ゲスト
(ka0000)
【不動】愚者の盲進
マスター:蒼かなた

- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~25人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/04/16 07:30
- 完成日
- 2015/04/24 06:17
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●愚者は歩みを止めず
数日前、開拓地『ホープ』の東部に現れた歪虚の撃退依頼が出た。
結果は先行した部族の戦士が数名死亡、怪我人多数。その後編成されたハンター達によって討伐された。
しかし、その時リーダー格であった一体には逃げられてしまっていた。取り巻きは全て倒し、たった一体であればおいそれと行動は起こすまいと思われていた。
だが、その呪う巨人――フルーホはその辺の怠惰の歪虚よりは少し働き者だったようだ。
土色の広大な荒野。そこに点在している小規模な林。そこには数匹のゴブリン達がねぐらとして使っていた。
日々適当なその日暮らしをしていたゴブリン達だったが、今日は、いや今日からそれを捨てることとなった。
ゴブリン達を見下ろす赤い眼窩。襤褸切れを纏った巨人が他に数匹の巨人を連れ彼らの前に現れた。
『シタガエ』
その一声は抗いようがなく、断れば自分達がどうなるかは深く考えないでもすぐに察することが出来た。
こうして愚者は群れを成す。己を傷つけた人間達への復讐のために。
●思わぬ襲撃
開拓地『ホープ』の中央に設置された仮設住居に緊急の無線が飛び込んできた。
「歪虚の襲撃だと? どういうことだ!」
聖地奪還への作戦を進める中でのホープへの襲撃。青天の霹靂とはまさにこの事だろう。
敵が現れたのはホープの東、そこにある林の中から突然現れたらしい。
「敵の規模は!」
「巨人が10体ほど、あと先頭に小型の影が多数。恐らくゴブリンと思われます!」
「ちっ、どこから湧いて出たんだっ」
どうやって周囲の警戒網を突破したのか。聖地奪還に人員を割いたことで穴が空いたのかも知れない。
何れにせよ脅威はすぐ目の前まで迫っていることは確かだ。
「CAMと魔導アーマーは?」
「聖地奪還の作戦でフル稼働中です。今ここにあるのは修理中のものばかりです」
「ちっ、流石に無理か」
男は苦虫を潰したような顔をして考える。
「一体でもいいから動かせるものはないのか!」
「撃滅戦で使用した旧式のものならあります。ですが燃料を抜いていて起動まで時間が……」
「すぐに補給しろ! 1秒でも早く動かせ!」
命令を受けた男は敬礼をするとすぐに旧式の機甲兵器のある格納庫へと連絡をいれる。
「至急ハンターに緊急招集をかけろ。迎撃を任せる。時間を稼ぐんだ!」
CAM実験場が俄かに騒がしくなってきた。
数日前、開拓地『ホープ』の東部に現れた歪虚の撃退依頼が出た。
結果は先行した部族の戦士が数名死亡、怪我人多数。その後編成されたハンター達によって討伐された。
しかし、その時リーダー格であった一体には逃げられてしまっていた。取り巻きは全て倒し、たった一体であればおいそれと行動は起こすまいと思われていた。
だが、その呪う巨人――フルーホはその辺の怠惰の歪虚よりは少し働き者だったようだ。
土色の広大な荒野。そこに点在している小規模な林。そこには数匹のゴブリン達がねぐらとして使っていた。
日々適当なその日暮らしをしていたゴブリン達だったが、今日は、いや今日からそれを捨てることとなった。
ゴブリン達を見下ろす赤い眼窩。襤褸切れを纏った巨人が他に数匹の巨人を連れ彼らの前に現れた。
『シタガエ』
その一声は抗いようがなく、断れば自分達がどうなるかは深く考えないでもすぐに察することが出来た。
こうして愚者は群れを成す。己を傷つけた人間達への復讐のために。
●思わぬ襲撃
開拓地『ホープ』の中央に設置された仮設住居に緊急の無線が飛び込んできた。
「歪虚の襲撃だと? どういうことだ!」
聖地奪還への作戦を進める中でのホープへの襲撃。青天の霹靂とはまさにこの事だろう。
敵が現れたのはホープの東、そこにある林の中から突然現れたらしい。
「敵の規模は!」
「巨人が10体ほど、あと先頭に小型の影が多数。恐らくゴブリンと思われます!」
「ちっ、どこから湧いて出たんだっ」
どうやって周囲の警戒網を突破したのか。聖地奪還に人員を割いたことで穴が空いたのかも知れない。
何れにせよ脅威はすぐ目の前まで迫っていることは確かだ。
「CAMと魔導アーマーは?」
「聖地奪還の作戦でフル稼働中です。今ここにあるのは修理中のものばかりです」
「ちっ、流石に無理か」
男は苦虫を潰したような顔をして考える。
「一体でもいいから動かせるものはないのか!」
「撃滅戦で使用した旧式のものならあります。ですが燃料を抜いていて起動まで時間が……」
「すぐに補給しろ! 1秒でも早く動かせ!」
命令を受けた男は敬礼をするとすぐに旧式の機甲兵器のある格納庫へと連絡をいれる。
「至急ハンターに緊急招集をかけろ。迎撃を任せる。時間を稼ぐんだ!」
CAM実験場が俄かに騒がしくなってきた。
リプレイ本文
●激突
ホープへの歪虚の襲撃。その緊急事態に防衛に当たっていた司令官は直ちにハンター達を緊急招集をかけた。
集まった人数は25人。敵の規模に対して明らかに人手が不足している。
だがこれだけしか集まらなかった以上それで当たるしかない。
CAMによる支援は10分後。それまでの間敵軍を押し留める。それがハンター達に課せられた仕事だ。
荒野の向こうで土煙が上がっている。そこには大小さまざまな大きさの異形の集団が蠢いていた。
「……CAMが来る迄の時間稼ぎか」
迫り来る歪虚の群れを一瞥しアバルト・ジンツァー(ka0895)は思わず声を漏らす。
その隣でセレン・コウヅキ(ka0153)は身の丈を超える弓を構え弦を引き絞る。
「少し遠いですが……問題ありませんね」
その一声と共にハンター達が構える陣地から数本の矢が飛ぶ。距離は100メートル近い。だが、群れておりしかも通常では考えられないくらい大きな的もある。そこに放てばまず外れることはない。
先頭を走る数匹のゴブリンが転倒し、後ろに続く群れの中へと消えていくのが見えた。
「まずは鴨撃ち。順調だね」
長射程を誇る和弓に矢を番えながら鵤(ka3319)は次の目標に狙いをつける。2射、3射と掃射が行われたところでその突撃を受け止めるべくハンター達が動き出す。
「開戦です。皆さん、突撃ですわ!」
イレス・アーティーアート(ka4301)の号令の下、数人の騎乗のハンター達と大地をその足で走るハンター達がそれに続く。
接敵までは数十秒。それまでの間に数本の矢と弾丸が敵の前衛を撃ち抜いていく。
「ぶつかり合う前にあと一射、いかせて頂きます!」
人と歪虚がぶつかる寸前まで静架(ka0387)は巨人に向けて矢を射る。それを受けた1体のゲブリュルがつんのめる様にして足を止めた。他の射手達の放つ矢も巨人達に届き何体かのその足を止めて見せた。
そして一部突出した歪虚達とハンター達がついに激突する。
「私がゴミ虫のように踏み潰される前にほんの僅かにでもお仕事を致しましょう」
馬上から紅色の大身槍を振るうニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)がゴブリンを串刺しにし、すぐに手綱を引いて右翼側へと突き抜けていく。
それに続くイレスもまた匠な馬捌きでゴブリンを弾き飛ばし、振るったグレイブがゴブリンの片腕を跳ねる。
「オラどうしたぁ! そんなんで『希望』に辿り着けると思ってんのか?」
騎兵の突撃に怯んだそこにボルディア・コンフラムス(ka0796)が斬り込む。大上段から振り下ろした戦斧をゴブリンは石斧で受け止めようとするが、そんなことは数瞬も許さずその柄を両断しゴブリンの頭をかち割る。
そんな斧を振り下ろし動きが止まったボルディアに別のゴブリンが槍を突き出そうとするが、それよりも早くその胴体を高速回転する尖角が抉った。
サントール・アスカ(ka2820)はドリルに突き刺さったゴブリンを蹴り飛ばすことで引き抜くとボルディアに視線だけを向ける。
「この戦場で立ち止まることは危険なようだ」
「ああ、そのようだなぁ。あとサンキュー!」
戦斧を構えなおしたボルディアはサントールを追い抜くようにして次のゴブリンへ向かう。
「激突。行くなら今ですねえ」
馬上のマッシュ・アクラシス(ka0771)はサーベルを抜き、歪虚の群れの側面へと回りこみ突撃を開始する。
『ギイィ!?』
突如横腹を切り裂かれたゴブリンは、さらに後続から迫ってきた馬の蹄にその顔面を踏み潰される。
「おーい、マッシュちゃん待ってよー」
マッシュの背後に着くメオ・C・ウィスタリア(ka3988)は駆ける馬上で抱えた戦斧を軽く振るうとゴブリンが1体宙に舞い上がった。
その光景を眺めるエヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)はこれが神々の戦いに似たものではないかと考えに耽っていた。
「ちょっとエヴァさん、感動してないで戦って欲しいっす!」
そんなエヴァに対して神楽(ka2032)は銃の弾倉を交換しながら叫ぶ。エヴァはその言葉に声なき返事として一度だけ頷いて見せる。
エヴァの視界には40~50メートルほど先で仲間のハンター達と歪虚が戦っている。魔術師である彼女の魔法はまだ届かないと判断すると、弓を構え一際大きい的へ向けて矢を放つ。
「そうそう、削れるうちに削っておくっすよ~!」
そんな矢と銃弾が飛び交う中でモニカ(ka1736)は訝しげな表情を浮かべる。
「フルーホが見当たらないのよ」
「そういえば。他の巨人達の影にでもかくれているのかな?」
モニカの言葉に辺りを見渡したリンカ・エルネージュ(ka1840)もその視界に襤褸切れを纏っているというフルーホの姿は見受けられない。
リーダー格であるフルーホの姿が見えない。だが歪虚の群れは変わらずにその歩みを止めることはない。
考えている暇はない。今はとにかく時間を稼ぐことが先決だ。
開戦から3分。援軍の到着まであと7分。
●巨人達の猛攻
ゴブリン達の群れを抜け、真っ先に巨人の足元に辿り着いたのは上泉 澪(ka0518)だった。
「あの時の巨人ですか、また随分ぞろぞろと引き連れてきた様で……」
こちらを見下ろすオーガに向けて澪は鞘から抜刀した大太刀を横薙ぎに振るう。
分厚く硬い皮に刃がめり込み、そこから滑らせるようにして刃を引きその切れ味を最大限まで引き上げる。
黒い血飛沫が舞う。だが浅い。オーガの行動を鈍らせるには傷の深さが足りない。
オーガはぐっと姿勢を低くし地面を蹴る。まるで砲弾が放たれたかのような音と共にその巨体が突進を開始した。
「くぅっ!」
澪は太刀を構え咄嗟にそれを防ぐが次の瞬間には容易く弾き飛ばされていた。その身には車に撥ねられたかのような衝撃が走る。
オーガは澪を撥ね飛ばしてからも突進を止めずそのまま突き進む。その進路上に味方であるはずのゴブリンがいてもおかまいなしだ。
「仲間まで諸共なんて正気かこいつらは」
オーガの突進を目の当たりにしたクローディオ・シャール(ka0030)が思わず声を上げる。
その間にも巨人達は進行を止めない。眉を顰めたクローディオに目掛けてトロルが振り上げた拳を振り下ろす。
トロルはゆっくりと地面に叩きつけた拳を引き上げるが、そこにクローディオの姿はなかった。
「こっちだ!」
トロルの側面に回りこんだクローディオがその足にしなる鞭を叩きつける。そこには裂傷ができるがやはり浅い。しかもよく見てみるとその傷口は徐々に肉が盛り上がり出血はあっという間に止まってしまう。
「まだだ。もう一発!」
そこに振動刀を起動させたリュー・グランフェスト(ka2419)が走りこむ。巨人の足元で大きく踏み込み、上段に構えた振動刀を渾身の力で振り下ろした。その一撃に足首を縦に引き裂かれたトロルはバランスを崩して肩膝をつく。
「動きを止めたな。貰うぜ」
その肩膝をついたトロルに後方で弓を引き絞っていたJ・D(ka3351)が矢を放つ。真っ直ぐに飛ぶ矢はトロルのその目を貫いた。
「君も少し大人しくなって貰おうか」
オーガの突進が止まったところを狙ったアルファス(ka3312)の振動刀がその足に突き刺さる。そして突き刺さった振動刀から迸った電流がオーガの体に駆け巡る。
だがその巨体の為かその電流だけではオーガを完全に麻痺させることは叶わなかった。オーガの振るった鉄刀が地面を抉りながらアルファスの体を吹き飛ばす。
無理矢理体を動かし暴れまわるオーガに馬に跨り駆けつけたカール・フォルシアン(ka3702)が純白の機杖を向ける。
放たれたマテリアルの光がオーガの横っ面に突き刺さりオーガは蹈鞴を踏んだ。さらにその後に続くアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が起動させた振動刀を横合いに構え、馬の速度を落とさずに接近する。
「はぁっ!」
気合と共に振るった刃は速度も相まってオーガの足首を大きく切り裂いた。だがそれを行ったアルトの腕は斬った時の衝撃でビリビリと痺れる。
「硬い。石でも斬ってるみたいだ」
「皮膚が硬化してるんだと思います。ただでさえ生命力が高いのに厄介ですね」
馬を駆りながらアルトとカールは言葉を交わす。と、その時2人の視界に大きく息を吸い込む巨人の姿が移った。
「不味い! 咆哮がくるぞ!」
誰かが上げた注意の声を掻き消すように爆弾が爆発でもしたかのような轟音が周囲に轟く。肌に物理的に何かを叩きつけられている様な痛みが周囲に展開していたハンター達を襲う。
ハンター達の攻勢の手が一瞬止まる。その隙に動き出さないほど歪虚は甘くはない。
まず狙われたのは騎乗しているハンター達だった。巨人達も辺境の戦士達との戦いによりその機動力が厄介であることが分かっているのだろう。
「ごほ、華麗に散るにはまだ早い時間なのですが」
ゲブリュルの石斧を叩きつけられ落馬したニャンゴは咳き込みながら追撃を交わす。すぐさま駆け寄ってきた自分の馬に飛び乗るが、ゲブリュルはまた力を溜める動作に入っていた。
「連発とは礼儀がなってないんじゃないか!」
そのゲブリュルに向けて紫月・海斗(ka0788)がライフルの引き金を引く。さらに他の後方で射撃を行っていたハンター達もそれに加わった。
ゲブリュルはその砲火を受け咆哮を上げるのを中断する。だがその他の2匹は構わず大声で天に向かって咆えた。そこにトロルとオーガがハンター達を蹂躙しにかかる。
「大丈夫か? すぐに治す」
「サンキュー。じゃあ、いっちょ仕返ししちゃうよ」
那月 蛍人(ka1083)の治療を受けたメオは馬の手綱を握りゲブリュルに向けて駆ける。
「オーケー。それなら加勢する」
蛍人の放った光弾がゲブリュルの頭に迫るが、ゲブリュルはそれを石斧を掲げて受け止めた。
「ぶった斬るよー!」
そこに走る馬から飛び上がったメオがゲブリュルの脇腹に戦斧で抉る。確かな手応えと共に傷つけた脇腹から黒い液体が溢れ出る。
メオのほうは地面に着地するとすぐに駆け寄ってきた馬に跨り、Uターン今度はその膝裏に戦斧を叩き込み膝をつかせる。
「もっと援護を! ここで崩されたら突破されるの!」
リンカの杖から放たれる炎の矢が一体のオーガの胸元で炸裂する。それに合わせる様にしてその両足を澪とリューの2人が斬り裂いて歩みを止めさせる。
「これ以上ホープを土足で踏み荒らされて、たまるかぁっ!」
動きの止まったオーガの正面に立ったクレール(ka0586)の機杖にマテリアルを充填される。収束された光は破壊のエネルギーに変換され放たれた。肩を撃ち抜かれたオーガがその手に持っていた鉄刀を取り落とした。
だがオーガは落とした武器には目もくれず、目の前にいるクレールに向けて突進する。地面を踏み鳴らし自分を引き潰そうと迫った巨体をクレールは横っ飛びになってなんとかその軌道から退避する。
「危ないところだった……ん?」
思わずことばの出たクレールの視界の端に何かが移った。それはこの戦場に来てからは初めてみる汚れた布のはためき。
襤褸切れを纏った他とは違う一回り小さな体。だがその歪虚から放たれる気配はこの戦場の中では一番凶悪なものだった。何故今まで気づかなかったのかと不思議になるほどだ。
そしてその巨人――フルーホは襤褸切れの隙間から伸びる手に持つ杖をハンター達へと向けた。
『ノロワレロ』
束縛の呪いの言葉が告げられ。向けられた杖の先にいたのは馬を駆るマッシュ。その体は突然鎖にでも縛られたかのように重くなり、身動きが取れなくなる。
「っ! ぐあっ!?」
体が硬直しバランスを取れなくなったマッシュは走る馬上から滑り落ちる。受身も取れず地面に強か体を打ちつけ、そのまま数メートル転がる。
フルーホはそれだけでは止まらず、馬を駆るハンター達を狙い撃ちするように杖で示し呪いの言葉を吐いていく。
「動かないでください」
落馬したマッシュの元にマナ・ブライト(ka4268)が駆け寄って治癒魔法をかける。
「いやはや、どうやら肩がイッたようで」
「大丈夫です。折れてはいません、外れているようなので戻しますよ!」
言うや否やマナがマッシュの腕を持ち上げるとマッシュの肩から骨が嵌る音が聞こえた。
「つぅっ! これは、ご親切にどうも」
マッシュが戦場を見渡すと先ほどまで走り回っていた仲間の騎兵の姿がない。そして戦線が段々と押し込まれているのが分かる。
「どうやらゆっくりしている暇はないようですねぇ」
マッシュの言葉通り、フルーホの登場によって形勢はかなり不利な方向に傾いていた。
ゲブリュルの咆哮により接近戦を仕掛けているハンター達は攻めるタイミングを潰され、厄介だと判断された者にはフルーホの呪いが飛んでくる。
戦いが始まり7分が経過。援軍の到着まであと3分。しかし、その残り3分は遥か遠くのことに感じられた。
●愚者の嘲りと人の意地
歪虚達の盲進は止まらない。ハンター達はじりじりと防衛線を押し下げられ、ついには敷地に並ぶコンテナの手前まで接近を許してしまっていた。
「うざいっ。雑魚はさっさと寝てろぉ!」
ボルディアの一撃がゴブリンの肩から腹部までを袈裟斬りにする。
数は既に半数以下になったゴブリン達だったがその勢いは衰えずハンター達に襲い掛かる。
そこで突如ゴブリン達の視界に霧が掛かった。それに驚いているうちにゴブリン達は突然地面に倒れていく。
周囲の仲間が何故か倒れる状況に無事だったゴブリンはうろたえて周囲を見渡す。その一瞬の隙にサントールはまだ立っているそのゴブリンの胸にドリルを捻じ込んだ。
「ナイス援護。やりやすくなった」
サントールが一瞬視線を向けた先には杖を片手にしたエヴァの姿があった。彼女が杖を振るうと青白い霧がこちらに走ってきていたゴブリン達を包み、すぐに何かが地面に倒れる音が聞こえてくる。
「取りこぼしのないように」
その霧から1体だけ出てきたゴブリンも鵤の拳銃から放たれた銃弾によって胸を撃たれその場でひっくり返った。
『ウゴクナ』
そこに呪いの言葉が耳に届く。狙われたのはエヴァだった。エヴァの体は突然縛り付けられ、振るおうとしていた杖を地面に落とす。
「そこですかっ」
姿を見せたフルーホに静架が銃を構える。しかしフルーホはすぐに他の巨人達の背に隠れその姿を消す。
「無駄に頭の切れる巨人だな」
フルーホの動きはまさにヒット&アウェイ。一撃を与えたらすぐに仲間の背に隠れる為にこちらの攻撃が通らない。
フルーホの力の特性を考えれば非常に有効な戦い方だ。それゆえに忌々しい。
「ちょっと、どうするんっすか。ゴブ共ももう目の前まできちゃってるっすよ」
ゴブリンを斬った剣の血を払いながら神楽が仲間に問う。しかしその問いには1つの答えしか残されていない。
「ここを死守する。それ以外にないだろう」
そう言いながら鵤は起き上がろうとしていたゴブリンに数発の弾丸を浴びせた。
「こいつら、動きが良くなってきてないか?」
「俺も丁度それ言おうとしてました」
海斗の言葉に蛍人が頷いて返す。海斗の言う通り巨人達は猛攻を繰り返すのではなく僅かながら連携しているように見える。
それが群れのリーダーであるフルーホの仕業か、それとも単にハンター達とのこの戦いに慣れつつあるのかは分からないが何れにせよ事態は不味い方へと傾いていた。
「ここは1つ仕掛けるしかないかな?」
「どう仕掛ける?」
アルトの発言にクローディオが訪ねる。
「群れの統率を乱すならリーダーを狙うのが一番ですよね」
その場にいたカールがそう告げる。それは確かにそうだが、その狙うべきリーダーは敵陣の後ろに隠れ狙うことが出来ない。
「ならば突破し攻めるしかありませんね」
その案に尻込みすることなくイレスは賛同の意を示した。このままでは機甲兵器が到着するまで持ちこたえられない。ならば、やるしかない。ハンター達は決意を固めた。
「さあ、道を開けてもらいますわ!」
イレスが騎兵達の先頭を駆ける。その前方を塞ぐようにして現れたオーガにイレスは速度を緩めることなく突貫した。構えたグレイブを脇でしっかり抑えオーガの首を狙う。
対するオーガは鉄刀を振るう。ぶつかり合った両者の武器は跳ね上げられ、イレスに至っては馬上から投げ出されてしまう。
「止まるなぁっ!」
怒号を上げたのはリューだった。武器を跳ね上げられたオーガに飛び掛り、その武器を持つ腕を振動刀で斬りつける。
その隙に騎兵は駆ける。さらに目の前を塞ぐのはトロル、そしてゲブリュル。
「死地へと旅路。お助けします」
そう言ってニャンゴは馬の走る速度を上げる。構えた槍は殺す為ではなく道を開くため。であれば体制を崩すことこそ使命。
トロルの振るう拳を掻い潜り、ニャンゴの赤い槍が敵の膝に深々と突き刺さった。
「不味い、ゲブリュルが咆えるぞ!」
見ればゲブリュルがまた咆哮をする構えを取っている。馬の速さを持ってしても発動までに接近することもままならない。今まで幾度も攻撃の機会を潰されていたその声に一同は身構える。
「やらせはせんよ」
「ええ、皆の邪魔はさせません」
アバルトとセレン、2人の放った矢と弾丸がゲブリュルの体を貫く。
「もう1つ!」
さらにリンカの放った風の刃が走る。喉元を狙ったそれは当たれば確実にゲブリュルの咆哮を潰せるはず。
だが、次の瞬間にその風の刃は突然現れた手に阻まれ、その腕を深く斬りつけて霧散した。手前にいたトロルがゲブリュルを庇うように腕を伸ばしたのだ。
「そんなっ!」
悲痛の声が漏れる。だがまだ連携は続いていた。
「絶対に負けない! 負けて堪るか!」
自分への、そして仲間への喝と共にカールの放つ機導砲がゲブリュルの額を捉えた。頭を跳ね上げられたゲブリュルは後ろに一歩下がり倒れるのを免れる。
「どんな壁にも穴がある。君の穴はここだ!」
傾斜したゲブリュルの体を一足飛びで登り、アルファスはその喉元に帯電する振動刀を突き刺した。明滅する稲光を背に騎兵達はその場を突破する。
「見つけたよ、フルーホ!」
アルトはその視界にフルーホを捉えた。今まさにこちらに杖を向けるその姿を。
「散開!」
『ジャマダ』
アルトの叫びと共に呪いの言葉が紡がれる。逃れられなかったアルトの体は馬の上から落ち地面を転がる。
「さて、先ほどやられた分は変えさせて貰いますよ」
「よーし、行くよマッシュちゃん」
左右に分かれたマッシュとメオが挟むようにしてフルーホに迫る。どちらかは確実に武器を振るえる。そう確信した時だった。
フルーホの襤褸切れが盛り上がりそこから腕が伸ばされた。その瞬間マッシュとメオの体が馬上から急激に引き上げられフルーホの元へ引き寄せられる。
「おい、どうなってるんだ?」
それは異様な光景だった。明らかにおかしいのだ。マッシュとメオを捉えている腕が一本ずつ、だが杖を持つ腕と何も手にしていない腕がそのままそこに存在しているのだ。
「そんな、腕が四本もあるなんて」
「なんだよ。歪虚ってのはつくづくふざけた体をしてるな、おい!」
マナから治療を受けていた海斗が思わず悪態を漏らす。そこには四本の腕を晒し嫌らしく嗤うフルーホの姿があった。
「まだ! まだ終わってないのよ!」
今まさに掴んでいるマッシュを握り潰そうとしていたその腕をモニカの放った弾丸が貫く。
「そうですね。まだ終わってません」
フルーホが弾を受けた一瞬、力の緩んだ隙に掴まれた手の中から腕を引き抜きマッシュはその剣で指を切りつける。
フルーホはマッシュを取り落とし、その隙に逆の腕にいたメオも力技で手の中から抜け出す。
「脱出! あーんど仕返し!」
地面に降りたメオは戦斧を構えて突撃する。その一撃はフルーホの杖に防がれるが、その隙に後ろに回ったマッシュがフルーホの脹脛を斬りつけた。
『オノレェ!』
怒りの声をあげるフルーホ。それに呼応するように1体のゲブリュルがフルーホの元に向かおうとする。
だが背中に激しい痛みを覚え、ゲブリュルは思わず振り返った。
「行かせませんよ。彼方の相手は私です」
片手に大太刀を片手に黒い手裏剣を手にした澪はそう宣言する。ゲブリュルはそれに怒号を上げて答えた。
援軍の到着まで残り1分。
●援軍と敗走
「勇敢なる戦士に光の輝きを!」
マナの唱えた詠唱が完了すると同時にサントールの体に輝きが宿る。そして放たれるゲブリュルの咆哮。それを受け、耐え切ったサントールはより多く傷ついている足に向けてドリルを叩き込む。
「ヒールは打ち止め、というよりスキルは全部尽きました」
「奇遇だな。俺もだ!」
蛍人の言葉に額から流れる血を拭ったリューがそう返した。
ハンター達の大半はスキルも尽き、只管に巨人達を押さえ込むことだけに専念していた。
体はまだ動く、しかしこれ以上は敵の進攻を留めきれない状況になっていた。
「援軍はどうした。もう10分経ったんじゃないのか?」
援軍の到着時刻を過ぎたがまだその影はない。アバルトは近づくゴブリンを見つけ素早く撃ち抜く。
「もう少し! もう少し踏ん張れば、きっと……!」
モニカが祈るようにして言葉を搾り出す。後ろを振り返ってもまだ機甲兵器の姿は見えない。
「まずい、そっちに行った!」
その声に振り返ると、鉄刀を振り回すオーガが迫っていた。
だが次の瞬間。そのオーガの胸元は破裂した。そして遅れて何かの炸裂音が遠くから聞こえてくる。
『遅れてすまない。これから支援射撃を開始する』
誰かの無線機から大人びた声が聞こえてくる。それと同時に胸部を失ったオーガの傍にいたトロルの右腕が吹き飛んだ。
モニカがもう一度後ろに振り返ると。その不安げな表情はすぐに笑みへと変わった。
「やっと来たっす。遅いんっすよ!」
『申し訳ない。遅れた分はこれから取り戻す』
神楽も文句に今度は別の声、若い男が答える。そしてコンテナを飛び越え、スラスターを吹かせながら地面に着地した青い巨人――CAMはその銃口を目の前に立ちはだかる歪虚達に向けた。
これまでゲブリュルの上げていた咆哮以上に強烈で、頼もしい爆音のような銃声が戦場に鳴り響く。
CAMの参戦により戦況は一気にひっくり返った。ばらまかれるアサルトライフルと正確無比なスナイパーライフルの銃弾が次々に巨人達を食い破っていく。
そしてその空気を逸早く察したフルーホは周囲に集まるハンター達を無視して踵を返す。
「おいおい、ここに来てにげるのか?」
その姿を見てJは目を細める。
「戦況を不利と悟ったんでしょうね。ある意味賢い」
静架の言う通り歪虚達の敗色は濃厚。となれば敗走するのも手のうちだろう。
そしてそんなリーダーを逃がすためなのか、他の巨人達は後ろに振り返りもせずハンターとCAMに襲い掛かってくる。
「まてーい、逃がさないよー」
『クルナ』
「あっ、ずるっ。卑怯だぞー」
追いすがろうとしたメオにフルーホはすかさず呪いを放つ。メオはそれをまともに受け落馬してしまう。
だがその隙にフルーホの元に辿り着いたマッシュがその足を斬る。だが逃げるその足は止まらない。
「勝手に土足で踏み荒らしておいて、このまま逃がしはしない!」
クレールは残り僅かな体内のマテリアルを集め、逃げるフルーホの足に機導砲を当てる。
それを煩わしく思ったのか、フルーホは上半身だけで振り返りフルーホに手のひらを向けた。次の瞬間にはクレールの体は宙に浮き、フルーホの元へと引き寄せられる。
「こ、のぉ! 舐めるな!」
だがそのバランスとれない中でクレールは再度マテリアルを集める。なけなしの、本当に最後の一発だ。
「撃ち抜けぇ!」
放たれた光線は狙ってかそれとも偶然か。もっとも柔らかい部位であろうフルーホの左目に突き刺さった。
顔を片手で押さえ苦しむフルーホ。吸い寄せられる途中でそれを解除されたクレールはそのまま落ち勢いのまま地面を転がる。
『オォォ、ユルサン。ユルサンゾォ!』
フルーホが咆える。だが、理性を失ったわけではないのか直ぐに背を向けると一目散に荒野の向こうへと走り出す。
「逃がしてしまいましたか」
「そのようですね。ですがまだ敵は残っています。そちらをまず片付けましょう」
セレンは視界の向こうで小さくなって行くフルーホの姿を見送る。その横に立った澪はまだ武器を収めず、この場に残った巨人達へと刃を向けた。
数分後、CAMの援護もあり歪虚達は一掃された。
コンテナに多少の傷はついたものの目立った被害はなし。作戦は成功といえる。
しかし、二度に渡りホープへ攻撃を仕掛けてきたフルーホの逃走を許してしまった。
聖地奪還の作戦はまだ続く。その間にもしかするとまた……一条の不安を抱きながらもハンター達は今この時の勝利に喜び称えあった。
ホープへの歪虚の襲撃。その緊急事態に防衛に当たっていた司令官は直ちにハンター達を緊急招集をかけた。
集まった人数は25人。敵の規模に対して明らかに人手が不足している。
だがこれだけしか集まらなかった以上それで当たるしかない。
CAMによる支援は10分後。それまでの間敵軍を押し留める。それがハンター達に課せられた仕事だ。
荒野の向こうで土煙が上がっている。そこには大小さまざまな大きさの異形の集団が蠢いていた。
「……CAMが来る迄の時間稼ぎか」
迫り来る歪虚の群れを一瞥しアバルト・ジンツァー(ka0895)は思わず声を漏らす。
その隣でセレン・コウヅキ(ka0153)は身の丈を超える弓を構え弦を引き絞る。
「少し遠いですが……問題ありませんね」
その一声と共にハンター達が構える陣地から数本の矢が飛ぶ。距離は100メートル近い。だが、群れておりしかも通常では考えられないくらい大きな的もある。そこに放てばまず外れることはない。
先頭を走る数匹のゴブリンが転倒し、後ろに続く群れの中へと消えていくのが見えた。
「まずは鴨撃ち。順調だね」
長射程を誇る和弓に矢を番えながら鵤(ka3319)は次の目標に狙いをつける。2射、3射と掃射が行われたところでその突撃を受け止めるべくハンター達が動き出す。
「開戦です。皆さん、突撃ですわ!」
イレス・アーティーアート(ka4301)の号令の下、数人の騎乗のハンター達と大地をその足で走るハンター達がそれに続く。
接敵までは数十秒。それまでの間に数本の矢と弾丸が敵の前衛を撃ち抜いていく。
「ぶつかり合う前にあと一射、いかせて頂きます!」
人と歪虚がぶつかる寸前まで静架(ka0387)は巨人に向けて矢を射る。それを受けた1体のゲブリュルがつんのめる様にして足を止めた。他の射手達の放つ矢も巨人達に届き何体かのその足を止めて見せた。
そして一部突出した歪虚達とハンター達がついに激突する。
「私がゴミ虫のように踏み潰される前にほんの僅かにでもお仕事を致しましょう」
馬上から紅色の大身槍を振るうニャンゴ・ニャンゴ(ka1590)がゴブリンを串刺しにし、すぐに手綱を引いて右翼側へと突き抜けていく。
それに続くイレスもまた匠な馬捌きでゴブリンを弾き飛ばし、振るったグレイブがゴブリンの片腕を跳ねる。
「オラどうしたぁ! そんなんで『希望』に辿り着けると思ってんのか?」
騎兵の突撃に怯んだそこにボルディア・コンフラムス(ka0796)が斬り込む。大上段から振り下ろした戦斧をゴブリンは石斧で受け止めようとするが、そんなことは数瞬も許さずその柄を両断しゴブリンの頭をかち割る。
そんな斧を振り下ろし動きが止まったボルディアに別のゴブリンが槍を突き出そうとするが、それよりも早くその胴体を高速回転する尖角が抉った。
サントール・アスカ(ka2820)はドリルに突き刺さったゴブリンを蹴り飛ばすことで引き抜くとボルディアに視線だけを向ける。
「この戦場で立ち止まることは危険なようだ」
「ああ、そのようだなぁ。あとサンキュー!」
戦斧を構えなおしたボルディアはサントールを追い抜くようにして次のゴブリンへ向かう。
「激突。行くなら今ですねえ」
馬上のマッシュ・アクラシス(ka0771)はサーベルを抜き、歪虚の群れの側面へと回りこみ突撃を開始する。
『ギイィ!?』
突如横腹を切り裂かれたゴブリンは、さらに後続から迫ってきた馬の蹄にその顔面を踏み潰される。
「おーい、マッシュちゃん待ってよー」
マッシュの背後に着くメオ・C・ウィスタリア(ka3988)は駆ける馬上で抱えた戦斧を軽く振るうとゴブリンが1体宙に舞い上がった。
その光景を眺めるエヴァ・A・カルブンクルス(ka0029)はこれが神々の戦いに似たものではないかと考えに耽っていた。
「ちょっとエヴァさん、感動してないで戦って欲しいっす!」
そんなエヴァに対して神楽(ka2032)は銃の弾倉を交換しながら叫ぶ。エヴァはその言葉に声なき返事として一度だけ頷いて見せる。
エヴァの視界には40~50メートルほど先で仲間のハンター達と歪虚が戦っている。魔術師である彼女の魔法はまだ届かないと判断すると、弓を構え一際大きい的へ向けて矢を放つ。
「そうそう、削れるうちに削っておくっすよ~!」
そんな矢と銃弾が飛び交う中でモニカ(ka1736)は訝しげな表情を浮かべる。
「フルーホが見当たらないのよ」
「そういえば。他の巨人達の影にでもかくれているのかな?」
モニカの言葉に辺りを見渡したリンカ・エルネージュ(ka1840)もその視界に襤褸切れを纏っているというフルーホの姿は見受けられない。
リーダー格であるフルーホの姿が見えない。だが歪虚の群れは変わらずにその歩みを止めることはない。
考えている暇はない。今はとにかく時間を稼ぐことが先決だ。
開戦から3分。援軍の到着まであと7分。
●巨人達の猛攻
ゴブリン達の群れを抜け、真っ先に巨人の足元に辿り着いたのは上泉 澪(ka0518)だった。
「あの時の巨人ですか、また随分ぞろぞろと引き連れてきた様で……」
こちらを見下ろすオーガに向けて澪は鞘から抜刀した大太刀を横薙ぎに振るう。
分厚く硬い皮に刃がめり込み、そこから滑らせるようにして刃を引きその切れ味を最大限まで引き上げる。
黒い血飛沫が舞う。だが浅い。オーガの行動を鈍らせるには傷の深さが足りない。
オーガはぐっと姿勢を低くし地面を蹴る。まるで砲弾が放たれたかのような音と共にその巨体が突進を開始した。
「くぅっ!」
澪は太刀を構え咄嗟にそれを防ぐが次の瞬間には容易く弾き飛ばされていた。その身には車に撥ねられたかのような衝撃が走る。
オーガは澪を撥ね飛ばしてからも突進を止めずそのまま突き進む。その進路上に味方であるはずのゴブリンがいてもおかまいなしだ。
「仲間まで諸共なんて正気かこいつらは」
オーガの突進を目の当たりにしたクローディオ・シャール(ka0030)が思わず声を上げる。
その間にも巨人達は進行を止めない。眉を顰めたクローディオに目掛けてトロルが振り上げた拳を振り下ろす。
トロルはゆっくりと地面に叩きつけた拳を引き上げるが、そこにクローディオの姿はなかった。
「こっちだ!」
トロルの側面に回りこんだクローディオがその足にしなる鞭を叩きつける。そこには裂傷ができるがやはり浅い。しかもよく見てみるとその傷口は徐々に肉が盛り上がり出血はあっという間に止まってしまう。
「まだだ。もう一発!」
そこに振動刀を起動させたリュー・グランフェスト(ka2419)が走りこむ。巨人の足元で大きく踏み込み、上段に構えた振動刀を渾身の力で振り下ろした。その一撃に足首を縦に引き裂かれたトロルはバランスを崩して肩膝をつく。
「動きを止めたな。貰うぜ」
その肩膝をついたトロルに後方で弓を引き絞っていたJ・D(ka3351)が矢を放つ。真っ直ぐに飛ぶ矢はトロルのその目を貫いた。
「君も少し大人しくなって貰おうか」
オーガの突進が止まったところを狙ったアルファス(ka3312)の振動刀がその足に突き刺さる。そして突き刺さった振動刀から迸った電流がオーガの体に駆け巡る。
だがその巨体の為かその電流だけではオーガを完全に麻痺させることは叶わなかった。オーガの振るった鉄刀が地面を抉りながらアルファスの体を吹き飛ばす。
無理矢理体を動かし暴れまわるオーガに馬に跨り駆けつけたカール・フォルシアン(ka3702)が純白の機杖を向ける。
放たれたマテリアルの光がオーガの横っ面に突き刺さりオーガは蹈鞴を踏んだ。さらにその後に続くアルト・ヴァレンティーニ(ka3109)が起動させた振動刀を横合いに構え、馬の速度を落とさずに接近する。
「はぁっ!」
気合と共に振るった刃は速度も相まってオーガの足首を大きく切り裂いた。だがそれを行ったアルトの腕は斬った時の衝撃でビリビリと痺れる。
「硬い。石でも斬ってるみたいだ」
「皮膚が硬化してるんだと思います。ただでさえ生命力が高いのに厄介ですね」
馬を駆りながらアルトとカールは言葉を交わす。と、その時2人の視界に大きく息を吸い込む巨人の姿が移った。
「不味い! 咆哮がくるぞ!」
誰かが上げた注意の声を掻き消すように爆弾が爆発でもしたかのような轟音が周囲に轟く。肌に物理的に何かを叩きつけられている様な痛みが周囲に展開していたハンター達を襲う。
ハンター達の攻勢の手が一瞬止まる。その隙に動き出さないほど歪虚は甘くはない。
まず狙われたのは騎乗しているハンター達だった。巨人達も辺境の戦士達との戦いによりその機動力が厄介であることが分かっているのだろう。
「ごほ、華麗に散るにはまだ早い時間なのですが」
ゲブリュルの石斧を叩きつけられ落馬したニャンゴは咳き込みながら追撃を交わす。すぐさま駆け寄ってきた自分の馬に飛び乗るが、ゲブリュルはまた力を溜める動作に入っていた。
「連発とは礼儀がなってないんじゃないか!」
そのゲブリュルに向けて紫月・海斗(ka0788)がライフルの引き金を引く。さらに他の後方で射撃を行っていたハンター達もそれに加わった。
ゲブリュルはその砲火を受け咆哮を上げるのを中断する。だがその他の2匹は構わず大声で天に向かって咆えた。そこにトロルとオーガがハンター達を蹂躙しにかかる。
「大丈夫か? すぐに治す」
「サンキュー。じゃあ、いっちょ仕返ししちゃうよ」
那月 蛍人(ka1083)の治療を受けたメオは馬の手綱を握りゲブリュルに向けて駆ける。
「オーケー。それなら加勢する」
蛍人の放った光弾がゲブリュルの頭に迫るが、ゲブリュルはそれを石斧を掲げて受け止めた。
「ぶった斬るよー!」
そこに走る馬から飛び上がったメオがゲブリュルの脇腹に戦斧で抉る。確かな手応えと共に傷つけた脇腹から黒い液体が溢れ出る。
メオのほうは地面に着地するとすぐに駆け寄ってきた馬に跨り、Uターン今度はその膝裏に戦斧を叩き込み膝をつかせる。
「もっと援護を! ここで崩されたら突破されるの!」
リンカの杖から放たれる炎の矢が一体のオーガの胸元で炸裂する。それに合わせる様にしてその両足を澪とリューの2人が斬り裂いて歩みを止めさせる。
「これ以上ホープを土足で踏み荒らされて、たまるかぁっ!」
動きの止まったオーガの正面に立ったクレール(ka0586)の機杖にマテリアルを充填される。収束された光は破壊のエネルギーに変換され放たれた。肩を撃ち抜かれたオーガがその手に持っていた鉄刀を取り落とした。
だがオーガは落とした武器には目もくれず、目の前にいるクレールに向けて突進する。地面を踏み鳴らし自分を引き潰そうと迫った巨体をクレールは横っ飛びになってなんとかその軌道から退避する。
「危ないところだった……ん?」
思わずことばの出たクレールの視界の端に何かが移った。それはこの戦場に来てからは初めてみる汚れた布のはためき。
襤褸切れを纏った他とは違う一回り小さな体。だがその歪虚から放たれる気配はこの戦場の中では一番凶悪なものだった。何故今まで気づかなかったのかと不思議になるほどだ。
そしてその巨人――フルーホは襤褸切れの隙間から伸びる手に持つ杖をハンター達へと向けた。
『ノロワレロ』
束縛の呪いの言葉が告げられ。向けられた杖の先にいたのは馬を駆るマッシュ。その体は突然鎖にでも縛られたかのように重くなり、身動きが取れなくなる。
「っ! ぐあっ!?」
体が硬直しバランスを取れなくなったマッシュは走る馬上から滑り落ちる。受身も取れず地面に強か体を打ちつけ、そのまま数メートル転がる。
フルーホはそれだけでは止まらず、馬を駆るハンター達を狙い撃ちするように杖で示し呪いの言葉を吐いていく。
「動かないでください」
落馬したマッシュの元にマナ・ブライト(ka4268)が駆け寄って治癒魔法をかける。
「いやはや、どうやら肩がイッたようで」
「大丈夫です。折れてはいません、外れているようなので戻しますよ!」
言うや否やマナがマッシュの腕を持ち上げるとマッシュの肩から骨が嵌る音が聞こえた。
「つぅっ! これは、ご親切にどうも」
マッシュが戦場を見渡すと先ほどまで走り回っていた仲間の騎兵の姿がない。そして戦線が段々と押し込まれているのが分かる。
「どうやらゆっくりしている暇はないようですねぇ」
マッシュの言葉通り、フルーホの登場によって形勢はかなり不利な方向に傾いていた。
ゲブリュルの咆哮により接近戦を仕掛けているハンター達は攻めるタイミングを潰され、厄介だと判断された者にはフルーホの呪いが飛んでくる。
戦いが始まり7分が経過。援軍の到着まであと3分。しかし、その残り3分は遥か遠くのことに感じられた。
●愚者の嘲りと人の意地
歪虚達の盲進は止まらない。ハンター達はじりじりと防衛線を押し下げられ、ついには敷地に並ぶコンテナの手前まで接近を許してしまっていた。
「うざいっ。雑魚はさっさと寝てろぉ!」
ボルディアの一撃がゴブリンの肩から腹部までを袈裟斬りにする。
数は既に半数以下になったゴブリン達だったがその勢いは衰えずハンター達に襲い掛かる。
そこで突如ゴブリン達の視界に霧が掛かった。それに驚いているうちにゴブリン達は突然地面に倒れていく。
周囲の仲間が何故か倒れる状況に無事だったゴブリンはうろたえて周囲を見渡す。その一瞬の隙にサントールはまだ立っているそのゴブリンの胸にドリルを捻じ込んだ。
「ナイス援護。やりやすくなった」
サントールが一瞬視線を向けた先には杖を片手にしたエヴァの姿があった。彼女が杖を振るうと青白い霧がこちらに走ってきていたゴブリン達を包み、すぐに何かが地面に倒れる音が聞こえてくる。
「取りこぼしのないように」
その霧から1体だけ出てきたゴブリンも鵤の拳銃から放たれた銃弾によって胸を撃たれその場でひっくり返った。
『ウゴクナ』
そこに呪いの言葉が耳に届く。狙われたのはエヴァだった。エヴァの体は突然縛り付けられ、振るおうとしていた杖を地面に落とす。
「そこですかっ」
姿を見せたフルーホに静架が銃を構える。しかしフルーホはすぐに他の巨人達の背に隠れその姿を消す。
「無駄に頭の切れる巨人だな」
フルーホの動きはまさにヒット&アウェイ。一撃を与えたらすぐに仲間の背に隠れる為にこちらの攻撃が通らない。
フルーホの力の特性を考えれば非常に有効な戦い方だ。それゆえに忌々しい。
「ちょっと、どうするんっすか。ゴブ共ももう目の前まできちゃってるっすよ」
ゴブリンを斬った剣の血を払いながら神楽が仲間に問う。しかしその問いには1つの答えしか残されていない。
「ここを死守する。それ以外にないだろう」
そう言いながら鵤は起き上がろうとしていたゴブリンに数発の弾丸を浴びせた。
「こいつら、動きが良くなってきてないか?」
「俺も丁度それ言おうとしてました」
海斗の言葉に蛍人が頷いて返す。海斗の言う通り巨人達は猛攻を繰り返すのではなく僅かながら連携しているように見える。
それが群れのリーダーであるフルーホの仕業か、それとも単にハンター達とのこの戦いに慣れつつあるのかは分からないが何れにせよ事態は不味い方へと傾いていた。
「ここは1つ仕掛けるしかないかな?」
「どう仕掛ける?」
アルトの発言にクローディオが訪ねる。
「群れの統率を乱すならリーダーを狙うのが一番ですよね」
その場にいたカールがそう告げる。それは確かにそうだが、その狙うべきリーダーは敵陣の後ろに隠れ狙うことが出来ない。
「ならば突破し攻めるしかありませんね」
その案に尻込みすることなくイレスは賛同の意を示した。このままでは機甲兵器が到着するまで持ちこたえられない。ならば、やるしかない。ハンター達は決意を固めた。
「さあ、道を開けてもらいますわ!」
イレスが騎兵達の先頭を駆ける。その前方を塞ぐようにして現れたオーガにイレスは速度を緩めることなく突貫した。構えたグレイブを脇でしっかり抑えオーガの首を狙う。
対するオーガは鉄刀を振るう。ぶつかり合った両者の武器は跳ね上げられ、イレスに至っては馬上から投げ出されてしまう。
「止まるなぁっ!」
怒号を上げたのはリューだった。武器を跳ね上げられたオーガに飛び掛り、その武器を持つ腕を振動刀で斬りつける。
その隙に騎兵は駆ける。さらに目の前を塞ぐのはトロル、そしてゲブリュル。
「死地へと旅路。お助けします」
そう言ってニャンゴは馬の走る速度を上げる。構えた槍は殺す為ではなく道を開くため。であれば体制を崩すことこそ使命。
トロルの振るう拳を掻い潜り、ニャンゴの赤い槍が敵の膝に深々と突き刺さった。
「不味い、ゲブリュルが咆えるぞ!」
見ればゲブリュルがまた咆哮をする構えを取っている。馬の速さを持ってしても発動までに接近することもままならない。今まで幾度も攻撃の機会を潰されていたその声に一同は身構える。
「やらせはせんよ」
「ええ、皆の邪魔はさせません」
アバルトとセレン、2人の放った矢と弾丸がゲブリュルの体を貫く。
「もう1つ!」
さらにリンカの放った風の刃が走る。喉元を狙ったそれは当たれば確実にゲブリュルの咆哮を潰せるはず。
だが、次の瞬間にその風の刃は突然現れた手に阻まれ、その腕を深く斬りつけて霧散した。手前にいたトロルがゲブリュルを庇うように腕を伸ばしたのだ。
「そんなっ!」
悲痛の声が漏れる。だがまだ連携は続いていた。
「絶対に負けない! 負けて堪るか!」
自分への、そして仲間への喝と共にカールの放つ機導砲がゲブリュルの額を捉えた。頭を跳ね上げられたゲブリュルは後ろに一歩下がり倒れるのを免れる。
「どんな壁にも穴がある。君の穴はここだ!」
傾斜したゲブリュルの体を一足飛びで登り、アルファスはその喉元に帯電する振動刀を突き刺した。明滅する稲光を背に騎兵達はその場を突破する。
「見つけたよ、フルーホ!」
アルトはその視界にフルーホを捉えた。今まさにこちらに杖を向けるその姿を。
「散開!」
『ジャマダ』
アルトの叫びと共に呪いの言葉が紡がれる。逃れられなかったアルトの体は馬の上から落ち地面を転がる。
「さて、先ほどやられた分は変えさせて貰いますよ」
「よーし、行くよマッシュちゃん」
左右に分かれたマッシュとメオが挟むようにしてフルーホに迫る。どちらかは確実に武器を振るえる。そう確信した時だった。
フルーホの襤褸切れが盛り上がりそこから腕が伸ばされた。その瞬間マッシュとメオの体が馬上から急激に引き上げられフルーホの元へ引き寄せられる。
「おい、どうなってるんだ?」
それは異様な光景だった。明らかにおかしいのだ。マッシュとメオを捉えている腕が一本ずつ、だが杖を持つ腕と何も手にしていない腕がそのままそこに存在しているのだ。
「そんな、腕が四本もあるなんて」
「なんだよ。歪虚ってのはつくづくふざけた体をしてるな、おい!」
マナから治療を受けていた海斗が思わず悪態を漏らす。そこには四本の腕を晒し嫌らしく嗤うフルーホの姿があった。
「まだ! まだ終わってないのよ!」
今まさに掴んでいるマッシュを握り潰そうとしていたその腕をモニカの放った弾丸が貫く。
「そうですね。まだ終わってません」
フルーホが弾を受けた一瞬、力の緩んだ隙に掴まれた手の中から腕を引き抜きマッシュはその剣で指を切りつける。
フルーホはマッシュを取り落とし、その隙に逆の腕にいたメオも力技で手の中から抜け出す。
「脱出! あーんど仕返し!」
地面に降りたメオは戦斧を構えて突撃する。その一撃はフルーホの杖に防がれるが、その隙に後ろに回ったマッシュがフルーホの脹脛を斬りつけた。
『オノレェ!』
怒りの声をあげるフルーホ。それに呼応するように1体のゲブリュルがフルーホの元に向かおうとする。
だが背中に激しい痛みを覚え、ゲブリュルは思わず振り返った。
「行かせませんよ。彼方の相手は私です」
片手に大太刀を片手に黒い手裏剣を手にした澪はそう宣言する。ゲブリュルはそれに怒号を上げて答えた。
援軍の到着まで残り1分。
●援軍と敗走
「勇敢なる戦士に光の輝きを!」
マナの唱えた詠唱が完了すると同時にサントールの体に輝きが宿る。そして放たれるゲブリュルの咆哮。それを受け、耐え切ったサントールはより多く傷ついている足に向けてドリルを叩き込む。
「ヒールは打ち止め、というよりスキルは全部尽きました」
「奇遇だな。俺もだ!」
蛍人の言葉に額から流れる血を拭ったリューがそう返した。
ハンター達の大半はスキルも尽き、只管に巨人達を押さえ込むことだけに専念していた。
体はまだ動く、しかしこれ以上は敵の進攻を留めきれない状況になっていた。
「援軍はどうした。もう10分経ったんじゃないのか?」
援軍の到着時刻を過ぎたがまだその影はない。アバルトは近づくゴブリンを見つけ素早く撃ち抜く。
「もう少し! もう少し踏ん張れば、きっと……!」
モニカが祈るようにして言葉を搾り出す。後ろを振り返ってもまだ機甲兵器の姿は見えない。
「まずい、そっちに行った!」
その声に振り返ると、鉄刀を振り回すオーガが迫っていた。
だが次の瞬間。そのオーガの胸元は破裂した。そして遅れて何かの炸裂音が遠くから聞こえてくる。
『遅れてすまない。これから支援射撃を開始する』
誰かの無線機から大人びた声が聞こえてくる。それと同時に胸部を失ったオーガの傍にいたトロルの右腕が吹き飛んだ。
モニカがもう一度後ろに振り返ると。その不安げな表情はすぐに笑みへと変わった。
「やっと来たっす。遅いんっすよ!」
『申し訳ない。遅れた分はこれから取り戻す』
神楽も文句に今度は別の声、若い男が答える。そしてコンテナを飛び越え、スラスターを吹かせながら地面に着地した青い巨人――CAMはその銃口を目の前に立ちはだかる歪虚達に向けた。
これまでゲブリュルの上げていた咆哮以上に強烈で、頼もしい爆音のような銃声が戦場に鳴り響く。
CAMの参戦により戦況は一気にひっくり返った。ばらまかれるアサルトライフルと正確無比なスナイパーライフルの銃弾が次々に巨人達を食い破っていく。
そしてその空気を逸早く察したフルーホは周囲に集まるハンター達を無視して踵を返す。
「おいおい、ここに来てにげるのか?」
その姿を見てJは目を細める。
「戦況を不利と悟ったんでしょうね。ある意味賢い」
静架の言う通り歪虚達の敗色は濃厚。となれば敗走するのも手のうちだろう。
そしてそんなリーダーを逃がすためなのか、他の巨人達は後ろに振り返りもせずハンターとCAMに襲い掛かってくる。
「まてーい、逃がさないよー」
『クルナ』
「あっ、ずるっ。卑怯だぞー」
追いすがろうとしたメオにフルーホはすかさず呪いを放つ。メオはそれをまともに受け落馬してしまう。
だがその隙にフルーホの元に辿り着いたマッシュがその足を斬る。だが逃げるその足は止まらない。
「勝手に土足で踏み荒らしておいて、このまま逃がしはしない!」
クレールは残り僅かな体内のマテリアルを集め、逃げるフルーホの足に機導砲を当てる。
それを煩わしく思ったのか、フルーホは上半身だけで振り返りフルーホに手のひらを向けた。次の瞬間にはクレールの体は宙に浮き、フルーホの元へと引き寄せられる。
「こ、のぉ! 舐めるな!」
だがそのバランスとれない中でクレールは再度マテリアルを集める。なけなしの、本当に最後の一発だ。
「撃ち抜けぇ!」
放たれた光線は狙ってかそれとも偶然か。もっとも柔らかい部位であろうフルーホの左目に突き刺さった。
顔を片手で押さえ苦しむフルーホ。吸い寄せられる途中でそれを解除されたクレールはそのまま落ち勢いのまま地面を転がる。
『オォォ、ユルサン。ユルサンゾォ!』
フルーホが咆える。だが、理性を失ったわけではないのか直ぐに背を向けると一目散に荒野の向こうへと走り出す。
「逃がしてしまいましたか」
「そのようですね。ですがまだ敵は残っています。そちらをまず片付けましょう」
セレンは視界の向こうで小さくなって行くフルーホの姿を見送る。その横に立った澪はまだ武器を収めず、この場に残った巨人達へと刃を向けた。
数分後、CAMの援護もあり歪虚達は一掃された。
コンテナに多少の傷はついたものの目立った被害はなし。作戦は成功といえる。
しかし、二度に渡りホープへ攻撃を仕掛けてきたフルーホの逃走を許してしまった。
聖地奪還の作戦はまだ続く。その間にもしかするとまた……一条の不安を抱きながらもハンター達は今この時の勝利に喜び称えあった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
相談卓 カール・フォルシアン(ka3702) 人間(リアルブルー)|13才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/04/16 00:24:57 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/15 09:54:30 |