決起を呼ぶ者

マスター:赤山優牙

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/05/06 19:00
完成日
2015/05/12 00:15

みんなの思い出

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オープニング

 フレッサの街――
 王国北西にあるフレッサ領内最大の都市であり、遥か昔、王国に併合される前は都市国家であった。
 古くから農耕により栄えていたが、それ故、亜人などの襲撃に悩まされており、フレッサの街を取り囲む城壁は、街の規模よりも大きい。
 巨人でさえも乗り越えられないだろうという高さ。
 竜ですら破壊できないであろうという厚さ。
 だが、空から侵入してきた歪虚の集団の前には意味を成す事はなかった……。

●内憂外患
「街を攻めるのですか!?」
 痩せた騎士が驚きの声をあげる。
 あの堅牢なフレッサの街を攻めるなど、死にに行くようなものだ。
「そのとおぉり! 我らが、ブルダズルダ騎士団が、フレッサの街を歪虚の手から解放する!」
 豪華な装飾に包まれた鎧で身を包んでいる太った貴族が大声で宣言する。
 騎士団と名乗っているが、実際は、フレッサ領に隣接する貴族の私兵集団に過ぎない。
 フレッサ領から侵攻してきた歪虚への反撃という名目で、フレッサ領に踏み込んできているのだ。
「しかし、街には、まだ生存者もいるという話もあります」
「だからこそ、我々が早急に奪還するといっているではないか」
「人質の命を無視してもですか!」
 痩せた騎士は叫び声をあげた。
 歪虚に占拠されたフレッサの街には、逃げ遅れた住民が残っている。
 偵察部隊を待ちうけていたのは、人質を盾にとる歪虚であった。
「ノセヤ・シキ君……この状況についていないは君達の方だよ」
 痩せた騎士の名前を敢えて言ってから、貴族が、騎士に指差す。
「王国の長たる王女、そして、騎士団団長も辺境へ。ならば、我らは国を守る義務がある」
 それを早急に示す必要があるという。
 また、トップ不在のこの状況をイスルダ島の歪虚が見逃すとは限らない。大局的な見地に立てば、『酒の街』デュニクスの支城の一つを役割も兼ねているフレッサの街を奪還する事は意味がある事なのだ。
「戦とは、時に非情なものだよ。『軍師騎士』と呼ばれている君とて、知らぬ事ではないはずだろ」
「民を守れずして、なにを守るというのですか……」
 その台詞を待っていたとばかりに、貴族はニヤリと笑った。
「ならば、ノセヤ君。君がやってみせたまえ。君が城門を開く事ができたら、我々も力づくで街を攻める必要もないのだからな」
 期間は一週間だとつけ加え、貴族は天幕から出て行った。

●奪還に向けて
 痩せた騎士の所に、フレッサの街の住民と名乗る者が訪れたのは、間もなくの事であった。
「救援が来たと噂があり、意を決して脱出してきました」
 全身から異臭を放っていて、かつ、ずぶ濡れの青年だった。
「それは、大変な事を……よく、よく無事で……」
 騎士は自分が汚れる事も気にせずに、青年を軽く抱擁した。
 そして、すぐに着替えと食事を用意する様、兵士に指示を出す。
「うぅ……、本当に……、あ、ありがとうございます」
 最初に貴族の所に行って追い払われてから来たという青年は、感激で涙を流していた。
「疲れている所、すまないが、話を聞かせて貰ってもいいですか?」
「は、はい! その為に、脱出してきましたので!」
 青年は歪虚の襲撃から脱出してきたまでの経緯を語りだした。

 およそ一ヶ月前。歪虚の軍勢が攻めてきた。固く城門を閉ざすものの、1体の歪虚が飛行して街に侵入。
 屋敷にいたはずの領主は行方不明で、街の中にいた兵士達は善戦するも全滅した。
 歪虚は街を掌握すると、『家から出た者から殺していく』と宣言し、街全域に雑魔を配置し、殺された住民をゾンビにしているという。
「辛うじて飢えに耐えて、ひたすら救援を待ってました」
 下水道で繋がっている所同士で支え合っている状況だ。
「では、かなりの数の住民は生き残っているのですか?」
「そうなのです。しかし、それもいよいよ限界です。もはや、食糧が……」
 このままでは、飢えて死ぬか殺されて死ぬかだ。
「あの歪虚さえいなければ……」
 悔しがる青年。
 街を支配しているのは1体の歪虚で、残りは雑魔やゾンビだという。
「歪虚を倒すさえすれば……」
 痩せた騎士が考える。
 もし、歪虚を倒して、街の住民が一斉に蜂起すれば、住民自らが街を取り戻した事になる。
 住民にも命の危険を強いる事になる。だが、それは、無謀な街攻めを行われても同様のはずだ。
「歪虚さえ倒せれば、住民の蜂起は可能ですか?」
「……可能です。そもそも、もう家の中に引きこもっているのも限界ですから。歪虚を倒した事を知らしめ、決起を促す呼び掛けがあれば……」
 青年の言葉に、痩せた騎士は、さっそく作戦を立て始めるのであった。

リプレイ本文

●侵入
 全身ずぶ濡れの6つの人影。
 真冬でなくて良かったかもしれない。
「花火は大丈夫なよぉうで」
 高橋 鑑連(ka4760)が濡れないように工夫して持ち込んだ花火のいくつかを確認した。
 さすがに、観賞用を用意する事はできなかったが、戦場で使う事がある合図用の花火を用意する事ができた。
 トランシーバーの周波数を合わし始め、アーリフラヴィア・エクスドミナ(ka4484)は街を囲う高い城壁に背を預けた。
(堅牢なフレッサの街が陥落したと聞いた時は驚きましたが……やはり救援は難航していましたか)
 街の規模としては頑健な作りの城壁に囲まれたフレッサの街は、彼女もそうだった様に、陥落時に驚いた人も多い。
 それほど、防衛力の高い街であり、故に、『酒の街』デュニクスの支城の一つとして数えられている。
 が、今回は、その防御力の高さが裏目に出て、救援は難航していた。
「これ以上歪虚の好きにさせるわけにはいきません」
「住民の為にも、早く街を解放しないとっすね」
 アーリとのトランシーバーの周波数合わせを終え、無限 馨(ka0544)が街の様子を見ながら呟く。
 歪虚とゾンビに支配された街。住民に植え付けられた恐怖は相当なものがあるはずだ。
 ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は濡れた愛用の振動刀を拭き終わり、鞘に納める。
「この剣を以って、民が自らの手で自由を勝ち取る為の道を切り開きましょう」
 隣領地の貴族が私兵団を持って、この街を制圧しに来ている。
 ハンター達の作戦が失敗すれば、私兵団は力押しで攻城するつもりなのだ。そうなったら、街の被害は甚大だ。
「この街の自由は、住民の手によって勝ち取られるべきですから……」
「民自身の力で町を開放か……うむ! 良い事であるな!」
 ユーリの言葉に、ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271)が思わず力こぶを作る。
 ディアドラは、先日、歪虚に占拠された村へ依頼へと出た。そこに、生きる者はいなかった。歪虚によって支配された街や村は、あの様な地獄と化すのだろう。
「大王たるボクも力を貸すぞ!」
 街中のゾンビを駆逐しながら、住民に決起を促すつもりなのだ。
 その時、雨が降っていないのにも関わらず、一つの傘がくるくると回る。
 雨音に微睡む玻璃草(ka4538)が柔らかな微笑みを浮かべて回っていたのだ。
 ちょうど水遊びが終わった所なので、今度は隠れんぼでも始めようという所か。
「踵を鳴らしてくるりと回るの」
 その意味を仲間達は理解していた。
 お互いの顔を見合して作戦の成功を約束すると、それぞれが駆けだしたのであった。

●呼掛
 ゾンビが路地から群れて出てきた所をディアドラは薙ぎ払う。
「ボク達は皆を決して見捨ててはいない!」
 長剣を振るう度にゾンビを討ち滅ぼしながら叫ぶ。
 ゾンビは、その騒ぎに自然と集まってくる。数だけは多いようでキリがないが、それでも、ディアドラを剣を振るう事を続けた。
 目指すは正門。
「街を取り戻すには、皆の力が必要だ! 大王たるボクと共に、今、立ちあがろう!」
 先程から、何回も繰り返した言葉。
 住民は窓をチラリと開けて、その様子を眺めているだけだ。今一つ、勇気がでないのだろうか。
(ムリもないだろうけど。ボク達は決して諦めない!)
 これでいいのだ。戦う姿勢を見せ、決起を促す。時期が来れば必ず、転機が訪れるのだから。

 裏路地を走っていたのは、アーリだった。
 時折、必要に応じてディアドラを援護するが、それと共に、裏戸や窓をノックして呼びかける。
「聞こえますか? 王都の騎士様からの依頼でソサエティより派遣された、ハンターです。救援に来ました」
 幾宅目か数えていないが、かなりの数、呼び掛けた。
 それでも、今の所、反応はない。
「歪虚を倒したら、合図の花火があがります。街の解放には皆さんの力が必要です。よろしくお願いします」
 住民達には彼女の呼び掛けが聞こえているはずだ。
 できれば、多くの人に情報を伝えたい。
「呼び掛けを継続しながら、城門の方に向かいます」
 トランシーバーで仲間に報告し、アーリは引き続き、住民達に呼び掛けを続けるのであった。

「街の真ん中の歪虚は俺達が何とかするっす。ただ、それだけで手一杯なんで街の人達にはゾンビをお願いしたいっす」
 馨は街の有力者と思わしき人物と直接、説得していた。
 大きい屋敷に住んでいる富豪だ。影響力もある程度はあるはずと踏んでの事だ。
「街の外に騎士が決起用の武器を持ってきてるんで、それを使ってゾンビの掃討をするよう呼びかけて貰えないっすか」
 しかし、富豪は首を捻るだけだ。使用人達は心配そうな表情を向けている。
「君らにしたら、ゾンビだろうが、その中に、隣人だった者もおる。既に死んでいるとはいえ、武器を振るう事など……」
 富豪の言葉に、馨は街の住民達が決起できない本当の理由の一つを知る。
 同時にその様な卑怯な手段を用いる歪虚が許せなく感じる。
「わかったっす。ただ自分達の街を自分達で取り返すからこそ、意味があると俺は信じているっす」
「……できるだけの事はしよう」
 門の近くの住民を集める協力を引き出し、馨は城門へと向かう事にした。

●戦士
「突然、1人で突っ込んでくるとは、バカな人間め!」
 頭がない歪虚が、どこからか言葉を発して、向かってくる1人のハンターに言い放つ。
 ユーリが、地図を基に広場近くまで移動し、仲間達とタイミングを図って飛び出したのだ。
 歪虚は、直援のゾンビを盾にすべく、ゾンビを前面に出した。
(なんとなく、わかります……この歪虚は……っ!)
 まるで街中に響き渡るように叫びながら、全力で走るユーリは愛用の刀の柄に手を伸ばす。
 眼前に迫る数匹のゾンビ。広場を取り囲む建物からの住民の視線。
(ここで倒さないといけない!)
 バンと強く踏み込むと同時に抜刀。
 突進の勢いと武器の重量、持てる己の力を注ぎこんだ強烈な一撃を抜き放った。
「な……な、んだ……と……」
 歪虚に首があったら、きっと驚愕の表情を浮かべていただろう。
 ユーリの薙ぎ払いの威力は、ゾンビを一撃の下、吹き飛ばし、消滅させた。
 蒼い刀身を高く掲げると、建物から住民達の歓声が一斉に沸く。
「次です」
 剣先を首のない歪虚に向ける。
 歪虚はこのままでは敵わないと感じたのか翼を広げ、飛ぼうとした。
 だが……。
「雨が降るのに飛んでいこうなんて狡いわ」
 広場を取り囲む屋敷の屋根から玻璃草が歪虚の翼を狙って飛び降りてきたからだ。
 その一撃は確実に、片翼を斬り裂く。
「い、いつの間に……」
 驚く歪虚。
 それもそのはず。玻璃草は歪虚やゾンビに見つからないように隠れながら接近していたからだ。
 おまけに、ユーリの行動が結果的に歪虚の注意を引いていた。
 歪虚はなんとか、体勢を整えつつ、鎌を玻璃草を振るう。
「あなたの鎌、とっても素敵ね。『ざわめき浴びる榛の海』も、すぐに草原になっちゃいそう」
 ぴょんとジャンプして大鎌を避ける。
 歪虚の注意が玻璃草に向かれた所で、その背後から鑑連が迫った。
「飛んで逃げられちゃあ、鳥でもねえあっしじゃ追いかけられやせんからねぇ」
 残っていたもう片方の翼を深く切り裂いた。
 これで飛ぶ事はできないはずだ。空を飛んで逃げられるという事はなくなったはずだ。
 あとは一気にたたみ掛けるだけ。
「首が無いと歯磨き出来なくて『歯車仕掛けの蛇』に怒られちゃうわ。お昼のクッキーもなくなっちゃう!」
「俺ぁの剣閃……アンタに見切れんのか? とと、すいやせん。あんさんにゃあ目はなかったですなぁ……」
 玻璃草と鑑連の2人が軽口を叩いて、首の無い歪虚を挑発する。
 翼を失ったが、戦意は失っていないようだ。歪虚は大鎌を高く上げると、黒いオーラの様なものを発した。
「おのれ、人間の分際で。しかし、貴様らの退路は既にないぞ!」
 本当にどこから声を出しているのか、首がない割にはよく喋る歪虚だ。
 黒いオーラに導かれる様に、路地裏に配置されていたゾンビ達が広場に向かって集まってきた。

●決起
 トランシーバーから富豪の声が響く。
 馨が渡した物だ。門近くの屋敷に集まった住民達に聞かせて決起を促しているのだ。
「ほ、本当に、門の外に救援が来ているのか」
「来てるっす。ただ、貴族の私兵団は街の犠牲を厭わないつもりっすよ」
 住民達がその言葉でガヤガヤと騒ぎ出す。
 ブルダズルダ騎士団と勝手に名乗っている私兵団と貴族はフレッサ領に隣接している。
 日頃からその貴族の横暴さは噂として、フレッサの街の住民も知っていた。
「それとは別に、王国の騎士が、決起に必要な武器を用意して、手勢で門の外にいるっす」
「でもよぉ。歪虚がどうなってるかわからねぇし、ゾンビは……」
 その住民の言葉で俯く者が多い。
 かつての隣人だった存在に自分達が武器を振るう事ができるのかと……。
「歪虚は必ず、私達の仲間が倒します!」
 そこへ、アーリが現れた。
 仲間は戦闘が継続しているのか、応答がない。
 だが、必ず歪虚を倒してくれるはずだ。
「死してなお、この世を彷徨い続ける隣人を、誰が助けるのでしょうか」
 部外者にその役目を押し付けて良いのか。
 住民達はお互い目を合わす。
「街を、人々の魂を、共に取り戻しましょう」
 真摯な彼女の表情に住民達は、頼もしい騎士の姿を重ねていた。
 何人かの住民が声をあげると、その声は次第に大きくなっていく。
「よし、みんなで門に向かうっすよ!」
「行きましょう! 街を取り戻すのです!」
 住民達と2人のハンターは城門に向かって歩み出すのであった。

●撃破
 玻璃草が傘のような形状の武器をくるくると回してから、ゾンビに突き刺す。
「まだまだ、遊びましょう? 痛いのもへっちゃらよ?」
 微笑んだ先には、周囲を取り囲むゾンビの群れ。
 彼女の背中に、鑑連の背中がトンっと当たる。
 お互い死角を補いながら、歪虚を守る為に集まってきたゾンビの群れと戦っているのだ。
「江戸っ子なら火事と喧嘩は立派な祭りでさぁ」
 敵の攻撃は回避重視で避けてきたが、多勢に無勢である。
 だが、2人がゾンビを引き付けているからこそ、ユーリが歪虚との戦いに集中できていた。
「なぜ、ゾンビがもっと集まらないのだ!」
 歪虚が大鎌を振りかぶる。
 その動作と間合いを見極め、左右の手に持つ武器で牽制するユーリ。
(意識の手綱を離さず、神経を研ぎ澄ませ……)
 強敵との戦いを思い返しながら、ユーリは踏み出した足を軸にクルっと身を回転させた。
「……恐怖を超越する!」
 そして、振り下ろされる大鎌の鎌先をナイフで受け流す。首元の紙一重だ。
「な、なにっ!」
 想い描いた軌道を描き、蒼き刀を一閃。
 驚く歪虚を横一文字に斬りつけ、真っ二つに身体が割れる。
「ば、ばかな……」
 歪虚がボロボロと崩れていく一方、ユーリは愛用の刀を掲げ、勝利を付近の住民に表す。
 広場を割れんばかりの歓声が轟いた。
 同時に、ゾンビの群れに住民達が立ち向かっていく。囲まれていた玻璃草と鑑連は、その援護を受け、ゾンビを次々に倒していった。
「ねぇ──もっと『雨音』を聞かせて?」
 瞬く間に包囲が解け、玻璃草は残ったゾンビの群れに傘を向ける。
「へへ、それじゃ、派手に合図といきやすよ!」
 鑑連が合図用の花火に火をつけ、ゾンビの群れに投げ込んだ。

●開門
 歪虚を倒したと知らせる花火の音が街中に響く。
 ディアドラは孤独な戦いの中、決して諦めていなかった。
 門の前のゾンビの群れは駆逐した。ディアドラが戦い続ける事ができたのは、堅い防具の為だ。
 ゾンビの攻撃は防具を通る事はなかったのだ。
「ディアドラさん!」
 開門する為、城壁の上に登った所で、眼下から呼ぶ声が聞こえる。
 視線を下に向けると、いつの間にか多数の住民と、2人の仲間の姿が見えた。
「皆よ! 今、門を開ける。各々が武器を手に取るのだ!」
 大げさな身振りで住民に伝えるディアドラ。
 わざとではない。大王たる者、当然の事だ。
 重々しく門が開くと、『軍師騎士』が率いる武器を満載した馬車が入ってきた。
 住民達が駆け寄ると、思い思いに武器を手に取る。その中に……。
「これまた、大量のチョコレートっすね」
「沢山あるわ」
 馨とアーリが馬車の中に武器だけではなく、チョコレートも用意されていたのだ。
「皆さんの作戦を聞いて便乗しようと思いまして……あ。調達方法は秘密ですよ」
 彼の指揮下にある兵士達がニヤニヤとしている。そのうちの1人が槍をブルダズルダ騎士団に向けていた。
 あまり……よろしくない手段なのだろうが、まさか、この状況で返せとは言わないだろう。
「最後の大詰めといきましょう」
「歪虚も倒したし、後は住民達の力で街中にいるゾンビを駆逐するのみっす」
 2人の言葉に『軍師騎士』は力強く頷いた。
 今回もまた、ハンター達に助けられた。
 彼は心の中で、ハンター達に称賛の言葉を向けつつ、集まった住民に向けて宣言する。
「皆さん、街を歪虚の手から解放しましょう! 我々にはフレッサ領の為に戦っておられる力強い方々もいます!」
 住民達の盛り上がりに、別の場所からも人々が集まる。
「大王たるボクがいるのだ! 町の解放はもうすぐだぞ!」
 ディアドラの言葉に住民達は一つとなるのであった。
 時間の経過と共に数を膨らませ、やがて、街全体が熱気に包まれるのであった。

●終結
「歪虚との戦いは間に合わなかったっすけど、これはこれで良かったかもっすね」
 馨の言葉だ。彼を含み城門付近にいた『軍師騎士』とハンター達、そして、決起した住民達が真っ先に向かったのは歪虚がいた広場だ。
 その間にも、決起する住民は増えていく。
「雨の音がいっぱい聞こえるわ」
 玻璃草が傘を差しながら広場を回っていた。
 その近くで鑑連が、なおも花火を打ち上げている。
「こりゃ、よーござんす」
 広場はお祭りか、なにかの騒ぎになりつつある。
「油断は禁物です。落ち着いて行きましょう」
「群れて出てきたら、ボクが前面に出るからね」
 そんな中でも、アーリは冷静に、そして、ディアドラは頼もしい言葉で、住民達に声をかけていく。
 歪虚は倒した。だが、まだ街中には多数のゾンビが潜んでいるのだ。もっとも、それらが駆逐されるのは時間の問題のはずだ。
 ユーリが愛用の刀の汚れを拭き取りながら、心の中で思う。
(……やっぱり、このままじゃ終われないよね)
 この度の戦いの事ではない。強敵との戦いに……だ。
 蒼き刀が太陽の光を輝かしく反射した。


 こうして、フレッサの街を占拠していた歪虚はハンター達に討伐され、街中に、潜んでいたゾンビは決起した住民達により、駆逐された。街の外で様子を見ていたブルダズルダ騎士団は撤退。懸念されていた攻城戦はなくなり、ここに、フレッサの街の解放は至ったのである。


 おしまい。

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  • 龍奏の蒼姫
    ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239
    エルフ|15才|女性|闘狩人
  • 大王の鉄槌
    ディアドラ・ド・デイソルクス(ka0271
    人間(紅)|12才|女性|闘狩人
  • スピードスター
    無限 馨(ka0544
    人間(蒼)|22才|男性|疾影士
  • 自由騎士
    アーリフラヴィア・エクスドミナ(ka4484
    人間(紅)|19才|女性|魔術師
  • 囁くは雨音、紡ぐは物語
    雨音に微睡む玻璃草(ka4538
    人間(紅)|12才|女性|疾影士

  • 高橋 鑑連(ka4760
    人間(蒼)|50才|男性|舞刀士

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/04 13:49:32
アイコン 相談卓
高橋 鑑連(ka4760
人間(リアルブルー)|50才|男性|舞刀士(ソードダンサー)
最終発言
2015/05/06 16:34:59