ゲスト
(ka0000)
【偽夜】精霊少女プエラスペラ・デュオ!
マスター:えーてる
みんなの思い出? もっと見る
オープニング
●
――地球は侵略を受けている。
ヴォイドと名乗る侵略者たちの活動が、世界各地で多発していた。超常の力を操る悪の精霊たちに、世界は脅かされようとしていた。
その時、異界から現れたパルムと名乗る精霊が、少女たちに力を授けた。
思春期の少女だけが励起できる奇跡の源――マテリアルを操る力だ。
マテリアル集合体である精霊の加護を得て、無垢な願いにより精霊と同化し、ヴォイドを浄化する聖なる光を操る少女たち。
彼女たちを、精霊たちはプエラスペラと呼んだ。
地球を狙うヴォイドの魔の手を打ち払うため……戦え、プエラスペラ!
●
私、西野ラキ! 市立赤西中学の一年生! でこっちが相棒の篠原カナコ。
三ヶ月前、ひょんなことから謎のキノコ精霊パルムの力で「精霊少女」として戦う事になった私たち。
臨海学校の一件でヴォイドという悪い精霊の将軍、ぬるぬるお化けタコもといワァーシンをなんとか倒し、夏休みに訪れたベリアルとかいう変態羊をぶちのめして、二学期に入ったんだ。
文化祭を前にクラスのみんなと一致団結、出し物の準備を頑張ってます! これぞ青春って感じだよね!
でもでも、文化祭の前日、学校がヴォイドに占拠されちゃった!?
敵の名前は女巨人・ヤクシー。私たちの学校を占拠するなんて、しかも事もあろうにその理由がサボりだなんて! 許せない!
「なんとかして取り返さなきゃ……! 行こう、ラキ!」
「任せて、カナコ! 二人ならやれるよ!」
腕のマテリアルバングルを掲げて、息を揃えて叫ぶんだ。
「「マテリアル・インストール!」」
ぱっと衣服が光になって弾けて消えて、私の体を、私の赤いマテリアルが包んでいく。
「イグニース・アウルム・プロバット!」
足、腰、胸と形を取った精霊衣装は、最後にグローブになって私の手を守る。
血潮のような赤い色。炎の色。情熱の色。元気の印!
「ミセーリア・フォルテース・ウィロース!」
カナコの体を青いマテリアルが包んでいく。
色は青。空のような澄んだ青。クール、冷静、知性の印!
「「――精霊覚醒、プエラスペラ!」」
さぁ! 私たちの青春の結晶、文化祭のために! そこを退いてよ、ヤクシー!
――地球は侵略を受けている。
ヴォイドと名乗る侵略者たちの活動が、世界各地で多発していた。超常の力を操る悪の精霊たちに、世界は脅かされようとしていた。
その時、異界から現れたパルムと名乗る精霊が、少女たちに力を授けた。
思春期の少女だけが励起できる奇跡の源――マテリアルを操る力だ。
マテリアル集合体である精霊の加護を得て、無垢な願いにより精霊と同化し、ヴォイドを浄化する聖なる光を操る少女たち。
彼女たちを、精霊たちはプエラスペラと呼んだ。
地球を狙うヴォイドの魔の手を打ち払うため……戦え、プエラスペラ!
●
私、西野ラキ! 市立赤西中学の一年生! でこっちが相棒の篠原カナコ。
三ヶ月前、ひょんなことから謎のキノコ精霊パルムの力で「精霊少女」として戦う事になった私たち。
臨海学校の一件でヴォイドという悪い精霊の将軍、ぬるぬるお化けタコもといワァーシンをなんとか倒し、夏休みに訪れたベリアルとかいう変態羊をぶちのめして、二学期に入ったんだ。
文化祭を前にクラスのみんなと一致団結、出し物の準備を頑張ってます! これぞ青春って感じだよね!
でもでも、文化祭の前日、学校がヴォイドに占拠されちゃった!?
敵の名前は女巨人・ヤクシー。私たちの学校を占拠するなんて、しかも事もあろうにその理由がサボりだなんて! 許せない!
「なんとかして取り返さなきゃ……! 行こう、ラキ!」
「任せて、カナコ! 二人ならやれるよ!」
腕のマテリアルバングルを掲げて、息を揃えて叫ぶんだ。
「「マテリアル・インストール!」」
ぱっと衣服が光になって弾けて消えて、私の体を、私の赤いマテリアルが包んでいく。
「イグニース・アウルム・プロバット!」
足、腰、胸と形を取った精霊衣装は、最後にグローブになって私の手を守る。
血潮のような赤い色。炎の色。情熱の色。元気の印!
「ミセーリア・フォルテース・ウィロース!」
カナコの体を青いマテリアルが包んでいく。
色は青。空のような澄んだ青。クール、冷静、知性の印!
「「――精霊覚醒、プエラスペラ!」」
さぁ! 私たちの青春の結晶、文化祭のために! そこを退いてよ、ヤクシー!
リプレイ本文
●
「帰りたい」
怠惰のヴォイド、ヤクシーは呟いた。
「暴れてこいって、あんた命令が雑過ぎだろうに……お前たち、後は適当にやっといて。おやすみ」
それきり校庭に寝転がって起きなくなったヤクシーを見て、ファティマ・シュミット(ka0298)は苦笑いした。
「あはー。やー相変わらずヴォイドさんたちって……理由がダメダメですよね」
天竜寺 詩(ka0396)はぼやいた。
「ていうか、なんでウチなんだろう」
精霊少女の宿命だ。
何れにせよ、このままでは文化祭などとても開催できない。
「うー、ずっと楽しみにしてた文化祭、こんな巨人共に邪魔はさせないよ!」
詩は両拳を振り上げた。
「ヤクシー、あの巨乳をこれ見よがしに見せつけてくるあの憎き巨人女!」
Non=Bee(ka1604)は吠えた。なお言いがかりです。
「あたしがちょっと貧乳だからって悔しいわ、悔しいわ!」
読者諸兄は違和感があるかもしれないが、精霊少女なので彼女も女だ。ここは優しい世界なのだ。
「文化祭かぁ。普段なら楽しい文化祭になってたんだろうな……普通の男の子として……」
ルーエル・ゼクシディア(ka2473)は遠い目で空を見上げた。
「前日にメイド服の売り子さんを押し付けられるなんて。僕は女の子じゃないのにっ」
ここは優しい世界だ。いいね?
「ヤクシー、なんていいところに……いっそこのまま放置すれば文化祭延期……いやでも……」
己の心の闇と戦うルーエルを他所に、普段温厚なファティマは珍しくぷんぷんと腕を振り上げた。なにせ普段はインドアな工作女子である。少女らしくない趣味を仲間に認められる系の青春を経て精霊少女となった彼女にとって、文化祭は皆への恩返しでもあった。
「サボりたいなら、おうちでポテチでもかじっててください! 頑張りたい人の邪魔をしないで!」
「そうそう! わるーいヴォイドはモニカがお仕置き! なのよっ!」
モニカ(ka1736)はくるんと回って指を差し、あざとくポーズを決めた。
「……ついでについでに! モニカが可愛く目立てたら、すっごーく嬉しいな! なのよーっ」
多分、ついでではない。
「この胸のもだもだと、ついでに楽しい文化祭の為に立ち退いて貰うわよ」
こっちはマジでついでだ。
「この日を楽しみにしてる人達がたくさんいる。思い出を作ろうとする人達がいる。なら、精霊少女として成すべきことはただ一つ!」
ルーエルはようやく己の心の闇を振り払って拳を突き上げた。
「よーしみんな、今日も元気にやっちゃおう!」
バングルを、指輪を、三味線を掲げて、五人は一斉に叫んだ。
『マテリアル・インストール!』
●
ぱっと衣服がはじけ飛び、マテリアルが精霊衣装を形作る。
「アブ・ウーノー・ディスケ・オムネース!」
ファティマの衣装は、若葉の緑と木目の黒茶。
髪を白いバンダナがくるんで、独りでに固く結ばれる。
「全てを育む木立の新緑、母なる大地!」
軍手よろしくグローブを嵌め、マテリアルバングルは戦鎚へと姿を変える。纏うは抱擁と錬成の色、緑の精霊少女。
「ルクス・ルミナス・ルミエール!」
詩はべべん、と弦を弾き鳴らした。
その体を金色の光が複雑に走り、次いで純白の外衣を形成する。
マテリアル三味線は分かたれて光の弓へ。弦を二三と爪弾き微笑む、無垢と清浄の白に包まれた、光の精霊少女。
「ラム・バッカス・バッカナーレ!」
中指の指輪がしゅるりと解けて、長くうねる鞭となる。
「強く気高く逞しく、オンナは度胸よ!」
和装を思わせる深い袖を翻し、短いスカートには深くスリット。その色は高貴と妖艶、紫の精霊少女。
「ロサ・フォリウム・フローリス!」
モニカのバングルから溢れる光は、蕾のように彼女を包み、そして花開く。
ソックス、グローブ、スカート。花弁を模した愛らしい曲線。
その弓からは花とリボンをたなびかせ、ウィンクと共にあざといポーズ。桃色、春色、花ひとひら。花の精霊少女。
「デュークント・フォーレンテム・ファータ!」
ルーエルの衣装は、草原の緑と大地の砂色。
「大地の怒りをその身に受けろ! 重撃爆砕!」
勿論スカート。そしてひらひら。
十字の戦鎚を大地に突き立て、雄々しくも愛らしく、繁茂する緑の化身、地の精霊少女。
最後に皆揃ってポーズし、誰かの「せーの」で声を合わせる。
『精霊覚醒、プエラスペラ!』
●
「希望の光で闇を撃つ! 命燃え尽きるまで! 光の精霊少女シャイニー詩、参上!」
「あなたのハートはモニカが射抜いちゃうんだからっ! 花舞いの精霊少女モニカ、ただいま見参! ……なのよっ」
詩とモニカが揃って弓を構えて凛々しくor愛らしくポーズを取った。別段打ち合わせたわけではなく、互いに好き勝手アピールした結果だ。
「決まった……!」
「ちょっとちょっと、カメラ回ってないなのよ!」
「月夜の精霊少女セクシーノンノン、今宵もあなたを酔わせちゃうわよ」
年齢など何のその、最年長のお色気担当を自称するノンはどこぞへ向けて投げキッスした。あとカメラとかそういうのはないです。
「そっくりですね、私たち……」
ファティマとルーエルは完全にモロ被りだった。
緑で戦鎚。精霊少女の変身は後々変えられるようなものではないので、被りは仕方ないのだ。
「色の配分については触れないでおこう」
と、ルーエルは冷静に話題を打ち切った。緑白紫桃緑と戦隊物にあるまじき色の五人だ。魔法少女だけど。
ともあれ、寝ている首魁の元へ辿り着くためにはまず雑魚を倒さねばならない。無双ゲーよろしく。
まずは、ファティマが戦鎚を振りかぶった。
「行きます!」
鎚を大地に叩きつけると、そこから無数の杭が生え出した。
ファティマは物を創造する能力を有する、本人曰くのアルケミ系魔法少女なのだ。地面からぼこぼこ飛び出る杭が、雑魚ヴォイドや巨人を吹き飛ばしていく。
「あたしも行くわよ!」
ノンは巨人に対しておもむろに投げキッスを放った。巨人の動きが止まった。何故かはお察しください。
後方、ズバンズバンと容赦なく雑魚を薙ぎ払う詩とは対照的に、モニカは巨人目掛けて牽制射撃を繰り返している。
「陰湿!」
「堅実と言いなさい! なのよ!」
ノンを狙って武器を振りかぶる巨人を威嚇するように矢を放ち、動きを止める。
「精霊少女なんだしネチネチやってないで、もっとパーッとさぁ!」
「だってだって、勝たないと意味がないじゃない!」
言い合いながらも、モニカが足を止めた敵を詩がぶち抜いていく。やっぱり打ち合わせているわけではなく、好き放題やった結果だ。
「あっそうだ」
「なんかあったの!?」
詩は唐突に弓を撃つ手を止めて、焼きそばの屋台に駆け寄った。
「何してんの! サボり!? サボりなのね!?」
「いや、なんか焼きそばで買収出来るんじゃないかなーって」
「あなたフリーダムすぎなのね!? てか前日に具材放置してあるわけないのね! 昨今の衛生管理意識ナメんじゃないなの!」
「ぐぬぬ」
モニカは正論でやりこめる。詩は名残惜しげにヘラを構えた。
一方、ノンとルーエルはヤクシーへと一直線に走る。
「ルーエルちゃんやっちゃいなさい!」
「とああぁーっ!」
ノンの鞭が足を止めた所への必殺魔砲パイルバンカーで、巨人の胴体に風穴を開ける。
「今回あたしたちの中で前衛張れるのルーエルちゃんだけだからねぇ」
「ノンさんも行けるよね多分!?」
「やーねぇ、あたしの武器は鞭よぉ?」
戦鎚でどかんばかん敵をなぎ倒しながらルーエルは抗議した。
「ごめんなさい! 私のハンマーは鉄だけを叩くって決めてるんです!」
「あ、うん、ファティマさんは大丈夫。むしろガンガンやっちゃって」
近くの屋台を叩き潰して大砲や自動銃座にしているファティマ。実際一番働いていた。
「んもー! あたしがか弱い後衛乙女だって所を見せてあげるわ!」
ノンはそう言って大きく息を吸い込み、美しいテノールボイスの歌を放った。勿論強化された範囲攻撃だ。綺麗なジャイアンソングと思えばよろしい。
衝撃波で巨人たちがなぎ倒され、ついにヤクシーへの道が開けた。
「はぁー……ロワ、出番だよ」
その時、彼らの前に一人の学生が立ちはだかった。
「やぁ」
三つ編みに眼鏡をかけた、謎の美少女(自称)蒼真・ロワ・アジュール(ka3613)である。白シャツにネクタイ、何故か短パン。他校の制服だ。
「き、君は一体!」
ルーエルがノリよく叫び、ロワはにやっと笑った。
「マテリアル・インストール」
「ロウ・ロワ・ノクトゥルヌ」
ロワの三つ編みが解ける。夜闇のような黒いマテリアルは、スーツに似た精霊衣装を作り出す。
独りでにポニーテールが結い上げられて、眼鏡は真っ黒なサングラスに。そして短パン。
「精霊覚醒、プエラスペラ」
短パンスーツという奇矯な出で立ちの精霊少女は、後ろをちらりと振り返って言った。
「ヤクシーさんだっけ……報酬のほうは弾んでもらいますから」
眠たげにひらひらと手を振るヤクシーに一つ頷いて、ロワは立ち塞がった。
「なんでヴォイドの味方をするんだ!」
ルーエルがノリよく言うと、ロワはにやっと笑った。
「お金のためだよ」
ルーエルがずっこけた。
「あ、分かるー」
同意する詩を尻目に、ロワは尋ね返した。
「そういう君も自分のためだろう?」
ルーエルは叫んだ。
「皆のために戦うよ! 当たり前だよ! 自分だけの問題だったら、すっ呆けてもう帰ってるよ!」
魂の叫びであった。決してメイド服着せられるために戦っているわけではないのだ。
「ルーエルちゃん……」
「ノンさんその同情っぽい顔やめて! 僕ノーマル! ノーマルだから!」
ルーエルはともかくと武器を構え直した。
「ここで精霊少女として頑張らないと、普通の男の子に戻れる日が遠退いてしまう気がするんだっ」
「いやー、来ないと思うけどな、私」
「モニカもそう思うなの」
「ルーエルさん、男の子だったんですか……!?」
「うおお、唸れパイルバンカー!!」
戦えルーエル! 世間の理解を得られるその日まで!
●
仕切り直しだ。
「おいで、黒い流れ星……レーヴデトワール!」
「召喚術!?」
虚空から現れたのは戦闘機型の機体である。
「わあS-Z1! しかもCOP搭載型! あのジェネレータ、COP-2Cですね!」
ファティマの模型少女魂が反応して、攻撃の手が止まった。ロワはそのまま射撃で精霊少女たちを迎撃する。
「くっ、弾幕が濃すぎて近づけない!」
「SESアクセラレーターによるエネルギー供給! すごいすごい!」
「レーヴデトワールってなんなのかしら?」
「ノンちゃんそんな時はスマホの出番だよ」
「星の夢って意味なのよ」
「モニカちゃんフラ語出来るの!?」
「ふふん、乙女の嗜みなの」
「僕帰っていいかな!?」
本当に弾幕のせいかは分からないが、とにかく攻め手が削がれた精霊少女たちを見て、ヤクシーが欠伸する。
「なんだかもう一眠り出来そうだねぇ」
二眠りくらいは出来そうだが、しかしそういう訳にもいかないのだ。
戦闘機が回頭する。ごろんと背を向けて横になったヤクシーへと。
「あだだだ!?」
「面倒だからって魔法少女に用心棒を頼むなんてね」
背中に銃撃を浴びせかけられて叫ぶヤクシーに、ロワはにやっと笑った。
「ロワ、裏切ったね!?」
「残念だけど、ボクが報酬に欲しいのは、楽しく平和な学生生活だけさ」
「ろ、ロワさん!」
「ボクらの青東中は今回、赤西中と協力して文化祭を盛り上げる事になってる。放っておけないでしょ!」
そう、全ては油断させるための演技だったのだ。
ロワはサングラスを投げ捨てた。
「改めて……混沌に法と秩序を、昏き闇に瞬く光を! 星の精霊少女ロワ!」
そして、きらりとウィンクから星を飛ばした。
「宜しくね、お嬢さんたちっ」
「こ、このモニカに匹敵するウィンクなのね……男なのに……これは強敵」
一方その脇ではノンが突進していく。
「あなたには許せないことがあるのよ! それはぁ!」
ノンはびしっと指を突きつけた。
「こんなにだらけてて良いスタイル保ってることよ!」
「ダメだ趣旨がズレてる」
「食って寝てたら乳はデカくなるだろ?」
『巨乳! 滅すべし!』
「ぐわぁーっ!?」
滅茶苦茶野太い声と共に恨みの篭った腹パンが直撃した。ところで今ハモった気がしますね。
「……あら、あたしったらつい力入っちゃったわぁ」
ぶっ倒れたヤクシーを前に、ノンは頬に手を当ててもじもじした。もう遅い。
「油断するなパル! まだ消滅してないパルよ!」
今まで忘れられていたマスコットのパルムがようやく一言言えて満足そうにふんぞり返った。
「仕方ないねぇ……ちょっと本気出そうじゃないか」
そして敵はついに真の姿を解き放った!
「……ってデカすぎよぉ!」
「十メートルはありますね」
そう、巨大化である。
「踏み潰せば全部一緒だ。最初からそうしとくべきだったねぇ!」
「このままじゃ校舎が!」
ルーエルが武器を構えるが、サイズ差がありすぎる。
「学園祭は、怠惰なんかに負けない気持ちで満ち溢れてるんだもの!」
ファティマが鎚を振り下ろし、先生方の車を破壊して機械の腕に変えた。
「その名前は! 希望っていうの!」
鉄腕が踏みつけをどうにか受け止めたが、あまり長くは持たない。
「ちょっとパルムなんかないの!」
「あったら焦ってねえパルあだだぐるじい!」
詩はパルムを締め上げるが、ないものは出ない。
「巨大ロボとか!」
「あるわけねーパル! ぐええ!?」
「ロボですか! 了解です!」
「えっ」
「マレット・エニム・デウスエクスマキーナ!」
ファティマが戦鎚を校舎に叩きつけ、巨大なロボに変形させた。ファティマは生粋のクリエイターである。なければ作ればいいのだ。
「待って待ってモニカは展開に追いつけてねーなのよ! 魔法少女が巨大ロボって意味分かんない!」
「名づけてCutieAutoMatonプエラスペラロボ! 中々キュートでファンシーな姿だね」
「モニカさっき自重しろって言ったなのよ!? 可愛いけど!」
「そ、そうですか? えへへ」
ルーエルがやけになって叫んだ。
「大丈夫、初登場な武器は大活躍するって決まってるんだ! 多分!」
「弱点は潜入中に掴んでる! ボクの武器を使って。遠いけれど、皆の力を乗せれば届くはずだ!」
「仕方ないからやってあげるわ。目立つことは大好きだけど、与えられた役割を放棄していい言い訳にはならないでしょう? ……なのよっ!」
「さぁ、一気にヤクシーを粉砕だよ! そして私にお小遣いとストレス発散を!」
「オネェなめんじゃないわよ!」
「ケテル・コクマー・ダァト……フィニート!!」
新たな力を得たプエラスペラ! この期に及んでサボるつもりのヤクシーと最後の戦いに挑む!
文化祭はどうなる! オチはこれでいいのか! 少女たちの戦いは続く!
「帰りたい」
怠惰のヴォイド、ヤクシーは呟いた。
「暴れてこいって、あんた命令が雑過ぎだろうに……お前たち、後は適当にやっといて。おやすみ」
それきり校庭に寝転がって起きなくなったヤクシーを見て、ファティマ・シュミット(ka0298)は苦笑いした。
「あはー。やー相変わらずヴォイドさんたちって……理由がダメダメですよね」
天竜寺 詩(ka0396)はぼやいた。
「ていうか、なんでウチなんだろう」
精霊少女の宿命だ。
何れにせよ、このままでは文化祭などとても開催できない。
「うー、ずっと楽しみにしてた文化祭、こんな巨人共に邪魔はさせないよ!」
詩は両拳を振り上げた。
「ヤクシー、あの巨乳をこれ見よがしに見せつけてくるあの憎き巨人女!」
Non=Bee(ka1604)は吠えた。なお言いがかりです。
「あたしがちょっと貧乳だからって悔しいわ、悔しいわ!」
読者諸兄は違和感があるかもしれないが、精霊少女なので彼女も女だ。ここは優しい世界なのだ。
「文化祭かぁ。普段なら楽しい文化祭になってたんだろうな……普通の男の子として……」
ルーエル・ゼクシディア(ka2473)は遠い目で空を見上げた。
「前日にメイド服の売り子さんを押し付けられるなんて。僕は女の子じゃないのにっ」
ここは優しい世界だ。いいね?
「ヤクシー、なんていいところに……いっそこのまま放置すれば文化祭延期……いやでも……」
己の心の闇と戦うルーエルを他所に、普段温厚なファティマは珍しくぷんぷんと腕を振り上げた。なにせ普段はインドアな工作女子である。少女らしくない趣味を仲間に認められる系の青春を経て精霊少女となった彼女にとって、文化祭は皆への恩返しでもあった。
「サボりたいなら、おうちでポテチでもかじっててください! 頑張りたい人の邪魔をしないで!」
「そうそう! わるーいヴォイドはモニカがお仕置き! なのよっ!」
モニカ(ka1736)はくるんと回って指を差し、あざとくポーズを決めた。
「……ついでについでに! モニカが可愛く目立てたら、すっごーく嬉しいな! なのよーっ」
多分、ついでではない。
「この胸のもだもだと、ついでに楽しい文化祭の為に立ち退いて貰うわよ」
こっちはマジでついでだ。
「この日を楽しみにしてる人達がたくさんいる。思い出を作ろうとする人達がいる。なら、精霊少女として成すべきことはただ一つ!」
ルーエルはようやく己の心の闇を振り払って拳を突き上げた。
「よーしみんな、今日も元気にやっちゃおう!」
バングルを、指輪を、三味線を掲げて、五人は一斉に叫んだ。
『マテリアル・インストール!』
●
ぱっと衣服がはじけ飛び、マテリアルが精霊衣装を形作る。
「アブ・ウーノー・ディスケ・オムネース!」
ファティマの衣装は、若葉の緑と木目の黒茶。
髪を白いバンダナがくるんで、独りでに固く結ばれる。
「全てを育む木立の新緑、母なる大地!」
軍手よろしくグローブを嵌め、マテリアルバングルは戦鎚へと姿を変える。纏うは抱擁と錬成の色、緑の精霊少女。
「ルクス・ルミナス・ルミエール!」
詩はべべん、と弦を弾き鳴らした。
その体を金色の光が複雑に走り、次いで純白の外衣を形成する。
マテリアル三味線は分かたれて光の弓へ。弦を二三と爪弾き微笑む、無垢と清浄の白に包まれた、光の精霊少女。
「ラム・バッカス・バッカナーレ!」
中指の指輪がしゅるりと解けて、長くうねる鞭となる。
「強く気高く逞しく、オンナは度胸よ!」
和装を思わせる深い袖を翻し、短いスカートには深くスリット。その色は高貴と妖艶、紫の精霊少女。
「ロサ・フォリウム・フローリス!」
モニカのバングルから溢れる光は、蕾のように彼女を包み、そして花開く。
ソックス、グローブ、スカート。花弁を模した愛らしい曲線。
その弓からは花とリボンをたなびかせ、ウィンクと共にあざといポーズ。桃色、春色、花ひとひら。花の精霊少女。
「デュークント・フォーレンテム・ファータ!」
ルーエルの衣装は、草原の緑と大地の砂色。
「大地の怒りをその身に受けろ! 重撃爆砕!」
勿論スカート。そしてひらひら。
十字の戦鎚を大地に突き立て、雄々しくも愛らしく、繁茂する緑の化身、地の精霊少女。
最後に皆揃ってポーズし、誰かの「せーの」で声を合わせる。
『精霊覚醒、プエラスペラ!』
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「希望の光で闇を撃つ! 命燃え尽きるまで! 光の精霊少女シャイニー詩、参上!」
「あなたのハートはモニカが射抜いちゃうんだからっ! 花舞いの精霊少女モニカ、ただいま見参! ……なのよっ」
詩とモニカが揃って弓を構えて凛々しくor愛らしくポーズを取った。別段打ち合わせたわけではなく、互いに好き勝手アピールした結果だ。
「決まった……!」
「ちょっとちょっと、カメラ回ってないなのよ!」
「月夜の精霊少女セクシーノンノン、今宵もあなたを酔わせちゃうわよ」
年齢など何のその、最年長のお色気担当を自称するノンはどこぞへ向けて投げキッスした。あとカメラとかそういうのはないです。
「そっくりですね、私たち……」
ファティマとルーエルは完全にモロ被りだった。
緑で戦鎚。精霊少女の変身は後々変えられるようなものではないので、被りは仕方ないのだ。
「色の配分については触れないでおこう」
と、ルーエルは冷静に話題を打ち切った。緑白紫桃緑と戦隊物にあるまじき色の五人だ。魔法少女だけど。
ともあれ、寝ている首魁の元へ辿り着くためにはまず雑魚を倒さねばならない。無双ゲーよろしく。
まずは、ファティマが戦鎚を振りかぶった。
「行きます!」
鎚を大地に叩きつけると、そこから無数の杭が生え出した。
ファティマは物を創造する能力を有する、本人曰くのアルケミ系魔法少女なのだ。地面からぼこぼこ飛び出る杭が、雑魚ヴォイドや巨人を吹き飛ばしていく。
「あたしも行くわよ!」
ノンは巨人に対しておもむろに投げキッスを放った。巨人の動きが止まった。何故かはお察しください。
後方、ズバンズバンと容赦なく雑魚を薙ぎ払う詩とは対照的に、モニカは巨人目掛けて牽制射撃を繰り返している。
「陰湿!」
「堅実と言いなさい! なのよ!」
ノンを狙って武器を振りかぶる巨人を威嚇するように矢を放ち、動きを止める。
「精霊少女なんだしネチネチやってないで、もっとパーッとさぁ!」
「だってだって、勝たないと意味がないじゃない!」
言い合いながらも、モニカが足を止めた敵を詩がぶち抜いていく。やっぱり打ち合わせているわけではなく、好き放題やった結果だ。
「あっそうだ」
「なんかあったの!?」
詩は唐突に弓を撃つ手を止めて、焼きそばの屋台に駆け寄った。
「何してんの! サボり!? サボりなのね!?」
「いや、なんか焼きそばで買収出来るんじゃないかなーって」
「あなたフリーダムすぎなのね!? てか前日に具材放置してあるわけないのね! 昨今の衛生管理意識ナメんじゃないなの!」
「ぐぬぬ」
モニカは正論でやりこめる。詩は名残惜しげにヘラを構えた。
一方、ノンとルーエルはヤクシーへと一直線に走る。
「ルーエルちゃんやっちゃいなさい!」
「とああぁーっ!」
ノンの鞭が足を止めた所への必殺魔砲パイルバンカーで、巨人の胴体に風穴を開ける。
「今回あたしたちの中で前衛張れるのルーエルちゃんだけだからねぇ」
「ノンさんも行けるよね多分!?」
「やーねぇ、あたしの武器は鞭よぉ?」
戦鎚でどかんばかん敵をなぎ倒しながらルーエルは抗議した。
「ごめんなさい! 私のハンマーは鉄だけを叩くって決めてるんです!」
「あ、うん、ファティマさんは大丈夫。むしろガンガンやっちゃって」
近くの屋台を叩き潰して大砲や自動銃座にしているファティマ。実際一番働いていた。
「んもー! あたしがか弱い後衛乙女だって所を見せてあげるわ!」
ノンはそう言って大きく息を吸い込み、美しいテノールボイスの歌を放った。勿論強化された範囲攻撃だ。綺麗なジャイアンソングと思えばよろしい。
衝撃波で巨人たちがなぎ倒され、ついにヤクシーへの道が開けた。
「はぁー……ロワ、出番だよ」
その時、彼らの前に一人の学生が立ちはだかった。
「やぁ」
三つ編みに眼鏡をかけた、謎の美少女(自称)蒼真・ロワ・アジュール(ka3613)である。白シャツにネクタイ、何故か短パン。他校の制服だ。
「き、君は一体!」
ルーエルがノリよく叫び、ロワはにやっと笑った。
「マテリアル・インストール」
「ロウ・ロワ・ノクトゥルヌ」
ロワの三つ編みが解ける。夜闇のような黒いマテリアルは、スーツに似た精霊衣装を作り出す。
独りでにポニーテールが結い上げられて、眼鏡は真っ黒なサングラスに。そして短パン。
「精霊覚醒、プエラスペラ」
短パンスーツという奇矯な出で立ちの精霊少女は、後ろをちらりと振り返って言った。
「ヤクシーさんだっけ……報酬のほうは弾んでもらいますから」
眠たげにひらひらと手を振るヤクシーに一つ頷いて、ロワは立ち塞がった。
「なんでヴォイドの味方をするんだ!」
ルーエルがノリよく言うと、ロワはにやっと笑った。
「お金のためだよ」
ルーエルがずっこけた。
「あ、分かるー」
同意する詩を尻目に、ロワは尋ね返した。
「そういう君も自分のためだろう?」
ルーエルは叫んだ。
「皆のために戦うよ! 当たり前だよ! 自分だけの問題だったら、すっ呆けてもう帰ってるよ!」
魂の叫びであった。決してメイド服着せられるために戦っているわけではないのだ。
「ルーエルちゃん……」
「ノンさんその同情っぽい顔やめて! 僕ノーマル! ノーマルだから!」
ルーエルはともかくと武器を構え直した。
「ここで精霊少女として頑張らないと、普通の男の子に戻れる日が遠退いてしまう気がするんだっ」
「いやー、来ないと思うけどな、私」
「モニカもそう思うなの」
「ルーエルさん、男の子だったんですか……!?」
「うおお、唸れパイルバンカー!!」
戦えルーエル! 世間の理解を得られるその日まで!
●
仕切り直しだ。
「おいで、黒い流れ星……レーヴデトワール!」
「召喚術!?」
虚空から現れたのは戦闘機型の機体である。
「わあS-Z1! しかもCOP搭載型! あのジェネレータ、COP-2Cですね!」
ファティマの模型少女魂が反応して、攻撃の手が止まった。ロワはそのまま射撃で精霊少女たちを迎撃する。
「くっ、弾幕が濃すぎて近づけない!」
「SESアクセラレーターによるエネルギー供給! すごいすごい!」
「レーヴデトワールってなんなのかしら?」
「ノンちゃんそんな時はスマホの出番だよ」
「星の夢って意味なのよ」
「モニカちゃんフラ語出来るの!?」
「ふふん、乙女の嗜みなの」
「僕帰っていいかな!?」
本当に弾幕のせいかは分からないが、とにかく攻め手が削がれた精霊少女たちを見て、ヤクシーが欠伸する。
「なんだかもう一眠り出来そうだねぇ」
二眠りくらいは出来そうだが、しかしそういう訳にもいかないのだ。
戦闘機が回頭する。ごろんと背を向けて横になったヤクシーへと。
「あだだだ!?」
「面倒だからって魔法少女に用心棒を頼むなんてね」
背中に銃撃を浴びせかけられて叫ぶヤクシーに、ロワはにやっと笑った。
「ロワ、裏切ったね!?」
「残念だけど、ボクが報酬に欲しいのは、楽しく平和な学生生活だけさ」
「ろ、ロワさん!」
「ボクらの青東中は今回、赤西中と協力して文化祭を盛り上げる事になってる。放っておけないでしょ!」
そう、全ては油断させるための演技だったのだ。
ロワはサングラスを投げ捨てた。
「改めて……混沌に法と秩序を、昏き闇に瞬く光を! 星の精霊少女ロワ!」
そして、きらりとウィンクから星を飛ばした。
「宜しくね、お嬢さんたちっ」
「こ、このモニカに匹敵するウィンクなのね……男なのに……これは強敵」
一方その脇ではノンが突進していく。
「あなたには許せないことがあるのよ! それはぁ!」
ノンはびしっと指を突きつけた。
「こんなにだらけてて良いスタイル保ってることよ!」
「ダメだ趣旨がズレてる」
「食って寝てたら乳はデカくなるだろ?」
『巨乳! 滅すべし!』
「ぐわぁーっ!?」
滅茶苦茶野太い声と共に恨みの篭った腹パンが直撃した。ところで今ハモった気がしますね。
「……あら、あたしったらつい力入っちゃったわぁ」
ぶっ倒れたヤクシーを前に、ノンは頬に手を当ててもじもじした。もう遅い。
「油断するなパル! まだ消滅してないパルよ!」
今まで忘れられていたマスコットのパルムがようやく一言言えて満足そうにふんぞり返った。
「仕方ないねぇ……ちょっと本気出そうじゃないか」
そして敵はついに真の姿を解き放った!
「……ってデカすぎよぉ!」
「十メートルはありますね」
そう、巨大化である。
「踏み潰せば全部一緒だ。最初からそうしとくべきだったねぇ!」
「このままじゃ校舎が!」
ルーエルが武器を構えるが、サイズ差がありすぎる。
「学園祭は、怠惰なんかに負けない気持ちで満ち溢れてるんだもの!」
ファティマが鎚を振り下ろし、先生方の車を破壊して機械の腕に変えた。
「その名前は! 希望っていうの!」
鉄腕が踏みつけをどうにか受け止めたが、あまり長くは持たない。
「ちょっとパルムなんかないの!」
「あったら焦ってねえパルあだだぐるじい!」
詩はパルムを締め上げるが、ないものは出ない。
「巨大ロボとか!」
「あるわけねーパル! ぐええ!?」
「ロボですか! 了解です!」
「えっ」
「マレット・エニム・デウスエクスマキーナ!」
ファティマが戦鎚を校舎に叩きつけ、巨大なロボに変形させた。ファティマは生粋のクリエイターである。なければ作ればいいのだ。
「待って待ってモニカは展開に追いつけてねーなのよ! 魔法少女が巨大ロボって意味分かんない!」
「名づけてCutieAutoMatonプエラスペラロボ! 中々キュートでファンシーな姿だね」
「モニカさっき自重しろって言ったなのよ!? 可愛いけど!」
「そ、そうですか? えへへ」
ルーエルがやけになって叫んだ。
「大丈夫、初登場な武器は大活躍するって決まってるんだ! 多分!」
「弱点は潜入中に掴んでる! ボクの武器を使って。遠いけれど、皆の力を乗せれば届くはずだ!」
「仕方ないからやってあげるわ。目立つことは大好きだけど、与えられた役割を放棄していい言い訳にはならないでしょう? ……なのよっ!」
「さぁ、一気にヤクシーを粉砕だよ! そして私にお小遣いとストレス発散を!」
「オネェなめんじゃないわよ!」
「ケテル・コクマー・ダァト……フィニート!!」
新たな力を得たプエラスペラ! この期に及んでサボるつもりのヤクシーと最後の戦いに挑む!
文化祭はどうなる! オチはこれでいいのか! 少女たちの戦いは続く!
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マジカル相談卓 ファティマ・シュミット(ka0298) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/04/10 01:21:51 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/07 20:01:06 |