと怪しいところもあるが、ゴブリンによる被害が出ていると言うのならば、見過ごすわけにもいかない。速やかに退治する事としよう」
この情報に誤りがなければ、彼の言う通り迅速に敵を討つことは可能だろう。
●
「さてさて、ゴブリンの皆様方には略奪の代償としてごにゃ~ぽ☆な目にあってもらいましょうかね」
ハンター達が行動を起こしたのは夜。
ユピテル(ka4051)が遠くにほの見えるゴブリン達の住処を見ながらひとりごちた。なお、『ごにゃ~ぽ』とは彼女の口癖であるが、特に深い意味はないらしい。
テトラ・H(ka4358)は深呼吸をしている。彼女はこれがハンターとして初めて参加する依頼であり、緊張してしまう自分を切り替えようとしてのことだ。
メトロノーム・ソングライト(ka1267)はそんなテトラにそっと近づき、声をかける。初陣である彼女を気遣っているのだ。
そういった行為はあまり得意ではないメトロノームではあったが、それでも彼女の言葉はテトラの緊張を多少ほぐす効果があったようだ。
ハンター達はやがて所定の位置に付く。洞窟の入り口には依頼主がもたらした情報どおり、ゴブリンが二体、歩哨として立っている。
アバルトは弓胎弓を、テトラはショートボウを構えた。
「弓は得意じゃないんだけど……選り好みはしてられないわね」
テトラの小さな呟き。
メトロノームもフェアリーワンドを取り出し、スキル行使の準備に入る。
遥は『攻性強化』をアバルト、テトラの両者へと順に使用する。そしてすぐに自分が持つディファレンスエンジンを見張りのゴブリンへと向けた。
アバルトとテトラも『強弾』を用いて敵を一撃で仕留める狙いだ。
まずはメトロノームのスキル、『スリープクラウド』による青白い雲状のガスがゴブリン達を包んだ。一体は睡魔に負けて洞窟の入り口に寄りかかる形で眠りに付き、もう一体は突然の事態に慌てて周囲へと視線をめぐらせた。危険を知らせる声を出そうというのか、大きく息を吸い込む。しかし、もう遅い。
アバルトとテトラの矢が、遥の『機導砲』による白い光線が、そのゴブリンを同時に貫いた。ゴブリンは声もなく絶命する。
まだ生きているゴブリンも、眠りに落ちているところをリカルドの試作振動刀「オートMURAMASA」によって喉を切り裂かれ、二度と目覚めることはなくなった。
「音は立てたくないからな、見かけはエグいが省エネの効率重視で行こうか」
ゴブリンの返り血を浴びながら、リカルドは呟いた。
●
洞窟内部。
リカルドが一旦先行し、右手にあるという倉庫と寝床として扱われている場所へと向かう。洞窟内はまだ明るく、ゴブリン達が動く気配があった。
幸い、リカルドの動きが気付かれることはなかったが、しかし目的である偵察もあまり効果をあげることなく彼は仲間の下へと戻る。偵察することに拘泥して敵に姿を見られては本末転倒だからだ。
ハンター達は当初の予定通り、二班に分かれた。A班は入り口から左手にある食事処を急襲、B班は入り口近くの丁字路の辺りで待機。敵の増援、もしくは逃走を防ぐのが目的だ。
A班はなるべく音を立てずに洞窟の奥へと進む。先日の略奪の際による食物を飲み食いしているのか、もう夜だというのに通路の先からは騒がしい音が聞こえる。
A班の前衛を務めるリカルド、千は得物を手に一気に突っ込んだ。
慌てたのはゴブリン達だ。突然曲がり角に姿を見せた侵入者に、一体が大声をあげる。酒に酔ってはいたものの、その体はなんとか動き、彼らはそばにある武器を手にする。
ユナイテッド・ドライブ・ソードを長剣の形にし、千は手近な敵へと切りかかる。彼女の狙いはホブゴブリン。しかし目標は部屋の奥におり、まずは経路を確保しようとしてのことである。
「ようやく抜ける。やっぱり弓は難しいって思ってたところなのよねっ」
テトラとアバルトはほぼ同時に弓から拳銃へと武器を持ち替えた。この戦場で弓の持ち味を生かすのは難しい。とはいえ、テトラのその動作は場所を鑑みたというよりも好みの問題で行われたようではあった。
アバルトは入り口付近から『威嚇射撃』による足止めを行う。テトラも彼と並んでゴブリンへとオートマチックピストルの銃口を向け、トリガーを引く。
乱戦模様となった中、一体のゴブリンはテーブル代わりの粗末な台の上を乗り超え、ハンター達へと殴りかかってきた。それを剣で受け止めたのは遥。敵の得物を受け流し、返す一撃を見舞う。
「元軍人だったから基本的な訓練はうけてたけど、整備兵だし現場での実戦経験少ないのよねえ……」
そうぼやく遥だったが、その剣さばきは中々のものであった。
リカルドは壁を背にして囲まれないようにし、機を見るやいなや『踏込』で敵の懐に飛び込んだ。棍棒を持つゴブリンの腕を、左のハンドサポーターで掴み、相手の動きが止まったところへ右手の刀を繰り出した。まずは腕を狙い、その後に喉、心臓を突く。
「恨みはないが仕事だからな。俺は戦闘狂でもないしな、せめて苦しまないように殺してやるよ」
ハンター達の活躍でゴブリンは瞬く間に数を減らし、千も目当てのホブゴブリンへと肉薄した。ホブゴブリンは咆哮をあげ、彼女に両手斧を振るう。
ゴブリンと比較するとその一撃は洗練されたものであり、千は刃をかわしきれずに腕を切り裂かれた。痛みに顔をしかめつつ、千も剣を繰り出す。ホブゴブリンはそれをすんでのところで回避した。
アバルトはホブゴブリンに狙いを定めて射撃を行う。『強弾』により威力が増した銃弾はホブゴブリンの鎧を穿ち、胸に穴を開ける。亜人は痛みに悲鳴をあげ、斧を再度振り回したが、今度は千の動きを捉えることはできなかった。
●
敵陣へと突っ込んだA班の後ろを守る形で丁字路に待機するB班。
さすがに騒ぎを聞きつけたか、彼女たちの側へとゴブリン達の気配が近づいてくる。
「来たようです」
メトロノームが仲間へと囁き、桜、ユピテルも頷いた。
ユピテルはルーメンスピアを構えて、二人を守るような位置へと移動する。
曲がり角からひょっこりと顔を出した一体のゴブリン。そこに桜は『ホーリーライト』を撃ち込んだ。
「通行止めです、悪しからず」
直撃を受けたゴブリンは見事に転び、耳障りな叫びを上げた。どうやら斥候だったらしい。その上を踏み越えるようにして続々とゴブリン達がやってくる。
メトロノームも『ファイアアロー』を行使した。彼女の詠唱が澄んだ旋律となって洞窟内に儚げに響く。
やがてメトロノームが構えるフェアリーワンドの先から迸ったのは、水晶のように美しい彼女とは対照的な、燃え盛る炎の矢だった。
魔法の矢はゴブリンの一体に命中し、絶命させる。
ユピテルは向かってくるゴブリン達を迎撃する為に踏み込んだ。
「ごにゃ~ぽ!」
掛け声と共に槍が突き出され、穂先が亜人の革鎧を抉る。しかし、まだ致命傷には至らない。
先頭にいるゴブリン二体は彼女に向かって棍棒を振るう。武器のリーチを生かした立ち回りと、あらかじめ使用しておいた『地を駆けるもの』の効果もあり、ゴブリン達の攻撃をなんとかしのぐユピテル。
得物の差があるとはいえ、完全に敵を足止めするのは難しく、ゴブリンの内の一体がユピテルの脇をすり抜け、桜へと間合いを詰めると棍棒を振るった。
桜は慌てず盾でがっちりと受け止め、さらに『シールドバッシュ』により敵を押し込む。ゴブリンはたまらず体勢を崩し、後ろに溜まっている他のゴブリン達の中に倒れこんだ。
その間にユピテルは目の前にいるゴブリンへとさらなる攻撃を繰り出し、ひるませる。
狭い通路のおかげで敵も主戦力であるホブゴブリンが出て来れず、三人のハンター達はゴブリン達を押さえ込んでいた。
そこにA班のハンター達が駆けつける。亜人達は増援を目にして浮き足立つ。
動きが一瞬止まったゴブリンの隙を逃さず、ユピテルは鋭い突きを見舞い、一体のゴブリンに傷を負わせた。
ゴブリン達は不利を悟るが、逃げ道は封鎖されている入り口だけだ。なんとか押し込もうとする亜人達だったが、数の増えたハンター達に対してそれは不可能であった。最後尾にいたゴブリンの内二体は、通路の奥へと逃げ去っていく。
相反してホブゴブリンは両手斧を構え、突っ込んでくる。残るゴブリン達もそれにならい、最後の攻勢をかけてきた。
合流したハンター達は丁字路のあたりで迎え撃つ。
メトロノームのウィンドスラッシュがホブゴブリンを切り裂いた。テトラも発砲によりゴブリンに傷を負わせる。
遥の『機導砲』による一筋のビームが敵を貫き、桜は千へと『ヒール』を使用して彼女の腕の怪我を癒した。前衛たちも敵を寄せ付けず、ゴブリン達は命を落としていく。
最後に残ったホブゴブリンが両手斧を手にリカルドへと挑みかかった。リカルドはそれを回避し、すり抜ける際に敵の膝裏を切りつけた。さきほどの魔法による傷もあり、たまらず転倒するホブゴブリンに、リカルドは銃を突きつける。
「悪いな、デカブツ。恨んでくれるなよ? レスト・イン・ピース」
リカルドの言葉と共に引き金が引かれ、ホブゴブリンは永遠の眠りへと落ちていった。
●
通路での戦いが終わった。
入り口の見張りと合わせ、倒したゴブリン達の数は十二体。先程逃げた二体がおそらく最後のゴブリンのはずだ。
ハンター達は警戒を怠らずに洞窟の奥へと進む。この先にあるのは、寝床、そして倉庫として使われている場所である。
ハンター達が曲がり角まで達すると、こちらをうかがっていた二体のゴブリンが慌てて一つの部屋の方へと逃げ込んだ。依頼人の資料では倉庫と記されていたスペースである。そこには村などから奪い取った略奪品が納められている可能性がある。ハンター達は足早に後を追った。
部屋の中ではゴブリン二体が興奮した声で喚いていた。彼らは村からの略奪品らしきものを床にならべ、その側に棍棒を持って立っており、床を指差して何かをハンター達にまくし立てていた。
これらを全てやるから見逃せと言っているのか、それともこれらを壊されたくなかったら出て行けと言っているのか。
だが、それを知る機会は結局やってこなかった。ゴブリン達の周囲に青白いガスが一瞬浮かび、それが消えた時、二体の亜人は夢の世界へと旅立っていたからだ。
前衛たちの後ろでこっそりと『スリープクラウド』を使用したメトロノームの手柄である。
もちろん眠ったゴブリンはすぐさまハンター達によって始末された。もう一つの部屋である寝床と思しき場所にも敵の姿はなく、彼らはゴブリン達の掃討に成功したのであった。
●
アバルト、桜は倉庫内にある物品をチェックしている。幸い、損傷が目立つものはない。
遥はゴブリンの身につけている革鎧を剥ぎ取っていた。どうやら、これを元にビキニアーマーを作ってもらう計画らしい。
やがて作業も終わり、ハンター達はしばしの休憩を取った。朝になってからできる限りの荷を背負い、洞窟を後にする。向かう先はもちろん今回被害にあった村だ。
村の中は陰鬱とした空気に支配されていた。略奪の被害にあい、しかもその当事者であるゴブリン達が近くに住み着いたのだから当然だ。
そこに到着した八人のハンター達。村人は突然の訪問者に目を丸くし、お互いの顔を見合わせた。
メンバーを代表する形で桜が口を開く。
「ええと、皆さんご安心ください。あなた達を悩ませていたゴブリン達は、先程わたし達が討ち果たしました」
桜の言葉の意味を村人達が理解するのにしばらくかかった。誰もハンター達に依頼が行われていたことを知らなかったのだから無理もない。
「な、なんと……!? ほ、本当なのですか!?」
まだ事態を信じられない、村の長らしき男が大声をあげた。
「は、はい。略奪された品物もほとんど無事です」
ハンター達は背負ってきた荷物を下ろす。村人達はおそるおそるといった風情で近づいてきた。そして中身を検分することしばし。
「ほ、本当だ! これ、全部ゴブリンが奪っていったものですよ!」
やがて一人の男が歓喜の声をあげ、それによりやっと夢ではないことを理解できた村人達の間から喝采が沸く。
「こ、これは……なんとお礼を申し上げてよいか。ありがとうございます!」
村長を始めとした村人達はハンターの下へと駆け寄り、満面の笑顔を見せる。
そんな中、アバルトが一人の男の側へとゆっくりと近づく。男はアバルトの顔を見つめた。男の口元にはかすかな笑みが浮かんでいる。
ハンター達が到着した際に、この男だけは全く困惑の表情を浮かべていなかったことにアバルトは気付いていた。おそらく、今回の依頼をこっそりとハンターオフィスに持ち込んだ張本人であろう。
(本人だとしても惚けるであろうな)
そう考えたアバルトは、男の前で立ち止まると淡々と話し出した。
「……見取り図などの情報、助かった。ハンターの皆が礼を言っていたと、伝えておいてくれ」
「承知した。どこの誰がやったか知らんが、そいつに必ず伝えておくよ」
アバルトの言葉に、男は軽く片目をつぶって謝意を示したのだった。
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相談卓です メトロノーム・ソングライト(ka1267) エルフ|14才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/03/20 15:41:16 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/17 00:30:46 |