ゲスト
(ka0000)
海中を漂う巨大な影
マスター:天田洋介

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/16 22:00
- 完成日
- 2015/05/21 20:33
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
グラズヘイム王国の西部沿岸にある漁村。
夜明け前の早朝から村の男達が漁船に乗って海へと出かけていく。
順風満帆の風を受けて二隻の漁船は漁場に到達した。さっそく二隻の間に漁網を投げ入れてゆっくりと回遊する。
「よしやれ!」
頃合いを感じた船長の号令で漁師達が意気揚々と漁網を引き揚げた。
だがあまりの手応えのなさに漁師達が不安な表情を浮かべる。案の定、漁網に獲物は殆どかかっていなかった。
船長は笑って誤魔化しつつ別の漁場へ向かうよう指示をだす。三十分後、もう一度漁網が仕掛けられる。
「どうしてだ……?」
本日二度目の水揚げも成果無しに終わった。
「船長、あれ見てくだせぇよ! あれを!」
漁師の一人が海面を指さしながら大声を張り上げる。海面の一部だけが黒く色が変わっていた。
「急いで動かせ! イルカや鮫ならともかく、クジラが浮き上がってきたのならひとたまりもねぇぞ!」
我を取り戻した船長が叫んだ。漁師達が急いで錨を引き上げて帆を張り直す。二隻ともすんでの所で海中から浮き上がってきた生物との衝突を回避した。
「クジラじゃねぇな。巨大エイか?」
エイだと間違えそうになったがよく見れば違う。海面に漂っていたのは全長六メートルはありそうな二尾の『オヒョウ』だった。
オヒョウとは大きさを除けばヒラメによく似た魚である。二、三メートル級の体格も珍しくはないが、これほどのオヒョウは誰も見たことがない。おそらく幻獣の類いと思われた。
「こいつ、わざとやってやがる!」
危険は去っていなかった。巨大オヒョウ二尾はそれから何度も漁船二隻を転覆転覆させようとする。半日追い回されてようやく漁村に戻ることができた。
その晩、漁村の一同が集会所に集まる。
漁場で魚が獲れなかったのも、おそらく巨大オヒョウのせいである。根こそぎ食べられてしまったのだろう。
特定の漁場を諦めるだけならそれで済ますのだが、近くを通っただけで転覆させられるとなれば話は別だ。かといってあれだけ大きいと自分達だけではどうしようもない。
話し合いの結果、漁村の一同はハンターの力を借りることにするのだった。
夜明け前の早朝から村の男達が漁船に乗って海へと出かけていく。
順風満帆の風を受けて二隻の漁船は漁場に到達した。さっそく二隻の間に漁網を投げ入れてゆっくりと回遊する。
「よしやれ!」
頃合いを感じた船長の号令で漁師達が意気揚々と漁網を引き揚げた。
だがあまりの手応えのなさに漁師達が不安な表情を浮かべる。案の定、漁網に獲物は殆どかかっていなかった。
船長は笑って誤魔化しつつ別の漁場へ向かうよう指示をだす。三十分後、もう一度漁網が仕掛けられる。
「どうしてだ……?」
本日二度目の水揚げも成果無しに終わった。
「船長、あれ見てくだせぇよ! あれを!」
漁師の一人が海面を指さしながら大声を張り上げる。海面の一部だけが黒く色が変わっていた。
「急いで動かせ! イルカや鮫ならともかく、クジラが浮き上がってきたのならひとたまりもねぇぞ!」
我を取り戻した船長が叫んだ。漁師達が急いで錨を引き上げて帆を張り直す。二隻ともすんでの所で海中から浮き上がってきた生物との衝突を回避した。
「クジラじゃねぇな。巨大エイか?」
エイだと間違えそうになったがよく見れば違う。海面に漂っていたのは全長六メートルはありそうな二尾の『オヒョウ』だった。
オヒョウとは大きさを除けばヒラメによく似た魚である。二、三メートル級の体格も珍しくはないが、これほどのオヒョウは誰も見たことがない。おそらく幻獣の類いと思われた。
「こいつ、わざとやってやがる!」
危険は去っていなかった。巨大オヒョウ二尾はそれから何度も漁船二隻を転覆転覆させようとする。半日追い回されてようやく漁村に戻ることができた。
その晩、漁村の一同が集会所に集まる。
漁場で魚が獲れなかったのも、おそらく巨大オヒョウのせいである。根こそぎ食べられてしまったのだろう。
特定の漁場を諦めるだけならそれで済ますのだが、近くを通っただけで転覆させられるとなれば話は別だ。かといってあれだけ大きいと自分達だけではどうしようもない。
話し合いの結果、漁村の一同はハンターの力を借りることにするのだった。
リプレイ本文
●
宵の口、漁村に到着したハンター一行は依頼主に案内された家屋で一晩を過ごす。
到着二日目は準備に費やされる。
春日 啓一(ka1621)とクリスティン・ガフ(ka1090)は漁船の船長と面会し、長いロープの準備を頼んだ。更にある理由から今晩の御飯は鶏肉料理がよいと望む。
「話しを聞く限り普通に食えそうだな。歪虚じゃ笑えねえが」
「獰猛な肉食であってくれれば命の取り合いがより愉しくなるが」
その後、二人は海辺を散歩した。
巨大オヒョウはまず間違いなく幻獣の類いである。襲撃事件当初は恐れられていた巨大オヒョウだが、いつの間にか村人の興味は美味しいのか、それとも不味いのかというものに変化していた。
木陰で休んでいたHachi=Bee(ka2450)とNon=Bee(ka1604)も巨大オヒョウを話題にする。
「森育ちだからあまりお魚食べたことないや。オヒョウって美味しい?」
「ヒラメに似た白身魚ならヘルシーだし美容にもいいわぁ! でも大きいしどうかしらね」
到着三日目となる明日、Nonは調理の準備で漁村に残る予定だ。Hachiは漁船に乗ってオヒョウ退治へ。他のハンターも二手に分かれる。Gon=Bee(ka1587)とレイオス・アクアウォーカー(ka1990)は調理担当。クリスティン、春日啓一、nil(ka2654)は退治に向かう。
ステラ・ブルマーレ(ka3014)は明日乗り込む漁船を見学していた。
「オヒョウは見たことあるけど、この漁船がひっくり返るぐらいのサイズなんて……」
漁船の甲板からぐるりと全景を眺めていると、nilの姿が目に飛び込んでくる。下船したステラは砂浜のnilに駆け寄った。
「海、珍しいの?」
「……青い、海……。……何度見ても、やっぱり不思議で……綺麗……。船に乗るの、初めて」
二人は流木の上に座る。ステラが訊ねるとnilは海に惹かれているという。
「……どんな感じなんだろう……。……何時も海を見ている、海に出ている漁師達は、何を思って海を見るの……? 海は、海が、好き……なのか、な……。 それとも、ただ、仕事だから……?」
「せっかくだから直接聞いてみようか? 漁師さんたちに」
ステラがnilの手を引いて連れて行く。港では漁師達が集まって魚介鍋を作っていた。
「海はな。そりゃ毎日の糧だがよ。なんていうか……、そう生き様だな、生き様」
一人の漁師が仲間に酔っ払っていると茶化されながらも話してくれる。
「よーし! 明日はやるぞー!」
ステラに続いてその場の全員がかけ声をあげた。
レイオスとGonは料理小屋を訪ねる。こちらには大宴会用の調理道具が一通り揃っていた。
「羊肉は飽きたじゃん! 時代は魚じゃん!」
Gonは背中に担いでいた鍋を釜戸に載せて惚れ惚れと眺める。どうやらBee一族にとって大切な鍋のようだ。暇があれば磨いていた。
「これがあるとは思わなかったな」
レイオスは壁に掛けられていたマグロ解体用の長包丁を手にとった。巨大オヒョウを捌くのにちょうどよさそうである。
まもなくNonもやって来て、どのような料理を作るのか三人で擦り合わせを行うのだった。
●
そして三日目早朝、大きく帆を張った漁船二隻が沖へと出港する。
「大物獲ってくるじゃーん? 期待してるじゃーん?」
「はっちゃんを戦地へやるのはとても辛いわ! 絶対生きて帰ってくるのよっ」
港に残ったGonとNonがHachiに手を振った。Gonはお買い物に送りだすような気軽さで。反対にNonはハンケチを噛み締めながら瞳に涙を溜めている。
「ごんさん、のんさん待っててね!」
Hachiは眼鏡がずれ落ちるほどの勢いで両手を振り返す。
漁船・壱にはクリスティンと春日啓一。漁船・弐にはHachi、nil、ステラが乗り込んでいた。
各船が巨体オヒョウ一尾に対応。Hachiによって漁船・壱の獲物は『ごはん1』。漁船・弐が狙うのは『ごはん2』と名付けられる。
漁場巡りを始めて二時間後。春日啓一が海面に薄らと浮かんだ影に気がつく。
「いたぞ!! 随分でけえ魚もいたもんだ!」
彼の大声は漁船・弐まで届いた。
すでに春日啓一とクリスティンは長いロープの両端に身体を結びつけて繋がっている。
クリスティンが甲板に置かれていた桶の蓋を外すと強烈な臭いが漂う。中身は鶏の血と臓物。昨晩食べた鶏の丸焼きのいらない部位をまとめたものだ。
「さて、これだけ準備をしたのだ。本能に負け、私と愉しく殺しあってくれるといいが、な」
桶の中身を頭から被ったクリスティンは斬魔刀を担いだまま海中へと飛び込んだ。
ゆっくりと沈みながらクリスティンが覚醒。漁船・壱を目指していた『ごはん1』が彼女に気づく。
『ごはん1』が動くのに合わせて周囲の海水が乱れる。想定外の不安定さだが、向かってきてくれる分にはやりようがあった。
赤く染まる視界の向こう側を見据えて斬魔刀を構える。接触の直前、それまで柔らかくそえていた柄を強く握りしめて一太刀。
しかし浅く斬りつけただけ。一度海面に出て呼吸をするクリスティン。その瞬間を『ごはん1』が狙ってきた。
春日啓一がロープを手繰り寄せて漂うクリスティンを引き寄せる。『ごはん1』の噛みつきは不発に終わった。
クリスティンは機会を見逃さず『チャージング』。『ごはん1』の背の上を駆けて『渾身撃』を頭部へと叩き込んだ。
暴れた『ごはん1』の鰭でロープが切断されてしまう。春日啓一は海中に放りだされたクリスティンを気にしながらも水中銃を撃って『ごはん1』の気を引く。
すぐに『ごはん1』は静かになる。暴れた時点ですでに断末魔だったようだ。
春日啓一は浮かんできたクリスティン目がけて切れたロープの端を投げ入れる。
「お疲れさん、だいたい洗われちまって水も滴る良い女のご帰還だな……風邪ひくなよ」
「そうだな……啓一が温めてくれ」
春日啓一は毛布をかけてあげたクリスティンの背中を抱いてやさしく包み込む。
『ごはん1』の引き揚げは漁師達に任す。いつの間にか漁船・弐とは離れてしまっていたが、仲間を信じることにする。春日啓一とクリスティンはしばし休憩をとるのだった。
●
「優しき流れに蕩う水よ……水渡る加護を!」
覚醒したステラは自らと望んだ仲間にウォーターウォークをかけていく。
「これで転落しても安全だよ♪」
そして船縁から海面を見つめる。
『ごはん2』は一度だけ海面に浮上してすぐに沈んでしまう。しかしそれは時間差の罠。漁船・弐を中心とした海面が急激に色濃くなってきた。
「船長さん、右舷から来るよ!」
「あいよっ!」
ステラに呼応した船長が舵を切る。海面から飛びだしてきた鋭利な鰭を漁船・弐は見事に躱す。
「……海の上に居る……不思議な、感じ……」
nilは海に落ちないよう身体をロープでマストに縛りつけていた。浮上してきた『ごはん2』を『コンポジットボウ』で狙い射つ。
巨大さ故に当てるのは簡単なのだが、肝心なのは急所を貫けるかどうかだ。オヒョウの弱点部分は港の漁師達から教えてもらっている。『シャープシューティング』でオヒョウの心臓部分を射つ機会を待つ。
Hachiも使っていたのは弓。遠射で射撃精度を整えつつ『シーマンズボウ』で狙い射った。
「よしっ、『ごはん2』。こっちおいで!」
『ごはん2』は漁船・弐を追いかけてくる。Hachiは『強弾』でマテリアルを込めた矢を叩き込んだ。
じりじりと互いの距離が縮まる。
ステラは『霊槍「グングニル」』を両手で握りしめ、周囲の風と水のマテリアルを掴めるよう『集中』をかけていた。
ここぞという瞬間、nilの矢が『ごはん2』の心臓を射貫く。
「……うん、掴んだ!」
動きが止まった『ごはん2』にステラが放ったのは『ウィンドスラッシュ』。『ごはん2』の胴体に深い裂け目が刻まれる。
そしてnilとHachiの矢攻撃によって止めが刺された。
漁師達による引き揚げが始まった頃、漁船・壱がやってくる。どちらの漁船も巨大オヒョウを仕留めたのだった。
●
想定していたよりも早い退治に漁村は沸いた。
巨大オヒョウ二尾はいくつかに切られて甲板に載せられていた。そのままだと甲板をはみ出してしまうので苦肉の策である。
「活け締めしておいたからな」
「助かったぜ。これは想像以上の大きさだな」
甲板に乗ったレイオスが船長と話す。
「Hachi殿、お疲れ様じゃん。料理は任せるじゃーん!」
「ありがとう。のんさんの料理楽しみ……あれ? ごんさんも料理できたっけ?」
ここに至ってHachiは思いだす。Nonはよく料理をしているが、Gonがそうしている姿は見たことがなかったと。
「自分は聞いたじゃん……。リアルブルーには、SUKIYAKIっていう、好きな物を鍋で焼き食う料理があるっていうじゃん……。折角だから、この鍋で作るじゃん!」
「あらやだ、たしか一族の長だけが作るのを許される伝説の鍋! あたし楽しみだわぁ!」
Hachiに聞かせるためにGonとNonは阿吽の呼吸で寸劇を演じる。想像通り、Hachiはすき焼きに興味を持つ。
「ど、どんな料理かな?」
GonとNonがすき焼きについて説明する。SHOGUNやらの言葉が三人の間で飛び交う。
村人達によって巨大オヒョウ二尾は調理小屋に運ばれる。
村人達はフィッシュ&チップスにするようだ。食べきれない分は天日干しにされる。
ハンター三名による調理が始まった。
「自分がそんな刃物なんて、怖くて使えるわけないじゃん!」
「やっだGonちゃん包丁持てないのぉかわいぃい!」
NonはGonの分まてオヒョウの身を捌く。
「流石にここまでデカイ魚を捌くのは初めてだな」
レイオスは初めてのマグロ包丁に戸惑いながら骨と身の間に刃を通していった。
「醤油、忘れていたよっ♪」
Hachiが醤油瓶を届けてくれる。Nonが試しに作った刺身を醤油で味見。美味くもなければまずくもない。とても水っぽかった。
このままではダメだと塩を塗して二時間ほど放置。水分が抜けて身は三分の二にまで縮む。もう一度刺身で味見をしてみると美味かった。
これならばと本格的な調理に取りかかる。
「念のためだ」
レイオスは身の外側を削いでから使う。
パルムのソルトとシュガーがムニエルとフライ作りを手伝う。卵につけたり小麦粉やパン粉に塗したりなど。それらをレイオスは油で揚げていった。
タルタルソースとホワイトソースはすでに完成している。
次はカルパッチョだ。薄切りにした白身を大皿に並べてソースをかける。ソースはオリーブオイルを基本にしたもので、刻んだトマトや玉葱、胡瓜が混ぜられていた。
「ムニエルにはタルタルソースとホワイトソースで、フライはそのままでもいけるしタルタルソースも旨いぜ」
レイオスはソルト、シュガーと一緒につまみ食い。その度に笑顔を浮かべる。完成したところで野外の卓へと運んでいく。
Gonが作っていたのは当然すき焼きだ。
「じゃーんじゃんじゃじゃじゃーん♪」
うろ覚えの調理方法を必死に思いだしながら手を動かす。とりあえず熱した鍋で身を焼いてみる。
「Non殿、その酒もちょっと寄越すじゃん!」
「あっ、やだGonちゃん。お酒とっちゃだm……」
GonがNonの酒を鍋に入れた刹那、天井まで火柱が上がる。本人意図せずのフランベ状態。その代償として前髪の先が炭と化した。
(やだ、すっごく料理人の顔してる……!)
そんな様子なのだがNonの瞳に映るGonの姿はとても格好が良かった。乙女心はとても複雑。酒が少々?入っていたせいかも知れない。
Gonは食材すべてを投入して暫し待つ。
「完成じゃん!」
煮立ったところで蓋を開けてみる。
「……これがSUKIYAKI、じゃん!?」
どうも違うような気がしたが、それはそれ。食べればうまいかもしれないと鍋を野外の卓へと運び込む。
NonはGonの調理を手伝いながら煮付け、天ぷら、刺身を完成させた。
ちなみに料理が完成する頃にはお酒でかなりの状態。卓に料理を運んだのはHachiだった。
●
夕暮れ時、オヒョウ料理を囲んでの食事が始まる。
「……魚を食べるのも、初めて……」
nilが最初に口にしたのはタルタルソースがけのフライだ。
「……美味しい……のね……」
次は目を引いたカルパッチョを頂く。同じ食材が元なのに全然違う味がする。
「これもどう?」
ステラはnilにえんがわの刺身を勧めながら醤油と山葵をつけてパクリ。ステラを見てnilも真似て頂いた。
「……とても不思議な味……」
表現しにくい味であったが後を引く。
「ワインビネガーが合うよね♪」
村人が用意したフィッシュ&チップスも卓に置かれていた。
「これだけあれば腹一杯食えるな」
席に着いたレイオスがnilとステラに声をかける。
「身を塩で締めたんだって? すごく美味しいよ」
「……フライ……カルパッチョ……違うけど海の味……」
料理をネタに会話が弾む。
「酒あるか? ある? よし、飲むぜ!」
レイオスが白葡萄酒をあけてカップに注いだ。乾杯の後、ぐいっと飲み干す。
「ソルトとシュガーもどうだ?」
レイオスのカップからパルム達も白葡萄酒を飲んだ。
「魚ってのはでかいと不味いって聞いたが、中々どうして」
「刺身とやらがうまいな。啓一も好きなのか?」
春日啓一は刺身についてクリスティンに教える。次にすき焼きを食した。
「いけるな。これもリアルブルーの味なのだな」
「……まあ、鍋としてはありだ」
何か言いたげな春日啓一だったが、クリスティンが喜んで食べているので特に触れないでおく。
その会話はGonの耳にも届いていた。
(うまいのなら問題ないじゃん!!)
Gonは小鉢に盛ったすき焼きを食べようとする。直後、Hachiが「あっつーい!」と叫んで、揚げたてチップスが彼のおでこに張りついた。
「敵襲!? やめるじゃん! 自分は焼いても美味しくないじゃん!?」
「まったくもー、はっちゃんったらドジっ子なんだからぁ!」
NonがGonのおでこのチップスを剥がす。そのまま酒の摘まみとして胃袋に納める。
落ち着いたところでNonもHachiと一緒にすき焼きを頂いた。
「ちゃんとうまいじゃん!」
「さすがGonちゃん!」
白身が美味しい変わり種すき焼きはよいお味である。
「まま、いっぱいどうぞ」
「フライやムニエルも……ヒック」
HachiはビールをNonのカップに注ぐ。ぷはっとNonに飲んでもらえてHachiは嬉しかった。
「NITSUKE、TENPURA、SASHIMI、美味しー♪」
HachiはNonが作った料理を中心に頂く。
日が暮れてきたのでランタンを灯す。退治の余韻として食事とお喋りで楽しい時間を過ごしたハンター一行であった。
宵の口、漁村に到着したハンター一行は依頼主に案内された家屋で一晩を過ごす。
到着二日目は準備に費やされる。
春日 啓一(ka1621)とクリスティン・ガフ(ka1090)は漁船の船長と面会し、長いロープの準備を頼んだ。更にある理由から今晩の御飯は鶏肉料理がよいと望む。
「話しを聞く限り普通に食えそうだな。歪虚じゃ笑えねえが」
「獰猛な肉食であってくれれば命の取り合いがより愉しくなるが」
その後、二人は海辺を散歩した。
巨大オヒョウはまず間違いなく幻獣の類いである。襲撃事件当初は恐れられていた巨大オヒョウだが、いつの間にか村人の興味は美味しいのか、それとも不味いのかというものに変化していた。
木陰で休んでいたHachi=Bee(ka2450)とNon=Bee(ka1604)も巨大オヒョウを話題にする。
「森育ちだからあまりお魚食べたことないや。オヒョウって美味しい?」
「ヒラメに似た白身魚ならヘルシーだし美容にもいいわぁ! でも大きいしどうかしらね」
到着三日目となる明日、Nonは調理の準備で漁村に残る予定だ。Hachiは漁船に乗ってオヒョウ退治へ。他のハンターも二手に分かれる。Gon=Bee(ka1587)とレイオス・アクアウォーカー(ka1990)は調理担当。クリスティン、春日啓一、nil(ka2654)は退治に向かう。
ステラ・ブルマーレ(ka3014)は明日乗り込む漁船を見学していた。
「オヒョウは見たことあるけど、この漁船がひっくり返るぐらいのサイズなんて……」
漁船の甲板からぐるりと全景を眺めていると、nilの姿が目に飛び込んでくる。下船したステラは砂浜のnilに駆け寄った。
「海、珍しいの?」
「……青い、海……。……何度見ても、やっぱり不思議で……綺麗……。船に乗るの、初めて」
二人は流木の上に座る。ステラが訊ねるとnilは海に惹かれているという。
「……どんな感じなんだろう……。……何時も海を見ている、海に出ている漁師達は、何を思って海を見るの……? 海は、海が、好き……なのか、な……。 それとも、ただ、仕事だから……?」
「せっかくだから直接聞いてみようか? 漁師さんたちに」
ステラがnilの手を引いて連れて行く。港では漁師達が集まって魚介鍋を作っていた。
「海はな。そりゃ毎日の糧だがよ。なんていうか……、そう生き様だな、生き様」
一人の漁師が仲間に酔っ払っていると茶化されながらも話してくれる。
「よーし! 明日はやるぞー!」
ステラに続いてその場の全員がかけ声をあげた。
レイオスとGonは料理小屋を訪ねる。こちらには大宴会用の調理道具が一通り揃っていた。
「羊肉は飽きたじゃん! 時代は魚じゃん!」
Gonは背中に担いでいた鍋を釜戸に載せて惚れ惚れと眺める。どうやらBee一族にとって大切な鍋のようだ。暇があれば磨いていた。
「これがあるとは思わなかったな」
レイオスは壁に掛けられていたマグロ解体用の長包丁を手にとった。巨大オヒョウを捌くのにちょうどよさそうである。
まもなくNonもやって来て、どのような料理を作るのか三人で擦り合わせを行うのだった。
●
そして三日目早朝、大きく帆を張った漁船二隻が沖へと出港する。
「大物獲ってくるじゃーん? 期待してるじゃーん?」
「はっちゃんを戦地へやるのはとても辛いわ! 絶対生きて帰ってくるのよっ」
港に残ったGonとNonがHachiに手を振った。Gonはお買い物に送りだすような気軽さで。反対にNonはハンケチを噛み締めながら瞳に涙を溜めている。
「ごんさん、のんさん待っててね!」
Hachiは眼鏡がずれ落ちるほどの勢いで両手を振り返す。
漁船・壱にはクリスティンと春日啓一。漁船・弐にはHachi、nil、ステラが乗り込んでいた。
各船が巨体オヒョウ一尾に対応。Hachiによって漁船・壱の獲物は『ごはん1』。漁船・弐が狙うのは『ごはん2』と名付けられる。
漁場巡りを始めて二時間後。春日啓一が海面に薄らと浮かんだ影に気がつく。
「いたぞ!! 随分でけえ魚もいたもんだ!」
彼の大声は漁船・弐まで届いた。
すでに春日啓一とクリスティンは長いロープの両端に身体を結びつけて繋がっている。
クリスティンが甲板に置かれていた桶の蓋を外すと強烈な臭いが漂う。中身は鶏の血と臓物。昨晩食べた鶏の丸焼きのいらない部位をまとめたものだ。
「さて、これだけ準備をしたのだ。本能に負け、私と愉しく殺しあってくれるといいが、な」
桶の中身を頭から被ったクリスティンは斬魔刀を担いだまま海中へと飛び込んだ。
ゆっくりと沈みながらクリスティンが覚醒。漁船・壱を目指していた『ごはん1』が彼女に気づく。
『ごはん1』が動くのに合わせて周囲の海水が乱れる。想定外の不安定さだが、向かってきてくれる分にはやりようがあった。
赤く染まる視界の向こう側を見据えて斬魔刀を構える。接触の直前、それまで柔らかくそえていた柄を強く握りしめて一太刀。
しかし浅く斬りつけただけ。一度海面に出て呼吸をするクリスティン。その瞬間を『ごはん1』が狙ってきた。
春日啓一がロープを手繰り寄せて漂うクリスティンを引き寄せる。『ごはん1』の噛みつきは不発に終わった。
クリスティンは機会を見逃さず『チャージング』。『ごはん1』の背の上を駆けて『渾身撃』を頭部へと叩き込んだ。
暴れた『ごはん1』の鰭でロープが切断されてしまう。春日啓一は海中に放りだされたクリスティンを気にしながらも水中銃を撃って『ごはん1』の気を引く。
すぐに『ごはん1』は静かになる。暴れた時点ですでに断末魔だったようだ。
春日啓一は浮かんできたクリスティン目がけて切れたロープの端を投げ入れる。
「お疲れさん、だいたい洗われちまって水も滴る良い女のご帰還だな……風邪ひくなよ」
「そうだな……啓一が温めてくれ」
春日啓一は毛布をかけてあげたクリスティンの背中を抱いてやさしく包み込む。
『ごはん1』の引き揚げは漁師達に任す。いつの間にか漁船・弐とは離れてしまっていたが、仲間を信じることにする。春日啓一とクリスティンはしばし休憩をとるのだった。
●
「優しき流れに蕩う水よ……水渡る加護を!」
覚醒したステラは自らと望んだ仲間にウォーターウォークをかけていく。
「これで転落しても安全だよ♪」
そして船縁から海面を見つめる。
『ごはん2』は一度だけ海面に浮上してすぐに沈んでしまう。しかしそれは時間差の罠。漁船・弐を中心とした海面が急激に色濃くなってきた。
「船長さん、右舷から来るよ!」
「あいよっ!」
ステラに呼応した船長が舵を切る。海面から飛びだしてきた鋭利な鰭を漁船・弐は見事に躱す。
「……海の上に居る……不思議な、感じ……」
nilは海に落ちないよう身体をロープでマストに縛りつけていた。浮上してきた『ごはん2』を『コンポジットボウ』で狙い射つ。
巨大さ故に当てるのは簡単なのだが、肝心なのは急所を貫けるかどうかだ。オヒョウの弱点部分は港の漁師達から教えてもらっている。『シャープシューティング』でオヒョウの心臓部分を射つ機会を待つ。
Hachiも使っていたのは弓。遠射で射撃精度を整えつつ『シーマンズボウ』で狙い射った。
「よしっ、『ごはん2』。こっちおいで!」
『ごはん2』は漁船・弐を追いかけてくる。Hachiは『強弾』でマテリアルを込めた矢を叩き込んだ。
じりじりと互いの距離が縮まる。
ステラは『霊槍「グングニル」』を両手で握りしめ、周囲の風と水のマテリアルを掴めるよう『集中』をかけていた。
ここぞという瞬間、nilの矢が『ごはん2』の心臓を射貫く。
「……うん、掴んだ!」
動きが止まった『ごはん2』にステラが放ったのは『ウィンドスラッシュ』。『ごはん2』の胴体に深い裂け目が刻まれる。
そしてnilとHachiの矢攻撃によって止めが刺された。
漁師達による引き揚げが始まった頃、漁船・壱がやってくる。どちらの漁船も巨大オヒョウを仕留めたのだった。
●
想定していたよりも早い退治に漁村は沸いた。
巨大オヒョウ二尾はいくつかに切られて甲板に載せられていた。そのままだと甲板をはみ出してしまうので苦肉の策である。
「活け締めしておいたからな」
「助かったぜ。これは想像以上の大きさだな」
甲板に乗ったレイオスが船長と話す。
「Hachi殿、お疲れ様じゃん。料理は任せるじゃーん!」
「ありがとう。のんさんの料理楽しみ……あれ? ごんさんも料理できたっけ?」
ここに至ってHachiは思いだす。Nonはよく料理をしているが、Gonがそうしている姿は見たことがなかったと。
「自分は聞いたじゃん……。リアルブルーには、SUKIYAKIっていう、好きな物を鍋で焼き食う料理があるっていうじゃん……。折角だから、この鍋で作るじゃん!」
「あらやだ、たしか一族の長だけが作るのを許される伝説の鍋! あたし楽しみだわぁ!」
Hachiに聞かせるためにGonとNonは阿吽の呼吸で寸劇を演じる。想像通り、Hachiはすき焼きに興味を持つ。
「ど、どんな料理かな?」
GonとNonがすき焼きについて説明する。SHOGUNやらの言葉が三人の間で飛び交う。
村人達によって巨大オヒョウ二尾は調理小屋に運ばれる。
村人達はフィッシュ&チップスにするようだ。食べきれない分は天日干しにされる。
ハンター三名による調理が始まった。
「自分がそんな刃物なんて、怖くて使えるわけないじゃん!」
「やっだGonちゃん包丁持てないのぉかわいぃい!」
NonはGonの分まてオヒョウの身を捌く。
「流石にここまでデカイ魚を捌くのは初めてだな」
レイオスは初めてのマグロ包丁に戸惑いながら骨と身の間に刃を通していった。
「醤油、忘れていたよっ♪」
Hachiが醤油瓶を届けてくれる。Nonが試しに作った刺身を醤油で味見。美味くもなければまずくもない。とても水っぽかった。
このままではダメだと塩を塗して二時間ほど放置。水分が抜けて身は三分の二にまで縮む。もう一度刺身で味見をしてみると美味かった。
これならばと本格的な調理に取りかかる。
「念のためだ」
レイオスは身の外側を削いでから使う。
パルムのソルトとシュガーがムニエルとフライ作りを手伝う。卵につけたり小麦粉やパン粉に塗したりなど。それらをレイオスは油で揚げていった。
タルタルソースとホワイトソースはすでに完成している。
次はカルパッチョだ。薄切りにした白身を大皿に並べてソースをかける。ソースはオリーブオイルを基本にしたもので、刻んだトマトや玉葱、胡瓜が混ぜられていた。
「ムニエルにはタルタルソースとホワイトソースで、フライはそのままでもいけるしタルタルソースも旨いぜ」
レイオスはソルト、シュガーと一緒につまみ食い。その度に笑顔を浮かべる。完成したところで野外の卓へと運んでいく。
Gonが作っていたのは当然すき焼きだ。
「じゃーんじゃんじゃじゃじゃーん♪」
うろ覚えの調理方法を必死に思いだしながら手を動かす。とりあえず熱した鍋で身を焼いてみる。
「Non殿、その酒もちょっと寄越すじゃん!」
「あっ、やだGonちゃん。お酒とっちゃだm……」
GonがNonの酒を鍋に入れた刹那、天井まで火柱が上がる。本人意図せずのフランベ状態。その代償として前髪の先が炭と化した。
(やだ、すっごく料理人の顔してる……!)
そんな様子なのだがNonの瞳に映るGonの姿はとても格好が良かった。乙女心はとても複雑。酒が少々?入っていたせいかも知れない。
Gonは食材すべてを投入して暫し待つ。
「完成じゃん!」
煮立ったところで蓋を開けてみる。
「……これがSUKIYAKI、じゃん!?」
どうも違うような気がしたが、それはそれ。食べればうまいかもしれないと鍋を野外の卓へと運び込む。
NonはGonの調理を手伝いながら煮付け、天ぷら、刺身を完成させた。
ちなみに料理が完成する頃にはお酒でかなりの状態。卓に料理を運んだのはHachiだった。
●
夕暮れ時、オヒョウ料理を囲んでの食事が始まる。
「……魚を食べるのも、初めて……」
nilが最初に口にしたのはタルタルソースがけのフライだ。
「……美味しい……のね……」
次は目を引いたカルパッチョを頂く。同じ食材が元なのに全然違う味がする。
「これもどう?」
ステラはnilにえんがわの刺身を勧めながら醤油と山葵をつけてパクリ。ステラを見てnilも真似て頂いた。
「……とても不思議な味……」
表現しにくい味であったが後を引く。
「ワインビネガーが合うよね♪」
村人が用意したフィッシュ&チップスも卓に置かれていた。
「これだけあれば腹一杯食えるな」
席に着いたレイオスがnilとステラに声をかける。
「身を塩で締めたんだって? すごく美味しいよ」
「……フライ……カルパッチョ……違うけど海の味……」
料理をネタに会話が弾む。
「酒あるか? ある? よし、飲むぜ!」
レイオスが白葡萄酒をあけてカップに注いだ。乾杯の後、ぐいっと飲み干す。
「ソルトとシュガーもどうだ?」
レイオスのカップからパルム達も白葡萄酒を飲んだ。
「魚ってのはでかいと不味いって聞いたが、中々どうして」
「刺身とやらがうまいな。啓一も好きなのか?」
春日啓一は刺身についてクリスティンに教える。次にすき焼きを食した。
「いけるな。これもリアルブルーの味なのだな」
「……まあ、鍋としてはありだ」
何か言いたげな春日啓一だったが、クリスティンが喜んで食べているので特に触れないでおく。
その会話はGonの耳にも届いていた。
(うまいのなら問題ないじゃん!!)
Gonは小鉢に盛ったすき焼きを食べようとする。直後、Hachiが「あっつーい!」と叫んで、揚げたてチップスが彼のおでこに張りついた。
「敵襲!? やめるじゃん! 自分は焼いても美味しくないじゃん!?」
「まったくもー、はっちゃんったらドジっ子なんだからぁ!」
NonがGonのおでこのチップスを剥がす。そのまま酒の摘まみとして胃袋に納める。
落ち着いたところでNonもHachiと一緒にすき焼きを頂いた。
「ちゃんとうまいじゃん!」
「さすがGonちゃん!」
白身が美味しい変わり種すき焼きはよいお味である。
「まま、いっぱいどうぞ」
「フライやムニエルも……ヒック」
HachiはビールをNonのカップに注ぐ。ぷはっとNonに飲んでもらえてHachiは嬉しかった。
「NITSUKE、TENPURA、SASHIMI、美味しー♪」
HachiはNonが作った料理を中心に頂く。
日が暮れてきたのでランタンを灯す。退治の余韻として食事とお喋りで楽しい時間を過ごしたハンター一行であった。
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【相談卓】 Non=Bee(ka1604) ドワーフ|25才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/05/16 06:31:08 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/13 22:03:49 |