ゲスト
(ka0000)
春のフリーマーケット
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/04/16 19:00
- 完成日
- 2015/04/17 14:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●春風の中で呼びかけるのは
帝国の中にある、そこそこ大きな規模の街。折角人が集まるのだし、外に出ていて気持ちのいい季節だから、と有志によるフリーマーケットが開催されることになったのはつい先日のこと。
手作りの作品やお蔵入りしていた美術品、何に使うのかいまいち分からない骨董品から日用雑貨、果ては食べ物まで。
店の申請はフリーマーケットであるが故に多岐にわたり、当日はさぞ賑やかになるだろう、と発案者側も頬をほころばせる申請数。
ただ、人が増えると付き纏うのが引ったくりなどの犯罪やフリーマーケットなら値段交渉が喧嘩に発展するという憂慮事項である。
かといって下手に物々しい警護をつけて人々の楽しみに水を差したくはない。
そんなわけでハンターオフィスに依頼が舞い込んだのだった。
「以前、別の街だったけれど市の警備をかねて遊んできてほしいっていう依頼を出したのは覚えてるかな?
あれと似たような依頼が入ってきているよ。今回はそこそこ大きい街でのフリーマーケット。
今からならまだ間に合うから店の申請を出して売り手に回るのもいいし純粋に買い物や冷やかしを楽しんでもいい。
ただ、目に余るような喧嘩や引ったくりなんかを見かけたら穏便に対処してほしいってことだったよ。
もともと治安のいい街みたいだし、警備はあくまで念のため、かな。
僕も当日はぶらぶらするつもり。あ、フリーマーケットだからっていかがわしいものは持ち込むのは禁止だそうだから、その辺は注意してね」
申請用紙、欲しい人には配るよ。そういってルカ・シュバルツエンド(kz0073)は紙の束を取り出したのだった。
帝国の中にある、そこそこ大きな規模の街。折角人が集まるのだし、外に出ていて気持ちのいい季節だから、と有志によるフリーマーケットが開催されることになったのはつい先日のこと。
手作りの作品やお蔵入りしていた美術品、何に使うのかいまいち分からない骨董品から日用雑貨、果ては食べ物まで。
店の申請はフリーマーケットであるが故に多岐にわたり、当日はさぞ賑やかになるだろう、と発案者側も頬をほころばせる申請数。
ただ、人が増えると付き纏うのが引ったくりなどの犯罪やフリーマーケットなら値段交渉が喧嘩に発展するという憂慮事項である。
かといって下手に物々しい警護をつけて人々の楽しみに水を差したくはない。
そんなわけでハンターオフィスに依頼が舞い込んだのだった。
「以前、別の街だったけれど市の警備をかねて遊んできてほしいっていう依頼を出したのは覚えてるかな?
あれと似たような依頼が入ってきているよ。今回はそこそこ大きい街でのフリーマーケット。
今からならまだ間に合うから店の申請を出して売り手に回るのもいいし純粋に買い物や冷やかしを楽しんでもいい。
ただ、目に余るような喧嘩や引ったくりなんかを見かけたら穏便に対処してほしいってことだったよ。
もともと治安のいい街みたいだし、警備はあくまで念のため、かな。
僕も当日はぶらぶらするつもり。あ、フリーマーケットだからっていかがわしいものは持ち込むのは禁止だそうだから、その辺は注意してね」
申請用紙、欲しい人には配るよ。そういってルカ・シュバルツエンド(kz0073)は紙の束を取り出したのだった。
リプレイ本文
●
「祭りって楽しいよな、というか雰囲気が好きだ」
フリーマーケット当日。ドミノ・ウィル(ka0208)は客として楽しみがてら見回りを行うハンターの一人。
どのあたりが混雑しているのか、逆に閑散としている場所は、とざっと見て回る。
前者は値下げ交渉からの諍いやスリ、後者は強引に荷物を奪って逃走する引ったくりの可能性があるためそれぞれ注意が必要だ。
食べ物をお供に話や光景に夢中になっていて荷物への注意がおろそかになっている人を重点的に眺める。
異常なしか、と立ち上がりかけた時に視界に入ったのは財布を盗もうとする狼藉者。
「よくないぜぃ……そういうの」
スリ本人ではなく地面を攻撃すればスリは大人しく財布を返し、その後は警備員に引き渡されていった。
(こういう祭りってワクワクするよなぁ……故郷の村は祭りはあっても店はなかったし……)
ラティナ・スランザール(ka3839)は木製や革製の装飾品や小物を中心に販売しながら辺りの様子を見守っていた。
革製品は男女それぞれに向けてネックレスやブレスレット、ベルトに髪紐。
木製品は女性向けの装飾品と櫛や髪飾り、小箱、子供向けの玩具などがあり若いカップルがお揃いで買ったり、子供のいる夫婦が子供にせがまれて玩具を買うついでに夫が妻に小箱をプレゼントしたりと中々盛況のようだ。
「どうだい、そっちの様子は」
様子を見に来たドミノに尋ねられ、こちらは異常がない、と伝えた後ドミノの方はどうだったかを尋ねる。
「スリを一人見つけて警備員に引き渡した」
「そうか。やはり犯罪は起きるのだな……」
「取り込み中かねぇ……この櫛をもうちょっと安くしてほしいんだけど」
「おばちゃん、なんだったらそっちの髪飾りとセットで割引ってのはどうだ? その櫛は桜で作ってあるから防虫効果もあるぜ。ふんわりいい香りがするだろ?」
「そうなのかい。桜っていうのは便利な質をもってるんだねぇ。じゃあ、二つとももらおうか」
「毎度」
「俺はもう一回あたりを見て回ってくる」
「あぁ、頼む。こっちも何か見つけたら知らせるよ」
ゼカライン=ニッケル(ka0266)は見回りのついでに鋼の製品を扱っている店へと寄ってみた。
指で弾いて材質の音を確認して澄んだ音に一つ頷く。
切れ味を試すために自分を切ろうとしたゼカラインに慌てて試し切り用の道具を出す店番に軽く首を傾げる。
「なんだ? 武器っつうのは敵を刺したり、斬ったりするもんだろうが。この程度ワシらの中じゃ普通だぜ」
フリーマーケットで流血沙汰は困る、と店側が頼み込み、試し切りの方で切れ味を確かめることに。
「……よく切れるじゃねぇか、良い腕だ。これは何処の鋼だ?
ワシは【歌う鋳槌】のゼカラインだ。暇がありゃうちに来るといいぜ。お前さんなら歓迎してやる」
そう言って店を後にしたあとは見回りを開始。
「さてさて、なかなかにぎわっとるなー。うちも気張らんと」
クレナ(ka0451)は自分の作った包丁や金属小物などを出店していた。
それに合わせて日曜刃物の研ぎや簡単な修理も行っている。
「さぁみていったってや、どれもこれも自信作や。包丁なんかの研ぎもやっとるけ、よかったらもってき。
あ、戦闘用の武器は自己責任やで! うちもまだまだ修業中やさかい、それでも任せてくれるっちゅーなら全力でやったるわ」
「包丁か……武器はないのか?」
ゼカラインがやってきて声をかける。
「んー、一般人相手やし武器はまだまだ修行中やからあんまりないんよね。でも包丁の切れ味は保証するでー」
あんたは武器屋巡り? と問いかけるとあぁ、そういえば引ったくりを追いかけていたんだが刃物に釣られてこっちに来てしまった、との返事。
「あかんやんそれ! あ、斡旋人さん。ちょい留守番頼むわ! 引ったくりやって」
様子を見に来たルカ・シュバルツエンド(kz0073)に留守番を押し付けるとゼカラインに特徴を聞きながら引ったくりを追いかけはじめるクレナ。
捕まった引ったくりは説得(物理)を受けた後、バイトの話を持ち掛けられて乗ったようだ。
クレナが研ぎ師として作業をしている間横で店番をすることに。
念のためルカも暫くその場にとどまれば、クレナは珍しい機械製品を探しに行く、とふらりと出かけていく。
ルカと臨時バイトは微妙な沈黙のまま店主の帰りを待ったのだった。
ジョン・フラム(ka0786)は価値を知らずに安値で売り出された掘り出し物や民俗資料となり得るものを中心に骨董品、書物などを見て回っていた。
妹と恋人へ、小さな観葉植物を土産に買ったあとはそれとなく警備の仕事もこなす。
すれ違った仲間に話を聞けば引ったくりやスリが出た、とのことで憂い顔になるジョン。
「活気があるのはいいことですが魔が差してしまう人が出るのは残念なことですね。治安自体はそう悪くなさそうな街だというのに。
ハンターが巡回している、というポスターを今からでも掲示してもらいますか」
呟きながら思いついた防犯対策を本部に伝えるため人ごみの中を歩き始めるのだった。
「これが、ふりーまーけっとというものなんですね♪ 故郷でもこんな規模の催し物は滅多にないです」
説明だけではフリーマーケットについて想像がつかなかったトリス・ラートリー(ka0813)は現場を見て大きな市のようなものか、と納得していた。
ガラス製品を扱う店がないかと探し回りながら、人の動きを密かに注意深く観察する。
特に注目するのは視線の動きと挙動、それから手の動き。
(ここは安全のようですね……)
落ち着きなく視線を走らせたり、人を値踏みするような目つきの者がいないのを一通り見まわして確認するトリスの視界にガラス製品を置いている店が飛び込んできた。
本音を言うと全て欲しかったが財布と相談してどうしても欲しいものだけを厳選し、値段を交渉する。
「まあまあまあ♪ このガラス、薄い緑色でとっても綺麗ですね。細工も細かくて綺麗……むぅ。この髪飾りとこれをセットにすると、もう少し値段下げられませんか?」
交渉は成立。代金を払って足取り軽く店を後にするトリスだった。
翡翠(ka2534)も初めてのフリーマーケットに心を躍らせた参加者の一人。
村にいたころから巫女として装飾品を身に着けていたため女性用の装飾品にも興味を示す。
そんな翡翠を年頃の少女と勘違いして痴漢行為を働く男性に最初は何をされているか分からず戸惑っていると。
「……全く。いい年してみっともないよ、おじさん。せめてスマートに口説いたあと、時と場所を考えて、位の配慮はできないものかな。此処は大衆の集まる公道だってこと、煩悩があふれかえりすぎて忘れちゃった?」
翡翠に身体を密着させていた中年男性を小柄で細身の影が引きはがす。
「ルカさん?」
「翡翠君ももう少し気をつけなよ。大人しくしてたら調子に乗るのがこの手の輩だから」
「あ、なんだか体くっつけてくると思ったら痴漢だったんですね……助けてくれて有難うございます」
「で、どうする? この人。なんなら僕が警備員に引き渡そうか?」
「二度としないと誓ってくれるなら僕はそれで……ルカさんもお手間でしょう?」
「だってさ。次見つけたらハンターオフィスの情報網駆使して捕まえるから、そのつもりで」
オフィス職員とハンター相手だとそこで分かったのか中年男性はしどろもどろになって謝りながら逃げるようにその場を後にした。
「さっきから何迷ってたんだい。痴漢に気づかないなんてよっぽど夢中だったんだね」
「あ、このブローチです。買おうかどうか悩んでて」
「ふぅん。人も物も巡り合い。一度きりになるかもしれない出会いを大切に、惹かれるものがあったなら、買わずに後悔するより買って後悔した方がいいんじゃない?」
それに後押しされたのか翡翠は店主に声をかけた。
「こういう店ではまず値切ってみるといいよ。それも醍醐味だからね。じゃ、僕はこれで」
「有難うございました。お姉さん、ということで値切っていいですか?」
やり取りに目を丸くしていた店番の女性は率直な言葉に思わず笑みをこぼしたのだった。
清柳寺 月羽(ka3121)の店は簡易テントではなく木造でカウンター席もついている雰囲気を感じさせる屋台。取り扱うのはおでん。
テーマは心にしみる味。設営には苦労したがハンターの仲間たちが手伝ってくれたこともあって開場時間までには準備が整い、来場時間からは人が途切れることがない。
おでんを知らないものの興味が惹かれた様子の客には定番の品を詰め合わせた「店主オススメ五種詰め合わせ」などを勧める細やかさ。
試食用に味が染みた大根を小さく切り分けたものを配ればその美味しさにオススメ以外も食べようかと悩み始める客も大勢いる。
店から離れられないものの客からそれとなく情報を集め、見回りと休憩を兼ねてやってきた仲間に知らせるという形で警備にも間接的に協力。
このままの規模の揉め事で済めばいいが、と思いながら注文の品を盛り付ける月羽だった。
「今日は作る側ではなく食べる側です。個人的にはまたルカさんの神秘に触れたくはありましたが」
痴漢を追い払ったあとぶらぶらと歩いていたルカに声をかけて一緒に食べ歩きを決行したのはミネット・ベアール(ka3282)、ルカのダークマター的何かをことあるごとに一緒に制作しては食べるという猛者だ。
「ミネット君は本当に物好きだよね。グルメとは真逆の意味であれの味が分かる人っていないと思ってたよ」
「料理で大切なのは食べるという行為です。そこには感謝の気持ちが一番大切ですよね」
自分の部族だけでなく、あらゆる宗教で食に感謝しているはずだ、と語るミネットにルカも食事をしなければ生きていけないしね、と相槌を打つ。
「命を奪うわけですからね。どんな料理も感謝して食べなければいけませんし、そこに美味しい不味いは関係ないです。
それにルカさんの料理も毎回少しずつ違いがあって意外と飽きません! 慣れれば結構イケそうです!」
「……うん、主張は立派だと思うよ。でも不味いとは感じてるようにも聞こえるな」
茶化すようにルカが口を開けば不味いというより一種の珍味ですかね、と真顔で返すミネット。
「……慣れるまで食べ続けようと思った子も、やっぱり初めてだよ。大概見た目と匂いで逃げていくし、雑魔退治に使われるレベルの異物ではあるみたいだし。
料理の腕を知ってる子は、そもそも僕に料理をさせないしね」
「全く別物に変化しますからね。凄いです。……あ! 例えば腐ったりして食べられなくなったものを再び変化させて食卓に並べられるものにすることも可能なんじゃ……食糧問題解決ですねっ」
「……そこにいくまでどれだけ腐った食べ物が必要で、どれだけ時間が必要で、どれだけ死者が出るか分からないけどね」
流石にオフィス職員が殺人は戴けないな、と嘯くルカ。
食べ歩きをしながら見回りを行っていた二人の耳に食い逃げ、という単語が聞こえてきた途端楽しげにダークマター考察をしていたミネットの表情が一変する。
食事に対して敬意を表する彼女にとって食い逃げは断固として許せない所業だ。
草食動物を追いかける肉食動物のような素早さで捕獲すると料金を上乗せして払わせたうえでお説教開始。
「食べ物への冒涜はムシャモグに値しまムシャモグ!」
「……ミネット君、とりあえず口の中空っぽにしようか。大事なところが聞こえないよ。あと、行儀悪いから」
「は、すみません、ルカさん。つい情熱が。……そこの貴方! タダで食べたければ狩ることです! 弓と矢を作れば狩れます!」
「……念のためいうけど、熟練者と一緒にやりなよ、狩りは。あと小さいのから始めることだね。いきなり大物狙って死んでも責任とれないからね」
半泣きの食い逃げ犯に、愉快そうでかつ呆れているという複雑な表情でルカは釘をさすのだった。
「狩りは獲物に敬意を表し、死を覚悟して臨む者ですよルカさん!」
「まぁ、そうなんだけどさ。それがきっかけでこの人が死んで死因の原因として捕まるのを遠慮したい僕としては予防線を張る事位許してほしいかな」
「ふむ……それもそうですね……」
納得した様子のミネットはその後も暫く食い逃げ班に狩りの心得を説くのだった。
「ふりーまーけっとというのは一体何なのでしょうか……?」
家にはフリーマーケットについての本などありませんでしたし……と首を傾げる雪雫(ka3362)も、フリーマーケット初体験の一人だ。
大規模な市のような物だと認識してからは家から出たことがなかった分、人と話したり知らないものを眺めるのが楽しくて店員にあれこれ聞いたり世間話をしたりしては目を輝かせる。
「なるほど、勉強になります! 新しく何かを知ることができるというのは、とても素晴らしいことですね」
後日置き場所に困るであろうものは流石に断ったが食べ物は勧められるとかなりの確率で買ってしまったので両手はすぐにふさがった。
月羽の屋台の前を通りかかった際に、危なっかしさに声をかけられ座って消費していくように、という申し出に甘えていそいそと席について買ったものを食べていく。
「おでん、ですか? おすすめを頂いていいでしょうか」
「はいよ。その両手の食料がなくなる頃に持っていくから熱いうちに食べるといい。火傷には気を付けて、だけどね」
「お気づかい有難うございます」
ぺこり、と頭を下げる雪雫に大したことじゃないさ、とあっさり応じる月羽だった。
希崎 十夜(ka3752)と伊勢・明日奈(ka4060)は二人でフリーマーケットを散策していた。
「フリーマーケット……か。リアルブルーでもこういうのやってたなぁ」
雰囲気というか、活気はよく似ている、と観察していた十夜が小さく笑う。
明日奈に振り回され気味で行動していたが古本を扱う店を見つけると思わず近づいてチェックを始め、気付けばずいぶん長い時間が経っていた。
最初は本が好きだったな、と思いだして曖昧に笑っていた明日奈だったがあまりに放っておかれ過ぎてむくれ気味に十夜の服の裾を引っ張って現実に帰ってこさせる。
「そんなに欲しいなら買っちゃったら?」
「……はっ……いや、すまない。うん、どっちか、どっちかを買うぞ…うん。
明日菜、どっちの本がいいと思う……?」
真面目に聞く十夜は返事を待つ間、明日奈が欲しがりそうなものを一つくらい、随分前に迎えていたはずの誕生日プレゼント代わりに買ってもいいかな、と算段をつける。
「何かしら欲しいものがあれば一緒に買うか? 随分すぎてしまったが、誕生日プレゼントも兼ねて、な」
「本当? えーっと、じゃあねぇ……」
いろいろ増える前に先手を打たなければ、と考えながら以前の思い出を振り返りながら話したりと、和やかな時間を過ごす二人だった。
ベリト・アルミラ(ka4331)は自分で調合したハーブティーや軟膏、マジックナイフや杖、簡単なアクセサリーなどを出店していた。
サイズは小ぶりだが煮炊きにも使えるという触れ込みの、魔女が使うような大釜なども取り扱っていたり、小枝を使った占いなどもしている店は恋の行方を占ってほしいという若い女性を中心ににぎわっていた。
「占いー、占いー、お題は見てのお帰りで」
おとり捜査として警備に参加し、わざと隙だらけの店だったが人目が多い分スリや引ったくりは近づかなかったようだ。
店の商品が捌けてからは他の人が出している店も見て回ることに。
金属製品や魔法、薬関連など面白そうなものを見つければ積極的に話しかけて購入する。
売ったもので温かくなった懐が寂しくなり過ぎない程度に買い物を楽しむベリトだった。
マルグリット・ピサン(ka4332)が開いたのはクレープの屋台。
警備を兼ねているので周りを広く見渡せる場所を提供してもらった。
客人がやってくればオーダーに合わせてクレープを焼いていく。にこやかな対応に甘いものが好きな女性や子供が次々とやってきた。
「落とさないように気を付けてくださいね」
それとなく怪しい人がいないかも聞きこんで、軽食が欲しいという客人にはハンター仲間の月羽が開いている屋台を勧める。
「リアルブルーの、おでんという珍しい食べ物が頂けるようなのでオススメです」
礼を言って立ち去る客を笑顔で見送り、一段落ついたら他のハンターに差し入れるクレープを持って情報収集へ。
「おでん、は初めて食べましたが……具材に味がしみ込んでいてとても美味しいですね。優しい感じがします」
「シーズンは冬なんだけどね。昔バイトでやってたんだ、おでん屋。何人か勧められてきたって聞いたけど宣伝してくれたの?」
「えぇ。店に戻って聞かれた時、食べてきたから美味しかったと付け加えますね」
「太鼓判を押してくれるってことか。有難いね」
そんな会話をして月羽の屋台を去った後、一通り警備もかねてフリーマーケットを巡回していくのだった。
「こういったことはしたことがないのですが、とても楽しそうなのですよ♪
せっかくなので楽しみたいです……嫌な思い出にはしたくないのです。そのためにも頑張らねば!」 意気込むシャルア・レイセンファード(ka4359)は似顔絵描きの店を出店していた。
大人から子供まで楽しんでもらえるように値段設定は低めで、デフォルメ気味の似顔絵を描いていく。
描きながら会話をすることで待つ時間が苦にならないように工夫し、コミュニケーションを取りながらそれとなく情報収集する。
「わ、賑わってますね!」
明日奈と十夜がやってきて声をかけるとシャルアは嬉しそうに笑いかけた。
「お二人のこともお描きしましょうか?」
「とおくん、描いてもらおうよ! 誕生日プレゼント、これがいいな」
「わ、わかった。気を付けることとかあるのかな?」
「楽にしてくださって大丈夫ですよー。
む、お誕生日プレゼントです? では、うーんと可愛くて綺麗なものを描かねば!」
張り切って描きだすシャルアと会話をしている内に、十夜の緊張も解けてきたようで。
「なにかトラブルとか、ありました?」
「行きあったハンターの人には聞いたけど、実際には目にしてないかな、ねえ、とおくん?」
「そうだな……犯罪は少ないに越したことはないけど」
「そうですねぇ。……はい、お待たせしました、できましたよー!」
「わぁ、可愛い! 有難う!」
「どういたしましてなのです」
朗らかに二人を見送った後、入れ違いにやってきたルカにも声をかける。
「あ、ルカさーん! ルカさんもどーです?」
「そうだね、じゃあ、折角だから。あぁ、これ差し入れ。客足が落ち着いた時にでもどうぞ。冷めてもおいしいって聞いたから……多分美味しいんじゃないかな」
僕の味覚は当てにならないけど、賑わってる店のだったし、と焼き菓子が入っているらしい包みを差し出すルカにシャルアは礼を言うと張り切って描き始めた。
「お祭りってその場にいるだけで気分が沸き立つから不思議ですよねー。楽しい依頼の斡旋、有難うございますですよ」
「僕は斡旋しただけだよ。お礼はハンターに警備を任せるって決めた主催の人に言ってくれるかい?」
「じゃあ後でご挨拶に行ってきますね」
そんな雑談をしながら仕上げた似顔絵をルカに手渡し、代金を受け取る。
「差し入れ、有難うございました」
「うん、お店頑張って。描きすぎて手を痛めないようにね」
「気をつけますですよー」
幸いにもフリーマーケットを中断しなければいけないような大規模の騒動は怒らず、犯罪の芽はハンターたちが摘み取ったのが全てだったようで被害報告などもなく。
自業自得の犯人以外は平穏無事にフリーマーケットでの一日を満喫したのだった。
「祭りって楽しいよな、というか雰囲気が好きだ」
フリーマーケット当日。ドミノ・ウィル(ka0208)は客として楽しみがてら見回りを行うハンターの一人。
どのあたりが混雑しているのか、逆に閑散としている場所は、とざっと見て回る。
前者は値下げ交渉からの諍いやスリ、後者は強引に荷物を奪って逃走する引ったくりの可能性があるためそれぞれ注意が必要だ。
食べ物をお供に話や光景に夢中になっていて荷物への注意がおろそかになっている人を重点的に眺める。
異常なしか、と立ち上がりかけた時に視界に入ったのは財布を盗もうとする狼藉者。
「よくないぜぃ……そういうの」
スリ本人ではなく地面を攻撃すればスリは大人しく財布を返し、その後は警備員に引き渡されていった。
(こういう祭りってワクワクするよなぁ……故郷の村は祭りはあっても店はなかったし……)
ラティナ・スランザール(ka3839)は木製や革製の装飾品や小物を中心に販売しながら辺りの様子を見守っていた。
革製品は男女それぞれに向けてネックレスやブレスレット、ベルトに髪紐。
木製品は女性向けの装飾品と櫛や髪飾り、小箱、子供向けの玩具などがあり若いカップルがお揃いで買ったり、子供のいる夫婦が子供にせがまれて玩具を買うついでに夫が妻に小箱をプレゼントしたりと中々盛況のようだ。
「どうだい、そっちの様子は」
様子を見に来たドミノに尋ねられ、こちらは異常がない、と伝えた後ドミノの方はどうだったかを尋ねる。
「スリを一人見つけて警備員に引き渡した」
「そうか。やはり犯罪は起きるのだな……」
「取り込み中かねぇ……この櫛をもうちょっと安くしてほしいんだけど」
「おばちゃん、なんだったらそっちの髪飾りとセットで割引ってのはどうだ? その櫛は桜で作ってあるから防虫効果もあるぜ。ふんわりいい香りがするだろ?」
「そうなのかい。桜っていうのは便利な質をもってるんだねぇ。じゃあ、二つとももらおうか」
「毎度」
「俺はもう一回あたりを見て回ってくる」
「あぁ、頼む。こっちも何か見つけたら知らせるよ」
ゼカライン=ニッケル(ka0266)は見回りのついでに鋼の製品を扱っている店へと寄ってみた。
指で弾いて材質の音を確認して澄んだ音に一つ頷く。
切れ味を試すために自分を切ろうとしたゼカラインに慌てて試し切り用の道具を出す店番に軽く首を傾げる。
「なんだ? 武器っつうのは敵を刺したり、斬ったりするもんだろうが。この程度ワシらの中じゃ普通だぜ」
フリーマーケットで流血沙汰は困る、と店側が頼み込み、試し切りの方で切れ味を確かめることに。
「……よく切れるじゃねぇか、良い腕だ。これは何処の鋼だ?
ワシは【歌う鋳槌】のゼカラインだ。暇がありゃうちに来るといいぜ。お前さんなら歓迎してやる」
そう言って店を後にしたあとは見回りを開始。
「さてさて、なかなかにぎわっとるなー。うちも気張らんと」
クレナ(ka0451)は自分の作った包丁や金属小物などを出店していた。
それに合わせて日曜刃物の研ぎや簡単な修理も行っている。
「さぁみていったってや、どれもこれも自信作や。包丁なんかの研ぎもやっとるけ、よかったらもってき。
あ、戦闘用の武器は自己責任やで! うちもまだまだ修業中やさかい、それでも任せてくれるっちゅーなら全力でやったるわ」
「包丁か……武器はないのか?」
ゼカラインがやってきて声をかける。
「んー、一般人相手やし武器はまだまだ修行中やからあんまりないんよね。でも包丁の切れ味は保証するでー」
あんたは武器屋巡り? と問いかけるとあぁ、そういえば引ったくりを追いかけていたんだが刃物に釣られてこっちに来てしまった、との返事。
「あかんやんそれ! あ、斡旋人さん。ちょい留守番頼むわ! 引ったくりやって」
様子を見に来たルカ・シュバルツエンド(kz0073)に留守番を押し付けるとゼカラインに特徴を聞きながら引ったくりを追いかけはじめるクレナ。
捕まった引ったくりは説得(物理)を受けた後、バイトの話を持ち掛けられて乗ったようだ。
クレナが研ぎ師として作業をしている間横で店番をすることに。
念のためルカも暫くその場にとどまれば、クレナは珍しい機械製品を探しに行く、とふらりと出かけていく。
ルカと臨時バイトは微妙な沈黙のまま店主の帰りを待ったのだった。
ジョン・フラム(ka0786)は価値を知らずに安値で売り出された掘り出し物や民俗資料となり得るものを中心に骨董品、書物などを見て回っていた。
妹と恋人へ、小さな観葉植物を土産に買ったあとはそれとなく警備の仕事もこなす。
すれ違った仲間に話を聞けば引ったくりやスリが出た、とのことで憂い顔になるジョン。
「活気があるのはいいことですが魔が差してしまう人が出るのは残念なことですね。治安自体はそう悪くなさそうな街だというのに。
ハンターが巡回している、というポスターを今からでも掲示してもらいますか」
呟きながら思いついた防犯対策を本部に伝えるため人ごみの中を歩き始めるのだった。
「これが、ふりーまーけっとというものなんですね♪ 故郷でもこんな規模の催し物は滅多にないです」
説明だけではフリーマーケットについて想像がつかなかったトリス・ラートリー(ka0813)は現場を見て大きな市のようなものか、と納得していた。
ガラス製品を扱う店がないかと探し回りながら、人の動きを密かに注意深く観察する。
特に注目するのは視線の動きと挙動、それから手の動き。
(ここは安全のようですね……)
落ち着きなく視線を走らせたり、人を値踏みするような目つきの者がいないのを一通り見まわして確認するトリスの視界にガラス製品を置いている店が飛び込んできた。
本音を言うと全て欲しかったが財布と相談してどうしても欲しいものだけを厳選し、値段を交渉する。
「まあまあまあ♪ このガラス、薄い緑色でとっても綺麗ですね。細工も細かくて綺麗……むぅ。この髪飾りとこれをセットにすると、もう少し値段下げられませんか?」
交渉は成立。代金を払って足取り軽く店を後にするトリスだった。
翡翠(ka2534)も初めてのフリーマーケットに心を躍らせた参加者の一人。
村にいたころから巫女として装飾品を身に着けていたため女性用の装飾品にも興味を示す。
そんな翡翠を年頃の少女と勘違いして痴漢行為を働く男性に最初は何をされているか分からず戸惑っていると。
「……全く。いい年してみっともないよ、おじさん。せめてスマートに口説いたあと、時と場所を考えて、位の配慮はできないものかな。此処は大衆の集まる公道だってこと、煩悩があふれかえりすぎて忘れちゃった?」
翡翠に身体を密着させていた中年男性を小柄で細身の影が引きはがす。
「ルカさん?」
「翡翠君ももう少し気をつけなよ。大人しくしてたら調子に乗るのがこの手の輩だから」
「あ、なんだか体くっつけてくると思ったら痴漢だったんですね……助けてくれて有難うございます」
「で、どうする? この人。なんなら僕が警備員に引き渡そうか?」
「二度としないと誓ってくれるなら僕はそれで……ルカさんもお手間でしょう?」
「だってさ。次見つけたらハンターオフィスの情報網駆使して捕まえるから、そのつもりで」
オフィス職員とハンター相手だとそこで分かったのか中年男性はしどろもどろになって謝りながら逃げるようにその場を後にした。
「さっきから何迷ってたんだい。痴漢に気づかないなんてよっぽど夢中だったんだね」
「あ、このブローチです。買おうかどうか悩んでて」
「ふぅん。人も物も巡り合い。一度きりになるかもしれない出会いを大切に、惹かれるものがあったなら、買わずに後悔するより買って後悔した方がいいんじゃない?」
それに後押しされたのか翡翠は店主に声をかけた。
「こういう店ではまず値切ってみるといいよ。それも醍醐味だからね。じゃ、僕はこれで」
「有難うございました。お姉さん、ということで値切っていいですか?」
やり取りに目を丸くしていた店番の女性は率直な言葉に思わず笑みをこぼしたのだった。
清柳寺 月羽(ka3121)の店は簡易テントではなく木造でカウンター席もついている雰囲気を感じさせる屋台。取り扱うのはおでん。
テーマは心にしみる味。設営には苦労したがハンターの仲間たちが手伝ってくれたこともあって開場時間までには準備が整い、来場時間からは人が途切れることがない。
おでんを知らないものの興味が惹かれた様子の客には定番の品を詰め合わせた「店主オススメ五種詰め合わせ」などを勧める細やかさ。
試食用に味が染みた大根を小さく切り分けたものを配ればその美味しさにオススメ以外も食べようかと悩み始める客も大勢いる。
店から離れられないものの客からそれとなく情報を集め、見回りと休憩を兼ねてやってきた仲間に知らせるという形で警備にも間接的に協力。
このままの規模の揉め事で済めばいいが、と思いながら注文の品を盛り付ける月羽だった。
「今日は作る側ではなく食べる側です。個人的にはまたルカさんの神秘に触れたくはありましたが」
痴漢を追い払ったあとぶらぶらと歩いていたルカに声をかけて一緒に食べ歩きを決行したのはミネット・ベアール(ka3282)、ルカのダークマター的何かをことあるごとに一緒に制作しては食べるという猛者だ。
「ミネット君は本当に物好きだよね。グルメとは真逆の意味であれの味が分かる人っていないと思ってたよ」
「料理で大切なのは食べるという行為です。そこには感謝の気持ちが一番大切ですよね」
自分の部族だけでなく、あらゆる宗教で食に感謝しているはずだ、と語るミネットにルカも食事をしなければ生きていけないしね、と相槌を打つ。
「命を奪うわけですからね。どんな料理も感謝して食べなければいけませんし、そこに美味しい不味いは関係ないです。
それにルカさんの料理も毎回少しずつ違いがあって意外と飽きません! 慣れれば結構イケそうです!」
「……うん、主張は立派だと思うよ。でも不味いとは感じてるようにも聞こえるな」
茶化すようにルカが口を開けば不味いというより一種の珍味ですかね、と真顔で返すミネット。
「……慣れるまで食べ続けようと思った子も、やっぱり初めてだよ。大概見た目と匂いで逃げていくし、雑魔退治に使われるレベルの異物ではあるみたいだし。
料理の腕を知ってる子は、そもそも僕に料理をさせないしね」
「全く別物に変化しますからね。凄いです。……あ! 例えば腐ったりして食べられなくなったものを再び変化させて食卓に並べられるものにすることも可能なんじゃ……食糧問題解決ですねっ」
「……そこにいくまでどれだけ腐った食べ物が必要で、どれだけ時間が必要で、どれだけ死者が出るか分からないけどね」
流石にオフィス職員が殺人は戴けないな、と嘯くルカ。
食べ歩きをしながら見回りを行っていた二人の耳に食い逃げ、という単語が聞こえてきた途端楽しげにダークマター考察をしていたミネットの表情が一変する。
食事に対して敬意を表する彼女にとって食い逃げは断固として許せない所業だ。
草食動物を追いかける肉食動物のような素早さで捕獲すると料金を上乗せして払わせたうえでお説教開始。
「食べ物への冒涜はムシャモグに値しまムシャモグ!」
「……ミネット君、とりあえず口の中空っぽにしようか。大事なところが聞こえないよ。あと、行儀悪いから」
「は、すみません、ルカさん。つい情熱が。……そこの貴方! タダで食べたければ狩ることです! 弓と矢を作れば狩れます!」
「……念のためいうけど、熟練者と一緒にやりなよ、狩りは。あと小さいのから始めることだね。いきなり大物狙って死んでも責任とれないからね」
半泣きの食い逃げ犯に、愉快そうでかつ呆れているという複雑な表情でルカは釘をさすのだった。
「狩りは獲物に敬意を表し、死を覚悟して臨む者ですよルカさん!」
「まぁ、そうなんだけどさ。それがきっかけでこの人が死んで死因の原因として捕まるのを遠慮したい僕としては予防線を張る事位許してほしいかな」
「ふむ……それもそうですね……」
納得した様子のミネットはその後も暫く食い逃げ班に狩りの心得を説くのだった。
「ふりーまーけっとというのは一体何なのでしょうか……?」
家にはフリーマーケットについての本などありませんでしたし……と首を傾げる雪雫(ka3362)も、フリーマーケット初体験の一人だ。
大規模な市のような物だと認識してからは家から出たことがなかった分、人と話したり知らないものを眺めるのが楽しくて店員にあれこれ聞いたり世間話をしたりしては目を輝かせる。
「なるほど、勉強になります! 新しく何かを知ることができるというのは、とても素晴らしいことですね」
後日置き場所に困るであろうものは流石に断ったが食べ物は勧められるとかなりの確率で買ってしまったので両手はすぐにふさがった。
月羽の屋台の前を通りかかった際に、危なっかしさに声をかけられ座って消費していくように、という申し出に甘えていそいそと席について買ったものを食べていく。
「おでん、ですか? おすすめを頂いていいでしょうか」
「はいよ。その両手の食料がなくなる頃に持っていくから熱いうちに食べるといい。火傷には気を付けて、だけどね」
「お気づかい有難うございます」
ぺこり、と頭を下げる雪雫に大したことじゃないさ、とあっさり応じる月羽だった。
希崎 十夜(ka3752)と伊勢・明日奈(ka4060)は二人でフリーマーケットを散策していた。
「フリーマーケット……か。リアルブルーでもこういうのやってたなぁ」
雰囲気というか、活気はよく似ている、と観察していた十夜が小さく笑う。
明日奈に振り回され気味で行動していたが古本を扱う店を見つけると思わず近づいてチェックを始め、気付けばずいぶん長い時間が経っていた。
最初は本が好きだったな、と思いだして曖昧に笑っていた明日奈だったがあまりに放っておかれ過ぎてむくれ気味に十夜の服の裾を引っ張って現実に帰ってこさせる。
「そんなに欲しいなら買っちゃったら?」
「……はっ……いや、すまない。うん、どっちか、どっちかを買うぞ…うん。
明日菜、どっちの本がいいと思う……?」
真面目に聞く十夜は返事を待つ間、明日奈が欲しがりそうなものを一つくらい、随分前に迎えていたはずの誕生日プレゼント代わりに買ってもいいかな、と算段をつける。
「何かしら欲しいものがあれば一緒に買うか? 随分すぎてしまったが、誕生日プレゼントも兼ねて、な」
「本当? えーっと、じゃあねぇ……」
いろいろ増える前に先手を打たなければ、と考えながら以前の思い出を振り返りながら話したりと、和やかな時間を過ごす二人だった。
ベリト・アルミラ(ka4331)は自分で調合したハーブティーや軟膏、マジックナイフや杖、簡単なアクセサリーなどを出店していた。
サイズは小ぶりだが煮炊きにも使えるという触れ込みの、魔女が使うような大釜なども取り扱っていたり、小枝を使った占いなどもしている店は恋の行方を占ってほしいという若い女性を中心ににぎわっていた。
「占いー、占いー、お題は見てのお帰りで」
おとり捜査として警備に参加し、わざと隙だらけの店だったが人目が多い分スリや引ったくりは近づかなかったようだ。
店の商品が捌けてからは他の人が出している店も見て回ることに。
金属製品や魔法、薬関連など面白そうなものを見つければ積極的に話しかけて購入する。
売ったもので温かくなった懐が寂しくなり過ぎない程度に買い物を楽しむベリトだった。
マルグリット・ピサン(ka4332)が開いたのはクレープの屋台。
警備を兼ねているので周りを広く見渡せる場所を提供してもらった。
客人がやってくればオーダーに合わせてクレープを焼いていく。にこやかな対応に甘いものが好きな女性や子供が次々とやってきた。
「落とさないように気を付けてくださいね」
それとなく怪しい人がいないかも聞きこんで、軽食が欲しいという客人にはハンター仲間の月羽が開いている屋台を勧める。
「リアルブルーの、おでんという珍しい食べ物が頂けるようなのでオススメです」
礼を言って立ち去る客を笑顔で見送り、一段落ついたら他のハンターに差し入れるクレープを持って情報収集へ。
「おでん、は初めて食べましたが……具材に味がしみ込んでいてとても美味しいですね。優しい感じがします」
「シーズンは冬なんだけどね。昔バイトでやってたんだ、おでん屋。何人か勧められてきたって聞いたけど宣伝してくれたの?」
「えぇ。店に戻って聞かれた時、食べてきたから美味しかったと付け加えますね」
「太鼓判を押してくれるってことか。有難いね」
そんな会話をして月羽の屋台を去った後、一通り警備もかねてフリーマーケットを巡回していくのだった。
「こういったことはしたことがないのですが、とても楽しそうなのですよ♪
せっかくなので楽しみたいです……嫌な思い出にはしたくないのです。そのためにも頑張らねば!」 意気込むシャルア・レイセンファード(ka4359)は似顔絵描きの店を出店していた。
大人から子供まで楽しんでもらえるように値段設定は低めで、デフォルメ気味の似顔絵を描いていく。
描きながら会話をすることで待つ時間が苦にならないように工夫し、コミュニケーションを取りながらそれとなく情報収集する。
「わ、賑わってますね!」
明日奈と十夜がやってきて声をかけるとシャルアは嬉しそうに笑いかけた。
「お二人のこともお描きしましょうか?」
「とおくん、描いてもらおうよ! 誕生日プレゼント、これがいいな」
「わ、わかった。気を付けることとかあるのかな?」
「楽にしてくださって大丈夫ですよー。
む、お誕生日プレゼントです? では、うーんと可愛くて綺麗なものを描かねば!」
張り切って描きだすシャルアと会話をしている内に、十夜の緊張も解けてきたようで。
「なにかトラブルとか、ありました?」
「行きあったハンターの人には聞いたけど、実際には目にしてないかな、ねえ、とおくん?」
「そうだな……犯罪は少ないに越したことはないけど」
「そうですねぇ。……はい、お待たせしました、できましたよー!」
「わぁ、可愛い! 有難う!」
「どういたしましてなのです」
朗らかに二人を見送った後、入れ違いにやってきたルカにも声をかける。
「あ、ルカさーん! ルカさんもどーです?」
「そうだね、じゃあ、折角だから。あぁ、これ差し入れ。客足が落ち着いた時にでもどうぞ。冷めてもおいしいって聞いたから……多分美味しいんじゃないかな」
僕の味覚は当てにならないけど、賑わってる店のだったし、と焼き菓子が入っているらしい包みを差し出すルカにシャルアは礼を言うと張り切って描き始めた。
「お祭りってその場にいるだけで気分が沸き立つから不思議ですよねー。楽しい依頼の斡旋、有難うございますですよ」
「僕は斡旋しただけだよ。お礼はハンターに警備を任せるって決めた主催の人に言ってくれるかい?」
「じゃあ後でご挨拶に行ってきますね」
そんな雑談をしながら仕上げた似顔絵をルカに手渡し、代金を受け取る。
「差し入れ、有難うございました」
「うん、お店頑張って。描きすぎて手を痛めないようにね」
「気をつけますですよー」
幸いにもフリーマーケットを中断しなければいけないような大規模の騒動は怒らず、犯罪の芽はハンターたちが摘み取ったのが全てだったようで被害報告などもなく。
自業自得の犯人以外は平穏無事にフリーマーケットでの一日を満喫したのだった。
依頼結果
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相・談! ドミノ・ウィル(ka0208) ドワーフ|20才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/04/16 17:52:15 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/15 21:28:44 |