ゲスト
(ka0000)
【不動】取り戻して、希望
マスター:四月朔日さくら

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~7人
- サポート
- 0~5人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/05/27 19:00
- 完成日
- 2015/06/02 06:22
このシナリオは2日間納期が延長されています。
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
――開拓地ホープ。
そこは聖地奪還の戦闘の影響で、いまだ無残な爪痕が残されている。
ハンターの一部も、以前ここでの治療を余儀なくされているが、満足な治療が出来ているかというと――なかなか難しいというのが現実だ。
それでも、ゲルタ・シュヴァイツァー(kz0051)をはじめとする面々は、出来る限りの支援を行ってきた。
……ただ、それも随分限界に近い。
現地に残っている医療班だけではとてもじゃないが手数が足りず、屋根のある建物が減ってしまっていることでの諸々の『安心感』を傷ついたハンターたちが手に入れることは難しい。
「……こうなったら、やっぱり手を貸して貰うほか無いわね」
誰に?
――ハンターに。
●
「ホープの状況が厳しいと言うことで、お手伝いを募集します」
ハンターズオフィスの職員がそう言った。
「今、ホープではとにかく人手不足と言うことで、様々なことをこなしてくれる方が必要だそうです」
先だっての戦いの結果を考えればわかるでしょう? 職員はそう言って、小さく息をつく。
「崩壊した建造物、まだ動けないでいる負傷したハンター……事態はかなり厳しいと思われます。それでも手伝ってくれる方は、是非」
職員の差し出したノートには、現在の被害状況などが詳細に記載されていた。
――開拓地ホープ。
そこは聖地奪還の戦闘の影響で、いまだ無残な爪痕が残されている。
ハンターの一部も、以前ここでの治療を余儀なくされているが、満足な治療が出来ているかというと――なかなか難しいというのが現実だ。
それでも、ゲルタ・シュヴァイツァー(kz0051)をはじめとする面々は、出来る限りの支援を行ってきた。
……ただ、それも随分限界に近い。
現地に残っている医療班だけではとてもじゃないが手数が足りず、屋根のある建物が減ってしまっていることでの諸々の『安心感』を傷ついたハンターたちが手に入れることは難しい。
「……こうなったら、やっぱり手を貸して貰うほか無いわね」
誰に?
――ハンターに。
●
「ホープの状況が厳しいと言うことで、お手伝いを募集します」
ハンターズオフィスの職員がそう言った。
「今、ホープではとにかく人手不足と言うことで、様々なことをこなしてくれる方が必要だそうです」
先だっての戦いの結果を考えればわかるでしょう? 職員はそう言って、小さく息をつく。
「崩壊した建造物、まだ動けないでいる負傷したハンター……事態はかなり厳しいと思われます。それでも手伝ってくれる方は、是非」
職員の差し出したノートには、現在の被害状況などが詳細に記載されていた。
リプレイ本文
●
「これは……」
ホープを訪れたことのあるハンターもそうでない者も、その光景に息をのんだ。
状況は困窮を極める――依頼に書かれていたことを目の当たりにして、言葉が出なかったのだ。
「でも、流れ弾等に気にせずにすむ作業は久久です」
そうポジティブにとらえる静架(ka0387)は、安全用のヘルメットも被っている。
「そうだな……滅んでないなら再建は出来る。希望は潰えていない」
レイス(ka1541)も頷くと、その横のエイル・メヌエット(ka2807)も同様に。
「生命と希望を繋ぐ為に出来ることは何でもするわ」
そうでしょう、と出迎えてくれたゲルタ・シュヴァイツァー(kz0051)に微笑みかける。
「皆ありがとう。やることだけは沢山あるから、きりきり働いて貰うことになるけど」
ゲルタの言葉に頷くのはカール・フォルシアン(ka3702)。
「希望は潰えないから希望……その灯を護る為出来る精一杯のことをしたいです」
リアルブルー出身のまだ幼い少年ながら、軍医だった両親の影響もあり医療の心得は身についている。今回はきっと頼りになるだろう。
(ボクも……無力なままの自分ではいたくないから)
カールと年格好の近いセツァルリヒト(ka3807)も、掌をきゅっと握りしめ、決意を密やかに顕す。
(そうさ、あのときとは違う……全てが失われた訳じゃ、ない)
幼き日を思い出すもすぐにそれを振り払うエアルドフリス(ka1856)。いまは仲間も、呼びかけに応える友人もいるのだから。
全力を尽くすのが、ハンターたちの使命だ。
●
とるもとりあえず行うのはトリアージ。医療の心得があるメンバーはさっと白衣を身につけて負傷者の様子をチェックして回る。重傷の人間は多くないが、動かすのは難しい――という感じの患者が多いことがおおよそ把握出来た。
その一方、力仕事やその他の手伝いに回るのはレイスや静架といった面々。ゲルタに頼んで魔導トラックの使用を許可して貰い、要塞都市から必要な資材を運んでもらう手伝いもしてもらう。ジュード・エアハート(ka0410)は近郊の部族などを回ることも提案した。近くから必要な人材や物資が確保出来ればたしかに万々歳である。
「公共事業だし、損はないはずだから」
それに大量発注となれば単価も下げられる。ジュードは翡翠(ka2534)と連携して、ホープへの物資輸送関係を引き受けることになった。翡翠はホープまで荷物を運ぶ担当だ。連絡担当はリュカ(ka3828)、いつかは訪れたかったと言うホープの為に身を粉にして尽力するつもりらしい。
『ホープからの使者』である『ハンター』という立場は、決してマイナスに響かない。むしろこれからのことも考えれば、ハンターを頼ることもあるだろうと判断して、その立場を有効的に使うつもりだった。
レイスはと言うと、以前に作った設計図や周辺集落の地図を手に、運搬及び連絡担当の三人に、上手くいくように頼み込んでいた。
それと同時に、ホープに所在を落ち着けたと思われる人や今回の事件以降携わっている者、様々に声をかけて、いまホープにどれだけの人間がいるかをざっくりと把握する。同時に彼らが訴える不足しがちな資材も確認した。静架はさっそくがれきの撤去にも当たっている。小柄だがしっかりした体格の『なんでも屋』、ホープを一度見てみたかったというジルボ(ka1732)もその手伝いに当たった。
「あと、ライフラインの復旧も大事ですからね」
また状況が状況だけに、汚物の垂れ流しが伝染病を蔓延させる可能性を危惧し、それを処理する為の浄化槽の設置を提案すると、諸手を挙げて喜ばれた。わずかに饐えたにおいがするのは、やはりそう言うもののためだったらしい。
更に炊事場の確認をすると、こちらもある程度のダメージを受けている。が霊を使って竈を簡単に作るとと、気づけばもう夕方になっていた。
「出来ることは少ないけれど、このくらいは担当させてね」
ルナ・レンフィールド(ka1565)がにっこり笑う。人数も考え、食事は一食につき二回作ることにした。手間のかからず、飽きも来ず、そして栄養価の高いものを――言ってみるのは簡単だが、やるのはやはり難しい。それでも運搬班が持ってきてくれた干し肉や穀物――以前作っていた保管庫は既に底をついていた――で温かいリゾットを作ってみれば、喜んで食べてくれる人々がいて、彼らの『ありがとう』はルナだけでなくハンターたちの支えとなったのであった。
エアルドフリスはおおよその状況を見てざっくりとメンバーの分担表を作った。悪筆なのは目をつむって貰うことにしよう。
他にも、警備に関しては怠ってはいけない。それを怠ったがゆえのホープの現状――ともいえるからだ。
●
翌日からも大忙しなのには変わりない。
医療を担当するのはゲルタをはじめとして、エイル、エアルドフリス、カール、それにセツァルリヒトといった志願者たち。
がれきの処分や建物の最高、ライフラインの確保に尽力するのは静架、レイス、ジルボにドワーフの少女エルディラ(ka3982)。
(……それにしても集ったものに悲壮感は皆無じゃな。この地の名に相応しいではないか)
エルディラはそう考えて笑う。
ルナは主に炊き出しやその他の手伝いに回り、ジュード、翡翠、リュカは運搬などに本格的に携わることになった。
魔導トラックもこの日には到着し、さっそく不足しがちだった薬剤や食料品がいくらか補給される。そして彼らにつきあうようにして、ジュードや翡翠もホープの外へ、必要なものを探しに向かった。
これからが正念場――ハンターたちもそれを理解しているのだろう、表情が引き締まる。
ライフラインの確保を優先という静架は、いままで使われていた下水や排水の設備の状況を確認する。衛生環境の悪化は、前日も言ったとおりに伝染病の温床になり得るのだ。手を抜くことは許されない。
レイスのほうはと言うと、まずは診療所と集会所の状況を確認し、直すべきところを丁寧に確認する。この二ヶ所は何を置いても修復を優先すべき場所だった。集会所は広さもあることから、大勢の人間を収容することが出来る。
診療所はというと清潔第一、変なほこりなどが入り込みやすい状況では困ってしまう。これらの再建が目下の優先事項だった。
ジルボとエルディラはそれぞれ自分の手が必要そうな場所の手伝いに入る。がれきの撤去はもちろんだが、ほかにも諸々の現在状況の確認や必要なものなどをピックアップしていく。小柄な二人は周囲に溶け込みやすく、怪我人たちも心やすく口を開いてくれるのだった。
いっぽう医療班はというと、前日のうちに行なったトリアージの、重傷者を優先的に収容していくことにした。
診療所となっていた建物の修復も必要なので、とりあえず被害の少ない建物に天幕を張り、臨時の診療所としたのである。
「怪我の状態は……良くない人がやっぱり多いみたいね」
熾烈な戦いの後に満足な治療も出来ぬまま放置され、雑菌が入ったり等で容体が悪化した人も少なくない。エイルはため息をついたがすぐに顔を上げる。
「薬に関しては俺に任せといて」
エアルドフリスの本職は薬師だ。近くの草原に薬効のある植物が内科を確認したところ、いくらか見つけられそうだと頷いていた。以前に来たときもそういった知恵でしのいできたのだから、今回も出来るだろう。
カールはと言うと、土の上で寝転んでいるよりはと板と藁の上にビニールシートを敷いた簡易寝台を作って重傷者から順に寝かせていく。
また清潔な医療器具を使える環境を整える為に水や布などの綺麗なものを準備し、水に関してはスキルも存分に活用して清潔であるよう心がける。
ローテーションも、エアルドフリスが計画してくれたおかげデ十二分に休憩を挟むことが出来る。
また、魔導トラックが一日に二回ほど必要な資材を運んでくれるのも大いにありがたかった。何しろ足りないものが多すぎて、困り果てるばかりだったのだから。
セツァルリヒトもまた、治療の手伝いをかってでているが、こちらはすこし勝手が違う。
彼は軽傷者の治療を重点的に行なうようにしていたのだ。こうすることで、がれき撤去や仮設住居の建築など、つまり足りない人手を補う為の手段とすることも出来る。むろん軽傷者といえども油断は出来ないが、それでももともとの体力に優れたハンターも多かったことが幸いして、ある程度の治療をしてやると身体の中でエネルギーをもてあましていたハンター、それに周囲の部族たちの協力もあってホープの再興にも少しずつだが光が見えてきた、そう感じ取れるようになっていた。
●
「はいっ、今日はシチューですよ」
料理の担当はルナだ。と言ってもむろんそれだけにとどまらず、必要なものの洗濯や怪我人たちへのちょっとした話し相手など、やれることは進んで行なっている。
熱を発症している患者には胃に優しいおかゆ、作業をしている人には一口大で口に運びやすい握り飯などを用意してある。
「本当はね、同盟からうわさのまめしだっけ、あれの種を試験的に栽培する話も出てはいるのよ。もっとも、この状態じゃあまだ先になりそうだけれど」
ゲルタがすこし寂しそうな顔で、そんなことを呟く。
そうだ、ここは本来ならもっと活気ある開拓地として作られたはずの場所なのだ。……いまはこうしてやっとこ生活するような状況だが、いつかかならず入植者が訪れ、町としての機能を作って行くに違いない――そんな場所なのだ。
「そのためにも頑張らなきゃいけませんね!」
ルナが両手できゅっと拳を作る。それからそうだ、と思いだしたように荷物からリュートを取り出してきた。
ぽろん、ぽろろん、ぽろん……
やわらかく、心の和む旋律が、響き渡る。その音に気づいたのか、軽傷のハンターたちも近づいてきた。あっという間にルナの周りには人垣が出来る。
(辛いこともまだまだ多いだろうけれど、せめてこのひとときは安らぎを――)
少女の願いがこもった演奏は、ささくれた人々の心をそっと癒やしてくれたのであった。
●
「資材はだいたい揃えられたようですね」
少なくとも必要最小限は。――三日目の夜に届いた荷物を確認しながら、カールが頷く。
診療所、それから集会所の復旧の際はレイスが自ら先頭に立って作業を行なった。以前の建設にも一役買っているレイスである、彼の姿に見覚えのあるハンターも少なくなかった。
セツァルリヒトのアイデアで人材も増えたとは言え、五体満足で動けるのはやはりハンターズオフィスから派遣されてきたハンターたち。ゲルタも元気そうに振る舞ってはいるものの、やはりやや憔悴しているのは隠せないのが現実だった。
さくさくと作業を進めなければ、どこかで限界が訪れる。
「水平器というのがリアルブルーにはあるんですけどね」
静架がそう言いながら水を汲んだ硝子コップで水平かを確認し、基礎部分の位置取りを再確認する。
「歪みがあれば、またすぐにガタが来ますからね」
「なるほど、もっともだな」
レイスもリアルブルーの建築技術を興味深そうに眺めつつ、資材の仕分けなどを行なう。そして、水平と垂直がだいじょうぶと判断された場所から順に再建の準備にかかるのだ。
必要なものは少なくない。ハンターだけでは手が足りない。が、そこは周囲の部族に情報を流してくれていたリュカや翡翠、ジュードらのおかげで近隣の部族からも手を借りることが出来た。
「助け合いの精神というのは大切だな」
レイスはわずかに頬を緩めた。感謝から来る、優しい笑顔だった。
●
夜は交替で外を監視する。
万が一の襲撃があったら、自分たちが対応せねばならないのだ。
たとえ怖くても、それが役目。
(建物のほうが目処がついたら、監視櫓も再建する必要があるな……)
レイスはぼんやりとそう思う。
いや、それは誰もが思っていることだった。
昏い夜を恐れる人々の為に、セツァルリヒトも光の魔法を使って明るくしようと心がける。
彼らに出来ることは、そう言う【光をともす】ことだから。
「……そういえば、犠牲者の方は――」
それは六日目の夕刻。
エイルはそれとなくゲルタに聞き出し、そしてその場所へと全員で向かった。
再建作業のほうはおおかた目処もついている。この地に残っているハンターや近隣部族の住民たちの力であとは代替出来るだろうところまで復旧が成っていたので、ハンターたちはその場所に向かったのだ。
【そこ】は、しずかだった。静寂が包み込んでいた。
しかし真新しい土の掘り返したあとがあって、それがそうであることを顕著に示していた。
そこに、彼らは小さな石碑を作る。それは慰霊碑と言うべきものだった。
エイルはそこにそっとロザリオを捧げ、ハンターたちは瞑目する。
(――どうか土が貴方にとって軽くありますように)
その祈りは届くだろうか。いや、届いて貰わなくては成らない祈りだった。
●
やがて終わりの日がやってくる。
最低限の再建はなった。まだ足りないことも多いが、生活に支障は無い。
必要なものも、頻度はどうかわからないが確保出来るように話をつけてある。人材についても同様だ。
まだ苦労はあるだろうが、その苦労をこえてこそ、道はまた開かれる。
だいじょうぶ。
人は強い存在なのだから。
転んでもまた歩き出せるのだから――。
「これは……」
ホープを訪れたことのあるハンターもそうでない者も、その光景に息をのんだ。
状況は困窮を極める――依頼に書かれていたことを目の当たりにして、言葉が出なかったのだ。
「でも、流れ弾等に気にせずにすむ作業は久久です」
そうポジティブにとらえる静架(ka0387)は、安全用のヘルメットも被っている。
「そうだな……滅んでないなら再建は出来る。希望は潰えていない」
レイス(ka1541)も頷くと、その横のエイル・メヌエット(ka2807)も同様に。
「生命と希望を繋ぐ為に出来ることは何でもするわ」
そうでしょう、と出迎えてくれたゲルタ・シュヴァイツァー(kz0051)に微笑みかける。
「皆ありがとう。やることだけは沢山あるから、きりきり働いて貰うことになるけど」
ゲルタの言葉に頷くのはカール・フォルシアン(ka3702)。
「希望は潰えないから希望……その灯を護る為出来る精一杯のことをしたいです」
リアルブルー出身のまだ幼い少年ながら、軍医だった両親の影響もあり医療の心得は身についている。今回はきっと頼りになるだろう。
(ボクも……無力なままの自分ではいたくないから)
カールと年格好の近いセツァルリヒト(ka3807)も、掌をきゅっと握りしめ、決意を密やかに顕す。
(そうさ、あのときとは違う……全てが失われた訳じゃ、ない)
幼き日を思い出すもすぐにそれを振り払うエアルドフリス(ka1856)。いまは仲間も、呼びかけに応える友人もいるのだから。
全力を尽くすのが、ハンターたちの使命だ。
●
とるもとりあえず行うのはトリアージ。医療の心得があるメンバーはさっと白衣を身につけて負傷者の様子をチェックして回る。重傷の人間は多くないが、動かすのは難しい――という感じの患者が多いことがおおよそ把握出来た。
その一方、力仕事やその他の手伝いに回るのはレイスや静架といった面々。ゲルタに頼んで魔導トラックの使用を許可して貰い、要塞都市から必要な資材を運んでもらう手伝いもしてもらう。ジュード・エアハート(ka0410)は近郊の部族などを回ることも提案した。近くから必要な人材や物資が確保出来ればたしかに万々歳である。
「公共事業だし、損はないはずだから」
それに大量発注となれば単価も下げられる。ジュードは翡翠(ka2534)と連携して、ホープへの物資輸送関係を引き受けることになった。翡翠はホープまで荷物を運ぶ担当だ。連絡担当はリュカ(ka3828)、いつかは訪れたかったと言うホープの為に身を粉にして尽力するつもりらしい。
『ホープからの使者』である『ハンター』という立場は、決してマイナスに響かない。むしろこれからのことも考えれば、ハンターを頼ることもあるだろうと判断して、その立場を有効的に使うつもりだった。
レイスはと言うと、以前に作った設計図や周辺集落の地図を手に、運搬及び連絡担当の三人に、上手くいくように頼み込んでいた。
それと同時に、ホープに所在を落ち着けたと思われる人や今回の事件以降携わっている者、様々に声をかけて、いまホープにどれだけの人間がいるかをざっくりと把握する。同時に彼らが訴える不足しがちな資材も確認した。静架はさっそくがれきの撤去にも当たっている。小柄だがしっかりした体格の『なんでも屋』、ホープを一度見てみたかったというジルボ(ka1732)もその手伝いに当たった。
「あと、ライフラインの復旧も大事ですからね」
また状況が状況だけに、汚物の垂れ流しが伝染病を蔓延させる可能性を危惧し、それを処理する為の浄化槽の設置を提案すると、諸手を挙げて喜ばれた。わずかに饐えたにおいがするのは、やはりそう言うもののためだったらしい。
更に炊事場の確認をすると、こちらもある程度のダメージを受けている。が霊を使って竈を簡単に作るとと、気づけばもう夕方になっていた。
「出来ることは少ないけれど、このくらいは担当させてね」
ルナ・レンフィールド(ka1565)がにっこり笑う。人数も考え、食事は一食につき二回作ることにした。手間のかからず、飽きも来ず、そして栄養価の高いものを――言ってみるのは簡単だが、やるのはやはり難しい。それでも運搬班が持ってきてくれた干し肉や穀物――以前作っていた保管庫は既に底をついていた――で温かいリゾットを作ってみれば、喜んで食べてくれる人々がいて、彼らの『ありがとう』はルナだけでなくハンターたちの支えとなったのであった。
エアルドフリスはおおよその状況を見てざっくりとメンバーの分担表を作った。悪筆なのは目をつむって貰うことにしよう。
他にも、警備に関しては怠ってはいけない。それを怠ったがゆえのホープの現状――ともいえるからだ。
●
翌日からも大忙しなのには変わりない。
医療を担当するのはゲルタをはじめとして、エイル、エアルドフリス、カール、それにセツァルリヒトといった志願者たち。
がれきの処分や建物の最高、ライフラインの確保に尽力するのは静架、レイス、ジルボにドワーフの少女エルディラ(ka3982)。
(……それにしても集ったものに悲壮感は皆無じゃな。この地の名に相応しいではないか)
エルディラはそう考えて笑う。
ルナは主に炊き出しやその他の手伝いに回り、ジュード、翡翠、リュカは運搬などに本格的に携わることになった。
魔導トラックもこの日には到着し、さっそく不足しがちだった薬剤や食料品がいくらか補給される。そして彼らにつきあうようにして、ジュードや翡翠もホープの外へ、必要なものを探しに向かった。
これからが正念場――ハンターたちもそれを理解しているのだろう、表情が引き締まる。
ライフラインの確保を優先という静架は、いままで使われていた下水や排水の設備の状況を確認する。衛生環境の悪化は、前日も言ったとおりに伝染病の温床になり得るのだ。手を抜くことは許されない。
レイスのほうはと言うと、まずは診療所と集会所の状況を確認し、直すべきところを丁寧に確認する。この二ヶ所は何を置いても修復を優先すべき場所だった。集会所は広さもあることから、大勢の人間を収容することが出来る。
診療所はというと清潔第一、変なほこりなどが入り込みやすい状況では困ってしまう。これらの再建が目下の優先事項だった。
ジルボとエルディラはそれぞれ自分の手が必要そうな場所の手伝いに入る。がれきの撤去はもちろんだが、ほかにも諸々の現在状況の確認や必要なものなどをピックアップしていく。小柄な二人は周囲に溶け込みやすく、怪我人たちも心やすく口を開いてくれるのだった。
いっぽう医療班はというと、前日のうちに行なったトリアージの、重傷者を優先的に収容していくことにした。
診療所となっていた建物の修復も必要なので、とりあえず被害の少ない建物に天幕を張り、臨時の診療所としたのである。
「怪我の状態は……良くない人がやっぱり多いみたいね」
熾烈な戦いの後に満足な治療も出来ぬまま放置され、雑菌が入ったり等で容体が悪化した人も少なくない。エイルはため息をついたがすぐに顔を上げる。
「薬に関しては俺に任せといて」
エアルドフリスの本職は薬師だ。近くの草原に薬効のある植物が内科を確認したところ、いくらか見つけられそうだと頷いていた。以前に来たときもそういった知恵でしのいできたのだから、今回も出来るだろう。
カールはと言うと、土の上で寝転んでいるよりはと板と藁の上にビニールシートを敷いた簡易寝台を作って重傷者から順に寝かせていく。
また清潔な医療器具を使える環境を整える為に水や布などの綺麗なものを準備し、水に関してはスキルも存分に活用して清潔であるよう心がける。
ローテーションも、エアルドフリスが計画してくれたおかげデ十二分に休憩を挟むことが出来る。
また、魔導トラックが一日に二回ほど必要な資材を運んでくれるのも大いにありがたかった。何しろ足りないものが多すぎて、困り果てるばかりだったのだから。
セツァルリヒトもまた、治療の手伝いをかってでているが、こちらはすこし勝手が違う。
彼は軽傷者の治療を重点的に行なうようにしていたのだ。こうすることで、がれき撤去や仮設住居の建築など、つまり足りない人手を補う為の手段とすることも出来る。むろん軽傷者といえども油断は出来ないが、それでももともとの体力に優れたハンターも多かったことが幸いして、ある程度の治療をしてやると身体の中でエネルギーをもてあましていたハンター、それに周囲の部族たちの協力もあってホープの再興にも少しずつだが光が見えてきた、そう感じ取れるようになっていた。
●
「はいっ、今日はシチューですよ」
料理の担当はルナだ。と言ってもむろんそれだけにとどまらず、必要なものの洗濯や怪我人たちへのちょっとした話し相手など、やれることは進んで行なっている。
熱を発症している患者には胃に優しいおかゆ、作業をしている人には一口大で口に運びやすい握り飯などを用意してある。
「本当はね、同盟からうわさのまめしだっけ、あれの種を試験的に栽培する話も出てはいるのよ。もっとも、この状態じゃあまだ先になりそうだけれど」
ゲルタがすこし寂しそうな顔で、そんなことを呟く。
そうだ、ここは本来ならもっと活気ある開拓地として作られたはずの場所なのだ。……いまはこうしてやっとこ生活するような状況だが、いつかかならず入植者が訪れ、町としての機能を作って行くに違いない――そんな場所なのだ。
「そのためにも頑張らなきゃいけませんね!」
ルナが両手できゅっと拳を作る。それからそうだ、と思いだしたように荷物からリュートを取り出してきた。
ぽろん、ぽろろん、ぽろん……
やわらかく、心の和む旋律が、響き渡る。その音に気づいたのか、軽傷のハンターたちも近づいてきた。あっという間にルナの周りには人垣が出来る。
(辛いこともまだまだ多いだろうけれど、せめてこのひとときは安らぎを――)
少女の願いがこもった演奏は、ささくれた人々の心をそっと癒やしてくれたのであった。
●
「資材はだいたい揃えられたようですね」
少なくとも必要最小限は。――三日目の夜に届いた荷物を確認しながら、カールが頷く。
診療所、それから集会所の復旧の際はレイスが自ら先頭に立って作業を行なった。以前の建設にも一役買っているレイスである、彼の姿に見覚えのあるハンターも少なくなかった。
セツァルリヒトのアイデアで人材も増えたとは言え、五体満足で動けるのはやはりハンターズオフィスから派遣されてきたハンターたち。ゲルタも元気そうに振る舞ってはいるものの、やはりやや憔悴しているのは隠せないのが現実だった。
さくさくと作業を進めなければ、どこかで限界が訪れる。
「水平器というのがリアルブルーにはあるんですけどね」
静架がそう言いながら水を汲んだ硝子コップで水平かを確認し、基礎部分の位置取りを再確認する。
「歪みがあれば、またすぐにガタが来ますからね」
「なるほど、もっともだな」
レイスもリアルブルーの建築技術を興味深そうに眺めつつ、資材の仕分けなどを行なう。そして、水平と垂直がだいじょうぶと判断された場所から順に再建の準備にかかるのだ。
必要なものは少なくない。ハンターだけでは手が足りない。が、そこは周囲の部族に情報を流してくれていたリュカや翡翠、ジュードらのおかげで近隣の部族からも手を借りることが出来た。
「助け合いの精神というのは大切だな」
レイスはわずかに頬を緩めた。感謝から来る、優しい笑顔だった。
●
夜は交替で外を監視する。
万が一の襲撃があったら、自分たちが対応せねばならないのだ。
たとえ怖くても、それが役目。
(建物のほうが目処がついたら、監視櫓も再建する必要があるな……)
レイスはぼんやりとそう思う。
いや、それは誰もが思っていることだった。
昏い夜を恐れる人々の為に、セツァルリヒトも光の魔法を使って明るくしようと心がける。
彼らに出来ることは、そう言う【光をともす】ことだから。
「……そういえば、犠牲者の方は――」
それは六日目の夕刻。
エイルはそれとなくゲルタに聞き出し、そしてその場所へと全員で向かった。
再建作業のほうはおおかた目処もついている。この地に残っているハンターや近隣部族の住民たちの力であとは代替出来るだろうところまで復旧が成っていたので、ハンターたちはその場所に向かったのだ。
【そこ】は、しずかだった。静寂が包み込んでいた。
しかし真新しい土の掘り返したあとがあって、それがそうであることを顕著に示していた。
そこに、彼らは小さな石碑を作る。それは慰霊碑と言うべきものだった。
エイルはそこにそっとロザリオを捧げ、ハンターたちは瞑目する。
(――どうか土が貴方にとって軽くありますように)
その祈りは届くだろうか。いや、届いて貰わなくては成らない祈りだった。
●
やがて終わりの日がやってくる。
最低限の再建はなった。まだ足りないことも多いが、生活に支障は無い。
必要なものも、頻度はどうかわからないが確保出来るように話をつけてある。人材についても同様だ。
まだ苦労はあるだろうが、その苦労をこえてこそ、道はまた開かれる。
だいじょうぶ。
人は強い存在なのだから。
転んでもまた歩き出せるのだから――。
依頼結果
参加者一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/26 05:08:36 |
|
![]() |
希望を見失わぬ為に【相談卓】 エイル・メヌエット(ka2807) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/05/27 15:05:47 |
|
![]() |
ゲルタさんに質問 エイル・メヌエット(ka2807) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/05/25 04:14:33 |