ゲスト
(ka0000)
初夏にやってきた極寒の
マスター:秋月雅哉

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~10人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2015/05/25 19:00
- 完成日
- 2015/05/26 21:28
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●帝国の辺境に訪れた異変の原因を探りだせ
緑も芽吹き、日差しは温かくなり、風の冷たさも和らいできた、日によっては初夏か真夏に感じられる気温の日々。
季節は春を終え初夏へ向かおうとしているころ。
帝国の中でも辺境に近い場所では水は凍り付き、地面は雪で覆われるという異常が起きていた。
最近まで他の場所同様初夏へ向かっていたはずなのに、急に季節が逆戻りしてしまったのである。
人々は凍え、吹雪と氷で彩られた世界では農作業などできずに飢える一方。
狩りで糧を得ようにも吹雪が激しすぎて遭難、凍死者がでる始末だ。
その中を果敢にハンターオフィスへとやってきた若者は、どうか彼の地に起きた異変を突き止めて欲しいと希い、気温差のせいで体調を崩して療養をしているという。
「どうもおとぎ話とかに出てくる雪姫と雪童が原因っぽいんだよね。現地にいって調べないと何とも言えないけど。あ、本物の雪姫や雪童じゃなくてそういう性質を持つ雑魔、ね」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は困ったように吐息を吐き出す。
「そこにいるだけで周りの物を凍らせて、吹雪を巻き起こす。春になると同時に雪を戴くほど高い山へと帰るとか消えるとか聞くけどどうもそういうのが出たみたいだね。
皆にはこの雪姫と雪童の探索と討伐……になるだろうね、雑魔に言葉は通じないから。それをお願いしたいんだ。
数が何体かは正確には分からないけれど、全部倒せば異変は収束するはずだから。
吹雪の中での戦いは大変だと思うけど、助けを求めてやってきた人のためにも頑張って元の季節に戻してほしい。
あとは……可能なら炊き出しとかしてあげると喜ばれるんじゃないかな。
食べ物が全滅みたいだし、老人と子供が多い村だから医療の知識がある人が健康診断してあげても喜んでもらえると思うよ」
どうせ出るなら冬に出てくれればねぇ、とルカはもう一度、今度はため息に似た吐息を吐いた。
緑も芽吹き、日差しは温かくなり、風の冷たさも和らいできた、日によっては初夏か真夏に感じられる気温の日々。
季節は春を終え初夏へ向かおうとしているころ。
帝国の中でも辺境に近い場所では水は凍り付き、地面は雪で覆われるという異常が起きていた。
最近まで他の場所同様初夏へ向かっていたはずなのに、急に季節が逆戻りしてしまったのである。
人々は凍え、吹雪と氷で彩られた世界では農作業などできずに飢える一方。
狩りで糧を得ようにも吹雪が激しすぎて遭難、凍死者がでる始末だ。
その中を果敢にハンターオフィスへとやってきた若者は、どうか彼の地に起きた異変を突き止めて欲しいと希い、気温差のせいで体調を崩して療養をしているという。
「どうもおとぎ話とかに出てくる雪姫と雪童が原因っぽいんだよね。現地にいって調べないと何とも言えないけど。あ、本物の雪姫や雪童じゃなくてそういう性質を持つ雑魔、ね」
ルカ・シュバルツエンド(kz0073)は困ったように吐息を吐き出す。
「そこにいるだけで周りの物を凍らせて、吹雪を巻き起こす。春になると同時に雪を戴くほど高い山へと帰るとか消えるとか聞くけどどうもそういうのが出たみたいだね。
皆にはこの雪姫と雪童の探索と討伐……になるだろうね、雑魔に言葉は通じないから。それをお願いしたいんだ。
数が何体かは正確には分からないけれど、全部倒せば異変は収束するはずだから。
吹雪の中での戦いは大変だと思うけど、助けを求めてやってきた人のためにも頑張って元の季節に戻してほしい。
あとは……可能なら炊き出しとかしてあげると喜ばれるんじゃないかな。
食べ物が全滅みたいだし、老人と子供が多い村だから医療の知識がある人が健康診断してあげても喜んでもらえると思うよ」
どうせ出るなら冬に出てくれればねぇ、とルカはもう一度、今度はため息に似た吐息を吐いた。
リプレイ本文
●逆戻りしてきた冬を追い返せ
日差しが暖かいを通り越して暑い、になりはじめたころ。
帝国の中でも辺境に近いある村は氷と雪に閉ざされていた。
雪姫や雪童と称される雪の化身に酷似した雑魔が発生したのが原因で、おそらくそれらをすべて討伐するまでは吹雪も氷もやむことも溶けることもないだろう、というのが調査団の出した結論だったため、ハンターが雑魔の討伐へとこの地にやってきたというわけだ。
「初夏にさしかかろうというこの時期に吹雪を起す雑魔ですか。
なんとも季節外れな……といいたいけど、このままでは生活できないまま飢え死にする人が増えていく一方ですね。
では、これ以上被害や犠牲者が出る前に終わらせるとしましょうか」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は雪に覆われた村の様子を見て嘆息しながら雑魔を探す準備を始める。
これがもう少し威力が弱く、ただ気温が下がるだけという性質の雑魔だったら真夏のころなら農作物に影響が出ないなら人気が出たかもしれないが飢え死に、凍死者がでる現状で雑魔の存在を有難がる存在がいるわけもない。
バルバロス(ka2119)は雪山では馬が使えないから、と歩く時に滑らないよう、そして雪に足を取られないよう履物に工夫をしながら、雑魔の気配を辿れないかと髪に覆われて見えにくい目で辺りを見渡す。
「作戦がない以上一気に仕留めなければ不利になるな。叩き潰すしかあるまいて」
「雪女だか雪娘だかしらないが時期外れもいいところだろう。迷惑な」
リュー・グランフェスト(ka2419)は章句良品を詰めるだけ詰んだ馬を村に預ける手配をしながら空気もとい季節を読まずに現れた雑魔へ対して顔をしかめた。
「悪いな、テンペスト。終わったらご馳走してやるからな」
馬に積んできたのは非常食だが日持ちよりも体を暖める食材を中心に。体を暖めるなら、と勧められた生姜などの香辛料もあまりかさばらず、しょうが湯は初期の風邪にいいということもあって多めに持ってきている。
苦労と重荷を背負わせたことを愛馬に詫びて、背をポンポンと叩いたあと捜索隊に合流。
「うわ、本気で降ってやがる」
最初は山の方から雪が降り出した、という村人の情報からひとまず山を捜索することになったが、山に一歩踏み込んだ途端吹き付ける吹雪の度合いがきつくなった。
リューが初夏に降る雪に呆れながらゴーグルをしっかり被って視界の確保に努める。
犬のレイオスを連れていき雑魔の残した気配や匂いを追えないかと解き放つが雪は匂いを消してしまうのか、それとも匂いや気配が雪によって人には感じられない濃度で充満しているのか、レイオスの動きは芳しくない。
「うぐぐぐぐぐ、さ、寒いでござる。忍びとは忍耐の一文字、心頭滅却すれば火もまた涼しでござる。南八幡大菩薩……あぁーっ、涼しくなって余計寒いでござるう!」
藤林みほ(ka2804)が盛大に叫びながらがちがちと震える。
狙うのはこの場合火もまた涼し、のむしろ逆である気がするが……みほ本人は動転しているのか気づいていないのか体を張ったギャグで心だけでもほっこりしようという算段か。
竹の中に炭火を入れた、忍者の道具の胴火などを持ち込み、マントを重ね着して少しでも空気の層を確保しようとしているが寒いものは寒い。
村から少し離れると太陽が元気に活動しているので寒暖差が激しくて余計に寒い。
雪道を歩くために草履に藁を巻いて、その上でかんじき状にしてスリップを防ぐなど、一通りの雪山行軍の知識はあるがそれで寒さを気にせずにいられるかどうかといえば別の話のようだ。
「日本の冬を想定してるのでござって、こんな北アルプスみたいな猛吹雪にげほお!! 対応できるわけがないで御座ろう!」
それでも山登りや崖登りの訓練をしたりしているので吹雪耐性や対処法を持たない一般人よりはマシなレベルなのだから雪山の恐ろしさは生半可な雑魔以上かもしれない。
「極寒がどうしたって? 今の自分の心の寒さが、吹雪ごときに負けるわけないだろう」
最愛の人と音信不通に陥って心が寒い状態になりながらも、その人が辛いなら自分が更なる負担の原因になるわけにはいかないと自らを奮い立たせる屋外(ka3530)だが、寒さ比べをしても我慢大会ではないので特にメリットはない気がする。
彼はこの事件の斡旋人であるルカ・シュバルツエンド(kz0073)に防寒着の用意や復興支援の仲介を頼んできている。
自身も重装馬の引く馬車に飢饉に陥った村の人たちのためにすぐに食べられる食料を可能な限り積んで置いてきた。
コトネ・アラミノ(ka4192)は雑魔討伐には加わらず村人の面倒を見るために村に残ったため、リューが持ち込んだ食料を含め食材を生かして炊き出しももうじき始まる事だろう。
「寒さや吹雪はもともと慣れてるから志願してきたけど……」
北の魔女、と呼ばれるベリト・アルミラ(ka4331)は氷や雪の扱いは慣れているので毛皮のマントを羽織り、防寒をしっかりしてきたが山の中での視界の悪さに思わず眉をひそめた。
彼女も馬に小麦など、こちらは長く消費に回せるものを積んでやってきたが他の討伐メンバーとは違い馬を引きつれてきている。
徒歩での捜索では自分の体力が持たないと思っての行動だったがここまで寒いと馬の生死も危ういところだ。
目標は敵を掃討する前に凍死しないことを第一に。
「人影が見える。随分と軽装のようだが……この猛吹雪をものともしていないところをみると、雑魔か?」
バルバロスの言葉に全員が顔を引き締める。
吹雪のせいで見えにくいが確かに小さな影がいくつか点在し、雪を喜ぶように舞を舞っているような動きを見せていた。
「凍え死ぬ前に遭遇できるとは有り難い。トータルで何体いるか不明、ということだったが……今視界に入っている奴らを叩き潰せば少しはこの吹雪も和らぐだろうて」
獰猛な獣を思わせる野性味にあふれた笑みを浮かべるとバルバロスはその巨体からは信じられない程俊敏に小柄な影たちに突っ込んでいった。
雪姫と雪童になぞらえられた雑魔は白い装束を身に纏った、人に似た姿をしていた。
複数を巻き込める位置に陣取り、バルバロスはラウンドスイングを使って雪の死者たちを薙ぎ払う。
ユーリは一人だけ趣の違う、おそらく雪姫と思われる雑魔を相手取り、討伐完了した際にここにいる雑魔が全てだったら氷が溶けだすことを考慮して、極力氷の上で戦わないように意識して立ち回っていた。
氷を収束させて鞭のように振るう雪姫からの攻撃には体を逸らして回避、距離を詰める勢いを転化してナイフでの攻撃力を高め、雪姫に襲い掛かる。
覚醒することで炎のオーラを身に纏ったリューが盾を構えながら近づき、仲間が攻撃されそうになった場合は庇う。
自身への攻撃は可能な限り回避を試みながら雪童へ近づき、体重を乗せた一撃で転倒を狙い。動きを封じにかかった。
「くらいやがれ!」
攻めの構えからの薙ぎ払いの剣圧で攻撃をしながら士気を高めるように高らかに叫ぶ。
みほは最初手裏剣を投げつけて攻撃を試みたが吹雪を操る敵は風も操るらしく、そらされてしまう。
「ならば、より質量のある鎖鎌だ」
金属製の分銅で雪童に打撃攻撃を与えながら、この環境では走り回ることが難しいためできれば足を止めた状態で手裏剣で敵の戦力を削ぎたいところだが、と思案。
屋外が足場に注意しながら近接し、ロケットナックルで殴り掛かるとそれが致命傷になったのか雪姫の姿が掻き消える。
雪白の肌、というのがふさわしいその肌は本当に雪でできていたらしく吹雪に紛れて消え、後に残ったのは少女の物と推測できる白い衣類と華奢な骨。
「口減らしに捨てられたか、それとも雪山で遭難した死体を歪虚が雑魔に仕立てたか……後で冥福を祈るとしましょう」
ベリトは前衛の仲間たちにファイアーエンチャントを付与し終えると仲間たちが不用意に足を危険区域に踏み込んで川に落ちたりしないよう後方からアドバイスを送る。
「踏み固めた雪は存外滑るものじゃ。氷の上を歩くような感じで重心を垂直に、其方にはクレバスがあるかもしれないから、気を付けた方がいい」
雪と氷に親しんで生きてきたベリトのアドバイスもあって誰も転落や雪にはまったりということがないまま雪姫の周りを取り巻いていた雪童たちを討伐していく。
雪姫がリーダー格で一番強かったらしく、後は攻撃担当を決めて集中攻撃するとあっけないほど雪へと還っていった。
残ったのはやはり、骨と衣類。
「……あの村は他の村と離れた場所にあった。あの村で生まれた子じゃろう。連れて帰ってやらぬか」
反対意見は出ず、吹雪が止んで初夏の太陽が瞬く間に雪や氷を溶かしていく。
雪解け水に足を取られそうになりながら遺品と遺骨を回収し、一同は急いで村に戻ったのだった。
一人村に残って炊き出しを行っていたコトネは野菜たっぷりのスープとパンを作っていた。
パンは前もって生地だけ作って成型しておいたもの。
これならスープを煮込んでいる間にパンを焼くことで焼き立てのパンと温かいスープを同時に供することができる。
「皆さん、温かいパンとスープが出来ましたのでどうぞ召し上がってください」
寒さで体の弱っている村人のもとへは食器を運び、食事の介添えも行う。
支援物資の中には薪も含まれていたので冷気が去るまでは大きな火を絶やさずにおいた。
礼を言いながら、急にたくさん食べると体に悪いとコトネに言われて慎重な手つきでパンとスープ、それから今は討伐に出向いているメンバーが用意した食べ物などを摂っていた村人の一人が不意に隙間風に温かさを感じて顔を上げる。
初夏から真冬に戻ったような山はすっかり晴れ渡り、植物は流石に生えては来なかったが気候自体は初夏のそれに戻っていた。
「春を飛ばして初夏が来ましたか……皆さんが討伐を終えたのですね」
食料が思いの外集まったので仲間の分も食事を用意しながらコトネが空の様子を見ていると仲間たちが戻ってきた。
「……これが雑魔の正体だった」
リューが衣類に包んだ白骨をみせると、衣類に見覚えがあったのか村長が顔を曇らせる。
「山で行方不明になった子供たちの物じゃ……山狩りをいくらしても見つからなかった」
「応急手当の心得がある方と一緒に、健康診断を行った後、よければ葬儀のお手伝いをさせていただきますが……」
聖導士のコトネが声をかけるとただ頷きだけが返事として返ってきた。
子供たちの両親なのだろう、何組かの夫婦が遺骨と遺品を受け取り泣き崩れる。
「私たちを恨んで、雑魔になったのでしょうか……」
「歪虚が負のマテリアルを注ぎこんで雑魔にした可能性もある。どちらなのかは、今となっては分かるまいて」
バルバロスが慰めるわけでなく、事実を述べる口調で告げれば嗚咽の声は一層大きくなった。
「山から帰ってこれなくて、心細くて怖い思いをしたでしょうね。
……遅くなりましたが、ご両親のもとへ帰ってこれましたよ。
どうぞこれからは安らかに眠ってください」
健康診断を終えた後は雑魔となってしまった子供たちを弔い、突然の豪雪で歪んでしまった家屋などの修復を手伝うとハンターたちは辞去の言葉を述べた。
村人たちは丁重に礼を述べ、改めて遺族を中心に子供たちを手厚く弔いことを約束し、ハンターたちを見送ったのだった。
遺族の心が本来の季節を取り戻すには、まだしばらく時間がかかる事だろう。
ハンターたちの背中を見送るように、魂を導く鎮魂の鐘が鳴り響いた。
日差しが暖かいを通り越して暑い、になりはじめたころ。
帝国の中でも辺境に近いある村は氷と雪に閉ざされていた。
雪姫や雪童と称される雪の化身に酷似した雑魔が発生したのが原因で、おそらくそれらをすべて討伐するまでは吹雪も氷もやむことも溶けることもないだろう、というのが調査団の出した結論だったため、ハンターが雑魔の討伐へとこの地にやってきたというわけだ。
「初夏にさしかかろうというこの時期に吹雪を起す雑魔ですか。
なんとも季節外れな……といいたいけど、このままでは生活できないまま飢え死にする人が増えていく一方ですね。
では、これ以上被害や犠牲者が出る前に終わらせるとしましょうか」
ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)は雪に覆われた村の様子を見て嘆息しながら雑魔を探す準備を始める。
これがもう少し威力が弱く、ただ気温が下がるだけという性質の雑魔だったら真夏のころなら農作物に影響が出ないなら人気が出たかもしれないが飢え死に、凍死者がでる現状で雑魔の存在を有難がる存在がいるわけもない。
バルバロス(ka2119)は雪山では馬が使えないから、と歩く時に滑らないよう、そして雪に足を取られないよう履物に工夫をしながら、雑魔の気配を辿れないかと髪に覆われて見えにくい目で辺りを見渡す。
「作戦がない以上一気に仕留めなければ不利になるな。叩き潰すしかあるまいて」
「雪女だか雪娘だかしらないが時期外れもいいところだろう。迷惑な」
リュー・グランフェスト(ka2419)は章句良品を詰めるだけ詰んだ馬を村に預ける手配をしながら空気もとい季節を読まずに現れた雑魔へ対して顔をしかめた。
「悪いな、テンペスト。終わったらご馳走してやるからな」
馬に積んできたのは非常食だが日持ちよりも体を暖める食材を中心に。体を暖めるなら、と勧められた生姜などの香辛料もあまりかさばらず、しょうが湯は初期の風邪にいいということもあって多めに持ってきている。
苦労と重荷を背負わせたことを愛馬に詫びて、背をポンポンと叩いたあと捜索隊に合流。
「うわ、本気で降ってやがる」
最初は山の方から雪が降り出した、という村人の情報からひとまず山を捜索することになったが、山に一歩踏み込んだ途端吹き付ける吹雪の度合いがきつくなった。
リューが初夏に降る雪に呆れながらゴーグルをしっかり被って視界の確保に努める。
犬のレイオスを連れていき雑魔の残した気配や匂いを追えないかと解き放つが雪は匂いを消してしまうのか、それとも匂いや気配が雪によって人には感じられない濃度で充満しているのか、レイオスの動きは芳しくない。
「うぐぐぐぐぐ、さ、寒いでござる。忍びとは忍耐の一文字、心頭滅却すれば火もまた涼しでござる。南八幡大菩薩……あぁーっ、涼しくなって余計寒いでござるう!」
藤林みほ(ka2804)が盛大に叫びながらがちがちと震える。
狙うのはこの場合火もまた涼し、のむしろ逆である気がするが……みほ本人は動転しているのか気づいていないのか体を張ったギャグで心だけでもほっこりしようという算段か。
竹の中に炭火を入れた、忍者の道具の胴火などを持ち込み、マントを重ね着して少しでも空気の層を確保しようとしているが寒いものは寒い。
村から少し離れると太陽が元気に活動しているので寒暖差が激しくて余計に寒い。
雪道を歩くために草履に藁を巻いて、その上でかんじき状にしてスリップを防ぐなど、一通りの雪山行軍の知識はあるがそれで寒さを気にせずにいられるかどうかといえば別の話のようだ。
「日本の冬を想定してるのでござって、こんな北アルプスみたいな猛吹雪にげほお!! 対応できるわけがないで御座ろう!」
それでも山登りや崖登りの訓練をしたりしているので吹雪耐性や対処法を持たない一般人よりはマシなレベルなのだから雪山の恐ろしさは生半可な雑魔以上かもしれない。
「極寒がどうしたって? 今の自分の心の寒さが、吹雪ごときに負けるわけないだろう」
最愛の人と音信不通に陥って心が寒い状態になりながらも、その人が辛いなら自分が更なる負担の原因になるわけにはいかないと自らを奮い立たせる屋外(ka3530)だが、寒さ比べをしても我慢大会ではないので特にメリットはない気がする。
彼はこの事件の斡旋人であるルカ・シュバルツエンド(kz0073)に防寒着の用意や復興支援の仲介を頼んできている。
自身も重装馬の引く馬車に飢饉に陥った村の人たちのためにすぐに食べられる食料を可能な限り積んで置いてきた。
コトネ・アラミノ(ka4192)は雑魔討伐には加わらず村人の面倒を見るために村に残ったため、リューが持ち込んだ食料を含め食材を生かして炊き出しももうじき始まる事だろう。
「寒さや吹雪はもともと慣れてるから志願してきたけど……」
北の魔女、と呼ばれるベリト・アルミラ(ka4331)は氷や雪の扱いは慣れているので毛皮のマントを羽織り、防寒をしっかりしてきたが山の中での視界の悪さに思わず眉をひそめた。
彼女も馬に小麦など、こちらは長く消費に回せるものを積んでやってきたが他の討伐メンバーとは違い馬を引きつれてきている。
徒歩での捜索では自分の体力が持たないと思っての行動だったがここまで寒いと馬の生死も危ういところだ。
目標は敵を掃討する前に凍死しないことを第一に。
「人影が見える。随分と軽装のようだが……この猛吹雪をものともしていないところをみると、雑魔か?」
バルバロスの言葉に全員が顔を引き締める。
吹雪のせいで見えにくいが確かに小さな影がいくつか点在し、雪を喜ぶように舞を舞っているような動きを見せていた。
「凍え死ぬ前に遭遇できるとは有り難い。トータルで何体いるか不明、ということだったが……今視界に入っている奴らを叩き潰せば少しはこの吹雪も和らぐだろうて」
獰猛な獣を思わせる野性味にあふれた笑みを浮かべるとバルバロスはその巨体からは信じられない程俊敏に小柄な影たちに突っ込んでいった。
雪姫と雪童になぞらえられた雑魔は白い装束を身に纏った、人に似た姿をしていた。
複数を巻き込める位置に陣取り、バルバロスはラウンドスイングを使って雪の死者たちを薙ぎ払う。
ユーリは一人だけ趣の違う、おそらく雪姫と思われる雑魔を相手取り、討伐完了した際にここにいる雑魔が全てだったら氷が溶けだすことを考慮して、極力氷の上で戦わないように意識して立ち回っていた。
氷を収束させて鞭のように振るう雪姫からの攻撃には体を逸らして回避、距離を詰める勢いを転化してナイフでの攻撃力を高め、雪姫に襲い掛かる。
覚醒することで炎のオーラを身に纏ったリューが盾を構えながら近づき、仲間が攻撃されそうになった場合は庇う。
自身への攻撃は可能な限り回避を試みながら雪童へ近づき、体重を乗せた一撃で転倒を狙い。動きを封じにかかった。
「くらいやがれ!」
攻めの構えからの薙ぎ払いの剣圧で攻撃をしながら士気を高めるように高らかに叫ぶ。
みほは最初手裏剣を投げつけて攻撃を試みたが吹雪を操る敵は風も操るらしく、そらされてしまう。
「ならば、より質量のある鎖鎌だ」
金属製の分銅で雪童に打撃攻撃を与えながら、この環境では走り回ることが難しいためできれば足を止めた状態で手裏剣で敵の戦力を削ぎたいところだが、と思案。
屋外が足場に注意しながら近接し、ロケットナックルで殴り掛かるとそれが致命傷になったのか雪姫の姿が掻き消える。
雪白の肌、というのがふさわしいその肌は本当に雪でできていたらしく吹雪に紛れて消え、後に残ったのは少女の物と推測できる白い衣類と華奢な骨。
「口減らしに捨てられたか、それとも雪山で遭難した死体を歪虚が雑魔に仕立てたか……後で冥福を祈るとしましょう」
ベリトは前衛の仲間たちにファイアーエンチャントを付与し終えると仲間たちが不用意に足を危険区域に踏み込んで川に落ちたりしないよう後方からアドバイスを送る。
「踏み固めた雪は存外滑るものじゃ。氷の上を歩くような感じで重心を垂直に、其方にはクレバスがあるかもしれないから、気を付けた方がいい」
雪と氷に親しんで生きてきたベリトのアドバイスもあって誰も転落や雪にはまったりということがないまま雪姫の周りを取り巻いていた雪童たちを討伐していく。
雪姫がリーダー格で一番強かったらしく、後は攻撃担当を決めて集中攻撃するとあっけないほど雪へと還っていった。
残ったのはやはり、骨と衣類。
「……あの村は他の村と離れた場所にあった。あの村で生まれた子じゃろう。連れて帰ってやらぬか」
反対意見は出ず、吹雪が止んで初夏の太陽が瞬く間に雪や氷を溶かしていく。
雪解け水に足を取られそうになりながら遺品と遺骨を回収し、一同は急いで村に戻ったのだった。
一人村に残って炊き出しを行っていたコトネは野菜たっぷりのスープとパンを作っていた。
パンは前もって生地だけ作って成型しておいたもの。
これならスープを煮込んでいる間にパンを焼くことで焼き立てのパンと温かいスープを同時に供することができる。
「皆さん、温かいパンとスープが出来ましたのでどうぞ召し上がってください」
寒さで体の弱っている村人のもとへは食器を運び、食事の介添えも行う。
支援物資の中には薪も含まれていたので冷気が去るまでは大きな火を絶やさずにおいた。
礼を言いながら、急にたくさん食べると体に悪いとコトネに言われて慎重な手つきでパンとスープ、それから今は討伐に出向いているメンバーが用意した食べ物などを摂っていた村人の一人が不意に隙間風に温かさを感じて顔を上げる。
初夏から真冬に戻ったような山はすっかり晴れ渡り、植物は流石に生えては来なかったが気候自体は初夏のそれに戻っていた。
「春を飛ばして初夏が来ましたか……皆さんが討伐を終えたのですね」
食料が思いの外集まったので仲間の分も食事を用意しながらコトネが空の様子を見ていると仲間たちが戻ってきた。
「……これが雑魔の正体だった」
リューが衣類に包んだ白骨をみせると、衣類に見覚えがあったのか村長が顔を曇らせる。
「山で行方不明になった子供たちの物じゃ……山狩りをいくらしても見つからなかった」
「応急手当の心得がある方と一緒に、健康診断を行った後、よければ葬儀のお手伝いをさせていただきますが……」
聖導士のコトネが声をかけるとただ頷きだけが返事として返ってきた。
子供たちの両親なのだろう、何組かの夫婦が遺骨と遺品を受け取り泣き崩れる。
「私たちを恨んで、雑魔になったのでしょうか……」
「歪虚が負のマテリアルを注ぎこんで雑魔にした可能性もある。どちらなのかは、今となっては分かるまいて」
バルバロスが慰めるわけでなく、事実を述べる口調で告げれば嗚咽の声は一層大きくなった。
「山から帰ってこれなくて、心細くて怖い思いをしたでしょうね。
……遅くなりましたが、ご両親のもとへ帰ってこれましたよ。
どうぞこれからは安らかに眠ってください」
健康診断を終えた後は雑魔となってしまった子供たちを弔い、突然の豪雪で歪んでしまった家屋などの修復を手伝うとハンターたちは辞去の言葉を述べた。
村人たちは丁重に礼を述べ、改めて遺族を中心に子供たちを手厚く弔いことを約束し、ハンターたちを見送ったのだった。
遺族の心が本来の季節を取り戻すには、まだしばらく時間がかかる事だろう。
ハンターたちの背中を見送るように、魂を導く鎮魂の鐘が鳴り響いた。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 4人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/25 18:34:18 |