囚われの騎士

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/03/28 07:30
完成日
2015/04/02 19:01

みんなの思い出

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オープニング

●古都アークエルスにて
 王国の北東部の山麓にやや近い場所にある、歴史や魔法など様々な研究を目的とした学術都市だ。
 都市の大きな特徴はグラズヘイム王立図書館がある事。
 通称グリフヴァルト(文字の森)と呼ばれるこの図書館の歴史は古く、一説には古都が街としてのまとまりを持つことになるより以前、さらには王国が成り立つ前から存在するのではないかと噂されている。


 王国の女性騎士ソルラ・クートは目的であった歪虚の情報集めを終え、王都へ帰る用意をしていた。
 王都に戻れば、正式に小隊が結成される。しばらくは、忙しい日々が続く事になるだろう。
「荷物はこれで大丈夫ね」
 衣服や資料、書籍等さまざまな彼女の荷物の山。
 必要ないと言ったのに、実家からも色々と物が届き、宿の部屋は荷物でいっぱいである。
 使用人に依頼して、これらを騎士団の私室と実家に届けてもらう手配をしたから、ソルラ自身は転移門で帰るだけだ。
「せっかくだから、おみやげでも買おうかしら」
 ずっと図書館に引きこもりだった。
 最後の日くらいは、古都を観光するのもいいだろう。

●嘆きの橋
 おみやげに日持ちするお菓子類や果汁、お酒の飲み物を背負い袋に入るだけ買い込んだソルラが最後に立ち寄ろうとした場所を思い出したのは、日も暮れかかった時だった。
 そこは、『嘆きの橋』と呼ばれる場所。
 古都に滞在している間に、噂で聞いたのだ。
 なんでも、『この橋で嘆けば、その悲しみや苦しみから解放される』という。
「この橋ね」
 綺麗な半円を描いている石造りの橋は特徴的で分かりやすかった。
 ソルラがここを訪れた理由。それは、港町ガンナ・エントラータでの出来事があったからだ。
 ある歪虚が『恨晴石』と呼ばれる存在を利用して、悪事を働いていた。
「……これも、あの石と同じ気がしたけど……」
 特に違和感はなにもない、作りかけの橋の様な雰囲気しかしてこないので、ソルラは立ち去ろうする。
 この手の都市伝説は探せばいくらでも出てくる。その一つ一つを調べていては非効率だ。
 だが、立ち去ろうとしたソルラの足が止まる。
「誰!?」
 振り返ると、橋の対岸の路地にローブ姿の何者かがチラリと見えた。
 声が聞こえなかったのか、自分の事だと思わなかったのか、ローブ姿の人物は路地の先へ消えようとしていた。
「待ちなさい!」
 思わず大きな声で叫んだ。
 だが、ローブ姿の人物は路地の中へ消える。
 ソルラは覚醒状態に入ると、半円の橋の橋から対岸へと飛ぶ。
 急いで追いかけると、路地の奥で走り去っていくローブ姿の人物が見える。
「待ちなさい!」
 再度、声をかけたが、立ち止まる様子はない。
 チラリと振り返って、ソルラを確認すると、走る速度を速めた。
 意を決してソルラは駆け出した。

●囚われの騎士
 いくつかの路地を曲がり、追いかけた先、ある建物の中にローブ姿の人物は逃げ込んだ。
 素早い身のこなしで、門を越えると、その建物の中にソルラも入っていった。
 建物は空き家なのか、家財一つもなくガランとしている。
 その奥に、ローブ姿の人物がいた。
 背丈は高くない。ソルラよりも低いようだ。暗くて顔が見えない。
「青の隊所属の騎士ソルラ・クートです。少し、お話を伺っていいですか」
 返事はない。
 代わりに、ローブ姿の人物は壁のスイッチを押した。
「え?」
 突如として、床と天井から格子が現れると、ローブ姿の人物とソルラの間を隔てた。
 急いで格子を掴むと、今度はソルラの背後に格子が現れる。
「騎士様なのに、武器を持っていないのは、不用心だと思います」
 ローブ姿の人物がそんな言葉を発する。
 声からして少女の様だ。
「今日はプライベートだから……」
 素直に応えるソルラ。
「なら、私を追いかけないで下さい」
「あなたは何者なの?」
「答えません」
 あっさりと断言される。
 ソルラは試しに力づくで格子を壊そうとする。
 だが、ビクともしなかった。せめて、武器の類があれば、違ったかもしれないが。
「騎士様、私は去りますが、後を追わない方が良いですよ」
「ま、待って!」
 ソルラの制止を無視し、ローブ姿の人物は丁寧に一礼をすると、奥の戸を開けて立ち去った。
 残されたソルラは後ろの格子も確認する。
「これは……出られないわね……」
 外との連絡手段はもっていない。
 壁には窓の類もないし、周囲には、なにかの道具になる物もない。
 完全に閉じ込められた様だ。
「救助が来るのを待つだけね」
 背負い袋を降ろす。幸い、おみやげに買い込んだ食べ物がある。
 節約すれば数日は大丈夫だろう。
 明日には騎士団本部に顔を出す予定になっているから、居ないとなれば、それで失踪したのに気がつくだろう。
「寒くなりそうね……」
 暗い建物の中でソルラがポケットから飴を取りだして口に運ぶ。香りと味が広がる。
 少し不安だったが、気を取り直して天井を見上げた。
 必ず救助は来ると信じて。

リプレイ本文

●捜査
「騎士とはいえ女の人だもん、早くみつけてあげなきゃね!」
 鏡 優真(ka0294)が、桃色の髪を揺らしながら、そんな事を呟く。
 手には飴玉が沢山入った袋を持っており、その袋口を強く握り締めた。
 既に拉致されてから3日ばかり経過している。騎士団の方の探索隊も捜査している様だが、成果はない。
(いっぱい歩いて疲れるし、甘いものは必須だよね!)
 袋から飴玉を一つ取ると、それを口の中へと入れる。
 口の中がとろけてしまいそうな甘さに、思わず幸せそうな笑みがこぼれた。
 市場にて飴玉を買いつつ、聞き込みをしていた優真は住宅街へと移動する。
「聞いてもいいかな?」
 飴玉を渡しながら、訊ねてまわる。
 ソルラの特徴や服装を説明したりしたが、思ってた以上に成果はなかった。
(拉致された、というのであれば騎士のおねーさんならおとなしく捕まるとは考えにくいよね……)
 争うような声や音も特になかった様だった。そんな時、主婦達が言うのであった。
「そういえば、この先の屋敷。誰かに買い取られたっていうけど……」
「そうそう! でも、昼間に誰もいないわよね~」
 詳しく訊くと、長い間空き家になっていた屋敷を一ヶ月程前に買い取った人がいるという。
 そして、買い取った割りに誰も買主の姿を見ていないらしい。
「その場所、教えてもらってもいいですか?」
 有益な情報かどうか分からないが、優真は屋敷の場所を教えて貰うと、それを仲間に伝えるべく、魔導短伝話を手にするのであった。

●老兵との出会い
「非番とは言え、覚醒者の騎士を拉致……」
 セミロングの翠髪をなびかせ、十色 エニア(ka0370)が考え事をしていた。
(倉庫に発生した雑魔。更に、スライム絡みの事件……)
 そして、今回は、覚醒者の騎士が拉致されるという事件。しかも、その騎士はエニアの知り合いでもある。
「もし、裏が一緒なら……」
 『嘆きの橋』と呼ばれる場所に来た。この一体を念入りに調べ始める。
 その時、視線の先の路地になにか見えた。急いで追いかけると背後から怒号が響く。
「かかったぞ! 捕まえろ!」
 振り返ると王国の兵士達が数人いた。どうやら、なにか罠を張っていて、それに、エニアが巻き込まれたようだ。
 憤怒の表情で向かってくる兵士達に応戦するわけにもいかず、さりとて、言い訳も通じず、なし崩し的に逃げるハメに。
 そして、いくつかの細い路地を曲がった瞬間の事だった。エニアは身体をひっぱられ、建物の中に投げ込まれた。
 兵士達が路地を走り抜けていく。
「……嬢ちゃんを助けたと思ったら、なんじゃ、別の嬢ちゃんだったの」
 高齢の爺が、そこに立っていた。
「あ、ありがとう。わたしは十色 エニアと言います。お爺ちゃんは?」
「なに、気にするな。儂の事は『オキナ』とでも呼んでくれ」
 逃げていた時よりも、ずっとエニアは緊張した。まさか、この人物は……。
「さて、儂は失礼するよ。あぁ、君は、裏口から出た方がいい。まだ、表には兵士達がいるからの」
 エニアの制止に、アルケミストデバイスを持った手を掲げて爺は出て行った。
 追いかけようとした矢先、兵士達が向かってくる物音がし、エニアは諦めざるえなかった。

●行方
「はっ! 何が『無茶をしない』だ。お転婆娘め」
 とある手紙を仕舞いながら、 トライフ・A・アルヴァイン(ka0657)が灰色の髪をかきあげる。
 仲間との定期連絡を終える。騎士団の方の捜査隊とも情報共有をと思っていたが、忙し様子で連絡が取れなかった。
 市場で、ソルラらしき人物の情報を得る事はできたが、どれも正確な足取りを掴めるものではなく、トライフは次に路地へと向かう。
「……という服装で、サイドテールの髪型をした女性だ。それと、最近見慣れない余所者についてもだ」
 いくつか駄賃や酒を渡し、路地で生活している浮浪者や子供に情報を集めさせる。
 自身も調査を継続する。もっとも、声をかけるのは女性ばかりだが。
(しかし、なんで匿名での通報なんだろうな)
 今回の事件、解せない所があると考えていた。
 拉致されたという匿名の通報から始まっている。騎士であり、覚醒者のソルラが簡単に拉致されたとは考えにくい。
 普通に考えれば、争いの物音はするだろう。だが、どうも、そんな情報は出てこない。
(しかも、場所や時間を告げないという事は……)
 思案していると、浮浪者が近寄ってきた。なにか情報を得たのだろうか。
 メモを受け取り、内容を確認すると、トライフは表情を変えず、浮浪者に追加の報酬を渡す。
 今回の依頼の必要経費は、依頼主であるソルラの父親が後ほど補填するらしい。
『住宅街の方に向かって走り抜ける、この女性と思われる人の姿を目撃があった』
『その住宅街に、最近、新しく屋敷を購入した余所者がいるらしい』
 浮浪者が持ってきたメモにはその様に記されていた。
 ソルラの居場所に近付いてきたという感覚をトライフは感じていた。

●宿屋内の酒場にて
(解せぬな。拉致目的で拉致されたなら、相応に騒ぎになったであろうに……)
 星輝 Amhran(ka0724)が、床につくほど長い銀髪を腕全体を使って持ち上げながら、カウンターの席に座る。
 これで何件目だろうか、酒を酌み交わせながら情報を求めるが、なかなか当たらない。
 というのも、そうした『騒ぎ』は無いというのだ。
(であれば、途中まで自分で移動した先で、罠にでもかかったかの?)
 武器を携帯していなかったという事は、聞いていた。先に荷物だけが王都へ届いたらしい。その中に、ソルラの武器もあった。
 古都滞在最後の日に、観光していたと見ていいだろう。
(そして、武器を持たずに誰かを追いかけ……その先で、罠にかかったと見るべきじゃろう)
 素手でも制圧可能な誰かを追いかけたとなると、相手は大人でもなければ歪虚でもないはず。
 すると、考えられる可能性は……。
「やはり、ノゾミかの」
 緑髪の少女の姿が浮かぶ。そういえば、匿名の通報者は、緑髪の少女だったという。
 残る謎は、『どうして、通報したのか』という事になる。拉致した本人が通報するとは理解に苦しむ。
「いたいた! お客さん!」
 振り返ると、先程までいた店の店員だった。
「実は、さっき訊かれた事と直接関係があるかわからないのですが……」
 そう前置きをしてから店員は言う。
 一ヶ月前位に、ある商人が屋敷が売れたと言っていた事。その商人は、猛獣同士を戦わせる為に、屋敷を改造していた事。
「ありがとうなのじゃ」
 満面の笑顔を作り、店員にお礼を言いながら、星輝は思うのであった。
 もしかして、そこにソルラは閉じ込められているのではと。

●追憶を知る者
「ソルラさんが行方不明……一人で誰かを追いかけてしまったのでしょうか……」
 心配する表情で、流す様に金髪に手を通すUisca Amhran(ka0754)。
「騎士の一人が拉致されるという事は大事ですね」
 顔にかかった金髪を元の位置に戻しながら言ったのは、シメオン・E・グリーヴ(ka1285) 。
 2人はソルラの手掛かりを探しに王立図書館前に来ていた。
 手分けをして通行人や図書館に出入りする人に話しかける。
「あのっ、最近、いつもここに通い詰めだった金髪の女の人を見かけませんでしたか?」
「あの人なら、仕事が終わったから王都に帰ると言っていたよ」
 Uiscaの質問に警備員が答えた。
 念の為、その日付を聞いても、拉致があった日の様だ。
「こちらも、有力な情報は掴めませんね」
 シメオンは、Uiscaが声をかけていない人を中心に訊ねていたが、特に情報を得られなかったようだ。
 わかったのは、彼女は事件発生の前日に、古都の観光地を巡る為に、観光マップを手に入れていた事だ。
 王都に帰る為に、おみやげを買う可能性もある。次は大通りに行こうかとも思う。
「ここの元警備の人で、元ハンターの人って知りませんか?」
「あぁ! 名前は思い出せないが、みんな、『オキナ』って呼んでたお爺さんだろ」
 警備員が言うには、『オキナ』は、『戦慄の機導師』と二つ名の腕利きの元ハンターであり、一時はハンターオフィスで教官も務めていたという。
「できればお家とか教えて欲しいんですけれど……」
「ぜひとも、会いに行ってやってくれよ。若いハンターから頼られるのは好きだったから」
 シメオンの持っていた観光マップに大体の位置を書きこまれる。そして、詳細もその脇に警備員は書いてくれた。
「私も、オーローンさんに同行しますよ」
「いいのですか?」
「相手は騎士を拉致するほどです。用心して良いと思いますので」
 2人は、オキナ宅に向かって走り出した。

 その場所に到着したが、家と呼べる物は存在していなかった。
 かつて、家があった場所で、作業員が取り壊しの片付けを行っていた。
「立ち退きされた爺さんの事かな?」
 作業員の一人が、答える。
 怪訝な表情で、シメオンが質問をする。
「どういう事なのですか?」
「元々、借家だったらしくてね。地主が変わったとたん、追い出されたって誰からか聞いたよ」
 身内もいなそうなのに、可哀想な事だと作業員は続ける。
「そうだったんですね……」
 Uiscaが残念そうに呟いた。
 知合いが遭遇したというオキナは、その事に絶望していたのだろうか……。
「あんたら、爺さんの知り合いか? じゃ、これ、爺さんに渡してくれよ」
 作業員が落ち込むUiscaにロケットペンダントを手渡した。
「爺さんの忘れた物だと思う。解体中に、屋根裏から出てきたものだから」
 その説明を聞きながら、ロケットを開けると、希望と幸せに満ち溢れた表情の若い男女の絵が描かれていた。
 シメオンが横から覗き込む。
「古そうな絵の質感と、ペンダントの作りですね……少なくとも、50年以上前のグラズヘイム王国産の物かもしれません」
 王国の歴史や文化に、一般の人より少し詳しいのか、彼は、そんな事を告げる。
「50年前以上なら、オキナさんの物かもしれませんね」
 Uiscaは、ロケットペンダントを大事に懐へと入れるのであった。
 
●囚われの騎士
 住宅街へと走るソルラに似た人影。そして、檻をある屋敷に改造した建物と、その屋敷だと思われる場所。
 情報を共有し、ハンター達は、その屋敷の前に到着した。
「いよいよだね」
 閉じ込められていると思われる屋敷は窓一つなかった。
 その光景が、彼の中で、ある記憶に触れて、緊張した声になった。
 彼らが依頼を受けて、古都に来るまでの間に、3日ばかり経過していた。無事である事を祈るのみだ。
「光よ」
 Uiscaの持つ短杖が光だす。窓がないので、中が暗いと予想しての事だろう。
「それでは、開けるかの」
 日本刀を片手で持ち、もう片方の手をドアノブに伸ばす星輝。
 鍵はかかっていなかった。少し開けて、呼吸を止めると、一気に扉を全部開いた。
「格子……?」
 優真が弓を構えたまま、中に見えた物を呟いた。
 彼女の言う通り、真っ暗な屋敷の中、柵格子が見える。
「ソルラ・クートさん?」
 シメオンが呼び掛けた。必要であれば、すぐに回復魔法を使えるように準備をしている。
「は、はいぃ!?」
 驚いた女性の声が聞こえる。
 一行は警戒しながら建物の中に入る。
 魔法の灯りの中、檻の中で、ソルラが、おつまみとお酒で一杯やってる姿が映し出された。
「これは、どういう事かな、ソルラ嬢……」
 トライフが煙草を取り出しながら訊ねる。
 檻の中に閉じ込められた美女の姿は色々と想像させられるのだが、どうみても、救助を待ってる側の態度には見えなかったからだ。

 檻を操作する仕掛けをエニアが見つけ出して、ソルラは無事に保護された。
 そして、一行に、自分が捕まった経緯を話すのであった。

「……つまり、拉致されたわけではなくて、」
「自分から罠にかかった……というわけじゃな」
 ソルラの話を聞き、Uiscaと星輝が話をまとめる。
「勝手口は住宅街に繋がっているだけみたい」
 エニアが、少女が去って行ったという勝手口の様子を見に行って戻ってきた。
「その少女に思い当たる節はありますか?」
「……声を聞いただけだから分からないけど、きっと、ノゾミという少女だと思う」
 シメオンの質問に、ソルラが答えた。
「でも、なんで、通報者は『拉致』って言ったのかな?」
 優真がソルラの髪型を真似してサイドテールにすべく、自分の髪をいじりながら質問した。
 どうやら、ソルラが「憧れの綺麗な騎士のおねーさん」に見えている様だ。
 そんな彼女の質問には、トライフが答えた。
「情報不足でなんとも言えないが、捜索に時間を割かせたい理由があるかもな。例えば、逃げ出す為とかな」
「なるほどじゃ」
 彼の答えに星輝が声をあげる。通報者がノゾミ自身とみれば、その理由はあり得る事だ。

「ところで、ソルラ嬢……」
 トライフが彼女の柔らかい頬をつねる。
「な、なんでひょう」
「連絡手段を持て、武器を携帯しろ、そして、1人で無茶しない」
「す、すみましぇん」
 パッとつねっていた手を離すと、優しく声をかけた。
「『無茶しないよう頑張る』んじゃなかったのかい? あまり心配させないで欲しいな」
「はい……私も、まさか、こんな事になるとは思ってなかったので」
 そう言いながら、おみやげで買ったお菓子や飲み物を見る。
「わたしも、まさか、ソルラさんが、一人で酒盛りしていると思わなかったわ」
 エニアの言葉に、一行が頷く。
「こ、これは、たまたまです! 保存が効くのを後回しにしていただけなのです!」
 恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にしてソルラが弁解する。
 沢山のおみやげを買い込んでいるあたり、ソルラの人柄を表していたが、今回はそれが吉と出たようだ。
「で、まだ、色々と残っておるようじゃが?」
「キララ姉さま!」
 星輝の冗談に、Uiscaが呼び止める。
 まさか、人のおみやげで、しかも、檻の屋敷で酒盛りを始めるわけではあるまい。
 その横では、癖毛の為、上手くサイドテールができなかった優真がしょんぼりとしている。
「祝杯は、戻ってからですね。きっと、お父様もお喜びでしょうから」
 シメオンがまとめる様に言うと、ソルラが畏まる。
「みなさん、ありがとうございました」
 赤くなった頬をさすりながら、鉄壁の騎士は、一行に笑顔を向けたのであった。


 おしまい。


●素養
 古都アークエルスから一台の小さい馬車が西に向かって走っていた。
 馬車の中には、ドレスに身をつつんだ緑髪の少女が乗っていた。御者は高齢のお爺さんだ。
「オキナさん、その話、本当ですか?」
 先程、知らされた内容は、とても、信じられなかった。だから、もう一度、訊ねる。
「間違いなく、ノゾミ嬢ちゃんには、覚醒者としての素養がある」
 振りかえらずに、お爺さんは後ろに乗る少女に答える。
 少女は自身の手をみつめるのであった。

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  • 大口叩きの《役立たず》
    トライフ・A・アルヴァインka0657
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhranka0724

重体一覧

参加者一覧


  • 鏡 優真(ka0294
    人間(蒼)|11才|女性|猟撃士
  • 【ⅩⅧ】また"あした"へ
    十色・T・ エニア(ka0370
    人間(蒼)|15才|男性|魔術師
  • 大口叩きの《役立たず》
    トライフ・A・アルヴァイン(ka0657
    人間(紅)|23才|男性|機導師
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 緑龍の巫女
    Uisca=S=Amhran(ka0754
    エルフ|17才|女性|聖導士
  • 護るべきを識る者
    シメオン・E・グリーヴ(ka1285
    人間(紅)|15才|男性|聖導士

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依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/03/24 17:36:42
アイコン 相談卓~希望を追い求めて~
Uisca=S=Amhran(ka0754
エルフ|17才|女性|聖導士(クルセイダー)
最終発言
2015/03/27 19:57:06