ゲスト
(ka0000)
彼方の剣
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/11 19:00
- 完成日
- 2014/07/13 21:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その行為には、何の意味もないのかもしれない。
ただの、自己満足なんだろう。
それは分かっているけど、どうしても求めずにはいられなかった。
あの人が最後まで持っていたもの、手放さずにいたもの。
私に扱う事はできないけど、彼がいた証を、手元に残したかった。
※※※
「……剣探し?」
集められたハンター達に与えられたのは、とある街道に落ちているはずの剣を探すということ。
「ある意味、ハンターって何でも屋だけどさ……物探しまで依頼されるとは思わなかったな」
「皆さんに探して頂きたいのは、ただの剣ではありません」
案内人は、小さく息を吐き、一度言葉を止める。
そして、複雑そうな表情を浮かべながら、再び口を開いた。
「とあるハンターの形見の品になる剣を探して頂きたいのです」
「……形見?」
「先日、その街道では雑魔が大量発生して討伐に向かったハンターが1人亡くなっております」
案内人は当時の資料をハンター達に渡しながら言葉を続ける。
「そのハンターが持っていた剣を探して欲しい、と恋人である女性からの依頼が来ているんです」
案内人の言葉を聞き『ただの物探し』とは言えなくなったハンター達は口をつぐむ。
「その剣は、その場にない可能性もあります。雑魔がいる可能性もあります」
「……ですが、それでもお受け下さる方は、どうぞ名乗り出てください」
ただの、自己満足なんだろう。
それは分かっているけど、どうしても求めずにはいられなかった。
あの人が最後まで持っていたもの、手放さずにいたもの。
私に扱う事はできないけど、彼がいた証を、手元に残したかった。
※※※
「……剣探し?」
集められたハンター達に与えられたのは、とある街道に落ちているはずの剣を探すということ。
「ある意味、ハンターって何でも屋だけどさ……物探しまで依頼されるとは思わなかったな」
「皆さんに探して頂きたいのは、ただの剣ではありません」
案内人は、小さく息を吐き、一度言葉を止める。
そして、複雑そうな表情を浮かべながら、再び口を開いた。
「とあるハンターの形見の品になる剣を探して頂きたいのです」
「……形見?」
「先日、その街道では雑魔が大量発生して討伐に向かったハンターが1人亡くなっております」
案内人は当時の資料をハンター達に渡しながら言葉を続ける。
「そのハンターが持っていた剣を探して欲しい、と恋人である女性からの依頼が来ているんです」
案内人の言葉を聞き『ただの物探し』とは言えなくなったハンター達は口をつぐむ。
「その剣は、その場にない可能性もあります。雑魔がいる可能性もあります」
「……ですが、それでもお受け下さる方は、どうぞ名乗り出てください」
リプレイ本文
●形見探しのために
「……形見、か」
キヅカ・リク(ka0038)は小さくため息を吐きながら呟く。
今回は他人の形見だけど、ハンターという道を選んだ時から、いつ自分がその立場になるか分からない状況に立たされている。
キヅカを始め、ハンター達はその覚悟を持って、毎回依頼に挑んでいた。
(今までの世界とは違う世界。それはもうゲームの中の事じゃない、現実……なんだ)
キヅカは拳を強く握り締めながら、心の中で呟いた。
「剣探しねぇ、どういった理由での依頼なのかねぇ」
ジング(ka0342)は首を傾げながら呟く。
ジング自身は依頼を解決するために参加しているが、剣がどういった物なのかが気になっている所があった。
「形見探しというからには、依頼人にとって大事な物なのだろう。何とかして持ち帰らないとな……」
東郷 猛(ka0493)はジングの呟きを聞き、言葉を返す。
「それは分かってるんだけどさ、わざわざ持ち帰ってくれっていうからには何かの事情があるのかなと思ってねぇ」
東郷の呟きに、ジングが言葉を返す。
「形見探しかー……うん、形見は大事だよね」
ロイ・J・ラコリエス(ka0620)は、うんうん、と頷きながら呟く。
ロイの父親も自身の父、ロイにとっては祖父にあたる人物の形見の指輪を大事に持っていた事を思い出す。
そんな父親の姿を見ているからこそ、形見が大事だという考えがあるのだろう。
「俺はまだよく分かんないけどさ、凄く大事なんだって事は分かる。だから、絶対に見つけてあげなくちゃね」
「そうですね、せめて形見の剣を、と思うのはその方にとって当たり前の事なんでしょう」
日下 菜摘(ka0881)がロイの言葉に賛同するように話しかける。
「その方の想いに応えるためにも、私も微力ながら力を尽くさせて頂きますわね」
日下はにっこりと微笑みながら「改めてよろしくお願いします」と同行するハンター達に深く頭を下げながら挨拶を行った。
「俺は雑魔の方に興味があるな、雑魔と死合えれば満足だ」
齋藤 杢之介(ka1826)が短く呟く。
彼にとっては雑魔と戦う事だけが目的であり、他のハンター達と違って、形見の剣については深い興味はないようだ。
「……形見」
美作さくら(ka2345)が今にも泣きそうな表情で呟く。
(この世界では地球よりも簡単に人が死ぬんだね……けど、辺境からここに来た今でも人の死には慣れないし、慣れたくない)
美作は震える手を強く握り締めながら、必死で恐怖を押し堪える。
(この力がなぜ私に宿ったのかは分からないけど、今は形見の品を待つ人のために……)
自分の力で誰かの想いを救えるのなら、と美作は心の中で言葉を付け足した。
「剣を探して、ねぇ……今もあるかどうかも分からんが、なんにせよ依頼を受けた以上は文句ないさ、しっかり探さないとな?」
ルアム・オルコット(ka2522)は深いため息とともに呟く。
「出発前に聞きたいんだけど、該当男性の身体的特徴、武器の特徴なんて分かる?」
キヅカが依頼人に話しかけると、女性は酷く落ち込んだ表情で男性の特徴を離し始めた。
どうやら写真嫌いであったため、その男性が映っている写真は一枚もないとの事。
「ただ、剣には私が作ったお守りをつけていました」
「……お守り?」
「はい、これと同じ物を……」
女性が見せてきたのは手作りのお守り。
「なるほど。目印があるなら見つけやすいかもな、まぁ、戦闘で千切れてなければだが」
ジングが呟くと、女性は不安気な表情を見せる。
「あー、そんな顔しなくてもちゃんと探してくるって」
今にも泣きそうな表情を見せる女性に、ジングは慌てたように言葉を付け足した。
「さて、出発するかね」
東郷が呟き、ハンター達は雑魔退治、そして形見の剣を探しに向かいはじめた――……。
●惨劇の痕
「……酷いな」
ハンター達が目的の場所に到着すると、齋藤が呟いた。
開けた場所ではあるが、到る所に血痕が残されており、被害に遭ったハンター達が死闘を繰り広げたのは一目瞭然だった。
「これほどの死闘を繰り広げ、1人だけ亡くなったなんて……やりきれないね」
ロイは悲痛な表情を浮かべながら呟く。
「まずは、敵を倒さなきゃいけないんだよね。あ、その前に誘導が必要かな」
「そうだな、見る限り前回の戦闘場所はここのようだ。雑魔をここから引き離す必要がある」
ロイの言葉にルアムがぶっきらぼうに言葉を返す。
「剣を探すためにも、雑魔を気にしながらだと集中出来ませんからね。亡くなった方の敵討ち、というわけではありませんけど、雑魔にはご退場願いましょうか」
日下は視界に入ってくる惨劇の痕から視線を逸らすように、俯きながら呟いた。
「それならこの痕跡を辿れば行き着くだろう、これほど多くの痕跡を残しているのだから、雑魔そのものを見つけるのは容易いはずだ」
齋藤が地面を指差し、他のハンター達に話しかける。
確かに地面には足跡などが残されていて、ここから雑魔を見つけるのは容易いだろう。
「この辺には雑魔が隠れられるような場所はないですからね」
美作が周りを見渡しながら呟く。見渡せる距離にはいないけど、足跡は少し遠くまで続いているため、それを辿れば必ず雑魔に行きつく事が出来るはずだ。
「……どうやら雑魔は2匹いると考えた方がいいかもしれないな、こっちに続く足跡と向こうに続く足跡がある。1匹分かもしれんが、足跡の真新しさを考える限り、2匹いると考えた方が自然だろう」
「確かにそうかもしれない、全員で索敵を行って死角や後方を注意しながら探す方がいい。背後からいきなり襲い掛かられる、という状況もありえなくはないから」
キヅカの言葉に「そうだな、警戒だけは怠らないようにしよう」とルアムが答える。
「2匹いると仮定して、出来る限り同時に相手しないようにしよう」
「そうですね、1人亡くなっているわけですから慎重にいきましょう」
ルアムの提案に日下、そして他のハンター達も頷く。
「さぁて、まずは雑魔退治から頑張りますかねぇ」
ジングが呟き、ハンター達は足跡を辿って雑魔捜索を開始した。
※※※
「予想していたよりもデカいな」
肉眼で雑魔を確認出来る位置まで来て、齋藤が呟く。
「正面から行かせてもらう、死合うにはそれがいい」
齋藤は呟いた後、そのまま雑魔に向かって駆けだした。
「さて、俺も行かせてもらうかね」
「よし、行くぞ!」
ルアムと東郷も駆け出し、ジングが『防性強化』を使用して防御力を高める。
「僕も前衛で行かせてもらう、周りの警戒は後衛の仲間に任せたよ」
キヅカは言葉を残し、先に駆けていった3名を追いかける。
「戦う場所を探した方がいいかなって思ったけど、案外雑魔の方が良い場所にいてくれたね。さて、俺も邪魔にならない程度に頑張ろう」
ロイは『ナイフ』を構え、雑魔に向かって走り出す。
「負傷したら、私が『ヒール』を使いますから、戦闘に専念して下さい……!」
日下は前衛で戦うハンター達に聞こえるよう、大きな声で叫んだ。
「……この距離、まさに生と死がギリギリの死合いだな」
齋藤はどこか楽しそうな声で呟きながら『日本刀』を振るう。
雑魔が鋭い爪を振り下ろしても、齋藤は避ける事はせず、傷を負いながらも『日本刀』を振るった、そのおかげで雑魔の片腕に深いダメージが与えられる。
「避けて下さい!」
だらり、と雑魔の腕が落ちた後、美作の声が響き、齋藤は後ろに避ける。
「はぁっ!」
美作は『筋力充填』で攻撃力を高めた後に『クラッシュブロウ』で攻撃を仕掛ける。
美作が攻撃を仕掛けた後、僅かに雑魔が足を止め、ルアムは『踏込』を使用して次の攻撃の威力を高めて『強打』で攻撃を仕掛けた。
「叩き斬ってやるから、さっさと来な!」
「そら、こっちだ!」
東郷は『働かざる者』を発動させた後、雑魔に攻撃を仕掛けるため、懐に潜り込む。
「あっ!」
だが、雑魔は牙をむきだしにして東郷の肩に噛みついてくる。
その時、ふわりと何かに守られるような感覚が東郷を襲う。
「……?」
予想よりも大きなダメージは受けず、東郷は驚いたように目を瞬かせる。
(だが、今は目の前の雑魔を倒す事に専念だ……!)
東郷は雑魔の身体を締め上げ、雑魔の動きを止める。
「そのまま捕まえていてくれ!」
キヅカは大きな声で叫び、東郷はそのまま締め上げたままの体勢を維持する。
そして、キヅカは構えている『リボルバー・シルバーマグ』で雑魔の目を狙い撃つ。
「グオオオオッ!」
目を潰された雑魔は痛みから雄叫びのような声をあげて暴れ始める。
「この死合い、俺達の勝ちだ」
齋藤が短く呟き、雑魔の首をそのまま斬り落とした。
1匹目の雑魔を退治してホッと安堵のため息を吐きかけた時。
「後ろからもう1匹が向かって来ています!」
日下の大きな声が響き渡る。
「くっ、素早いな……!」
雑魔の攻撃を剣で受け止めながら、ルアムが感心したような声で呟く。
「だが、もう1匹との戦闘である程度の動きは掴ませてもらってる!」
ルアムが『ロングソード』を横薙ぎにして振るうと、雑魔は身体に傷を負った――が、それでも動きを止めようとはしなかった。
「誰かの幸せを奪うなんて、たとえ誰であっても、どんな存在であっても許されるはずがない……!」
美作は『筋力充填』と『クラッシュブロウ』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
「東郷さん、傷を癒します! 他にも深い傷を負った方は後衛まで下がってきてください!」
日下は『ヒール』で東郷の傷を治療して、他のハンター達にも言葉を投げかけた。
「俺が時間を稼ぐ、その間に治療が必要な奴はさっさと受けてきてくれ!」
ジングは『機導砲』で応戦しながら、前衛のハンター達に話しかける。
「……」
キヅカはジングが攻撃した場所を狙い撃ち、雑魔の傷を深く抉っていく。
「はぁっ!」
どすん、と強力な攻撃を繰り出したのは東郷だった。まだ負傷しているものの、日下の治療を受けて動けないほどの傷ではなくなった。
「はぁっ!」
東郷は張り手や蹴たぐりを使い、雑魔の懐に潜り込もうとする。
「これで、倒れて!」
美作は『薙刀』を大きく振り回し、雑魔の足を引っかけるように攻撃を行う。
雑魔がバランスを崩して地面に倒れこむと同時に、ルアムは『踏込』と『強打』を使用して攻撃を仕掛ける。
倒れながらも雑魔はルアムを攻撃しようとしたが、ロイの『ナイフ』が雑魔の手に刺さり、ルアムに攻撃する事は適わなかった。
「攻撃なんてさせないよ!」
そしてジングの『機導砲』が雑魔の身体を貫き、同時にルアムが雑魔の頭に『ロングソード』を突き刺して、2匹目の雑魔も無事に退治し終えたのだった。
●形見の剣、確かに彼が存在した証
「雑魔は退治した、残る任務は形見の剣を探す……か」
惨劇の痕跡が残された場所に戻ってきたハンター達は、それらしい物を探し始めていた。
「俺の直感では、この辺にありそうな気がするんだけどなぁ」
ジングはため息を吐きながら、しゃがみ込んで目的の品を探している。
「さすがにこの匂いの中ではポチの鼻も役に立ちそうにないな……」
東郷は小さなため息を吐きながら、連れて来た柴犬のポチを見つめた。
「……死んじまった奴も無念だろうね、形見くらいはしっかりと持ち帰ってやるさね、依頼人のためにもな」
「亡くなった方は戻らない……けれど、形見の品が残るか残らないか、それで遺された人の気持ちは変わると思いますから」
ルアムの呟きを聞き、日下が悲しそうな表情を見せながら呟く。
「剣だけではなく、他の物も探してみましょう。他に形見になりそうな物があれば、それに越した事はありませんからね」
日下が再び捜索を始めた時、ロイは岩の隙間の中に入っていた。
「んー、やっぱり剣みたいな物はこういう所に入り込まないよねー……」
ロイはがっくりと肩を落としながら呟き、泥まみれになりながらも遺品捜索を続ける。
「……やれやれ、しらみ潰しに探すしかないのかもしれんな」
齋藤はため息混じりに呟く。
雑魔の姿が熊に近かったせいもあり、熊の習性を考え、巣穴近くを探してみたが、それらしい物はどこにもなかった。
「姿が似てるからと言って、習性まで同じとは限らないらしいな」
ふぅ、と2度目のため息を吐いた後、再び歩き始める。
(最初に流れ着いた辺境では歪虚との戦いが多くあって、見てきた遺体も数知れず……だけど、やっぱりこうやって惨劇を目の当たりにするのは怖いし、つらいよ)
美作は遺品探しをしながらも、恐怖、そして悔しさに心を蝕まれる。
「あっ、あった!」
岩に隠れていたそれは、確かに依頼人が言っていた『形見の剣』だろう。柄の部分にお守りがぶら下げられていて、元は水色だったそれは血で赤黒く変色していた。
「この周辺、やけに血痕が多い。もしかしたら遺体は、雑魔に――……」
キヅカはその言葉の続きを言えなかったが、ハンター達には伝わっていた。
これだけ探しても遺体の欠片すら見つからない、それが意味するのは雑魔に食われた可能性が高いという事――……。
(……これは、命の重さだ)
形見の剣を持ちながら、キヅカは心の中で呟く。
(今を生きる僕らは、この命の上に成り立っている)
キヅカが感じていた事、それは他のハンター達も感じているらしく無言のまま気まずい空気が流れる。
「埋葬出来たらって考えてたんだけど、どうしよう……?」
控えめな声で、ロイが他のハンター達に言葉を投げかける。
「遺体は見つからなかったけど、だからといってこのまま立ち去るというのも……ね」
日下も複雑そうな表情を浮かべ、手ごろな石を探して簡単だけど墓を作って帰る事にする。
※※※
「……どうぞ、安らかにお眠り下さい」
ハンター達で簡単な墓を作った後、日下が手を合わせ、祈るように呟く。
「どうぞ安らかに……!」
日下の姿を見て、ロイも隣に座り込み、亡くなったハンターが安らかに眠れるように祈る。
「貴方の形見の品は、必ず依頼人の元に届けます……ですから、安心して下さいね」
美作は涙が零れそうになりながらも手を合わせ、形見の品を届ける事を墓前に誓う。
そしてルアムも自身が信仰している宗教の弔い方で祈る。ただ、それが破壊と再生の神である事はルアムしか知らないのだけど……。
その後、依頼人の元に戻ったハンター達は形見の剣を渡す。
それと同時に依頼人は泣き崩れ、ハンター達は掛ける言葉が見つからなかった。
「あのさ、この剣は何なんだ? どうして俺達に頼んでまで手に入れようと……?」
ジングが問い掛けると「彼が最後まで手にしていた物、それを私も守りたいから」と答えた。
「……そっか」
そこまで想われるなんて幸せなのかな、とジングは心の中で呟きながら他のハンター達と共に任務終了の報告に向かったのだった。
END
「……形見、か」
キヅカ・リク(ka0038)は小さくため息を吐きながら呟く。
今回は他人の形見だけど、ハンターという道を選んだ時から、いつ自分がその立場になるか分からない状況に立たされている。
キヅカを始め、ハンター達はその覚悟を持って、毎回依頼に挑んでいた。
(今までの世界とは違う世界。それはもうゲームの中の事じゃない、現実……なんだ)
キヅカは拳を強く握り締めながら、心の中で呟いた。
「剣探しねぇ、どういった理由での依頼なのかねぇ」
ジング(ka0342)は首を傾げながら呟く。
ジング自身は依頼を解決するために参加しているが、剣がどういった物なのかが気になっている所があった。
「形見探しというからには、依頼人にとって大事な物なのだろう。何とかして持ち帰らないとな……」
東郷 猛(ka0493)はジングの呟きを聞き、言葉を返す。
「それは分かってるんだけどさ、わざわざ持ち帰ってくれっていうからには何かの事情があるのかなと思ってねぇ」
東郷の呟きに、ジングが言葉を返す。
「形見探しかー……うん、形見は大事だよね」
ロイ・J・ラコリエス(ka0620)は、うんうん、と頷きながら呟く。
ロイの父親も自身の父、ロイにとっては祖父にあたる人物の形見の指輪を大事に持っていた事を思い出す。
そんな父親の姿を見ているからこそ、形見が大事だという考えがあるのだろう。
「俺はまだよく分かんないけどさ、凄く大事なんだって事は分かる。だから、絶対に見つけてあげなくちゃね」
「そうですね、せめて形見の剣を、と思うのはその方にとって当たり前の事なんでしょう」
日下 菜摘(ka0881)がロイの言葉に賛同するように話しかける。
「その方の想いに応えるためにも、私も微力ながら力を尽くさせて頂きますわね」
日下はにっこりと微笑みながら「改めてよろしくお願いします」と同行するハンター達に深く頭を下げながら挨拶を行った。
「俺は雑魔の方に興味があるな、雑魔と死合えれば満足だ」
齋藤 杢之介(ka1826)が短く呟く。
彼にとっては雑魔と戦う事だけが目的であり、他のハンター達と違って、形見の剣については深い興味はないようだ。
「……形見」
美作さくら(ka2345)が今にも泣きそうな表情で呟く。
(この世界では地球よりも簡単に人が死ぬんだね……けど、辺境からここに来た今でも人の死には慣れないし、慣れたくない)
美作は震える手を強く握り締めながら、必死で恐怖を押し堪える。
(この力がなぜ私に宿ったのかは分からないけど、今は形見の品を待つ人のために……)
自分の力で誰かの想いを救えるのなら、と美作は心の中で言葉を付け足した。
「剣を探して、ねぇ……今もあるかどうかも分からんが、なんにせよ依頼を受けた以上は文句ないさ、しっかり探さないとな?」
ルアム・オルコット(ka2522)は深いため息とともに呟く。
「出発前に聞きたいんだけど、該当男性の身体的特徴、武器の特徴なんて分かる?」
キヅカが依頼人に話しかけると、女性は酷く落ち込んだ表情で男性の特徴を離し始めた。
どうやら写真嫌いであったため、その男性が映っている写真は一枚もないとの事。
「ただ、剣には私が作ったお守りをつけていました」
「……お守り?」
「はい、これと同じ物を……」
女性が見せてきたのは手作りのお守り。
「なるほど。目印があるなら見つけやすいかもな、まぁ、戦闘で千切れてなければだが」
ジングが呟くと、女性は不安気な表情を見せる。
「あー、そんな顔しなくてもちゃんと探してくるって」
今にも泣きそうな表情を見せる女性に、ジングは慌てたように言葉を付け足した。
「さて、出発するかね」
東郷が呟き、ハンター達は雑魔退治、そして形見の剣を探しに向かいはじめた――……。
●惨劇の痕
「……酷いな」
ハンター達が目的の場所に到着すると、齋藤が呟いた。
開けた場所ではあるが、到る所に血痕が残されており、被害に遭ったハンター達が死闘を繰り広げたのは一目瞭然だった。
「これほどの死闘を繰り広げ、1人だけ亡くなったなんて……やりきれないね」
ロイは悲痛な表情を浮かべながら呟く。
「まずは、敵を倒さなきゃいけないんだよね。あ、その前に誘導が必要かな」
「そうだな、見る限り前回の戦闘場所はここのようだ。雑魔をここから引き離す必要がある」
ロイの言葉にルアムがぶっきらぼうに言葉を返す。
「剣を探すためにも、雑魔を気にしながらだと集中出来ませんからね。亡くなった方の敵討ち、というわけではありませんけど、雑魔にはご退場願いましょうか」
日下は視界に入ってくる惨劇の痕から視線を逸らすように、俯きながら呟いた。
「それならこの痕跡を辿れば行き着くだろう、これほど多くの痕跡を残しているのだから、雑魔そのものを見つけるのは容易いはずだ」
齋藤が地面を指差し、他のハンター達に話しかける。
確かに地面には足跡などが残されていて、ここから雑魔を見つけるのは容易いだろう。
「この辺には雑魔が隠れられるような場所はないですからね」
美作が周りを見渡しながら呟く。見渡せる距離にはいないけど、足跡は少し遠くまで続いているため、それを辿れば必ず雑魔に行きつく事が出来るはずだ。
「……どうやら雑魔は2匹いると考えた方がいいかもしれないな、こっちに続く足跡と向こうに続く足跡がある。1匹分かもしれんが、足跡の真新しさを考える限り、2匹いると考えた方が自然だろう」
「確かにそうかもしれない、全員で索敵を行って死角や後方を注意しながら探す方がいい。背後からいきなり襲い掛かられる、という状況もありえなくはないから」
キヅカの言葉に「そうだな、警戒だけは怠らないようにしよう」とルアムが答える。
「2匹いると仮定して、出来る限り同時に相手しないようにしよう」
「そうですね、1人亡くなっているわけですから慎重にいきましょう」
ルアムの提案に日下、そして他のハンター達も頷く。
「さぁて、まずは雑魔退治から頑張りますかねぇ」
ジングが呟き、ハンター達は足跡を辿って雑魔捜索を開始した。
※※※
「予想していたよりもデカいな」
肉眼で雑魔を確認出来る位置まで来て、齋藤が呟く。
「正面から行かせてもらう、死合うにはそれがいい」
齋藤は呟いた後、そのまま雑魔に向かって駆けだした。
「さて、俺も行かせてもらうかね」
「よし、行くぞ!」
ルアムと東郷も駆け出し、ジングが『防性強化』を使用して防御力を高める。
「僕も前衛で行かせてもらう、周りの警戒は後衛の仲間に任せたよ」
キヅカは言葉を残し、先に駆けていった3名を追いかける。
「戦う場所を探した方がいいかなって思ったけど、案外雑魔の方が良い場所にいてくれたね。さて、俺も邪魔にならない程度に頑張ろう」
ロイは『ナイフ』を構え、雑魔に向かって走り出す。
「負傷したら、私が『ヒール』を使いますから、戦闘に専念して下さい……!」
日下は前衛で戦うハンター達に聞こえるよう、大きな声で叫んだ。
「……この距離、まさに生と死がギリギリの死合いだな」
齋藤はどこか楽しそうな声で呟きながら『日本刀』を振るう。
雑魔が鋭い爪を振り下ろしても、齋藤は避ける事はせず、傷を負いながらも『日本刀』を振るった、そのおかげで雑魔の片腕に深いダメージが与えられる。
「避けて下さい!」
だらり、と雑魔の腕が落ちた後、美作の声が響き、齋藤は後ろに避ける。
「はぁっ!」
美作は『筋力充填』で攻撃力を高めた後に『クラッシュブロウ』で攻撃を仕掛ける。
美作が攻撃を仕掛けた後、僅かに雑魔が足を止め、ルアムは『踏込』を使用して次の攻撃の威力を高めて『強打』で攻撃を仕掛けた。
「叩き斬ってやるから、さっさと来な!」
「そら、こっちだ!」
東郷は『働かざる者』を発動させた後、雑魔に攻撃を仕掛けるため、懐に潜り込む。
「あっ!」
だが、雑魔は牙をむきだしにして東郷の肩に噛みついてくる。
その時、ふわりと何かに守られるような感覚が東郷を襲う。
「……?」
予想よりも大きなダメージは受けず、東郷は驚いたように目を瞬かせる。
(だが、今は目の前の雑魔を倒す事に専念だ……!)
東郷は雑魔の身体を締め上げ、雑魔の動きを止める。
「そのまま捕まえていてくれ!」
キヅカは大きな声で叫び、東郷はそのまま締め上げたままの体勢を維持する。
そして、キヅカは構えている『リボルバー・シルバーマグ』で雑魔の目を狙い撃つ。
「グオオオオッ!」
目を潰された雑魔は痛みから雄叫びのような声をあげて暴れ始める。
「この死合い、俺達の勝ちだ」
齋藤が短く呟き、雑魔の首をそのまま斬り落とした。
1匹目の雑魔を退治してホッと安堵のため息を吐きかけた時。
「後ろからもう1匹が向かって来ています!」
日下の大きな声が響き渡る。
「くっ、素早いな……!」
雑魔の攻撃を剣で受け止めながら、ルアムが感心したような声で呟く。
「だが、もう1匹との戦闘である程度の動きは掴ませてもらってる!」
ルアムが『ロングソード』を横薙ぎにして振るうと、雑魔は身体に傷を負った――が、それでも動きを止めようとはしなかった。
「誰かの幸せを奪うなんて、たとえ誰であっても、どんな存在であっても許されるはずがない……!」
美作は『筋力充填』と『クラッシュブロウ』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛ける。
「東郷さん、傷を癒します! 他にも深い傷を負った方は後衛まで下がってきてください!」
日下は『ヒール』で東郷の傷を治療して、他のハンター達にも言葉を投げかけた。
「俺が時間を稼ぐ、その間に治療が必要な奴はさっさと受けてきてくれ!」
ジングは『機導砲』で応戦しながら、前衛のハンター達に話しかける。
「……」
キヅカはジングが攻撃した場所を狙い撃ち、雑魔の傷を深く抉っていく。
「はぁっ!」
どすん、と強力な攻撃を繰り出したのは東郷だった。まだ負傷しているものの、日下の治療を受けて動けないほどの傷ではなくなった。
「はぁっ!」
東郷は張り手や蹴たぐりを使い、雑魔の懐に潜り込もうとする。
「これで、倒れて!」
美作は『薙刀』を大きく振り回し、雑魔の足を引っかけるように攻撃を行う。
雑魔がバランスを崩して地面に倒れこむと同時に、ルアムは『踏込』と『強打』を使用して攻撃を仕掛ける。
倒れながらも雑魔はルアムを攻撃しようとしたが、ロイの『ナイフ』が雑魔の手に刺さり、ルアムに攻撃する事は適わなかった。
「攻撃なんてさせないよ!」
そしてジングの『機導砲』が雑魔の身体を貫き、同時にルアムが雑魔の頭に『ロングソード』を突き刺して、2匹目の雑魔も無事に退治し終えたのだった。
●形見の剣、確かに彼が存在した証
「雑魔は退治した、残る任務は形見の剣を探す……か」
惨劇の痕跡が残された場所に戻ってきたハンター達は、それらしい物を探し始めていた。
「俺の直感では、この辺にありそうな気がするんだけどなぁ」
ジングはため息を吐きながら、しゃがみ込んで目的の品を探している。
「さすがにこの匂いの中ではポチの鼻も役に立ちそうにないな……」
東郷は小さなため息を吐きながら、連れて来た柴犬のポチを見つめた。
「……死んじまった奴も無念だろうね、形見くらいはしっかりと持ち帰ってやるさね、依頼人のためにもな」
「亡くなった方は戻らない……けれど、形見の品が残るか残らないか、それで遺された人の気持ちは変わると思いますから」
ルアムの呟きを聞き、日下が悲しそうな表情を見せながら呟く。
「剣だけではなく、他の物も探してみましょう。他に形見になりそうな物があれば、それに越した事はありませんからね」
日下が再び捜索を始めた時、ロイは岩の隙間の中に入っていた。
「んー、やっぱり剣みたいな物はこういう所に入り込まないよねー……」
ロイはがっくりと肩を落としながら呟き、泥まみれになりながらも遺品捜索を続ける。
「……やれやれ、しらみ潰しに探すしかないのかもしれんな」
齋藤はため息混じりに呟く。
雑魔の姿が熊に近かったせいもあり、熊の習性を考え、巣穴近くを探してみたが、それらしい物はどこにもなかった。
「姿が似てるからと言って、習性まで同じとは限らないらしいな」
ふぅ、と2度目のため息を吐いた後、再び歩き始める。
(最初に流れ着いた辺境では歪虚との戦いが多くあって、見てきた遺体も数知れず……だけど、やっぱりこうやって惨劇を目の当たりにするのは怖いし、つらいよ)
美作は遺品探しをしながらも、恐怖、そして悔しさに心を蝕まれる。
「あっ、あった!」
岩に隠れていたそれは、確かに依頼人が言っていた『形見の剣』だろう。柄の部分にお守りがぶら下げられていて、元は水色だったそれは血で赤黒く変色していた。
「この周辺、やけに血痕が多い。もしかしたら遺体は、雑魔に――……」
キヅカはその言葉の続きを言えなかったが、ハンター達には伝わっていた。
これだけ探しても遺体の欠片すら見つからない、それが意味するのは雑魔に食われた可能性が高いという事――……。
(……これは、命の重さだ)
形見の剣を持ちながら、キヅカは心の中で呟く。
(今を生きる僕らは、この命の上に成り立っている)
キヅカが感じていた事、それは他のハンター達も感じているらしく無言のまま気まずい空気が流れる。
「埋葬出来たらって考えてたんだけど、どうしよう……?」
控えめな声で、ロイが他のハンター達に言葉を投げかける。
「遺体は見つからなかったけど、だからといってこのまま立ち去るというのも……ね」
日下も複雑そうな表情を浮かべ、手ごろな石を探して簡単だけど墓を作って帰る事にする。
※※※
「……どうぞ、安らかにお眠り下さい」
ハンター達で簡単な墓を作った後、日下が手を合わせ、祈るように呟く。
「どうぞ安らかに……!」
日下の姿を見て、ロイも隣に座り込み、亡くなったハンターが安らかに眠れるように祈る。
「貴方の形見の品は、必ず依頼人の元に届けます……ですから、安心して下さいね」
美作は涙が零れそうになりながらも手を合わせ、形見の品を届ける事を墓前に誓う。
そしてルアムも自身が信仰している宗教の弔い方で祈る。ただ、それが破壊と再生の神である事はルアムしか知らないのだけど……。
その後、依頼人の元に戻ったハンター達は形見の剣を渡す。
それと同時に依頼人は泣き崩れ、ハンター達は掛ける言葉が見つからなかった。
「あのさ、この剣は何なんだ? どうして俺達に頼んでまで手に入れようと……?」
ジングが問い掛けると「彼が最後まで手にしていた物、それを私も守りたいから」と答えた。
「……そっか」
そこまで想われるなんて幸せなのかな、とジングは心の中で呟きながら他のハンター達と共に任務終了の報告に向かったのだった。
END
依頼結果
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相談卓 ルアム・オルコット(ka2522) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/08 20:20:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/07 01:56:48 |