ゲスト
(ka0000)
目指せ大物、でも、外道も釣れる!?
マスター:篠崎砂美

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~15人
- サポート
- 0~15人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/12 09:00
- 完成日
- 2014/07/19 16:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
「いやあ、いい釣り日和ですねえ」
「ええ、本当ですねえ」
ここは、自由都市同盟にある極彩色の都市ヴァリオス近くの釣り場です。天気がいいからか、何人もの釣り人が、そこかしこでのんびりと釣り糸を垂れています。周囲では、それをながめて回る人もいるようです。
「おや、あなた、ウキ見てください。引いてますよ」
「おおっと、本当だ!!」
桟橋から釣り糸を垂らしていた釣り人が、慌てて竿をグンと立てました。左右に動き回る釣り糸に引っぱられて、竿の先端が大きく撓ります。どうやら大物のようです。
「頑張れー!」
のんびりと釣りをながめていた観客からも声援が飛びます。
「よっしゃあ、まかせと……あっ!?」
ボキッ!!
竿が折れてしまいました。
ポチャンと、逃げた魚がこれ見よがしに跳ねて見せます。
「残念!」
「くそう、次こそは……」
周囲の釣り人たちも、次々に引きがあって、釣果に一喜一憂しています。
さてさて、あなたの釣果はどうだったのでしょうか。
「ええ、本当ですねえ」
ここは、自由都市同盟にある極彩色の都市ヴァリオス近くの釣り場です。天気がいいからか、何人もの釣り人が、そこかしこでのんびりと釣り糸を垂れています。周囲では、それをながめて回る人もいるようです。
「おや、あなた、ウキ見てください。引いてますよ」
「おおっと、本当だ!!」
桟橋から釣り糸を垂らしていた釣り人が、慌てて竿をグンと立てました。左右に動き回る釣り糸に引っぱられて、竿の先端が大きく撓ります。どうやら大物のようです。
「頑張れー!」
のんびりと釣りをながめていた観客からも声援が飛びます。
「よっしゃあ、まかせと……あっ!?」
ボキッ!!
竿が折れてしまいました。
ポチャンと、逃げた魚がこれ見よがしに跳ねて見せます。
「残念!」
「くそう、次こそは……」
周囲の釣り人たちも、次々に引きがあって、釣果に一喜一憂しています。
さてさて、あなたの釣果はどうだったのでしょうか。
リプレイ本文
●川近く
「こうして、のんびりと英気を養うのもよろしいですわね」
水面に釣り糸を垂れながら、ヴィーナ・ストレアル(ka1501)が軽く目を細めた。光沢のある菫色の髪がそよかな風にゆれる。
あまり騒がしいのは性に合わないので、こうして河口近くの木陰で一人楽しく釣り三昧だ。
そういえば、見張り用に連れてきていたペットのカラスはどこへ行ったのだろう。
「どうせでしたら、大きなワニでも釣れれば面白いですのにねえ」
そんな事を考えていると、さっそくあたりが来た。
やったあっと、ヴィーナが釣り上げると、それは見事なカンパチであった。
「なあんだ、ワニじゃなかったですわ」
りっぱな獲物ではあるが、ワニ狙いのヴィーナにとっては外道である。
そんなカンパチを皮切りに、次々と魚や変な物が釣れる。
スズキ、材木、帽子、カツオ、エイ、バケツ。それにしても外道ばかりである。
次の引きは今までとは段違いだった。竿ごとヴィーナを川に引きずり込もうとする。
「今度こそワニですわ!!」
ヴィーナが気合いを入れる。すると、何やら蠢く触手が一斉に水面に上がって襲いかかってきた。巨大なミズダコだ。
ヴィーナはすぐに鞭を手に取ると、陸に上がってきたミズダコを叩き据えて勝利する。
「まだまだ、わたしの敵ではありませんわね」
あらためて釣り糸を垂らすと、今度はクロダイがかかった。
「さすがに疲れてきましたわね……んっ!?」
今度こそと、ヴィーナが思いっきり釣り竿を引き上げた。ところが、獲物の重さに耐えきれず、ボキッと釣り竿が折れてしまった。
「おしい、絶対今のはワニでしたわ。間違いありません!」
そう信じる、ヴィーナであった。
●岩場
「頑張って、おかずの干物にする魚を釣るわよー」
どんっと大きな胸を張って、フローレンス・レインフォード(ka0443)が妹のネフィリア・レインフォード(ka0444)と末の妹のブリス・レインフォード(ka0445)に言った。
「フロー姉、ブリスちゃん頑張れー♪」
ネフィリアの声援を受けて、海に突き出た岩場から釣り糸を垂らす。狙いはカンパチだ。
近くでは、佐々良 縁(ka1269)も釣り場を探していた。
「さて、何が来るかなあ。わくわく♪」
岩場の奥まった所に場所を定めると、緑が釣り糸を垂らした。
「このへんだと、狙い目はイシモチあたりかなぁ」
釣りはリアルブルーにいた頃からの彼女の趣味である。
「できる限り多く釣って帰らないと……。ブリスもお願いね」
うなずく末の妹のブリスと手分けして、フローレンスも釣り始める。
さっそくフローレンスの竿に手応えがあった。結構大物だ。
力を込めて釣り竿を立てると、水面を大きなカンパチが跳ねがらやってくる。
「わーい!」
待ちきれないネフィリアが、獲物を捕りに行った。ひょいと玉網を使って岩にぶつかる前のカンパチを掬い取る。
「ふふん♪ とったどー! なのだ♪」
ネフィリアが歓声をあげた。
ほとんど入れ食い状態で、フローレンスが次々にカンパチを釣り上げていく。ネフィリアも忙しく魚を取りに行っては、持ち帰れるようにみんなの後ろで干物用に捌いていった。
調子よく釣り上げていくと、今までにない強い引きがあった。
「ネフィ、ちょっと手伝ってくれるかしら!」
フローレンスに言われて、ネフィリアも力を貸す。
「どうしたのぉ、大丈夫?」
それを見て、緑も応援にやってきた。
「うーん……」
三人で力を合わせて格闘を続けたが、竿の方がそれに耐えきれずにぽっきりと折れてしまった。
「おしかったねぇ」
「本当に大物だったのに……」
緑に言われてフローレンスが悔しがったが、それでもすでに9匹ものカンパチを釣り上げている。かなりの釣果だ。
「ブリスの方はどうかなー」
釣りの続行が不可能になったため、フローレンスがブリスの様子を見に行った。緑も、自分の場所へと戻っていった。
厚手のローブとマントですっぽりと身体を覆ったブリスは、岩の間に釣り竿を立ててほんわかしいてた。
「ほら、ブリス? かかっているみたいよ」
「えっ!?」
ブリスが慌てる。わたわたするところを、フローレンスが後ろからだきかかえるようにしてサポートした。
一緒にカンパチを釣り上げながら、フローレンスがブリスを褒めた。またもや大漁で、どんどん釣れていく。
「よーし、次……。あれ、軽い?」
9匹目で、今までと違う手応えに、思わずフローレンスが力の加減を間違えた。勢いよく釣り上げられた細長い魚が、針から外れてポンとブリスの上に落ちる。ウナギだ。狭い所に逃げ込もうともがいたウナギは、すぐそばのブリスのローブの中に入っていった。
「えっ、やっ、な、中に入って、ひゃうっ!」
いきなりウナギに服の中で暴れられて、ブリスが身悶えた。
「やーっ、取って取って!」
「はいはーい」
叫ぶブリスの服に、躊躇なくネフィリアが手を突っ込んだ。
「お魚ゲットなのだ♪ あ、わひゃ!? 服の中に入ったのだー!?」
ウナギを掴み出したのはよかったが、今度はネフィリアの服に入ってしまった。
「あはははは!」
くすぐったいと、そのままネフィリアが海に飛び込む。それによって、やっとウナギは逃げていったようだった。
「二人とも大丈夫?」
「お風呂入りたーい」
フローレンスの言葉に、二人の妹たちが声を揃えて答えた。
三姉妹が大漁に喜ぶ頃、緑の方も入れ食い状態で顔をほころばせていた。
「やっぱり、ポイントは間違いなかったなぁ」
イシモチがバケツに入りきらなくなってきたので、活き締めをして鮮度を保つ。
「後でめざしかなあ。いやあ、大漁、大漁」
ほくほくの緑だった。
●釣り船
「やはり、釣りと言えば船ですね」
沖に船を出してもらったセレーネ・エイシェント(ka0027)が、うんうんとうなずきながら言った。
「よろしくねっ!」
キルシッカ・レヴォントゥリ(ka1300)が、もう同じ船に乗ったお友達という感じのなれなれしさでセレーネに言った。同じエルフでありながら、銀髪の物静かなセレーネと、赤味を帯びたツインテールの元気っ子のキルシッカはちょっと対照的だ。
「このへんが、ポイントですか?」
セレーネの言葉に、船長がうなずいた。
「故郷では、川や湖では釣った事がありましたが、海釣りは初めてなんですよね」
「私もー。餌は何がいーのかなあ。森では、ミミズで釣ってたけどー。とりあえずー、いろいろ集めてきたんだよー」
そう言って、キルシッカがセレーネに、箱の中でもぞもぞと蠢くフナムシやゴカイを見せた。人によっては卒倒しそうな光景である。
「ああ、いい餌ですね。少し分けてもらってもよろしいですか?」
「うん、どーぞどーぞ、一杯持ってって」
何のためらいもなく生き餌をむんずと掴むと、セレーネが針につけた。
「狙いはタイというところでしょうか」
「私は、でっかいマグロ釣るんだよー!」
のんびりと船縁から釣り糸を垂れていると、さっそくキルシッカに引きがあった。
「引いてます、引いてますよ!」
「ほんとーだ、えーい」
さっそく釣り上げてみると、かかったのは小振りのニシンだ。
「残念。次こそー」
餌をつけ直して、すぐに再挑戦する。
今度は、セレーネの方にあたりが来た。
「やった、タイですよ!」
こちらは、狙い通りの獲物がかかる。うまい具合にタイの群れにあたったのか、それからはどんどん釣れ始めた。8匹ほど釣れたところで、今度はタラがかかり、そこでいったんあたりがとまる。
「こっちはなかなかー……。あっ、きたー!」
ずっと待ち状態だったキルシッカに、やっとあたりが来た。竿が大きく撓る。大物だ。
セレーネが手を貸して、二人がかりで大きなマグロを一本釣りした。
「美味しそう。じゅるり……」
思わずそのまま食べかけようとするキルシッカだったが、セレーネが戻した竿に早くもまたあたりが来る。
「早く早く!」
またもや、マグロがかかった。これは期待できそうだ。さらに釣り糸を投げると、さっそくあたりが来る。
「これはおっきーよー」
二人で力を込めて引っぱるが、なかなか釣れない。なおも引っぱると、セレーネの竿が撓った。どうやら仕掛けが絡み合っていたらしい。
「これは、解けないでしょうねえ」
「じゃあ、マグロ食べよー」
こんがらがった糸に肩を落とすセレーネに、キルシッカが元気よく言った。
●埠頭
「さてと、どの辺のポイントがいいですかね」
埠頭にやってきたコランダム(ka0240)が、周囲を見回して言った。どうやら、釣りポイントらしく、他にもたくさん釣り人がいる。
「師匠ー! 海っすよー! 釣りっすか! 俺に任せるっす!」
一緒についてきた役犬原 昶(ka0268)は、すでにテンションマックスである。淡々としている小柄なコランダムとは対照的に、ガタイの大きく騒がしい男だ。目尻の下がった愛嬌のある顔は、まるで、御主人であるコランダムにまとわりつく大型犬のようである。
「役犬原、煩いですよ。大人しくしなさい! おすわり!」
「し、師匠が、殴った。ぐず……」
コランダムにハリセンで叩かれて、役犬原がへこんだ。
その様子に、近くでのんびりと釣り糸を垂れていた天央 観智(ka0896)が、座っていたビーチパラソルつきの椅子の上から振り返った。その視線に、コランダムがいたたまれなくなる。
「さあ、さっさと、始めるわよ」
立ち直りの早い役犬原と一緒に、コランダムが少し離れた場所に移動して釣りを始める。
「狙うならタイですかね。久しぶりに、お寿司や刺身にするのもいいかもしれません」
「俺は、マグロ狙いっす! 師匠! マグロっすよ! トロ食い放題っすよー!」
「はいはい、少し静かに……。おっと、かかった」
さっそく引きがあって、コランダムが魚を釣り上げる。小振りだが、見事なタイだ。
「師匠、さすがっす!」
役犬原が万歳三唱をする。とにかくうるさい。
無視しつつコランダムが釣りを続けると、立て続けにタイがかかった。
5匹目でタラを釣り上げたところで、役犬原が何やら服を脱ぎだす。
「今、海の中にマグロが見えたっす。師匠、行ってくるっす!」
言うなり海にザンブと飛び込んで、マグロと格闘を始める。はっきり言って、周囲の釣り人には大迷惑である。
「何をしているんですか!」
コランダムが釣り竿をブンと振って、役犬原を一本釣りした。
「はっはー! いやだなー、師匠ー。俺釣っても食べられないっすよー!」
ちゃっかりとマグロをかかえた役犬原を、コランダムがさっき釣ったタラで叩いた。
「ゴフッ……。し、師匠が、二回も殴った……。俺は、師匠にマグロだべでもだいだがっだだげなのにぃぃー……」
「いいから大人しく釣りなさい」
コランダムにしかられた役犬原が、今度はちゃんと釣りを始める。
あれだけ騒いだのに、魚はたくさんいるようだ。まるで、沖にいる何かを避けて湾岸に魚が集まってきているかのようである。
「師匠ー! マグロっすよー! ちっさいマグロっすよ!」
それから2匹、まだ小さいマグロを釣って役犬原が小躍りして喜ぶ。
「もっともっと釣るっす!」
勢いよく釣り竿を振りかぶった役犬原だったが、そんな事をするものだから、釣り針が飛んでいたカラスに引っ掛かった。どうも、誰かのペットのようだ。
「あっ……」
「何、鳥をいじめてるの!」
スパーンと、コランダムがハリセンで役犬原をひっぱたいた。
「騒がしいな。でも、楽しそうだ」
そんな様子を鑑賞しながら、天央がつぶやいた。
のんびりと釣りをしているが、どちらかと言えば、釣り人を見て楽しんでいる。
その証拠に、釣り糸の先には針はついていない。ただの重りが縛りつけているだけだ。そのはずなのだが、さっきから、やたらに引きがある。ツンツン重りをつついていると言うよりは、重りを呑み込んで引っぱっているという感じだ。
放っておくと竿を持っていかれそうなので、不本意ながらもときどき魚を釣り上げている。とはいえ、すぐに放して海に帰しているわけだが。
「その気がない時ほど、釣れますよね。無心の勝利というところでしょうか。やれやれ」
10匹目の魚を放してやりながら、天央がつぶやいた。
「あちらも、のんびりのようですね」
麦藁帽子の下から、そんな天央の様子を見て、フィル・サリヴァン(ka1155)が言った。こちらも、のんびりと釣りを楽しんでいる。
何度か餌のミミズをつけ替えて、のんびりと構えていると、やっと引きが来た。
スッと竿を持ちあげると、小振りのサバが上がった。
「うーん、サバもいいですが、できればタイの方が食べでがあるんですがね」
大物狙いとしては、やはり外道では物足りない。
またしばらくのんびりと時間を食んでいると、今度はちょっと強い引きが来た。
「これは、期待、できるかな?」
今度は、見事なタイが釣り上がる。
豪華な夕食を想像して、フィルが喉を鳴らした。
「さて、こちらも、夕飯に困らない程度に釣れてくれるといいのだが……」
フィルの釣り上げたタイを横目で見ながら、ジーナ(ka1643)がつぶやいた。
釣り程度なら軽くこなしてみせると自負するが、かといって経験が深いわけでもない。ドワーフらしい頑健さで、じっくりと持久戦の構えだ。換えの釣り竿も用意してきたし、餌も豊富だ。準備は万全である。
じっと待っていると、ついに引きが来た。
えいやと竿をあげると、小振りのイワシが釣れた。
よく見れば、意外と脂ののった美味しそうなイワシである。
再び釣り糸を垂れると、すぐにあたりが来た。まさに入れ食いでイワシが釣れていく。
「はは、釣りというものも、存外に楽しいな♪」
バケツを銀色のイワシで一杯にしながらジーナが顔をほころばせた。
「みんな凄いですよね。この人たちの中に混じっていれば、釣りをやった事のない私でも、1匹ぐらい釣れるかもしれません」
ミリアム・ラング(ka1805)が、周囲の釣果に自分も一喜一憂しながら言った。
ツンツン。あたりが来た。
ラングが、思いっきり釣り竿をあげると、見事なアジが釣り上がる。
「やりましたー」
「おやおや、可愛らしいですね」
天央が、ほのぼのとしながらラングが4匹目のアジを釣り上げるところまで見届ける。ところが、5匹目はちょっとした事件だった。
「う、うーん」
大物らしく、ラングが釣り竿を持ったまま動けなくなった。
「おっ、手伝ってやるっす」
見かねた役犬原が手を貸す。
勢いよく引っぱると巨大なサメが海面から飛びあがった。
「何ですの!? 雑魔か何かですの?」
近くで釣っていたチョココ(ka2449)が、慌てて逃げだす。
「違う、サメだ!」
すぐに、ジーナが駆けつけてきた。
「さすがに、剣や鎧をおいてきたのは……。まあ、これでなんとかなるか」
持っていたナイフを構えると、サメにむかっていく。
「サメですか、ちょっと退屈していたところです。ちょうどいい」
嬉々として、フィルもサメにむかっていった。
「よし、行け役犬原」
ラングを後ろにかばうと、コランダムが命じた。
「お任せっす、師匠!」
遅ればせに役犬原も参戦し、みんなでサメをボコボコにする。
「やれやれ。これも釣りの醍醐味ですかねえ」
あっという間に退治されるサメを見て、天央がつぶやいた。騒がしいようで、事も無しである。
「ああ、驚いた。あれが、外道という物なのですね」
サメが退治されてホッとしたチョココが、適当に納得した。
気分を落ち着かせるためにお弁当を食べる。腹が減っては何とやらである。
釣りをした事はなかったが、一応、基礎知識らしい事は仕入れてきたし、木で作ったお魚さんで練習もしてきている。
ベテランらしい釣り人がたくさん集まっている埠頭に来たわけだが、とにかく、本命は、食べられる本物のお魚である。
「ここでいいのでしょうか?」
お腹も満ちたチョココが、埠頭の端っこで釣り竿を構えた。海面には、なぜか誰かの物らしいパンツが浮かんでいる。持ち主は、パンツのないまま泳いでいるのだろうか。
案の定、そんな場所であるから長靴しか釣れない。
場所を変えてみると、何かが引っ掛かった。場所を変えよう。
「ここいいですか?」
天央の横に来てチョココが聞いた。釣れている人のそばなら釣れるかもしれない。
「構いませんよ」
天央に言われて釣りだすと、この場所は大当たりだった。小物のアジなどがたくさんかかる。
「釣りって、面白いですわね」
忙しく魚を釣り上げながら、チョココが言った。
「人が多くて煩わしいですね。まあ、人気の少ない所で釣りにいそしみますか。折角来たのだし」
皆がわいわいと釣りを楽しんでいる埠頭とは別の埠頭で、フェオ(ka2556)は一人のんびりと釣りを始めた。
「これぞ釣り日和というやつですか」
サメも退治されて静かになった景色を楽しみながら、フェオが空を見あげた。
「外からはよく見えないが、水の中からは人がよく見えるって聞いたけれど、本当でしょうか?」
海の中をのぞいてみると、なんだかのぞき返されたような気がした。試しに釣り竿をあげてみると、びちびちと小魚が釣り上がる。
サメ騒ぎで、魚がみんなこちらへ逃げてきたのだろうか。のんびりするつもりのフェオの思惑とは裏腹に、次々に魚がかかる。
「まあ、これはこれで」
魚籠に魚を投げ込みながら、フェオは釣りを楽しんでいった。
「たまにはー、のんびりと釣りをしつつも晩御飯のおかずを狙うっていうのもいいですよね!」
同じように皆とは離れて、埠頭近くの河口でネージュ(ka0049)が釣り糸を垂れていた。
吃水域は、クロダイの狙い目である。
椅子と日よけを用意して、のんびりとお弁当のサンドイッチを食べている。気分はピクニックというところだ。
食後に紅茶を飲んでいると、釣り竿の先がぐいと引っぱられた。
わくわくして引き上げると、小さな蟹が釣り糸を挟んでいた。
「ええと、さようなら~」
蟹さんにはお帰りいただくと、諦めずに釣りを続ける。何度も釣り針を投げ直して粘れば、それに誘われて獲物がやってくるらしい。要は根気だ。
なかなかあたりが来なかったが、ついにあたりが来た。釣り竿をしっかり握ると、ぐいと海中に引っぱられる。竿を掴み直すと、もう一度引っぱられた。そして、さらに引きが来る。三段引きというものだろう。だったら、クロダイの可能性が高い。
俄然気合いを入れ直し、ついに本命のりっぱなクロダイを釣り上げる。
「やりました。さあ、どんどん釣りますよ!」
バケツで泳ぐクロダイを見つめて気をよくしたネージュではあったが、それ以降はクロダイは釣れなかった。
●浜焼き
日が暮れる頃、釣り人たちは釣果を持って、帰路についていた。
「にぎやかだなあ」
集まって浜焼きを始めた者たちの横を通りすぎながら、フェオがつぶやいた。
「さあ、じゃんじゃん焼いて食べよー」
用意したバーベキューセットをさして、キルシッカが言う。ラングが、火を熾して手伝った。
行きつけの酒場へのお土産を残して、セレーネがタイを鉄板の上に並べた。コランダムも自分のタイをその横に並べる。
「火があったのはラッキーだったねぇ」
イシモチを焼いてもらいながら、緑が言った。海水の味つけで、塩焼きにすれば絶品だ。他にも、ジーナのイワシや、ラングのアジとサメもジュウジュウと鉄板の上で煙をあげている。
「美味しそうですね」
自分の釣ったクロダイをラングに刺身にしてもらいながら、ネージュが言った。キルシッカのマグロも刺身にして、かなり豪華である。
「それじゃあ、カンパーイ」
持ってきたシードルを全員に配って、ジーナが音頭を取った。
「お魚に、カンパーイ!!」
「こうして、のんびりと英気を養うのもよろしいですわね」
水面に釣り糸を垂れながら、ヴィーナ・ストレアル(ka1501)が軽く目を細めた。光沢のある菫色の髪がそよかな風にゆれる。
あまり騒がしいのは性に合わないので、こうして河口近くの木陰で一人楽しく釣り三昧だ。
そういえば、見張り用に連れてきていたペットのカラスはどこへ行ったのだろう。
「どうせでしたら、大きなワニでも釣れれば面白いですのにねえ」
そんな事を考えていると、さっそくあたりが来た。
やったあっと、ヴィーナが釣り上げると、それは見事なカンパチであった。
「なあんだ、ワニじゃなかったですわ」
りっぱな獲物ではあるが、ワニ狙いのヴィーナにとっては外道である。
そんなカンパチを皮切りに、次々と魚や変な物が釣れる。
スズキ、材木、帽子、カツオ、エイ、バケツ。それにしても外道ばかりである。
次の引きは今までとは段違いだった。竿ごとヴィーナを川に引きずり込もうとする。
「今度こそワニですわ!!」
ヴィーナが気合いを入れる。すると、何やら蠢く触手が一斉に水面に上がって襲いかかってきた。巨大なミズダコだ。
ヴィーナはすぐに鞭を手に取ると、陸に上がってきたミズダコを叩き据えて勝利する。
「まだまだ、わたしの敵ではありませんわね」
あらためて釣り糸を垂らすと、今度はクロダイがかかった。
「さすがに疲れてきましたわね……んっ!?」
今度こそと、ヴィーナが思いっきり釣り竿を引き上げた。ところが、獲物の重さに耐えきれず、ボキッと釣り竿が折れてしまった。
「おしい、絶対今のはワニでしたわ。間違いありません!」
そう信じる、ヴィーナであった。
●岩場
「頑張って、おかずの干物にする魚を釣るわよー」
どんっと大きな胸を張って、フローレンス・レインフォード(ka0443)が妹のネフィリア・レインフォード(ka0444)と末の妹のブリス・レインフォード(ka0445)に言った。
「フロー姉、ブリスちゃん頑張れー♪」
ネフィリアの声援を受けて、海に突き出た岩場から釣り糸を垂らす。狙いはカンパチだ。
近くでは、佐々良 縁(ka1269)も釣り場を探していた。
「さて、何が来るかなあ。わくわく♪」
岩場の奥まった所に場所を定めると、緑が釣り糸を垂らした。
「このへんだと、狙い目はイシモチあたりかなぁ」
釣りはリアルブルーにいた頃からの彼女の趣味である。
「できる限り多く釣って帰らないと……。ブリスもお願いね」
うなずく末の妹のブリスと手分けして、フローレンスも釣り始める。
さっそくフローレンスの竿に手応えがあった。結構大物だ。
力を込めて釣り竿を立てると、水面を大きなカンパチが跳ねがらやってくる。
「わーい!」
待ちきれないネフィリアが、獲物を捕りに行った。ひょいと玉網を使って岩にぶつかる前のカンパチを掬い取る。
「ふふん♪ とったどー! なのだ♪」
ネフィリアが歓声をあげた。
ほとんど入れ食い状態で、フローレンスが次々にカンパチを釣り上げていく。ネフィリアも忙しく魚を取りに行っては、持ち帰れるようにみんなの後ろで干物用に捌いていった。
調子よく釣り上げていくと、今までにない強い引きがあった。
「ネフィ、ちょっと手伝ってくれるかしら!」
フローレンスに言われて、ネフィリアも力を貸す。
「どうしたのぉ、大丈夫?」
それを見て、緑も応援にやってきた。
「うーん……」
三人で力を合わせて格闘を続けたが、竿の方がそれに耐えきれずにぽっきりと折れてしまった。
「おしかったねぇ」
「本当に大物だったのに……」
緑に言われてフローレンスが悔しがったが、それでもすでに9匹ものカンパチを釣り上げている。かなりの釣果だ。
「ブリスの方はどうかなー」
釣りの続行が不可能になったため、フローレンスがブリスの様子を見に行った。緑も、自分の場所へと戻っていった。
厚手のローブとマントですっぽりと身体を覆ったブリスは、岩の間に釣り竿を立ててほんわかしいてた。
「ほら、ブリス? かかっているみたいよ」
「えっ!?」
ブリスが慌てる。わたわたするところを、フローレンスが後ろからだきかかえるようにしてサポートした。
一緒にカンパチを釣り上げながら、フローレンスがブリスを褒めた。またもや大漁で、どんどん釣れていく。
「よーし、次……。あれ、軽い?」
9匹目で、今までと違う手応えに、思わずフローレンスが力の加減を間違えた。勢いよく釣り上げられた細長い魚が、針から外れてポンとブリスの上に落ちる。ウナギだ。狭い所に逃げ込もうともがいたウナギは、すぐそばのブリスのローブの中に入っていった。
「えっ、やっ、な、中に入って、ひゃうっ!」
いきなりウナギに服の中で暴れられて、ブリスが身悶えた。
「やーっ、取って取って!」
「はいはーい」
叫ぶブリスの服に、躊躇なくネフィリアが手を突っ込んだ。
「お魚ゲットなのだ♪ あ、わひゃ!? 服の中に入ったのだー!?」
ウナギを掴み出したのはよかったが、今度はネフィリアの服に入ってしまった。
「あはははは!」
くすぐったいと、そのままネフィリアが海に飛び込む。それによって、やっとウナギは逃げていったようだった。
「二人とも大丈夫?」
「お風呂入りたーい」
フローレンスの言葉に、二人の妹たちが声を揃えて答えた。
三姉妹が大漁に喜ぶ頃、緑の方も入れ食い状態で顔をほころばせていた。
「やっぱり、ポイントは間違いなかったなぁ」
イシモチがバケツに入りきらなくなってきたので、活き締めをして鮮度を保つ。
「後でめざしかなあ。いやあ、大漁、大漁」
ほくほくの緑だった。
●釣り船
「やはり、釣りと言えば船ですね」
沖に船を出してもらったセレーネ・エイシェント(ka0027)が、うんうんとうなずきながら言った。
「よろしくねっ!」
キルシッカ・レヴォントゥリ(ka1300)が、もう同じ船に乗ったお友達という感じのなれなれしさでセレーネに言った。同じエルフでありながら、銀髪の物静かなセレーネと、赤味を帯びたツインテールの元気っ子のキルシッカはちょっと対照的だ。
「このへんが、ポイントですか?」
セレーネの言葉に、船長がうなずいた。
「故郷では、川や湖では釣った事がありましたが、海釣りは初めてなんですよね」
「私もー。餌は何がいーのかなあ。森では、ミミズで釣ってたけどー。とりあえずー、いろいろ集めてきたんだよー」
そう言って、キルシッカがセレーネに、箱の中でもぞもぞと蠢くフナムシやゴカイを見せた。人によっては卒倒しそうな光景である。
「ああ、いい餌ですね。少し分けてもらってもよろしいですか?」
「うん、どーぞどーぞ、一杯持ってって」
何のためらいもなく生き餌をむんずと掴むと、セレーネが針につけた。
「狙いはタイというところでしょうか」
「私は、でっかいマグロ釣るんだよー!」
のんびりと船縁から釣り糸を垂れていると、さっそくキルシッカに引きがあった。
「引いてます、引いてますよ!」
「ほんとーだ、えーい」
さっそく釣り上げてみると、かかったのは小振りのニシンだ。
「残念。次こそー」
餌をつけ直して、すぐに再挑戦する。
今度は、セレーネの方にあたりが来た。
「やった、タイですよ!」
こちらは、狙い通りの獲物がかかる。うまい具合にタイの群れにあたったのか、それからはどんどん釣れ始めた。8匹ほど釣れたところで、今度はタラがかかり、そこでいったんあたりがとまる。
「こっちはなかなかー……。あっ、きたー!」
ずっと待ち状態だったキルシッカに、やっとあたりが来た。竿が大きく撓る。大物だ。
セレーネが手を貸して、二人がかりで大きなマグロを一本釣りした。
「美味しそう。じゅるり……」
思わずそのまま食べかけようとするキルシッカだったが、セレーネが戻した竿に早くもまたあたりが来る。
「早く早く!」
またもや、マグロがかかった。これは期待できそうだ。さらに釣り糸を投げると、さっそくあたりが来る。
「これはおっきーよー」
二人で力を込めて引っぱるが、なかなか釣れない。なおも引っぱると、セレーネの竿が撓った。どうやら仕掛けが絡み合っていたらしい。
「これは、解けないでしょうねえ」
「じゃあ、マグロ食べよー」
こんがらがった糸に肩を落とすセレーネに、キルシッカが元気よく言った。
●埠頭
「さてと、どの辺のポイントがいいですかね」
埠頭にやってきたコランダム(ka0240)が、周囲を見回して言った。どうやら、釣りポイントらしく、他にもたくさん釣り人がいる。
「師匠ー! 海っすよー! 釣りっすか! 俺に任せるっす!」
一緒についてきた役犬原 昶(ka0268)は、すでにテンションマックスである。淡々としている小柄なコランダムとは対照的に、ガタイの大きく騒がしい男だ。目尻の下がった愛嬌のある顔は、まるで、御主人であるコランダムにまとわりつく大型犬のようである。
「役犬原、煩いですよ。大人しくしなさい! おすわり!」
「し、師匠が、殴った。ぐず……」
コランダムにハリセンで叩かれて、役犬原がへこんだ。
その様子に、近くでのんびりと釣り糸を垂れていた天央 観智(ka0896)が、座っていたビーチパラソルつきの椅子の上から振り返った。その視線に、コランダムがいたたまれなくなる。
「さあ、さっさと、始めるわよ」
立ち直りの早い役犬原と一緒に、コランダムが少し離れた場所に移動して釣りを始める。
「狙うならタイですかね。久しぶりに、お寿司や刺身にするのもいいかもしれません」
「俺は、マグロ狙いっす! 師匠! マグロっすよ! トロ食い放題っすよー!」
「はいはい、少し静かに……。おっと、かかった」
さっそく引きがあって、コランダムが魚を釣り上げる。小振りだが、見事なタイだ。
「師匠、さすがっす!」
役犬原が万歳三唱をする。とにかくうるさい。
無視しつつコランダムが釣りを続けると、立て続けにタイがかかった。
5匹目でタラを釣り上げたところで、役犬原が何やら服を脱ぎだす。
「今、海の中にマグロが見えたっす。師匠、行ってくるっす!」
言うなり海にザンブと飛び込んで、マグロと格闘を始める。はっきり言って、周囲の釣り人には大迷惑である。
「何をしているんですか!」
コランダムが釣り竿をブンと振って、役犬原を一本釣りした。
「はっはー! いやだなー、師匠ー。俺釣っても食べられないっすよー!」
ちゃっかりとマグロをかかえた役犬原を、コランダムがさっき釣ったタラで叩いた。
「ゴフッ……。し、師匠が、二回も殴った……。俺は、師匠にマグロだべでもだいだがっだだげなのにぃぃー……」
「いいから大人しく釣りなさい」
コランダムにしかられた役犬原が、今度はちゃんと釣りを始める。
あれだけ騒いだのに、魚はたくさんいるようだ。まるで、沖にいる何かを避けて湾岸に魚が集まってきているかのようである。
「師匠ー! マグロっすよー! ちっさいマグロっすよ!」
それから2匹、まだ小さいマグロを釣って役犬原が小躍りして喜ぶ。
「もっともっと釣るっす!」
勢いよく釣り竿を振りかぶった役犬原だったが、そんな事をするものだから、釣り針が飛んでいたカラスに引っ掛かった。どうも、誰かのペットのようだ。
「あっ……」
「何、鳥をいじめてるの!」
スパーンと、コランダムがハリセンで役犬原をひっぱたいた。
「騒がしいな。でも、楽しそうだ」
そんな様子を鑑賞しながら、天央がつぶやいた。
のんびりと釣りをしているが、どちらかと言えば、釣り人を見て楽しんでいる。
その証拠に、釣り糸の先には針はついていない。ただの重りが縛りつけているだけだ。そのはずなのだが、さっきから、やたらに引きがある。ツンツン重りをつついていると言うよりは、重りを呑み込んで引っぱっているという感じだ。
放っておくと竿を持っていかれそうなので、不本意ながらもときどき魚を釣り上げている。とはいえ、すぐに放して海に帰しているわけだが。
「その気がない時ほど、釣れますよね。無心の勝利というところでしょうか。やれやれ」
10匹目の魚を放してやりながら、天央がつぶやいた。
「あちらも、のんびりのようですね」
麦藁帽子の下から、そんな天央の様子を見て、フィル・サリヴァン(ka1155)が言った。こちらも、のんびりと釣りを楽しんでいる。
何度か餌のミミズをつけ替えて、のんびりと構えていると、やっと引きが来た。
スッと竿を持ちあげると、小振りのサバが上がった。
「うーん、サバもいいですが、できればタイの方が食べでがあるんですがね」
大物狙いとしては、やはり外道では物足りない。
またしばらくのんびりと時間を食んでいると、今度はちょっと強い引きが来た。
「これは、期待、できるかな?」
今度は、見事なタイが釣り上がる。
豪華な夕食を想像して、フィルが喉を鳴らした。
「さて、こちらも、夕飯に困らない程度に釣れてくれるといいのだが……」
フィルの釣り上げたタイを横目で見ながら、ジーナ(ka1643)がつぶやいた。
釣り程度なら軽くこなしてみせると自負するが、かといって経験が深いわけでもない。ドワーフらしい頑健さで、じっくりと持久戦の構えだ。換えの釣り竿も用意してきたし、餌も豊富だ。準備は万全である。
じっと待っていると、ついに引きが来た。
えいやと竿をあげると、小振りのイワシが釣れた。
よく見れば、意外と脂ののった美味しそうなイワシである。
再び釣り糸を垂れると、すぐにあたりが来た。まさに入れ食いでイワシが釣れていく。
「はは、釣りというものも、存外に楽しいな♪」
バケツを銀色のイワシで一杯にしながらジーナが顔をほころばせた。
「みんな凄いですよね。この人たちの中に混じっていれば、釣りをやった事のない私でも、1匹ぐらい釣れるかもしれません」
ミリアム・ラング(ka1805)が、周囲の釣果に自分も一喜一憂しながら言った。
ツンツン。あたりが来た。
ラングが、思いっきり釣り竿をあげると、見事なアジが釣り上がる。
「やりましたー」
「おやおや、可愛らしいですね」
天央が、ほのぼのとしながらラングが4匹目のアジを釣り上げるところまで見届ける。ところが、5匹目はちょっとした事件だった。
「う、うーん」
大物らしく、ラングが釣り竿を持ったまま動けなくなった。
「おっ、手伝ってやるっす」
見かねた役犬原が手を貸す。
勢いよく引っぱると巨大なサメが海面から飛びあがった。
「何ですの!? 雑魔か何かですの?」
近くで釣っていたチョココ(ka2449)が、慌てて逃げだす。
「違う、サメだ!」
すぐに、ジーナが駆けつけてきた。
「さすがに、剣や鎧をおいてきたのは……。まあ、これでなんとかなるか」
持っていたナイフを構えると、サメにむかっていく。
「サメですか、ちょっと退屈していたところです。ちょうどいい」
嬉々として、フィルもサメにむかっていった。
「よし、行け役犬原」
ラングを後ろにかばうと、コランダムが命じた。
「お任せっす、師匠!」
遅ればせに役犬原も参戦し、みんなでサメをボコボコにする。
「やれやれ。これも釣りの醍醐味ですかねえ」
あっという間に退治されるサメを見て、天央がつぶやいた。騒がしいようで、事も無しである。
「ああ、驚いた。あれが、外道という物なのですね」
サメが退治されてホッとしたチョココが、適当に納得した。
気分を落ち着かせるためにお弁当を食べる。腹が減っては何とやらである。
釣りをした事はなかったが、一応、基礎知識らしい事は仕入れてきたし、木で作ったお魚さんで練習もしてきている。
ベテランらしい釣り人がたくさん集まっている埠頭に来たわけだが、とにかく、本命は、食べられる本物のお魚である。
「ここでいいのでしょうか?」
お腹も満ちたチョココが、埠頭の端っこで釣り竿を構えた。海面には、なぜか誰かの物らしいパンツが浮かんでいる。持ち主は、パンツのないまま泳いでいるのだろうか。
案の定、そんな場所であるから長靴しか釣れない。
場所を変えてみると、何かが引っ掛かった。場所を変えよう。
「ここいいですか?」
天央の横に来てチョココが聞いた。釣れている人のそばなら釣れるかもしれない。
「構いませんよ」
天央に言われて釣りだすと、この場所は大当たりだった。小物のアジなどがたくさんかかる。
「釣りって、面白いですわね」
忙しく魚を釣り上げながら、チョココが言った。
「人が多くて煩わしいですね。まあ、人気の少ない所で釣りにいそしみますか。折角来たのだし」
皆がわいわいと釣りを楽しんでいる埠頭とは別の埠頭で、フェオ(ka2556)は一人のんびりと釣りを始めた。
「これぞ釣り日和というやつですか」
サメも退治されて静かになった景色を楽しみながら、フェオが空を見あげた。
「外からはよく見えないが、水の中からは人がよく見えるって聞いたけれど、本当でしょうか?」
海の中をのぞいてみると、なんだかのぞき返されたような気がした。試しに釣り竿をあげてみると、びちびちと小魚が釣り上がる。
サメ騒ぎで、魚がみんなこちらへ逃げてきたのだろうか。のんびりするつもりのフェオの思惑とは裏腹に、次々に魚がかかる。
「まあ、これはこれで」
魚籠に魚を投げ込みながら、フェオは釣りを楽しんでいった。
「たまにはー、のんびりと釣りをしつつも晩御飯のおかずを狙うっていうのもいいですよね!」
同じように皆とは離れて、埠頭近くの河口でネージュ(ka0049)が釣り糸を垂れていた。
吃水域は、クロダイの狙い目である。
椅子と日よけを用意して、のんびりとお弁当のサンドイッチを食べている。気分はピクニックというところだ。
食後に紅茶を飲んでいると、釣り竿の先がぐいと引っぱられた。
わくわくして引き上げると、小さな蟹が釣り糸を挟んでいた。
「ええと、さようなら~」
蟹さんにはお帰りいただくと、諦めずに釣りを続ける。何度も釣り針を投げ直して粘れば、それに誘われて獲物がやってくるらしい。要は根気だ。
なかなかあたりが来なかったが、ついにあたりが来た。釣り竿をしっかり握ると、ぐいと海中に引っぱられる。竿を掴み直すと、もう一度引っぱられた。そして、さらに引きが来る。三段引きというものだろう。だったら、クロダイの可能性が高い。
俄然気合いを入れ直し、ついに本命のりっぱなクロダイを釣り上げる。
「やりました。さあ、どんどん釣りますよ!」
バケツで泳ぐクロダイを見つめて気をよくしたネージュではあったが、それ以降はクロダイは釣れなかった。
●浜焼き
日が暮れる頃、釣り人たちは釣果を持って、帰路についていた。
「にぎやかだなあ」
集まって浜焼きを始めた者たちの横を通りすぎながら、フェオがつぶやいた。
「さあ、じゃんじゃん焼いて食べよー」
用意したバーベキューセットをさして、キルシッカが言う。ラングが、火を熾して手伝った。
行きつけの酒場へのお土産を残して、セレーネがタイを鉄板の上に並べた。コランダムも自分のタイをその横に並べる。
「火があったのはラッキーだったねぇ」
イシモチを焼いてもらいながら、緑が言った。海水の味つけで、塩焼きにすれば絶品だ。他にも、ジーナのイワシや、ラングのアジとサメもジュウジュウと鉄板の上で煙をあげている。
「美味しそうですね」
自分の釣ったクロダイをラングに刺身にしてもらいながら、ネージュが言った。キルシッカのマグロも刺身にして、かなり豪華である。
「それじゃあ、カンパーイ」
持ってきたシードルを全員に配って、ジーナが音頭を取った。
「お魚に、カンパーイ!!」
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
- ネフィリア・レインフォード(ka0444)
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/08 21:58:15 |
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相談卓 フローレンス・レインフォード(ka0443) エルフ|23才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/07/10 22:26:22 |