ゲスト
(ka0000)
セカンド・コンタクト
マスター:大林さゆる

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/18 09:00
- 完成日
- 2015/05/24 01:55
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
僕らが『この世界』に来たのは、意味があるのだろうか。
ある日、気が付いたら見知らぬ世界にいた。
それぞれの想いを抱えて、生きてきた。
ただそれだけのことだったのに、僕らは『力』を持つようになっていた。
●
自由都市同盟は、交易が盛んな地域だ。
行商たちが行き交う道を歩く女性がいた。
シェリー・ラナ。美しい黒髪に、控え目な顔立ちは品のあるお嬢様のようにも見えた。
(実家に戻るのも、久し振りね)
一息つくと、シェリーはさらに歩き出した。
しばらくすると、河岸が見えたが、なにやら騒がしかった。
先ほど擦れ違った商人たちが急いで引き返してくる。
「あの、どうしましたか?」
何事かと思い、シェリーは商人の一人に声をかけた。
「お嬢さん、この先は危険だ。逃げろ。半漁人やら大ヤドカリが出現したんだ」
「なら、ハンターオフィスに報告した方がいいかしら?」
シェリーは驚く様子でもなく、きょとんとした瞳で呟いた。
「確かにハンターに依頼すれば、助けてくれる者がいるかもしれないな。とにかく、お嬢さんは逃げた方が良い」
商人がそう促すが、シェリーは「お構いなく」と告げて微笑む。
「こう見えても私、ハンターなんです。だから、誰かが来てくれるまでは半漁人を足止めするくらいはできます。商人さんこそ、早くここから逃げて」
「へー、お前さん、ハンターだったのか。だったら俺が代わりに依頼として報告しておくぜ」
商人はそう告げた後、シェリーと別れた。
「さてと、行くわよ!」
シェリーは河岸まで走り出した。
……が、思ったよりも数が多かった。
「困ったわ。さすがに私一人じゃ、全部は退治できないわね…」
そう言った矢先、一人の少年が駆け寄ってきた。
リアルブルーから転移してきた水本 壮(みずもと・そう)だ。
「シェリーさん、久し振り!」
「まあ、壮さん、半年振りね。だけど見ての通り、今はお話ししている余裕はないの」
シェリーは武器を構えて、まずは自分でも倒せそうな半漁人に攻撃をしかけた。
一匹倒すことはできたが、半漁人たちは次から次へと押し寄せてくる。
「危ない!」
壮も助太刀に入るが、何せ数が多い。無数の貝殻が張り付いたような容貌の半漁人たちは弓矢を持ち、間合いを取り始めた。
大ヤドカリは二匹だけではあるが、触手を蠢かして近づいてくる。
シェリーと壮では行路で足止めするくらいしか出来なかった。
「このままでは、私たち…まずいかも…」
シェリーが少し弱音を吐くと、壮は励ますような笑みを浮かべた。
「だーいじょうぶだって。俺がついてるから!」
壮の言葉に、シェリーは即答。
「余計に不安だわ」
「えーっ?! 俺って、そんなに頼りない?!」
壮はがっかりした表情をした。その途端、半漁人たちに取り囲まれて、敵の攻撃により、あっさりと倒れてしまった。
「……ああ、俺ってヤツは……俺ってヤツは……」
地面に仰向けになりながら、壮は半泣きしていた。
「お願い! 誰か助けて!」
シェリーの叫びが、大空に木霊する。
果たして、二人の運命は……?
ある日、気が付いたら見知らぬ世界にいた。
それぞれの想いを抱えて、生きてきた。
ただそれだけのことだったのに、僕らは『力』を持つようになっていた。
●
自由都市同盟は、交易が盛んな地域だ。
行商たちが行き交う道を歩く女性がいた。
シェリー・ラナ。美しい黒髪に、控え目な顔立ちは品のあるお嬢様のようにも見えた。
(実家に戻るのも、久し振りね)
一息つくと、シェリーはさらに歩き出した。
しばらくすると、河岸が見えたが、なにやら騒がしかった。
先ほど擦れ違った商人たちが急いで引き返してくる。
「あの、どうしましたか?」
何事かと思い、シェリーは商人の一人に声をかけた。
「お嬢さん、この先は危険だ。逃げろ。半漁人やら大ヤドカリが出現したんだ」
「なら、ハンターオフィスに報告した方がいいかしら?」
シェリーは驚く様子でもなく、きょとんとした瞳で呟いた。
「確かにハンターに依頼すれば、助けてくれる者がいるかもしれないな。とにかく、お嬢さんは逃げた方が良い」
商人がそう促すが、シェリーは「お構いなく」と告げて微笑む。
「こう見えても私、ハンターなんです。だから、誰かが来てくれるまでは半漁人を足止めするくらいはできます。商人さんこそ、早くここから逃げて」
「へー、お前さん、ハンターだったのか。だったら俺が代わりに依頼として報告しておくぜ」
商人はそう告げた後、シェリーと別れた。
「さてと、行くわよ!」
シェリーは河岸まで走り出した。
……が、思ったよりも数が多かった。
「困ったわ。さすがに私一人じゃ、全部は退治できないわね…」
そう言った矢先、一人の少年が駆け寄ってきた。
リアルブルーから転移してきた水本 壮(みずもと・そう)だ。
「シェリーさん、久し振り!」
「まあ、壮さん、半年振りね。だけど見ての通り、今はお話ししている余裕はないの」
シェリーは武器を構えて、まずは自分でも倒せそうな半漁人に攻撃をしかけた。
一匹倒すことはできたが、半漁人たちは次から次へと押し寄せてくる。
「危ない!」
壮も助太刀に入るが、何せ数が多い。無数の貝殻が張り付いたような容貌の半漁人たちは弓矢を持ち、間合いを取り始めた。
大ヤドカリは二匹だけではあるが、触手を蠢かして近づいてくる。
シェリーと壮では行路で足止めするくらいしか出来なかった。
「このままでは、私たち…まずいかも…」
シェリーが少し弱音を吐くと、壮は励ますような笑みを浮かべた。
「だーいじょうぶだって。俺がついてるから!」
壮の言葉に、シェリーは即答。
「余計に不安だわ」
「えーっ?! 俺って、そんなに頼りない?!」
壮はがっかりした表情をした。その途端、半漁人たちに取り囲まれて、敵の攻撃により、あっさりと倒れてしまった。
「……ああ、俺ってヤツは……俺ってヤツは……」
地面に仰向けになりながら、壮は半泣きしていた。
「お願い! 誰か助けて!」
シェリーの叫びが、大空に木霊する。
果たして、二人の運命は……?
リプレイ本文
河岸に現れた敵は、もしかしたら?
「海産物に、何か影響でもあったのでしょうか?」
そう呟いたのは、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)だ。
「ならば、この依頼、是非とも達成したいものです。家計に響きますしね」
レイの危惧は尤もだ。海の幸があってこそ、人々の生活も成り立つ。
「良い職業だよなぁ、ハンターってのは……人助けして、報酬も受け取れる。どこにいようが、生活するためには、金が必要だからな」
高崎 晴(ka3364)の発言は、現実的かつ実質的だ。備えとしてプロテクションを使っていた。
異世界でも生活するには金がいることを、晴は身を持って知っている。
「僕は人命救助と避難誘導をするね」
ミリア・コーネリウス(ka1287)は、逃げ遅れた人々の救出に向うことにした。
ミリアは重体であっても、人々を助けたい想いが強かった。
「敵に一撃でも与えてやりたかったけど……そっちは、皆に任せるよ」
「俺も救出の援護をしよう。たとえこの身が重い傷であろうとも、ハンターとしてできることはある」
そう強い眼差しで告げたのは、榊 兵庫(ka0010)……彼もまた重体ではあったが、戦う術のない人々の盾になろうという覚悟があった。
ハンターたちは河岸まで馬に騎乗し、気を失っている水本 壮と、懸命に半漁人と対峙しているシェリー・ラナを発見した。陸路では立ち往生している商人たちが数名いた。
兵庫とミリアは、痛みに耐えながら馬をゆっくりと走らせ、商人たちに声をかけると、民家のある畑へと向った。まずは人々の安全が第一だ。
「さて、まずは水本の方からだな」
河岸では、馬から降りて晴がヒールを施すと、壮は目を覚まし、起き上がった。
「あ……俺、助かった? ありがとう」
壮が礼を言うが、晴が戦況を見て促す。
「水本とシェリーは、ここから離れろ。敵の逃亡経路が陸路だったら、その場で食い止めろ」
「分かった!」
壮はシェリーを連れて、河岸からハンターたちの動向を見習うことにした。
「……足りてねえ」
ウィンス・デイランダール(ka0039)は何か言いたげな視線を壮に向けたが、まずは闘いに専念することにした。
「なんかバラバラだな。ミズモトとラナは、隙あらば抜け出そうとする敵を見つけたら阻止しろ」
半漁人たちの動きは不規則に見えた。
「了解っす」
壮は剣を構えるが、恐怖を感じたのか震えている。シェリーは敵の動向に注意を払っていた。
「……どうしたら、良いの……?」
シェリーの額から汗が零れ落ちる。
「なんとか纏めることができれば……私に考えがあります」
レイはシェリーに優しく微笑むと、馬から降り、動かざるもので自身の防御力を高め、半漁人たちに接近していった。
「大ヤドカリは私に任せて」
アイビス・グラス(ka2477)は軽々と馬から飛び降りて、武器を構える。
別班の状況を知る為、アイビスはトランシーバーの電源を入れたままの状態にしていた。
「俺はアイビスの援護に廻るぜ」
晴は鳴金錫杖を持ち、アイビスの後衛に立った。
一方、半漁人たちはレイの周囲に群がっている。
「これが魚の干物、お値段は500G……大変、美味でございます!」
そう言うや否や、レイは半漁人たちの前で魚の干物を食べた。
その様子を見た半漁人たちは憤慨して、レイに狙いを定めて矢を放った。数本の矢が鎧に当たったが、怪我をするほどではない。さらに矢が飛んできたが、レイは斧で受け流していた。
「上等だ。激槍が一撃、手加減無用だな」
ゴースロンに騎乗したウィンスが、ミラージュグレイブによるチャージングで半漁人たちを蹴散らしていく。
レイは雷神斧を振りかざし、ラウンドスウィングで半漁人を数匹、薙ぎ払う。
ウィンスの攻めの構えとレイの連携攻撃により、半漁人たちは全て倒すことができた。
「いやはや…お強い、ですね」
レイの言葉に、ウィンスは鼻をフンと鳴らす。
「……あんたも強いが。足りてねーな、魂の反逆が」
「はい?」
レイは、これから起こるであろう出来事を、まだ知らなかった。
●
その頃。
アイビスは河へ入ろうとする大ヤドカリ目がけて、手裏剣「朧月」で牽制する。
すかさず晴が間合いを取り、シャドウブリットで攻撃……衝撃が走り、敵の触手が飛び散った。
大ヤドカリは残った触手でアイビスに襲いかかるが、間一髪の回避……二回攻撃はアイビスには通用しない。
「接近戦に持ち込めば、こっちのものよ!」
半漁人は全て退治できた。残りは大ヤドカリのみ。覚醒したアイビスは瞬脚を使い、立体攻撃で巨大な殻の上に乗ったかと思うと、見事に攻撃が命中…敵の身体は全て粉砕された。
「もう一匹倒せば、終わりだぜ」
晴は追い打ちをかけるようにシャドウブリットを放った。固い殻に衝撃が走り、無数の触手が千切れていく。
「逃げようとしても無駄よ!」
アイビスは素早く敵に接近すると、衝撃拳「発勁掌波」で真下からアームズダンシングを繰り出す。それはまるでアッパーのような一撃だ。敵は転倒すると同時に粉々になった。
「大ヤドカリも倒せたし、これで一安心ね」
安堵するアイビス。
「プロテクションを使う前に、二匹とも木端微塵になっちまったな」
晴はそう言いながら、顎を杓った。
ハンターたちの見事な戦い降りに、壮がうれしそうに駆け寄ってくる。
「すごい、さすがですね!」
壮はアイビスに近づこうとしたが、急に動けなくなった。
と言うより、少し宙に浮いている感じである。
見れば、壮の襟元に槍が突き刺さり、ウィンスが吊るし上げていたのだ。
「あんだそのツラ……あんだそのへっぴり腰。お前アレだわ。今この瞬間、世界で一番情けないわ。キング・オブ・ウルトラ・情けないで賞だわ。ナメてんのか。戦場ナメてんのかおい。戦場はぺろぺろキャンディじゃねーぞ、おい。足りてねえ。全然足りてねーよ……お前、魂の反逆が」
いかにも気に入らない顔でウィンスが壮を見据える。
「え? え?」
疾風怒濤の勢いが凄まじく、壮は顔を強張らせていた。
そんな遣り取りを見ていた晴は、どこか楽しげだ。
「これが所謂、洗礼ってヤツかねえ。お手並み拝見だな」
さらに洗礼は続く。ウィンスは真顔だ。
「いいか。戦いってのは、いや、人生ってのは魂の反逆なんだよ。お前の魂は全く反逆してない。だから最終フラグ確定です」
「えぇーっ?!」
思わず叫ぶ壮。バタバタと身体を動かすが、ウィンスから逃げることができない。
「つうわけでおら、やるか、やられるか、生き残りたかったら二つに一つだ。ソウルレジスタンス・オア・ダーイ。せいぜい頑張れ」
ウィンスはそう告げると、壮を地面に降ろし、槍を収めた。
「うう……反論する余裕もなかった」
項垂れる壮に、アイビスが言い放った。
「少しでも意地を見せてみなさい、じゃなきゃハンターとしても男としてもみっともないわよ!」
「……意地……か」
壮が、小声で言った。
「……水本様、今回はダメでも、次回はきっとチャンスがあるはずです……多分」
事の成り行きを見ていたレイが、壮の肩にそっと手を置いた。
「ああー、その優しさが、どことなく切なすぎるー」
壮の叫びに、レイはニッコリと笑みを浮かべる。
「誰かの為に身を投じれる事……とても、素晴らしく思います。被害の少なさは、皆様のおかげですね」
レイがそう言うと、シェリーが相槌を打った。
「そうよ。私を助けようとして、来てくれたじゃない。壮さんは、あっさりやられたけど」
「……それ、フォローになってないっす」
壮の返答が気になったのか、ウィンスが尚も真顔で言う。
「お前、マジで最終フラグだな」
「いやだーっ!!」
それ以来、壮はウィンスを見る度にビクついていた。
そんな様子を見て、晴は笑いを堪えていた。
●
逃げ遅れた商人たちが、兵庫とミリアに素直に従ったのには理由があった。
「皆、落ち着いてくれ。手利きのハンター達が敵の対処に当たっている。ハンター達が心置きなく戦う為にも、皆がここから離れてくれていた方が助かるんだ。俺達を助けると思って協力してほしい。頼む」
兵庫の真摯な対応に、商人たちを落ち着きを取り戻し、頷いていた。
「避難する目当てはついてるのか?」
商人の一人が言った。
「この先に民家がある。河岸とは反対側に位置するから安全だろう」
兵庫は全身の怪我を覆い隠すように装備し、顔には覆面をしていた。もし怪我を負っていることが知れたら、人々は不安になるだろう。そうした気遣いもあってか、商人たちは兵庫が重体だということに気がつかなかった。
だが、兵庫にとってはそれで良かった。余計な心配はかけたくなかったからだ。
「では、行くとしよう」
兵庫を先頭に商人たちが付いていき、ミリアは最後方で皆を見守っていた。
「水には近付かないようにね。慌てず、ゆっくりね」
他の仲間たちが河岸で敵と対峙しているとは言え、油断はできない。
ミリアは慎重に対処して、人々を誘導していた。
(闘えないのは辛いけど…避難している人達が危険な目に逢わないように気を付けなきゃ)
そう自分に言い聞かせ、ミリアは人々に避難を呼びかけていた。
「後方は僕が見張ってるから、皆は先に進んで!」
しばらくすると、民家に辿り着いた。
「……ここか」
兵庫が呟く。見渡すと畑があった。
見れば、農作業をしている夫婦がいた。
「ん? どうした?」
旦那が何事かと声をかけると、兵庫が事情を説明した。
「そういうことなら、ここで仲間が来るまで待ってろ。茶でも出すからよ」
旦那はそう言いながら、商人たちを自宅へと招き入れた。
「突然、押しかけて申し訳ない」
兵庫の言葉に、旦那は気さくな笑みを浮かべた。
「気にするこたーない。あんたの心意気、ワシもつい、うれしくなってな」
「そう言って頂けると心強い」
人々を守り切ることができて、兵庫はうれしかった。
何故なら、自身の痛みより、人々を守ることができずに後悔する方が耐えられなかったからだ。
「良かった……商人たちも全員無事みたいだしね」
ミリアは自分でも気が付かずに微笑んでいた。
戦いは仲間に任せたことで、避難誘導も順調に進んだ。
助けられた人々は、ミリアと兵庫に感謝の意を述べた。
「本当に助かったよ。ありがとう」
民家の客室で、人々と茶を飲むことになった。
「皆が無事に民家まで辿り着けて、僕も安心したよ」
普段の明るい笑みを見せるミリア。
「ああ、仲間たちが戻ったら、何か埋め合わせでもできれば良いんだが……」
ふと考え込む兵庫だった。
●
レイが仲間たちと共に民家を訪れると、食卓に案内された。
「これは新鮮な魚介類や野菜の料理がたくさん、ありますね」
どういうことだろうと思いながらレイが言うと、兵庫が応えた。
「敵は全て倒せたらしいな。俺も闘うことができれば、戦闘の負担も少しは減ったはずだ。せめて、これくらいのことはさせてくれ」
「それであんたの気がすむなら、俺は構わねえよ。遠慮なく頂くぜ」
晴はそう言いながら椅子に座ると、料理を食べ始めた。
「お、うめえな。こりゃ」
美味しそうに言う晴を見て、レイが遠慮がちに会釈する。
「それではお言葉に甘えて……榊様、ありがとうございます」
気が付けば、レイだけでなく他の仲間も料理を食べ、商人たちまで混ざっていた。
壮と言えば、ウィンスと目が合う度に相変わらずビクついていた。
ウィンスは壮の態度がまだ直っていないことに気付き、事あるごとに「あ?」「足りてねえんだよ」と突っ込んでいた。
「これからどうなることやら……な感じね」
アイビスはその訳を知っていたこともあり、小さく苦笑していた。
「アイビスさん、言わないでー」
壮が懇願すると、兵庫が不思議そうな顔をした。
「何かあったのか?」
「ああ、実は……」
と、晴が話し始めると、とっさに壮が彼の口を手で塞ぐ。
「わーっと、なんでもないですよ、はははは」
だが、これまたあっさりと晴は壮の手を払いのける。
「はははは、じゃねえよ。どうせ、いずれバレるんだから、隠しても無駄だっての」
「そんなー、晴さん、黙っててよー」
壮は両手を組んで、晴に頼み込む。
「……まあ、俺は、黙ってるぜ。俺はな。他は保障しないぜ」
それを聞いた壮は、それ以上、何も言えなかった。
「何があったかは知らないが、せっかくの機会だ。楽しんでくれ」
兵庫がそう言うと、壮は顔を上げて「ゴチになります」と元気よく答えた。
「現金なヤツだな」
晴はやれやれと小さく溜息をついた。
「……?」
それを見たミリアは、首を傾げていた。
彼女が事実を知るのは、数日後だった。
いろいろあったが、シェリーは内心、壮には感謝していた。
結果的には敵にやられた壮だったが、自分を助けに来てくれた気持ちがうれしかったのだ。
なによりも、今回の依頼では学ぶことが多かった。
異なる分野の『力』の持ち主が、それぞれ知恵を出し合い、依頼を達成する過程は素晴らしかった。
そして、今回の出来事がきっかけで、壮は『力』とは何かと改めて考えるようになっていた。
ハンターたちに幸あれ!
「海産物に、何か影響でもあったのでしょうか?」
そう呟いたのは、レイ・T・ベッドフォード(ka2398)だ。
「ならば、この依頼、是非とも達成したいものです。家計に響きますしね」
レイの危惧は尤もだ。海の幸があってこそ、人々の生活も成り立つ。
「良い職業だよなぁ、ハンターってのは……人助けして、報酬も受け取れる。どこにいようが、生活するためには、金が必要だからな」
高崎 晴(ka3364)の発言は、現実的かつ実質的だ。備えとしてプロテクションを使っていた。
異世界でも生活するには金がいることを、晴は身を持って知っている。
「僕は人命救助と避難誘導をするね」
ミリア・コーネリウス(ka1287)は、逃げ遅れた人々の救出に向うことにした。
ミリアは重体であっても、人々を助けたい想いが強かった。
「敵に一撃でも与えてやりたかったけど……そっちは、皆に任せるよ」
「俺も救出の援護をしよう。たとえこの身が重い傷であろうとも、ハンターとしてできることはある」
そう強い眼差しで告げたのは、榊 兵庫(ka0010)……彼もまた重体ではあったが、戦う術のない人々の盾になろうという覚悟があった。
ハンターたちは河岸まで馬に騎乗し、気を失っている水本 壮と、懸命に半漁人と対峙しているシェリー・ラナを発見した。陸路では立ち往生している商人たちが数名いた。
兵庫とミリアは、痛みに耐えながら馬をゆっくりと走らせ、商人たちに声をかけると、民家のある畑へと向った。まずは人々の安全が第一だ。
「さて、まずは水本の方からだな」
河岸では、馬から降りて晴がヒールを施すと、壮は目を覚まし、起き上がった。
「あ……俺、助かった? ありがとう」
壮が礼を言うが、晴が戦況を見て促す。
「水本とシェリーは、ここから離れろ。敵の逃亡経路が陸路だったら、その場で食い止めろ」
「分かった!」
壮はシェリーを連れて、河岸からハンターたちの動向を見習うことにした。
「……足りてねえ」
ウィンス・デイランダール(ka0039)は何か言いたげな視線を壮に向けたが、まずは闘いに専念することにした。
「なんかバラバラだな。ミズモトとラナは、隙あらば抜け出そうとする敵を見つけたら阻止しろ」
半漁人たちの動きは不規則に見えた。
「了解っす」
壮は剣を構えるが、恐怖を感じたのか震えている。シェリーは敵の動向に注意を払っていた。
「……どうしたら、良いの……?」
シェリーの額から汗が零れ落ちる。
「なんとか纏めることができれば……私に考えがあります」
レイはシェリーに優しく微笑むと、馬から降り、動かざるもので自身の防御力を高め、半漁人たちに接近していった。
「大ヤドカリは私に任せて」
アイビス・グラス(ka2477)は軽々と馬から飛び降りて、武器を構える。
別班の状況を知る為、アイビスはトランシーバーの電源を入れたままの状態にしていた。
「俺はアイビスの援護に廻るぜ」
晴は鳴金錫杖を持ち、アイビスの後衛に立った。
一方、半漁人たちはレイの周囲に群がっている。
「これが魚の干物、お値段は500G……大変、美味でございます!」
そう言うや否や、レイは半漁人たちの前で魚の干物を食べた。
その様子を見た半漁人たちは憤慨して、レイに狙いを定めて矢を放った。数本の矢が鎧に当たったが、怪我をするほどではない。さらに矢が飛んできたが、レイは斧で受け流していた。
「上等だ。激槍が一撃、手加減無用だな」
ゴースロンに騎乗したウィンスが、ミラージュグレイブによるチャージングで半漁人たちを蹴散らしていく。
レイは雷神斧を振りかざし、ラウンドスウィングで半漁人を数匹、薙ぎ払う。
ウィンスの攻めの構えとレイの連携攻撃により、半漁人たちは全て倒すことができた。
「いやはや…お強い、ですね」
レイの言葉に、ウィンスは鼻をフンと鳴らす。
「……あんたも強いが。足りてねーな、魂の反逆が」
「はい?」
レイは、これから起こるであろう出来事を、まだ知らなかった。
●
その頃。
アイビスは河へ入ろうとする大ヤドカリ目がけて、手裏剣「朧月」で牽制する。
すかさず晴が間合いを取り、シャドウブリットで攻撃……衝撃が走り、敵の触手が飛び散った。
大ヤドカリは残った触手でアイビスに襲いかかるが、間一髪の回避……二回攻撃はアイビスには通用しない。
「接近戦に持ち込めば、こっちのものよ!」
半漁人は全て退治できた。残りは大ヤドカリのみ。覚醒したアイビスは瞬脚を使い、立体攻撃で巨大な殻の上に乗ったかと思うと、見事に攻撃が命中…敵の身体は全て粉砕された。
「もう一匹倒せば、終わりだぜ」
晴は追い打ちをかけるようにシャドウブリットを放った。固い殻に衝撃が走り、無数の触手が千切れていく。
「逃げようとしても無駄よ!」
アイビスは素早く敵に接近すると、衝撃拳「発勁掌波」で真下からアームズダンシングを繰り出す。それはまるでアッパーのような一撃だ。敵は転倒すると同時に粉々になった。
「大ヤドカリも倒せたし、これで一安心ね」
安堵するアイビス。
「プロテクションを使う前に、二匹とも木端微塵になっちまったな」
晴はそう言いながら、顎を杓った。
ハンターたちの見事な戦い降りに、壮がうれしそうに駆け寄ってくる。
「すごい、さすがですね!」
壮はアイビスに近づこうとしたが、急に動けなくなった。
と言うより、少し宙に浮いている感じである。
見れば、壮の襟元に槍が突き刺さり、ウィンスが吊るし上げていたのだ。
「あんだそのツラ……あんだそのへっぴり腰。お前アレだわ。今この瞬間、世界で一番情けないわ。キング・オブ・ウルトラ・情けないで賞だわ。ナメてんのか。戦場ナメてんのかおい。戦場はぺろぺろキャンディじゃねーぞ、おい。足りてねえ。全然足りてねーよ……お前、魂の反逆が」
いかにも気に入らない顔でウィンスが壮を見据える。
「え? え?」
疾風怒濤の勢いが凄まじく、壮は顔を強張らせていた。
そんな遣り取りを見ていた晴は、どこか楽しげだ。
「これが所謂、洗礼ってヤツかねえ。お手並み拝見だな」
さらに洗礼は続く。ウィンスは真顔だ。
「いいか。戦いってのは、いや、人生ってのは魂の反逆なんだよ。お前の魂は全く反逆してない。だから最終フラグ確定です」
「えぇーっ?!」
思わず叫ぶ壮。バタバタと身体を動かすが、ウィンスから逃げることができない。
「つうわけでおら、やるか、やられるか、生き残りたかったら二つに一つだ。ソウルレジスタンス・オア・ダーイ。せいぜい頑張れ」
ウィンスはそう告げると、壮を地面に降ろし、槍を収めた。
「うう……反論する余裕もなかった」
項垂れる壮に、アイビスが言い放った。
「少しでも意地を見せてみなさい、じゃなきゃハンターとしても男としてもみっともないわよ!」
「……意地……か」
壮が、小声で言った。
「……水本様、今回はダメでも、次回はきっとチャンスがあるはずです……多分」
事の成り行きを見ていたレイが、壮の肩にそっと手を置いた。
「ああー、その優しさが、どことなく切なすぎるー」
壮の叫びに、レイはニッコリと笑みを浮かべる。
「誰かの為に身を投じれる事……とても、素晴らしく思います。被害の少なさは、皆様のおかげですね」
レイがそう言うと、シェリーが相槌を打った。
「そうよ。私を助けようとして、来てくれたじゃない。壮さんは、あっさりやられたけど」
「……それ、フォローになってないっす」
壮の返答が気になったのか、ウィンスが尚も真顔で言う。
「お前、マジで最終フラグだな」
「いやだーっ!!」
それ以来、壮はウィンスを見る度にビクついていた。
そんな様子を見て、晴は笑いを堪えていた。
●
逃げ遅れた商人たちが、兵庫とミリアに素直に従ったのには理由があった。
「皆、落ち着いてくれ。手利きのハンター達が敵の対処に当たっている。ハンター達が心置きなく戦う為にも、皆がここから離れてくれていた方が助かるんだ。俺達を助けると思って協力してほしい。頼む」
兵庫の真摯な対応に、商人たちを落ち着きを取り戻し、頷いていた。
「避難する目当てはついてるのか?」
商人の一人が言った。
「この先に民家がある。河岸とは反対側に位置するから安全だろう」
兵庫は全身の怪我を覆い隠すように装備し、顔には覆面をしていた。もし怪我を負っていることが知れたら、人々は不安になるだろう。そうした気遣いもあってか、商人たちは兵庫が重体だということに気がつかなかった。
だが、兵庫にとってはそれで良かった。余計な心配はかけたくなかったからだ。
「では、行くとしよう」
兵庫を先頭に商人たちが付いていき、ミリアは最後方で皆を見守っていた。
「水には近付かないようにね。慌てず、ゆっくりね」
他の仲間たちが河岸で敵と対峙しているとは言え、油断はできない。
ミリアは慎重に対処して、人々を誘導していた。
(闘えないのは辛いけど…避難している人達が危険な目に逢わないように気を付けなきゃ)
そう自分に言い聞かせ、ミリアは人々に避難を呼びかけていた。
「後方は僕が見張ってるから、皆は先に進んで!」
しばらくすると、民家に辿り着いた。
「……ここか」
兵庫が呟く。見渡すと畑があった。
見れば、農作業をしている夫婦がいた。
「ん? どうした?」
旦那が何事かと声をかけると、兵庫が事情を説明した。
「そういうことなら、ここで仲間が来るまで待ってろ。茶でも出すからよ」
旦那はそう言いながら、商人たちを自宅へと招き入れた。
「突然、押しかけて申し訳ない」
兵庫の言葉に、旦那は気さくな笑みを浮かべた。
「気にするこたーない。あんたの心意気、ワシもつい、うれしくなってな」
「そう言って頂けると心強い」
人々を守り切ることができて、兵庫はうれしかった。
何故なら、自身の痛みより、人々を守ることができずに後悔する方が耐えられなかったからだ。
「良かった……商人たちも全員無事みたいだしね」
ミリアは自分でも気が付かずに微笑んでいた。
戦いは仲間に任せたことで、避難誘導も順調に進んだ。
助けられた人々は、ミリアと兵庫に感謝の意を述べた。
「本当に助かったよ。ありがとう」
民家の客室で、人々と茶を飲むことになった。
「皆が無事に民家まで辿り着けて、僕も安心したよ」
普段の明るい笑みを見せるミリア。
「ああ、仲間たちが戻ったら、何か埋め合わせでもできれば良いんだが……」
ふと考え込む兵庫だった。
●
レイが仲間たちと共に民家を訪れると、食卓に案内された。
「これは新鮮な魚介類や野菜の料理がたくさん、ありますね」
どういうことだろうと思いながらレイが言うと、兵庫が応えた。
「敵は全て倒せたらしいな。俺も闘うことができれば、戦闘の負担も少しは減ったはずだ。せめて、これくらいのことはさせてくれ」
「それであんたの気がすむなら、俺は構わねえよ。遠慮なく頂くぜ」
晴はそう言いながら椅子に座ると、料理を食べ始めた。
「お、うめえな。こりゃ」
美味しそうに言う晴を見て、レイが遠慮がちに会釈する。
「それではお言葉に甘えて……榊様、ありがとうございます」
気が付けば、レイだけでなく他の仲間も料理を食べ、商人たちまで混ざっていた。
壮と言えば、ウィンスと目が合う度に相変わらずビクついていた。
ウィンスは壮の態度がまだ直っていないことに気付き、事あるごとに「あ?」「足りてねえんだよ」と突っ込んでいた。
「これからどうなることやら……な感じね」
アイビスはその訳を知っていたこともあり、小さく苦笑していた。
「アイビスさん、言わないでー」
壮が懇願すると、兵庫が不思議そうな顔をした。
「何かあったのか?」
「ああ、実は……」
と、晴が話し始めると、とっさに壮が彼の口を手で塞ぐ。
「わーっと、なんでもないですよ、はははは」
だが、これまたあっさりと晴は壮の手を払いのける。
「はははは、じゃねえよ。どうせ、いずれバレるんだから、隠しても無駄だっての」
「そんなー、晴さん、黙っててよー」
壮は両手を組んで、晴に頼み込む。
「……まあ、俺は、黙ってるぜ。俺はな。他は保障しないぜ」
それを聞いた壮は、それ以上、何も言えなかった。
「何があったかは知らないが、せっかくの機会だ。楽しんでくれ」
兵庫がそう言うと、壮は顔を上げて「ゴチになります」と元気よく答えた。
「現金なヤツだな」
晴はやれやれと小さく溜息をついた。
「……?」
それを見たミリアは、首を傾げていた。
彼女が事実を知るのは、数日後だった。
いろいろあったが、シェリーは内心、壮には感謝していた。
結果的には敵にやられた壮だったが、自分を助けに来てくれた気持ちがうれしかったのだ。
なによりも、今回の依頼では学ぶことが多かった。
異なる分野の『力』の持ち主が、それぞれ知恵を出し合い、依頼を達成する過程は素晴らしかった。
そして、今回の出来事がきっかけで、壮は『力』とは何かと改めて考えるようになっていた。
ハンターたちに幸あれ!
依頼結果
参加者一覧
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マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
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相談卓 榊 兵庫(ka0010) 人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/05/17 23:54:29 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/13 22:04:23 |