ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】光る剣戟
マスター:岡本龍馬

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/05 19:00
- 完成日
- 2015/06/11 14:53
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるが、今回のジェオルジ村長祭はどんな催しが行われるのか。
●
夜の闇の中、そこかしこでチラチラと松明の灯が揺れる。
そしてその灯が照らす盃はキラキラと光を返す。
……戦の勝利を肴に飲むそんな酒は、格段にうまくなるものだ。
祭りの一角、酒が入ったことで饒舌になった者が、ふとこんなことを口にした。
「俺の槍は~どんなぁ、盾でも~貫くのさ~」
それは神のいたずらだったのだろうか。あろうことか、この男の隣には先の戦いで両手盾を使用したハンターが座っていたのだ。
「おい旦那? 俺の盾にはそんなひょろっとした槍なんかじゃ傷一つ付けられねぇぜ?」
「ためして~みるかぁ~?」
酒というのは怖い。喧嘩っ早くなった二人は、言うが早いが槍と盾を取り上げて立ち上がる。
二人の目がハンターのそれになり、酒の席だというのに殺伐とした空気を放ち始めると、止める声よりも二人を助長させるような掛け声が多くなっていく。
やんややんやと誰からともなく騒げば、なんだなんだと人が集まってくる。
いつしか二人の男たちによるいざこざは、後から来た人がイベントと勘違いする程度には大きくなっていた。
……が、そんな喧嘩を運営が許すわけもなく。
「はい、ストップストップ」
「落ち着いて、落ち着いて、ね?」
割り込んでいって説得を始めるスタッフだったのだが、渦中にいる二人のハンター達よりオーディエンスの騒ぎが収まりそうにない。
「はぁ……」
スタッフの呆れ交じりのため息が喧騒の中に吸い込まれていった。
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるが、今回のジェオルジ村長祭はどんな催しが行われるのか。
●
夜の闇の中、そこかしこでチラチラと松明の灯が揺れる。
そしてその灯が照らす盃はキラキラと光を返す。
……戦の勝利を肴に飲むそんな酒は、格段にうまくなるものだ。
祭りの一角、酒が入ったことで饒舌になった者が、ふとこんなことを口にした。
「俺の槍は~どんなぁ、盾でも~貫くのさ~」
それは神のいたずらだったのだろうか。あろうことか、この男の隣には先の戦いで両手盾を使用したハンターが座っていたのだ。
「おい旦那? 俺の盾にはそんなひょろっとした槍なんかじゃ傷一つ付けられねぇぜ?」
「ためして~みるかぁ~?」
酒というのは怖い。喧嘩っ早くなった二人は、言うが早いが槍と盾を取り上げて立ち上がる。
二人の目がハンターのそれになり、酒の席だというのに殺伐とした空気を放ち始めると、止める声よりも二人を助長させるような掛け声が多くなっていく。
やんややんやと誰からともなく騒げば、なんだなんだと人が集まってくる。
いつしか二人の男たちによるいざこざは、後から来た人がイベントと勘違いする程度には大きくなっていた。
……が、そんな喧嘩を運営が許すわけもなく。
「はい、ストップストップ」
「落ち着いて、落ち着いて、ね?」
割り込んでいって説得を始めるスタッフだったのだが、渦中にいる二人のハンター達よりオーディエンスの騒ぎが収まりそうにない。
「はぁ……」
スタッフの呆れ交じりのため息が喧騒の中に吸い込まれていった。
リプレイ本文
●ラウンド1
急遽用意された特設スペースで、リリティア・オルベール(ka3054)と鹿島 雲雀(ka3706)が対峙していた。
「お客様方は、見せ物を御所望のようだぜ」
「本業とはまた違いますが、これも公演の一つですからね」
二人の手にする得物は、太刀と巨斧。武器が大きいというだけでも観客のテンションが上がっていく。
「用意はいいですか?」
「張り切っていきますよー!!」
「って事で――ショータイムだ!」
スタッフの問いかけに二人の戦士が首肯を返す。
「始め!」
戦闘開始の合図、その瞬間。
合図とほぼ同時に動きを見せたリリティアが雲雀に肉薄すると、彼女の手にする太刀が一閃を放つ。
ガキィイィン……。
金属と金属のぶつかる大きな音が一つ響いた。見れば、リリティアの初激を雲雀が受け止めている。
鍔迫り合いに近い状態の中、苦笑ながらの雲雀が口パクで、
「見せ物な?」
と語り掛けると、
「とと……ごめんなさい、白けない程度に派手な技でいきますね」
リリティアがそう返す。
仕切り直しというように、二人は観客から不自然に映らぬよう、いったん距離を取る。
再度対峙するリリティアと雲雀。
「この剣は、同時に2箇所斬れますよ。避けられますか?」
先に動きを見せたのは、リリティアだ。
雲雀に襲い掛かる剣筋は二本。対して雲雀は体を巨斧の柄の下に潜り込ませ、斜めにした柄で受け流す。
そのまま体を回転させた雲雀は、それに合わせて移動させた巨斧を踏み込みと同時に打ち下ろした。
リリティアは地を蹴り空中に舞いその攻撃をかわしたが、彼女の代わりに攻撃を受けた地面が抉られていることから一撃の重さが窺える。
いまだ地面に食い込んだままの巨斧にリリティアが着地したかと思うと、そこを足場にして彼女の体は再び空中へ。
「どこを狙ってるんですか? 私はここですよっ!!」
雲雀の頭上を取る位置から太刀の大振りの一撃。
冷静に雲雀は斧の柄を肩に担ぐと、しゃがみこむ勢いでそれを跳ね上げる。
地面から打ち上げられた巨斧が、空中から振り下ろされる太刀に接触。小気味よい金属音と共に太刀の軌道がそれる。
しかしリリティアは地面に足をつけた瞬間に第二撃を繰り出す。
「鞘はただの飾りじゃないですからねー!!」
しゃがみこむ雲雀に回避はできない。だから雲雀は体を柄の後ろに回すと、力のままに石突を地面に向け振り下ろした。
すると、つっかえ棒となった柄が迫りくるリリティアの鞘を弾く。
その一瞬の隙をついて雲雀は巨斧を持ちなおすと、立ち上がる勢いでリリティアに接近。
だが攻撃には入らず、アイコンタクトを送る雲雀。意味を理解したようでリリティアも頷きを返す。
一度距離を取る二人だったが、瞬く間にその距離が詰まる。
そして、二人の動きが止まった。
それもそのはず、雲雀の打ち下ろしが的確にリリティアの脇腹を捉え、リリティアの一撃も雲雀の首筋を捉えている。
その気になればお互いが相手を亡き者にできる距離で寸止めされた武器。
「……ここまでだな。いやぁ、中々に激しかったぜ?」
固まっていた時間は雲雀のその言葉によって融解した。
「いい経験になりましたよー、またやりませんか?」
リリティアもそう答え、武器を下ろす。
そこから先の会話は、やっと状況に追いついた観客たちの歓声によってかき消されてしまった。
●ラウンド2
いまだ興奮冷めやらぬ中、互いに刀を携えた新たな組み合わせが姿を現した。
J(ka3142)と和泉 澪(ka4070)の二人だ。
「あらら、熱くなってますねー。折角ですし、私達が熱い一戦をお見せしましょうっ」
「この熱に乗れるように頑張ろうか」
二人が向かい合ったのを確認してからスタッフの合図がかかる。
「始め!」
最初に体を動かしたのは澪だった。
「いざ、尋常に勝負ですっ!」
その掛け声とともに距離を詰めた澪の鋭い剣筋がJにふりかかる。
澪の手数の多さは疾影士を象徴しており、その上途切れることもない。
しかしJはその攻撃を、必要最低限の動きで捌いていく。速さが間に合わないのならば、一撃一撃の動きを小さくすればいい。
攻撃側ならまだしも、防御に回っているJにとって、それはさほど難しいことでもなかった。
「これなら……!」
澪が地面を蹴ったかと思うとその体は宙に浮き、飛び上がったその力は回転のエネルギーに変換される。
そしてそのまま遠心力の乗った一撃がJに襲い掛かった。
「……」
キイィィン……。
まるで予知していたかのように、Jはその手に持った鉄扇で的確に刀を受け止めた。
大振りの一撃を受け止められたところで隙が生じた澪の懐に、容赦なくJの一撃が加えられる。
だがそれが実際にヒットすることはなく、澪は瞬脚とドッジダッシュを使用してぎりぎりでかわして見せる。
「おっと、私はこっちですよっ。残像でも見えましたか?」
そのままJの背後に着地した澪は、着地の瞬間に膝を曲げていたため、その立ち上がる勢いを加えた切り上げを返す。
けれど、その攻撃は振り向きざまにムーバブルシールドを使用したJの鉄扇によって、明後日の方向へと受け流されてしまう。
奇しくも刀を振りぬく形となった澪はそのまま刀を反転させて、再度切り下しを仕掛ける。
しかしその一閃がJを切ることはなく、ただむなしく空を切った。
Jの予測が的中し、澪の太刀筋から体軸をずらしたのだ。
澪はその攻撃の隙を埋めるために瞬脚を使用してJから距離を取るが、Jはそれを許さない。
「これはいかが?」
剣の一閃とは大きく趣を異にする一条の光が翔ると、それは一直線に澪を狙い撃つ。
再度瞬脚を使用することで何とか直撃を免れる澪。
けれどJがその隙を見落とすはずもなく、ジェットブーツで距離を一気に詰めて手にした刀を一振り。
澪はなんとか体勢を立て直してそれを受け止めて斬り合いに持ち込むが、刀を振るたびに感じる違和感があった。
「ふふ」
ただ静かな笑みを浮かべるJの体が、正面に捉えられない。違和感の正体がそれだと気づいた澪は一歩踏み込み、無理矢理つばぜり合いに持ち込んだ。
ギリギリと金属の擦れる音を発しながらお互いの出方をうかがう。つばぜり合いの状態ではJも正面から対抗するほかない。
武が悪いと判断して後ろに飛びのくJを、今度は澪が追撃する。
「距離を取っても駄目ですよ? 鳴隼一刀流、隼迅撃!」
瞬脚にランアウトを重ねた加速で澪は瞬く間にJの目の前へと迫る。
速さの乗った一閃が今度こそJの正面を捉えた。澪がそう思ったとき。
待っていたと言わんばかりにJが体を低く落とした。
速度が乗っていた剣はそのとっさの方向転換に対応しきれずJの頭上を通過する。そして対照的に澪の腹には硬い感触が。
……潜り込むような体勢のJの剣がそこにはあった。
「そこまで!」
勝負ありと判断したスタッフからストップがかかる。
それを受けて二人が武器を下ろすと、割れんばかりの歓声がその場を包み込んだ。
「良い演武でしたねっ。また手合せしたいです」
お辞儀をしつつ素直な感想を述べる澪に、
「私も楽しかったわ。また機会があったらやりましょうか」
Jも笑顔でそう答える。
観客の盛り上がりの中二人はスペースから姿を消した。
●ラウンド3
観客のテンションは最高潮。
そんななか、いよいよ演武の締めにふさわしいタッグマッチが幕を開けようとしていた。
イレーヌ(ka1372)と八劒 颯(ka1804)のチーム、そしてイーディス・ノースハイド(ka2106)とNo.0(ka4640)のチームが特設スペースの中心で向かい合う。
観客の興奮に当てられたのか、少しばかりテンションの上がったスタッフが最後の始まりを告げる。
「レディィ……ゴォォォ!」
視線で火花を散らす四人のなか、その沈黙を破るように颯が体を動かす。
颯の握る大型のドリルが狙う先はイーディス。
しかしイーディスの堅牢な楯の前にその攻撃は通らない。そればかりか、イーディスは構えた楯ごと颯に体当たりをする。
その楯の大きさ故、体を突き崩される颯にイーディスの追撃が加えられる。とっさに割り込ませた楯も威力を減衰する程度に留まり、颯は衝撃をじかに受けてしまう。
そこに追い打ちをかけるようにするのが0の斧だった。
大きく振り上げられた斧が颯に照準を合わせる。そしていざ振り下ろされた瞬間。
唐突に0と颯の間にイレーヌが割り込むと、イレーヌの棍が0の斧を弾いた。
「大丈夫か?」
「ええ、まだまだいけますわ!」
そう言うと、颯は攻撃後の隙を見せている0に攻撃を仕掛けた。
ムーバブルシールドによってドリル本体での攻撃は弾かれてしまう。しかし颯のドリルは回るだけじゃない。
そこから放出されるエレクトリックショック。これによって0の体が痺れ、動けなくなった。
時を同じくして、イレーヌはイーディスへ一発一発的確に見極めた攻撃を仕掛けていた。
無傷のうちにすべてを叩き落とすイーディスだったが、思うようにイレーヌへの反撃の糸口がつかめない。
何かないかと模索するイーディスの目に、今まさにエレクトリックショックを浴びる0の姿が入った。
これはタッグマッチだ。自分一人で戦っているわけじゃない。
イーディスはイレーヌの攻撃を捌きつつ移動し、颯の攻撃から0を庇える位置まで動く。
「0君、大丈夫だよね?」
二人の攻撃を受けつつも確実にいなしていくイーディスの業は、流石というほかなかった。
「問題……ない」
麻痺から回復した0は、颯とイレーヌから見ればイーディスの影になる場所で立ち上がると、標的をイレーヌに斧を振り上げた。
突如として現れた0に反応が遅れてしまい、イレーヌ自身のガードが間に合わない。
……はずだったのだが、イレーヌの前に出現した巨大な楯によって、斧がイレーヌに達することはなかった。
颯の楯が、彼女の超重練成によって瞬間的に巨大化したのである。
けれどそんなことをすれば目の前の敵から意識がそれてしまうのは必然。
颯の楯が元の大きさに戻り始め、それが完全に戻り切ったタイミングを狙ったイーディスの一撃。
いざ楯による突き崩しを加えようとしたとき、縮む楯の向こうから姿を現したのはイレーヌだった。巨大化から収縮までの間に移動していたのだろう。
颯を庇ってイレーヌが楯を受け止める。だがその楯の攻撃の後、追撃の剣までは対応しきれずにイレーヌは後方へと吹き飛ばされた。
まさにそのタイミング、颯の姿も地上にはなかった。
イーディスと0は、自分たちに影がかかったことで嫌でも颯の位置に気づく。
二人の頭上を覆う影。それは再び巨大化した颯の楯だった。
重力加速度を乗せて迫りくるそれは、直前まで攻撃を加えていたイーディスでは回避が間に合わない。
そこで0はムーバブルシールドを使用しつつ、楯の端っこで角度をつけて受け止めた。
0が力を加えた部分を支点として軌道を変える楯。
結局その楯が二人を押し潰すことはなく、タイムリミット共に縮んでいった。
0がかばったおかげで無事だったイーディスが、立ち上がって0の隣に並ぶ。
楯の収縮と共に後方へ引いた颯の隣には、微笑を浮かべつつ復活したイレーヌが立つ。
こうして対峙する四人。
しかしその沈黙も長くは続かない。
イレーヌが0へ向けて棍に蹴りを加えた連続攻撃を仕掛けると、斧と体で攻撃をいなしていく0。
隣では颯のドリルを、またしてもイーディスの楯が防ぎきっている。だがその防御に一瞬の隙が生じたところに、身をひるがえしたイレーヌが奇襲をかけた。
0と対峙していたはずのイレーヌが突然割り込んできたことで、イーディスは胴に一撃をもらってしまう。
たまらず片膝をつくイーディスだったが、イレーヌに追いついた0の、斧の柄頭を用いた打撃攻撃がイレーヌにヒット……しなかった。
またしても巨大化した颯の楯に攻撃を阻まれてしまう。
その楯が収縮を見せ始め元のサイズに戻る中、その影からイレーヌが飛び出した。
今を好機とみて、体をひねって横回転を加えた重い一撃をイーディスへ向けるイレーヌ。
しかしすでにこの手の奇襲を経験していたイーディスに油断はなかった。
イレーヌの攻撃に即座に反応を示すと、楯でもってして思いっきりはじき返す。
自身の攻撃の重さと反発力の大きさで大きく体をのけぞらせるイレーヌに、イーディスのフルスイングが襲い掛かった。
いくらラバーパッドをかぶせているとはいえ、その芯は剣。たまらずイレーヌの体が空を切る。
そしてそれは思わぬところに影響を及ぼす。
イーディスが吹っ飛ばした先、そこには0と交戦する颯の姿があった。
0の斧を受け止めるべく颯が踏み込みを強くした瞬間、思いもよらぬところからの攻撃を受ける。何事かと思い目を向けると、その衝撃の主はイレーヌだった。
受け流すわけにもいかず、受け止めようとする颯。
だが、イレーヌと接触したことで颯の体勢が崩れているタイミングを見落とさず、0は足払いをかけた。
もともとふらついていた颯はたまらず倒れこんでしまう。
それを見た0が、とどめと言わんばかりに斧を振り上げる。
これで勝負ありだな。観客のだれもがそう思った時だった。
「ぐ……」
起き上ったイレーヌの抜き胴が0に見事に決まり、0が崩れた。
イレーヌは、イーディスからの初激こそ重かったものの、颯をクッションにしたこともありそれ以降のダメージはダメージを受けていなかったのである。
その大どんでん返しに湧く観客の声援を味方につけるかのように、そのままの勢いでイーディスへと突進するイレーヌ。
やはりその攻撃は縦に阻まれ通らないが、イレーヌの狙いはそこではなかった。
追撃に移ったイーディスの剣をイレーヌが体で受ける。
一見同じことを繰り返しているだけの浅はかな行動に見えるが、そうじゃない。
イレーヌがイーディスの剣を体で受けているということは他に攻撃が向かないということ。
「びりびり電撃どりるぅ~!!!!」
叫びと共に空中から落下してくるのは颯。
イレーヌをぶつけられたことで颯はかなりのダメージを追っていたが、なんとかジェットブーツで空に飛び、あとは自由落下に任せているのだ。
イーディスの楯と接触した瞬間、放たれたエレクトリックショックがイーディスの自由を奪った。
●剣劇の余韻
大どんでん返しを見せたタッグマッチの後、観客たちが満足して去って行った後も、会場には熱が残っていた。
対して物音は、先ほどのまでの騒ぎが嘘のように静まり返っている。
そこに座る男が一人。
件の槍使いだった。
彼の頭にふと、こんな言葉がよぎる。
ケンカするほど仲がいい。
……いつかはそれを証明する日が来るのだろうか。
急遽用意された特設スペースで、リリティア・オルベール(ka3054)と鹿島 雲雀(ka3706)が対峙していた。
「お客様方は、見せ物を御所望のようだぜ」
「本業とはまた違いますが、これも公演の一つですからね」
二人の手にする得物は、太刀と巨斧。武器が大きいというだけでも観客のテンションが上がっていく。
「用意はいいですか?」
「張り切っていきますよー!!」
「って事で――ショータイムだ!」
スタッフの問いかけに二人の戦士が首肯を返す。
「始め!」
戦闘開始の合図、その瞬間。
合図とほぼ同時に動きを見せたリリティアが雲雀に肉薄すると、彼女の手にする太刀が一閃を放つ。
ガキィイィン……。
金属と金属のぶつかる大きな音が一つ響いた。見れば、リリティアの初激を雲雀が受け止めている。
鍔迫り合いに近い状態の中、苦笑ながらの雲雀が口パクで、
「見せ物な?」
と語り掛けると、
「とと……ごめんなさい、白けない程度に派手な技でいきますね」
リリティアがそう返す。
仕切り直しというように、二人は観客から不自然に映らぬよう、いったん距離を取る。
再度対峙するリリティアと雲雀。
「この剣は、同時に2箇所斬れますよ。避けられますか?」
先に動きを見せたのは、リリティアだ。
雲雀に襲い掛かる剣筋は二本。対して雲雀は体を巨斧の柄の下に潜り込ませ、斜めにした柄で受け流す。
そのまま体を回転させた雲雀は、それに合わせて移動させた巨斧を踏み込みと同時に打ち下ろした。
リリティアは地を蹴り空中に舞いその攻撃をかわしたが、彼女の代わりに攻撃を受けた地面が抉られていることから一撃の重さが窺える。
いまだ地面に食い込んだままの巨斧にリリティアが着地したかと思うと、そこを足場にして彼女の体は再び空中へ。
「どこを狙ってるんですか? 私はここですよっ!!」
雲雀の頭上を取る位置から太刀の大振りの一撃。
冷静に雲雀は斧の柄を肩に担ぐと、しゃがみこむ勢いでそれを跳ね上げる。
地面から打ち上げられた巨斧が、空中から振り下ろされる太刀に接触。小気味よい金属音と共に太刀の軌道がそれる。
しかしリリティアは地面に足をつけた瞬間に第二撃を繰り出す。
「鞘はただの飾りじゃないですからねー!!」
しゃがみこむ雲雀に回避はできない。だから雲雀は体を柄の後ろに回すと、力のままに石突を地面に向け振り下ろした。
すると、つっかえ棒となった柄が迫りくるリリティアの鞘を弾く。
その一瞬の隙をついて雲雀は巨斧を持ちなおすと、立ち上がる勢いでリリティアに接近。
だが攻撃には入らず、アイコンタクトを送る雲雀。意味を理解したようでリリティアも頷きを返す。
一度距離を取る二人だったが、瞬く間にその距離が詰まる。
そして、二人の動きが止まった。
それもそのはず、雲雀の打ち下ろしが的確にリリティアの脇腹を捉え、リリティアの一撃も雲雀の首筋を捉えている。
その気になればお互いが相手を亡き者にできる距離で寸止めされた武器。
「……ここまでだな。いやぁ、中々に激しかったぜ?」
固まっていた時間は雲雀のその言葉によって融解した。
「いい経験になりましたよー、またやりませんか?」
リリティアもそう答え、武器を下ろす。
そこから先の会話は、やっと状況に追いついた観客たちの歓声によってかき消されてしまった。
●ラウンド2
いまだ興奮冷めやらぬ中、互いに刀を携えた新たな組み合わせが姿を現した。
J(ka3142)と和泉 澪(ka4070)の二人だ。
「あらら、熱くなってますねー。折角ですし、私達が熱い一戦をお見せしましょうっ」
「この熱に乗れるように頑張ろうか」
二人が向かい合ったのを確認してからスタッフの合図がかかる。
「始め!」
最初に体を動かしたのは澪だった。
「いざ、尋常に勝負ですっ!」
その掛け声とともに距離を詰めた澪の鋭い剣筋がJにふりかかる。
澪の手数の多さは疾影士を象徴しており、その上途切れることもない。
しかしJはその攻撃を、必要最低限の動きで捌いていく。速さが間に合わないのならば、一撃一撃の動きを小さくすればいい。
攻撃側ならまだしも、防御に回っているJにとって、それはさほど難しいことでもなかった。
「これなら……!」
澪が地面を蹴ったかと思うとその体は宙に浮き、飛び上がったその力は回転のエネルギーに変換される。
そしてそのまま遠心力の乗った一撃がJに襲い掛かった。
「……」
キイィィン……。
まるで予知していたかのように、Jはその手に持った鉄扇で的確に刀を受け止めた。
大振りの一撃を受け止められたところで隙が生じた澪の懐に、容赦なくJの一撃が加えられる。
だがそれが実際にヒットすることはなく、澪は瞬脚とドッジダッシュを使用してぎりぎりでかわして見せる。
「おっと、私はこっちですよっ。残像でも見えましたか?」
そのままJの背後に着地した澪は、着地の瞬間に膝を曲げていたため、その立ち上がる勢いを加えた切り上げを返す。
けれど、その攻撃は振り向きざまにムーバブルシールドを使用したJの鉄扇によって、明後日の方向へと受け流されてしまう。
奇しくも刀を振りぬく形となった澪はそのまま刀を反転させて、再度切り下しを仕掛ける。
しかしその一閃がJを切ることはなく、ただむなしく空を切った。
Jの予測が的中し、澪の太刀筋から体軸をずらしたのだ。
澪はその攻撃の隙を埋めるために瞬脚を使用してJから距離を取るが、Jはそれを許さない。
「これはいかが?」
剣の一閃とは大きく趣を異にする一条の光が翔ると、それは一直線に澪を狙い撃つ。
再度瞬脚を使用することで何とか直撃を免れる澪。
けれどJがその隙を見落とすはずもなく、ジェットブーツで距離を一気に詰めて手にした刀を一振り。
澪はなんとか体勢を立て直してそれを受け止めて斬り合いに持ち込むが、刀を振るたびに感じる違和感があった。
「ふふ」
ただ静かな笑みを浮かべるJの体が、正面に捉えられない。違和感の正体がそれだと気づいた澪は一歩踏み込み、無理矢理つばぜり合いに持ち込んだ。
ギリギリと金属の擦れる音を発しながらお互いの出方をうかがう。つばぜり合いの状態ではJも正面から対抗するほかない。
武が悪いと判断して後ろに飛びのくJを、今度は澪が追撃する。
「距離を取っても駄目ですよ? 鳴隼一刀流、隼迅撃!」
瞬脚にランアウトを重ねた加速で澪は瞬く間にJの目の前へと迫る。
速さの乗った一閃が今度こそJの正面を捉えた。澪がそう思ったとき。
待っていたと言わんばかりにJが体を低く落とした。
速度が乗っていた剣はそのとっさの方向転換に対応しきれずJの頭上を通過する。そして対照的に澪の腹には硬い感触が。
……潜り込むような体勢のJの剣がそこにはあった。
「そこまで!」
勝負ありと判断したスタッフからストップがかかる。
それを受けて二人が武器を下ろすと、割れんばかりの歓声がその場を包み込んだ。
「良い演武でしたねっ。また手合せしたいです」
お辞儀をしつつ素直な感想を述べる澪に、
「私も楽しかったわ。また機会があったらやりましょうか」
Jも笑顔でそう答える。
観客の盛り上がりの中二人はスペースから姿を消した。
●ラウンド3
観客のテンションは最高潮。
そんななか、いよいよ演武の締めにふさわしいタッグマッチが幕を開けようとしていた。
イレーヌ(ka1372)と八劒 颯(ka1804)のチーム、そしてイーディス・ノースハイド(ka2106)とNo.0(ka4640)のチームが特設スペースの中心で向かい合う。
観客の興奮に当てられたのか、少しばかりテンションの上がったスタッフが最後の始まりを告げる。
「レディィ……ゴォォォ!」
視線で火花を散らす四人のなか、その沈黙を破るように颯が体を動かす。
颯の握る大型のドリルが狙う先はイーディス。
しかしイーディスの堅牢な楯の前にその攻撃は通らない。そればかりか、イーディスは構えた楯ごと颯に体当たりをする。
その楯の大きさ故、体を突き崩される颯にイーディスの追撃が加えられる。とっさに割り込ませた楯も威力を減衰する程度に留まり、颯は衝撃をじかに受けてしまう。
そこに追い打ちをかけるようにするのが0の斧だった。
大きく振り上げられた斧が颯に照準を合わせる。そしていざ振り下ろされた瞬間。
唐突に0と颯の間にイレーヌが割り込むと、イレーヌの棍が0の斧を弾いた。
「大丈夫か?」
「ええ、まだまだいけますわ!」
そう言うと、颯は攻撃後の隙を見せている0に攻撃を仕掛けた。
ムーバブルシールドによってドリル本体での攻撃は弾かれてしまう。しかし颯のドリルは回るだけじゃない。
そこから放出されるエレクトリックショック。これによって0の体が痺れ、動けなくなった。
時を同じくして、イレーヌはイーディスへ一発一発的確に見極めた攻撃を仕掛けていた。
無傷のうちにすべてを叩き落とすイーディスだったが、思うようにイレーヌへの反撃の糸口がつかめない。
何かないかと模索するイーディスの目に、今まさにエレクトリックショックを浴びる0の姿が入った。
これはタッグマッチだ。自分一人で戦っているわけじゃない。
イーディスはイレーヌの攻撃を捌きつつ移動し、颯の攻撃から0を庇える位置まで動く。
「0君、大丈夫だよね?」
二人の攻撃を受けつつも確実にいなしていくイーディスの業は、流石というほかなかった。
「問題……ない」
麻痺から回復した0は、颯とイレーヌから見ればイーディスの影になる場所で立ち上がると、標的をイレーヌに斧を振り上げた。
突如として現れた0に反応が遅れてしまい、イレーヌ自身のガードが間に合わない。
……はずだったのだが、イレーヌの前に出現した巨大な楯によって、斧がイレーヌに達することはなかった。
颯の楯が、彼女の超重練成によって瞬間的に巨大化したのである。
けれどそんなことをすれば目の前の敵から意識がそれてしまうのは必然。
颯の楯が元の大きさに戻り始め、それが完全に戻り切ったタイミングを狙ったイーディスの一撃。
いざ楯による突き崩しを加えようとしたとき、縮む楯の向こうから姿を現したのはイレーヌだった。巨大化から収縮までの間に移動していたのだろう。
颯を庇ってイレーヌが楯を受け止める。だがその楯の攻撃の後、追撃の剣までは対応しきれずにイレーヌは後方へと吹き飛ばされた。
まさにそのタイミング、颯の姿も地上にはなかった。
イーディスと0は、自分たちに影がかかったことで嫌でも颯の位置に気づく。
二人の頭上を覆う影。それは再び巨大化した颯の楯だった。
重力加速度を乗せて迫りくるそれは、直前まで攻撃を加えていたイーディスでは回避が間に合わない。
そこで0はムーバブルシールドを使用しつつ、楯の端っこで角度をつけて受け止めた。
0が力を加えた部分を支点として軌道を変える楯。
結局その楯が二人を押し潰すことはなく、タイムリミット共に縮んでいった。
0がかばったおかげで無事だったイーディスが、立ち上がって0の隣に並ぶ。
楯の収縮と共に後方へ引いた颯の隣には、微笑を浮かべつつ復活したイレーヌが立つ。
こうして対峙する四人。
しかしその沈黙も長くは続かない。
イレーヌが0へ向けて棍に蹴りを加えた連続攻撃を仕掛けると、斧と体で攻撃をいなしていく0。
隣では颯のドリルを、またしてもイーディスの楯が防ぎきっている。だがその防御に一瞬の隙が生じたところに、身をひるがえしたイレーヌが奇襲をかけた。
0と対峙していたはずのイレーヌが突然割り込んできたことで、イーディスは胴に一撃をもらってしまう。
たまらず片膝をつくイーディスだったが、イレーヌに追いついた0の、斧の柄頭を用いた打撃攻撃がイレーヌにヒット……しなかった。
またしても巨大化した颯の楯に攻撃を阻まれてしまう。
その楯が収縮を見せ始め元のサイズに戻る中、その影からイレーヌが飛び出した。
今を好機とみて、体をひねって横回転を加えた重い一撃をイーディスへ向けるイレーヌ。
しかしすでにこの手の奇襲を経験していたイーディスに油断はなかった。
イレーヌの攻撃に即座に反応を示すと、楯でもってして思いっきりはじき返す。
自身の攻撃の重さと反発力の大きさで大きく体をのけぞらせるイレーヌに、イーディスのフルスイングが襲い掛かった。
いくらラバーパッドをかぶせているとはいえ、その芯は剣。たまらずイレーヌの体が空を切る。
そしてそれは思わぬところに影響を及ぼす。
イーディスが吹っ飛ばした先、そこには0と交戦する颯の姿があった。
0の斧を受け止めるべく颯が踏み込みを強くした瞬間、思いもよらぬところからの攻撃を受ける。何事かと思い目を向けると、その衝撃の主はイレーヌだった。
受け流すわけにもいかず、受け止めようとする颯。
だが、イレーヌと接触したことで颯の体勢が崩れているタイミングを見落とさず、0は足払いをかけた。
もともとふらついていた颯はたまらず倒れこんでしまう。
それを見た0が、とどめと言わんばかりに斧を振り上げる。
これで勝負ありだな。観客のだれもがそう思った時だった。
「ぐ……」
起き上ったイレーヌの抜き胴が0に見事に決まり、0が崩れた。
イレーヌは、イーディスからの初激こそ重かったものの、颯をクッションにしたこともありそれ以降のダメージはダメージを受けていなかったのである。
その大どんでん返しに湧く観客の声援を味方につけるかのように、そのままの勢いでイーディスへと突進するイレーヌ。
やはりその攻撃は縦に阻まれ通らないが、イレーヌの狙いはそこではなかった。
追撃に移ったイーディスの剣をイレーヌが体で受ける。
一見同じことを繰り返しているだけの浅はかな行動に見えるが、そうじゃない。
イレーヌがイーディスの剣を体で受けているということは他に攻撃が向かないということ。
「びりびり電撃どりるぅ~!!!!」
叫びと共に空中から落下してくるのは颯。
イレーヌをぶつけられたことで颯はかなりのダメージを追っていたが、なんとかジェットブーツで空に飛び、あとは自由落下に任せているのだ。
イーディスの楯と接触した瞬間、放たれたエレクトリックショックがイーディスの自由を奪った。
●剣劇の余韻
大どんでん返しを見せたタッグマッチの後、観客たちが満足して去って行った後も、会場には熱が残っていた。
対して物音は、先ほどのまでの騒ぎが嘘のように静まり返っている。
そこに座る男が一人。
件の槍使いだった。
彼の頭にふと、こんな言葉がよぎる。
ケンカするほど仲がいい。
……いつかはそれを証明する日が来るのだろうか。
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相談卓 イーディス・ノースハイド(ka2106) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/06/05 07:53:15 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/05/31 18:31:47 |