ゲスト
(ka0000)
花の迷宮
マスター:秋月雅哉
- シナリオ形態
- イベント
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
- 500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 1~50人
- サポート
- 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/05/11 09:00
- 完成日
- 2015/05/13 00:38
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●百花繚乱
色とりどりの花々が生垣に絡みつくように植えられ、丹精込めて仕上げられた花の迷路。
最短ルートで出口を探すのは味気なく感じられるほど多種多様な春の花で仕立てられた舞台。
花に誘われる蝶のようにあちらへふらり、こちらへふらりと楽しみながら歩き回ってはどうだろう。
芳しい花の香りに柔らかい春から初夏へ移っていく日差し、心地よく吹き抜ける風。
迷宮を抜ければ売店で花を食用に育てたものを使った冷たいデザートや氷菓、温かいお茶や軽食を供する店もある。
常日頃忙しいハンターたちへの息抜きに、と。以前教会の掃除を依頼した人物経由での招待状が届けられたのだった。
「少し前に教会の掃除に奮戦してくれた皆はお疲れ様。思った以上に綺麗に、丹念に仕事をしてくれたと依頼主が喜んでくれてね。
僕たちを花の迷宮へと招待してくれたんだ。
高い生垣に様々な花々を取り混ぜて植えてあるそうでね。生垣にできる花は何かに見立てて刈り込んであったりしていてなかなか手が込んでいるらしい。
リアルブルーの花も何種類かあるそうだから、どちらの世界の出身者も楽しめるんじゃないかな。
以前僕たちと関わりを持って、今は司書のいない神霊樹の若木を護っている小夜子君にも声をかけて引っ張り出すことに成功したから改めて話をしたかったら探してみるといいよ。
迷宮で人探しは、なかなか大変かもしれないけれどね」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)はそういって少し意地悪気に笑うのだった。
色とりどりの花々が生垣に絡みつくように植えられ、丹精込めて仕上げられた花の迷路。
最短ルートで出口を探すのは味気なく感じられるほど多種多様な春の花で仕立てられた舞台。
花に誘われる蝶のようにあちらへふらり、こちらへふらりと楽しみながら歩き回ってはどうだろう。
芳しい花の香りに柔らかい春から初夏へ移っていく日差し、心地よく吹き抜ける風。
迷宮を抜ければ売店で花を食用に育てたものを使った冷たいデザートや氷菓、温かいお茶や軽食を供する店もある。
常日頃忙しいハンターたちへの息抜きに、と。以前教会の掃除を依頼した人物経由での招待状が届けられたのだった。
「少し前に教会の掃除に奮戦してくれた皆はお疲れ様。思った以上に綺麗に、丹念に仕事をしてくれたと依頼主が喜んでくれてね。
僕たちを花の迷宮へと招待してくれたんだ。
高い生垣に様々な花々を取り混ぜて植えてあるそうでね。生垣にできる花は何かに見立てて刈り込んであったりしていてなかなか手が込んでいるらしい。
リアルブルーの花も何種類かあるそうだから、どちらの世界の出身者も楽しめるんじゃないかな。
以前僕たちと関わりを持って、今は司書のいない神霊樹の若木を護っている小夜子君にも声をかけて引っ張り出すことに成功したから改めて話をしたかったら探してみるといいよ。
迷宮で人探しは、なかなか大変かもしれないけれどね」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)はそういって少し意地悪気に笑うのだった。
リプレイ本文
●花の迷宮で見つける宝物
デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)が以前体験した花の迷宮はひまわりだけで作られたもの。
大きく育ったひまわりは単純にひまわり畑として植えられたものだったとしても身長によっては立派な迷路に感じられることだろう。
「アレはアレで壮観だったし、夏を全身で感じられる思い出深い体験だったが……目の前のこいつときたらどうだ」
感嘆の吐息と共に独り言が漏れる。
さまざまな春の花をここまで鮮やかに配置するのは生半可な手間じゃすまなかったはず。
「迷い込んだ連中が抜け出したくならねぇ迷宮。魔王や怪物の類が最奥で待ち受けるラビリンスじゃなくて、さながら悪戯好きの春の妖精が、旅人を惑わす異界ってところか」
ファンタジーな世界に飛ばされたと思っていたデスドクロだったがこんなところでもそれを実感できるとはな、と、知らぬ間に止めていた足を動かしだす。
ぶらり散歩をするにもいい時期だ。のんびりと楽しむには最高の場所だろう。
舞桜守 巴(ka0036)はアリス・ブラックキャット(ka2914)に誘われてこの花の迷宮に足を運んでいた。
「巴ちゃん見て見て! 綺麗だね」
「結構本格的ですのね……はぐれたらダメですよ?」
と巴に釘を刺されたが、綺麗な花に釣られてふらふらと歩いている内に迷子になってしまったアリス。
「……あ、どこ……?」
左右を見回しても巴の姿はどこにもない。
「どうしよう、どこか、ううん、誰か……探さないと……」
一方その頃、迷宮内でちょっと休憩にと立ち止った巴もアリスとはぐれたことに気づいて慌てていた。
「……あら、ナインチェ? ナインチェ―! どこですのー!?」
涙は流さないもののとにかく誰か探さなければと歩き回るアリス。
招待を受けたハンターがどうしたのか声をかけてくれたがホッとはしても探し人には会えない。
しばらくしてようやく再会を果たした友人にひしっと抱き付いて、そこに確かに巴がいるということを確認するようにしがみつくアリスを巴も抱きしめ返す。
「ああもう全く……勝手にうろついたらダメでしょう……」
窘める口調だったがアリスの髪を撫でる手つきはこの上なく優しい。
さっきまで泣き出す寸前だったアリスはそれでようやく落ち着いたらしく見上げて微笑む。
「今度は迷子にならないように、手をつなご?」
「そうですわね……もうはぐれてはダメですわよ」
花々を楽しみながら出口に向かい、迷宮を抜けた後、アリスはまだ芽を出していない鉢植えを一つ買った。
育てて花が咲いて、それを眺めることで思い出が少しでも長く続くようにと願いを込めて。
ヒース・R・ウォーカー(ka0145) は迷路を歩きながら楽しげに咲き誇る花々を眺め、なくしてしまった記憶を想っていた。
大切なモノがあったことは覚えているのに、それが何なのかが思い出せない。
そのくせ奪ったモノ、なくしたモノのことは鮮明に覚えているから性質が悪い、と歩きながら頭の中で悪態をつく。
「……まるで罪を忘れるな、これが罰だと言われているみたいだ。
失くした記憶……昔もボクはこんな風に花が咲いている場所を歩いたのかなぁ?」
語りかける相手は相棒とも呼べる赤い瞳の黒猫だが、当然答えは返ってこない。
「まぁ、お前とこうして歩いていたことは覚えておくとしようかぁ。なぁ、ナナクロ?」
今度の問いには黒猫は尻尾を揺らして答えた。
それがどういう意味なのかは二人と一匹だけの秘密、なのかもしれない。
「ふっふっふ……迷宮か、腕がなるぜ!
俺はこの日のために、左手の法則とやらを学んできたのだ!!」
岩井崎 旭(ka0234)は友人のシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)と一緒に迷宮を楽しみにやってきた。
迷宮に入る前に、会場の造りを把握しようとして一度足を運んだものの、そのまま迷子に。
「おい、さっきから迷宮感でてきちゃいねーか!?」
どうやら本来迷った人が脱出するために設けられた非常口から迷宮の中に入ってしまったらしく、花の迷宮を二人でうろうろ。
「いつの間にか迷宮に迷い込んでいたようですね……」
早く終わらせて売店でなにか食べましょうと、これでも迷路は得意だと胸を張っていたシルヴィアも呑気な様子であちらこちらへと歩く。
二人が気づかないまままた非常口から外に出てしまい、何処をどう通ったのかたどり着いたのは海。
「ゴールが海とは……凝った作りです……」
尚、迷路で役立つのは右手の法則であり、この迷宮のゴールの先にあるのは売店であって海ではないが二人は満足げにハイタッチしたのだった。
「最近休みを入れる比率が上がっているのはきっと気のせいではないですね。
まぁ……たまにはいいですよな?」
米本 剛(ka0320)は言い訳のように呟きながら花の迷宮をふらりふらり。
「花は心にゆとりが出て良いものですからね。素晴らしきかな……平穏な日々、平和とはやはり大切なものだと思います」
こういった時間と場所と人々のために自分は戦場に立っているのかと思うと英気が養える、と思いながら、ただ迷宮を攻略するのではなく花に誘われて気の向くままに。
目的もなく歩き回りながら花の香りに誘われるのだった。
「花の生け垣で作った迷路なんて……自分初めてです」
静架(ka0387)は思えばこんなにたくさんの種類の花々を見るのは初めてかもしれないと興味津々であたりを見て歩く。
「スグル、あれ見てください!」
同行したスグル・メレディス(ka2172) にあの葉っぱは炒めると美味しい、これは砂糖漬けにして食べられる、こちらは痛み止めになる、あれは血止めに使える、と名前は知らないものの食用や薬効には詳しい様子を見せる。
「この辺の植物は見たことがないです」
知識を得ることに貪欲で、表情はほとんど変わらないが楽しげな雰囲気の静架。
夢の世界のようだと思いながら花の種類を数え、リアルブルーで見かける花もあったりするが名前は違うのかな、と思いを巡らせるスグルは生き生きとしている静架の隣で小さく笑みを。
「どうかしたんですか?」
スグルの男心には無頓着な静架が問いかけると可愛いね、と答えが返ってくる。
その言葉はつま先を踏みつけて黙らせて。
「そんなことを言いたかったんですか?」
「んー……別に今じゃなくていいんだけどさ。
なんかね、ちょっと先のこととか考えちゃってさ。
そういう話をしてもいいかなって」
まぁ、一緒にいることには変わりないんだけどね、と付け加えたスグルの言葉にいまさら何を話すことがあるのかと首を傾げる静架。
「今晩の食事は迷路の出口にある売店でなにか買って帰りましょう」
色気より食い気な静かにスグルはもう一度小さく笑んで、静架の手を取る。
(静が楽しければいいか、今は。もちろんこれからも)
そんなことを思いながら出口を目指して歩き出すのだった。
シェリル・マイヤーズ(ka0509)は花が好きで参加。桜型妖精のモイラは元気な女の子なので色とりどりの花で埋め尽くされた景色に大興奮。
「……モイラ……迷子になる……。肩にちゃんと乗ってて、ね?」
迷路を、あえて迷って歩くのもいいと気の向くままに歩いていく。
花の一輪一輪を、撫でるようにしながら。
途中で普段被っているフードをしっかりと花が見たくなって外した。
(花は好き。邪気もしがらみもなく、ただ咲き誇る姿は素直に美しいとだけ思えるから。
花の迷宮……閉じ込められて、このまま出られなくなってもいいかもしれない……)
そんなことを考えているとくいくいと髪を引っ張られる感覚。視線を向ければ心配そうなモイラが。
「大丈夫……さぁ、帰ろう……出口……分かる?」
妖精は道案内する気満々だったけれど、きっと出口は分からないから、まだしばらく花園の中だろう。
「たまの休みです。こういう息抜きもいいでしょう」
上泉 澪(ka0518) は折角だから、と迷路に入ってみた。
間違えた道に再び入らなければいずれ抜けられるだろうし、と花を眺めながらゆるりと散策。
「まあ……日が落ちても抜けられないとなれば流石に困りものですが、それはないでしょうし」
連れ合いがいるわけでもないから気楽なものだとゆっくり歩く。
「身体もだいぶ調子が戻ってはきましたが、昔ほどとはいきませんか。
半身が焼けた身で、ここまで動くようになっただけでもいい方なのでしょうが。
辺境にも自然はありますが、こういうものはまた趣が違いますね」
どちらが良いというものでもないし、どちらも好ましい、と思いながら澪は胸いっぱいに花の香りを満たすように息を吸い込んだ。
羊谷 めい(ka0669)は花の迷宮を不思議そうに眺めながら中に入った。
「たくさんお花があって、とても素敵、です、ね」
ゆっくりと散歩するように花を眺めて歩く。
知らない人を誘うのは恐いし、話しかけるのも苦手なので、一人でのんびり。
迷子になりそうだけれども、すぐに非常口から出てしまうのは勿体ない。
「迷ってもいいので、たくさん、お花が見たいな……」
迷ってもその先の景色が楽しめる造りになっている迷宮は迷うのもまた一つの楽しみだ。
「地球のお花もあって……なんだか懐かしいような、そんな感じがするかも、です」
リアルブルーの花と、クリムゾンウェストの花が調和を描くように裂いている姿はなんだか不思議だったけれど、綺麗であることは確かだった。
「……花が沢山です、ね」
瀬織 怜皇(ka0684)はUisca Amhran(ka0754)と手を繋ぎながら行動。
「迷宮では右手法っていうのをしたら抜け出せるって聞いたことがあるよ。
右側の壁沿いの沿って進んでいくんだって」
「……イスカはよく色々な豆知識的なものを知っています、よね」
右手法のことを聞き感心した様子の怜皇。
リアルブルーの花を懐かしい思いと共に鑑賞。
「いろんなお花があるね。見たことのないお花もあるよ。リアルブルーのお花かな?
咲いている花の色や香り、風の音や肌触りから自然を感じて故郷の森のことを思い出すよ。
やっぱり自然っていいね。エルフの私は、こうした緑に囲まれた場所がとっても落ち着くよ」
「ですね。リアルブルーの花もいくつか混じっているようです。懐かしいですね」
休憩用のベンチに座ってUiscaが用意した軽食とお茶を摘まむ。
「とても美味しいです、よ。ありがとう、イスカ。エルフは自然の中にあるイメージが確かにします、ね」
花の香りに包まれて食事と雑談を楽しんだ後は再び歩き出しながら変わる風景を楽しむ時間に戻る二人だった。
レオン・フォイアロート(ka0829)は招待主の好意に感謝し、花の迷宮散策を楽しんでいた。
剣の修業以外にも、いろいろなことを見聞きして知識を広げるのもハンターになった目的の一つだったのでいい機会だと思うことにしたようだ。
「人生は先にどんなことがあるか分からないので、花の名前を知っていることが何かの役に立つかもしれないですしね」
リアルブルーの花も何種類かあると聞いたのも楽しみの一つ。
花はこちらの世界に適応してどこか変わっているのか、それともリアルブルーで見かけたままなのか。
迷路の中で迷子になっている人を見かければ騎士の務めとして手助けしながら迷宮を歩いて回るレオンなのだった。
ミオレスカ(ka3496) は今日やってきているという御影 小夜子(kz0018)に挨拶するために迷路を彷徨っていた。
「こういう、華やかなお花の中、似合うと思います」
まだ巡り合えない女性の姿を思い描きながら右手の方向に順番に一巡り。
直接触ってしまうと傷めてしまうのでそっとなぞりながら景色を楽しむ。
「花の間から、奥の景色も見えるのですね、深みが増えて、凄いです。
えっと、この花は、先ほども見かけたような?
同じ花が、違うところにも、ありますでしょうか」
ベンチに座って探し人を見つけ出すことができるのか、そしてこの迷宮からでられるのか、と思案するがあまり悲観的にはならない。
「そこにいるのはミオレスカ殿か?」
「あ、小夜子さん、お久しぶりです」
「壮健そうでなにより。ひょっとして迷われたか?」
「そのようです、ね」
「もし出口を探している様なら休憩が済んだらご案内しよう。自然の中で動き回るのは得意なせいか、割とすぐに出口を見つけてしまってな。
今はすぐに出てしまうのももったいないと思って歩いていたところだ」
「ご挨拶をしたいと思っていたので、留まってくださってよかったです。
想像した通り、華やかな景色が、お似合いですね」
「そうだろうか? ミオレスカ殿の方が愛らしいという意味で絵になると思うが」
「そんなことは、ないです」
一時的に面を外した小夜子とミオレスカは暫く大真面目にどちらがこの迷宮の景色に似合っているか討論をした後二人で出口に向かったのだった。
翡翠(ka2534)にとって蓮(ka2568) は村を抜け出して森を彷徨っている時に最初に出会ったリアルブルーの出身者であり、彼の前でだけは巫女としてでなく一人の少年として接することができることから、ついつい甘えてしまったり子供っぽさを見せてしまう相手だった。
「楽しそうでしょ? ねーねー、僕を探してみてよ」
花の迷宮に誘った今日もそんな子供らしさが出て、一人残された蓮の気持ちも知らずに無邪気に迷宮の中へと駆けていく。
蓮にとってはかつて思いを寄せていた女性と瓜二つであることから複雑な心境もある。
花の迷宮へ入ってしまった翡翠を探しながら、本格的な迷宮に簡単に見つけることができずに焦りが出始める。
想い人を亡くした時の感情も蘇ってしまい不安に駆られ、このままもう会えなくなってしまうのではないか、と思った時に翡翠が見つかった。
「あーあ、見つかっちゃった」
最初はそんな風に笑っていた翡翠だったが蓮がどこか泣き出しそうな顔をしている気がしてはっと真顔になる。
「どうしたの……? 大丈夫だよ。僕はどこにもいかないよ」
蓮の頭を背伸びして撫でる翡翠に、蓮は小さくよかった、と呟く。
二人で迷宮を出た後は売店で買った切り花を翡翠にプレゼントする蓮と、大喜びする翡翠の姿が見られた。
ミネット・ベアール(ka3282)はルカ・シュバルツエンド(kz0073)と花の迷宮の中でばったり出くわした。
「……やあ、ミネット君」
「ぐへへぇ、呼びましたか?」
「今挨拶代りに呼んだ他は呼んでないかな」
「時にルカさん、綺麗な景色を見ていると不本意であっても誰かを思い浮かべませんか?
あの青髪の食欲魔人を……」
ミネットの言葉にルカはやれやれ、と肩をすくめる。
「この迷宮の花を手折るのは駄目だよって招待状を渡した時にいった気がするんだけど」
「んなっ流石にダメって言われてる物を採って食べたりしませんよ!」
その熱弁と共に盛大に空腹を主張する腹の虫。
「実は迷って歩きっぱなしなんです。何か食べさせてください」
「……これで足りなければ後は喫茶コーナーに置いてる物だね。出口はこっちだよ、ついておいで。途中ではぐれても僕は探しに行かないからね」
白衣を風にたなびかせながら歩き出すルカを追いかけるミネット。
一応歩幅を調節している辺りは実は結構良い年した男の嗜みという奴だろうか。
喫茶コーナーにつくまでの場繋ぎにとルカの携帯食を片っ端から平らげた後は素直にお礼を。
「花は人を狂わせることもあるそうですね。こういう景色の中では見慣れた人が違った印象になるとか……」
そう言いながらルカをじっと見つめた後、ミネットがおもむろに口を開く。
「今日のルカさんはなんだかとても……美味しそうに見えます」
じゅるっと唾を飲み込むあたり冗談に聞こえないのが怖い。
「おかしいな、人を食べる風習はないんですけれど。
ひとまず早く二人でゴールインしましょう」
「……その言い方、誤解を招きそうだからやめてくれないかな」
二人のやり取りは今日も安定して漫才模様のようだった。
「迷宮に挑戦する! ……けど、花を楽しみながらのんびりと行こう」
青霧 ノゾミ(ka4377) は真面目に最初から最後まで迷宮を歩き、抜けることを目的に。
時間がかかってもいいから着実に、が合言葉。
メモと筆記用具を準備して描ける範囲で迷路図を描き起こしていく。
花の咲き加減、色味の違い、密集している花の種類や咲いている場所の違いを覚え、メモに書き留め迷路を進んでいく。
同じ場所を通ったとしても焦らず、「あ、じゃ分岐点が近くにあるんだな」とヒントとして受け取って。
芳しい花の香りを楽しみながら日暮れまでに出られればいいと考えて歩を進めるのだった。
秋桜(ka4378)はNo.0(ka4640)と共に迷路に挑む。
植物の図鑑を片手に、花の説明をしながら迷路を進んでいく。
No.0は最近戦いばかりだったし、少し骨休めをしようと秋桜と話をしながら歩いていく。
女の子とこうして過ごしたことがないから少し緊張はしたが、花の名前を教えて貰ったりと幸い話題には事欠かない。
「……秋桜は……リアルブルーの花らしいけど、どんな花なんだ?」
No.0の問いかけに形状や秋に咲く花だということを説明した後、秋桜は付け加えるように口を開く。
「ご先祖様のお名前から拝借したので、好きなお花だったのかもしれませんね」
はぐれないように注意していたがうっかり図鑑に目を落としたまま進み、秋桜が道を間違ってはぐれてしまってからは、No.0はとても緊張しながらもはぐれないように彼女の手を引いて迷路を楽しむのだった。
「花の迷宮、ですか。こんなに凄いのは初めてみました……」
Han=Bee(ka4743)は初めて見る花の迷宮を物珍しげに眺めた後、興味津々な様子で中へと入った。
多種多様な花を眺めながら歩いていると、ここが迷路であるということをつい忘れてしまいそうになる。
「なんというか、すぐに出口を見つけてしまうのは勿体なく思えてしまいますね。
もう少しだけ、中を散策してみますか。見たこともない花が、まだあるかもしれません」
ひとしきり見終えたら出口探し。
眺めた花の種類やその場所を思い出して目印にしながらゴールを目指す。
「ん……凄く有意義な時間でした。こんな素晴らしいものがあるんですね」
「花の迷路か。そういえばそろそろ春の薔薇が見られる時期かのう」
紅薔薇(ka4766)は花の迷路の中で、出口を探すことは気にせずに生垣の中にある薔薇の花を探すのに終始していた。
「まぁ、出口がみつからなんだら、非常口から出ればいいのじゃ。特に急ぐ用事があるわけでもなし。
花を楽しむためだけに行くのもいいのじゃ」
喉が渇いた時のために水筒にお茶を入れて持ち歩き、薔薇の花を見つけたらしばらく愛でてからまた新しい薔薇を探してふらふらと。
とりあえず三色以上を目標に探して歩いたが薔薇だけでも多様な種類と色があったのは予想外の喜びだった。
「たまにはこんな日もいいのじゃ。もう少ししたら忙しくなりそうな気配がするしのう」
迷子を見つけたら手を引いて出口か非常口まで連れていきながら束の間の休息を楽しむのだった。
「花の迷宮だなんて、すてきですね。色んなお花が見られたら嬉しい、です」
ブランシュ・リゴー(ka4795)は花の満喫と迷宮のクリアを目標に迷路に入り込んだ。
入ったからにはゴールを目指すが、花に気を取られてなかなか進まない。
見覚えのない花はリアルブルーの花だろうか、と興味津々で近づき観察するが、全体的にも見たことのない花は結構多かったため、結局見覚えのある花以外はどちらの世界の花なのか不明だった。
「どちらの世界の花かは分からなくても、どちらの世界の花でも綺麗で素敵ですね」
そう結論付けて微笑み、のんびりと花を堪能しつつ散策して歩く。
「せっかくですから、花の迷路に挑戦させていただきましょう。
四季折々の花々があるでしょうから、そういうのを楽しんでいければ幸いですわね。
そういえば、右回りの法則というのがありましたわ!
迷った時は右回りに角を曲がっていけば、いずれ出口にたどり着くというものですが……まあ、それで何とかなるのではないでしょうかね?」
刻崎 藤乃(ka3829)は花の迷宮を楽しみながら出れなかった時は立体軌道を使うか非常口を探せばいい、とのんびり歩く。
「帰り際に売店でカーネーションでも買いましょうか。
お母様には会えませんが……気持ちだけでも捧げることはできると思いますの」
母は今頃どうしているだろう、そんな思いを宥めるように花々は芳しく咲き誇っていた。
「クリムゾンウェストで迷路園に挑戦できるとは思わなかったぜ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は最初に迷路を突破することを目標にひたすら走り回る。
「探せば歪虚が作った迷宮の一つもありそうな世界だ。いいトレーニングになるかもな」
しかしただ走り回るだけで突破する時間が短縮できるとは思えない。
製作者の意図を読まないと、と一度立ち止まる。
「花の迷宮……花を観賞するための迷路なら植えてある花の変化がヒントなのか?」
結局は走り回りながら花の鑑賞もしっかりすることになりそうな気配。
走り回れば空腹にもなるし迷路を脱出後は売店で食べ物を山盛りに買って休憩の時間。
「走り回って暑かったからな。冷たいデザートは有難いぜ」
他の人がのんびりと花を眺めることに重点を置く中、一風変わった楽しみ方をして満足げに息を吐くレイオスだった。
ジャック・エルギン(ka1522)は花が好きでやってきたのか、と問われ口端を上げて笑った。
「ん?もちろん花を見物にな。やっぱたまには目の保養もなー」
正確には美しい花々と戯れている女性陣をセットで見物に来たのだが全部明かす必要はないだろうと判断して前半部分だけを告げる。
「あの食える花っていうデザートもうまかったし、良い休暇かね」
売店でデザートに舌鼓を打ちつつ、迷宮から出てきたり売店で休憩する女性陣を花とセットで見物、気を緩めてダラリと休日を過ごすジャック。
女性陣も休暇で来ているのだし、同じハンターでもある。余暇を邪魔するのは本意ではないので茶々は入れずに視界の端で鑑賞するにとどめるのだった。
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239) はアルファス(ka3312) と一緒に売店で鉢植えの花を見ながら、気付かれないようにこっそりと包装した包みを取り出した。
「アル、かなり遅れたけど誕生日おめでとう。受け取ってくれるかな」
満面の笑みと共に差し出すように手渡せば少し驚いたようなアルファスの顔。
こっそりと用意して渡すのはサプライズプレゼントにするためで、前回は手渡すときに緊張してしまって失敗したが今度は上手く渡すことができた。
「この前の僕の誕生日は、ユーリが重傷を負って看病してたね。
誕生日に心配させないでよ……なんて言ってたね」
くすくす笑いながら開封の許可を取り、包装を開けばポインセチアの装飾が施されたネックレス。
ポインセチアの花言葉は『聖なる願い』だ。
「日ごろの感謝とお礼……それと、私の大好きな人が幸せになれますようにというお願いも込めたけど……」
「ポインセチアか……よく知ってたね。幸せ、か……そうだね。ありがとう♪」
アルファスには倒すべき敵がいる。
けれど幸せを見失っても行けない。ユーリが傍にいるのだから。
「ありがとう……本当に」
周りに人がいることに気づいて恥ずかしくなり、それを隠すために顔を赤くしながら抱き付くユーリの頬に、アルファスが自然とこぼした涙が落ちた。
天竜寺 舞(ka0377)は花の迷宮を抜けると空腹を感じたので売店で色々と食べていた。
「お姉ちゃんは花より団子だね」
そう妹の天竜寺 詩(ka0396)に苦笑され、そんなことないよ! と膨れてみせる。
喫茶スペースの椅子に座って詩といろいろ
食べ始める。
薔薇のジュースや花びらの入ったゼリーは綺麗で食べるのがもったいない気もする。
「ゴエモンに食べさせてあげたいけど、犬が食べても大丈夫なのかな?」
「うーん、どうだろう? 人の食べ物は動物には味が濃すぎるって聞くけど……」
「やめておいた方がいいかなぁ……あれ、小夜子さん?」
悩んでいると白拍子の衣装と狐面をつけた女性が通り過ぎるのが視界に入る。
「これは、天竜寺殿。貴殿らも招待を受けたのだろうか」
「舞でいいよ。詩も天竜寺だからややこしいし」
「そうか、ではお言葉に甘えて。ゴエモン殿も壮健そうでなによりだ」
なにか由来はあるのだろうか、とゴエモンの頭を撫でながら問う小夜子に舞が石川五右衛門だよ、と答えた。
「あ、ゴエモンももう知り合いなんだね。家のお父さん歌舞伎役者なんだけど、お姉ちゃん特に石川五右衛門が好きなんだよね。だからこの子の名前にしたみたい」
詩の補足説明に照れたように笑いながら小夜子をお茶の席に誘う舞。
狐の面を側頭部に付け直した後席に着いた小夜子と、見目にも楽しいお菓子と飲み物を楽しみながら三人は暫く話に花を咲かせるのだった。
アルナイル・モーネ(ka0854)は花の迷路を抜け出した後も興奮冷めやらぬ様子。
「お花の迷路なんてロマンチックなの! お姉ちゃんならきっと喜ぶなのっ」
売店で姉へのお土産を選ぶがどれが一番似合う花かが悩みどころ。
「んー……芍薬も雅~な感じでいいなのけどマーガレットも定番だし可愛いなの。
お姉ちゃんならどっちも似合いそうなの。
……やっぱりチューリップにする!」
最終的に選んだのは鉢植えのチューリップ。
「お姉ちゃんとあたしは永遠にらぶらぶなのっ」
喜ぶ姉の姿を想像して一段階テンションを上げるアルナイルなのだった。
「花の迷宮も魅力的だけど売店で珍しい食べ物を食べるのも捨てがたいよねー」
海堂 紅緒(ka1880) はそう言いながら花の入ったお菓子は綺麗だし、見て楽しんで食べておいしいというのは素敵だとはしゃぐ。
「これ、どうやって作るんだろう?」
不思議に思いながらもぐもぐと食べ、初めてみる花が多くてわくわくが絶えない様子。
甘いものが好きなのでお菓子は全制覇したいところ。
「お土産にドライフラワーとか欲しいなぁ」
帰ったら飾りたいし、と食べ終わった後はお土産コーナーを見て回って色とりどりの花を買って帰り支度をするのだった。
「花の迷宮探索をするつもりだったのに、よりにもよって前日に、ひどい目にあった過去の体験を夢で見るとは。そのせいで、忘れたはずのトラウマまで思い出すことになりましたし」
と売店で食べ物を買って花の迷宮を外から眺めているのはエルバッハ・リオン(ka2434) だ。
ちなみに夢の内容というのは、幼かった頃に、風変わりな両親からの誕生日プレゼントとして渡された『昔住んでいた土地では珍しい、ただし物凄く臭い花』によって気絶することになった挙句、しばらくその花の匂いが取れなかったという思い出したくもなかった体験だった。
その時のトラウマを思い出して気分がすぐれないため迷宮探索は諦めることにしたものの、帰る頃には芳しい花の香りと見目にも楽しい料理に思い出したトラウマを乗り越えていたのだったが。
(花の迷宮か……興味ないわけじゃないけど……でも一人で入って迷うのも嫌だし……今日は売店辺りでゆっくり過ごそう……)
カフカ・ブラックウェル(ka0794)は売店で販売されている鉢植えを見て回ったり、温かいお茶や軽食を取りながら、花の迷宮の出口付近を眺めていた。
「家の花壇に植え替えできる花はあるかな? 普通の花は……僕は好きだけど、あの子にとっては『花より団子』だろうな」
妹の事を思い出して微かに笑うカフカ。
食用花なら妹も喜ぶだろうか、と思いを巡らせる。
サラダに花びらを散らせば綺麗に映えそうだし、ジャムにしてお茶に入れたり、お菓子につけてもいいだろう。
お茶と軽食の会計を済ませると観賞用の花と食用の花の鉢植えを改めて探すことに。
他にもお土産にお菓子を買って、ふと息を吸い込めば花の香り。
「ここからでも迷宮の心地いい花の香りがするね」
目を細め、もう一度息を吸い込むのだった。
「花の『迷宮』か……僕の記憶の迷宮はいつになったらクリアできるんだろうね。
ま、今はこれを楽しもうか」
売店の調理スペースの一角を借りたクィーロ・ヴェリル(ka4122)は花を使った料理を提供する手伝いをしていた。
薔薇のアイスやラベンダーソフト、菜の花のてんぷらや食用花を使ったサラダなどを売るときはいささか胡散臭い顔の売り子としても行動。
その合間に花の迷宮への挑戦者を微笑ましく見ていた。
自身が入り込んだ迷宮はいつか抜けることができるのだろうかと思うが、答えはでそうもないので深くは考えずに。
「珍しいものを売ってるよ。よければ見ていってね。
迷うのは人生も一緒、なんていうとジジ臭いなんて言われそうだね。まぁ楽しめるうちに楽しむのがいいね」
そんな雑談をしながら調理場と喫茶スペースを行き来するのだった。
アスワド・ララ(ka4239)のお目当ては花を使ったお茶やお菓子などを摘まんでゆっくりと日ごろの疲れを癒すこと。
どんな店が並んでいるのか事前に情報を仕入れ、これはと当たりをつけた店へと直行。
花を使ったお茶や軽食、お菓子の食べ歩きをしながらうららかな日差しと咲き誇る花々を愛でる。
友人と家族へのお土産は食用花で作られたジャムを。
「お茶やお菓子にも使えそうですね」
ゆったりとした時間を満喫しながらそんな独り言をポツリ。
「綺麗ね~」
満月美華(ka0515)は戦友である浪風 白露(ka1025) と迷路を外側から眺めて花見の真っ最中。
「これ自信作なのよ♪」
「たまには……って弁当持ってきたのか? 用意周到だよな」
卵焼きやウィンナー、春野菜の養殖と彩のバランスを重視した弁当を美華が広げれば白露が感心したような呆れたような声を上げる。
「最近、依頼でお互い大変よね~」
「そうだな……それにしてもこんな迷路、維持も大変だろうによくやるなぁ」
のんびりと他愛のない話をしながら弁当を摘まみ、花を眺めて過ごす時間。
「のんびりするのも、ありか」
「ね、休める時には休んでおかないと」
白露の言葉に美華は笑顔になって頷くのだった。
花の迷宮が隠していた宝物の姿は見つけた人によって違った。
それはいわば、『思い出』や『再確認した絆』というものと言えるのかもしれない。
一度入ったら花の魔力で閉じ込められそうな迷宮だったが、全員が囚われることなく抜け出し、迷宮は閉館時間を迎える。
花の季節が続く限り、また新しい冒険者を、この迷宮は迎え入れるのだろうが今はただ静かに花を咲き誇らせているだけだ。
その静けさの中、時折響く葉擦れの音はまるで花々の内緒話のようだった。
デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)が以前体験した花の迷宮はひまわりだけで作られたもの。
大きく育ったひまわりは単純にひまわり畑として植えられたものだったとしても身長によっては立派な迷路に感じられることだろう。
「アレはアレで壮観だったし、夏を全身で感じられる思い出深い体験だったが……目の前のこいつときたらどうだ」
感嘆の吐息と共に独り言が漏れる。
さまざまな春の花をここまで鮮やかに配置するのは生半可な手間じゃすまなかったはず。
「迷い込んだ連中が抜け出したくならねぇ迷宮。魔王や怪物の類が最奥で待ち受けるラビリンスじゃなくて、さながら悪戯好きの春の妖精が、旅人を惑わす異界ってところか」
ファンタジーな世界に飛ばされたと思っていたデスドクロだったがこんなところでもそれを実感できるとはな、と、知らぬ間に止めていた足を動かしだす。
ぶらり散歩をするにもいい時期だ。のんびりと楽しむには最高の場所だろう。
舞桜守 巴(ka0036)はアリス・ブラックキャット(ka2914)に誘われてこの花の迷宮に足を運んでいた。
「巴ちゃん見て見て! 綺麗だね」
「結構本格的ですのね……はぐれたらダメですよ?」
と巴に釘を刺されたが、綺麗な花に釣られてふらふらと歩いている内に迷子になってしまったアリス。
「……あ、どこ……?」
左右を見回しても巴の姿はどこにもない。
「どうしよう、どこか、ううん、誰か……探さないと……」
一方その頃、迷宮内でちょっと休憩にと立ち止った巴もアリスとはぐれたことに気づいて慌てていた。
「……あら、ナインチェ? ナインチェ―! どこですのー!?」
涙は流さないもののとにかく誰か探さなければと歩き回るアリス。
招待を受けたハンターがどうしたのか声をかけてくれたがホッとはしても探し人には会えない。
しばらくしてようやく再会を果たした友人にひしっと抱き付いて、そこに確かに巴がいるということを確認するようにしがみつくアリスを巴も抱きしめ返す。
「ああもう全く……勝手にうろついたらダメでしょう……」
窘める口調だったがアリスの髪を撫でる手つきはこの上なく優しい。
さっきまで泣き出す寸前だったアリスはそれでようやく落ち着いたらしく見上げて微笑む。
「今度は迷子にならないように、手をつなご?」
「そうですわね……もうはぐれてはダメですわよ」
花々を楽しみながら出口に向かい、迷宮を抜けた後、アリスはまだ芽を出していない鉢植えを一つ買った。
育てて花が咲いて、それを眺めることで思い出が少しでも長く続くようにと願いを込めて。
ヒース・R・ウォーカー(ka0145) は迷路を歩きながら楽しげに咲き誇る花々を眺め、なくしてしまった記憶を想っていた。
大切なモノがあったことは覚えているのに、それが何なのかが思い出せない。
そのくせ奪ったモノ、なくしたモノのことは鮮明に覚えているから性質が悪い、と歩きながら頭の中で悪態をつく。
「……まるで罪を忘れるな、これが罰だと言われているみたいだ。
失くした記憶……昔もボクはこんな風に花が咲いている場所を歩いたのかなぁ?」
語りかける相手は相棒とも呼べる赤い瞳の黒猫だが、当然答えは返ってこない。
「まぁ、お前とこうして歩いていたことは覚えておくとしようかぁ。なぁ、ナナクロ?」
今度の問いには黒猫は尻尾を揺らして答えた。
それがどういう意味なのかは二人と一匹だけの秘密、なのかもしれない。
「ふっふっふ……迷宮か、腕がなるぜ!
俺はこの日のために、左手の法則とやらを学んできたのだ!!」
岩井崎 旭(ka0234)は友人のシルヴィア=ライゼンシュタイン(ka0338)と一緒に迷宮を楽しみにやってきた。
迷宮に入る前に、会場の造りを把握しようとして一度足を運んだものの、そのまま迷子に。
「おい、さっきから迷宮感でてきちゃいねーか!?」
どうやら本来迷った人が脱出するために設けられた非常口から迷宮の中に入ってしまったらしく、花の迷宮を二人でうろうろ。
「いつの間にか迷宮に迷い込んでいたようですね……」
早く終わらせて売店でなにか食べましょうと、これでも迷路は得意だと胸を張っていたシルヴィアも呑気な様子であちらこちらへと歩く。
二人が気づかないまままた非常口から外に出てしまい、何処をどう通ったのかたどり着いたのは海。
「ゴールが海とは……凝った作りです……」
尚、迷路で役立つのは右手の法則であり、この迷宮のゴールの先にあるのは売店であって海ではないが二人は満足げにハイタッチしたのだった。
「最近休みを入れる比率が上がっているのはきっと気のせいではないですね。
まぁ……たまにはいいですよな?」
米本 剛(ka0320)は言い訳のように呟きながら花の迷宮をふらりふらり。
「花は心にゆとりが出て良いものですからね。素晴らしきかな……平穏な日々、平和とはやはり大切なものだと思います」
こういった時間と場所と人々のために自分は戦場に立っているのかと思うと英気が養える、と思いながら、ただ迷宮を攻略するのではなく花に誘われて気の向くままに。
目的もなく歩き回りながら花の香りに誘われるのだった。
「花の生け垣で作った迷路なんて……自分初めてです」
静架(ka0387)は思えばこんなにたくさんの種類の花々を見るのは初めてかもしれないと興味津々であたりを見て歩く。
「スグル、あれ見てください!」
同行したスグル・メレディス(ka2172) にあの葉っぱは炒めると美味しい、これは砂糖漬けにして食べられる、こちらは痛み止めになる、あれは血止めに使える、と名前は知らないものの食用や薬効には詳しい様子を見せる。
「この辺の植物は見たことがないです」
知識を得ることに貪欲で、表情はほとんど変わらないが楽しげな雰囲気の静架。
夢の世界のようだと思いながら花の種類を数え、リアルブルーで見かける花もあったりするが名前は違うのかな、と思いを巡らせるスグルは生き生きとしている静架の隣で小さく笑みを。
「どうかしたんですか?」
スグルの男心には無頓着な静架が問いかけると可愛いね、と答えが返ってくる。
その言葉はつま先を踏みつけて黙らせて。
「そんなことを言いたかったんですか?」
「んー……別に今じゃなくていいんだけどさ。
なんかね、ちょっと先のこととか考えちゃってさ。
そういう話をしてもいいかなって」
まぁ、一緒にいることには変わりないんだけどね、と付け加えたスグルの言葉にいまさら何を話すことがあるのかと首を傾げる静架。
「今晩の食事は迷路の出口にある売店でなにか買って帰りましょう」
色気より食い気な静かにスグルはもう一度小さく笑んで、静架の手を取る。
(静が楽しければいいか、今は。もちろんこれからも)
そんなことを思いながら出口を目指して歩き出すのだった。
シェリル・マイヤーズ(ka0509)は花が好きで参加。桜型妖精のモイラは元気な女の子なので色とりどりの花で埋め尽くされた景色に大興奮。
「……モイラ……迷子になる……。肩にちゃんと乗ってて、ね?」
迷路を、あえて迷って歩くのもいいと気の向くままに歩いていく。
花の一輪一輪を、撫でるようにしながら。
途中で普段被っているフードをしっかりと花が見たくなって外した。
(花は好き。邪気もしがらみもなく、ただ咲き誇る姿は素直に美しいとだけ思えるから。
花の迷宮……閉じ込められて、このまま出られなくなってもいいかもしれない……)
そんなことを考えているとくいくいと髪を引っ張られる感覚。視線を向ければ心配そうなモイラが。
「大丈夫……さぁ、帰ろう……出口……分かる?」
妖精は道案内する気満々だったけれど、きっと出口は分からないから、まだしばらく花園の中だろう。
「たまの休みです。こういう息抜きもいいでしょう」
上泉 澪(ka0518) は折角だから、と迷路に入ってみた。
間違えた道に再び入らなければいずれ抜けられるだろうし、と花を眺めながらゆるりと散策。
「まあ……日が落ちても抜けられないとなれば流石に困りものですが、それはないでしょうし」
連れ合いがいるわけでもないから気楽なものだとゆっくり歩く。
「身体もだいぶ調子が戻ってはきましたが、昔ほどとはいきませんか。
半身が焼けた身で、ここまで動くようになっただけでもいい方なのでしょうが。
辺境にも自然はありますが、こういうものはまた趣が違いますね」
どちらが良いというものでもないし、どちらも好ましい、と思いながら澪は胸いっぱいに花の香りを満たすように息を吸い込んだ。
羊谷 めい(ka0669)は花の迷宮を不思議そうに眺めながら中に入った。
「たくさんお花があって、とても素敵、です、ね」
ゆっくりと散歩するように花を眺めて歩く。
知らない人を誘うのは恐いし、話しかけるのも苦手なので、一人でのんびり。
迷子になりそうだけれども、すぐに非常口から出てしまうのは勿体ない。
「迷ってもいいので、たくさん、お花が見たいな……」
迷ってもその先の景色が楽しめる造りになっている迷宮は迷うのもまた一つの楽しみだ。
「地球のお花もあって……なんだか懐かしいような、そんな感じがするかも、です」
リアルブルーの花と、クリムゾンウェストの花が調和を描くように裂いている姿はなんだか不思議だったけれど、綺麗であることは確かだった。
「……花が沢山です、ね」
瀬織 怜皇(ka0684)はUisca Amhran(ka0754)と手を繋ぎながら行動。
「迷宮では右手法っていうのをしたら抜け出せるって聞いたことがあるよ。
右側の壁沿いの沿って進んでいくんだって」
「……イスカはよく色々な豆知識的なものを知っています、よね」
右手法のことを聞き感心した様子の怜皇。
リアルブルーの花を懐かしい思いと共に鑑賞。
「いろんなお花があるね。見たことのないお花もあるよ。リアルブルーのお花かな?
咲いている花の色や香り、風の音や肌触りから自然を感じて故郷の森のことを思い出すよ。
やっぱり自然っていいね。エルフの私は、こうした緑に囲まれた場所がとっても落ち着くよ」
「ですね。リアルブルーの花もいくつか混じっているようです。懐かしいですね」
休憩用のベンチに座ってUiscaが用意した軽食とお茶を摘まむ。
「とても美味しいです、よ。ありがとう、イスカ。エルフは自然の中にあるイメージが確かにします、ね」
花の香りに包まれて食事と雑談を楽しんだ後は再び歩き出しながら変わる風景を楽しむ時間に戻る二人だった。
レオン・フォイアロート(ka0829)は招待主の好意に感謝し、花の迷宮散策を楽しんでいた。
剣の修業以外にも、いろいろなことを見聞きして知識を広げるのもハンターになった目的の一つだったのでいい機会だと思うことにしたようだ。
「人生は先にどんなことがあるか分からないので、花の名前を知っていることが何かの役に立つかもしれないですしね」
リアルブルーの花も何種類かあると聞いたのも楽しみの一つ。
花はこちらの世界に適応してどこか変わっているのか、それともリアルブルーで見かけたままなのか。
迷路の中で迷子になっている人を見かければ騎士の務めとして手助けしながら迷宮を歩いて回るレオンなのだった。
ミオレスカ(ka3496) は今日やってきているという御影 小夜子(kz0018)に挨拶するために迷路を彷徨っていた。
「こういう、華やかなお花の中、似合うと思います」
まだ巡り合えない女性の姿を思い描きながら右手の方向に順番に一巡り。
直接触ってしまうと傷めてしまうのでそっとなぞりながら景色を楽しむ。
「花の間から、奥の景色も見えるのですね、深みが増えて、凄いです。
えっと、この花は、先ほども見かけたような?
同じ花が、違うところにも、ありますでしょうか」
ベンチに座って探し人を見つけ出すことができるのか、そしてこの迷宮からでられるのか、と思案するがあまり悲観的にはならない。
「そこにいるのはミオレスカ殿か?」
「あ、小夜子さん、お久しぶりです」
「壮健そうでなにより。ひょっとして迷われたか?」
「そのようです、ね」
「もし出口を探している様なら休憩が済んだらご案内しよう。自然の中で動き回るのは得意なせいか、割とすぐに出口を見つけてしまってな。
今はすぐに出てしまうのももったいないと思って歩いていたところだ」
「ご挨拶をしたいと思っていたので、留まってくださってよかったです。
想像した通り、華やかな景色が、お似合いですね」
「そうだろうか? ミオレスカ殿の方が愛らしいという意味で絵になると思うが」
「そんなことは、ないです」
一時的に面を外した小夜子とミオレスカは暫く大真面目にどちらがこの迷宮の景色に似合っているか討論をした後二人で出口に向かったのだった。
翡翠(ka2534)にとって蓮(ka2568) は村を抜け出して森を彷徨っている時に最初に出会ったリアルブルーの出身者であり、彼の前でだけは巫女としてでなく一人の少年として接することができることから、ついつい甘えてしまったり子供っぽさを見せてしまう相手だった。
「楽しそうでしょ? ねーねー、僕を探してみてよ」
花の迷宮に誘った今日もそんな子供らしさが出て、一人残された蓮の気持ちも知らずに無邪気に迷宮の中へと駆けていく。
蓮にとってはかつて思いを寄せていた女性と瓜二つであることから複雑な心境もある。
花の迷宮へ入ってしまった翡翠を探しながら、本格的な迷宮に簡単に見つけることができずに焦りが出始める。
想い人を亡くした時の感情も蘇ってしまい不安に駆られ、このままもう会えなくなってしまうのではないか、と思った時に翡翠が見つかった。
「あーあ、見つかっちゃった」
最初はそんな風に笑っていた翡翠だったが蓮がどこか泣き出しそうな顔をしている気がしてはっと真顔になる。
「どうしたの……? 大丈夫だよ。僕はどこにもいかないよ」
蓮の頭を背伸びして撫でる翡翠に、蓮は小さくよかった、と呟く。
二人で迷宮を出た後は売店で買った切り花を翡翠にプレゼントする蓮と、大喜びする翡翠の姿が見られた。
ミネット・ベアール(ka3282)はルカ・シュバルツエンド(kz0073)と花の迷宮の中でばったり出くわした。
「……やあ、ミネット君」
「ぐへへぇ、呼びましたか?」
「今挨拶代りに呼んだ他は呼んでないかな」
「時にルカさん、綺麗な景色を見ていると不本意であっても誰かを思い浮かべませんか?
あの青髪の食欲魔人を……」
ミネットの言葉にルカはやれやれ、と肩をすくめる。
「この迷宮の花を手折るのは駄目だよって招待状を渡した時にいった気がするんだけど」
「んなっ流石にダメって言われてる物を採って食べたりしませんよ!」
その熱弁と共に盛大に空腹を主張する腹の虫。
「実は迷って歩きっぱなしなんです。何か食べさせてください」
「……これで足りなければ後は喫茶コーナーに置いてる物だね。出口はこっちだよ、ついておいで。途中ではぐれても僕は探しに行かないからね」
白衣を風にたなびかせながら歩き出すルカを追いかけるミネット。
一応歩幅を調節している辺りは実は結構良い年した男の嗜みという奴だろうか。
喫茶コーナーにつくまでの場繋ぎにとルカの携帯食を片っ端から平らげた後は素直にお礼を。
「花は人を狂わせることもあるそうですね。こういう景色の中では見慣れた人が違った印象になるとか……」
そう言いながらルカをじっと見つめた後、ミネットがおもむろに口を開く。
「今日のルカさんはなんだかとても……美味しそうに見えます」
じゅるっと唾を飲み込むあたり冗談に聞こえないのが怖い。
「おかしいな、人を食べる風習はないんですけれど。
ひとまず早く二人でゴールインしましょう」
「……その言い方、誤解を招きそうだからやめてくれないかな」
二人のやり取りは今日も安定して漫才模様のようだった。
「迷宮に挑戦する! ……けど、花を楽しみながらのんびりと行こう」
青霧 ノゾミ(ka4377) は真面目に最初から最後まで迷宮を歩き、抜けることを目的に。
時間がかかってもいいから着実に、が合言葉。
メモと筆記用具を準備して描ける範囲で迷路図を描き起こしていく。
花の咲き加減、色味の違い、密集している花の種類や咲いている場所の違いを覚え、メモに書き留め迷路を進んでいく。
同じ場所を通ったとしても焦らず、「あ、じゃ分岐点が近くにあるんだな」とヒントとして受け取って。
芳しい花の香りを楽しみながら日暮れまでに出られればいいと考えて歩を進めるのだった。
秋桜(ka4378)はNo.0(ka4640)と共に迷路に挑む。
植物の図鑑を片手に、花の説明をしながら迷路を進んでいく。
No.0は最近戦いばかりだったし、少し骨休めをしようと秋桜と話をしながら歩いていく。
女の子とこうして過ごしたことがないから少し緊張はしたが、花の名前を教えて貰ったりと幸い話題には事欠かない。
「……秋桜は……リアルブルーの花らしいけど、どんな花なんだ?」
No.0の問いかけに形状や秋に咲く花だということを説明した後、秋桜は付け加えるように口を開く。
「ご先祖様のお名前から拝借したので、好きなお花だったのかもしれませんね」
はぐれないように注意していたがうっかり図鑑に目を落としたまま進み、秋桜が道を間違ってはぐれてしまってからは、No.0はとても緊張しながらもはぐれないように彼女の手を引いて迷路を楽しむのだった。
「花の迷宮、ですか。こんなに凄いのは初めてみました……」
Han=Bee(ka4743)は初めて見る花の迷宮を物珍しげに眺めた後、興味津々な様子で中へと入った。
多種多様な花を眺めながら歩いていると、ここが迷路であるということをつい忘れてしまいそうになる。
「なんというか、すぐに出口を見つけてしまうのは勿体なく思えてしまいますね。
もう少しだけ、中を散策してみますか。見たこともない花が、まだあるかもしれません」
ひとしきり見終えたら出口探し。
眺めた花の種類やその場所を思い出して目印にしながらゴールを目指す。
「ん……凄く有意義な時間でした。こんな素晴らしいものがあるんですね」
「花の迷路か。そういえばそろそろ春の薔薇が見られる時期かのう」
紅薔薇(ka4766)は花の迷路の中で、出口を探すことは気にせずに生垣の中にある薔薇の花を探すのに終始していた。
「まぁ、出口がみつからなんだら、非常口から出ればいいのじゃ。特に急ぐ用事があるわけでもなし。
花を楽しむためだけに行くのもいいのじゃ」
喉が渇いた時のために水筒にお茶を入れて持ち歩き、薔薇の花を見つけたらしばらく愛でてからまた新しい薔薇を探してふらふらと。
とりあえず三色以上を目標に探して歩いたが薔薇だけでも多様な種類と色があったのは予想外の喜びだった。
「たまにはこんな日もいいのじゃ。もう少ししたら忙しくなりそうな気配がするしのう」
迷子を見つけたら手を引いて出口か非常口まで連れていきながら束の間の休息を楽しむのだった。
「花の迷宮だなんて、すてきですね。色んなお花が見られたら嬉しい、です」
ブランシュ・リゴー(ka4795)は花の満喫と迷宮のクリアを目標に迷路に入り込んだ。
入ったからにはゴールを目指すが、花に気を取られてなかなか進まない。
見覚えのない花はリアルブルーの花だろうか、と興味津々で近づき観察するが、全体的にも見たことのない花は結構多かったため、結局見覚えのある花以外はどちらの世界の花なのか不明だった。
「どちらの世界の花かは分からなくても、どちらの世界の花でも綺麗で素敵ですね」
そう結論付けて微笑み、のんびりと花を堪能しつつ散策して歩く。
「せっかくですから、花の迷路に挑戦させていただきましょう。
四季折々の花々があるでしょうから、そういうのを楽しんでいければ幸いですわね。
そういえば、右回りの法則というのがありましたわ!
迷った時は右回りに角を曲がっていけば、いずれ出口にたどり着くというものですが……まあ、それで何とかなるのではないでしょうかね?」
刻崎 藤乃(ka3829)は花の迷宮を楽しみながら出れなかった時は立体軌道を使うか非常口を探せばいい、とのんびり歩く。
「帰り際に売店でカーネーションでも買いましょうか。
お母様には会えませんが……気持ちだけでも捧げることはできると思いますの」
母は今頃どうしているだろう、そんな思いを宥めるように花々は芳しく咲き誇っていた。
「クリムゾンウェストで迷路園に挑戦できるとは思わなかったぜ」
レイオス・アクアウォーカー(ka1990)は最初に迷路を突破することを目標にひたすら走り回る。
「探せば歪虚が作った迷宮の一つもありそうな世界だ。いいトレーニングになるかもな」
しかしただ走り回るだけで突破する時間が短縮できるとは思えない。
製作者の意図を読まないと、と一度立ち止まる。
「花の迷宮……花を観賞するための迷路なら植えてある花の変化がヒントなのか?」
結局は走り回りながら花の鑑賞もしっかりすることになりそうな気配。
走り回れば空腹にもなるし迷路を脱出後は売店で食べ物を山盛りに買って休憩の時間。
「走り回って暑かったからな。冷たいデザートは有難いぜ」
他の人がのんびりと花を眺めることに重点を置く中、一風変わった楽しみ方をして満足げに息を吐くレイオスだった。
ジャック・エルギン(ka1522)は花が好きでやってきたのか、と問われ口端を上げて笑った。
「ん?もちろん花を見物にな。やっぱたまには目の保養もなー」
正確には美しい花々と戯れている女性陣をセットで見物に来たのだが全部明かす必要はないだろうと判断して前半部分だけを告げる。
「あの食える花っていうデザートもうまかったし、良い休暇かね」
売店でデザートに舌鼓を打ちつつ、迷宮から出てきたり売店で休憩する女性陣を花とセットで見物、気を緩めてダラリと休日を過ごすジャック。
女性陣も休暇で来ているのだし、同じハンターでもある。余暇を邪魔するのは本意ではないので茶々は入れずに視界の端で鑑賞するにとどめるのだった。
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239) はアルファス(ka3312) と一緒に売店で鉢植えの花を見ながら、気付かれないようにこっそりと包装した包みを取り出した。
「アル、かなり遅れたけど誕生日おめでとう。受け取ってくれるかな」
満面の笑みと共に差し出すように手渡せば少し驚いたようなアルファスの顔。
こっそりと用意して渡すのはサプライズプレゼントにするためで、前回は手渡すときに緊張してしまって失敗したが今度は上手く渡すことができた。
「この前の僕の誕生日は、ユーリが重傷を負って看病してたね。
誕生日に心配させないでよ……なんて言ってたね」
くすくす笑いながら開封の許可を取り、包装を開けばポインセチアの装飾が施されたネックレス。
ポインセチアの花言葉は『聖なる願い』だ。
「日ごろの感謝とお礼……それと、私の大好きな人が幸せになれますようにというお願いも込めたけど……」
「ポインセチアか……よく知ってたね。幸せ、か……そうだね。ありがとう♪」
アルファスには倒すべき敵がいる。
けれど幸せを見失っても行けない。ユーリが傍にいるのだから。
「ありがとう……本当に」
周りに人がいることに気づいて恥ずかしくなり、それを隠すために顔を赤くしながら抱き付くユーリの頬に、アルファスが自然とこぼした涙が落ちた。
天竜寺 舞(ka0377)は花の迷宮を抜けると空腹を感じたので売店で色々と食べていた。
「お姉ちゃんは花より団子だね」
そう妹の天竜寺 詩(ka0396)に苦笑され、そんなことないよ! と膨れてみせる。
喫茶スペースの椅子に座って詩といろいろ
食べ始める。
薔薇のジュースや花びらの入ったゼリーは綺麗で食べるのがもったいない気もする。
「ゴエモンに食べさせてあげたいけど、犬が食べても大丈夫なのかな?」
「うーん、どうだろう? 人の食べ物は動物には味が濃すぎるって聞くけど……」
「やめておいた方がいいかなぁ……あれ、小夜子さん?」
悩んでいると白拍子の衣装と狐面をつけた女性が通り過ぎるのが視界に入る。
「これは、天竜寺殿。貴殿らも招待を受けたのだろうか」
「舞でいいよ。詩も天竜寺だからややこしいし」
「そうか、ではお言葉に甘えて。ゴエモン殿も壮健そうでなによりだ」
なにか由来はあるのだろうか、とゴエモンの頭を撫でながら問う小夜子に舞が石川五右衛門だよ、と答えた。
「あ、ゴエモンももう知り合いなんだね。家のお父さん歌舞伎役者なんだけど、お姉ちゃん特に石川五右衛門が好きなんだよね。だからこの子の名前にしたみたい」
詩の補足説明に照れたように笑いながら小夜子をお茶の席に誘う舞。
狐の面を側頭部に付け直した後席に着いた小夜子と、見目にも楽しいお菓子と飲み物を楽しみながら三人は暫く話に花を咲かせるのだった。
アルナイル・モーネ(ka0854)は花の迷路を抜け出した後も興奮冷めやらぬ様子。
「お花の迷路なんてロマンチックなの! お姉ちゃんならきっと喜ぶなのっ」
売店で姉へのお土産を選ぶがどれが一番似合う花かが悩みどころ。
「んー……芍薬も雅~な感じでいいなのけどマーガレットも定番だし可愛いなの。
お姉ちゃんならどっちも似合いそうなの。
……やっぱりチューリップにする!」
最終的に選んだのは鉢植えのチューリップ。
「お姉ちゃんとあたしは永遠にらぶらぶなのっ」
喜ぶ姉の姿を想像して一段階テンションを上げるアルナイルなのだった。
「花の迷宮も魅力的だけど売店で珍しい食べ物を食べるのも捨てがたいよねー」
海堂 紅緒(ka1880) はそう言いながら花の入ったお菓子は綺麗だし、見て楽しんで食べておいしいというのは素敵だとはしゃぐ。
「これ、どうやって作るんだろう?」
不思議に思いながらもぐもぐと食べ、初めてみる花が多くてわくわくが絶えない様子。
甘いものが好きなのでお菓子は全制覇したいところ。
「お土産にドライフラワーとか欲しいなぁ」
帰ったら飾りたいし、と食べ終わった後はお土産コーナーを見て回って色とりどりの花を買って帰り支度をするのだった。
「花の迷宮探索をするつもりだったのに、よりにもよって前日に、ひどい目にあった過去の体験を夢で見るとは。そのせいで、忘れたはずのトラウマまで思い出すことになりましたし」
と売店で食べ物を買って花の迷宮を外から眺めているのはエルバッハ・リオン(ka2434) だ。
ちなみに夢の内容というのは、幼かった頃に、風変わりな両親からの誕生日プレゼントとして渡された『昔住んでいた土地では珍しい、ただし物凄く臭い花』によって気絶することになった挙句、しばらくその花の匂いが取れなかったという思い出したくもなかった体験だった。
その時のトラウマを思い出して気分がすぐれないため迷宮探索は諦めることにしたものの、帰る頃には芳しい花の香りと見目にも楽しい料理に思い出したトラウマを乗り越えていたのだったが。
(花の迷宮か……興味ないわけじゃないけど……でも一人で入って迷うのも嫌だし……今日は売店辺りでゆっくり過ごそう……)
カフカ・ブラックウェル(ka0794)は売店で販売されている鉢植えを見て回ったり、温かいお茶や軽食を取りながら、花の迷宮の出口付近を眺めていた。
「家の花壇に植え替えできる花はあるかな? 普通の花は……僕は好きだけど、あの子にとっては『花より団子』だろうな」
妹の事を思い出して微かに笑うカフカ。
食用花なら妹も喜ぶだろうか、と思いを巡らせる。
サラダに花びらを散らせば綺麗に映えそうだし、ジャムにしてお茶に入れたり、お菓子につけてもいいだろう。
お茶と軽食の会計を済ませると観賞用の花と食用の花の鉢植えを改めて探すことに。
他にもお土産にお菓子を買って、ふと息を吸い込めば花の香り。
「ここからでも迷宮の心地いい花の香りがするね」
目を細め、もう一度息を吸い込むのだった。
「花の『迷宮』か……僕の記憶の迷宮はいつになったらクリアできるんだろうね。
ま、今はこれを楽しもうか」
売店の調理スペースの一角を借りたクィーロ・ヴェリル(ka4122)は花を使った料理を提供する手伝いをしていた。
薔薇のアイスやラベンダーソフト、菜の花のてんぷらや食用花を使ったサラダなどを売るときはいささか胡散臭い顔の売り子としても行動。
その合間に花の迷宮への挑戦者を微笑ましく見ていた。
自身が入り込んだ迷宮はいつか抜けることができるのだろうかと思うが、答えはでそうもないので深くは考えずに。
「珍しいものを売ってるよ。よければ見ていってね。
迷うのは人生も一緒、なんていうとジジ臭いなんて言われそうだね。まぁ楽しめるうちに楽しむのがいいね」
そんな雑談をしながら調理場と喫茶スペースを行き来するのだった。
アスワド・ララ(ka4239)のお目当ては花を使ったお茶やお菓子などを摘まんでゆっくりと日ごろの疲れを癒すこと。
どんな店が並んでいるのか事前に情報を仕入れ、これはと当たりをつけた店へと直行。
花を使ったお茶や軽食、お菓子の食べ歩きをしながらうららかな日差しと咲き誇る花々を愛でる。
友人と家族へのお土産は食用花で作られたジャムを。
「お茶やお菓子にも使えそうですね」
ゆったりとした時間を満喫しながらそんな独り言をポツリ。
「綺麗ね~」
満月美華(ka0515)は戦友である浪風 白露(ka1025) と迷路を外側から眺めて花見の真っ最中。
「これ自信作なのよ♪」
「たまには……って弁当持ってきたのか? 用意周到だよな」
卵焼きやウィンナー、春野菜の養殖と彩のバランスを重視した弁当を美華が広げれば白露が感心したような呆れたような声を上げる。
「最近、依頼でお互い大変よね~」
「そうだな……それにしてもこんな迷路、維持も大変だろうによくやるなぁ」
のんびりと他愛のない話をしながら弁当を摘まみ、花を眺めて過ごす時間。
「のんびりするのも、ありか」
「ね、休める時には休んでおかないと」
白露の言葉に美華は笑顔になって頷くのだった。
花の迷宮が隠していた宝物の姿は見つけた人によって違った。
それはいわば、『思い出』や『再確認した絆』というものと言えるのかもしれない。
一度入ったら花の魔力で閉じ込められそうな迷宮だったが、全員が囚われることなく抜け出し、迷宮は閉館時間を迎える。
花の季節が続く限り、また新しい冒険者を、この迷宮は迎え入れるのだろうが今はただ静かに花を咲き誇らせているだけだ。
その静けさの中、時折響く葉擦れの音はまるで花々の内緒話のようだった。
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 23人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/10 18:21:25 |