【偽夜】誘い花

マスター:一縷

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
無し
相談期間
5日
締切
2015/04/09 19:00
完成日
2015/04/15 21:19

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

●続く道
 覆い茂る木々。雲一つない青空。そして、目の前に続く一本道。真っ直ぐに続く道。
 ゆっくりとその道を進む。導かれるように、促されるように。
 ここがどこなのか分からない。どこへ向かっているのかも分からない。
 知らぬまま、分からぬまま――その一本道を歩み続ける。

 どのくらい歩き続けただろうか。
「……!!」
 ざあっと音を立て、突風が体を包み込むように吹き抜けては、風に乗った木々の葉が視界を奪う。
 霞む視界に目を凝らす。ふわりと舞うのは一枚の花弁。桃色の花弁。
 そして、その奥には咲き誇る一本の木。堂々と咲き誇る桃色の木。
「……どう、して……」
 全てが奪われるような感覚に陥る。その花を魅入ったからでなく、木の下に立っている人物に。
「……どうして、ここに」
 生唾を飲み込む。夢でも見ているのだろうか。
「――」
 風に一片の花弁が乗り、優しい声と共に頬を撫ぜる。
 信じられない。信じられるはずがない。夢でも、見ているのだろうか。
「……だって、おまえは、もう……」

 ――死んだ、はず。

 ふらふらと吸い寄せられ、一歩一歩近づくたびに脳裏には思い出が甦る。
 楽しい思い出も悲しい思い出も……全部、全部。
 いつのまにか駆け出していた。縺れる足を踏ん張りつつも、手を伸ばしてその体に触れようと。
「……会いた、かった……っ」
 最後に別れたあの日と何も変わらないその体を抱き締める。
 これが夢でも幻でも何でも構わない。今、目の前に居て、その体を抱き締めて触れているという事実があるだけで十分だ。
「――」
 細く白い腕が自分の背中に回される。じんわりと伝わるぬくもり。
 それだけで、心が満たされていた。ぽっかりと空いていた溝が埋まっていくような気がした。
「――」
 彼女の口は動いているのに、言葉は聞こえない。
 夢や幻であってもこの世には存在しないモノだからだろうか。
 彼女は柔らかい表情を浮かべ、涙に濡れた頬を拭うように手が添えられる。
 その手に手を重ね、握り締める。
「一緒に、居たい……もう、離したく、ない」
 二度と会えないと思っていたから諦めていた想いが溢れ出す。例え無理であっても――。

「――じゃあ、一緒に、居ましょう?」

 そう言って彼女が微笑んだかと思うと、唇に柔らかい物が触れる。
 触れた唇に全てを奪われてしまうかのように一点に熱が集まっていく。
 突如、朦朧とし始める意識。支える力を失った体は、ゆっくりと傾き始める。
「――これで、一緒。ずっと、一緒よ」
 意識が途切れる瞬間に囁かれた言葉。

 ああ、これからは彼女とずっと一緒に居られる。
 なんて幸せな事だろう。
 例え死を選んだとしても、彼女と居られるのなら、……幸せだ。



 その後、幸せそうな表情で息を引き取っている青年の姿が見つかった。
 青年の体は桃色の花弁を纏っていたが、辺りを見渡しても、そんな木も花もない。
 不思議な、とても不思議なお話し――。 


●遠い話
 桜。
 この花が綺麗に、美しく、儚く咲き続ける理由。
 こんな話を聞いたことがあるだろうか。
 桜の木の下にはこの世を去った者が埋められていて、その者に与えられていたはずの残りの時間を栄養として咲いているのだと。
 信憑性の一切ない話。信じていれば本当で。信じていなければ嘘となる。
 ――アナタは信じますか?

リプレイ本文

●花弁の誘い
 ひらり、ひらひら。
 淡い桃色の花弁が風に舞う。
 その花弁が誘うは道の先。誘われるように歩み進めれば一本の大樹へと辿り着く。
 目を細めれば、大樹の下に佇む影。

 さあ、アナタを待つのは――。


●命の恩人
「……綺麗ね」
 コーシカ(ka0903)は、ひらりと舞う花弁へと手を伸ばす。
 誘い導かれ歩み続けた先に大樹があるのを認識した時だった。

 足を止め、目を細める。
 焦点の定まらない視線の先には人影。
 静かに銃に手を添え、相手に存在を悟られぬように徐々に距離を縮める。
 もしもに備えての行動。
 次第に鮮明になる色、姿、表情――全てを認識したコーシカは息を呑んだ。
 
 ――なんで。

『元気にしていたかにゃ?』
 銃を構えていた手から力が抜け、音にならない吐息が零れる。
「……なんで、いるのよ」
 コーシカの瞳に映るのは――この世を去った恩人。
『少し話しがしたいだけにゃ』
 柔らかい微笑み。
 あの日と何も変わらない彼女に、視線が奪われる。もう会えないと思っていたからこそ。
『あの後どうなったのか気になるのにゃ……聞いてもいいかにゃ?』
 顔を覗き込まれて我に返る。あの後、その言葉を聞いたコーシカの表情が曇っていた。
 彼女は、自分の命を代償にコーシカの命を救った張本人。
 恨んでもいいのに、憎まれてもいいのに……彼女は変わらず微笑んでいる。

 ほら、と促されて彼女の問いに丁寧に答えていく。
 色々迷惑をかけてしまった家から追い出されてしまったこと。
 彼女が命を落としたことを悔やんでいること。
 そして、
「私ね、あなたの昔の話を聞いて、ちょっと色々思うことがあったの……それでね、今はあなたの名前を名乗ってるの」
『照れるにゃ。でも、一緒っていいものだにゃ』
 少し紅に染めた頬で彼女は笑う。

 ずっと。ずっとこうしていたい。でも、それは叶わない願い。
「あ……!」
 既に結構な時間を話し込んでいたように感じたコーシカは慌てて立ち上がる。
『もう帰っちゃうのかにゃ?』
 するりと指が絡められる。
 視線を落とせば先程までの柔らかい微笑みとはどこか異なる寂しい表情を浮かべた彼女。
『まだ、話したい……もう少し一緒にいたいのにゃ』
 絡められた指に力が篭る。
 彼女が生きていれば、頷いたかもしれない……でも、今は。
 コーシカは彼女の手に手を重ね、解きながら微笑みを向ける。
「……ごめんなさい。私には護りたいものがあるの」
 瞳は彼女の姿を捉えているはずなのに、歪んで彼女の表情を把握出来ない。
「あの子達について行かないと」
 微笑んでいるのか。悲しんでいるのか。
 コーシカは涙の先の彼女を窺い知ることは、もう――。


●ヒトガタ
 視線の先には人影が一つ。
「あれは……」
 鹿野 京(ka4517)は、大樹の下に佇む影を見つめる。姿を確認した鹿野は眉根を寄せた。
 確かに存在するのはヒトリ。ヒトリなのに老若男女にゆっくりと姿を変えている。
 その姿に見覚えはあった。忘れるはずがない。
 鹿野がかつて所属していた傭兵集団の人たち。依頼に出たきり帰還しなかった人たち。
 揺らめきながら姿を変えては、ゆっくりと鹿野に近寄ってくる。

『ナゼ、ニゲタノダ』
『タタカイコソガ、ワレワレノ、ソンザイイギ』
『タタカッテ、トウソウノハテニ、シネ』
『シネ』

 低く唸るような声。
 ヒトガタの口元は動いていないのに、耳元で囁かれているような声。
 ――ヒトガタの怨嗟。

 言われなくても分かっている。自分自身が一番分かっている。
 目を伏せる。それでも私は違うのだと。それが正しい事であっても、違うのだと。
「……確かに、私はあの場所から離れても戦いを捨てられずにいる」
 近寄ってきたヒトガタの手が肩にのり、ゆっくりとなぞるように這う。
「そして闘争を前にして高ぶりを覚えることを拒否も肯定も出来ない半端な存在なのでしょう」
 肩から鎖骨へ。
「ですが……」
 鎖骨から首へ。
 首を捉えた手に力が篭った瞬間、鹿野は目を開き、瞬時に抜き放った刀をヒトガタの喉元へと突き立てる。

「申し訳ありません。私はそちらへ行くわけにはいかないのです」

 ゆらり、再びヒトガタの顔が変わる。

「私はあなた方とは違う」

 ゆらりゆらり、次々に。まるで、思い出せと言っているかのように。

「他者の意思のみで威を振るうことを肯定できなかった。戦闘器械で在ることができないのです」

 ぐ、と刀の柄を握り締め、そのまま斬り抜ける。
 斬った感触はない。血も流れていない。斬り捨てたヒトガタは揺らめきながら歪み始める。
「私はもう……迷い悩む人間としての道を選んだのです」
 ヒトガタを背に、咲き誇る桜の木を見上げる。その瞳には透徹の意思が浮かんでいた。
「道を見失ったならばその時は潔くそちらへと参りましょう」
 振り返りはしない。
「その時が訪れるまでは、人間として足掻き苦しむことを選びます。お叱りはその時に」
 これが私の気持ち。正直な気持ち。
「このような夢幻とはいえ、お会い出来て嬉しかったですよ」
 降り注ぐ花弁に微笑みを浮かべ、別れを告げる。

「では、いずれまた」


●部族を支えし大樹
 桃色の花弁と甘い香り。
 懐かしい乾いた風に運ばれてくる砂の香り。
 その二つがリュカ(ka3828)を道の先へと誘う。

 歩む道の先の桃色の木を視界に捉える。
 失ったのは人とは限らない。彼女が。彼女の部族が失ったモノが、桃色の木の先にあった。

 ――大樹。

 部族を支える大樹。
 歪虚の衝撃を受け、かつての面影を失った朽木。

 以前は荒れた大地の中、その樹を中心にした地域だけは恵まれた森や泉が存在した。
 しかし、もはやその面影はない。
 枯れた土に佇むのみ。

 眉根を寄せる。その姿が見るに耐えなくて。
 朽ちた樹の表面に手を添える。
 かつて感じた温かく脈打つ強さは、今はもう感じられない。

 ――共に、土に還ろう。

 表面に触れた手の平から熱とは違うモノが流れ込んでくる。
 聞き覚えのない声。

 ――汚染を受け、歪虚と成り果て木々を、鳥たちを、大地を、かつての家族を傷つけることのないように。

 大樹の想い。
 いや、リュカが無意識のうちに心の奥底で思っていたことなのか。
 今はどちらでもいいのかもしれない。

 添えた手から自然と枝葉が芽吹く。
 このまま、この樹と共に大樹となろうと。
 かつてのこの樹のように森を育み、部族を、新たな命を護ろうと。
 そう、促すように、誘うように、次々と芽吹いていく。

(……それもまた、いいのかもしれない)

 体の変化をゆっくりと感じながら目を伏せる。
 このまま一つになれば、昔のように部族を支えられるのではないか。

(本当に、それでいいのだろうか?)

 私が大樹に。部族を護る大樹に。
 いや、私が大樹になどはなれない。なれるはずがない。
 いつかの若芽の為に土へと還る程度ではないだろうか。
 それは私が老いた時でいいのではないだろうか。

「……私は、非力だ」

 手から力が抜ける。
 表面を撫でるように手を滑らせ、ゆっくりと離す。

「だが、その私にでも出来ることが、まだ何かあるはずだ」

 手から芽吹いていた枝葉が、桃色の花弁に包まれてゆっくりと消えていく。
 朽木の大樹もそれに誘われるようにゆっくりと、ゆっくりと。

 彼女や部族を護り、育んでくれた大樹。
 いつか。いつか私も未来の世代を護ろう。

 跡形なく姿を消した大樹に背を向け、リュカは歩み出す。
 この足で森を離れ歩める間は、まだ……自分の足で、この道を。


●『関係のない誰か』
 この場所は夢か現か。
 夢だと思わせるのは、咲き乱れる桃色の大樹のせいだろう。

 スティリア(ka3277)は、舞い散る花弁に目を奪われる。
 吸い込まれるように、誘われるように、大樹へと歩めば木の下に何人もの人影が居ることに気が付いた。
 胸がざわつく。
 顔は確認できずとも、近づくたびに、足をす進めるたびに。

 スティリアには身寄りがいない。己が何者なのかも判らずに退屈な日々を過ごし、生きてきた。
 自身を除く他者は皆一様に『関係のない誰か』という認識。
 しかし、その認識が一変する瞬間が訪れた。
 歪虚が数多の『関係のない誰か』の命を奪った瞬間だ。
 心の芯が震えた瞬間。
 身寄りがない彼女を保護し、支えてくれた存在。自分にとって大切であったのだと悟った時にはもう遅かった。
 だからこそ、その手に刃を執った。彼らの、数多の家族の無念を晴らす為に。

 木の下に居たのは、その『関係がないと思っていた誰か』達。
 名を知らぬ者も、知る者もいた。数え切れぬほどに。
「……」
 言葉を紡ぐ声は出ない。彼らの為に彼女は今、立っているのだから。

 何かを話すでもなく、ただ見つめ合う。沈黙の時間だけが流れていく。
 その沈黙を破ったのは『誰か』達だった。
 スティリアに向かって、数多の手が差し伸べられる。

 一緒に居よう、と。
 共に居よう、と。

 その手は温かいのだろうか。それとも冷たいのだろうか。
 温かいのなら、この世に居ないはずの存在をこの身に感じるのだろう。
 冷たいのなら、やはり夢なのだとこの身に実感するのだろう。
 迷う。
 恩知らずに差し伸べられるはずがないと思っていた手に戸惑いを隠せない。

「私は……」
 その手は掴まない。掴めない。
 伸ばしかけた手を強く握りしめる。
 私が散るべきはここではない。『誰か』達と共に散ることはできない。
 その想いが彼女の瞳に更なる色を浮かばせる。
「私が散るべきは、憎き歪虚が崩れ散る戦場の地」
 そうでなければ『誰か』達の手を取っていた。一緒に居ようと、居たいと思ったかもしれない。
「この手で無念を晴らすまでは……」
 咲き誇り、舞い散る花弁は、この世に存在しないはずの彼らの為に手向けにしよう。

「私はまだ、生きねばならない」

 その言葉を彼らに捧げ、スティリアはゆっくりと目を伏せた。


●眠りの先へ
 重たい体を引きずり、ゆっくりと歩む。大きく咳き込めば、その手には深い赤。
 それでもメオ・C・ウィスタリア(ka3988)は舞い踊る花弁に誘われるように歩み続ける。
 左手に携えた、たかし丸と共に。

 視線の先に大樹を捉える。
 大樹の下には見覚えのある影。目を疑う。夢でも見ているのではないか。
 しかし、見間違うわけがない。じゃあ、目の前に居るのは――。

「おとうさん、おかあさん……?」

 心を占めたのは喜びではなく戸惑い。
「なんで、ここにいるの……?」
 十数年前に亡くなったはずの両親が、変わらないままの姿で立っていた。
『メオ』
 優しい声が耳に届く。懐かしい音。二度と聞けないと思っていた響き。
「……会いたかった! 会いたかったよぉ!!」
 広げられた腕に飛び込む。
 堰を切ったように溢れ出す涙が視界を曇らせていく。見えずとも両親の存在はその身に感じて。
「仇、討ったよ……っ」
 その言葉を告げれば、両親の表情が少し柔らんだようにも思えた。
『……お前は相変わらず泣き虫だなぁ』
 ゆっくりと頭を撫でられる。再び大粒の涙が頬を伝っていく。
『ねえ、メオ?私達と一緒に居られるのなら、メオはどうする?』
 伝う涙を優しく拭われる。え、と首を傾げれば、より笑みが深くなった。

 一緒に。
 聞き間違いではないのだろうか。
 幼い頃に亡くなった両親と。

「……一緒に居られるの?」
 願ってもいなかった言葉だ。
「居たい。ずっと、ずっとずっと、ずっと一緒に居たい」
 その言葉にメオは何度も、何度も大きく頷いた。
『私達もメオとずっと一緒に居たいわ』
『さあ、お父さん達に、もっとメオの話を聞かせておくれ』
 抱き締めてくれる体にしがみつく。離れないように離さないように。強く。強く。
「どうなってもいいよ? どうすれば、一緒に居られる?」
『……何もしなくていいんだよ』
 ぽんぽん、と背中を叩かれる。眠りを促すように、子供をあやすように。
 リズムよく。ゆっくりと。優しく。
「おとうさん、おかあさん、ずっといっしょだよ」
 心地良い。この感覚がとても心地良い。
「だいすき」
 髪を梳いてくれる手が、背中を叩いてくれる手が。
 メオの心を溶かしていく。二度と目覚めぬ眠りへと落ちていく。

『おやすみ、メオ』

 優しい囁きが、メオを幸せに包み込んでいった。


●受け継ぐ命
(楽園、か?)
 桃色の花弁が舞い散る。この場に咲き誇ってはいないはずの大樹。
 このまま花見も悪くないかもしれない。
 そう思った時、視界の端に捉えた影。見間違うことのない人影。
(……こりゃ、タチの悪い夢だな)
 アゼル=B=スティングレイ(ka3150)はゆっくりと口角を上げる。
 目の前に立つのは、この世を去ったはずの弟分。
『姉さん』
 ああ、これはいったい誰が見せている悪夢なのだろうか。

 
 エルフの自分とは違う人間だったが姉弟だった。
 十字架を聖なる証とする独特の神を崇め、海賊である姉にくっついて海を渡っていた、妙な弟。
「おまえが居るってことは」
 この夢を見せているのは神なのだろうか。
 いや、違う。自分は神に願っていない。
「逝ったはずの海賊仲間が彼岸の向こうに待っている、なんてぬかさねえよな?」
 弟が命の教義を垂れるおかげで海賊しか狙えなかったが、今となってはそれでよかったと思っている。
 なんだかんだ口論もしたが、関係は悪くなかったはずだ。
「でも、悪いな」
 生きていてさえくれりゃ、未だ海賊を続けていたかもしれない。
「聖導士として生きて、それなりの何かを掴むまでは逝けねえ」
 弟や海賊仲間の命を貰い受けたと認識している今、そう簡単にこの命を捨てることは出来ない。
 
 何かを掴む。

 それが何かは分からない。
 少なくとも弟が目指していたものが何か、海賊仲間が極楽に在ると確証を得るまでは。

 あの時と変わらない弟の頭に手を乗せる。
 仄かな温もり。
 それは弟の体温なのか、自分自身の体温なのか。
 否、今はそんなことはどうでもいい。

 ――祈れ。

 己が路と、我が路が交わるその日を。そして進め。何かを掴むその日まで。
(おまえなら、そう祈るだろう? 姉に。海賊だった、ろくでなしに)
 弟の存在を確かめるように何度か優しく頭を叩く。
「海賊が聖職者に転身なんて冗談が過ぎると思うか?」
 自嘲気味に滲む笑み。その表情を見ても、弟の表情は相も変わらず。
「構わねえ。お前になら、笑われても……その代わり、重い一撃を覚悟しておけよ?」
 撫でていた手を離して弟の肩に手をかけ反対を向かせると、その背を押してそのまま歩めと促した。

「いつか、会いに行く。必ず、な」

 ゆっくりと姿を消す弟の背を見ながら、ぽつりと言葉を零す。
 その時まで待っていてくれ、と。


●現へ
 生を望む者、死を選ぶ者。
 後悔を語る者、約束を誓う者。
 各々に過ごした時間はアナタの一歩となるのでしょうか?
 その答えを知るのはアナタだけ。
 
 ――おかえりなさい、みなさま。

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重体一覧

参加者一覧


  • ルーティア・ルー(ka0903
    エルフ|12才|女性|霊闘士
  • 粗野で優しき姉御
    アゼル=B=スティングレイ(ka3150
    エルフ|25才|女性|聖導士
  • 氷情炎舞
    スティリア(ka3277
    エルフ|18才|女性|疾影士
  • 不撓の森人
    リュカ(ka3828
    エルフ|27才|女性|霊闘士
  • たかし丸といっしょ
    メオ・C・ウィスタリア(ka3988
    人間(蒼)|23才|女性|闘狩人

  • 鹿野 京(ka4517
    人間(蒼)|19才|女性|闘狩人

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/05 20:32:32