ゲスト
(ka0000)
おしえてタングラム
マスター:神宮寺飛鳥
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/11 19:00
- 完成日
- 2014/07/12 08:27
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●暴食の歪虚、“動く死体”編
「暴食の歪虚について、ですか?」
帝国ユニオンAPV。そこで今日もハンター達から受け取った差し入れを食べていたタングラムに一人のハンターが声をかけた。
ゾンネンシュトラール帝国で目撃されている暴食(フェレライ)の歪虚。その中でも特別に強力な個体がいる。それが“四霊剣”だ。
「四霊剣に興味があるのですか? まあ、強敵に興味を持つのは悪い事ではないですが、討伐に行く~とか言われてしまうと困ってしまうのですね……」
タングラムが難色を示すのも無理はない。四霊剣は暴食の歪虚の中でも危険視される強敵だ。興味を持って討伐に向かい、帰ってこないハンターなど珍しくもない。
「ですが、そうですね……。暴食の眷属について知っておけば、帝国での戦いを有利に進められるかもしれないのです。もし君達が暴食の歪虚……亡者の眷属を相手に戦うと言うのなら、今のうちに実戦で腕を磨くのもいいと思うですよ」
そう言ってタングラムはユニオン内にある掲示板に近づき、そこに紙を張り付けた。そしてペンで文字を書き込んでいく。
「まず、暴食には大きく分けて三つの系統がいるのです。“亡霊型”、“死体型”、“吸血鬼型”。この三つにはそれぞれ特徴と対処法があるのです」
しばし思案した後、タングラムが書き込んだのは“死体型”という文字、そして可愛らしいゾンビのイラストだ。
「動く死体、所謂ゾンビとかスケルトンとかですね。雑魔でもよく見かけるのですが、眷属として存在している歪虚はこいつらの上位互換みたいな感じです」
死体型の歪虚は、負のマテリアルによって死よりも更にマイナスの方向にシフトした存在だ。
多くの場合何かしらの生物の死体がベースとなるが、ただそれだけには限らない事もある。
「人間のゾンビならこれまでも見た事はあるですかね? ただ、あのゾンビが特殊能力を持っていたり……強化されていたら話が違ってくるでしょう?」
“不壊の剣機”は四霊剣の中で動く死体系統の歪虚の頂点と言われる個体だ。その眷属は全て、何らかの技術で強化措置を受けている。
「死体が動いていると言う時点で厄介なのですが、それが兵器を搭載したり、命令に忠実に動いたりするようになると厄介なのです」
もう死んでいるので消失を一切恐れず、傷も痛みもその足を止める事が出来ない。そんな死体型の歪虚を倒すにも、いくつかのセオリーがある。
「まだ皆には少し早いかと思っていたですが……これも経験。実戦でそのセオリーを見つけ出せるよう、依頼を引っ張ってくるですよ」
そう言った後、タングラムはハンターの手を取る。
「いいですか? 強力な敵との戦いは一人だけの力で乗り切る事は出来ないのです。仲間を信じ、仲間と息を合わせ活路を切り開くのですよ」
力強く頷くハンターに安心したようにタングラムは手を離す。そして適切な依頼を求め、APVを後にした。
「暴食の歪虚について、ですか?」
帝国ユニオンAPV。そこで今日もハンター達から受け取った差し入れを食べていたタングラムに一人のハンターが声をかけた。
ゾンネンシュトラール帝国で目撃されている暴食(フェレライ)の歪虚。その中でも特別に強力な個体がいる。それが“四霊剣”だ。
「四霊剣に興味があるのですか? まあ、強敵に興味を持つのは悪い事ではないですが、討伐に行く~とか言われてしまうと困ってしまうのですね……」
タングラムが難色を示すのも無理はない。四霊剣は暴食の歪虚の中でも危険視される強敵だ。興味を持って討伐に向かい、帰ってこないハンターなど珍しくもない。
「ですが、そうですね……。暴食の眷属について知っておけば、帝国での戦いを有利に進められるかもしれないのです。もし君達が暴食の歪虚……亡者の眷属を相手に戦うと言うのなら、今のうちに実戦で腕を磨くのもいいと思うですよ」
そう言ってタングラムはユニオン内にある掲示板に近づき、そこに紙を張り付けた。そしてペンで文字を書き込んでいく。
「まず、暴食には大きく分けて三つの系統がいるのです。“亡霊型”、“死体型”、“吸血鬼型”。この三つにはそれぞれ特徴と対処法があるのです」
しばし思案した後、タングラムが書き込んだのは“死体型”という文字、そして可愛らしいゾンビのイラストだ。
「動く死体、所謂ゾンビとかスケルトンとかですね。雑魔でもよく見かけるのですが、眷属として存在している歪虚はこいつらの上位互換みたいな感じです」
死体型の歪虚は、負のマテリアルによって死よりも更にマイナスの方向にシフトした存在だ。
多くの場合何かしらの生物の死体がベースとなるが、ただそれだけには限らない事もある。
「人間のゾンビならこれまでも見た事はあるですかね? ただ、あのゾンビが特殊能力を持っていたり……強化されていたら話が違ってくるでしょう?」
“不壊の剣機”は四霊剣の中で動く死体系統の歪虚の頂点と言われる個体だ。その眷属は全て、何らかの技術で強化措置を受けている。
「死体が動いていると言う時点で厄介なのですが、それが兵器を搭載したり、命令に忠実に動いたりするようになると厄介なのです」
もう死んでいるので消失を一切恐れず、傷も痛みもその足を止める事が出来ない。そんな死体型の歪虚を倒すにも、いくつかのセオリーがある。
「まだ皆には少し早いかと思っていたですが……これも経験。実戦でそのセオリーを見つけ出せるよう、依頼を引っ張ってくるですよ」
そう言った後、タングラムはハンターの手を取る。
「いいですか? 強力な敵との戦いは一人だけの力で乗り切る事は出来ないのです。仲間を信じ、仲間と息を合わせ活路を切り開くのですよ」
力強く頷くハンターに安心したようにタングラムは手を離す。そして適切な依頼を求め、APVを後にした。
リプレイ本文
坑道内に留まる三体の暴食の眷属。魔導ライトで僅かに照らされた闇の中、ゾンビ達はぼんやりと姿を浮かばせていた。
「棒立ちでなにしてやがるんだ?」
遠巻きに眺め首を傾げるアーサー・ホーガン(ka0471)。マファルダ・ベルルーティ(ka2311)も不思議そうな様子だ。
「採掘場を襲撃したのに、鉱石に興味を示していない……?」
「話には聞いちゃいたが、動く死体の考える事はわからないな」
「何だっていいよ、相手がヴォイドなら殲滅するだけだし。それじゃ、打ち合わせ通りはじめよっか♪」
肩を竦めるティーア・ズィルバーン(ka0122)に笑いかけながらフレアティラミス(ka0011)は弓を構える。
ティーアがライトで敵を照らした瞬間、フレアティラミスが矢を放った。狙いは強化ゾンビの突撃型。攻撃を受け、三体のゾンビがハンター達へと振り返った。
「釣れた」
「よし撤収。逃げるが勝ちってな」
その辺の石ころを投げつけながら呟くマファルダ。ハンター達はすぐに攻撃を中断しアーサーの合図で一目散に元来た道を走り出した。
当然だがゾンビはハンターを追う。最も移動力が高いのはタイラントの様で、突撃型を抜いてぐんぐん追い上げてくる。
「あいつ、あの図体であれだけ早いのか……!」
「もう少しだ、走れ!」
慌てるティーアにアーサーが声をかける。巨大なゾンビがハンターの背後にまで迫りつつあった時、彼らの逃走方向でライトがちかりと光った。それを合図に四人が左右にずれると、途端に闇の中から火の矢が飛び出し巨漢の足に着弾した。
「うん。狙いは完璧」
片目を瞑って杖を降ろすフワ ハヤテ(ka0004)。ハンター達の逃走方向には一台の大型トロッコが停まっており、そこには残りのハンター達が待機していた。
「……この暗闇の中で相手が踏み出そうとした足を狙ったの?」
冷や汗を流しながら呟くアーニャ・リーニャ(ka0429)。ハヤテの狙いは実に正確。あんな芸当他に出来る者はいなかった。
「今なら転倒しています! 急いでください!」
ライトを手に叫ぶ猫実 慧(ka0393)。派手に倒れたタイラントを抜き突撃型が二体迫ってくる。逃げて来たアーサー達はそのままトロッコに取りつくと、息を合わせてそれを押し始めた。
「いっくよー♪」
「せーの……っ」
四人で押し出すが、特にフレアティラミスとアーサーの踏み込みが強い。あっという間にトロッコに速度が乗り、四人のハンターを乗せ動き出した。
「凄い力。二人でも十分なくらい」
目を丸くするマファルダ。そこへ突撃型ゾンビが追いかけてくるが、敵は近接装備。追いつかれない限り攻撃は受けない。
「うわ、一生懸命走ってますねー……。正直言って研究する分には平気ですけどやっぱり動いてるのはちょっと気持ち悪いですねー」
苦笑しながら魔導銃を構えるエリアス・トートセシャ(ka0748)。同時にトロッコ上の四人が得物を構える。
そう、これが彼らの作戦だ。四人がトロッコを押して全員を移動させ、逃げながら手の開いた四人が遠距離攻撃でまずは突撃型を倒す。これで三体のゾンビを同時に相手にせずに済み、うまく行けば万全の状態で強敵であるタイラントと戦える。
「よく引き付けて一斉攻撃で倒しましょう」
ライトで敵を照らしつつ銃を構える慧。アーニャとエリアスは全員に強化を施し、万全に敵の接近を待つ。
「これだけ引き付ければ外さない……」
「新しく手に入れた魔道銃の威力をご覧あれー、ですー」
「頭上を失礼するよ」
二丁の拳銃を構え連射するアーニャ。突撃型ゾンビは攻撃を受けながらも走ってくる。
ハヤテは杖の先端に水の塊を作り、それを発射。突撃型が衝撃で足を止めると、すかさず慧とエリアスが同時に弾丸を放った。
二つの弾丸はゾンビの頭部を貫通する。結局突撃型が一体何もできずに倒されると、もう一体が必死に追いついてくる。しかし銃声が何発も鳴り響き、マテリアルの光が爆ぜるとすぐに動かなくなった。
「わお。この作戦うまく行きすぎじゃないですかー?」
「ううん……まだ大物が残ってる」
上機嫌なエリアスの横で首を振るアーニャ。確かに先ほどからタイラントの追撃がない。
「追いかけてこないのはおかしい。もしかしたら先回りされてるかも……」
「だとすればこの先ですね。横道から合流するルートがあります。進路を変更しましょう! 誰か先行してレールを操作出来ますか!?」
慧の声に呼応したのはマファルダだ。トロッコ押しから抜け、一瞬で追い越して先行。念の為にとアーニャが運動強化を施す。
「これが切り替え装置……っ!?」
顔を向けた瞬間、闇の中からタイラントの腕が飛び出してきた。とっさに身を逸らしてかわし、背後に飛びながらレバーを倒して進路を切り替える。
「本当に待ち伏せしてるなんて……」
素早く剣で反撃するが相手は意に介さない。たらりと冷や汗を流し慌てて身を翻すと、怪物は人型とは思えぬ咆哮を上げた。
「まずいな……追いつかれるぞ! 広場に移動しよう!」
「次の切り替えポイントを右です! 予定より早いですがそれでショートカット出来ます!」
慧の声に飛び出すティーア。切り替えポイントへ彼が先行する間にも巨漢は両腕でガードを固めつつ猛然と駆け寄ってくる。
「うわっ、きてるね! 流石にちょっと疲れて来たよっ」
「踏ん張れフレアティラミス! 俺達が止まったら全員やられちまう!」
必死で走り続けるフレアティラミスとアーサー。勢いが乗っているとは言え元々最大速度はさほど出ない設計だ。敵との距離は縮まっていく。
エリアスとアーニャは銃を連射しているが全く足が止まらない。ハヤテの魔法も今度は停止に至らない。先の一撃は不意打ちが完璧に決まったが、今度は相手も学習している。
「拙いね、追いつかれる……二人共避けるんだ!」
ハヤテの声に咄嗟に左右に飛ぶフレアティラミスとアーサー。振り下ろされた拳を回避したが、トロッコを掴まれてしまった。
無理な制動にトロッコの前輪が持ち上がり全体が傾いた。火花を散らしながらトロッコはタイラントを引きずって前進する。
「この……!」
「顔怖いですねー! 離れてください!」
至近距離で銃弾を撃ち込むアーニャとエリアス。マファルダは背後から飛びかかり、タイラントの背中に剣を突き立てた。
「痛みがないから怯まないの……!?」
「下がってろマファルダ!」
魔導ドリルを回転させながら駆け寄るアーサー。タイラントの太ももにドリルを押し当てながら雄叫びを上げる。
「その腕、離してもらおっか!」
素早く刃を抜くと同時、腕を斬りつけるマファルダ。渾身の一撃でタイラントは腕を離したが、切断には至らない。
「かったぁ~!? さっすがは眷属♪」
「言ってる場合か! 走れ走れ!」
解き放たれたトロッコだが、不自然なウィリー状態が続いていた。先ほどの衝撃で今度はひっくり返ろうかという時、慧はトロッコの前方、持ちあがっている部分にぶら下がり状態を安定させにかかった。
「く……っそぉ! 俺の体重だけじゃ足りねぇっ!」
冷や汗を流しながら叫ぶ慧。そこへ進路変更を終えたティーアが駆けつけ、二人で何とかレールの上にトロッコを落ち着かせる事に成功した。
「ギリギリセーフか?」
「助かりました……皆さん、もう少しです!」
遠距離攻撃を撃ち込みながら坑道内を駆け抜けるハンター達。やがてぐるりと一周する形で最初の広場へと戻ってくると、全員がトロッコを降りタイラントを待ち構えるのであった。
「よし……疲れはしたが、これで全員無傷で奴と戦える」
汗を拭いながらドリルを構えるアーサー。ハヤテはアーサーとフレアティラミスの二名にストーンアーマーを施す。
「力仕事の後で申し訳ないけれど、もう少し二人には頑張ってもらうよ」
小さな石や鉱石は二人の周囲に浮かび、壁となる。アーニャとエリアスはそれぞれ強化スキルを発動。全員が準備を終えた所で、ゆっくりとタイラントが姿を現した。
「強化が施されているゾンビですかー。実に興味深いですねー」
「強敵だって事はもうわかってる。後はこの戦いで私が何を得られるか、だね」
歩み寄るタイラントを前に笑みを浮かべるエリアス。マファルダは剣を手に小さく深呼吸をした。
「剣機の眷属……まずは、小手調べといきましょう」
慧の言葉の意味など理解しているとは思えない。しかしタイラントは怒りを露わに雄叫びを上げ、猛然とハンター達へと突撃を開始した。
「なあ、これを見てくれ。こいつをどう思う?」
ドリルを見せつけるアーサーだが、タイラントは多分何とも思っていない。思っていないが一番前に居たので狙いを定めたように向かってくる。
繰り出される巨大な拳に打ち付けられるアーサー。だが彼は耐えていた。サイズ差から上半身に攻撃が来ると読んでいたのか、彼の防御性能は上に特化している。ストーンアーマーと防性強化があれば十分耐えられる。
「……っかぁ、痛ぇな……! だが……俺は倒れちゃいないぜ!」
ドリルで殴り返すアーサー。側頭部から血を流しつつ背後の仲間に叫ぶ。
「自分で受けたからわかるが、ハンパな防御性能じゃ二発三発も耐えられるもんじゃない! おまえら絶対前に出るなよ!」
そう、タイラントの腕力はその辺のゾンビの比ではないのだ。後衛職なら一撃で大ダメージを負いかねない。
「敵を押し留めておくには、誰かが体張らねぇとな……! 来い! 俺が相手だ!」
「……かっこいいじゃん。聞いての通りだ! アーサーを支援するぞ!」
ティーアの声に頷く一同。全員で包囲するような布陣を敷き、まずはティーアが先陣を切る。
「さぁて――そろそろ銀獣の狩りの時間といきますか」
側面から駆け寄りすれ違い様に斬りつける。しかしタイラントは防具もあるがまず筋肉が異様に発達しており頑丈だ。
「俺の攻撃力じゃ一撃で肉も断てないか。だが、近づきすぎても危ないからな……」
ティーアに目を向けるタイラント。その反対側から滑り込んだマファルダが足を素早く切りつける。余裕はある。更に足に剣を突き立て、薙ぎ払う腕を飛び退いてかわし、背後から接近するフレアティラミスとすれ違う。
「さっきは良くもやってくれたね! これはその……お返しだよっ♪」
先にマファルダが斬りつけた足に刀を叩き込むと、ようやくタイラントの身体ががくりと傾いた。
「隙だらけだ!」
すかさず下がった顎にドリルを叩き込むアーサー。強烈なアッパーカットが決まり仰け反ったタイラント、そこへ更に頭部を狙ってハヤテの炎の矢が着弾した。
「動きを制限された相手なら止まった的と同じ。ボクが外す筈がないね」
杖を振りかざすと同時に二発の炎の矢が放たれ、それが次々にタイラントへ着弾した。悶えながらハヤテを睨むタイラントだが、アーサーはその身体に掴みかかって押し留める。
「装甲のない場所を狙えば……」
良く狙って引き金を引くアーニャ。慧は敵をじっくりと観察し、眉を潜める。
「外部に装置は取り付けられていないか……当然と言えば当然だな、弱点を露出させる意味がない。異常なまでに発達した筋肉は死体ベースとは思えない。ならばあれが強化措置の結果なのか……?」
「前にやっつけたゾンビは倒したら溶けて消えちゃったんですよねー。そうなったら残念だけど……今は戦いに集中しましょうかー!」
「ぐっ、消えたら困りますが……止むを得ませんね」
初めて遭遇する強化ゾンビに興味津々の慧とエリアスだが、戦いが長引けばアーサーが耐えられない。銃撃に集中していると、タイラントが大きく雄叫びを上げアーサーを思い切り殴りつけた。
「……アーサーさん!」
派手に吹っ飛んで大地に倒れ込むアーサー、その額から血が流れ出す。慌てて叫んだアーニャだが、アーサーは起き上がってこない。
「アーサーさん……」
「マファルダ、こっちに引き付けるぞ!」
ティーアの声に頷き、足並みをそろえてマファルダが走る。二人は同時にタイラントの背中を切り抜け、反転すると同時に再び斬りつけた。タイラントは振り返り二人を狙う。
「回避に集中すれば……!」
思い切り両腕を突き出し、回転するように二人を同時に攻撃するタイラント。予想していなかった動きに冷や汗が滲んだが、ティーアは飛び退き、マファルダは屈んで回避に成功する。
「……っぶね」
「この拳圧、当たったら流石に痛いじゃ済まない」
吼えるタイラント。その声で飛び起きたアーサーは頭を振り、タイラントに駆け寄ると傷ついた太ももにドリルを突き立てた。
「倒れやがれぇえええっ!」
よろめきながらアーサーを殴り飛ばすタイラント。そこへすかさずハヤテがファイアアローを傷口にねじ込むと、ついにタイラントは倒れ込んだ。
「チャンス♪」
大地に切っ先を引きずるようにして駆け寄るフレアティラミス。そうして倒れた巨人の首に刃を食いこませ、ありったけの力を込める。
「これで……終わりっ!」
振りぬかれた刃が血飛沫を舞い上がらせる。首を切断された巨人はそれでも起き上がりフレアティラミスを襲おうとしたが、ぐらりと傾き倒れるとそれっきり動く事はなかった。
「あは、すっご♪ 首なくなっても少し動いた♪」
返り血を拭いながら笑うフレアティラミス。巨人が黒い光を巻き上げて消滅を開始すると、ハンター達は倒れたアーサーに駆け寄るのであった。
「大丈夫だ、もう血も止まった。マテリアルヒーリング大量に詰んできて正解だったぜ」
座り込んだアーサーをアーニャが心配そうに応急措置している。どうやら全員無事に強敵の撃破に成功したようだ。ハヤテは安堵の息を吐き肩を竦めた。
「あれ、これ……? 猫実さん、ちょっと見てくださいー」
そう言って仲間たちから少し離れた場所でエリアスが拾い上げたのは小さな機械の発信器のようなものだ。それだけではない。蒸発したタイラントの体内からは金属片や機械部品のようなものがいくつか出て来たのだ。
「……エリアス? 確か以前戦ったゾンビは……」
「はい、やっつけたら消えちゃいましたー」
「と、いう事は……」
歪虚は倒されたら消えた。では残っているこの部品はなんだ?
「この部品は……人の手で作られた物……なのか?」
見た目は間違いなく機導で扱われる部品だ。それが歪虚にインプラントされている。慧は口元に手を当て思案する。
「錬魔院の人々はこの事実を知っているのでしょうか……?」
「一応サンプルとして回収しておきましょう。こんな成果が少しでも得られるなら私としては大満足ですー」
ニコニコしながら破片を拾い集めるエリアス。慧はこの事実に何か底知れぬ不穏さを感じながら、仲間たちにも報告する為に踵を返した。
「棒立ちでなにしてやがるんだ?」
遠巻きに眺め首を傾げるアーサー・ホーガン(ka0471)。マファルダ・ベルルーティ(ka2311)も不思議そうな様子だ。
「採掘場を襲撃したのに、鉱石に興味を示していない……?」
「話には聞いちゃいたが、動く死体の考える事はわからないな」
「何だっていいよ、相手がヴォイドなら殲滅するだけだし。それじゃ、打ち合わせ通りはじめよっか♪」
肩を竦めるティーア・ズィルバーン(ka0122)に笑いかけながらフレアティラミス(ka0011)は弓を構える。
ティーアがライトで敵を照らした瞬間、フレアティラミスが矢を放った。狙いは強化ゾンビの突撃型。攻撃を受け、三体のゾンビがハンター達へと振り返った。
「釣れた」
「よし撤収。逃げるが勝ちってな」
その辺の石ころを投げつけながら呟くマファルダ。ハンター達はすぐに攻撃を中断しアーサーの合図で一目散に元来た道を走り出した。
当然だがゾンビはハンターを追う。最も移動力が高いのはタイラントの様で、突撃型を抜いてぐんぐん追い上げてくる。
「あいつ、あの図体であれだけ早いのか……!」
「もう少しだ、走れ!」
慌てるティーアにアーサーが声をかける。巨大なゾンビがハンターの背後にまで迫りつつあった時、彼らの逃走方向でライトがちかりと光った。それを合図に四人が左右にずれると、途端に闇の中から火の矢が飛び出し巨漢の足に着弾した。
「うん。狙いは完璧」
片目を瞑って杖を降ろすフワ ハヤテ(ka0004)。ハンター達の逃走方向には一台の大型トロッコが停まっており、そこには残りのハンター達が待機していた。
「……この暗闇の中で相手が踏み出そうとした足を狙ったの?」
冷や汗を流しながら呟くアーニャ・リーニャ(ka0429)。ハヤテの狙いは実に正確。あんな芸当他に出来る者はいなかった。
「今なら転倒しています! 急いでください!」
ライトを手に叫ぶ猫実 慧(ka0393)。派手に倒れたタイラントを抜き突撃型が二体迫ってくる。逃げて来たアーサー達はそのままトロッコに取りつくと、息を合わせてそれを押し始めた。
「いっくよー♪」
「せーの……っ」
四人で押し出すが、特にフレアティラミスとアーサーの踏み込みが強い。あっという間にトロッコに速度が乗り、四人のハンターを乗せ動き出した。
「凄い力。二人でも十分なくらい」
目を丸くするマファルダ。そこへ突撃型ゾンビが追いかけてくるが、敵は近接装備。追いつかれない限り攻撃は受けない。
「うわ、一生懸命走ってますねー……。正直言って研究する分には平気ですけどやっぱり動いてるのはちょっと気持ち悪いですねー」
苦笑しながら魔導銃を構えるエリアス・トートセシャ(ka0748)。同時にトロッコ上の四人が得物を構える。
そう、これが彼らの作戦だ。四人がトロッコを押して全員を移動させ、逃げながら手の開いた四人が遠距離攻撃でまずは突撃型を倒す。これで三体のゾンビを同時に相手にせずに済み、うまく行けば万全の状態で強敵であるタイラントと戦える。
「よく引き付けて一斉攻撃で倒しましょう」
ライトで敵を照らしつつ銃を構える慧。アーニャとエリアスは全員に強化を施し、万全に敵の接近を待つ。
「これだけ引き付ければ外さない……」
「新しく手に入れた魔道銃の威力をご覧あれー、ですー」
「頭上を失礼するよ」
二丁の拳銃を構え連射するアーニャ。突撃型ゾンビは攻撃を受けながらも走ってくる。
ハヤテは杖の先端に水の塊を作り、それを発射。突撃型が衝撃で足を止めると、すかさず慧とエリアスが同時に弾丸を放った。
二つの弾丸はゾンビの頭部を貫通する。結局突撃型が一体何もできずに倒されると、もう一体が必死に追いついてくる。しかし銃声が何発も鳴り響き、マテリアルの光が爆ぜるとすぐに動かなくなった。
「わお。この作戦うまく行きすぎじゃないですかー?」
「ううん……まだ大物が残ってる」
上機嫌なエリアスの横で首を振るアーニャ。確かに先ほどからタイラントの追撃がない。
「追いかけてこないのはおかしい。もしかしたら先回りされてるかも……」
「だとすればこの先ですね。横道から合流するルートがあります。進路を変更しましょう! 誰か先行してレールを操作出来ますか!?」
慧の声に呼応したのはマファルダだ。トロッコ押しから抜け、一瞬で追い越して先行。念の為にとアーニャが運動強化を施す。
「これが切り替え装置……っ!?」
顔を向けた瞬間、闇の中からタイラントの腕が飛び出してきた。とっさに身を逸らしてかわし、背後に飛びながらレバーを倒して進路を切り替える。
「本当に待ち伏せしてるなんて……」
素早く剣で反撃するが相手は意に介さない。たらりと冷や汗を流し慌てて身を翻すと、怪物は人型とは思えぬ咆哮を上げた。
「まずいな……追いつかれるぞ! 広場に移動しよう!」
「次の切り替えポイントを右です! 予定より早いですがそれでショートカット出来ます!」
慧の声に飛び出すティーア。切り替えポイントへ彼が先行する間にも巨漢は両腕でガードを固めつつ猛然と駆け寄ってくる。
「うわっ、きてるね! 流石にちょっと疲れて来たよっ」
「踏ん張れフレアティラミス! 俺達が止まったら全員やられちまう!」
必死で走り続けるフレアティラミスとアーサー。勢いが乗っているとは言え元々最大速度はさほど出ない設計だ。敵との距離は縮まっていく。
エリアスとアーニャは銃を連射しているが全く足が止まらない。ハヤテの魔法も今度は停止に至らない。先の一撃は不意打ちが完璧に決まったが、今度は相手も学習している。
「拙いね、追いつかれる……二人共避けるんだ!」
ハヤテの声に咄嗟に左右に飛ぶフレアティラミスとアーサー。振り下ろされた拳を回避したが、トロッコを掴まれてしまった。
無理な制動にトロッコの前輪が持ち上がり全体が傾いた。火花を散らしながらトロッコはタイラントを引きずって前進する。
「この……!」
「顔怖いですねー! 離れてください!」
至近距離で銃弾を撃ち込むアーニャとエリアス。マファルダは背後から飛びかかり、タイラントの背中に剣を突き立てた。
「痛みがないから怯まないの……!?」
「下がってろマファルダ!」
魔導ドリルを回転させながら駆け寄るアーサー。タイラントの太ももにドリルを押し当てながら雄叫びを上げる。
「その腕、離してもらおっか!」
素早く刃を抜くと同時、腕を斬りつけるマファルダ。渾身の一撃でタイラントは腕を離したが、切断には至らない。
「かったぁ~!? さっすがは眷属♪」
「言ってる場合か! 走れ走れ!」
解き放たれたトロッコだが、不自然なウィリー状態が続いていた。先ほどの衝撃で今度はひっくり返ろうかという時、慧はトロッコの前方、持ちあがっている部分にぶら下がり状態を安定させにかかった。
「く……っそぉ! 俺の体重だけじゃ足りねぇっ!」
冷や汗を流しながら叫ぶ慧。そこへ進路変更を終えたティーアが駆けつけ、二人で何とかレールの上にトロッコを落ち着かせる事に成功した。
「ギリギリセーフか?」
「助かりました……皆さん、もう少しです!」
遠距離攻撃を撃ち込みながら坑道内を駆け抜けるハンター達。やがてぐるりと一周する形で最初の広場へと戻ってくると、全員がトロッコを降りタイラントを待ち構えるのであった。
「よし……疲れはしたが、これで全員無傷で奴と戦える」
汗を拭いながらドリルを構えるアーサー。ハヤテはアーサーとフレアティラミスの二名にストーンアーマーを施す。
「力仕事の後で申し訳ないけれど、もう少し二人には頑張ってもらうよ」
小さな石や鉱石は二人の周囲に浮かび、壁となる。アーニャとエリアスはそれぞれ強化スキルを発動。全員が準備を終えた所で、ゆっくりとタイラントが姿を現した。
「強化が施されているゾンビですかー。実に興味深いですねー」
「強敵だって事はもうわかってる。後はこの戦いで私が何を得られるか、だね」
歩み寄るタイラントを前に笑みを浮かべるエリアス。マファルダは剣を手に小さく深呼吸をした。
「剣機の眷属……まずは、小手調べといきましょう」
慧の言葉の意味など理解しているとは思えない。しかしタイラントは怒りを露わに雄叫びを上げ、猛然とハンター達へと突撃を開始した。
「なあ、これを見てくれ。こいつをどう思う?」
ドリルを見せつけるアーサーだが、タイラントは多分何とも思っていない。思っていないが一番前に居たので狙いを定めたように向かってくる。
繰り出される巨大な拳に打ち付けられるアーサー。だが彼は耐えていた。サイズ差から上半身に攻撃が来ると読んでいたのか、彼の防御性能は上に特化している。ストーンアーマーと防性強化があれば十分耐えられる。
「……っかぁ、痛ぇな……! だが……俺は倒れちゃいないぜ!」
ドリルで殴り返すアーサー。側頭部から血を流しつつ背後の仲間に叫ぶ。
「自分で受けたからわかるが、ハンパな防御性能じゃ二発三発も耐えられるもんじゃない! おまえら絶対前に出るなよ!」
そう、タイラントの腕力はその辺のゾンビの比ではないのだ。後衛職なら一撃で大ダメージを負いかねない。
「敵を押し留めておくには、誰かが体張らねぇとな……! 来い! 俺が相手だ!」
「……かっこいいじゃん。聞いての通りだ! アーサーを支援するぞ!」
ティーアの声に頷く一同。全員で包囲するような布陣を敷き、まずはティーアが先陣を切る。
「さぁて――そろそろ銀獣の狩りの時間といきますか」
側面から駆け寄りすれ違い様に斬りつける。しかしタイラントは防具もあるがまず筋肉が異様に発達しており頑丈だ。
「俺の攻撃力じゃ一撃で肉も断てないか。だが、近づきすぎても危ないからな……」
ティーアに目を向けるタイラント。その反対側から滑り込んだマファルダが足を素早く切りつける。余裕はある。更に足に剣を突き立て、薙ぎ払う腕を飛び退いてかわし、背後から接近するフレアティラミスとすれ違う。
「さっきは良くもやってくれたね! これはその……お返しだよっ♪」
先にマファルダが斬りつけた足に刀を叩き込むと、ようやくタイラントの身体ががくりと傾いた。
「隙だらけだ!」
すかさず下がった顎にドリルを叩き込むアーサー。強烈なアッパーカットが決まり仰け反ったタイラント、そこへ更に頭部を狙ってハヤテの炎の矢が着弾した。
「動きを制限された相手なら止まった的と同じ。ボクが外す筈がないね」
杖を振りかざすと同時に二発の炎の矢が放たれ、それが次々にタイラントへ着弾した。悶えながらハヤテを睨むタイラントだが、アーサーはその身体に掴みかかって押し留める。
「装甲のない場所を狙えば……」
良く狙って引き金を引くアーニャ。慧は敵をじっくりと観察し、眉を潜める。
「外部に装置は取り付けられていないか……当然と言えば当然だな、弱点を露出させる意味がない。異常なまでに発達した筋肉は死体ベースとは思えない。ならばあれが強化措置の結果なのか……?」
「前にやっつけたゾンビは倒したら溶けて消えちゃったんですよねー。そうなったら残念だけど……今は戦いに集中しましょうかー!」
「ぐっ、消えたら困りますが……止むを得ませんね」
初めて遭遇する強化ゾンビに興味津々の慧とエリアスだが、戦いが長引けばアーサーが耐えられない。銃撃に集中していると、タイラントが大きく雄叫びを上げアーサーを思い切り殴りつけた。
「……アーサーさん!」
派手に吹っ飛んで大地に倒れ込むアーサー、その額から血が流れ出す。慌てて叫んだアーニャだが、アーサーは起き上がってこない。
「アーサーさん……」
「マファルダ、こっちに引き付けるぞ!」
ティーアの声に頷き、足並みをそろえてマファルダが走る。二人は同時にタイラントの背中を切り抜け、反転すると同時に再び斬りつけた。タイラントは振り返り二人を狙う。
「回避に集中すれば……!」
思い切り両腕を突き出し、回転するように二人を同時に攻撃するタイラント。予想していなかった動きに冷や汗が滲んだが、ティーアは飛び退き、マファルダは屈んで回避に成功する。
「……っぶね」
「この拳圧、当たったら流石に痛いじゃ済まない」
吼えるタイラント。その声で飛び起きたアーサーは頭を振り、タイラントに駆け寄ると傷ついた太ももにドリルを突き立てた。
「倒れやがれぇえええっ!」
よろめきながらアーサーを殴り飛ばすタイラント。そこへすかさずハヤテがファイアアローを傷口にねじ込むと、ついにタイラントは倒れ込んだ。
「チャンス♪」
大地に切っ先を引きずるようにして駆け寄るフレアティラミス。そうして倒れた巨人の首に刃を食いこませ、ありったけの力を込める。
「これで……終わりっ!」
振りぬかれた刃が血飛沫を舞い上がらせる。首を切断された巨人はそれでも起き上がりフレアティラミスを襲おうとしたが、ぐらりと傾き倒れるとそれっきり動く事はなかった。
「あは、すっご♪ 首なくなっても少し動いた♪」
返り血を拭いながら笑うフレアティラミス。巨人が黒い光を巻き上げて消滅を開始すると、ハンター達は倒れたアーサーに駆け寄るのであった。
「大丈夫だ、もう血も止まった。マテリアルヒーリング大量に詰んできて正解だったぜ」
座り込んだアーサーをアーニャが心配そうに応急措置している。どうやら全員無事に強敵の撃破に成功したようだ。ハヤテは安堵の息を吐き肩を竦めた。
「あれ、これ……? 猫実さん、ちょっと見てくださいー」
そう言って仲間たちから少し離れた場所でエリアスが拾い上げたのは小さな機械の発信器のようなものだ。それだけではない。蒸発したタイラントの体内からは金属片や機械部品のようなものがいくつか出て来たのだ。
「……エリアス? 確か以前戦ったゾンビは……」
「はい、やっつけたら消えちゃいましたー」
「と、いう事は……」
歪虚は倒されたら消えた。では残っているこの部品はなんだ?
「この部品は……人の手で作られた物……なのか?」
見た目は間違いなく機導で扱われる部品だ。それが歪虚にインプラントされている。慧は口元に手を当て思案する。
「錬魔院の人々はこの事実を知っているのでしょうか……?」
「一応サンプルとして回収しておきましょう。こんな成果が少しでも得られるなら私としては大満足ですー」
ニコニコしながら破片を拾い集めるエリアス。慧はこの事実に何か底知れぬ不穏さを感じながら、仲間たちにも報告する為に踵を返した。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
依頼相談スレッド 猫実 慧(ka0393) 人間(リアルブルー)|23才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2014/07/11 06:25:08 |
||
質問卓 フワ ハヤテ(ka0004) エルフ|26才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2014/07/09 23:50:21 |
||
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/06 21:36:07 |