ゲスト
(ka0000)
蠢く樹木
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2014/07/12 12:00
- 完成日
- 2014/07/15 00:54
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その森には、鬼がいるよ。
鬼に見つかったら、食べられちゃうんだって。
緑色の鱗で自分の身体を隠して、見つけた人を食べるんだよ。
※※※
「……もう、無理だ!」
若い男が激昂したように叫ぶ。
「森に行って帰ってこない、これでもう何人目だ!? もう我慢できない!」
十数名が肩を寄せ合う小さな集落。
この地に定住してから1年ほどが経つが、1つだけ問題があった。
近くにある森、様々な動物がいて、木の実なども取れる事から食料に困る事はない。
……だが、住人達を脅かす雑魔の存在があった。
「あいつが来てから1週間、もう3人が戻ってこないんだぞ!」
「今は森から出てこないが、そのうち集落に襲ってきたらどうする!?」
「……この集落を捨て、別の場所に移動するべきだ」
だけど、捨てるには勿体ない場所だと男性たちもわかっている。
ここを捨て、また食料に脅かされる日々は、誰だって味わいたくないのだから。
「先ほど、雑魔退治をハンターに依頼した」
老人の言葉に、若い男性たちはざわめき始める。
「雑魔さえいなくなれば、わしらはここで暮らす事が出来る」
「ここを捨てる考えは、ハンターの結果を待ってからでも遅くはないだろう」
老人の言葉に、男性たちは……いや、集落に住むすべての者が雑魔退治を成功してくれるよう祈っていた。
リプレイ本文
●雑魔退治のために
ハンター達は依頼された雑魔を退治すべく、問題の集落に来ていた。
「……トカゲ……興味ないけど、依頼だから」
姫凪 紫苑(ka0797)は淡々とした口調で呟く。
「戻って来ない奴がいるって聞いたけど、1人ずつで森に向かったのか、数名で行って返り討ちにあったのか、どっちだ?」
セレナイト・アインツヴァイア(ka0900)は住人達に問い掛ける。
「最初は1人、その後に2人……恐らく生きてないだろう」
若い男性がセレナイトの質問に答える。
「俺は何とか生きて戻れたが、姿が見えないから戦いようもないんだ……」
「ぬう、姿の見えない敵、だと……面白い!」
男性の言葉を聞き、ラグナ・グラウシード(ka1029)が少し楽しげに言葉を返す。
「面白いって……危険だとは思わないのか?」
「騎士は危険を恐れぬ者! 勇猛果敢に進むのみ!」
ドヤァ、と自信満々で答える姿に男性は返す言葉も見つからないらしく唖然としたまま。
「やる気満々か、俺とは正反対だな……」
如月・涼一(ka1734)はラグナを見つめながら、苦笑気味に呟く。
(俺……戦闘とか嫌いなのに、何でこんな所に来てるんだ……? ああ、でも働かないと宿泊費とか食事代稼げないし、働きたくないでござる……働いたら負けだと思うでござる……)
働きたくない病を発症しているらしく、如月は心の中で働かなきゃいけない現実と働きたくない病がせめぎ合っていて、他のハンター達よりも早くバトルが勃発している。
「食べ物いっぱいの森……雑魔なんかに取られたら、もったいないの」
頑張って取り返すよ、と言葉を付け足したのはレナ・クラウステル(ka1953)だった。
「そのためにも、森の中で比較的見通しが良くて、広めの場所…あったら教えて欲しいの」
「広い場所……それなら北側に小屋を建てようと考えている場所があるが……結局雑魔が現れたから小屋を建てられていないんだけどな」
「それなら、今回の目的にうってつけだな、多少そこで暴れる事になるかもしれないが……それでも構わないよな?」
セレナイトが男性に問い掛けると「森を取り返してくれるなら、暴れる事くらい何とも思わないよ」と答えてくる。
そんなハンター達の姿を見ながらレオフォルド・バンディケッド(ka2431)は初依頼のため、昂ぶる心を必死に押さえつけていた。
(いよいよ初依頼……! 一人前の騎士……出来れば騎士団長になれるよう強くなっていくぜ!)
だけど、その時、今回は既に犠牲者が出ている事に気づき、表情を曇らせた。
(今回はもう犠牲者が出てるんだっけ……なら、仇を取ってやるまでだ!)
レオフォルドは拳を強く握り締めながら、自分の心を奮い立たせた。
(……人々が希望を持って生きていくのを壊す事は許せないね)
翡翠(ka2534)は心の中で呟きながら、住人達の姿を見る。
雑魔が現れ、森に入れなくなったせいか大人も子供もやせ細り、このままでは飢え死にする方が早いように見えた。
(食べていない事もだけど、恐怖によってやつれていると言った方が早そうだ……とはいえ、村の外に出たばかりのボクがどれほど力になれるのか些か心配だけど……)
これが上手くいけば自信もつくはずだし、頑張ろう――……翡翠はキュッと唇を噛みしめながら、他のハンター達同様に依頼へのやる気を見せていた。
「森に居着く雑魔か、食料に困らないから居着いている部分もあるんだろうが……理由はどうあれ、穏やかな暮らしを脅かす行いは肯定出来ないな」
蓮(ka2568)は小さなため息と共に言葉を零す。
「依頼を受けたからには、最後まで責任を持って遂行するとしよう」
「お願いします、貴方達でも無理だったならば諦めもついてここを捨てる事が出来ますから」
老人がハンター達に言葉を投げかける。
「……無理じゃない……ちゃんと、私達は依頼をやり遂げるよ」
姫凪が老人に言葉を返し、ハンター達は雑魔が潜む森へと足を踏み入れたのだった。
●捜索開始
今回、ハンター達は迅速に任務を行うべく待ち伏せ班と誘い出し班に分かれて行動する作戦を立てていた。
誘い出し班……姫凪、セレナイト、ラグナ、レオフォルドの4名。
待ち伏せ班……如月、レナ、翡翠、蓮の4名。
それぞれ、与えられた役割を果たすため、行動を開始する。
※待ち伏せ班
「如月さん? 何をしているんですか?」
「……草をすり潰した汁を塗ってる、これで多少は匂いを誤魔化せるかなと思ってさ」
働きたくないと誰よりも思っている如月だが、誰よりも依頼へのやる気を見せている気がするのは気のせいだろうか。
「草っぽい……けど、意味はあるはず!」
身体中から漂う草の香りに眉根を寄せながら如月が呟く。希望者がいれば他のハンター達にも塗るつもりだったが、あいにく希望者はおらず、大量に余った草の汁を持ち歩く事になった。
「如月さんすごいね、レナは精々動物になりきるくらいしか思いつかなかったよ……レナはうさぎ……レナはうさぎ……人参食べたい」
ぐぅ、と可愛らしく鳴るお腹を押さえながら「お、お腹はすいてないよ、うん」とレナは慌てて誤魔化す。
「確か、北側でしたよね? そちら側で待ち伏せして誘い出し班が雑魔を連れてくるのを待ちましょう」
「雑魔が誘い出し班側にいてくれる事を願うばかりだな、こちら側にいたら……4人いるから問題はないだろうが、洒落にならない状況に陥る可能性もあるんだから」
蓮の呟きに、如月、レナ、翡翠も口を閉ざす。
その時、森の反対側から大きな音が聞こえてくる。
「どうやらその心配はいらなかったみたいだな、こっちに来られても困るし、向こう側が無事に発見してくれて助かったよ」
如月は肩を竦めながら苦笑する。
「誘い出し班が来るまで……ここで待機、だね」
レナが呟き、待ち伏せ班は再び気配を殺しながら誘い出し班が誘導して来るのを待つのだった――……。
※誘い出し班
「森は俺の庭みたいなもんだ……気配を感じ取れば、相手を捉えられるはず」
セレナイトは周りを警戒しながら、敵の気配を見逃さないよう心掛ける。
「薄暗いな、これだと背後から襲われても対処しづらいだろう」
ラグナは呟いた後、持参してきていた『ランタン』で視界の悪さを軽減させていた。
「……もしかしたら、今まで襲われた者達もこうしていたのかもしれない。薄暗い中、雑魔は灯りに引き寄せられたという可能性もなくはないからな」
「それならそれでいいんじゃないですか? 探す手間が省けるし……あ、でも奇襲されると困るからいきなり襲われるのは勘弁したいですね」
レオフォルドは『ナッツ』を食べながら、軽く肩を竦める。
「レオフォルド殿、何を食べているんだ?」
「ナッツ。腹が減った時のために持って来たんだよ」
レオフォルドの言葉に「ほぅ、なるほど」とラグナが答える。ラグナ自身も弁当としてサンドイッチを用意しているため、レオフォルドの気持ちが分かるのだろう。
(せっかくだから私も食べながら歩くか……)
ラグナは心の中で呟き、サンドイッチを取り出そうとしたが、どうやら準備だけして荷物の中に入れてくるのを忘れてきたらしい。
(……私の、チーズサンドイッチ)
別な意味でショックを受け、食べられないという状況が余計にラグナの空腹を煽った。
「おーい、食うのはいいけど食べてる時に攻撃されました、なんて状況にはなるなよ?」
セレナイトが苦笑気味に呟き『ナッツ』を食べる姿を見て、姫凪は可愛らしく鳴る自分のお腹を擦っていた。
(……食べ物の話ばかりだと、お腹空く、よ……)
その時、セレナイトが後ろを勢いよく振り返る。
「どうしたんだ?」
「……いや、何となく敵に見つかってるって気がして」
まるで友人が教えてくれたかのような感覚に陥り、セレナイトは周りへの警戒を強める。
「上だ!」
ゆらり、と風もないのに動く『緑色』を見つけ、セレナイトが大きな声で叫んだ。
「セレナイト、よく気づいたね……」
姫凪は『ショートソード』を構え、少し驚いたように言葉を投げかける。
「俺も不思議なんだが、誰かが教えてくれたような……そんな感じだった」
「ふぅん、直感って奴かな? それとも本当に誰かが教えてくれたのかもしれないね」
セレナイトの呟きにレオフォルドが答える。
「何にせよ、突然現れてくれたおかげで『ナッツ』を落としちゃったんだよね。亡くなった方の敵討ちもそうだけど、俺の食べ物の恨みも追加しておこう」
レオフォルドは『グレートソード』を構えながら、引きつった表情で呟く。
「……行く」
姫凪は短く呟き、現れた雑魔に向かって駆けだす。
「さぁ、ついてきてもらうぜ!」
セレナイトは『重藤弓』を構えながら叫ぶ。
「楽しい歌を歌っていると熊は寄って来ないらしいが、今回の雑魔にも通用するかどうかを試したかったんだけどな……」
ややしょんぼりしながら、ラグナは呟いて『ロングソード』を構えた――……。
●合流、リザードマンを倒せ!
「来たか」
誘い出し班が雑魔を誘導して、待ち伏せ班が待っている場所に現れ、蓮が短く呟く。
「俺は臆病だから捕縛とかはちょっと無理」
如月は淡々とした口調で呟いた後『グラディウス』を構えて、雑魔の急所を躊躇う事なく狙う。
「……ちっ、剣を持っているから厄介だな」
攻撃は雑魔の持っている剣で受け止められ、如月は一度距離を取る。
如月が離れた瞬間、蓮が『強弾』を使用して雑魔の足を止めた。
雑魔の動きが止まった後、セレナイトが剣を持つ手に矢を放つ。
「……どこ見てるの? 貴方の相手はこっち」
痛みで呻く雑魔の前に立ち、姫凪は『スラッシュエッジ』を使用して強力な一撃を繰り出した。
だが、雑魔は剣を握る手に力を込め、姫凪を狙って攻撃を行ってくる。
「そうはさせません……!」
雑魔の攻撃をいち早く察知した翡翠は『ホーリーライト』を使用して、雑魔の攻撃を阻む。
「そっちばかりを気にしていていいのか? 背中ががら空きだぞ」
翡翠の攻撃を受け、一時的に足を止めた雑魔の背後に周り、ラグナは『強打』を使用して攻撃を行う。
「悪い鬼さんは、お仕置きが必要……だもんね」
ラグナが離れると同時に、レナは『ファイアアロー』を雑魔に向けて放った。
「あんたに殺された人の仇、取らせてもらうよ」
レオフォルドは『グレートソード』を構えて『強打』で攻撃を仕掛ける。
「絶対に仕留めてやる!」
セレナイトと蓮は雑魔を挟むような陣形を取り、両側から攻撃を行う。
雑魔は剣を振り上げようとしたが、翡翠の『ホーリーライト』とレナの『ファイアアロー』を同時に受けて、剣を地面に落としてしまう。
「蝶のように舞い、ゴキブリのように逃げる! ……が、俺の信条だったりするが、たまには蜂のように刺す事もあるんだぜ……っと! そして逃げる!」
如月は『グラディウス』を勢いよく振り下ろした後、一気に距離を取る。
だが、如月が下がった瞬間、姫凪とレオフォルドが同時に攻撃を仕掛ける。
今回の任務のために作られた即席のメンバーだが、それぞれがお互いを信用しているせいか、上手く連携を取り、雑魔には最低限の動きしか許していない。
「そろそろ終わりにさせてもらおうか」
「……そうだね、このまま長引かせてもボク達にメリットはないからね」
蓮は『オートマチックピストル』を構え、翡翠は『ホーリーライト』で攻撃を行い、近接攻撃を行える者が総攻撃を仕掛け、無事に雑魔退治を終えたのだった――……。
●ご飯食べに行きましょ
「もう安心ですよ、また何かあったらこの見習い騎士と仲間達にご一報ください」
雑魔退治を終えた後、ハンター達は森の見回りまで行っていた。
その結果、特に問題なしと判断して、集落に雑魔退治を終えた事と、森の見回りが完了した事を報告に来ている。
「良かった、本当は森の見回りまでお願いしたかったんですが……さすがに図々しいかと思って言い出せなかったんですよ、貴方達は本当に優しい人達だ」
集落の老人は深く頭を下げながら、ハンター達に何度もお礼の言葉を告げ、ハンター達は少し気恥ずかしい想いを抱えながら、集落を後にした。
「あ~……やっぱりナッツじゃそんなにもたなかったぜ」
レオフォルドはお腹を擦りながら、はぁ、とため息混じりに呟く。
「集落を出る前に腹が鳴ってたら、騎士の面目丸つぶれだったぜ……」
「だったら、飯でも食って帰るか? せっかく集まったんだし、お疲れ様的な意味を込めて飯食いに行くのも悪くないんじゃないか?」
蓮の提案に「……それもそうだな」と全員が賛成するように頷き、本部に報告する前にご飯を食べていく事に決めた。
「……ご飯、美味しい」
何気なく入った店だったが、ハンター達は気に入ったらしく、姫凪に到っては黙々と一心不乱に食べている。
「おいおい、そんなに慌てて食うと喉に詰まらせちまうぞ? 誰も取りゃしないんだから、もう少しゆっくり食えって」
ハムスターのようにご飯を詰め込むレオフォルドを見て、セレナイトが呆れたように言葉を投げかける。
「……でも、ここの料理、美味いな。慌てて食べたくなる気持ちは分からなくもない」
ラグナもそれなりの早さで料理を食べている。チーズサンドイッチを忘れてしまったせいか、彼の空腹は極限に近かった。
「そういえば、何を持って帰ってきたんだ? やけに大荷物だけど……」
隣に座る如月に、ラグナが問い掛ける。
彼だけではなく、他のハンター達も如月の持つ荷物には興味があったらしく、ほぼ全員が一度食べる手を止めた。
「キノコとか香草とか、食べられそうなもんを少しだけ頂いてきたんだよ。いやー、あの場所って真面目に食料の宝庫だわ、まだまだあったけど袋がなかったからこれくらいしか持って帰って来られなかったんだよ」
「……これだけ? ボクには結構な量に見えるんですけど、気のせいですか?」
如月の言葉を聞き、翡翠がやや引きつった笑みを浮かべながら答える。
「キノコ……人参はなかった? レナ、人参が食べたいんだけど……」
うさぎのふりは終わったはずなのに、なぜかレナは人参に拘っている。
「さすがに人参はなかったな、土は悪くなかったし育てられない事もないだろうけど」
「そっか、それじゃ仕方ないの。レナ、何を食べようかな……」
メニューを見ながら、レナが追加注文をする料理を選び始める。
それから2時間後、ハンター達は今回の任務について色々と語り合った後、報告のために本部へと帰還していったのだった――……。
END
ハンター達は依頼された雑魔を退治すべく、問題の集落に来ていた。
「……トカゲ……興味ないけど、依頼だから」
姫凪 紫苑(ka0797)は淡々とした口調で呟く。
「戻って来ない奴がいるって聞いたけど、1人ずつで森に向かったのか、数名で行って返り討ちにあったのか、どっちだ?」
セレナイト・アインツヴァイア(ka0900)は住人達に問い掛ける。
「最初は1人、その後に2人……恐らく生きてないだろう」
若い男性がセレナイトの質問に答える。
「俺は何とか生きて戻れたが、姿が見えないから戦いようもないんだ……」
「ぬう、姿の見えない敵、だと……面白い!」
男性の言葉を聞き、ラグナ・グラウシード(ka1029)が少し楽しげに言葉を返す。
「面白いって……危険だとは思わないのか?」
「騎士は危険を恐れぬ者! 勇猛果敢に進むのみ!」
ドヤァ、と自信満々で答える姿に男性は返す言葉も見つからないらしく唖然としたまま。
「やる気満々か、俺とは正反対だな……」
如月・涼一(ka1734)はラグナを見つめながら、苦笑気味に呟く。
(俺……戦闘とか嫌いなのに、何でこんな所に来てるんだ……? ああ、でも働かないと宿泊費とか食事代稼げないし、働きたくないでござる……働いたら負けだと思うでござる……)
働きたくない病を発症しているらしく、如月は心の中で働かなきゃいけない現実と働きたくない病がせめぎ合っていて、他のハンター達よりも早くバトルが勃発している。
「食べ物いっぱいの森……雑魔なんかに取られたら、もったいないの」
頑張って取り返すよ、と言葉を付け足したのはレナ・クラウステル(ka1953)だった。
「そのためにも、森の中で比較的見通しが良くて、広めの場所…あったら教えて欲しいの」
「広い場所……それなら北側に小屋を建てようと考えている場所があるが……結局雑魔が現れたから小屋を建てられていないんだけどな」
「それなら、今回の目的にうってつけだな、多少そこで暴れる事になるかもしれないが……それでも構わないよな?」
セレナイトが男性に問い掛けると「森を取り返してくれるなら、暴れる事くらい何とも思わないよ」と答えてくる。
そんなハンター達の姿を見ながらレオフォルド・バンディケッド(ka2431)は初依頼のため、昂ぶる心を必死に押さえつけていた。
(いよいよ初依頼……! 一人前の騎士……出来れば騎士団長になれるよう強くなっていくぜ!)
だけど、その時、今回は既に犠牲者が出ている事に気づき、表情を曇らせた。
(今回はもう犠牲者が出てるんだっけ……なら、仇を取ってやるまでだ!)
レオフォルドは拳を強く握り締めながら、自分の心を奮い立たせた。
(……人々が希望を持って生きていくのを壊す事は許せないね)
翡翠(ka2534)は心の中で呟きながら、住人達の姿を見る。
雑魔が現れ、森に入れなくなったせいか大人も子供もやせ細り、このままでは飢え死にする方が早いように見えた。
(食べていない事もだけど、恐怖によってやつれていると言った方が早そうだ……とはいえ、村の外に出たばかりのボクがどれほど力になれるのか些か心配だけど……)
これが上手くいけば自信もつくはずだし、頑張ろう――……翡翠はキュッと唇を噛みしめながら、他のハンター達同様に依頼へのやる気を見せていた。
「森に居着く雑魔か、食料に困らないから居着いている部分もあるんだろうが……理由はどうあれ、穏やかな暮らしを脅かす行いは肯定出来ないな」
蓮(ka2568)は小さなため息と共に言葉を零す。
「依頼を受けたからには、最後まで責任を持って遂行するとしよう」
「お願いします、貴方達でも無理だったならば諦めもついてここを捨てる事が出来ますから」
老人がハンター達に言葉を投げかける。
「……無理じゃない……ちゃんと、私達は依頼をやり遂げるよ」
姫凪が老人に言葉を返し、ハンター達は雑魔が潜む森へと足を踏み入れたのだった。
●捜索開始
今回、ハンター達は迅速に任務を行うべく待ち伏せ班と誘い出し班に分かれて行動する作戦を立てていた。
誘い出し班……姫凪、セレナイト、ラグナ、レオフォルドの4名。
待ち伏せ班……如月、レナ、翡翠、蓮の4名。
それぞれ、与えられた役割を果たすため、行動を開始する。
※待ち伏せ班
「如月さん? 何をしているんですか?」
「……草をすり潰した汁を塗ってる、これで多少は匂いを誤魔化せるかなと思ってさ」
働きたくないと誰よりも思っている如月だが、誰よりも依頼へのやる気を見せている気がするのは気のせいだろうか。
「草っぽい……けど、意味はあるはず!」
身体中から漂う草の香りに眉根を寄せながら如月が呟く。希望者がいれば他のハンター達にも塗るつもりだったが、あいにく希望者はおらず、大量に余った草の汁を持ち歩く事になった。
「如月さんすごいね、レナは精々動物になりきるくらいしか思いつかなかったよ……レナはうさぎ……レナはうさぎ……人参食べたい」
ぐぅ、と可愛らしく鳴るお腹を押さえながら「お、お腹はすいてないよ、うん」とレナは慌てて誤魔化す。
「確か、北側でしたよね? そちら側で待ち伏せして誘い出し班が雑魔を連れてくるのを待ちましょう」
「雑魔が誘い出し班側にいてくれる事を願うばかりだな、こちら側にいたら……4人いるから問題はないだろうが、洒落にならない状況に陥る可能性もあるんだから」
蓮の呟きに、如月、レナ、翡翠も口を閉ざす。
その時、森の反対側から大きな音が聞こえてくる。
「どうやらその心配はいらなかったみたいだな、こっちに来られても困るし、向こう側が無事に発見してくれて助かったよ」
如月は肩を竦めながら苦笑する。
「誘い出し班が来るまで……ここで待機、だね」
レナが呟き、待ち伏せ班は再び気配を殺しながら誘い出し班が誘導して来るのを待つのだった――……。
※誘い出し班
「森は俺の庭みたいなもんだ……気配を感じ取れば、相手を捉えられるはず」
セレナイトは周りを警戒しながら、敵の気配を見逃さないよう心掛ける。
「薄暗いな、これだと背後から襲われても対処しづらいだろう」
ラグナは呟いた後、持参してきていた『ランタン』で視界の悪さを軽減させていた。
「……もしかしたら、今まで襲われた者達もこうしていたのかもしれない。薄暗い中、雑魔は灯りに引き寄せられたという可能性もなくはないからな」
「それならそれでいいんじゃないですか? 探す手間が省けるし……あ、でも奇襲されると困るからいきなり襲われるのは勘弁したいですね」
レオフォルドは『ナッツ』を食べながら、軽く肩を竦める。
「レオフォルド殿、何を食べているんだ?」
「ナッツ。腹が減った時のために持って来たんだよ」
レオフォルドの言葉に「ほぅ、なるほど」とラグナが答える。ラグナ自身も弁当としてサンドイッチを用意しているため、レオフォルドの気持ちが分かるのだろう。
(せっかくだから私も食べながら歩くか……)
ラグナは心の中で呟き、サンドイッチを取り出そうとしたが、どうやら準備だけして荷物の中に入れてくるのを忘れてきたらしい。
(……私の、チーズサンドイッチ)
別な意味でショックを受け、食べられないという状況が余計にラグナの空腹を煽った。
「おーい、食うのはいいけど食べてる時に攻撃されました、なんて状況にはなるなよ?」
セレナイトが苦笑気味に呟き『ナッツ』を食べる姿を見て、姫凪は可愛らしく鳴る自分のお腹を擦っていた。
(……食べ物の話ばかりだと、お腹空く、よ……)
その時、セレナイトが後ろを勢いよく振り返る。
「どうしたんだ?」
「……いや、何となく敵に見つかってるって気がして」
まるで友人が教えてくれたかのような感覚に陥り、セレナイトは周りへの警戒を強める。
「上だ!」
ゆらり、と風もないのに動く『緑色』を見つけ、セレナイトが大きな声で叫んだ。
「セレナイト、よく気づいたね……」
姫凪は『ショートソード』を構え、少し驚いたように言葉を投げかける。
「俺も不思議なんだが、誰かが教えてくれたような……そんな感じだった」
「ふぅん、直感って奴かな? それとも本当に誰かが教えてくれたのかもしれないね」
セレナイトの呟きにレオフォルドが答える。
「何にせよ、突然現れてくれたおかげで『ナッツ』を落としちゃったんだよね。亡くなった方の敵討ちもそうだけど、俺の食べ物の恨みも追加しておこう」
レオフォルドは『グレートソード』を構えながら、引きつった表情で呟く。
「……行く」
姫凪は短く呟き、現れた雑魔に向かって駆けだす。
「さぁ、ついてきてもらうぜ!」
セレナイトは『重藤弓』を構えながら叫ぶ。
「楽しい歌を歌っていると熊は寄って来ないらしいが、今回の雑魔にも通用するかどうかを試したかったんだけどな……」
ややしょんぼりしながら、ラグナは呟いて『ロングソード』を構えた――……。
●合流、リザードマンを倒せ!
「来たか」
誘い出し班が雑魔を誘導して、待ち伏せ班が待っている場所に現れ、蓮が短く呟く。
「俺は臆病だから捕縛とかはちょっと無理」
如月は淡々とした口調で呟いた後『グラディウス』を構えて、雑魔の急所を躊躇う事なく狙う。
「……ちっ、剣を持っているから厄介だな」
攻撃は雑魔の持っている剣で受け止められ、如月は一度距離を取る。
如月が離れた瞬間、蓮が『強弾』を使用して雑魔の足を止めた。
雑魔の動きが止まった後、セレナイトが剣を持つ手に矢を放つ。
「……どこ見てるの? 貴方の相手はこっち」
痛みで呻く雑魔の前に立ち、姫凪は『スラッシュエッジ』を使用して強力な一撃を繰り出した。
だが、雑魔は剣を握る手に力を込め、姫凪を狙って攻撃を行ってくる。
「そうはさせません……!」
雑魔の攻撃をいち早く察知した翡翠は『ホーリーライト』を使用して、雑魔の攻撃を阻む。
「そっちばかりを気にしていていいのか? 背中ががら空きだぞ」
翡翠の攻撃を受け、一時的に足を止めた雑魔の背後に周り、ラグナは『強打』を使用して攻撃を行う。
「悪い鬼さんは、お仕置きが必要……だもんね」
ラグナが離れると同時に、レナは『ファイアアロー』を雑魔に向けて放った。
「あんたに殺された人の仇、取らせてもらうよ」
レオフォルドは『グレートソード』を構えて『強打』で攻撃を仕掛ける。
「絶対に仕留めてやる!」
セレナイトと蓮は雑魔を挟むような陣形を取り、両側から攻撃を行う。
雑魔は剣を振り上げようとしたが、翡翠の『ホーリーライト』とレナの『ファイアアロー』を同時に受けて、剣を地面に落としてしまう。
「蝶のように舞い、ゴキブリのように逃げる! ……が、俺の信条だったりするが、たまには蜂のように刺す事もあるんだぜ……っと! そして逃げる!」
如月は『グラディウス』を勢いよく振り下ろした後、一気に距離を取る。
だが、如月が下がった瞬間、姫凪とレオフォルドが同時に攻撃を仕掛ける。
今回の任務のために作られた即席のメンバーだが、それぞれがお互いを信用しているせいか、上手く連携を取り、雑魔には最低限の動きしか許していない。
「そろそろ終わりにさせてもらおうか」
「……そうだね、このまま長引かせてもボク達にメリットはないからね」
蓮は『オートマチックピストル』を構え、翡翠は『ホーリーライト』で攻撃を行い、近接攻撃を行える者が総攻撃を仕掛け、無事に雑魔退治を終えたのだった――……。
●ご飯食べに行きましょ
「もう安心ですよ、また何かあったらこの見習い騎士と仲間達にご一報ください」
雑魔退治を終えた後、ハンター達は森の見回りまで行っていた。
その結果、特に問題なしと判断して、集落に雑魔退治を終えた事と、森の見回りが完了した事を報告に来ている。
「良かった、本当は森の見回りまでお願いしたかったんですが……さすがに図々しいかと思って言い出せなかったんですよ、貴方達は本当に優しい人達だ」
集落の老人は深く頭を下げながら、ハンター達に何度もお礼の言葉を告げ、ハンター達は少し気恥ずかしい想いを抱えながら、集落を後にした。
「あ~……やっぱりナッツじゃそんなにもたなかったぜ」
レオフォルドはお腹を擦りながら、はぁ、とため息混じりに呟く。
「集落を出る前に腹が鳴ってたら、騎士の面目丸つぶれだったぜ……」
「だったら、飯でも食って帰るか? せっかく集まったんだし、お疲れ様的な意味を込めて飯食いに行くのも悪くないんじゃないか?」
蓮の提案に「……それもそうだな」と全員が賛成するように頷き、本部に報告する前にご飯を食べていく事に決めた。
「……ご飯、美味しい」
何気なく入った店だったが、ハンター達は気に入ったらしく、姫凪に到っては黙々と一心不乱に食べている。
「おいおい、そんなに慌てて食うと喉に詰まらせちまうぞ? 誰も取りゃしないんだから、もう少しゆっくり食えって」
ハムスターのようにご飯を詰め込むレオフォルドを見て、セレナイトが呆れたように言葉を投げかける。
「……でも、ここの料理、美味いな。慌てて食べたくなる気持ちは分からなくもない」
ラグナもそれなりの早さで料理を食べている。チーズサンドイッチを忘れてしまったせいか、彼の空腹は極限に近かった。
「そういえば、何を持って帰ってきたんだ? やけに大荷物だけど……」
隣に座る如月に、ラグナが問い掛ける。
彼だけではなく、他のハンター達も如月の持つ荷物には興味があったらしく、ほぼ全員が一度食べる手を止めた。
「キノコとか香草とか、食べられそうなもんを少しだけ頂いてきたんだよ。いやー、あの場所って真面目に食料の宝庫だわ、まだまだあったけど袋がなかったからこれくらいしか持って帰って来られなかったんだよ」
「……これだけ? ボクには結構な量に見えるんですけど、気のせいですか?」
如月の言葉を聞き、翡翠がやや引きつった笑みを浮かべながら答える。
「キノコ……人参はなかった? レナ、人参が食べたいんだけど……」
うさぎのふりは終わったはずなのに、なぜかレナは人参に拘っている。
「さすがに人参はなかったな、土は悪くなかったし育てられない事もないだろうけど」
「そっか、それじゃ仕方ないの。レナ、何を食べようかな……」
メニューを見ながら、レナが追加注文をする料理を選び始める。
それから2時間後、ハンター達は今回の任務について色々と語り合った後、報告のために本部へと帰還していったのだった――……。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
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面白かった! | 8人 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/07 21:52:39 |
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相談板 翡翠(ka2534) エルフ|14才|男性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2014/07/12 04:28:23 |