ゲスト
(ka0000)
樹妖
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 4日
- 締切
- 2015/04/11 19:00
- 完成日
- 2015/04/12 07:01
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●遺跡を護るのは
人知れずひっそりとその存在を朽ちるのに任せていた遺跡が、旅人によって発見されたのは最近のことだった。
調査の手が入る事になり、雪解けが早かったことも相まって春になると同時に森へ調査団が派遣された。
遺跡特有の静謐な空気。木々の育ち方さえ何だか違って見える、と呟いたのは誰だっただろう。
「木は木だろう、馬鹿なことを言う」
遺跡を覆うように生えていた樹木を切り倒すように現場の指揮官が命じると、異変は起きた。
木の根が鞭のようにしないながら人々をなぎ倒し始める。
静謐だったのは遺跡の雰囲気でそう感じたからではない。この世ならざるものの気配を感じて動物たちが近づかなかった結果だと気づいた時には、全てが遅かった。
「とある遺跡の調査団が全員重傷でなんとか帰還したんだけど……どうも樹木に似た形の雑魔が巣食ってるらしいんだよね。
リアルブルーでは樹妖とかそういう風にいうんだっけ?
機動力はないに等しいんだけど、大樹に扮してる分根が長いし枝分かれも多いんだ。
それを鞭のように操ったり、葉っぱを手裏剣のように飛ばしたりしてくる。
遺跡と何か関係があるのかは今のところ不明。詳しい調査は雑魔退治の後改めて調査団を派遣するようだから、できるだけあまり荒らさないようにこの雑魔の退治をお願いするよ」
火は有効かもしれないけれど、広範囲に火を広めて普通の木々を巻き込んで山火事にしたり、遺跡を火災現場にしたりはしないようにね。
君たちなら大丈夫だと思うけど、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)はまぁ一応念のため、と注意したのだった。
人知れずひっそりとその存在を朽ちるのに任せていた遺跡が、旅人によって発見されたのは最近のことだった。
調査の手が入る事になり、雪解けが早かったことも相まって春になると同時に森へ調査団が派遣された。
遺跡特有の静謐な空気。木々の育ち方さえ何だか違って見える、と呟いたのは誰だっただろう。
「木は木だろう、馬鹿なことを言う」
遺跡を覆うように生えていた樹木を切り倒すように現場の指揮官が命じると、異変は起きた。
木の根が鞭のようにしないながら人々をなぎ倒し始める。
静謐だったのは遺跡の雰囲気でそう感じたからではない。この世ならざるものの気配を感じて動物たちが近づかなかった結果だと気づいた時には、全てが遅かった。
「とある遺跡の調査団が全員重傷でなんとか帰還したんだけど……どうも樹木に似た形の雑魔が巣食ってるらしいんだよね。
リアルブルーでは樹妖とかそういう風にいうんだっけ?
機動力はないに等しいんだけど、大樹に扮してる分根が長いし枝分かれも多いんだ。
それを鞭のように操ったり、葉っぱを手裏剣のように飛ばしたりしてくる。
遺跡と何か関係があるのかは今のところ不明。詳しい調査は雑魔退治の後改めて調査団を派遣するようだから、できるだけあまり荒らさないようにこの雑魔の退治をお願いするよ」
火は有効かもしれないけれど、広範囲に火を広めて普通の木々を巻き込んで山火事にしたり、遺跡を火災現場にしたりはしないようにね。
君たちなら大丈夫だと思うけど、とルカ・シュバルツエンド(kz0073)はまぁ一応念のため、と注意したのだった。
リプレイ本文
●遺跡の番人
鬱蒼とした森に囲まれた、人知れず時を数え続けていた遺跡。
そこに調査団が入り、結果的に見つかった樹木型の雑魔に横やりを刺される形で調査は一時中止となった。
けが人もそれなりに出た事件であり、雑魔を放置するわけにもいかず、そして見つかった遺跡の調査を実行するためにハンターが呼ばれて今日にいたる。
雑魔は自身の攻撃圏内に入らない限りは普通の樹木にカモフラージュする性質でもあるのか、ハンターたちが踏み込んでも遺跡はひっそりと静かな空気を崩しはしなかった。
「遺跡の調査はまだ済んでいないのだったな。なるべくなら現状を維持したいものだ」
クローディオ・シャール(ka0030)が遺跡が広がる地帯の一歩手前で立ち止まり辺りを見渡す。
「万全な状態で依頼に望めなかったのは残念だが、お前らがいるなら楽勝だろ!
……にしても、最近は化け木に縁のあるこった。この間の吸血木よりいくらかマシだがよ」
重体をおして戦線に加わったものの、前衛として戦うことは難しいと判断したエヴァンス・カルヴィ(ka0639)はメインで戦闘に参加できないことを非常に悔しがったが、以前木の形をした雑魔の相手をしていることもあり、今回はサポート役として足を引っ張らずに任務を成功させることを第一目標としていた。
「樹木型の雑魔とは変わった敵ですね。ともかく速やかに退治することといたしましょう」
日下 菜摘(ka0881)は眼鏡の位置を直しながらいまだ本性を見せていない今回の敵が、この木々の中のどれなのかを見定めるようにすっと目を細めた。
「まったく、雑魔って本当にどこにでもわいてくるのね。さあ、浄化するわよー」
セリス・アルマーズ(ka1079)は鎧に身を包んだ勇ましい姿で軽く骨を鳴らして襲撃態勢を整える。
ヒースクリフ(ka1686)はその傍らで遺跡を眺めながら斧の調子を確かめるように軽く素振りしていた。
「木の雑魔なら、剣より斧の方が効きそうだからな。切り倒すのにも向いてるし」
「自分はとにかく前に出ます! 後衛の方はサポートをお願いします!」
バナディアン・I(ka4344)は意気込みが口調からも感じ取れるほど熱く叫ぶ。
「未踏の遺跡……素晴らしい、考古学者として心躍る。
ぜひ調査をしたいっ。……でも残念ながらどうやら今回はお預けのようだね。
ハンターとして雑魔討伐の依頼を受けてきた以上、その務めを果たすのが筋ってものだからね」
ミューレ(ka4567)は遺跡を眺め調査が依頼内容に入っていないことを残念に思いながらも、仲間と共に遺跡内へ一歩を踏み出した。
遺跡の中でひときわ目立つ建築物へと自然と一行が注意しながら歩を進める。
鞭がしなるような音が空気を震わせ、樹の根がハンターたち目がけて幾本も襲い掛かった。
ミューレが事前の打ち合わせ通りヒースクリフに対してストーンアーマーを付与することで防御力を高めた。
セリスはプロテクションを自分に付与、光が彼女の身体を覆うと同時に真正面から雑魔に向かって攻撃を仕掛ける。
アックスブレードを構えたヒースクリフはそんなセリスに対し、右側から回り込むように移動すると鞭のようにしなう根の攻撃に合わせてカウンターを仕掛け、切断を試みた。
「お二人とも、癒しはわたしが行いますから、敵への攻撃を優先してください」
まだ回復を必要としない動きを見せる前衛二人に菜摘が声をかけながら、回復が必要になるまでは、と輝く光の弾を樹妖に向かって撃ち出し、衝撃によるダメージを与えていく。
「時々指示みたく言葉を飛ばすかもしれんが、多少耳に残す程度に考えてくれて構わんぜ。前で体を張れない分後ろから俯瞰で物を眺めてアドバイスできれば、とは思うがな」
エヴァンスは戦闘は仲間に任せ、自身は眼としてフィールド全体を捉え、攻撃の前にある癖がないか、死角からの攻撃を仕掛けられそうになっていないかなどを見定めるのに集中する。
「なるほど、その根はさながら鞭のようだな。生憎だが、鞭の扱いなら負けはしない」
エヴァンスからのアドバイスと自身の気配りで死角からの不意打ちを今のところ完全に防ぎながら横薙ぎに払われる木の根を見やりクローディオは冷静に予備動作がないかをチェックする。
枝分かれした根をストライクブロウで同じ個所を集中して攻撃することにより根絶し、後衛へと被害が及ばないよう断ち切っていく。
手裏剣のように飛び交う葉に対しては鞭で叩き落とすことを試み、どちらの場合も遺跡が傷つくことのないようにという配慮も忘れないそつのなさだ。
「そんな葉っぱ程度、痛っ、クリーンヒットなどそうそうしません!」
レーザーナイフで飛来する鋭利な刃物のような葉を切り落としながら前に進んでいくバナディアン。
幹にたどり着き、打撃を与えるが人間と違って急所がはっきりしない樹木型相手ではどうも勝手が違う。
「ここが急所、と目に見えて分からないのは意外と厄介ですね……」
一度下がると機導砲による攻撃と近接攻撃、どちらが有効かを試してみるが顔がないため苦痛の色の濃さで見定めることはできず、ただ幹が抉れた深さで機導砲の方が有効か、と判断したバナディアンは以降はある程度距離を取ったうえで機導砲で同じ個所を集中的に攻撃することにしたようだ。
ミューレは枝の細くなっている部分を狙ってマジックアローで引きちぎるように攻撃を仕掛けていく。
前衛二人がバナディアンの攻撃で抉れた部分を集中攻撃する間、上方向から葉っぱでの攻撃を仕掛けられないようにするという面で大きな効果があったようだ。
菜摘が回復の合間に根を断つためホーリーライトを放っていたため飛び交う鞭のような攻撃も少しずつ衰え始め、枝が落とされると雑魔としての力の供給が途絶えるのか葉も飛んでくる枚数が目に見えて減っている。
ヒースクリフが雑魔の身体を節を足掛かりに駆け上がり、体重をかけられる太さで一番高い位置にある枝から跳躍、上空から全体重を乗せてアックスブレードを振り下ろすと幹が雷に打たれた後のように裂けた。
セリスは最前線で仲間の支援をしながら、真正面から敵に対峙することで攻撃を集中的に引き受け、仲間への被害を減らしていた。
それでも後衛へ向かって樹妖が攻撃を仕掛ければできる限りそれを阻む生きた盾として行動する。
「動けない敵一体に多人数で向かっていって負けたら流石にハンターとしてどうかって話だしね。攻撃はできるだけ引き受けるから、今のうちに後衛からも集中攻撃お願い!」
菜摘が傷を負ったセリスの傷を癒し、他のメンバーは求めに応じてそれぞれの立ち位置から狙える部分にある、既に敵が負っている傷にかぶせる形で攻撃を重ねていく。
最後の悪あがきのように樹妖が多方面にわたって吹雪のように葉を散らしたがクローディオの鞭やバナディアンのレーザーナイフで叩き落とされ、規模の割には致命的な負傷者は出なかった。
エヴァンスが俯瞰で見た攻撃の予測方向を素早く伝達したことも大きな助けとなり、かわしきれなかった傷は深いものから菜摘が癒していく。
「さて、と。そろそろ終わりにしようか。セリス、合わせるぞ」
ヒースクリフの呼びかけに素早く反応したセリスが正面から、呼びかけたヒースクリフは側面から、それぞれ渾身の一撃を樹妖に向かって放つと宣言通りそれがとどめの一撃となったようで、古木の姿を取った雑魔が徐々に灰のように風にさらわれて姿を散らしていく。
「終わり、ましたか……」
臨戦態勢を解いたバナディアンがふぅ、と息をついてレーザーナイフを収めた。
どうせなら怪我の治療を済ませられる範囲で済ませてから解散しようということになり、ヒールを使えるメンバーを中心にハンターたちは静寂を取り戻した遺跡で手当てを順次済ませていった。
敵が動かないタイプだったことが幸いし、後衛からの攻撃も軌道を逸らされることはほとんどなかったため憂慮していた遺跡へのダメージも素人目にはほとんど気にならないように見える。
「この樹妖と遺跡にどんな関連性があるんだろうか。あるいはまったく関係ないのかもしれないけど、とてもとても興味をそそられる」
「……確かに。どういう経緯でここに樹木型の雑魔が生息するようになったのか。改めて考えると興味が尽きませんね」
ミューレの呟きに菜摘が反応し、一同は改めて遺跡を見渡した。
「樹木もその当時の歴史を知る貴重な資料だよ。それを蔑ろにした結果、樹妖に気づかず手痛い目にあった先の調査隊の面々は反省すべきだ。
もっとも罰はもう受けているかな。次に調査に入るときはもっと用心して欲しいね。
遺跡には危険がいっぱいなんだから」
「まぁ、相手の射程距離に入るまではパッと見普通の木だったしな。木を蔑ろにした指揮官は馬鹿だったが……動物が近づいてこない理由まで一般人に気を使えってのもそれなりに難しい話だろうさ。遺跡ってのは何となく静かな印象が先行してあるモンだしな。
ともあれ、お疲れさん。前衛として戦えなかったのは心残りだが……全員無事に済んで何よりだ」
ミューレの苦言をエヴァンスが宥め、一同をねぎらう。
依頼の範疇を超えない程度に、個人的に遺跡を調べてみたいと希望したミューレを残して一同はハンターオフィスに報告に戻っていった。
「おや……こんなところに小さな春が」
建造物の割れ目から小さな花が芽吹き、可憐な花を咲かせていることに気づき、ミューレはそっと微笑んだのだった。
何らかの理由で放棄され、朽ちていくだけだった遺跡の中でも、季節は変わらず巡っていくのだと示すように咲いている小さな命の証。
小さな花は風を受けて花びらを揺らす。生命を、謳うように。
鬱蒼とした森に囲まれた、人知れず時を数え続けていた遺跡。
そこに調査団が入り、結果的に見つかった樹木型の雑魔に横やりを刺される形で調査は一時中止となった。
けが人もそれなりに出た事件であり、雑魔を放置するわけにもいかず、そして見つかった遺跡の調査を実行するためにハンターが呼ばれて今日にいたる。
雑魔は自身の攻撃圏内に入らない限りは普通の樹木にカモフラージュする性質でもあるのか、ハンターたちが踏み込んでも遺跡はひっそりと静かな空気を崩しはしなかった。
「遺跡の調査はまだ済んでいないのだったな。なるべくなら現状を維持したいものだ」
クローディオ・シャール(ka0030)が遺跡が広がる地帯の一歩手前で立ち止まり辺りを見渡す。
「万全な状態で依頼に望めなかったのは残念だが、お前らがいるなら楽勝だろ!
……にしても、最近は化け木に縁のあるこった。この間の吸血木よりいくらかマシだがよ」
重体をおして戦線に加わったものの、前衛として戦うことは難しいと判断したエヴァンス・カルヴィ(ka0639)はメインで戦闘に参加できないことを非常に悔しがったが、以前木の形をした雑魔の相手をしていることもあり、今回はサポート役として足を引っ張らずに任務を成功させることを第一目標としていた。
「樹木型の雑魔とは変わった敵ですね。ともかく速やかに退治することといたしましょう」
日下 菜摘(ka0881)は眼鏡の位置を直しながらいまだ本性を見せていない今回の敵が、この木々の中のどれなのかを見定めるようにすっと目を細めた。
「まったく、雑魔って本当にどこにでもわいてくるのね。さあ、浄化するわよー」
セリス・アルマーズ(ka1079)は鎧に身を包んだ勇ましい姿で軽く骨を鳴らして襲撃態勢を整える。
ヒースクリフ(ka1686)はその傍らで遺跡を眺めながら斧の調子を確かめるように軽く素振りしていた。
「木の雑魔なら、剣より斧の方が効きそうだからな。切り倒すのにも向いてるし」
「自分はとにかく前に出ます! 後衛の方はサポートをお願いします!」
バナディアン・I(ka4344)は意気込みが口調からも感じ取れるほど熱く叫ぶ。
「未踏の遺跡……素晴らしい、考古学者として心躍る。
ぜひ調査をしたいっ。……でも残念ながらどうやら今回はお預けのようだね。
ハンターとして雑魔討伐の依頼を受けてきた以上、その務めを果たすのが筋ってものだからね」
ミューレ(ka4567)は遺跡を眺め調査が依頼内容に入っていないことを残念に思いながらも、仲間と共に遺跡内へ一歩を踏み出した。
遺跡の中でひときわ目立つ建築物へと自然と一行が注意しながら歩を進める。
鞭がしなるような音が空気を震わせ、樹の根がハンターたち目がけて幾本も襲い掛かった。
ミューレが事前の打ち合わせ通りヒースクリフに対してストーンアーマーを付与することで防御力を高めた。
セリスはプロテクションを自分に付与、光が彼女の身体を覆うと同時に真正面から雑魔に向かって攻撃を仕掛ける。
アックスブレードを構えたヒースクリフはそんなセリスに対し、右側から回り込むように移動すると鞭のようにしなう根の攻撃に合わせてカウンターを仕掛け、切断を試みた。
「お二人とも、癒しはわたしが行いますから、敵への攻撃を優先してください」
まだ回復を必要としない動きを見せる前衛二人に菜摘が声をかけながら、回復が必要になるまでは、と輝く光の弾を樹妖に向かって撃ち出し、衝撃によるダメージを与えていく。
「時々指示みたく言葉を飛ばすかもしれんが、多少耳に残す程度に考えてくれて構わんぜ。前で体を張れない分後ろから俯瞰で物を眺めてアドバイスできれば、とは思うがな」
エヴァンスは戦闘は仲間に任せ、自身は眼としてフィールド全体を捉え、攻撃の前にある癖がないか、死角からの攻撃を仕掛けられそうになっていないかなどを見定めるのに集中する。
「なるほど、その根はさながら鞭のようだな。生憎だが、鞭の扱いなら負けはしない」
エヴァンスからのアドバイスと自身の気配りで死角からの不意打ちを今のところ完全に防ぎながら横薙ぎに払われる木の根を見やりクローディオは冷静に予備動作がないかをチェックする。
枝分かれした根をストライクブロウで同じ個所を集中して攻撃することにより根絶し、後衛へと被害が及ばないよう断ち切っていく。
手裏剣のように飛び交う葉に対しては鞭で叩き落とすことを試み、どちらの場合も遺跡が傷つくことのないようにという配慮も忘れないそつのなさだ。
「そんな葉っぱ程度、痛っ、クリーンヒットなどそうそうしません!」
レーザーナイフで飛来する鋭利な刃物のような葉を切り落としながら前に進んでいくバナディアン。
幹にたどり着き、打撃を与えるが人間と違って急所がはっきりしない樹木型相手ではどうも勝手が違う。
「ここが急所、と目に見えて分からないのは意外と厄介ですね……」
一度下がると機導砲による攻撃と近接攻撃、どちらが有効かを試してみるが顔がないため苦痛の色の濃さで見定めることはできず、ただ幹が抉れた深さで機導砲の方が有効か、と判断したバナディアンは以降はある程度距離を取ったうえで機導砲で同じ個所を集中的に攻撃することにしたようだ。
ミューレは枝の細くなっている部分を狙ってマジックアローで引きちぎるように攻撃を仕掛けていく。
前衛二人がバナディアンの攻撃で抉れた部分を集中攻撃する間、上方向から葉っぱでの攻撃を仕掛けられないようにするという面で大きな効果があったようだ。
菜摘が回復の合間に根を断つためホーリーライトを放っていたため飛び交う鞭のような攻撃も少しずつ衰え始め、枝が落とされると雑魔としての力の供給が途絶えるのか葉も飛んでくる枚数が目に見えて減っている。
ヒースクリフが雑魔の身体を節を足掛かりに駆け上がり、体重をかけられる太さで一番高い位置にある枝から跳躍、上空から全体重を乗せてアックスブレードを振り下ろすと幹が雷に打たれた後のように裂けた。
セリスは最前線で仲間の支援をしながら、真正面から敵に対峙することで攻撃を集中的に引き受け、仲間への被害を減らしていた。
それでも後衛へ向かって樹妖が攻撃を仕掛ければできる限りそれを阻む生きた盾として行動する。
「動けない敵一体に多人数で向かっていって負けたら流石にハンターとしてどうかって話だしね。攻撃はできるだけ引き受けるから、今のうちに後衛からも集中攻撃お願い!」
菜摘が傷を負ったセリスの傷を癒し、他のメンバーは求めに応じてそれぞれの立ち位置から狙える部分にある、既に敵が負っている傷にかぶせる形で攻撃を重ねていく。
最後の悪あがきのように樹妖が多方面にわたって吹雪のように葉を散らしたがクローディオの鞭やバナディアンのレーザーナイフで叩き落とされ、規模の割には致命的な負傷者は出なかった。
エヴァンスが俯瞰で見た攻撃の予測方向を素早く伝達したことも大きな助けとなり、かわしきれなかった傷は深いものから菜摘が癒していく。
「さて、と。そろそろ終わりにしようか。セリス、合わせるぞ」
ヒースクリフの呼びかけに素早く反応したセリスが正面から、呼びかけたヒースクリフは側面から、それぞれ渾身の一撃を樹妖に向かって放つと宣言通りそれがとどめの一撃となったようで、古木の姿を取った雑魔が徐々に灰のように風にさらわれて姿を散らしていく。
「終わり、ましたか……」
臨戦態勢を解いたバナディアンがふぅ、と息をついてレーザーナイフを収めた。
どうせなら怪我の治療を済ませられる範囲で済ませてから解散しようということになり、ヒールを使えるメンバーを中心にハンターたちは静寂を取り戻した遺跡で手当てを順次済ませていった。
敵が動かないタイプだったことが幸いし、後衛からの攻撃も軌道を逸らされることはほとんどなかったため憂慮していた遺跡へのダメージも素人目にはほとんど気にならないように見える。
「この樹妖と遺跡にどんな関連性があるんだろうか。あるいはまったく関係ないのかもしれないけど、とてもとても興味をそそられる」
「……確かに。どういう経緯でここに樹木型の雑魔が生息するようになったのか。改めて考えると興味が尽きませんね」
ミューレの呟きに菜摘が反応し、一同は改めて遺跡を見渡した。
「樹木もその当時の歴史を知る貴重な資料だよ。それを蔑ろにした結果、樹妖に気づかず手痛い目にあった先の調査隊の面々は反省すべきだ。
もっとも罰はもう受けているかな。次に調査に入るときはもっと用心して欲しいね。
遺跡には危険がいっぱいなんだから」
「まぁ、相手の射程距離に入るまではパッと見普通の木だったしな。木を蔑ろにした指揮官は馬鹿だったが……動物が近づいてこない理由まで一般人に気を使えってのもそれなりに難しい話だろうさ。遺跡ってのは何となく静かな印象が先行してあるモンだしな。
ともあれ、お疲れさん。前衛として戦えなかったのは心残りだが……全員無事に済んで何よりだ」
ミューレの苦言をエヴァンスが宥め、一同をねぎらう。
依頼の範疇を超えない程度に、個人的に遺跡を調べてみたいと希望したミューレを残して一同はハンターオフィスに報告に戻っていった。
「おや……こんなところに小さな春が」
建造物の割れ目から小さな花が芽吹き、可憐な花を咲かせていることに気づき、ミューレはそっと微笑んだのだった。
何らかの理由で放棄され、朽ちていくだけだった遺跡の中でも、季節は変わらず巡っていくのだと示すように咲いている小さな命の証。
小さな花は風を受けて花びらを揺らす。生命を、謳うように。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
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遺跡に巣食う樹妖 ミューレ(ka4567) エルフ|50才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/04/11 08:07:20 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/10 08:18:46 |