究極の女子会☆

マスター:朝臣あむ

シナリオ形態
ショート
難易度
易しい
オプション
  • relation
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/05/20 12:00
完成日
2015/05/28 01:01

みんなの思い出

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オープニング

●アネリブーベ
 第十師団の本拠地であるアネリの塔の北側に位置する囚人街に、師団長のゼナイド(kz0052)が所有する屋敷がある。
「相変わらず趣味が悪ぃですねぇ」
 そう言葉を零したタングラム(kz0016)は大き過ぎる屋敷と、置かれる豪華な調度品の数々に目を向けた。その傍らにはヴィルヘルミナ・ウランゲル(kz0021)の姿もある。
「ルミナちゃんは大丈夫だったですか? どうせゼナイドの気紛れお茶会なんだし無視してもバチは当らねぇですよ」
 言ってソファに腰を下ろす陛下を見る。
 何処で負傷したのかわからない傷は未だ癒えていない。お世辞にも大丈夫とは言えない姿に眉を寄せるも一瞬、聞こえて来た声に彼女の眉が上がった。
「私は問題ない。それに最上級の芋料理を振舞ってくれると言うしな。食べねばそれこそバチが当たると言う物だろう。しかし、タングラムは何故その様な格好をしているのだ?」
 ここまで完全スルーだったので忘れていたが、タングラムはメイド服を着ている。その理由と言うのが――
「おほほほほ、良くお似合いですわよ!」
「あれの所為ですよ……」
 高笑いと共に現れたゼナイドのなんと嬉しそうなことか。彼女はタングラムのメイド服姿を鼻で笑うと、陛下の前で跪いた。
「本日はわたくしの招待に応じて頂き有難う御座います。お体の方は如何ですか?」
「もう問題ない。こうして遠出も出来るくらいにはなったしな」
 そうだろう? とタングラムを振り返る。
 その姿にゼナイドの米神は揺れたが、次の言葉で彼女の表情は変わった。
「それで。招待状にあった芋料理はどこだ?」
「そうでしたわ。今日は陛下にとっておきの芋料理をご用意しておりますの。そこのメイド、今直ぐお料理をお持ちしなさい!」
「はあ!? 何で私が……って、何だお前ら! 放せ、は・な・せぇぇぇええ!」
 容赦なく兵士に連れられ出て行くタングラムを見送り、ゼナイドは着いていた膝を上げて息を吐いた。
「陛下、本当にお体は大丈夫ですの?」
「ああ、問題ない。それよりもタングラムを同行させたのは私だ。アレも思う所があったらしく素直について来たが、すまなかったな」
「構いませんわ。たぶん、タングラムが気にしているのは彼女の同胞の事でしょうし、今日は特別にわたくしの屋敷で給仕をさせてますから会えるはずですわ」
 そう笑ってゼナイドもソファに腰を下ろす。そうして指を鳴らすと別のメイドにお茶の準備をさせて呟く。
「時に陛下、何かわたくしたちに隠してらっしゃることはありませんこと? 今回の怪我もそうですけど、最近の陛下は単に好き勝手に動いているだけとは思えませんの」
「買い被りすぎだ。私は今も昔も何も変わっておらんよ。それよりもお前とタングラムに話しておきたい事があってな」
「……わかりましたわ。タングラムが戻り次第お話を伺います」
 ゼナイドはそう言うと、用意させた紅茶のカップを口に運んだ。


 テーブルの上に並べられた芋料理の数々。その中には芋の串焼きにチーズを乗せたものや、大学芋、芋のパイなども含まれている。
「さあ、召し上がってくださいな♪」
 うふっ、と上機嫌に笑うゼナイドと、胡散臭そうにゼナイドを見るメイドタングラム。その2人に挟まれる形で芋料理を堪能する陛下。
 この3人の様子を部屋の外で見ていたジュリは、久しく言葉を交わした姐御ことタングラムの姿に目を輝かせていた。
「姐御はどんな格好でもかっこいいッス!!」
 どうやら師団長不在時にハンターと行った歪虚退治のご褒美としてゼナイドが特別に用意してくれた機会だったらしい。久しく言葉を交わしたタングラムは、ジュリの無事な姿と待遇を見て少し安心したらしかった。
「それにしても何の話なんッスかね……」
「おい、ジュリ! 次の料理の準備を手伝ってくれ!」
「あ、はーい!」
 元気に部屋の前から消えるジュリの気配を察し、ゼナイドが首を傾げる。
「それで陛下、お話とは何ですの?」
「ん、わはっは。ふほしまへ」
 もぐもぐと口を動かして呑み込む。そうして口を開くと、陛下は声を潜めるようにして口角を上げた。
「実はな。お前らに因縁深い相手が姿を見せたようだぞ」
 誰。そう問う前に陛下は言う。
「情報元は錬魔院の魔導アーマー研究者だ。辺境に物資を運ぶ途中、魔導アーマーが襲撃された話はお前たちも聞いているだろう?」
「魔導アーマーが奪われたほかに、破壊された物もあったと聞いてるですよ」
「ああ。その修理を請け負っていたブリジッタと言う研究者だが、彼女が会ったそうだ――紫電の刀鬼、にな」
 この名を口にした瞬間、タングラムとゼナイドの唇が引き結ばれた。その反応を見た後、陛下は続ける。
「フルヘルメットで雷撃を扱う歪虚は奴くらいだろう。奴は亡霊型の歪虚を率いていたらしい」
「紫電の刀鬼。先代皇帝の失踪時にいたとされる歪虚……その研究者、良く無事でしたわね」
「奴に関しては昔から動向不明な点が多いからな。今回も何かしらの気紛れで現れた可能性も高い。まあ、それだけだ」
 言い終えて次の芋に手を伸ばす陛下にゼナイドが新たな芋を差出す。
「調査はよろしいのかしら?」
「今は良い。それ以上に面倒なのがいるからな。それよりもゼナイド。この芋だが追加はあるか?」
「ええ、勿論ですわ♪」
 ゼナイドはそう言うと笑顔で両の手を叩いた。

●究極の女子会
「――で、あの会話の流れで何でこんなことになってるですかね?」
 意味が分からない。そう言いたげに花畑を模した寝室のベッドで座り込むタングラム。その傍らには悠然と寝ころぶ陛下の姿もある。
「日頃の疲れを癒して欲しいと願うゼナイドの粋な計らいだ。今日はこのまま食べて食べて食べまくるぞ!」
「ルミナちゃんは堂々と仕事がサボれるから乗り気ですけど、私はまだ仕事が――」
「構いませんわよ。貴女は必要ありませんもの。わたくしには陛下さえいれば! 陛下が添い寝をして下さればそれだけでっ!!」
「やっぱり残るですよ……」
 目を輝かせて熱弁するゼナイドと陛下を2人きりにする訳にはいかない。
 そもそも彼女たちが何をしているのかと言うと、リアルブルーで流行っていると言う「女子会」だったりする。
「それで、あとは誰がくるですか?」
「陛下のご意向でハンターが参りますわ。お菓子も持参させてますから、楽しみにしておくと良いですわ♪」
 ゼナイドはそう言うと、タングラムと陛下の双方にパジャマらしき装いを差出した。

リプレイ本文

「女の人はここで着替えるッス。で、男の人はあっしと別室で着替えるッスよ」
 そう言ってゼナイド邸の部屋へ案内した給仕は、部屋へ入る女性陣を見送って辺りを見回した。
 確か参加者の中に2名ほど男性が居た筈だが。そう首を傾げた時だ。
「僕どうせなら羊の執事さんが良いなぁ★」
 声に目を向けると、両手に花を抱えたエルフの少年が1人と綺麗な見た目の女の人が――
「見た目が女子でも生物学上は男なので……私はお給仕側で参加させてもらいますネ」
 にっこり微笑む彼女――じゃなくて、生物学上の彼が給仕の1人。つまり今回の男性給仕は、ユノ(ka0806)とノイシュ・シャノーディン(ka4419)だ。
 思わず目を逸らした給仕にノイシュは言う。
「とりあえず着るのはメイド服希望だけれど! ダメかしら?」
「全然問題ないッス。OKッス。むしろ違和感ないッス!」
「よかったわ♪」
 ノイシュはそう言うと、女子部屋の扉を閉めて着替えへと旅立った。
 そして扉の閉まった女子部屋では着替えが始まったのだが……。
「ゼナお姉さまのお屋敷、素敵ですの♪」
 見上げた先にあるシャンデリアに瞳を輝かせたチョココ(ka2449)の声に、男性用甚平に着替えていた青山 りりか(ka4415)の目が辺りへ向かう。そして部屋に置かれた壺に目を留めると、ハッと声を上げた。
「これ。かなりな年代ものですよ!」
 そう鑑定士張りの判断をする彼女は、リアルブルーのお嬢様だ。
「憧れの女子会がこんな豪華な場所で……帝国の偉い方がいっぱい、らしい……ですし?」
 リアルブルーで憧れていた物がこちらの世界で実現できる。それだけでも期待に胸膨らむと言うのに、招待者と待ち受ける人たちを想像すると凄すぎて実感がわかない。
 思わず首を傾げた彼女に、ジークリンデ(ka4778)がクスリと笑う。
「確かに実感がわきませんわね。ですがヴィルヘルミナ様をはじめとして興味深い方たちとお話できる良い機会ですし、楽しまないと損ですわよ」
 それにしても。と、今度はジークリンデの首が傾げられる。
「パジャマパーティー……帝国には不思議な習慣があるのですね」
「不思議だけど、女子だけのパジャマパーチーなんて素敵じゃないの。要はパジャマを着て騒げばいいって会でしょ?」
 だよね? と笑うケイ(ka4032)も実のところ、女子会の意味が良くわかっていない。そして着替えを終えたチョココもまた、女子会が良くわかっていない者の1人だ。
「ねぇパルパル? 女子会があるならばその逆……男子会もあるのかしら?」
「男子会かぁ。あるかも知れないけど、ちょっとむさ苦しそうだね」
 そう言って、ケイはシマシマパジャマとお揃いのナイトキャップを被る。そうして髪を下ろした所で「きゃあ!」と言う歓声が上がった。
「凄いです! これ、どんな素材でできているんですか? やわらかぁい♪」
「パルムの特徴のもこっとした胴部分と、にょきっと出た手足が良い味を醸し出してますわね」
 チョココの纏うパルム型の着ぐるみに集まる女子。ちなみに彼女の同行者であるパルムのパルパルもまっぱではなく、水玉模様の帽子とパジャマを着用済みだ。
「特注品ですの♪」
 そうチョココが答えた時だ。
 コンコンッとノックが響き、扉が開かれた。
「わぁ! お姉さんたち綺麗だね!」
「あら本当ね。素敵だわ♪」
 無邪気に顔を覗かせたユノとノイシュ。それぞれ希望に合った装いをしているのだが、ジークリンデがある事に気付いた。
「動き辛そうですね。手を出して下さい」
 彼女はノイの袖を捲ってあげると、頭に乗せられた羊の角をイメージしたカチューシャの位置を整えてあげた。
「ありがと~」
「どういたしまして」
「それではお嬢様方。お部屋へご案内しますね♪」
 ノイシュはメイド服の裾を反し、丁寧な仕草で外へ招くようお辞儀をした。


「ここが会場ッス。あとはユノさんとノイシュさんに頼んであっしは寝るッスよ!」
 そう言って去って行く給仕を見送り、ユノがノイシュを見上げる。
「えっと……ノイシュ、お姉、兄……さん???」
 お姉さんと呼ぶべきか、お兄さんと呼ぶべきか。はたまたその両方か。
 いや、そう迷う意味もあったのだろうが、実際には声を掛けるべきか迷っての戸惑い口調だったらしい。
「やんごとなき方々の真夜中の女子会なんて、どんなお話に花咲かせるのかしら♪ コイバナとか秘密のあんなことやこんなことが聞けちゃったり?」
 キャッと頬に手を添えること僅か。目を向けた先でぶつかったユノとの視線に、ハッとなって微笑む。
「大丈夫なのよ、何を聞いてもオフレコ! 他言は致しません! 胸に秘めた秘密って……こう、どきどきソワソワしてたまらなく蠱惑的なのね……」
 はう。と瞳を遠くに飛ばし――って、そうじゃない!
「こほん。お嬢様方、準備はよろしいでしょうか。ゼナイド様、入りますわ」
 ノックをしてから開けた扉。途端に広がる花の香りに女子たちの目が輝く。
 中に目を向けると、ジークリンデが言う所の「帝国三人娘」も思い思いの姿で皆を待っているではないか。
「まずは自己紹介からなのかしら? とりあえず顔だけ知ってる人が複数いるだけだし、お話しするにも名前くらいは知りたいわ」
 ケイはそう言って皆の顔を見回した。
「確かにそうですね。夜を共にする訳ですし、自己紹介は必要かもしれません」
「そうと決まれば私はケイさんよ。こう見えてもエルフさんよ。お仲間がゾロゾロいて恐縮ね? 適当によろしく」
 うふっと微笑んで、自己紹介に了承をくれたりりかにウインク。そしてそれを受けたりりかが今度は自己紹介だ。
「お目にかかれて光栄です。リアルブルーから来ました青山りりかです」
「チョココですわ。ゼナお姉さま、お招きありがとうございますの」
 ちょこんっと頭を下げたチョココと、彼女の頭の上にいるパルム。そして彼女の頭が上がるのを見てジークリンデも優雅に頭を下げる。
「今宵はお招きいただき有難う御座います。ジークリンデと申します」
 お見知り置きを。そう添えるとメイド服のノイシュが流れる動作で皆の前に出た。
「ゼナイド様の、門戸を広く募って下さったお招きに感謝を♪ 私はノイシュ。本日はお嬢様方のお給仕をさせて頂きます。お飲み物は紅茶でよろしいでしょうか?」
 笑んで丁寧な手つきで礼をとる。そして最後にユノが進み出ると、ゼナイドに花を差出した。
「じょしかい有難う~」
 ニパッと笑って差し出す花は、来る途中で摘んだ物だ。
「あら、ありがとうですわ」
 微笑むゼナイドに頷き、ユノはためらいがちに陛下の前へ来ると、上目遣いに彼女を見上げて花を差出した。
「お祈り効かなかったのかなぁ……魔法の言葉と藁人形は効果無い? ……全然大丈夫じゃないよね」
 浴衣を着ててもわかる怪我にしゅんっと項垂れる。だが直ぐに顔を上げると、少しだけ真剣な表情になって言った。
「あのね。必要だからって焦って一人で突っ走らないでね? ミナお姉さんの望む先に、僕も皆も一緒に居たいんだよ」
 どこで何をして来たのか。そう云った重要な事は語られていない。けれど何処かで無茶をして来た事だけはわかる。
「覚えておくとしよう」
 陛下はそう言うと、花を受け取って笑みを浮かべた。その表情にユノも明るくなったのだが、次の瞬間、彼は部屋に転がる羊に気付いた。
「!」
 自分の空になった手と羊を見ること僅か。
「お花足りない……にゅぅ。お祈りこっちも効かなかったのかな……なんまんだぶはダメー?」
「ダメに決まってるですよ!」
 そりゃ死人にするお祈りだ。と突っ込むタングラム。そんなやり取りを見ていたチョココがゼナイドに問う。
「仲良し三人組、ですの……?」
「残念ですがわたくしと陛下の仲は大変よろしいですけど、駄ングラムとの仲は超絶に悪いですわ」
「仲が……それは昔からなのですか? そもそもゼナイド様は帝国へどうやっていらしたのでしょう?」
「それは陛下とわたくしの秘め事。当然ヒミツですわ♪」
 ゼナイドはそう言うと、ネグリジェ風パジャマに似合わない仮面の位置を整えてみせた。
 その上でユノとノイシュを振り返る。
「この場に残る者へお茶とお菓子の用意をお願いしますわ。わたくしは希望者を募って湯浴みに参ります」
 事前に薔薇風呂があると通達していたので希望者もいるだろう。ゼナイドは全体を見回すと、お風呂希望者を募って部屋を出て行った。


「はぁ、気持ち良い~♪」
 ほうっと感嘆の溜息を零したケイは、浴槽に敷き詰められた薔薇の花びらを掬い上げた。
「このお花、本物ですね。ゼナイドさんのお庭で育ててるんですか?」
「いえ、特別に仕入れているのですわ。気に入ったのでしたら帰りに何本か差し上げますわよ」
「本当ですか!?」
 やった! そう声を上げたりりかに微笑むゼナイドを見て、ケイはあることを思い出した。
「ねえ、これって無礼講よね? なんかお偉いさんが参加してるらしいと言うか、お偉いさん主催らしいけど、私一切気にしないわ。でもまあ、無礼講じゃないなら、ですます敬語くらいは使ってあげようじゃない?」
「け、ケイさん!」
 ひぃっと血の気が引いたのはりりかだ。慌ててケイに近付き、ゼナイドが主催者だと耳打ちする。
「知ってるわよ。で、どうなの?」
「別に構いませんわ。師団長たるもの、下々の者には優しさも必要でしょうから」
 ニコッと笑ったゼナイドに、りりかの血の気が更に引いて行く。
「もうダメ……ん? 師団長!?」
「ええ、そうですけど」
 何か? そう首を傾げる姿にりりかの目が輝く。
「きっとすごく、お強いのですね!」
 言って胸元に目が落ちる。
 同性から見ても魅力的な肉体の彼女。正直言えばお胸を触らせて欲しいと思うが、流石に今のやり取りを聞く限り自殺行為だろう。
(せめて、目で堪能しておこう……と言うか、ゼナイドちゃんかわいいぺろぺ――)
 以下自主規制。と言う訳で、薔薇風呂の会はこうして静かに(?)幕を下ろした。


 眠そうに目を擦るユノ。そんな彼が運んで来たのはチョコとケーキだ。ちなみに陛下にはポテチを献上済みだ。
 そして当の本人はと言うと、ポテチを完食してノイシュが用意したスイートポテトを試食中だ。
「ほう、これは美味いな」
「ありがとうございます。ですがこれを加えるともっと美味しくなるんですよ」
 言って添えたのは調理場で作らせて貰ったカスタードと生クリームだ。
「どれ……んまい!」
「陛下、あんまり食べ過ぎると毒――って、それ私の分じゃないですか! 後で食べようと思って取っておいた芋プリン!?」
 ぎゃああああ! と崩れ落ちるタングラムの視線の先に置かれた空き容器。そこに差し出された新たな容器にタングラムの目が上がる。
「絶品濃厚滑らか芋プリン、追加ですわ」
 芋プリンの製作者チョココの慈悲だ。最初の頃と同じようにモンブラン風にトッピングがされ、チョココの名前プレートが乗っている。
「流石にこれは……ってぇ、人の分を取るなですよぉぉぉお!!」
 返そうとした所で奪われ、タングラムの悲痛な叫び声が上がる。当然奪ったのは陛下だ。
「外までうっさいですわよ!」
 部屋に戻って来たゼナイド。その後ろにはりりかとケイの姿もある。
「あ、お菓子でしたら私のもどうぞ」
 部屋に入ると、りりかはリアリブルーのお菓子で、クッキーにバタークリームとドライフルーツを挟んだバタークッキーを差出した。
「どれどれ……あら、このお菓子美味しいわね。どこのお店で買ったの?」
「えっと、不恰好だと思いますが……お口に合えば、と」
 照れ笑いを滲ませながら言われた言葉にケイがハッとする。
「え、手作り? こんなおいしいの作れるなんて素敵だわ。是非コツを教えてほしいわね!」
「コツ、ですか?」
「是非、私も知りたいですわ」
 スッと身を寄せたジークリンデも手作りのお菓子を持参している。彼女が持って来たのは、ナッツを細かく砕いたサブレ生地にしき、その上に生地を流してオーブンで焼いたチーズケーキだ。
「このお菓子も美味しいですの~♪ ゼナお姉さまも一緒に食べるですの♪」
 手招く彼女の隣に腰を下ろし、ゼナイドは扉の傍に立つユノとノイシュを手招いた。
「良い時間ですし、こちらへいらっしゃいな。今回は大目に見て差し上げますわ」
「僕も混ざっても良ーいの?」
「ええ、構いませんわ」
 そうゼナイドが頷くのを見て、ユノはヴィルヘルミナの隣へ腰を下ろした。
「そだ、森が少し動いたよね。今回つついて煽った人とアイリスお姉さんが咎人になった件を作り出した人は同じかも? 問題は目的だよね……」
「焦らずともいずれ答えは出る。それよりもどうだ。美味いぞ?」
「あ、それ私のポテチ! でもまあ、気配りが出来る女子力満点のケイさんのポテチなら、上げたくもなる……って、何、違う? 勘違い?」
 何が? そう目を瞬く彼女に、ユノがポテチを食べながら耳打ちしてゆく。そしてそれらの流れを見ていたりりかがふと零す。
「こういう時の話ってやっぱり恋バナですよね。陛下は今お相手がいます、か? ……私は、実家では家の都合で相手が決められていたから、少し、気になって……私には好きな人はいないですけど……誰かを好きになれるなら『信念をもって戦う人』がいいなって」
 少し俯き加減に囁かれる言葉に、ノイシュが静かに頷いた。そうしてこの場の全員を見回す。
(りりかちゃんの気持ち、わかるわ。其々が内に秘めた想い、探りあいの駆け引き、享楽に心躍らせる。その瞳の輝き、素敵……その瞳が欲しいわ、私のコレクションにしたい♪)
 ああ。っと頬を染めて熱の籠った目で参加者を見て吐息を落とす。ハッキリ言って危険思考なのだが、見た目が美少女なのでなんとなく許されてしまう。と、そこにジークリンデの声が響いた。
「そう言えば、恋バナになるのかわかりませんが、『舵天照』とかいうリアルブルーのお話がなかなか楽しくて、舵天男子の天元さんとかいう方が不器用ながらも成長して恋をしていく話がよかったです」
 言って彼女が取り出したのは、風衣『天元』だ。
「折角ですので、陛下にはこれを着て、天元さんをやって1シーンをやってもらえませんか? お相手はこれで」
 取り出したのはダイスだ。これにゼナイドの目が輝く。
「そう言うことでしたらわたくしが!」
「あー、ゼナイドお姉さんずるいー! 僕もー!」
 ダイスを取り上げたゼナイドに飛び掛かるユノ。こうして賑やかに盛り上がる部屋の中で、花のベッドに寝転んだチョココが傍にあるゼナイドの体に抱き付いた。
「あら、オネムですの?」
「ふかふかー」
 頬擦りをしながら目を閉じた彼女に、気紛れな優しさから布団が掛けられる。そうして落ちた寝息に目を向けると、彼女は再び陛下の相手役を射とめるべく手を伸ばすのだった。

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重体一覧

参加者一覧

  • 無邪気にして聡明?
    ユノ(ka0806
    エルフ|10才|男性|魔術師
  • 光森の太陽
    チョココ(ka2449
    エルフ|10才|女性|魔術師
  • 憤怒王FRIENDS
    ケイ(ka4032
    エルフ|22才|女性|猟撃士
  • 藤光癒月
    青山 りりか(ka4415
    人間(蒼)|17才|女性|聖導士
  • オキュロフィリア
    ノイシュ・シャノーディン(ka4419
    人間(蒼)|17才|男性|猟撃士

  • ジークリンデ(ka4778
    エルフ|20才|女性|魔術師

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ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/05/19 20:07:23