• 不動

【不動】謎の救出対象

マスター:龍河流

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
4日
締切
2015/04/12 19:00
完成日
2015/04/21 20:00

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング

 辺境と呼ばれる土地。
 現在は怠惰の軍勢に支配されるマギア砦とエンシンケ洞穴のちょうど中間地点で、幾つかの悲鳴が上がった。

「アヤカさんは下がってください!」
「怪我人が、無理しないでっ」

 彼らを囲むのは、怠惰軍の一部だろう。
 雑魔と称されて良さそうな歪虚だが、数だけは相当な一群が、五人ほどの一団と交戦していた。
 人数が少ないので、ハンター達がここまで偵察に出張ってきたようにも見えるが、それにしては歪虚との接触にひどく慌てた様子だ。
 更に、前線に出て来るには装備が妙に貧弱そうで、ハンターらしくはない。かといって、辺境部族のいずれかだと見るにも、季節にそぐわぬ服装が違和感を覚えさせた。
 なにしろ、遠目に見ても、彼らは晴れ着としか見えない代物を纏っていたのだ。武装も威力は相応にあるようだが、この辺りで見る形ではない。どう見ても、儀礼用の何かである。
 そして。

「あ、あいつら、宙から湧いて……転移門?」
「五月蠅い」
「いや、でも、そんな予定は」
「異世界からおっきな船が来るご時世に、突然の事態でもビビっちゃ駄目よぅ」

 マギア砦奪還のため、怠惰軍勢の偵察に放たれていた偵察部隊が、この光景を見付けていた。
 自分達以外にこの地域に入っている偵察はいないはずで、見たところ辺境の部族でもない。怪しいことこの上ない連中が、歪虚に襲われている光景に、さて助けに入るべきかと迷ったのは、せいぜい一分足らずのこと。
 歪虚を斬る動きに、何の迷いもないのを見て取ったからだ。

「よし、助けるぞ」

 偵察隊とはいえ、たった三人。罠にかけるほどの大物はおらず、そもそもここに来ると知られていたはずもない。
 襲われている一団が何者かはさておいて、見殺しにしては、自分達のみならず、部族の評価にも関わろう。加えて、聖地奪還をとまとまる辺境の動静を乱すことにもなりかねない。
 何者か知らぬが、敵の敵なら味方も同じ。
 それにやはり、先程まで人気のない場所に突然現れたようにしか見えない五人には、事情を問い質す必要があると思われたのだ。
 三人の疾影士は、それぞれの得物を手に、雑魔の群れ目掛けて飛び込んでいった。


 この翌日。
 ハンター本部には、『大至急』の朱書きがされた依頼書が張り出された。
 すでに、これに目に留めたハンター達に、係員が細かい事情を説明している。

「救助対象は、大体この辺の丘にある裂け目に避難してる。人数は男四、女三の合計七人。うち、二人は偵察の疾影士で、かすり傷。残りの五人が問題で……」

 地図で示されたのは、未だ怠惰の軍勢の影響下にあると思われる丘陵地帯。
 ここに避難した、怪我人を含む七人の救出が依頼となる。七人ともに覚醒者のはずだが、彼らがどうしてホープなり、周辺に展開する味方勢力に合流出来ないかと言うと。

「頭を打ったと思しき負傷者が二人、足の骨折が疑われるのが一人、残りも裂傷や打撲の応急処置はしたものの、けして軽くはない怪我、と。そして、全員昏倒してる」
「昏倒? 頭を打った二人以外も?」
「最初から意識がなかったのが一人で、他の四人は雑魔の群れ相手に戦っていたのが、退治し終えてすぐに、ばたばたと倒れたらしい。何が原因か衰弱しているので、早急に回収してくれと、山岳猟団のシバさんから連絡だったよ」

 この五人と最初に合流した偵察隊の三人のうち、一人がホープまでこの危急の事態を知らせに戻り、残った二人が五人を守って隠れ潜んでいる。
 戻ってきた一人も、途中で更なる戦闘に巻き込まれ、怪我の治療中で安静を言い渡されている状態だ。それでも、現地までの詳細な地図は描いている。途中に目印もあり、七人の隠れ場所に辿り着くのは、それほど難しいことではないだろう。
 ただし、歪虚は未だその地域に多数出没しており、それに見付からなければという条件が付く。
 帰りも、時間を掛けて見付からないように戻るか、いっそ強行突破してくるのか。五人の意識が戻る確約がない以上、担いで戻る可能性が高いものの、方策はハンター達に一任されている。

「この五人って、ハンターなの?」
「少なくとも、偵察の人が部族名を名乗っても知らない様子だったって言うから、辺境の出身ではないと思う」
「そんな、それじゃ謎の一団じゃない」
「細かいことは、本人達が気が付いてたら、直接訊いて?」

 誰かが思わず口にした『謎の一団』がしっくりきたのか、救助対象の五人はしばらくそう呼ばれることになった。
 如何に謎めいていようとも、負傷して意識がない者達と、それを守って味方を待っている偵察隊を見捨てられるかというハンターが、どうするべきかと相談を始めたのはこの直後の事だった。

リプレイ本文

●合流地点
 だいたいこの程度と考えていたより、往路に要した時間は二時間ばかり多かったろう。出発までに時間が掛かったから、これはとうに予想出来ていたことだ。
 幸いにして、偵察の二人と謎の五人組は敵に見付かることなく、地図にある通りの場所に隠れ潜んでいた。
「ウルヴァン、マーロン、警戒は頼むぞ」
 ゴースロン種から星輝 Amhran(ka0724)と同乗していた白神 霧華(ka0915)が、もう一頭の馬から雪村 練(ka3808)がそっと滑り降りた。練は背負枠の上に布団を被る出で立ちが鞍と当たって音を立てたが、遠くまでは届くものではない。
 少し離れた場所で、星輝に名前を呼ばれたウルヴァン・ダイーヴァ(ka0992)とマーロン・劉(ka3059)も、それぞれの乗ってきた馬から降りている。どの馬も大分興奮気味で、足踏みしたりと落ち着かず、出発前からの怪我がある霧華は積んでいる荷物を降ろすために近付かねばならないのを躊躇うような状態だ。星輝が宥めて回るが、一人では手が足りないところに、辺境部族の二人が手を貸した。
「あぁ、そうか。馬には慣れているわけだ」
 練が作業の手が増えたと喜んで、荷物を降ろしにかかる。その間に、ウルヴァンとマーロンは周囲の状況の確認を始める。人の気配で、また怠惰の軍勢がやってこないとも限らないからだ。
 霧華は応急手当の道具を手に、倒れている五人の様子を見に行き、星輝はホープから持参した荷車の組み立てを始めようとしている。
 救出に来たのは八人、馬は七頭で、怪我人運搬用に小型の荷車と、万が一それを捨てて行かねばならない時の為の背負枠。聞かされた偵察の二人は、荷車の車輪の音は大丈夫かと心配したが、それはもう全員が気になっていることだ。
 途中で別れた三人は、まだ追い付いて来ない。


●往路
 意識不明の怪我人が五人。こちらは八人で、行く先の偵察隊二人を加えても全部で十人。その人数で、敵が徘徊する中を五人とも連れて来るには、荷車があった方が良いだろう。
 ホープ側では馬や荷車ではかえって見付かりやすいと警戒したが、八人のうち成人を背負うには向かない者が複数いるのを見て取って、要求したもののだいたいを揃えてくれた。
 馬で運べる組み立て式の荷車。これは辺境部族の幾つかが使う簡易な小型のもの。ゴム製タイヤ付きで解体可能なものは、間に合うようには用意出来なかった。
 いざという時の背負枠。数は五つ。
 応急手当てに要する医薬品に気付けにも使える飲食品。
 目的地までの地図は人数分で、方位磁石は用意出来たのが三つ。
 怪我人の固定具を幾つか。これの半分はギルドの手配だ。
 フラン・レンナルツ(ka0170)の旗と、テトラ・ティーニストラ(ka3565)の狼煙用燃料は風向きに注意しろの一言付き。風下に味方がいて、そこに煙が回ったら敵との遭遇率が上がるかもしれないからだろう。
 これらを用意している間に、水城もなか(ka3532)は偵察隊の二人の情報を仕入れている。合流までに五人も意識がない怪我人を守っていたのだから、いい加減集中力も限界だろう。そこで我を張って、あれこれ言い出す相手だと困るが、そうした点では理性的な二人らしい。
 後は、トラックを借りられれば良かったが、ホープでも物資輸送の足は貴重なもの。これは空きがなかった。仕方がないので、ホープの警戒線で確認出来る位置まで戻れば、応援を寄越してくれるように頼んでおく。
「あまり期待出来そうにないな」
「手が余ってるなら、そもそも俺達は呼ばないだろ?」
 基本は自力でこなすしかない。それが依頼というものだと。あっさり納得、達観しているウルヴァンとマーロンは、謎の集団輸送の直接警護を担当。
 狼煙や旗を抱えたテトラ、フランにもなかを加えた三人が、本隊に先行しての警戒と敵遭遇時の囮役。
 集団を回収し、輸送するのは星輝、霧華、練の三人だ。荷車の御者は星輝で、練と霧華は荷車に乗るか、並走して怪我人の体勢維持をする予定。錬はいざとなったら、その中で一番怪我と体重が軽い者を背負って、他は見捨てても戻るつもりだが、流石に口にしないでいる。
 でも、依頼側の目的が多分集団の持つ情報にあり、それを多数得られるよう立ち回るとしたら、全員救出に拘っての全滅よりもっとも価値ある一人の救出優先は、元が軍人のフランやもなかも選択肢にあると、錬は考える。
 でも全体としては、テトラの、
「リアルブルーとも、辺境の人とも違う人達。やはっ、どこから来たのか、楽しみだねぇ」
 これが皆の本音とも重なる。依頼側も自分達も、全員から話が聴ければもっとありがたいに決まっている。
 他にも武器が気になる、謎の一団の正体は何か等々。興味を引く点と謎が多い。
「さて、どんな奴か顔を拝みに行くとしようか」
 ウルヴァンの一言が、出発の合図になった。

 出発前に、あちこちに散った偵察隊の報告を聴かせてもらったところ、目的地周辺に見られるのはコボルトやゴブリン系で、巨人系統は含まれていない。警戒に身を入れている様子はなく、命令されたので仕方なく歩き回っている風情だとか。
 だから見付からなければやり過ごすのは難しくないが、人の姿を見ると狂乱状態で襲ってくる。そうなると、その騒ぎが聞こえる範囲から次々増援が来るので、腕に覚えがあっても少人数で戦闘に持ち込むのは良策ではない。
 それは人数と目的からも承知していた一同は、テトラの狼煙作戦が完了してすぐ、地図上の最短距離を選んで移動を始めた。まずはもなか、フラン、テトラが先行し、その合図を受けて本隊の三人が、後方を護衛の二人が警戒する形だ。時折マーロンが遅れるが、僅かのこと。
 前後に距離が開くので、連絡は魔導短伝話を使う。これで届かないほど距離が離れたら、もうそこからは各自判断しかない。
「こいつら怠惰のくせに働き過ぎっ!」
「あら、随分と余裕ですね」
「確かに、寝てればいいよねっ」
 情報は貰っていたが、怠惰の軍勢がここまで多数出ているとは予想外だと、テトラが我慢出来ずに叫んだのは、他の五人と別れて小一時間経った頃だ。ゴブリンやコボルトなら、それほど手間取ることもなかろうし、復路に入る前に合流出来る筈と思っていたが……
 怠惰のくせに、敵は一度騒ぎが巻き起こってからは次々と集まってくる。様子見や連携を考えないからまだいいが、見通しが悪い地形であちらこちらから湧いて来られては、もう本隊から引き剥がしているのか、単純に逃げ回っているものか。で、テトラがつい叫び、もなかは冷静な応えを、フランは納得の頷きを返していた。
 しかし、三人とも今更相談などしないでも、自分達の役目はきちんと把握している。救助対象から少しでも敵勢力を引き剥がし、往復路の安全を確保する。直接的な護衛は出来なくなっているが、それには二人付いているし、自分達は全力でこの敵の群れを引きずり回した後に振り捨てて行けばいいのだ。
 目的地周辺の地図を頭に叩き込んでおいたフランは、出来るだけ足場が良さそうで、かつ目的地方面が見えにくい経路を選んで、先頭で馬を走らせる。真ん中はもなかで、両脇に動きがないか視線を忙しく動かしていた。この二人の馬は、肝の座った騎手のおかげでなんとか手綱の通りに走り続けている。
 馬の速度では少し劣るテトラは殿で、後方から追ってくる敵を適当に刺激しつつ、本隊に気付かないように引き付けていた。しかし、そろそろ距離も稼いだのでどこかで撒いてしまおう。
 そうテトラが言おうとして、他の二人も頃合いと思った時。
「構えっ!!」
 前方にも蹄の音か、後方の騒ぎを聞きつけて来たと思しきゴブリンの一団がいた。これまでで一番多い個体数だ。
 だが、出会い頭で向こうが立ち尽していると見た瞬間、フランの号令がもなかとテトラを動かした。偶然ながら、三人ともに今回の得物は射撃武器だ。
「撃て!」
 ここまでは必要以上の敵と接触しないように射撃は避けていたが、前後を挟まれるよりはまし。
 直後、彼女達は馬の腹を蹴って、その場から駆け出させていた。
 ここで引き離さないと、追い付かれたら、流石に無傷ではいられない。


●復路
 謎の集団の五人は、声掛け程度では反応も示さなかった。頭を打っている二人は別にしても、他の三人も同時に後頭部の痛みを訴えてから倒れていったらしい。
「唇も乾いてませんし、貧血もなさそうです。一人も気付かないのは不思議ですね」
 骨折した者の足に湿布を当てながら、霧華が脱水や栄養状態を簡単に調べ、何で意識がないのかと首を傾げていた。頭を打った二人も血色は悪くないし、呼吸もしっかりしている。一人ずつ唇を練提供の蜂蜜を溶かした水で湿してやりながら、声掛けに何の反応もしないのは共通した原因があるのではないかと疑う表情だ。
「転移のような現われ方をしたと言ったな?」
 荷車に、頭に固定具を付けた二人を横たえ、更にきっちりと台に留めたウルヴァンが偵察隊の男女に尋ねると、その通りだと答えがある。五人が持っていた武器は、ウルヴァン達リアルブルーの人間が見れば東洋風と言うか、まさに日本刀と呼びたい代物だ。
 星輝は彼らのうち一人の手を調べて、何事か考え込んでいる。とはいえ、のんびりしていられる状態ではないから、速やかに意識がない五人のうち四人を荷車に乗せた。大きさの都合で、頭を打った二人は床面に寝かせ、もう二人は背負枠に括りつけて座らせる体勢だ。それをなぜかしつこく布団を被る練と霧華が悪路でも揺れないように押さえつける。
 残る一人は偵察隊の男性が、背負枠にかっちり縛りつけた女性を担いで、練の馬に乗り込んでいた。意識がないだけの二人のうち、こちらの方が軽い。二人乗りでも、遊牧民でもある彼なら問題なく行けるだろう。
「どちらがアヤカ氏だって?」
 女性は二人いるので、出発してから練が問うた。荷車に乗せられた方だと、こちらはウルヴァンの馬に相乗りした偵察隊の女性が指した。錬も相当小声だが、こちらは身振りだけだ。
 そう言えば手当の際にこれがあったが、誰のものか分からないと霧華がお守りのようなものをポケットから出した。綾女と縫い取りがあって、名前ならもう一人の女性の可能性も高いが、貰いものかもしれない。アヤカにアヤメとはややこしいが、そんなことにかかずらわっている場合ではなかったようだ。
 慎重に、だが出来るだけ馬を急がせていた星輝が、突然その足を止めさせたのだ。
「道幅が足りないな。傾かせるのは……」
「あ、やっぱり? じゃあ、そこは右に曲がって。しばらく行ったら、左に折れて戻れるから」
 往路は最短距離を辿って、馬の行けないところはなかったが、復路では荷車の車幅が通らないところがあったのだ。やはりここは担いでいくしかないかと、練は五人の中で一番荷物が厳重かつ豪華な包みになっているアヤカの背負枠に手を掛けた時、マーロンがすぐさま迂回路を示した。皆の視線を集めたことに気付いて、彼は『退路の確認は、行動の基本だから』とあっさりしている。行きに遅れがちだったのは、この作業の為らしい。
 行動する時に『退路』を確認するのが基本の生活とは……と思った者もいたが、詮索している場合ではない。
「助かった。どうも東方の住民ではないかと思うしの。早くちゃんと医者に見せてやりたいものじゃ」
 指先に細かい傷跡があるのは、東方の剣術に精通している者に多い。服装に武器を見、現われ方を聞くにつけ、その思いが強くなると、東方の血を引いていると言う星輝は熱弁をふるった。声は押さえているが、ずっと事実を知りたい気持ちが募っていたのが少々抑えが利かなくなったようだ。
 霧華もリアルブルーの出身者には見えないと、星輝の言い分にいちいち頷いていた。練は今の段階ではどうでもよいと、魔導短伝話に反応がないものか、時々確かめている。
 迂回路を取ることも多数、時には使える道があるか分からないと、ウルヴァンやマーロン、偵察隊の女性が馬を下りて三方に散り、かろうじて荷車を使い続けて往路の七割増しの時間が経ったところで、ホープを囲む防御壁が見えてきた。全員が、神経を使う長時間の移動があと少し、しかもここからは多少岩や木々があっても地面は平坦で道の心配もないと、安堵したくなった時に限って、良くないことは起きる。
 どうしてホープ近くまで出張ってきたものか、ゴブリンが十体余り、こちらに気付いて騒いでいる。どうもただのゴブリンの群れではないらしい。なにしろ弓矢を持っていて、すでにこちらに射てくるのだ。
 すでに攻撃を仕掛けてくる群れを相手に、どう対応するか。彼我の距離では、ホープで気付いても、援護が来る前に追い付かれるのは間違いない。
「しっかり押さえておれ! 全速力じゃ」
 霧華に叫んだ星輝が、愛馬の成金(ナルカネ)に初めて鞭を当てる。その前に、流石に布団を剥いだ練がアヤカを担いで飛び降りた。少しでも軽くすれば速度が出るし、目標が分散すれば敵も照準を迷う。
 なにより。
「乗り潰したら悪いね」
「それは、嬉しくないな」
 ウルヴァン達が馬を空けて、乗れと示したからだ。よじ登るのに手を貸したのは、マーロンで、
「映画のようだ。ちょっと懐かしい」
 何が楽しいのか笑顔を見せて、もう一頭の馬に乗る男性に手綱を投げた。遊牧民なら他人の馬も引いていけるはずと、妙な知識を持ち合わせていたらしい。
 荷車の上では、一人で三人の怪我人を庇う羽目になった霧華が、あちこち痛む体のことを忘れて、必死に自分の役割を果たしていた。下手に口を開いたら舌を噛むし、周りを見る余裕などもちろんない。
 響いた銃声を気にすることなく、愛馬にもう一度鞭をくれた星輝も、疾走する馬にしがみつく練も、同様に後方を見ることはなかった。
 置いてきた三人が後から追いかけてくるか、それとも自分達がこの後で助けに行くことになるか。そんなことがちらりと頭をよぎったが、実際に起きていることはまるで予想出来ていない。
 ゴブリンの群れは、徒歩と言っても反応が尋常でなく速い二人と、馬上の有利を保つ一人の他に、後方から新手の三人の強襲を受ける羽目になっていた。こちらは大分歴戦の跡が見えたが、謎の集団がなんとかホープに向かったのを見ているから気持ちの方が元気いっぱいだ。
「美少女は強いぞー」
「でも流石に疲れてきた」
「仕上げと思えば、まあ……気張りましょう」
 それでも流石に、ホープまで辿り着いた時には、皆、意識がない五人同様にひっくり返りそうにはなったのだが。

 この一団が、星輝の予想通りに東方からの使者だと、ハンターの中では最初に知らせて貰った八人だが、傷が癒えるには、まだ少し掛かるようだった。

依頼結果

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MVP一覧

  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhranka0724

  • 雪村 練ka3808

重体一覧

参加者一覧


  • フラン・レンナルツ(ka0170
    人間(蒼)|23才|女性|猟撃士
  • 【魔装】の監視者
    星輝 Amhran(ka0724
    エルフ|10才|女性|疾影士
  • 不屈の鬼神
    白神 霧華(ka0915
    人間(蒼)|17才|女性|闘狩人
  • 戦場の美学
    ウルヴァン・ダイーヴァ(ka0992
    人間(蒼)|28才|男性|機導師

  • マーロン・劉(ka3059
    人間(蒼)|27才|男性|猟撃士
  • 特務偵察兵
    水城もなか(ka3532
    人間(蒼)|22才|女性|疾影士
  • 飴玉お姉さん
    テトラ・ティーニストラ(ka3565
    エルフ|14才|女性|疾影士

  • 雪村 練(ka3808
    人間(蒼)|15才|女性|機導師

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談スレッド
雪村 練(ka3808
人間(リアルブルー)|15才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/04/12 17:47:31
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/04/09 00:47:29