ゲスト
(ka0000)
少女と決意と大プルプル
マスター:練子やきも

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/02 12:00
- 完成日
- 2015/05/10 17:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●少女の憂鬱
良く晴れた昼下がり、とある小さな村の中、それなりに大きな家に1人暮らす少女が、自称錬金部屋……酒精の匂いの漂う部屋の中で、右手の小指に嵌めた指輪を眺めながら、人間を数人茹でられそうな大きな釜の中のお酒……謎の錬金液をかき回していた。物憂げな表情のまま時々片手でポイっと放り込む謎の粉は秘伝の錬金薬、との事だが成分は秘伝なのでもちろん企業秘密。
年の頃は15才位だろうか、飾り気のないキャミソールとホットパンツ姿で、ウェーブがかかったと言えば聞こえが良い黄色く長い髪を、動きに合わせてワカメのようにユラユラ揺らしながら溜息を吐く少女。
ふと手を止めた彼女は、ゆっくり窓に向かい、部屋中に漂う酒精の匂いを撒き散らすように部屋の窓を開け放した。
小指に嵌めていた、自分の錬金術で作成されたと思い込んでいた指輪、ハンター試験を受ける理由にするつもりだった指輪を指から外し、小物入れにポイっと投げ込むと、椅子を引き寄せて、窓枠に肘をついて座った少女、エルミィは再び溜息を吐いた。
●プルプル
最初は、ただ誰かが騒いでるだけなんだろうと思った。ザワザワと騒めく通りの向こうから大きな声が聞こえる。……悲鳴?
「誰か喧嘩でもしてるのかなぁ?」
誰にともなく呟きつつ、その脚は座った椅子から立ち上がるのも億劫で、ただ静かにブラブラと揺れていた。
一際大きくなった悲鳴と共に、逃げ惑う露店のおばちゃん達を追うように、村の広場にソレが姿を現した。3メートルはあろうかという巨大な毒々しい紫と緑のシマシマ模様、向こう側が透けて見えるそれは……
「スライム!? 何で!?」
窓枠を通して見える、どこか別世界で起こっている事のような、非現実感……。だが、エルミィが呆けている間にも、その巨大スライムは歩くような速度で前進を続けている。見張りの兵士はどうしたんだろう? ……兵士や、戦える人を呼びに行くような冷静な判断ができている人は居るのだろうか?
「あっちは……施療院……」
纏まらない思考がグルグルと回り、足が震える。ひとつだけ解った事は、このまま放って置けば施療院の病人や怪我人、老人達に犠牲が……。顔見知りになった気の良いおじいさんや、足の悪いおばあさんの顔が頭に浮かび……身体が動いた。
置いてあった背負い籠にありったけの『武器』を詰め込んで、エルミィは走り出した。
「こっちに来なさい! このシマシマゼリー!」
ノコギリ、ハンマー、コップにブラシ、物干し竿に小物入れ。近寄らず、前に出ず、距離を取りながら、『武器』を投げ付ける。
どうやらこちらに狙いを定めたらしい、毒々しい色をしたスライムを、先ずは村の外へ誘き出すために、距離を取り過ぎないようゆっくりと下がる。
「……なんか水溜まり避けて動いてる?」
奇妙な事に気が付いたエルミィ。このスライム、どうやら打ち水された場所を避けて通ろうとしているみたいだ。そう言えば最近あまり雨らしい雨は降ってなかった気がする。……だが、エルミィに考える余裕があったのはそこまで。
巨大スライムに気を取られている彼女が、背後に回り込んでいた別のスライムに気付いたのは、背後のスライムが飛ばした粘液で身体が痺れた後だった。
(おばあさん達、助かるといいなぁ……)
ひんやりしたスライムに飲み込まれながら、死を覚悟したエルミィの視界に映った、こちらへ走って来る誰かの姿。
(ハンターさんかなぁ……あ……水溜まりの事、伝えなきゃ……)
少しだけ戻って来た生きる望みと共に、エルミィは全力で息を吸い込んだ。
良く晴れた昼下がり、とある小さな村の中、それなりに大きな家に1人暮らす少女が、自称錬金部屋……酒精の匂いの漂う部屋の中で、右手の小指に嵌めた指輪を眺めながら、人間を数人茹でられそうな大きな釜の中のお酒……謎の錬金液をかき回していた。物憂げな表情のまま時々片手でポイっと放り込む謎の粉は秘伝の錬金薬、との事だが成分は秘伝なのでもちろん企業秘密。
年の頃は15才位だろうか、飾り気のないキャミソールとホットパンツ姿で、ウェーブがかかったと言えば聞こえが良い黄色く長い髪を、動きに合わせてワカメのようにユラユラ揺らしながら溜息を吐く少女。
ふと手を止めた彼女は、ゆっくり窓に向かい、部屋中に漂う酒精の匂いを撒き散らすように部屋の窓を開け放した。
小指に嵌めていた、自分の錬金術で作成されたと思い込んでいた指輪、ハンター試験を受ける理由にするつもりだった指輪を指から外し、小物入れにポイっと投げ込むと、椅子を引き寄せて、窓枠に肘をついて座った少女、エルミィは再び溜息を吐いた。
●プルプル
最初は、ただ誰かが騒いでるだけなんだろうと思った。ザワザワと騒めく通りの向こうから大きな声が聞こえる。……悲鳴?
「誰か喧嘩でもしてるのかなぁ?」
誰にともなく呟きつつ、その脚は座った椅子から立ち上がるのも億劫で、ただ静かにブラブラと揺れていた。
一際大きくなった悲鳴と共に、逃げ惑う露店のおばちゃん達を追うように、村の広場にソレが姿を現した。3メートルはあろうかという巨大な毒々しい紫と緑のシマシマ模様、向こう側が透けて見えるそれは……
「スライム!? 何で!?」
窓枠を通して見える、どこか別世界で起こっている事のような、非現実感……。だが、エルミィが呆けている間にも、その巨大スライムは歩くような速度で前進を続けている。見張りの兵士はどうしたんだろう? ……兵士や、戦える人を呼びに行くような冷静な判断ができている人は居るのだろうか?
「あっちは……施療院……」
纏まらない思考がグルグルと回り、足が震える。ひとつだけ解った事は、このまま放って置けば施療院の病人や怪我人、老人達に犠牲が……。顔見知りになった気の良いおじいさんや、足の悪いおばあさんの顔が頭に浮かび……身体が動いた。
置いてあった背負い籠にありったけの『武器』を詰め込んで、エルミィは走り出した。
「こっちに来なさい! このシマシマゼリー!」
ノコギリ、ハンマー、コップにブラシ、物干し竿に小物入れ。近寄らず、前に出ず、距離を取りながら、『武器』を投げ付ける。
どうやらこちらに狙いを定めたらしい、毒々しい色をしたスライムを、先ずは村の外へ誘き出すために、距離を取り過ぎないようゆっくりと下がる。
「……なんか水溜まり避けて動いてる?」
奇妙な事に気が付いたエルミィ。このスライム、どうやら打ち水された場所を避けて通ろうとしているみたいだ。そう言えば最近あまり雨らしい雨は降ってなかった気がする。……だが、エルミィに考える余裕があったのはそこまで。
巨大スライムに気を取られている彼女が、背後に回り込んでいた別のスライムに気付いたのは、背後のスライムが飛ばした粘液で身体が痺れた後だった。
(おばあさん達、助かるといいなぁ……)
ひんやりしたスライムに飲み込まれながら、死を覚悟したエルミィの視界に映った、こちらへ走って来る誰かの姿。
(ハンターさんかなぁ……あ……水溜まりの事、伝えなきゃ……)
少しだけ戻って来た生きる望みと共に、エルミィは全力で息を吸い込んだ。
リプレイ本文
乗り合い馬車の御者が、村の入り口に到着した事を告げる声と共に馬車のドアが開き、村の景色と共に目に入ったのは、紫と緑のシマシマ模様に彩られた2匹の巨大なスライム、そしてまさに飲み込まれている少女が居た。
「……え、なに? あのでっかいしましま……。えっと、雑魔? だったら何とかしなきゃ!」
急な事で一瞬混乱し、直後に覚醒して自信に溢れた表情に変わった佐井 灯(ka4758)
「デカい方は食い止める!」
「……スライムか、そっちの小さい方は任せるぞ」
リュー・グランフェスト(ka2419)と龍崎・カズマ(ka0178)が、すかさず大きな方のスライムに向かい走る。
「い、急いで助けてあげないとですよぉ! ぼ、僕はここで援護しますね」
すかさずその場でライフルを構える弓月・小太(ka4679)
「飲み込まれた女性が居るんですね、すぐに助けないと。……あれは使えそうですね」
スライムの中に浮かぶ物干し竿と、小さな方のスライムに飲み込まれ動けなくなっている様子の少女を見て瞬時に救出策を練った神谷 春樹(ka4560)は、周囲を見回すと、丁度近くに捨て置かれていた長い棒に自分の着ていた上着を巻き付け始めた。
フローレンス・レインフォード(ka0443)、エフィルロス・リンド(ka0450)、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)。丁度この村の宿に泊まっていた3人は、宿の外が妙に騒がしくなり……そして静かになった事に気付いた。
「何かあったんでしょ……zzz」
「……突っ込まねーぞ! というか何かあったのかも知れないな」
レイオスが宿の扉を開くとそこには……2匹の巨大なスライムがうねっていた。
「宿の下見に来てただけなんだけど、まさかこんな事になるとはね……」
毒々しい紫と緑のシマシマを見ながらつぶやくフローレンス。
村の入り口側からも走って来ているハンター達が居るのを確認した3人は、其々の武器を構えると行動を開始した。
●開戦
「これでもっ……喰らえええ!」
刀を左肩に担ぐように構え、踏み固められた道を踏みしめながら走り込んだリューが、走り込んだ勢いそのままに、巨大なスライムをその刀で薙ぎ払った。
すぐに塞がる傷口、意に介さないかのようにその液状の体を伸ばして来た大スライムを躱しつつ、刃を叩き込む。
「こっちは心配すんなっ! そっちの女の子は任せたぜ!」
後方の仲間に肩越しに声をかけ、スライムの前に立つリュー。
「わー、おっきいスライムなんです〜ぅ……zzz」
危うく眠り込みそうになりながらもスキルはきっちり使っているエフィルロスの杖から放たれた、薄ぼんやりとした加護の光がリューの体を包む。
「わー、物が浮いてるのなんだかちょっと面白いです〜」
エフィルロスの興味は、既に戦闘やスライムに飲み込まれた少女から目の前のスライムの中に浮かぶ様々な物へと移っていた。
「奴らに有効打や特効ってのはあんまり聞かないしな……切り離してバラしてみるか」
脚にマテリアルを集中させ、素早く踏み込んだカズマのオートMURAMASAが、低い音を響かせながら大スライムの体を切り落とした。
べちゃりと地面に落ちたスライムの破片は、しかしそのまま本体に飲み込まれてゆく。
「……チッ、属性武器でも試してみるか」
リューが振るう不知火を見ながら、その腰に差された属性付きの小太刀、五月雨に目をやるカズマ。
……その時、スライムの中の物がぐっと下に向けて動いたのが見えた。
「これは!?」
不審な動きにすかさず回避行動を取ったカズマの背後に、新たな気配が生まれた。
「できるだけ人が居ない方に誘導したいけど、厳しいかな……?」
呟いた灯の前方、カズマの背後に、まさに突如現れたとしか言いようがなく、地面から現れた新たなスライム。
「カズマさん、後ろ!」
カズマに声をかけつつ新手のスライムに向けて一気に間合いを詰めながら、水平に構えた刀で貫き、斬り裂く。
「こいつは僕がやるよ。ソロステージ♪」
観客がスライムでは不足に過ぎるが、負ける気などはさらさら無かった。
●救出
スライムに飲み込まれている少女は、見た感じでは身じろぎひとつする様子が無い。
服や身体が溶け出す危険は少なくとも今の所なさそうだったが、あれでは呼吸はできそうにない。
服を棒に巻き付けている春樹を横目に見て、走り出したのはフローレンスだった。
「時間がないわ、さあ、その子を返しなさい!」
自分にレジストをかけると、おもむろにスライムに手を突っ込むフローレンス。
ヒンヤリとした感覚と、
「……グレープソーダ?」
なんだか美味しそうな匂いだが、原液に直接突っ込んだ手はレジストをかけていてもピリピリして来る。
「長くは持たなモゴッ」
少女を救う事に気を取られ過ぎて、ヒジの距離のスライムから飛んで来た液体は、流石に避けようがなく……。
「まさか先にやられるとは思わなかったぜ」
最悪の場合自分もスライムに突撃するつもりだったレイオスが、慌ててフローレンスを引っ張り出した。
「スライムの意識をこっちに向けないと……そこですぅっ!」
小太の銃弾が、スライムを貫く。威嚇射撃は意味を成さなかった為、直ぐに通常の射撃に切り替えたが
「ちゃんと効いてます……よね?」
表情もリアクションもないスライム相手に、本当に攻撃が効いているのか……。不安でちょっぴり涙目になりながらも、仲間への援護射撃をこなす小太だった。
「出来た!」
しっかり固定されるよう、念のために水をかけて完成した、春樹お手製の対スライム少女押し出し棒を少女のお腹に当てて……一気に押し出す。
棒を押し込む時にスライムが妙に嫌がるようなそぶりをしていたのが見ていた者の気にかかったが、力無くスライムの中に浮いていた少女は無事に春樹の反対側へと押し出され、そのまま倒れる。
「そこの人、その子がコイツにまた取り込まれないように安全な所へ!」
うねりながら再度獲物を奪い返そうとするスライムから自分も離れつつ、反対側に回り込んでいたレイオスに声をかけると、春樹は銃を構えた。
●弱点
「感謝のキスなら後回しだ、先ずはアレを何とかしないとな」
少女、エルミィを抱えて恐らくは安全な所、宿の中まで遠ざけたレイオスとフローレンス。一旦顔を洗ったフローレンスの手から放たれた優しい光が、煌めきながら少女、エルミィの身体の麻痺を癒す。
「ありがとうございます、助かりました〜、もうだめだと思ったけど、結構なんとかなるものですねー、アハハ……」
やたら明るい口調で元気そうに振る舞うエルミィだが、なんだかもう産まれたての仔鹿のようにガクガク震えている足を見ると、どうやら強がりもかなり限界らしい。
「あ、あのスライム! あのスライム、なんだか不自然な感じに水たまりを避けてたんです、もしかしたら弱点っぽい何かなのかも知れません。あと、いきなり背後に……もう現れてるっぽいですね」
戦っているリュー達の様子を眺めて、情報を一部訂正するエルミィ。
「解った、後は俺たちに任せろ!」
宿の中にあった水桶を抱え、仲間に話の内容を伝えながら走り出したレイオスの後ろで
「良く頑張ったわね、もう大丈夫よ」
エルミィを守るためその場に残り、優しく声をかけたフローレンスの後ろで俯いて座り込んだエルミィの表情は、フローレンスからは見えなかった。
エルミィからもたらされた情報に、各自
「成る程、思い当たる節があるな」
リューに続いたカズマがムラマサではなく五月雨で攻撃しようとした途端に分裂し始めた事、春樹の対スライム少女押し出し棒を妙に嫌がっていた事。
水、か……エフィルロスがスライムの中に投げ込んで遊んで……戦っていたペットボトルに全員の視線が集中した。
「水が苦手なら、アレを使って下さいなんです!」
先刻まで、わー、浮いてるのちょっと面白いんです〜。と言っていた事は既に夢の彼方、得意気に指差すエフィルロスだった。
「わかりました! 水ですね!」
小太が、狙い過たず撃ち抜いたペットボトルがあっさりと破裂し、スライムの中で水を撒き散らし
「どうせこの後は温泉に入るんだ、派手にぶち撒けてやるぜ!」
レイオスが、持って来た水桶を桶ごと投げ付けた。避けようとするような動きはあったが、所詮はスライム、回避はできなかったようだ。
「水も滴るいいスライム〜……別に良くはないかな」
軽口を叩ける余裕すら出てきた灯が、分裂体の飛ばす液体を踊るようなステップで躱しながら、隙を見てはカウンターで斬りつける。
水浸しになった大スライムの中に浮いていた物がグルグルと回り、のたうつように転がり? 回る大プルプル。転がる度に地面に溜まった水で更に濡れているのだが、どうやら何か効いてはいるらしい。
「これなら……」
武器を小太刀に持ち替え、斬りつけるカズマ。小太刀である五月雨では一撃で切り落とせる量は少なくなるが、一撃一撃が確実に大スライムの体積を刻んでいっているようだ。
どうやら水を浴びた事で本体から離れた欠片を制御できなくなっているらしく、地に落ちた破片は本体に戻る事なく、黒い靄となって消えていく。
「こうなったら威力を上げて……強弾を食らうのですぅ!」
小太の気合いの声と共に放たれた銃弾が大スライムを貫き、何故かフローレンスがうんうん、と優しく頷く。小太の頑張っている姿が何か琴線に触れたらしい。
その小太の銃撃に続き、大きく踏み込んだレイオスの雷撃刀の一撃が大スライムを灼き斬る。
「これで……トドメだっ!」
右足を支点に、全身を回転させながら一気に薙ぎ払ったリューの不知火の一撃が、大スライムを黒い粒子へと還した。
「こちらもこれで終わりだな」
水で洗った、エルミィを飲み込んでいた分裂体を眺めながら、春樹は戦闘の終わりを感じた。分裂体は本体より更に水に弱いようで、後も残さず消えて行った。後は戦闘後の処理だけだ。
「ふぃにーっしゅ☆」
時を同じくして、スライムの分裂体を相手に華麗に舞った灯のソロステージも、終幕を迎えた。
「……ふう……ち、ちゃんと出来てたかな……?」
勝利の決めポーズのまま覚醒が切れ、素に戻りつつも決めポーズを取っている灯だった。
●戦い終わって
「ショータも頑張ったわね、偉かったわよ〜」
「無事に助けられてよかったで……ふわ!? あ、ちょっ、フローレンスさん!?」
エルミィの無事を確認するため彼女らに近付いて、その保護欲やら何やらを爆発させたフローレンスに捕獲された小太。はわわわわーと目を回しながら真っ赤になって倒れたのは恥ずかしさからか、それとも柔らかさからだろうか。
まぁ、鼻血を吹かなかったあたり、まだまだノットギルティなのかも知れない。
その隣で、リューがエルミィに話し掛けていた。
「情報ありがとう、助けに来て助けられちまったなあ」
「いえ、何もできなくて……私の方こそありがとうございました〜」
リューの言葉に込もった敬意に気付いただろうか。嬉しそうに笑うエルミィだが……まだ膝がプルプルして椅子からは立ち上がれないようだった。
一方、宿の外では春樹が念のために他の分裂体が残っていないかを探していた。小さな欠片からでもまた成長して巨大にでもなったら危険だ。見逃すつもりは無い。……だがどうやら杞憂に終わったようだ。まあ、連れて行った犬の散歩としては丁度良かったかも知れない。
その夜は、村人からお礼として温泉を貸し切りで使わせて貰う事となった。
ゆっくりと湯に浸かり、疲れを癒した一行は、またそれぞれの次の戦いに赴くのだろう……。
「一仕事終えた後の一杯は最高だな」
その日の男湯では、様々な談義と、覗き肯定派と否定派の熾烈な争いが繰り広げられたとか、られなかったとか。
「ゆっくりできるのは良い事なので……zzz」
そして女湯では……起きているのか寝ているのか不明なエフィルロスが、いつまでもいつまでも、湯の中に漂っていたという。
「……え、なに? あのでっかいしましま……。えっと、雑魔? だったら何とかしなきゃ!」
急な事で一瞬混乱し、直後に覚醒して自信に溢れた表情に変わった佐井 灯(ka4758)
「デカい方は食い止める!」
「……スライムか、そっちの小さい方は任せるぞ」
リュー・グランフェスト(ka2419)と龍崎・カズマ(ka0178)が、すかさず大きな方のスライムに向かい走る。
「い、急いで助けてあげないとですよぉ! ぼ、僕はここで援護しますね」
すかさずその場でライフルを構える弓月・小太(ka4679)
「飲み込まれた女性が居るんですね、すぐに助けないと。……あれは使えそうですね」
スライムの中に浮かぶ物干し竿と、小さな方のスライムに飲み込まれ動けなくなっている様子の少女を見て瞬時に救出策を練った神谷 春樹(ka4560)は、周囲を見回すと、丁度近くに捨て置かれていた長い棒に自分の着ていた上着を巻き付け始めた。
フローレンス・レインフォード(ka0443)、エフィルロス・リンド(ka0450)、レイオス・アクアウォーカー(ka1990)。丁度この村の宿に泊まっていた3人は、宿の外が妙に騒がしくなり……そして静かになった事に気付いた。
「何かあったんでしょ……zzz」
「……突っ込まねーぞ! というか何かあったのかも知れないな」
レイオスが宿の扉を開くとそこには……2匹の巨大なスライムがうねっていた。
「宿の下見に来てただけなんだけど、まさかこんな事になるとはね……」
毒々しい紫と緑のシマシマを見ながらつぶやくフローレンス。
村の入り口側からも走って来ているハンター達が居るのを確認した3人は、其々の武器を構えると行動を開始した。
●開戦
「これでもっ……喰らえええ!」
刀を左肩に担ぐように構え、踏み固められた道を踏みしめながら走り込んだリューが、走り込んだ勢いそのままに、巨大なスライムをその刀で薙ぎ払った。
すぐに塞がる傷口、意に介さないかのようにその液状の体を伸ばして来た大スライムを躱しつつ、刃を叩き込む。
「こっちは心配すんなっ! そっちの女の子は任せたぜ!」
後方の仲間に肩越しに声をかけ、スライムの前に立つリュー。
「わー、おっきいスライムなんです〜ぅ……zzz」
危うく眠り込みそうになりながらもスキルはきっちり使っているエフィルロスの杖から放たれた、薄ぼんやりとした加護の光がリューの体を包む。
「わー、物が浮いてるのなんだかちょっと面白いです〜」
エフィルロスの興味は、既に戦闘やスライムに飲み込まれた少女から目の前のスライムの中に浮かぶ様々な物へと移っていた。
「奴らに有効打や特効ってのはあんまり聞かないしな……切り離してバラしてみるか」
脚にマテリアルを集中させ、素早く踏み込んだカズマのオートMURAMASAが、低い音を響かせながら大スライムの体を切り落とした。
べちゃりと地面に落ちたスライムの破片は、しかしそのまま本体に飲み込まれてゆく。
「……チッ、属性武器でも試してみるか」
リューが振るう不知火を見ながら、その腰に差された属性付きの小太刀、五月雨に目をやるカズマ。
……その時、スライムの中の物がぐっと下に向けて動いたのが見えた。
「これは!?」
不審な動きにすかさず回避行動を取ったカズマの背後に、新たな気配が生まれた。
「できるだけ人が居ない方に誘導したいけど、厳しいかな……?」
呟いた灯の前方、カズマの背後に、まさに突如現れたとしか言いようがなく、地面から現れた新たなスライム。
「カズマさん、後ろ!」
カズマに声をかけつつ新手のスライムに向けて一気に間合いを詰めながら、水平に構えた刀で貫き、斬り裂く。
「こいつは僕がやるよ。ソロステージ♪」
観客がスライムでは不足に過ぎるが、負ける気などはさらさら無かった。
●救出
スライムに飲み込まれている少女は、見た感じでは身じろぎひとつする様子が無い。
服や身体が溶け出す危険は少なくとも今の所なさそうだったが、あれでは呼吸はできそうにない。
服を棒に巻き付けている春樹を横目に見て、走り出したのはフローレンスだった。
「時間がないわ、さあ、その子を返しなさい!」
自分にレジストをかけると、おもむろにスライムに手を突っ込むフローレンス。
ヒンヤリとした感覚と、
「……グレープソーダ?」
なんだか美味しそうな匂いだが、原液に直接突っ込んだ手はレジストをかけていてもピリピリして来る。
「長くは持たなモゴッ」
少女を救う事に気を取られ過ぎて、ヒジの距離のスライムから飛んで来た液体は、流石に避けようがなく……。
「まさか先にやられるとは思わなかったぜ」
最悪の場合自分もスライムに突撃するつもりだったレイオスが、慌ててフローレンスを引っ張り出した。
「スライムの意識をこっちに向けないと……そこですぅっ!」
小太の銃弾が、スライムを貫く。威嚇射撃は意味を成さなかった為、直ぐに通常の射撃に切り替えたが
「ちゃんと効いてます……よね?」
表情もリアクションもないスライム相手に、本当に攻撃が効いているのか……。不安でちょっぴり涙目になりながらも、仲間への援護射撃をこなす小太だった。
「出来た!」
しっかり固定されるよう、念のために水をかけて完成した、春樹お手製の対スライム少女押し出し棒を少女のお腹に当てて……一気に押し出す。
棒を押し込む時にスライムが妙に嫌がるようなそぶりをしていたのが見ていた者の気にかかったが、力無くスライムの中に浮いていた少女は無事に春樹の反対側へと押し出され、そのまま倒れる。
「そこの人、その子がコイツにまた取り込まれないように安全な所へ!」
うねりながら再度獲物を奪い返そうとするスライムから自分も離れつつ、反対側に回り込んでいたレイオスに声をかけると、春樹は銃を構えた。
●弱点
「感謝のキスなら後回しだ、先ずはアレを何とかしないとな」
少女、エルミィを抱えて恐らくは安全な所、宿の中まで遠ざけたレイオスとフローレンス。一旦顔を洗ったフローレンスの手から放たれた優しい光が、煌めきながら少女、エルミィの身体の麻痺を癒す。
「ありがとうございます、助かりました〜、もうだめだと思ったけど、結構なんとかなるものですねー、アハハ……」
やたら明るい口調で元気そうに振る舞うエルミィだが、なんだかもう産まれたての仔鹿のようにガクガク震えている足を見ると、どうやら強がりもかなり限界らしい。
「あ、あのスライム! あのスライム、なんだか不自然な感じに水たまりを避けてたんです、もしかしたら弱点っぽい何かなのかも知れません。あと、いきなり背後に……もう現れてるっぽいですね」
戦っているリュー達の様子を眺めて、情報を一部訂正するエルミィ。
「解った、後は俺たちに任せろ!」
宿の中にあった水桶を抱え、仲間に話の内容を伝えながら走り出したレイオスの後ろで
「良く頑張ったわね、もう大丈夫よ」
エルミィを守るためその場に残り、優しく声をかけたフローレンスの後ろで俯いて座り込んだエルミィの表情は、フローレンスからは見えなかった。
エルミィからもたらされた情報に、各自
「成る程、思い当たる節があるな」
リューに続いたカズマがムラマサではなく五月雨で攻撃しようとした途端に分裂し始めた事、春樹の対スライム少女押し出し棒を妙に嫌がっていた事。
水、か……エフィルロスがスライムの中に投げ込んで遊んで……戦っていたペットボトルに全員の視線が集中した。
「水が苦手なら、アレを使って下さいなんです!」
先刻まで、わー、浮いてるのちょっと面白いんです〜。と言っていた事は既に夢の彼方、得意気に指差すエフィルロスだった。
「わかりました! 水ですね!」
小太が、狙い過たず撃ち抜いたペットボトルがあっさりと破裂し、スライムの中で水を撒き散らし
「どうせこの後は温泉に入るんだ、派手にぶち撒けてやるぜ!」
レイオスが、持って来た水桶を桶ごと投げ付けた。避けようとするような動きはあったが、所詮はスライム、回避はできなかったようだ。
「水も滴るいいスライム〜……別に良くはないかな」
軽口を叩ける余裕すら出てきた灯が、分裂体の飛ばす液体を踊るようなステップで躱しながら、隙を見てはカウンターで斬りつける。
水浸しになった大スライムの中に浮いていた物がグルグルと回り、のたうつように転がり? 回る大プルプル。転がる度に地面に溜まった水で更に濡れているのだが、どうやら何か効いてはいるらしい。
「これなら……」
武器を小太刀に持ち替え、斬りつけるカズマ。小太刀である五月雨では一撃で切り落とせる量は少なくなるが、一撃一撃が確実に大スライムの体積を刻んでいっているようだ。
どうやら水を浴びた事で本体から離れた欠片を制御できなくなっているらしく、地に落ちた破片は本体に戻る事なく、黒い靄となって消えていく。
「こうなったら威力を上げて……強弾を食らうのですぅ!」
小太の気合いの声と共に放たれた銃弾が大スライムを貫き、何故かフローレンスがうんうん、と優しく頷く。小太の頑張っている姿が何か琴線に触れたらしい。
その小太の銃撃に続き、大きく踏み込んだレイオスの雷撃刀の一撃が大スライムを灼き斬る。
「これで……トドメだっ!」
右足を支点に、全身を回転させながら一気に薙ぎ払ったリューの不知火の一撃が、大スライムを黒い粒子へと還した。
「こちらもこれで終わりだな」
水で洗った、エルミィを飲み込んでいた分裂体を眺めながら、春樹は戦闘の終わりを感じた。分裂体は本体より更に水に弱いようで、後も残さず消えて行った。後は戦闘後の処理だけだ。
「ふぃにーっしゅ☆」
時を同じくして、スライムの分裂体を相手に華麗に舞った灯のソロステージも、終幕を迎えた。
「……ふう……ち、ちゃんと出来てたかな……?」
勝利の決めポーズのまま覚醒が切れ、素に戻りつつも決めポーズを取っている灯だった。
●戦い終わって
「ショータも頑張ったわね、偉かったわよ〜」
「無事に助けられてよかったで……ふわ!? あ、ちょっ、フローレンスさん!?」
エルミィの無事を確認するため彼女らに近付いて、その保護欲やら何やらを爆発させたフローレンスに捕獲された小太。はわわわわーと目を回しながら真っ赤になって倒れたのは恥ずかしさからか、それとも柔らかさからだろうか。
まぁ、鼻血を吹かなかったあたり、まだまだノットギルティなのかも知れない。
その隣で、リューがエルミィに話し掛けていた。
「情報ありがとう、助けに来て助けられちまったなあ」
「いえ、何もできなくて……私の方こそありがとうございました〜」
リューの言葉に込もった敬意に気付いただろうか。嬉しそうに笑うエルミィだが……まだ膝がプルプルして椅子からは立ち上がれないようだった。
一方、宿の外では春樹が念のために他の分裂体が残っていないかを探していた。小さな欠片からでもまた成長して巨大にでもなったら危険だ。見逃すつもりは無い。……だがどうやら杞憂に終わったようだ。まあ、連れて行った犬の散歩としては丁度良かったかも知れない。
その夜は、村人からお礼として温泉を貸し切りで使わせて貰う事となった。
ゆっくりと湯に浸かり、疲れを癒した一行は、またそれぞれの次の戦いに赴くのだろう……。
「一仕事終えた後の一杯は最高だな」
その日の男湯では、様々な談義と、覗き肯定派と否定派の熾烈な争いが繰り広げられたとか、られなかったとか。
「ゆっくりできるのは良い事なので……zzz」
そして女湯では……起きているのか寝ているのか不明なエフィルロスが、いつまでもいつまでも、湯の中に漂っていたという。
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/04/29 21:38:38 |
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プルプル対策 龍崎・カズマ(ka0178) 人間(リアルブルー)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2015/05/02 10:08:05 |