ゲスト
(ka0000)
リリム、恋しちゃいました!
マスター:sagitta

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~10人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/16 19:00
- 完成日
- 2015/05/25 05:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
リリム・マリエッタは14歳。恋するお年頃。
今日もリリムはお下げの髪の毛と、ふわふわのスカートを風になびかせてヴァリオスの町を行く。首には、ヴァリオス魔術学院の生徒であることを示すシンボルが縫いつけられたスカーフ。そう、リリムは学院に通う、魔法使い見習いなのだ。
「だけど、どんな魔法も、恋の力の前には無力だわ……」
うっとりとした表情でそんなことをつぶやくリリム。リリム・マリエッタは14歳。恋に恋するお年頃。
「それもこれも彼が……ニコラが、素敵すぎるからいけないのよ!」
ヴァリオスの大通りを歩きながらも、リリムはの乙女心は、ここにあらず。昨日たまたま「製薬」の授業で同じ実験グループになった2歳年上の「彼」、ニコラのことを思い出しては、どきどきが止まらない。
「だけど……彼の顔を見ると、緊張しちゃって、何一つうまくいかないの……」
昨日の失敗を思い出して、リリムの表情はみるみるゆがむ。
ニコラと同じグループになれたことで興奮したリリムは、先生の注意も耳に入らず、混ぜるな危険の薬品をえいやっとばかりにかきまわしちゃって……どかん! 幸い、大きなけが人はなくすんだものの、授業は台無し、さんざんな有様だったのだ。
「こんなんで、告白なんて、できるわけない……」
もはや今にも泣き出しそうな表情のリリム。さっきからの一人百面相に、傍から見ている人がいたら、ずいぶんと怖いにちがいない……。
「だめだめ、弱気になっちゃだめよ、リリム!」
突如、大声を上げて、自分を叱咤するリリム。だから怖いって……。
「困ったときの、ハンター頼み! こんなあたしが、あの素敵な彼に告白できるように、ハンターたちに助けてもらうんだから! リリム・マリエッタ、今こそ、一世一代の勇気を出すの!」
意気揚々と、ハンターオフィスに向かって歩き出すリリム。勇気の出しどころとハンターの使いどころを間違っている気が……しなくもない。
今日もリリムはお下げの髪の毛と、ふわふわのスカートを風になびかせてヴァリオスの町を行く。首には、ヴァリオス魔術学院の生徒であることを示すシンボルが縫いつけられたスカーフ。そう、リリムは学院に通う、魔法使い見習いなのだ。
「だけど、どんな魔法も、恋の力の前には無力だわ……」
うっとりとした表情でそんなことをつぶやくリリム。リリム・マリエッタは14歳。恋に恋するお年頃。
「それもこれも彼が……ニコラが、素敵すぎるからいけないのよ!」
ヴァリオスの大通りを歩きながらも、リリムはの乙女心は、ここにあらず。昨日たまたま「製薬」の授業で同じ実験グループになった2歳年上の「彼」、ニコラのことを思い出しては、どきどきが止まらない。
「だけど……彼の顔を見ると、緊張しちゃって、何一つうまくいかないの……」
昨日の失敗を思い出して、リリムの表情はみるみるゆがむ。
ニコラと同じグループになれたことで興奮したリリムは、先生の注意も耳に入らず、混ぜるな危険の薬品をえいやっとばかりにかきまわしちゃって……どかん! 幸い、大きなけが人はなくすんだものの、授業は台無し、さんざんな有様だったのだ。
「こんなんで、告白なんて、できるわけない……」
もはや今にも泣き出しそうな表情のリリム。さっきからの一人百面相に、傍から見ている人がいたら、ずいぶんと怖いにちがいない……。
「だめだめ、弱気になっちゃだめよ、リリム!」
突如、大声を上げて、自分を叱咤するリリム。だから怖いって……。
「困ったときの、ハンター頼み! こんなあたしが、あの素敵な彼に告白できるように、ハンターたちに助けてもらうんだから! リリム・マリエッタ、今こそ、一世一代の勇気を出すの!」
意気揚々と、ハンターオフィスに向かって歩き出すリリム。勇気の出しどころとハンターの使いどころを間違っている気が……しなくもない。
リプレイ本文
●女子トーク
「でねでね、ニコラったら、クラスの誰も解けなかった問題を、すらすらと黒板に書きはじめちゃってさ~……」
「へぇ、優等生なんだねぇ。イケメンで勉強もできるなんて、すごいかもぉ」
「ニコラさまは優秀でいらっしゃるのですね。きっと、ふだんからたくさん頑張っていらっしゃるんだわ」
「いいですねいいですね! きっとニコラさん、素敵な方なんでしょうねっ」
初夏の午前中。町中の喫茶店のテラス席に陣取って、恋愛談義に花を咲かせる4人若き女の子達。
今回の依頼主で魔術学院の生徒、リリム・マリエッタ14歳と、バンドマンに恋するバンギャ魔術師のはるな(ka3307)18歳、許嫁との結婚を夢見るお嬢様・パティ=アヴァロンウッド(ka3439)15歳、そしてまだ恋に恋するお年頃のミコト=S=レグルス(ka3953)16歳。
これでもれっきとしたハンターと、その依頼主なのだが、10代の女の子が4人集まれば、和気藹々となるのに時間はいらない。すっかり長年の友達のような空気で、リリムの語る片想い相手の美少年ニコラの話に、盛り上がっている。
「さすが女性陣、あっという間になかよくなっているなぁ。……ミコが、張り切りすぎて変なこと言わないといいけど」
少し離れた席で、リリムたちを――というより、幼なじみのミコトのことを少し心配そうに眺めているルドルフ・デネボラ(ka3749)が言った。
「リリム殿が、悔いのない告白をできるといいですね……自分も一度だけ告白をしたことがありますが、傍から見て良い告白では、ありませんでしたから」
自らが想い慕う女性のことを思い返しながら、屋外(ka3530)がつぶやいた。
はしゃぐ四人を眺めるルドルフと屋外は、まるで保護者のような気分である。
「で」
はるながふと思いついた顔で、リリムの顔をのぞき込んだ。
「リリムちゃん的にはどうなの、どうなの? ニコラちゃんの何処が好きなのぉ?」
「そ、それはっ」
直接的な問いに、リリムがぱっと頬を赤らめる。
「それ、私もお聞きしたいです。ニコラさまのどこが好きなのか……」
「うんうん、気になりますっ」
パティとミコトも身を乗り出す。
「そ、そんな、はずかしいよぉ……」
「ほら、これもれっきとしたお仕事だよぉ? リリムちゃんがニコラちゃんをどう思ってるのか、わからなかったらアドバイスもできないしぃ~」
はるなの言葉は道理だが、その表情は好奇心でいっぱいで、にやにやしている。
「えっと……透き通るみたいな真っ白な肌とか、太陽みたいな明るい金色の、さらさらした髪の毛とか……あとね、エメラルドそっくりの瞳……ニコラはまるで、おとぎ話に出てくる王子さまみたいなの
リリムが頬を紅潮させて、うっとりとした表情で話す。
「って、外見ばっかじゃん、それ! そうじゃなくて、内面的なモノとかぁ」
はるながため息をつく。男は見た目も大事だが、中身はもっと大事、というのがはるなの信条だ。
「どうして好きになったのか、とか。何かきっかけがあるのですか?」
パティがたずねると、リリムは何かを思い出したような表情になり、さらに顔を赤らめた。
「……あたしのことを、助けてくれたの」
ぽつり、とリリムがつぶやくと、ハンターたちの視線がリリムに集まった。リリムは照れてうつむきながら、言葉を続ける。
「休み時間、次の授業におくれそうで、あたし、あわててて……廊下を走ってたのね。そしたら、階段から足を滑らせちゃって……」
「……なんか、お約束な感じ」
はるながぼそっとつぶやくが、リリムの耳には入っていない。
「このままじゃ顔から床にたたきつけられる! ってところで、ちょうど通りかかったニコラがさっと手を出して、あたしのこと受け止めてくれたの!」
「それは……確かにかっこいいですね」
パティがうっとりとつぶやく。
「呆然とするあたしに、けがはない?ってささやいて、あたしがうなずくと、そうか、よかった、といってほほえんだの。まるで天使みたいだった……」
「優しくて、すてきな人ですねっ」
ミコトの言葉に、リリムが力強くうなずく。
「まだお互いに名前も知らない新入生だったころだから……きっとニコラは覚えていないでしょうけど。そのあとでいくつかの授業で再開できて、あたしは、うれしかったの」
「なるほどねぇ……それは惚れちゃうわぁ」
はるなも納得したようにうなずいた。
「そのあともずっと、ニコラのことを見てきたけど、彼はいつでも誰にでも優しくて、でも決してそれを威張ったりしないの。おとなしいけれどすごく周りを見ていて、やるべきことをさっと行動にうつせる人なのよ」
「リリムさまの想い、よくわかりました。そんな素敵な、大事な恋、実らせなくては勿体ない、です」
パティが感動した様子で言い、ミコトもそれに続ける。
「うちもまだ恋とか解りませんけど、お役に立てる様に頑張りますっ」
「で、具体的な作戦だけどぉ……」
真面目な表情になって、はるなが口を開いた。
「まずはそもそも、告白できるような状況にしたいですよね。となれば、定番な案ですけど、まずはお友達から作戦が、いいんじゃないのかなって思いますっ」
ミコトが、興奮した様子で話しはじめた。彼女の頭の中にはすでに、リリムとニコラがしあわせにほほえんでいる光景が思い浮かんでいる。
「まずはニコラさまとお話できる間柄になりましょう!」
パティのだめ押しの一言に、リリムが目を潤ませて、うなずいた。
「そうね、そうよね! みんな、ありがとう!」
「ってことは、まずは直接、ゆっくりお話しする機会があった方が絶対いいよね~。ニコラちゃんと二人で、お外でお茶会とかどぉ?」
「お茶会! ……もし実現できたら、とてもうれしいな」
「よーし決まり! ニコラさんをお呼びするのは、男子たちに任せて……ね、ルゥ?」
ミコトが、ルドルフの方に顔を向けて、ちょこん、と首をかしげてみせる。
「ああ……それは俺たちに任せてください」
ルドルフがミコトのハイテンションに苦笑しつつ、リリムに向かってうなずいてみせた。
「ええ。リリム殿のお気持ちを伝えるために……その為のお手伝いをしましょう」
先ほどから熱心に女性陣の会話をメモ帳に書き留めていた屋外も、リリムに笑顔を向けた。
「リリム殿の熱心な姿を見ていると、自分もある方のことを思い出します。御無事であることを願うばかりですが」
屋外が空を眺めて思いを馳せた。
それぞれの思いを胸に、リリムの初恋のお手伝いが、はじまったのだった。
●ニコラの呼び出し
「ニコラさんですか? ハンターのルドルフ・デネボラです。ちょっとお時間よろしいですか?」
昼下がり。魔術学院の授業が終わるころを見計らって、学院の出口に赴いたルドルフと屋外は、果たして、目的の美少年、ニコラを発見していた。遠くから見てもよく目立つ明るい金髪だ。
「ハンターですか? ハンターの方が、僕に何のご用です?」
さすがに優等生。初対面の人物相手でも、礼儀は欠かさない。しかも、相手が憧れのハンターとあって、心なしかうれしそうな雰囲気もある。
「リリム殿に、ハンターをめざしている友人がいらっしゃるとおうかがいしまして……リリム殿のお茶会をするそうなので、よかったら、ご一緒しませんか?」
屋外が状況を説明する。彼の誠実な話し方に、ニコラは好感を持ったらしい。はじめは戸惑いながらも、お茶会に参加することに賛成してくれた。
●お茶会準備
傾きはじめた日の光が、少しずつ橙色に染まりはじめた頃。リリム・マリエッタの住む家の庭先では、お茶会の準備が整いつつあった。さすが良家の子女、庭もずいぶんと立派で、10人ほどが座れる大きなテーブルと椅子を置いても、十分に広々としている。
「だ、だいじょうぶかしら。ねぇねぇ、あたし、見た目とか大丈夫かな? 変じゃない?」
ぎりぎりまで、屋外に借りたコンパクトをのぞき込みながら、お化粧に余念がなかったリリムが、心配そうにとなりのはるなに尋ねている。
「大丈夫大丈夫、素のリリムちゃんが一番素敵だと、はるなは思うしー。あ、そうだ。これで髪の毛、結わえていかない?」
はるながそう言いながら、リリムの髪をかわいらしい青いリボンで結びはじめた。
「サンドイッチやお菓子も用意できたし、準備万端!」
今回の食事は、リリムを中心に、ハンターの女の子3人が手伝ってつくったもので、はるなによれば、リリムの女子力アピール的な意味もあるらしい。サンドイッチのほか、手づくりのクッキーやスコーンもあって豪華だ。
「き、緊張してきた……何を話したらいいのかな……」
慌てふためいた様子のリリムの肩を、はるながぽん、と叩く。
「即告る~とかってのはちょっと無理があるかもぉ」
「片想いは苦しいけれど、相手のことを知って、もっと好きになるのは……とても幸せなこと、ですから。ゆっくりお互いに思いを育んで、それから――というのを、オススメしたいです!」
パティが穏やかに言い、その隣でミコトがぶんぶんとうなずく。
「折角好きになったらなら、相手の事、もっと良く知って見るのは楽しいと思いますし。思ってたのと違う部分、同じ部分、あると思うし、自分の事もよく知って貰って、できれば好きになってもらえたら一番うれしいけど、友達になってみる事自体にも意味はあるはずですもんっ。せっかくの初恋なら、ていねいに、ひとつひとつを大切に、進めていってほしいなーとか」
そこまで一気にまくし立てて、ミコトが照れたようにうつむいた。
「……なんて言っても、うち自身まだ恋したことないんですけどね……いつかはうちも好きになる人ができたらいいなーとは、思ったりもしますけどっ」
「そ、そうだよね。何も今日、必ず告白しなくちゃいけないわけじゃないし……と、友達から」
リリムが自分に言い聞かせるようにそう言い聞かせた。
コンッコンッ。
そのとき、門に備え付けられたノッカーの音が響いた。どうやら、ニコラが到着したらしい。
「頑張って~」
「頑張ってくださいね」
「応援、してますっ」
三人の声援を受けて、リリムはひとつ深呼吸をしてから、門へと向かった。
●いよいよお茶会
「なんだかんだ、いい雰囲気じゃない」
リリムとニコラから少し離れた席でふたりを眺めながら、ほっとしたようにはるながつぶやく。
「連れてくる途中にそれとなくリリムさんをどう思っているか聞いてみたんですが、ニコラさんも、まんざらでもない感じでしたよ。まぁ、男って単純なので、自分に好意を寄せられて嫌な気になる人は少ないですしね」
同じくはるなの隣に座ったルドルフが、苦笑する。
彼らの言うとおり、はじめはこわばった表情のニコラだったが、リリムと学校の話をしているうちにだんだんと打ち解けてきたらしい。同級生の気安さもあって、まわりのハンターたちそっちのけで、ふたりで話が盛り上がっている。
「マリエッタさんは……」
「できれば、リリム、ってよんでくれるとうれしいな。その……ニコラの方が、年上なんだし」
ニコラの言葉をさえぎって、リリムが言う。冷静な態度を装ってはいるが、まわりから見れば、勇気を振り絞って伝えたのが丸わかりだ。リリムの健気さに、ハンターたちがこっそりと身もだえている。
「リリムは、薬草学に興味があるんだね。僕もなんだ。薬草の世界は奥が深いなぁといつも思うよ」
律儀に言い直して、ニコラがリリムに笑いかけた。彼の何気ない笑顔が目の前の少女の心臓を高鳴らせていることに、おそらく彼自身は気づいていないだろう。
「そうなの! 薬草の図鑑を見ているだけで、すごく面白くて……」
「今度一緒に、草原に薬草を採りに行かないかい?」
「えっ、あっ、えっと……ぜ、ぜひ!」
ニコラのさりげない誘いに、顔には見せないものの、周囲のハンターたちが心の中で一斉にガッツポーズを決める。
……そんなこんなでお茶会は、終始いいムードで終了した。門のところまで見送られたニコラが、最後にリリムを振り返る。
「今日は本当にありがとう。とても楽しかったよ。僕は、その……友達があんまりいないから、こういう機会ってほとんどなくて。もしマリエッタさん……じゃない、リリムがよかったら、また、誘ってほしいな」
ニコラの言葉に、リリムは顔を真っ赤にして、ぶんぶんと首を縦に振った。
「ももも、もちろん、また誘うから! 薬草採りも、楽しみにしてる!」
「ありがとう。では、また。ハンターのみなさんも、またぜひお会いして、お話をお聞かせいただきたいです」
去り際に極上の笑顔を見せて、リリムだけではなくハンター女子たちの好感度を急上昇させていくニコラ。……これだから美少年は侮れない。
「みんな、本当にありがとう! ニコラとは、ちゃんと友達になれた気がする。まだまだこれからだけど……」
リリムはそう言って、幸せだったひとときをかみしめるように、静かにまぶたを閉じた。そして、もう一度目を開ける。
「あたし、がんばるから! 応援、よろしくね!」
「でねでね、ニコラったら、クラスの誰も解けなかった問題を、すらすらと黒板に書きはじめちゃってさ~……」
「へぇ、優等生なんだねぇ。イケメンで勉強もできるなんて、すごいかもぉ」
「ニコラさまは優秀でいらっしゃるのですね。きっと、ふだんからたくさん頑張っていらっしゃるんだわ」
「いいですねいいですね! きっとニコラさん、素敵な方なんでしょうねっ」
初夏の午前中。町中の喫茶店のテラス席に陣取って、恋愛談義に花を咲かせる4人若き女の子達。
今回の依頼主で魔術学院の生徒、リリム・マリエッタ14歳と、バンドマンに恋するバンギャ魔術師のはるな(ka3307)18歳、許嫁との結婚を夢見るお嬢様・パティ=アヴァロンウッド(ka3439)15歳、そしてまだ恋に恋するお年頃のミコト=S=レグルス(ka3953)16歳。
これでもれっきとしたハンターと、その依頼主なのだが、10代の女の子が4人集まれば、和気藹々となるのに時間はいらない。すっかり長年の友達のような空気で、リリムの語る片想い相手の美少年ニコラの話に、盛り上がっている。
「さすが女性陣、あっという間になかよくなっているなぁ。……ミコが、張り切りすぎて変なこと言わないといいけど」
少し離れた席で、リリムたちを――というより、幼なじみのミコトのことを少し心配そうに眺めているルドルフ・デネボラ(ka3749)が言った。
「リリム殿が、悔いのない告白をできるといいですね……自分も一度だけ告白をしたことがありますが、傍から見て良い告白では、ありませんでしたから」
自らが想い慕う女性のことを思い返しながら、屋外(ka3530)がつぶやいた。
はしゃぐ四人を眺めるルドルフと屋外は、まるで保護者のような気分である。
「で」
はるながふと思いついた顔で、リリムの顔をのぞき込んだ。
「リリムちゃん的にはどうなの、どうなの? ニコラちゃんの何処が好きなのぉ?」
「そ、それはっ」
直接的な問いに、リリムがぱっと頬を赤らめる。
「それ、私もお聞きしたいです。ニコラさまのどこが好きなのか……」
「うんうん、気になりますっ」
パティとミコトも身を乗り出す。
「そ、そんな、はずかしいよぉ……」
「ほら、これもれっきとしたお仕事だよぉ? リリムちゃんがニコラちゃんをどう思ってるのか、わからなかったらアドバイスもできないしぃ~」
はるなの言葉は道理だが、その表情は好奇心でいっぱいで、にやにやしている。
「えっと……透き通るみたいな真っ白な肌とか、太陽みたいな明るい金色の、さらさらした髪の毛とか……あとね、エメラルドそっくりの瞳……ニコラはまるで、おとぎ話に出てくる王子さまみたいなの
リリムが頬を紅潮させて、うっとりとした表情で話す。
「って、外見ばっかじゃん、それ! そうじゃなくて、内面的なモノとかぁ」
はるながため息をつく。男は見た目も大事だが、中身はもっと大事、というのがはるなの信条だ。
「どうして好きになったのか、とか。何かきっかけがあるのですか?」
パティがたずねると、リリムは何かを思い出したような表情になり、さらに顔を赤らめた。
「……あたしのことを、助けてくれたの」
ぽつり、とリリムがつぶやくと、ハンターたちの視線がリリムに集まった。リリムは照れてうつむきながら、言葉を続ける。
「休み時間、次の授業におくれそうで、あたし、あわててて……廊下を走ってたのね。そしたら、階段から足を滑らせちゃって……」
「……なんか、お約束な感じ」
はるながぼそっとつぶやくが、リリムの耳には入っていない。
「このままじゃ顔から床にたたきつけられる! ってところで、ちょうど通りかかったニコラがさっと手を出して、あたしのこと受け止めてくれたの!」
「それは……確かにかっこいいですね」
パティがうっとりとつぶやく。
「呆然とするあたしに、けがはない?ってささやいて、あたしがうなずくと、そうか、よかった、といってほほえんだの。まるで天使みたいだった……」
「優しくて、すてきな人ですねっ」
ミコトの言葉に、リリムが力強くうなずく。
「まだお互いに名前も知らない新入生だったころだから……きっとニコラは覚えていないでしょうけど。そのあとでいくつかの授業で再開できて、あたしは、うれしかったの」
「なるほどねぇ……それは惚れちゃうわぁ」
はるなも納得したようにうなずいた。
「そのあともずっと、ニコラのことを見てきたけど、彼はいつでも誰にでも優しくて、でも決してそれを威張ったりしないの。おとなしいけれどすごく周りを見ていて、やるべきことをさっと行動にうつせる人なのよ」
「リリムさまの想い、よくわかりました。そんな素敵な、大事な恋、実らせなくては勿体ない、です」
パティが感動した様子で言い、ミコトもそれに続ける。
「うちもまだ恋とか解りませんけど、お役に立てる様に頑張りますっ」
「で、具体的な作戦だけどぉ……」
真面目な表情になって、はるなが口を開いた。
「まずはそもそも、告白できるような状況にしたいですよね。となれば、定番な案ですけど、まずはお友達から作戦が、いいんじゃないのかなって思いますっ」
ミコトが、興奮した様子で話しはじめた。彼女の頭の中にはすでに、リリムとニコラがしあわせにほほえんでいる光景が思い浮かんでいる。
「まずはニコラさまとお話できる間柄になりましょう!」
パティのだめ押しの一言に、リリムが目を潤ませて、うなずいた。
「そうね、そうよね! みんな、ありがとう!」
「ってことは、まずは直接、ゆっくりお話しする機会があった方が絶対いいよね~。ニコラちゃんと二人で、お外でお茶会とかどぉ?」
「お茶会! ……もし実現できたら、とてもうれしいな」
「よーし決まり! ニコラさんをお呼びするのは、男子たちに任せて……ね、ルゥ?」
ミコトが、ルドルフの方に顔を向けて、ちょこん、と首をかしげてみせる。
「ああ……それは俺たちに任せてください」
ルドルフがミコトのハイテンションに苦笑しつつ、リリムに向かってうなずいてみせた。
「ええ。リリム殿のお気持ちを伝えるために……その為のお手伝いをしましょう」
先ほどから熱心に女性陣の会話をメモ帳に書き留めていた屋外も、リリムに笑顔を向けた。
「リリム殿の熱心な姿を見ていると、自分もある方のことを思い出します。御無事であることを願うばかりですが」
屋外が空を眺めて思いを馳せた。
それぞれの思いを胸に、リリムの初恋のお手伝いが、はじまったのだった。
●ニコラの呼び出し
「ニコラさんですか? ハンターのルドルフ・デネボラです。ちょっとお時間よろしいですか?」
昼下がり。魔術学院の授業が終わるころを見計らって、学院の出口に赴いたルドルフと屋外は、果たして、目的の美少年、ニコラを発見していた。遠くから見てもよく目立つ明るい金髪だ。
「ハンターですか? ハンターの方が、僕に何のご用です?」
さすがに優等生。初対面の人物相手でも、礼儀は欠かさない。しかも、相手が憧れのハンターとあって、心なしかうれしそうな雰囲気もある。
「リリム殿に、ハンターをめざしている友人がいらっしゃるとおうかがいしまして……リリム殿のお茶会をするそうなので、よかったら、ご一緒しませんか?」
屋外が状況を説明する。彼の誠実な話し方に、ニコラは好感を持ったらしい。はじめは戸惑いながらも、お茶会に参加することに賛成してくれた。
●お茶会準備
傾きはじめた日の光が、少しずつ橙色に染まりはじめた頃。リリム・マリエッタの住む家の庭先では、お茶会の準備が整いつつあった。さすが良家の子女、庭もずいぶんと立派で、10人ほどが座れる大きなテーブルと椅子を置いても、十分に広々としている。
「だ、だいじょうぶかしら。ねぇねぇ、あたし、見た目とか大丈夫かな? 変じゃない?」
ぎりぎりまで、屋外に借りたコンパクトをのぞき込みながら、お化粧に余念がなかったリリムが、心配そうにとなりのはるなに尋ねている。
「大丈夫大丈夫、素のリリムちゃんが一番素敵だと、はるなは思うしー。あ、そうだ。これで髪の毛、結わえていかない?」
はるながそう言いながら、リリムの髪をかわいらしい青いリボンで結びはじめた。
「サンドイッチやお菓子も用意できたし、準備万端!」
今回の食事は、リリムを中心に、ハンターの女の子3人が手伝ってつくったもので、はるなによれば、リリムの女子力アピール的な意味もあるらしい。サンドイッチのほか、手づくりのクッキーやスコーンもあって豪華だ。
「き、緊張してきた……何を話したらいいのかな……」
慌てふためいた様子のリリムの肩を、はるながぽん、と叩く。
「即告る~とかってのはちょっと無理があるかもぉ」
「片想いは苦しいけれど、相手のことを知って、もっと好きになるのは……とても幸せなこと、ですから。ゆっくりお互いに思いを育んで、それから――というのを、オススメしたいです!」
パティが穏やかに言い、その隣でミコトがぶんぶんとうなずく。
「折角好きになったらなら、相手の事、もっと良く知って見るのは楽しいと思いますし。思ってたのと違う部分、同じ部分、あると思うし、自分の事もよく知って貰って、できれば好きになってもらえたら一番うれしいけど、友達になってみる事自体にも意味はあるはずですもんっ。せっかくの初恋なら、ていねいに、ひとつひとつを大切に、進めていってほしいなーとか」
そこまで一気にまくし立てて、ミコトが照れたようにうつむいた。
「……なんて言っても、うち自身まだ恋したことないんですけどね……いつかはうちも好きになる人ができたらいいなーとは、思ったりもしますけどっ」
「そ、そうだよね。何も今日、必ず告白しなくちゃいけないわけじゃないし……と、友達から」
リリムが自分に言い聞かせるようにそう言い聞かせた。
コンッコンッ。
そのとき、門に備え付けられたノッカーの音が響いた。どうやら、ニコラが到着したらしい。
「頑張って~」
「頑張ってくださいね」
「応援、してますっ」
三人の声援を受けて、リリムはひとつ深呼吸をしてから、門へと向かった。
●いよいよお茶会
「なんだかんだ、いい雰囲気じゃない」
リリムとニコラから少し離れた席でふたりを眺めながら、ほっとしたようにはるながつぶやく。
「連れてくる途中にそれとなくリリムさんをどう思っているか聞いてみたんですが、ニコラさんも、まんざらでもない感じでしたよ。まぁ、男って単純なので、自分に好意を寄せられて嫌な気になる人は少ないですしね」
同じくはるなの隣に座ったルドルフが、苦笑する。
彼らの言うとおり、はじめはこわばった表情のニコラだったが、リリムと学校の話をしているうちにだんだんと打ち解けてきたらしい。同級生の気安さもあって、まわりのハンターたちそっちのけで、ふたりで話が盛り上がっている。
「マリエッタさんは……」
「できれば、リリム、ってよんでくれるとうれしいな。その……ニコラの方が、年上なんだし」
ニコラの言葉をさえぎって、リリムが言う。冷静な態度を装ってはいるが、まわりから見れば、勇気を振り絞って伝えたのが丸わかりだ。リリムの健気さに、ハンターたちがこっそりと身もだえている。
「リリムは、薬草学に興味があるんだね。僕もなんだ。薬草の世界は奥が深いなぁといつも思うよ」
律儀に言い直して、ニコラがリリムに笑いかけた。彼の何気ない笑顔が目の前の少女の心臓を高鳴らせていることに、おそらく彼自身は気づいていないだろう。
「そうなの! 薬草の図鑑を見ているだけで、すごく面白くて……」
「今度一緒に、草原に薬草を採りに行かないかい?」
「えっ、あっ、えっと……ぜ、ぜひ!」
ニコラのさりげない誘いに、顔には見せないものの、周囲のハンターたちが心の中で一斉にガッツポーズを決める。
……そんなこんなでお茶会は、終始いいムードで終了した。門のところまで見送られたニコラが、最後にリリムを振り返る。
「今日は本当にありがとう。とても楽しかったよ。僕は、その……友達があんまりいないから、こういう機会ってほとんどなくて。もしマリエッタさん……じゃない、リリムがよかったら、また、誘ってほしいな」
ニコラの言葉に、リリムは顔を真っ赤にして、ぶんぶんと首を縦に振った。
「ももも、もちろん、また誘うから! 薬草採りも、楽しみにしてる!」
「ありがとう。では、また。ハンターのみなさんも、またぜひお会いして、お話をお聞かせいただきたいです」
去り際に極上の笑顔を見せて、リリムだけではなくハンター女子たちの好感度を急上昇させていくニコラ。……これだから美少年は侮れない。
「みんな、本当にありがとう! ニコラとは、ちゃんと友達になれた気がする。まだまだこれからだけど……」
リリムはそう言って、幸せだったひとときをかみしめるように、静かにまぶたを閉じた。そして、もう一度目を開ける。
「あたし、がんばるから! 応援、よろしくね!」
依頼結果
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/14 23:47:26 |
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恋する乙女の物語 パティ=アヴァロンウッド(ka3439) 人間(クリムゾンウェスト)|15才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/05/16 18:02:05 |