ゲスト
(ka0000)
汚部屋討伐!
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/11 07:30
- 完成日
- 2014/07/18 09:29
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
港町ガンナ・エントラータ、その郊外にひっそりと佇む屋敷があった。
その屋敷の主は、自称・海洋探検家サンタナ・ビオラージ。ガンナ・エントラータの沿岸部に浮かぶ、小さな島々を調査することを仕事としている。
別名、島ニアの名前で知られている。
「先生、サンタナせんせー?」
そんな屋敷の扉をノックする青年がいた。
サンタナに師事する漁師の息子、グランである。サンタナの調査は、小さな島々の遺跡や生態系をはじめとし、沈没船の位置を調べたりと多岐に渡る。
そんな彼の知識を得ることは、漁師にとって利益になる。
そうした両親の考えで、グランはサンタナの元を時折訪れているのだった。
しかし、何度ノックをしても反応がない。元々サンタナは、海洋調査へ行くとき以外は怠惰で出不精なダメ人間だ。ちょっとやそこらのノックでは起きないこともある。
こうしたときのために、サンタナからグランは合い鍵の場所を聞いていた。
魚の置物をどけ、ホタテ貝の装飾品を開ければ鍵が出てくる。
「先生、開けますよ……ってなんじゃこりゃぁああ!?」
目の前の光景にグランは雄叫びを上げた。
元々、サンタナはダメ人間である。
整理整頓、掃除洗濯もできない人だ。
教えを請う対価として、グランは代わりに行っていたこともある。
だが、ここ一ヶ月は漁師としての手伝いが忙しく、来られなかった。
「その結果が、これですか」
目の前に広がる光景に、グランは項垂れる。
うっそうと生い茂る何かの植物。
にわかに臭ってくる、腐臭。
生物が何かいるのか、がさごそという音が、そこらから聞こえてくる。
それにもまして多い重なるゴミ、ゴミ、ゴミの山……。
「私一人では、どうにも荷が重いですよ、先生」
グランはため息を吐き、その場を一旦後にした。
●
ハンターオフィスで、グランは状況を説明した。
「こうしたことを依頼するのもどうかと思うのですが、ある種の討伐でしょうし」
「討伐?」
首をかしげるスタッフに、グランは頷きを返す。
「汚屋敷討伐です。先生には悪いのですが、今回は徹底的にさせていただきます」
キッと、表情を引き締めてグランは宣言する。
「待っていて下さいサンタナ先生。僕は、必ずあなたを救い出して見せます」
そして、トドメを刺すといわんばかりの雰囲気でグランは告げるのだった。
港町ガンナ・エントラータ、その郊外にひっそりと佇む屋敷があった。
その屋敷の主は、自称・海洋探検家サンタナ・ビオラージ。ガンナ・エントラータの沿岸部に浮かぶ、小さな島々を調査することを仕事としている。
別名、島ニアの名前で知られている。
「先生、サンタナせんせー?」
そんな屋敷の扉をノックする青年がいた。
サンタナに師事する漁師の息子、グランである。サンタナの調査は、小さな島々の遺跡や生態系をはじめとし、沈没船の位置を調べたりと多岐に渡る。
そんな彼の知識を得ることは、漁師にとって利益になる。
そうした両親の考えで、グランはサンタナの元を時折訪れているのだった。
しかし、何度ノックをしても反応がない。元々サンタナは、海洋調査へ行くとき以外は怠惰で出不精なダメ人間だ。ちょっとやそこらのノックでは起きないこともある。
こうしたときのために、サンタナからグランは合い鍵の場所を聞いていた。
魚の置物をどけ、ホタテ貝の装飾品を開ければ鍵が出てくる。
「先生、開けますよ……ってなんじゃこりゃぁああ!?」
目の前の光景にグランは雄叫びを上げた。
元々、サンタナはダメ人間である。
整理整頓、掃除洗濯もできない人だ。
教えを請う対価として、グランは代わりに行っていたこともある。
だが、ここ一ヶ月は漁師としての手伝いが忙しく、来られなかった。
「その結果が、これですか」
目の前に広がる光景に、グランは項垂れる。
うっそうと生い茂る何かの植物。
にわかに臭ってくる、腐臭。
生物が何かいるのか、がさごそという音が、そこらから聞こえてくる。
それにもまして多い重なるゴミ、ゴミ、ゴミの山……。
「私一人では、どうにも荷が重いですよ、先生」
グランはため息を吐き、その場を一旦後にした。
●
ハンターオフィスで、グランは状況を説明した。
「こうしたことを依頼するのもどうかと思うのですが、ある種の討伐でしょうし」
「討伐?」
首をかしげるスタッフに、グランは頷きを返す。
「汚屋敷討伐です。先生には悪いのですが、今回は徹底的にさせていただきます」
キッと、表情を引き締めてグランは宣言する。
「待っていて下さいサンタナ先生。僕は、必ずあなたを救い出して見せます」
そして、トドメを刺すといわんばかりの雰囲気でグランは告げるのだった。
リプレイ本文
●
綺麗に晴れ渡る空、降り注ぐ日差しを浴びながらハンターたちは目の前の敵を眺めていた。
敵の名前は、サンタナ邸。
そのサンタナ邸前で、ハンターたちは集まっていた。グランに対面したハンターから、ラミア・マクトゥーム(ka1720)が前に出て握手をかわす。
「あたしはラミア・マクトゥーム。よろしくね」
自己紹介を済ませたラミアは、屋敷を見てポツリと漏らす。
「掃除が苦手っていったってこれはいきすぎよね……」
郊外にひっそりと建つ、この屋敷は外部から見てもわかるほどにゴミに埋もれていた。
「掃除、ね。海洋の第一人者とはまた……」
あきれたような表情で、屋敷を見上げるのはCharlotte・V・K(ka0468)だ。
「まさか、毒を持った魚や爆発する薬品なんておいていないだろうね……」
これだけの屋敷なのだ。何が転がっていても不思議ではない。Charlotteは警戒しながら、マスクを付けるのだった。
「うわ、予想以上の惨状……しかも、とてつもなく臭いし……」
その少し前では、クロード・インベルク(ka1506)がドア付近まで近づいていた。二重にした布で鼻と口元を覆っているにもかかわらず、悪臭がクロードを襲う。
「ダメだ、これ、早くなんとかしないと!」
顔をしかめながら、隣を見る。
「この間下水道に潜ったが、それに匹敵するくらいのやばさを感じるな、これは」
榊 兵庫(ka0010)も分厚い布で口元を覆っていたが、溢れ出る屋敷のダメオーラにそんなことをいう。
「ここまで汚したとなると、掃除という言葉では追い付かないか。このまま放置をしていたら、多方面に迷惑が掛かるだろうし、ここは徹底的にやるしかあるまい」
兵庫は決意を新にし、屋敷を見上げる。
「汚屋敷掃除。何でも屋な気もしますが、仕事は仕事です」
しっかりやりましょうと意気込むのは、不知火陽炎(ka0460)だ。陽炎も屋敷に負けじと、まさしく討伐する気持ちを持ち直す。
まずは、準備が必要だと扉を離れて陽炎はグランのところへ。
その先では、ステラ・エイシェント(ka2492)がグランと準備を進めていた。グランに掃除用具の在処を聞き、ゴミの置き場を確保する。
休憩についての取り決めなども打ち合わせているようだった。
そこへ合流した陽炎は、グランに近所の方々から苦情がないように触れて回ってほしいとお願いするのだった。
着々と準備がなされる中で、優雅に日傘を爪繰るのはマリーシュカ(ka2336)だ。
傍らにカラスとフクロウを待機させながら、マリーシュカは屋敷からやや離れたところに立っていた。
「1ヶ月……ね。あの先生、ちゃんと生きてるのかしら」
そびえる屋敷から、人がいる気配はあまり感じられない。
「あたしなら、こんな腐臭の中に閉じ込められたら、三日と言わずダウンする自信があるわ」
肩をすくめながら独りごちて、マリーシュカは晴天な空をねめつける。
「日光は嫌いなんだけど、今日は屋外待機したいわ……」
彼女にそう思わせるほどの外圧を、屋敷は持っているのだった。
だが、そんなある意味ダンジョンめいたものだからこそ、挑戦したい者もいる。
「きっとこの中には、我が敷島探検隊の求める冒険が待っているであります!」
敷島 吹雪(ka1358)は、楽しそうに屋敷に向かって歩いて行く。手袋に革靴、口元にはスカーフを巻いて、準備は万全だ。
もとより、この場にいるもので口元を隠していないものはいないのだが。
一部の人間は、覆い方が激しく怪しさが爆発しているが気にしてはいけない。
さて、いざ行かんとばかりに吹雪が禁断の扉を開けた。
「いざ、冒険なのであります!」
それに続いて、ラミアが慎重に足を踏み込む。
「おじゃましまーす……本当、ちょっとした冒険だよね」
面前に現れたゴミ山、ツタ、よくわからない状態の何か多数にラミアはため息をつくのだった。
●
「まず蔦をどうにかしないとね」
ラミアはナイフを取り出して、ツタを切り開いていく。
それに続いて陽炎が、鉄パイプを絡ませて、ツタを引きちぎっていく。こうして作られた残骸は、他のゴミと区別してズタ袋へ入れていく。
同じ作業をクロードも手伝う。一人より二人、二人より三人でやれば早く済むというものだ。
こうしてざんばらになったツタの根本に対して、兵庫が攻撃を行う。ダガーでなるべく、根っこの奥の奥まで、始末していく。
「植物の生命力は恐るべきものがあるからな。下手に根を残しておいたら同じ悲劇が起こりかねない。ここは根こそぎ伐採しておく方が後腐れはないな」
兵庫が引きぬいたツタを、Charlotteが持ちだしてひとまとめにしていく。ついでに、邪魔になるものを運び出していった。
「水場を確保しないと」
一方で、ステラは台所を目指す。
休憩のためにも、台所を最初に片付けたかったからだ。だが、そこに行き着くだけでも並大抵ではなさそうだ。
「外に休憩所を作っておいて、よかった」
内部の状態に呆れながら、ステラはつぶやくのだった。
そう、切り拓けど、切り拓けど、ジャングルめいたツタとゴミが出現してくる。
「未知の生物が出てきてもおかしくない酷さであります」
吹雪がそんな感想を漏らす。一瞬、どこかでガサゴソという音が聞こえたような気がしたが、大きなものは見当たらなかった。
その音の主を見つけてしまったのは、クロードだ。
黒光りする例のアレを見た彼は、一瞬気を遠く仕掛けたが、
「これも仕事、これも仕事」
と叩き潰しに行く。が、目の前で黒い何かがそれをさらっていった。
カラスだと気がついた時には、カラスの喉元は動いていた。
「見なかったことにしよう」
気を取り直して、クロードは次に取り掛かる。
そのカラスの主はといえば、未だに外にいた。
マリーシュカは、の~んびりと屋敷の外周を歩いては手の届く窓が開くかを試していた。中には、壊れかけの窓もある。開くものは容赦なく開けて、外気を中へと流入させていた。
「これで、少しはマシになるかしら?」
そんなわけがないとわかっている口調で、マリーシュカはいうのだった。
たっぷりと時間を掛けて、一周してきたとき、苦情対応を終えたグランが戻ってくるのが見えるのだった。
●
「いっそ燃やした方が綺麗になるのかもしれないが……」
ステラは、延々と続く同じような惨状に危険なことをつぶやく。
「本当。正直、焼き払っちゃいたい気もするけどまさかそんな訳にはいかないしねえ」
ステラの言葉に、ラミアが苦笑交じりに返す。
この話題を切り出した格好のステラは、ふぅと一息つくと
「危険な考えが浮かぶようなら、休憩したほうがいいな」
とステラとともに一度休憩に向かうのだった。
「博士はどこにいるのだろうか」
「秘境の奥にこそ、お宝はあるのでありますよ」
Charlotteと吹雪は、少しずれた会話を繰り返しながら、奥へ奥へと進む。と、同時にゴミやがらくたやよくわからないものを外に運び出していく。
「……モノの価値なんてのは、人それぞれだしな。分別はグランに任せる」
広めに取られたゴミ置き場で、休憩を終えた兵庫がグランにそう告げていた。明らかにゴミとわかるものは、端の方にまとめられているが、それ以外はどんどん溜まっているのだった。
とりあえず、ものを運び出す。やっと屋敷内に足を踏み入れたマリーシュカもぽいっぽいと窓からものを放り投げていた。もちろん、ゴミとわかりきったものやある程度まとまったズタ袋などである。
割れ物に注意するよう、ステラやラミアがいっていたのだ。
「一階は、片付いてきたね」
カビまみれのカーテンを洗濯桶に容赦なくぶち込みながら、クロードが告げる。
お分かりいただけただろうか。
あれほど鬱蒼としていたゴミ屋敷の一階は、ものがなくスッキリとした印象を与えてくれる。だが、長年のゴミ溜まりでまだまだ汚れているのだが……。
「秘境の奥、さらない領域に我々は足を踏み入れるのだ!」
二階へ続く階段を容赦なく掃除しながら、吹雪が率先して突き進んでいく。
サンタナは、果たしてそこにいるのだろうか。
●
サンタナの自室前まで、ゴミを片付けたハンターたちは、ついにその扉を開くことになった。
「秘境を切り開いた先で、我々の見たものは!」
バーンっと吹雪が勢い良く扉を開ける。そこには、大量の本に埋もれて何かをもそもそ食べている男の姿があった。いや、食べているというよりは、食べているフリをしているというべきか。
「サンタナ……さん、よね?」
恐る恐るラミアが問いかけると、伸びきった髪の奥から男が見上げた。
ややあって、静かに小さく頷いた。
サンタナは立ち上がる気力もないのか、それだけすると再びパタリと伏せるのだった。
「せんせぇええ!?」
クロードが連れてきたグランが、叫びを上げた。倒れかねない彼をクロードが支える。
どういうわけか、サンタナは意識だけははっきりしているらしい。
「要救助者確保。これ、お水です」
陽炎が手早く水を与えて、肩を持たせて抱え上げる。もう片方の肩はラミアが支える。
吹雪が先導して、サンタナを外まで運び出す。
その様子を見ていたマリーシュカは、
「あら、本当に生きていたのね」
と感心したようにいうのだった。
Charlotteの提案で、ステラが早期復旧させた台所から水を運んでサンタナの体を洗い流した。さらには水を与えて、とりあえず応答ができるようにする。
部屋においていた干し肉をつまみながら、生き延びたのだと語るサンタナに久方ぶりの温かい食事が与えられた。
「酒場で用意したスープとパンよ。味わって食べてよね」
サンタナは倒れていたとは思えない勢いで、ラミアが用意していたスープ等を頬張っていた。
「さて、グラン君と分別をお願いしようか」
Charlotteが告げ、サンタナとグラン。それから、優柔不断なところのある二人へのアドバイザー的立場としてラミアがその場に残った。
再び屋敷へと舞い戻るハンターたちの耳に、
「んで、これはなに?いるの?」
とか、
「いるんなら理由を説明してね? ちゃんとした理由じゃないならガンガン捨ててくからね」
というラミアの元気な声が聞こえてきた。
時折、サンタナやグランの「いつか役に立つから……」という心もとない声が聞こえてきては、
「そういう理由じゃ、ダメだよ」
とラミアが諭す声が響くのだった。
●
「少しでも散らかったところがあると、そこに慢心が生まれるからな。この際徹底的にやって、先生とやらが汚すのを躊躇うようにしてやろうぜ」
兵庫の言葉に、屋敷に戻った全員が頷く。それから少し遅れて、マリーシュカが入ってきた。周囲に合わせる形で、マリーシュカもマイペースに手伝っていく。
陽炎の提案で、掃除する場所の順番が決められた。
入り口から遠いところから、近いところへ。高いところから、低いところへと掃除していく。
「ついでに、住み分けと分別がしやすくしておこうか」
Charlotteの提案で、掃除が終わった場所から順にプレートを掲げることにした。書庫、寝室……等である。
率先してカーテン類を洗濯していたクロードも、貴重品や重要なものを段階的に分ける箱を置くようにしようと述べる。
再び屋敷へ運び入れるものを磨き直していた陽炎が、使えそうなものをピックアップし、それように用意していく。
「はやく、お風呂に入りたいですね」
切実な表情で、陽炎はそんなつぶやきをするのだった。
「そろそろ、クロードさんと陽炎さんは休憩の時間だ」
「わかった。ちょっと休んでくるよ」
ステラに告げられ、クロードは休憩場所へと向かう。
「おぉ、秘境の壁はこれほどまでに色が違っていたのでありますか!?」
何やら吹雪の声も聞こえてくる。掃除は順調に、着実に進んでいく。
日が傾いてきた頃には、長丁場になっていた掃除も、終わりを迎えようとしていた。
●
なんということでしょう。
そんな声が天から聞こえてきそうな、そんな気がするほどに、サンタナ邸は見違えるほどに綺麗になっていた。
まるで、匠によってリフォームされたかのような清潔感すら放っているのだ。
「うそ、我の家、綺麗すぎっ」
思わずサンタナが、口元を両手で隠すほどなのだった。
では、どれくらい見違えたのか。
あれほど鬱蒼としてた蔦や植物たちは、陽炎たちによって引きちぎられ、兵庫によって根こそぎ取り払われていた。
視界のほぼすべてを覆い尽くすゴミ山は、皆の協力によってスッキリと姿を消していた。不必要なものを不必要として、切り捨てていけたのはラミアによる激的指導のたわものだといえよう。
Charlotteによって提案された、プレートはものぐさなサンタナを誘導するようにドアの一つ一つに掲げられていた。各部屋やエントランスには、ゴミの分別を促す木箱が置かれている。
屋敷の布製品を洗いきったクロードによって、貴重品入れが置かれ、サンタナが重要なものを失くす可能性を激的に減らしていた。
「何とかなったね」
疲れた様子で、ラミアが感慨深く告げる。
「これだけやったんだ。散らかすのも躊躇うだろう」
兵庫の言葉に、そうであってほしいと何人かが頷いてみせた。
もっとも、それでダメそうな可能性もある。
「ちゃんとできるでありますかね?」
「いっそ、家政婦でも雇ったらいいのよ」
吹雪の疑問には、マリーシュカがきっぱりと答えてみせた。
そんなやりとりを知ってか知らずか、サンタナは意気揚々と屋敷へと戻っていく。グランは皆様にしきりに礼を述べるとサンタナの後を追っていくのだった。
果たして、サンタナはこの屋敷を綺麗なまま維持できるのだろうか。
それは……神のみが知るのかもしれない。
綺麗に晴れ渡る空、降り注ぐ日差しを浴びながらハンターたちは目の前の敵を眺めていた。
敵の名前は、サンタナ邸。
そのサンタナ邸前で、ハンターたちは集まっていた。グランに対面したハンターから、ラミア・マクトゥーム(ka1720)が前に出て握手をかわす。
「あたしはラミア・マクトゥーム。よろしくね」
自己紹介を済ませたラミアは、屋敷を見てポツリと漏らす。
「掃除が苦手っていったってこれはいきすぎよね……」
郊外にひっそりと建つ、この屋敷は外部から見てもわかるほどにゴミに埋もれていた。
「掃除、ね。海洋の第一人者とはまた……」
あきれたような表情で、屋敷を見上げるのはCharlotte・V・K(ka0468)だ。
「まさか、毒を持った魚や爆発する薬品なんておいていないだろうね……」
これだけの屋敷なのだ。何が転がっていても不思議ではない。Charlotteは警戒しながら、マスクを付けるのだった。
「うわ、予想以上の惨状……しかも、とてつもなく臭いし……」
その少し前では、クロード・インベルク(ka1506)がドア付近まで近づいていた。二重にした布で鼻と口元を覆っているにもかかわらず、悪臭がクロードを襲う。
「ダメだ、これ、早くなんとかしないと!」
顔をしかめながら、隣を見る。
「この間下水道に潜ったが、それに匹敵するくらいのやばさを感じるな、これは」
榊 兵庫(ka0010)も分厚い布で口元を覆っていたが、溢れ出る屋敷のダメオーラにそんなことをいう。
「ここまで汚したとなると、掃除という言葉では追い付かないか。このまま放置をしていたら、多方面に迷惑が掛かるだろうし、ここは徹底的にやるしかあるまい」
兵庫は決意を新にし、屋敷を見上げる。
「汚屋敷掃除。何でも屋な気もしますが、仕事は仕事です」
しっかりやりましょうと意気込むのは、不知火陽炎(ka0460)だ。陽炎も屋敷に負けじと、まさしく討伐する気持ちを持ち直す。
まずは、準備が必要だと扉を離れて陽炎はグランのところへ。
その先では、ステラ・エイシェント(ka2492)がグランと準備を進めていた。グランに掃除用具の在処を聞き、ゴミの置き場を確保する。
休憩についての取り決めなども打ち合わせているようだった。
そこへ合流した陽炎は、グランに近所の方々から苦情がないように触れて回ってほしいとお願いするのだった。
着々と準備がなされる中で、優雅に日傘を爪繰るのはマリーシュカ(ka2336)だ。
傍らにカラスとフクロウを待機させながら、マリーシュカは屋敷からやや離れたところに立っていた。
「1ヶ月……ね。あの先生、ちゃんと生きてるのかしら」
そびえる屋敷から、人がいる気配はあまり感じられない。
「あたしなら、こんな腐臭の中に閉じ込められたら、三日と言わずダウンする自信があるわ」
肩をすくめながら独りごちて、マリーシュカは晴天な空をねめつける。
「日光は嫌いなんだけど、今日は屋外待機したいわ……」
彼女にそう思わせるほどの外圧を、屋敷は持っているのだった。
だが、そんなある意味ダンジョンめいたものだからこそ、挑戦したい者もいる。
「きっとこの中には、我が敷島探検隊の求める冒険が待っているであります!」
敷島 吹雪(ka1358)は、楽しそうに屋敷に向かって歩いて行く。手袋に革靴、口元にはスカーフを巻いて、準備は万全だ。
もとより、この場にいるもので口元を隠していないものはいないのだが。
一部の人間は、覆い方が激しく怪しさが爆発しているが気にしてはいけない。
さて、いざ行かんとばかりに吹雪が禁断の扉を開けた。
「いざ、冒険なのであります!」
それに続いて、ラミアが慎重に足を踏み込む。
「おじゃましまーす……本当、ちょっとした冒険だよね」
面前に現れたゴミ山、ツタ、よくわからない状態の何か多数にラミアはため息をつくのだった。
●
「まず蔦をどうにかしないとね」
ラミアはナイフを取り出して、ツタを切り開いていく。
それに続いて陽炎が、鉄パイプを絡ませて、ツタを引きちぎっていく。こうして作られた残骸は、他のゴミと区別してズタ袋へ入れていく。
同じ作業をクロードも手伝う。一人より二人、二人より三人でやれば早く済むというものだ。
こうしてざんばらになったツタの根本に対して、兵庫が攻撃を行う。ダガーでなるべく、根っこの奥の奥まで、始末していく。
「植物の生命力は恐るべきものがあるからな。下手に根を残しておいたら同じ悲劇が起こりかねない。ここは根こそぎ伐採しておく方が後腐れはないな」
兵庫が引きぬいたツタを、Charlotteが持ちだしてひとまとめにしていく。ついでに、邪魔になるものを運び出していった。
「水場を確保しないと」
一方で、ステラは台所を目指す。
休憩のためにも、台所を最初に片付けたかったからだ。だが、そこに行き着くだけでも並大抵ではなさそうだ。
「外に休憩所を作っておいて、よかった」
内部の状態に呆れながら、ステラはつぶやくのだった。
そう、切り拓けど、切り拓けど、ジャングルめいたツタとゴミが出現してくる。
「未知の生物が出てきてもおかしくない酷さであります」
吹雪がそんな感想を漏らす。一瞬、どこかでガサゴソという音が聞こえたような気がしたが、大きなものは見当たらなかった。
その音の主を見つけてしまったのは、クロードだ。
黒光りする例のアレを見た彼は、一瞬気を遠く仕掛けたが、
「これも仕事、これも仕事」
と叩き潰しに行く。が、目の前で黒い何かがそれをさらっていった。
カラスだと気がついた時には、カラスの喉元は動いていた。
「見なかったことにしよう」
気を取り直して、クロードは次に取り掛かる。
そのカラスの主はといえば、未だに外にいた。
マリーシュカは、の~んびりと屋敷の外周を歩いては手の届く窓が開くかを試していた。中には、壊れかけの窓もある。開くものは容赦なく開けて、外気を中へと流入させていた。
「これで、少しはマシになるかしら?」
そんなわけがないとわかっている口調で、マリーシュカはいうのだった。
たっぷりと時間を掛けて、一周してきたとき、苦情対応を終えたグランが戻ってくるのが見えるのだった。
●
「いっそ燃やした方が綺麗になるのかもしれないが……」
ステラは、延々と続く同じような惨状に危険なことをつぶやく。
「本当。正直、焼き払っちゃいたい気もするけどまさかそんな訳にはいかないしねえ」
ステラの言葉に、ラミアが苦笑交じりに返す。
この話題を切り出した格好のステラは、ふぅと一息つくと
「危険な考えが浮かぶようなら、休憩したほうがいいな」
とステラとともに一度休憩に向かうのだった。
「博士はどこにいるのだろうか」
「秘境の奥にこそ、お宝はあるのでありますよ」
Charlotteと吹雪は、少しずれた会話を繰り返しながら、奥へ奥へと進む。と、同時にゴミやがらくたやよくわからないものを外に運び出していく。
「……モノの価値なんてのは、人それぞれだしな。分別はグランに任せる」
広めに取られたゴミ置き場で、休憩を終えた兵庫がグランにそう告げていた。明らかにゴミとわかるものは、端の方にまとめられているが、それ以外はどんどん溜まっているのだった。
とりあえず、ものを運び出す。やっと屋敷内に足を踏み入れたマリーシュカもぽいっぽいと窓からものを放り投げていた。もちろん、ゴミとわかりきったものやある程度まとまったズタ袋などである。
割れ物に注意するよう、ステラやラミアがいっていたのだ。
「一階は、片付いてきたね」
カビまみれのカーテンを洗濯桶に容赦なくぶち込みながら、クロードが告げる。
お分かりいただけただろうか。
あれほど鬱蒼としていたゴミ屋敷の一階は、ものがなくスッキリとした印象を与えてくれる。だが、長年のゴミ溜まりでまだまだ汚れているのだが……。
「秘境の奥、さらない領域に我々は足を踏み入れるのだ!」
二階へ続く階段を容赦なく掃除しながら、吹雪が率先して突き進んでいく。
サンタナは、果たしてそこにいるのだろうか。
●
サンタナの自室前まで、ゴミを片付けたハンターたちは、ついにその扉を開くことになった。
「秘境を切り開いた先で、我々の見たものは!」
バーンっと吹雪が勢い良く扉を開ける。そこには、大量の本に埋もれて何かをもそもそ食べている男の姿があった。いや、食べているというよりは、食べているフリをしているというべきか。
「サンタナ……さん、よね?」
恐る恐るラミアが問いかけると、伸びきった髪の奥から男が見上げた。
ややあって、静かに小さく頷いた。
サンタナは立ち上がる気力もないのか、それだけすると再びパタリと伏せるのだった。
「せんせぇええ!?」
クロードが連れてきたグランが、叫びを上げた。倒れかねない彼をクロードが支える。
どういうわけか、サンタナは意識だけははっきりしているらしい。
「要救助者確保。これ、お水です」
陽炎が手早く水を与えて、肩を持たせて抱え上げる。もう片方の肩はラミアが支える。
吹雪が先導して、サンタナを外まで運び出す。
その様子を見ていたマリーシュカは、
「あら、本当に生きていたのね」
と感心したようにいうのだった。
Charlotteの提案で、ステラが早期復旧させた台所から水を運んでサンタナの体を洗い流した。さらには水を与えて、とりあえず応答ができるようにする。
部屋においていた干し肉をつまみながら、生き延びたのだと語るサンタナに久方ぶりの温かい食事が与えられた。
「酒場で用意したスープとパンよ。味わって食べてよね」
サンタナは倒れていたとは思えない勢いで、ラミアが用意していたスープ等を頬張っていた。
「さて、グラン君と分別をお願いしようか」
Charlotteが告げ、サンタナとグラン。それから、優柔不断なところのある二人へのアドバイザー的立場としてラミアがその場に残った。
再び屋敷へと舞い戻るハンターたちの耳に、
「んで、これはなに?いるの?」
とか、
「いるんなら理由を説明してね? ちゃんとした理由じゃないならガンガン捨ててくからね」
というラミアの元気な声が聞こえてきた。
時折、サンタナやグランの「いつか役に立つから……」という心もとない声が聞こえてきては、
「そういう理由じゃ、ダメだよ」
とラミアが諭す声が響くのだった。
●
「少しでも散らかったところがあると、そこに慢心が生まれるからな。この際徹底的にやって、先生とやらが汚すのを躊躇うようにしてやろうぜ」
兵庫の言葉に、屋敷に戻った全員が頷く。それから少し遅れて、マリーシュカが入ってきた。周囲に合わせる形で、マリーシュカもマイペースに手伝っていく。
陽炎の提案で、掃除する場所の順番が決められた。
入り口から遠いところから、近いところへ。高いところから、低いところへと掃除していく。
「ついでに、住み分けと分別がしやすくしておこうか」
Charlotteの提案で、掃除が終わった場所から順にプレートを掲げることにした。書庫、寝室……等である。
率先してカーテン類を洗濯していたクロードも、貴重品や重要なものを段階的に分ける箱を置くようにしようと述べる。
再び屋敷へ運び入れるものを磨き直していた陽炎が、使えそうなものをピックアップし、それように用意していく。
「はやく、お風呂に入りたいですね」
切実な表情で、陽炎はそんなつぶやきをするのだった。
「そろそろ、クロードさんと陽炎さんは休憩の時間だ」
「わかった。ちょっと休んでくるよ」
ステラに告げられ、クロードは休憩場所へと向かう。
「おぉ、秘境の壁はこれほどまでに色が違っていたのでありますか!?」
何やら吹雪の声も聞こえてくる。掃除は順調に、着実に進んでいく。
日が傾いてきた頃には、長丁場になっていた掃除も、終わりを迎えようとしていた。
●
なんということでしょう。
そんな声が天から聞こえてきそうな、そんな気がするほどに、サンタナ邸は見違えるほどに綺麗になっていた。
まるで、匠によってリフォームされたかのような清潔感すら放っているのだ。
「うそ、我の家、綺麗すぎっ」
思わずサンタナが、口元を両手で隠すほどなのだった。
では、どれくらい見違えたのか。
あれほど鬱蒼としてた蔦や植物たちは、陽炎たちによって引きちぎられ、兵庫によって根こそぎ取り払われていた。
視界のほぼすべてを覆い尽くすゴミ山は、皆の協力によってスッキリと姿を消していた。不必要なものを不必要として、切り捨てていけたのはラミアによる激的指導のたわものだといえよう。
Charlotteによって提案された、プレートはものぐさなサンタナを誘導するようにドアの一つ一つに掲げられていた。各部屋やエントランスには、ゴミの分別を促す木箱が置かれている。
屋敷の布製品を洗いきったクロードによって、貴重品入れが置かれ、サンタナが重要なものを失くす可能性を激的に減らしていた。
「何とかなったね」
疲れた様子で、ラミアが感慨深く告げる。
「これだけやったんだ。散らかすのも躊躇うだろう」
兵庫の言葉に、そうであってほしいと何人かが頷いてみせた。
もっとも、それでダメそうな可能性もある。
「ちゃんとできるでありますかね?」
「いっそ、家政婦でも雇ったらいいのよ」
吹雪の疑問には、マリーシュカがきっぱりと答えてみせた。
そんなやりとりを知ってか知らずか、サンタナは意気揚々と屋敷へと戻っていく。グランは皆様にしきりに礼を述べるとサンタナの後を追っていくのだった。
果たして、サンタナはこの屋敷を綺麗なまま維持できるのだろうか。
それは……神のみが知るのかもしれない。
依頼結果
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相談卓 榊 兵庫(ka0010) 人間(リアルブルー)|26才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/11 01:00:24 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/06 13:25:51 |