ゲスト
(ka0000)
愛されなかったから
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/03/28 07:30
- 完成日
- 2015/03/28 22:59
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●朽ち果てた「人形屋敷」と呼ばれる場所で
人形たちは長い時を主人と共に過ごすものもあれば、粗雑に扱われてすぐに捨てられてしまうこともある。
アンティークドールを集めた、通称人形屋敷。
そこには様々な人形が集められていた。無機質な美しさと、もう一つの隠された共通点。
それは集められた人形がどれも何かしら曰くつきであるということ。
屋敷が朽ちていく中、人形たちも手入れされることなく放置され続けた。
人形屋敷にやってくる前に巡った悪縁は緩やかに人形たちを蝕んでいき、曰くを集め続けた屋敷の最後の主人が一か所に凝縮させた恨みつらみは放置されるうちに悪しきものを呼び始める。
愛されるために生まれてきたのに愛されることのなかった人形たちは、気の遠くなるような月日の果てに、破壊することしか知らない殺戮人形として偽りの生を受けたのだった。
「精巧につくられた人形っていうのは、好きな人は好きなんだろうけど夜中とかにはあんまり見たくない気がするなぁ。今回の依頼のように呪いのアンティークドール、みたいなポジションなら尚更ね」
僕は人形遊びに興味もないしね、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)は雑魔退治の依頼書を机に広げながら呟いた。
「今回の依頼は、曰くつきのアンティークドールを中心に集めたコレクターの放棄された負の遺産の後始末、になるかな。もともと何かしら因縁のあるものばかり集まってた上に長い間放置されて、誰も知らない間に雑魔が宿っちゃったみたい。
人形好きでアンティークドールがたくさんある廃墟って聞いて買い取った貴族が発見者であり依頼者だよ」
十代の少女をモチーフにした人形が大半で、背丈も十代の少女程度。雑魔化した人形は約三十体。一室に纏めて放置されていたがその部屋にあったペーパーナイフや鋏に力を巡らせて切れ味を底上げ、曰くつきの道具の因果を元に精神異常系をもたらす能力を宿している。
「一体一体はそれほど強い雑魔じゃないけど数が多い割に部屋は狭いしごちゃごちゃしてるからね。部屋から出てこなかったという報告があるから室内での戦闘になると思う。躓いて集中攻撃受けたりしないように気を付けて」
散らばった家具や小物が障害物と言えば障害物だけれど罠の類はなさそうだったということだよ、とルカが締めくくる。
「因果の果てに生まれた偽りの命だ。悲しみしか生まない負の連鎖を、君たちの手で断ち切って欲しい」
人形たちは長い時を主人と共に過ごすものもあれば、粗雑に扱われてすぐに捨てられてしまうこともある。
アンティークドールを集めた、通称人形屋敷。
そこには様々な人形が集められていた。無機質な美しさと、もう一つの隠された共通点。
それは集められた人形がどれも何かしら曰くつきであるということ。
屋敷が朽ちていく中、人形たちも手入れされることなく放置され続けた。
人形屋敷にやってくる前に巡った悪縁は緩やかに人形たちを蝕んでいき、曰くを集め続けた屋敷の最後の主人が一か所に凝縮させた恨みつらみは放置されるうちに悪しきものを呼び始める。
愛されるために生まれてきたのに愛されることのなかった人形たちは、気の遠くなるような月日の果てに、破壊することしか知らない殺戮人形として偽りの生を受けたのだった。
「精巧につくられた人形っていうのは、好きな人は好きなんだろうけど夜中とかにはあんまり見たくない気がするなぁ。今回の依頼のように呪いのアンティークドール、みたいなポジションなら尚更ね」
僕は人形遊びに興味もないしね、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)は雑魔退治の依頼書を机に広げながら呟いた。
「今回の依頼は、曰くつきのアンティークドールを中心に集めたコレクターの放棄された負の遺産の後始末、になるかな。もともと何かしら因縁のあるものばかり集まってた上に長い間放置されて、誰も知らない間に雑魔が宿っちゃったみたい。
人形好きでアンティークドールがたくさんある廃墟って聞いて買い取った貴族が発見者であり依頼者だよ」
十代の少女をモチーフにした人形が大半で、背丈も十代の少女程度。雑魔化した人形は約三十体。一室に纏めて放置されていたがその部屋にあったペーパーナイフや鋏に力を巡らせて切れ味を底上げ、曰くつきの道具の因果を元に精神異常系をもたらす能力を宿している。
「一体一体はそれほど強い雑魔じゃないけど数が多い割に部屋は狭いしごちゃごちゃしてるからね。部屋から出てこなかったという報告があるから室内での戦闘になると思う。躓いて集中攻撃受けたりしないように気を付けて」
散らばった家具や小物が障害物と言えば障害物だけれど罠の類はなさそうだったということだよ、とルカが締めくくる。
「因果の果てに生まれた偽りの命だ。悲しみしか生まない負の連鎖を、君たちの手で断ち切って欲しい」
リプレイ本文
●すべての始まりは、愛されなかったから
雑魔と化したアンティークドール約三十体の殲滅依頼を受けた八人は気が重そうな顔で先に依頼主の貴族の許へと向かっていた。
「雑魔化していない人形を愛でるつもりは、貴方にありますか?」
シグレ・キノーレル(ka4420)はそれが原因で転売しようと考えているならすべて破壊する必要がある、といっておいて本当は引き取り手を探すつもりでそう問いかけた。
「もちろんだとも。この屋敷ごと買い取ったのも大事にされていないアンティークドールがたくさんあると聞いたからだからね。
アンティークドールは手入れも難しい部分があるし、下手な相手に転売してそこで雑魔化されても困る。
時々いるんだよ。手入れの仕方も分からないのにただ綺麗だからと買って、そのまま無残な姿にしてしまう輩がね。
救えるものなら救ってあげて欲しい。
曰くつきだとかそういうのは関係ない。あの子たちに大切に扱われる喜びを知って欲しいんだ。
人形相手にこんなことを考えるのは変かな?」
シルフェ・アルタイル(ka0143)は持ち帰って綺麗に修復し、清めてもらってから孤児院や教会、老人の寄合所に寄付したり欲しい人を募って無料で配る考えだったが、雑魔化したために人形のことは諦めたとはいえ貴族は人形が目当てでこの屋敷を買ったのだということを言葉を聞いて実感する。
それを無断で持ち出しては窃盗になってしまうし、この貴族なら任せても大丈夫そうだと判断した末シルフェが出した答えと紡いだ言葉は。
「大切にしてあげてね」
という人形たちの幸せを願う言葉だった。
貴族と別れ一行は人形屋敷へ。
その屋敷は重厚な造りと曰くのある物が集められたという事前情報、それから雑魔の影響か立派な屋敷なのに陰鬱な印象をハンターたちに与えた。
「可哀想なお人形たち……好きで雑魔化したワケじゃないでしょうに。せめて……苦しまずに楽に……」
ロジー・ビィ(ka0296)が祈るように呟く。
「曰くが先か、人形が先か……どちらにせよ、このまま置いておくにはいささか暴れすぎたな」
ロニ・カルディス(ka0551)が難しい表情で考え込みながら屋敷に踏み入り、人形たちが集められている部屋に向かう。
対してデルフィーノ(ka1548)は若干呆れた様子だ。
「あ~……? 曰くつきだとかモノ好きに、手当たり次第に収拾すっからこんな寂しいコトになんだよ。
知的生物のエゴってーのは怖いねぇ……。
この殺戮ドールも元はと言えばそいつらが作ったようなモンじゃねーか。
今、ここでその悲しみ、終わらせてやるぜ」
呆れているのは前の持ち主に対してらしく、人形に対しては不憫に思っているようだ。
たどり着いた一室の扉を開ければ雑魔化したアンティークドールの他に雑魔化していないアンティークドールの姿も。
そう広くない室内に押し込められるように置かれたそれらをみてレイン・レーネリル(ka2887)は何度か瞬いた。
「人型は邪なものを呼び寄せちゃうってよく聞くけど、すごい数だね。あー……単体でもかなりの値段なんだろうなぁ。
まったく、人間たちに可愛がられるためだけに生まれたのに、愛されなかったらそりゃあ殺戮人形になるまで存在が歪んじゃうよね。
物作り系エルフとしては美しい芸術作品を壊すのは忍びないんだけど、壊すことでしか救えないなら仕方ない!
今楽にしてあげるからね!」
雑魔化していないアンティークドールは壊したくないというのが全員の共通認識で、シルフェとロニが囮として雑魔を引きつける間に、ロジーが光源確保もかねてカーテンを開けに行く。
長い間放置されていたせいか、キシキシと球体関節を軋ませる音をわずかに響かせながら雑魔化したアンティークドールたちが手にした文具を振りかざした。
「『愛されるために生まれてきたのに愛されることのなかった人形』ね。なんでかな、無性にやるせない。
こいつらの気持ちがわかんねぇ訳じゃねぇけど、でもだからって放っておくわけにはいかねぇだろ。
哀れに思うが同情はしねぇ。お前らがここから出て人を襲い始める前に、せめて俺たちで弔ってやるよ」
ティルクゥ(ka4314)がシルフェとロニにファイアエンチャントを付与し、戦闘が幕を開けた。
「もったいない……ああ、本当に勿体ない……」
自身が在る存在を殺戮に置き換えてしまった殺戮人形をみてシグレが放ったのはそんな一言だった。
義父のところには何度かアンティークドールも修理を、と持ち込まれ、自分でも数回修理を手伝ったことを思い出したのだろう。
「やはり生き返らせるのは難しいのかな」
大事にされてこなかったなら、今度こそ幸せに、大事にされるようにと願ってしまうのは様々な思い出のこもった品を一つ一つ修繕してきたシグレにとってはより強いものなのかもしれない。
シルフェとロニにマテリアルをエネルギーとして流入させることで防御力を高める。
「囮は集中攻撃食らいそうだから気休めに、ね。俺が一番心もとないんだけどね。
……錯乱して邪魔なようだったら遠慮なく殴ってもらえる?」
囮の二人が雑魔とそうでない人形の選別をしている間に射線が通るか見定めている仲間に、シグレは若干情けない顔で頼み込む。
二人から雑魔化した人形のドレスの柄や髪形、髪色、瞳の色や他にも特徴を伝えられるとティルクゥは後衛からファイアアローをその雑魔に向けて放った。
精神を錯乱させる力を宿した鋏やペーパーナイフで人形たちが反撃を始める。
対してハンターたちはある程度室内に余白が出来てから突撃を考えているので扉の付近から射線が通った順に攻撃を仕掛けていた。
ティルクゥは人の形をしていようと人ではない人形たちを屠る事には何の抵抗もなかったが、この人形たちの生みの親のことを思うと少し胸が痛む自分がいることに気づいていた。
(きっとこんな化け物を作ろうと思った人はいないはずだ。愛とか親心とか、そういうのは俺には分かんねぇけど……俺はどうだったんだろうな。
愛されるために生まれてきたのかは知らねぇけど、少なくとも誰かに愛された記憶はねぇ。
案外コイツ等とかわらねぇのかもな?)
そこまで思考を進めたところで今は戦闘中だと余計な考えを頭を振り払うことで追いやる。
「つまんねぇこと考えるのはヤメだ! 思いっきりぶっとばす! それが供養になると信じてな!」
レインもまたボロボロになりながらそれでも無機質な目に何処か憎しみを宿して向かってくる人形たちに過去に思いを馳せていた。
小さい頃は人形遊びを妹とやったことがあるが、あの子たちは幸せだったのだろうか、と。
「……あーあ、昔遊んでた玩具、押し入れから引っ張り出そうかな。また遊んであげたくなっちゃった」
人に愛されるために生まれた人形や玩具たちは人に見捨てられてしまえば存在意義を見失う。それはとても悲しいことに、レインには思えたのだった。
囮の二人が射線を通してくれてからはデルフィーノは順番に途切れることなく確実に攻撃を当てていく。
基本は魔導銃を、それでも倒れない相手には機導砲を使うことも視野に入れての攻撃は寄せては返す波のように人形たちを襲った。
雑魔化して長い間が経っていたため倒されたアンティークドールが遺す物はドレスやアクセサリーの類のみ。
徐々に空間が生み出されていくのを見て扉の付近で固まっていても効率が悪いから、とデルフィーノは隙を見計らって室内に入り込み鞭で攻撃する手法に切り替える。
鞭で飛来する文具を叩き落とし、その後で文具で攻撃を仕掛けてこようとした殺戮人形の腕をホールド。
身動きが取れなくなったアンティークドールにティルクゥが魔法の一撃を撃ちこんで偽りの生を終わりにした。
「遠慮するな。もう少しこの場に留まっていればいい」
ロニが一度形成を立て直そうとした人形に盾を叩きつけて強引に体勢を崩しながらそう語りかけ、離脱させないよう段どる。
弓から剣に持ち替えて近接戦の手伝いを始めたロジーは積極的に攻撃を仕掛けていく。
「やはりこちらの方が小回りが利いて、狙いを定めやすいですものね」
盾で人形の攻撃を受けつつ、そのまま人形を盾で弾くことで生まれた隙の間に、剣での攻撃の予備動作を行っておく。
「それにしても。本当に可哀想なお人形たち……」
ただ壊すことしかしらない文字通りの殺戮人形たちに哀憫のまなざしを向けながら、それでも攻撃の手は緩めない。
やがて雑魔化した人形たちはそれぞれボロボロになったドレスの切れ端や、武器として使っていた文具を残して消滅する。
「部品すら、残れなかったんだね……もっと早く見つけてあげられていたらな……」
人形のかりそめの死を悼むように自身は攻撃をせず守りと誘導に徹していたシルフェが負った傷に構うことなくそっとドレスの切れ端を拾い上げる。
雑魔化していなかった人形たちの頬を空いている手で撫で、言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「今度は大丈夫だよ。ちゃんと愛してくれるはず。大切にしてもらってね」
雑魔化してしまった悲しい人形たちを弔おう、と一同はささやかすぎるほどささやかな遺品ともいうべきものを厳かに持って、シルフェの希望で近くの草原へとやってきた。
風に乗ってドレスの切れ端が舞い踊る。
「辛かったね。悲しかったね。だから、今度はみんな愛されますように。寂しくない、辛くない、あったかい一生が送れるように風さんに導いてもらって。きっと大丈夫だから」
ロジーは文具を小箱に詰めて埋めると、葬送という名目で輪廻転生という花言葉の花を供える。
「……どうか、次の生は、皆から愛されるべき存在として生まれ変われますように」
「さよなら……また会おう。……さて、と傷がついてしまった人形たちの修繕は俺が引き受けるよ。そういう店をやっているのでね」
シグレがそう切り出すとシルフェが手伝いを申し出る。
修繕と、念のため修祓をとり行ってから新しい持ち主に渡した方がいいだろう。
「今回はほぼ無関係だし、仕方ないことだけどさ。人形好きなら当然心得てると思うけど手入れはちゃんとしてあげて欲しいよね。
次、屋敷に残ってる子たちに恨まれたらそれは自業自得なんだしさ」
レインがドレスの切れ端の軌跡を目でいつまでも追いながらそんな感想を漏らす。
喪われた人形たちの弔いの思いと、残された人形たちが今度こそ幸せに過ごせるように、という願いを抱いてハンターたちは解散したのだった。
雑魔と化したアンティークドール約三十体の殲滅依頼を受けた八人は気が重そうな顔で先に依頼主の貴族の許へと向かっていた。
「雑魔化していない人形を愛でるつもりは、貴方にありますか?」
シグレ・キノーレル(ka4420)はそれが原因で転売しようと考えているならすべて破壊する必要がある、といっておいて本当は引き取り手を探すつもりでそう問いかけた。
「もちろんだとも。この屋敷ごと買い取ったのも大事にされていないアンティークドールがたくさんあると聞いたからだからね。
アンティークドールは手入れも難しい部分があるし、下手な相手に転売してそこで雑魔化されても困る。
時々いるんだよ。手入れの仕方も分からないのにただ綺麗だからと買って、そのまま無残な姿にしてしまう輩がね。
救えるものなら救ってあげて欲しい。
曰くつきだとかそういうのは関係ない。あの子たちに大切に扱われる喜びを知って欲しいんだ。
人形相手にこんなことを考えるのは変かな?」
シルフェ・アルタイル(ka0143)は持ち帰って綺麗に修復し、清めてもらってから孤児院や教会、老人の寄合所に寄付したり欲しい人を募って無料で配る考えだったが、雑魔化したために人形のことは諦めたとはいえ貴族は人形が目当てでこの屋敷を買ったのだということを言葉を聞いて実感する。
それを無断で持ち出しては窃盗になってしまうし、この貴族なら任せても大丈夫そうだと判断した末シルフェが出した答えと紡いだ言葉は。
「大切にしてあげてね」
という人形たちの幸せを願う言葉だった。
貴族と別れ一行は人形屋敷へ。
その屋敷は重厚な造りと曰くのある物が集められたという事前情報、それから雑魔の影響か立派な屋敷なのに陰鬱な印象をハンターたちに与えた。
「可哀想なお人形たち……好きで雑魔化したワケじゃないでしょうに。せめて……苦しまずに楽に……」
ロジー・ビィ(ka0296)が祈るように呟く。
「曰くが先か、人形が先か……どちらにせよ、このまま置いておくにはいささか暴れすぎたな」
ロニ・カルディス(ka0551)が難しい表情で考え込みながら屋敷に踏み入り、人形たちが集められている部屋に向かう。
対してデルフィーノ(ka1548)は若干呆れた様子だ。
「あ~……? 曰くつきだとかモノ好きに、手当たり次第に収拾すっからこんな寂しいコトになんだよ。
知的生物のエゴってーのは怖いねぇ……。
この殺戮ドールも元はと言えばそいつらが作ったようなモンじゃねーか。
今、ここでその悲しみ、終わらせてやるぜ」
呆れているのは前の持ち主に対してらしく、人形に対しては不憫に思っているようだ。
たどり着いた一室の扉を開ければ雑魔化したアンティークドールの他に雑魔化していないアンティークドールの姿も。
そう広くない室内に押し込められるように置かれたそれらをみてレイン・レーネリル(ka2887)は何度か瞬いた。
「人型は邪なものを呼び寄せちゃうってよく聞くけど、すごい数だね。あー……単体でもかなりの値段なんだろうなぁ。
まったく、人間たちに可愛がられるためだけに生まれたのに、愛されなかったらそりゃあ殺戮人形になるまで存在が歪んじゃうよね。
物作り系エルフとしては美しい芸術作品を壊すのは忍びないんだけど、壊すことでしか救えないなら仕方ない!
今楽にしてあげるからね!」
雑魔化していないアンティークドールは壊したくないというのが全員の共通認識で、シルフェとロニが囮として雑魔を引きつける間に、ロジーが光源確保もかねてカーテンを開けに行く。
長い間放置されていたせいか、キシキシと球体関節を軋ませる音をわずかに響かせながら雑魔化したアンティークドールたちが手にした文具を振りかざした。
「『愛されるために生まれてきたのに愛されることのなかった人形』ね。なんでかな、無性にやるせない。
こいつらの気持ちがわかんねぇ訳じゃねぇけど、でもだからって放っておくわけにはいかねぇだろ。
哀れに思うが同情はしねぇ。お前らがここから出て人を襲い始める前に、せめて俺たちで弔ってやるよ」
ティルクゥ(ka4314)がシルフェとロニにファイアエンチャントを付与し、戦闘が幕を開けた。
「もったいない……ああ、本当に勿体ない……」
自身が在る存在を殺戮に置き換えてしまった殺戮人形をみてシグレが放ったのはそんな一言だった。
義父のところには何度かアンティークドールも修理を、と持ち込まれ、自分でも数回修理を手伝ったことを思い出したのだろう。
「やはり生き返らせるのは難しいのかな」
大事にされてこなかったなら、今度こそ幸せに、大事にされるようにと願ってしまうのは様々な思い出のこもった品を一つ一つ修繕してきたシグレにとってはより強いものなのかもしれない。
シルフェとロニにマテリアルをエネルギーとして流入させることで防御力を高める。
「囮は集中攻撃食らいそうだから気休めに、ね。俺が一番心もとないんだけどね。
……錯乱して邪魔なようだったら遠慮なく殴ってもらえる?」
囮の二人が雑魔とそうでない人形の選別をしている間に射線が通るか見定めている仲間に、シグレは若干情けない顔で頼み込む。
二人から雑魔化した人形のドレスの柄や髪形、髪色、瞳の色や他にも特徴を伝えられるとティルクゥは後衛からファイアアローをその雑魔に向けて放った。
精神を錯乱させる力を宿した鋏やペーパーナイフで人形たちが反撃を始める。
対してハンターたちはある程度室内に余白が出来てから突撃を考えているので扉の付近から射線が通った順に攻撃を仕掛けていた。
ティルクゥは人の形をしていようと人ではない人形たちを屠る事には何の抵抗もなかったが、この人形たちの生みの親のことを思うと少し胸が痛む自分がいることに気づいていた。
(きっとこんな化け物を作ろうと思った人はいないはずだ。愛とか親心とか、そういうのは俺には分かんねぇけど……俺はどうだったんだろうな。
愛されるために生まれてきたのかは知らねぇけど、少なくとも誰かに愛された記憶はねぇ。
案外コイツ等とかわらねぇのかもな?)
そこまで思考を進めたところで今は戦闘中だと余計な考えを頭を振り払うことで追いやる。
「つまんねぇこと考えるのはヤメだ! 思いっきりぶっとばす! それが供養になると信じてな!」
レインもまたボロボロになりながらそれでも無機質な目に何処か憎しみを宿して向かってくる人形たちに過去に思いを馳せていた。
小さい頃は人形遊びを妹とやったことがあるが、あの子たちは幸せだったのだろうか、と。
「……あーあ、昔遊んでた玩具、押し入れから引っ張り出そうかな。また遊んであげたくなっちゃった」
人に愛されるために生まれた人形や玩具たちは人に見捨てられてしまえば存在意義を見失う。それはとても悲しいことに、レインには思えたのだった。
囮の二人が射線を通してくれてからはデルフィーノは順番に途切れることなく確実に攻撃を当てていく。
基本は魔導銃を、それでも倒れない相手には機導砲を使うことも視野に入れての攻撃は寄せては返す波のように人形たちを襲った。
雑魔化して長い間が経っていたため倒されたアンティークドールが遺す物はドレスやアクセサリーの類のみ。
徐々に空間が生み出されていくのを見て扉の付近で固まっていても効率が悪いから、とデルフィーノは隙を見計らって室内に入り込み鞭で攻撃する手法に切り替える。
鞭で飛来する文具を叩き落とし、その後で文具で攻撃を仕掛けてこようとした殺戮人形の腕をホールド。
身動きが取れなくなったアンティークドールにティルクゥが魔法の一撃を撃ちこんで偽りの生を終わりにした。
「遠慮するな。もう少しこの場に留まっていればいい」
ロニが一度形成を立て直そうとした人形に盾を叩きつけて強引に体勢を崩しながらそう語りかけ、離脱させないよう段どる。
弓から剣に持ち替えて近接戦の手伝いを始めたロジーは積極的に攻撃を仕掛けていく。
「やはりこちらの方が小回りが利いて、狙いを定めやすいですものね」
盾で人形の攻撃を受けつつ、そのまま人形を盾で弾くことで生まれた隙の間に、剣での攻撃の予備動作を行っておく。
「それにしても。本当に可哀想なお人形たち……」
ただ壊すことしかしらない文字通りの殺戮人形たちに哀憫のまなざしを向けながら、それでも攻撃の手は緩めない。
やがて雑魔化した人形たちはそれぞれボロボロになったドレスの切れ端や、武器として使っていた文具を残して消滅する。
「部品すら、残れなかったんだね……もっと早く見つけてあげられていたらな……」
人形のかりそめの死を悼むように自身は攻撃をせず守りと誘導に徹していたシルフェが負った傷に構うことなくそっとドレスの切れ端を拾い上げる。
雑魔化していなかった人形たちの頬を空いている手で撫で、言い聞かせるように言葉を紡いだ。
「今度は大丈夫だよ。ちゃんと愛してくれるはず。大切にしてもらってね」
雑魔化してしまった悲しい人形たちを弔おう、と一同はささやかすぎるほどささやかな遺品ともいうべきものを厳かに持って、シルフェの希望で近くの草原へとやってきた。
風に乗ってドレスの切れ端が舞い踊る。
「辛かったね。悲しかったね。だから、今度はみんな愛されますように。寂しくない、辛くない、あったかい一生が送れるように風さんに導いてもらって。きっと大丈夫だから」
ロジーは文具を小箱に詰めて埋めると、葬送という名目で輪廻転生という花言葉の花を供える。
「……どうか、次の生は、皆から愛されるべき存在として生まれ変われますように」
「さよなら……また会おう。……さて、と傷がついてしまった人形たちの修繕は俺が引き受けるよ。そういう店をやっているのでね」
シグレがそう切り出すとシルフェが手伝いを申し出る。
修繕と、念のため修祓をとり行ってから新しい持ち主に渡した方がいいだろう。
「今回はほぼ無関係だし、仕方ないことだけどさ。人形好きなら当然心得てると思うけど手入れはちゃんとしてあげて欲しいよね。
次、屋敷に残ってる子たちに恨まれたらそれは自業自得なんだしさ」
レインがドレスの切れ端の軌跡を目でいつまでも追いながらそんな感想を漏らす。
喪われた人形たちの弔いの思いと、残された人形たちが今度こそ幸せに過ごせるように、という願いを抱いてハンターたちは解散したのだった。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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面白かった! | 4人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 レイン・ゼクシディア(ka2887) エルフ|16才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/03/28 06:13:19 |
|
![]() |
質問卓 ロジー・ビィ(ka0296) エルフ|25才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/03/27 16:34:34 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/03/24 21:24:03 |