ゲスト
(ka0000)
嘆きの塔
マスター:植田誠

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/08 09:00
- 完成日
- 2015/06/16 21:19
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
それは明け方のことだった。寂れたわけでもない、大都市というわけでもない……そんな街に、地面を伝わる衝撃とともに、大きな音が響き渡った。
それにより目を覚ました住人は、ある者はなんということはないだろうと二度寝を決め込み、ある者はもう一度寝るには遅いと仕事や家事の為にベッドから起きだす。そしてある者は……音の原因を確かめようと外に出てきた。
外に出てきた人々が見たのは、街の中心である広場にあった謎の物体。
それは一本の棒状の物体。表面には意味不明な機械と共に人の腕や顔等、人体の一部が浮き出ており、肉が腐ったような異臭を放っている。
昨日までこんなものはここには無かった。だからあの衝撃はこれが落ちてきた音であり、これは空から落とされたものだろうと容易に想像がついた。
……だが、感じる異臭が腐肉によるものだけではなく、この物体……歪虚から溢れるガスによるものだと気付いたものは多くなかった。近付いた人間が気付いたときにはもう遅く、毒が回り血を吐きその場に倒れる。さらに倒れた住人がそれでもなんとか這って逃げようとしたところに、頭上から矢が突き刺さる。みると歪虚には4対の腕が生えており、その1対が矢を放って住人に止めを刺したのだ。
その光景を見ていた人々はすぐにその場を逃げ出した。そして、ハンターズソサエティに連絡を取ると、家に入り込みハンターたちの到着を待っていた。
●
人々がハンターたちに助けを求める少し前。
「……この辺りなら丁度いいか。落とせ」
量産型リンドヴルムに乗った歪虚……フリッツ・バウアーの指示により、リンドヴルムが手に持つ物体を投下する。コンテナには積まれていない。これは作戦行動というよりもごみ処理に近いものであり、それをわざわざコンテナに積んで運ぶ道理もなかったからだ。
投下したのは1体の歪虚。複数のゾンビを合成して、単独でも複数の敵に渡りあえるような歪虚を……ということで作成されたものだが、合成の課程で肉が崩れ、潰れ、機械部分を巻き込み混ざり合い……最低限の人型すら取ることが出来なくなってしまった。
素体には覚醒者だった死体も含まれており、材料としては勿体なくもあったが……失敗作は失敗作。
「まぁ、せめて最期に作った主人の為に働くことだな」
フリッツは他のゾンビと同様に、この歪虚にも一つの命令を下していた。それは「覚醒者が接近してきたら適当なタイミングで自爆して被害を拡大しろ」というもの。この歪虚に下した命令が成功するかどうかに関しては、フリッツにとってどうでもよい事だった。ヒンメルリッターが絡んでいるわけでもないし、元々期待もしていない。だからこそフリッツは、投下した歪虚の成果を確認することもなく、そのままリンドヴルムに乗って飛び去って行った。
それは明け方のことだった。寂れたわけでもない、大都市というわけでもない……そんな街に、地面を伝わる衝撃とともに、大きな音が響き渡った。
それにより目を覚ました住人は、ある者はなんということはないだろうと二度寝を決め込み、ある者はもう一度寝るには遅いと仕事や家事の為にベッドから起きだす。そしてある者は……音の原因を確かめようと外に出てきた。
外に出てきた人々が見たのは、街の中心である広場にあった謎の物体。
それは一本の棒状の物体。表面には意味不明な機械と共に人の腕や顔等、人体の一部が浮き出ており、肉が腐ったような異臭を放っている。
昨日までこんなものはここには無かった。だからあの衝撃はこれが落ちてきた音であり、これは空から落とされたものだろうと容易に想像がついた。
……だが、感じる異臭が腐肉によるものだけではなく、この物体……歪虚から溢れるガスによるものだと気付いたものは多くなかった。近付いた人間が気付いたときにはもう遅く、毒が回り血を吐きその場に倒れる。さらに倒れた住人がそれでもなんとか這って逃げようとしたところに、頭上から矢が突き刺さる。みると歪虚には4対の腕が生えており、その1対が矢を放って住人に止めを刺したのだ。
その光景を見ていた人々はすぐにその場を逃げ出した。そして、ハンターズソサエティに連絡を取ると、家に入り込みハンターたちの到着を待っていた。
●
人々がハンターたちに助けを求める少し前。
「……この辺りなら丁度いいか。落とせ」
量産型リンドヴルムに乗った歪虚……フリッツ・バウアーの指示により、リンドヴルムが手に持つ物体を投下する。コンテナには積まれていない。これは作戦行動というよりもごみ処理に近いものであり、それをわざわざコンテナに積んで運ぶ道理もなかったからだ。
投下したのは1体の歪虚。複数のゾンビを合成して、単独でも複数の敵に渡りあえるような歪虚を……ということで作成されたものだが、合成の課程で肉が崩れ、潰れ、機械部分を巻き込み混ざり合い……最低限の人型すら取ることが出来なくなってしまった。
素体には覚醒者だった死体も含まれており、材料としては勿体なくもあったが……失敗作は失敗作。
「まぁ、せめて最期に作った主人の為に働くことだな」
フリッツは他のゾンビと同様に、この歪虚にも一つの命令を下していた。それは「覚醒者が接近してきたら適当なタイミングで自爆して被害を拡大しろ」というもの。この歪虚に下した命令が成功するかどうかに関しては、フリッツにとってどうでもよい事だった。ヒンメルリッターが絡んでいるわけでもないし、元々期待もしていない。だからこそフリッツは、投下した歪虚の成果を確認することもなく、そのままリンドヴルムに乗って飛び去って行った。
リプレイ本文
●
広場の中心。そこには1体の歪虚が鎮座している。歪虚からは毒ガスが放出されており、放置しておけばいずれ町全体を包んでしまうだろう。それを阻止するために、ハンターたちはやってきた。
「扱い辛くはあるが……この状態では致し方ないな」
不慣れな銃器を手にクローディオ・シャール(ka0030)は敵歪虚を睨む。以前の戦闘により大怪我を負いまだ癒えていないクローディオ。覚醒もままならぬ状態ではあったが、なんとか戦場までやってきていた。
「すまない……今回は後方からの支援に徹させてもらう」
そのクローディオを背に、幾人かのハンターが前進していく。
「素晴らしく馴れ合っちゃってまあ……」
いくつものゾンビたちが融合したかのような歪虚を見て抱いたのか、そんな感想を口にしつつ先頭を切るのは龍崎・カズマ(ka0178)。
「死人は素直に寝かせとけ、起こすんじゃねぇよ」
瞬脚を使用して誰よりも速く動く。それにレイ・T・ベッドフォード(ka2398)も続いていく。
「……おぞましい、ですね」
かつて人であったであろう素材で組み上げられた歪虚……ではない。それを作り上げた者の精神をこそおぞましいと感じるレイ。
「その無念、晴らして差し上げなくては」
「……本当に、醜い肉塊……」
決意を新たにするレイたちの背を追いかけていくのはターニャ=リュイセンヴェルグ(ka4979)。覚醒する前は「うぅ……なんだからあまり触りたくない敵です……」と弱気な態度を見せていたが、覚醒するとその態度が急変。冷酷な口調で歪虚に立ち向かう。
「確かに……出来るだけ迅速に処理しよう」
ターニャらを見送りながら、アルバ・ソル(ka4189)は先頭に立つカズマに対しウィンドガストを使用。緑に輝く風がカズマを取り巻く。
「それにしても、通りすがりにゴミをポイ捨てとかマナーがなってないね」
「あぁ……」
歪虚を眺めるクドリャフカ(ka4594)に応えた伊勢 渚(ka2038)。
(死体関連つうと……)
この歪虚を残していった敵……渚の脳裏に浮かんだのは2本の鞭を使う歪虚の姿だろうか。
「相変わらず人間を弄びやがって……絶対償わせてやる」
とはいえ今はこの敵を排除することが優先だ。クローディオ、クドリャフカとともに渚も射程を確保するために路上まで後退する。
「へぇ、此処があんたのテリトリーか……」
ウィンス・デイランダール(ka0039)は歪虚にある程度接近すると足を止めた。毒の範囲に入っているのは間違いない。現に体力が徐々に奪われている実感がある。そこであえてウィンスは深呼吸をした。
「……中々、上等なんじゃねーの?」
なぜそんな言葉を吐いたのか。その力に対する敬意か、それとも異形へと変えられた人々への憐憫なのか。それはウィンスにしか分からなかった。
●
ハンター4人が接近していく中、歪虚は弓を番える。離れるハンターたちに向い2本の矢を番える歪虚。
「……っ! まさかダブルシューティング? 器用な真似を……」
放たれた矢のうち一本はクドリャフカの肩に命中。非常に高い威力の攻撃だ。クドリャフカは致命傷とまではいかないもののかなりのダメージを負う。 ……覚醒中のクドリャフカですらそうなのだ。
「そん……な……」
もう一本の矢が突き刺さったクローディオが無事でいられるはずがない。慣れない遠距離武器を用いて少しでも援護を。そう考えていたクローディオだったが、その思いもむなしく持ち込んだ銃より圧倒的に長い射程を持つ弓により倒された。
「くそ……」
手に持つ盾でカバーするなり守る手段はあっただろうが……今になってそれを言っても始まらない。これ以上クローディオが攻撃されないように渚はクローディオを背にする形で盾を接地させ、その上に銃を置くことで照準を固定する。
この間、接近するハンターも歪虚からの攻撃に晒される。
中央やや下、ガントレットを装備した腕の先に三角形が浮かび、その頂点からそれぞれ光が投射される。
「これは……デルタレイ?」
思わずつぶやいたターニャの言う通り、その攻撃は機導師の扱うデルタレイに酷似している。まず走り込んできていたカズマ、そしてターニャ、ウィンスと歪虚に近い者がその光に狙われた。カズマ、ウィンスは回避する。だが、ターニャは不意を突かれたか。
「くっ……」
グレイブを盾に防御しようとするも間に合わず、直撃を被る。
さらに杖を持つ腕から撃たれた魔法弾。狙いはレイとウィンスの中間地点。
「今度はファイアーボールですか!?」
慌てて飛び退く2人。レイは躱したものの、先にデルタレイを躱していたウィンスは続く攻撃に対応が遅れ、武器を盾に爆風を緩和するしかない。
「……結構威力が大きいな。何発も喰らえないぞ」
そう呟きながらウィンスは態勢を立て直す。その間にデルタレイを掻い潜り至近に踏み込んでいたカズマ。それを阻止せんと二振りの剣が襲い掛かる。
(この軌跡……まずい!)
走り込む勢いに合わせて突き出された剣。躱さなければ即死しかねない、そんな一撃をカズマは体を僅かに逸らしながら躱す。だが息を吐いてはいられない。さらにもう一方からも剣戟。危険な軌道を描く剣をなんとか受け止めるカズマだが、受けた刀から衝撃が手に伝わる。
敵は歪虚自身だけではない。歪虚の最上段から放出されている霞のようなガス。これらに含まれた毒素が範囲内のハンターを蝕む。
だが、そんなことは意に介していられないとカズマは歪虚からの剣戟でよろめきながらも本体に肉薄。
「てめぇらが誰なのかは知らねぇし知る気もねぇ。だが、ヒトの技を使うなら……」
カズマの意志に呼応するかのように、手にした刀が低い唸りを上げる。
「ヒトとしての矜持って奴を見せてみろや!」
声を上げつつ振られた刃は歪虚を切り裂く。
カズマに続きウィンスが飛び込みながら武器を大きく天に掲げる。歪虚から生えた腕は不気味な見た目に反して規則的。
(それならこいつで……)
ウィンスは掲げたグレイブを縦に薙ぎ払う。斬り落とさた一本の腕が宙を舞った。
「ちっ……全部叩き斬ってやるつもりだったんだけどな」
柄に当たったか、単純に浅かったか……光属性の武器ゆえダメージは十分与えられてそうだが、そうそう全て思惑通りにとはいかないらしい。さらに、腕は本体から再度生え始めている。再生しきればまた攻撃を開始するだろう。
だが、それならその前にまた叩き斬ればいいだけの話だ。
「大ぶりな一撃ではありますが……動けない貴方たちが相手でしたら……!」
それに続こうとレイが大斧を振りかぶり、体を倒しながら勢いよく回転させる。360度全ての敵を薙ぎ払うラウンドスウィングだ。上手くいけばウィンスの薙ぎ払い同様かなりの効果が見込める。
「……なっ!?」
だが、失敗。刃は腕を掠めることすらせず、地面に叩きつけられ深く食い込む。
重く、巨大な斧を用いることで落ちた機動力。そこに通常とは違う縦方向へのラウンドスウィング。360度を攻撃範囲とするからこそ、下方に武器が通るぐらいには跳ぶ必要がありそれが足りなかったと見える。その結果レイは目測を誤り失敗したのだ。
突き刺さる斧をレイが引き抜く最中、デルタレイで態勢を崩されたターニャが体勢を持ち直し歪虚に向き直る。それに合わせるかのようにアルバが後方からウィンドガストを使用。ターニャの周囲を風が舞う。
「これで少しはマシでしょう」
「助かる……」
軽くアルバに向き礼を述べると、再度歪虚に視線を向けるターニャ。
「この肉塊め……消えろ」
淡々と呟きながら、ターニャは歪虚に踏み込んでいく。そして、禍々しくも美しいグレイブを上段に構え、歪虚に強打を撃ち込む。この武器も属性は光だ。かなりのダメージが与えられただろう。
「一気に行くぜ……銃撃のパーティータイムだ」
咥えた煙草を吐き捨てた渚。後方からクドリャフカとともに歪虚への攻撃を開始する。共に足を止め射撃に専念するシャープシューティングにより精度を高める。
渚はさらに射撃の瞬間マテリアルを込める高加速射撃を使用。高速かつ高威力の弾丸が歪虚を撃ち抜く。弾丸は当たり所が良かったか、歪虚の腐肉を貫通していく。
「この程度の距離で外す道理は無いからね」
クドリャフカはターゲッティングを使用して弓持つ腕を狙う。敵は動かない……とはいってもそれは本体部分。腕部分は常に攻撃、あるいは防御のために忙しなく動く。その為か若干狙いがずれ、弾丸は腕の根元辺りに当たった。
歪虚の方も反撃してくる。魔法弾がウィンスとカズマを巻き込むように爆ぜる。ウィンスはなんとか爆風から逃れるが、双剣を掻い潜るように接近していたカズマは背後から襲う爆風を躱せない。
さらにガントレットの腕から再度のデルタレイ。狙われたウィンスとレイは武器を盾に受け切る。ターニャも武器を盾に防御するが、光は武器を弾きターニャを撃ち抜いた。
「っ……ダメージを……受け過ぎた……」
これ以上はまずい。そう直感したターニャは一度距離を取ろうとする。だが……
(……あれ?)
足を踏み出そうと思った。でもその足が動かない。足だけではない。体中から力が抜け、ターニャはその場に倒れた。毒はこの時すでにターニャの体中にめぐり、その体力を奪い去っていたのだ。
カズマの方も息が荒い。ダメージに加え毒が体に回っているのだ。だが、このままでは終われない。
「行くぜ……!」
歪虚から生える腕の中でも低い位置にあった剣の腕。そこからの攻撃を躱しながらカズマは腕に足をかける。この腕を足場に歪虚を駆けあがる立体攻撃だ。丁度いい狙いどころがあった……クドリャフカが撃った銃弾の跡。そこから抉り取るように逆袈裟に刀を斬り上げる。弓の腕が飛ぶ。
「せいぜい支えろや!」
空に飛びあがれば後は落ちるのみ。斬り上げた刃を返し、両手で力強く刀を振り下ろし連撃。歪虚が深く切り裂かれる。
だが、カズマの攻撃もそこまで。歪虚を切り裂き地面に降り立ったカズマが着地するタイミングを狙ったのか、置かれるように差し出された剣がそのままカズマの胴を貫く。剣が引き抜かれるとともにカズマは口と傷口から血を噴き出すとその場に倒れた。
ウィンスは再度縦方向の薙ぎ払い。カズマが切り落としてくれた弓の腕。その下にある杖、ガントレットと纏めて薙ぎ払うべく武器を振り下ろす。
「……同じ手は何度も通じない、か……」
手に感じたのは硬質的な手応え。防御された。ダメージは多少通っただろうが切断には至らない。
逆側面ではレイが再度攻撃。
「今度こそ……!」
今度は距離を測り跳躍もギリギリ足りたか。こうなるとその重さによって生まれる遠心力は強い武器だ。弓を持つ腕と、その下の腕まで一気に斬り落とす。
その間も後方からは渚とクドリャフカが銃撃しダメージを与える。
前衛が毒に苦しみながらも弓の腕を破壊してくれている。そのおかげで2人は射撃に専念できている。
だが、やはり前衛の負担は大きい。歪虚は反撃。再度魔法弾とデルタレイを放つ。レイの斬り落とした腕が杖を持つのとは逆の腕だったのは不運だった。
ウィンスは魔法弾の爆風を防御。
「ぐっ……まだだ!」
声を上げるウィンス。だが、防御した武器をどけた瞬間光がウィンスを貫く。レイともども直撃を被ったウィンスは血を吐きながらグレイブを地面に突き立て体を支えようとする。だが、毒の影響にも晒されつづけたウィンスにはもう体力は残されておらず、武器にもたれるように力尽きた。
「ウィンス様!」
出来れば毒の範囲から連れ出したいところだったが……
「再生が始まっている……」
アルバの言う通り弓の腕が再度生え始めている。攻撃の手を休めるわけにはいかなかった。
●
「もう一度……!」
再度レイはラウンドスウィングを放とうとする。だが、大型武器を振り回したツケか、それとも毒の影響か。足元がもつれ倒れる。斧を振れない。
「……近くで見るとやはり悪趣味だな」
倒れたレイを援護するため、歪虚に接近したアルバは、魔法の発動体であるナイフを掲げる。
「現れ出でよ、紅蓮の火球」
次いで、そのナイフを勢いよく振り下ろす
「我が敵を討て!」
振り下ろされたナイフの先、歪虚に向い火球が飛び、爆ぜる。対ゾンビに火属性の魔法は効果的だ。
この間も渚は再度歪虚の体を撃ち抜く効果的な一撃を重ねていく。だが、歪虚の方も弓の腕が完全に再生しており、矢を番え始めている。
「狙撃屋の、仕事時だね!」
だが、攻撃はさせない。ターゲッティングを使用したクドリャフカ。青い瞳が狙うは弓の腕。渚にはやや及ばないがクドリャフカの銃もまた高い威力を持っている。銃撃は狙い通り命中し、腕は一発で吹き飛ばされた。
この時、歪虚からの魔法弾による爆風を防御していたレイは気付いた。今度は吹き飛ばされた弓の腕が再生し始めないことに。再生能力もデメリット無しでは使えないのは道理。恐らく歪虚の方の生命力も底を尽きかけているのだ。
「なるほど……畳み掛けるなら今か……!」
再度短剣を振り上げるアルバ。それを妨害するかのようにデルタレイが放たれる。爆風を防御した直後のレイは回避しきれず直撃。同様に狙われたアルバも攻撃態勢に入っていたため直撃を受け、大きなダメージを負う。
「これで、チェックメイトだ。喰らえ!」
血を吐きながらもアルバはナイフを振りおろし、再度火球が飛ぶ。
「押し切れそうだね、このまま行こう」
「あぁ……これで終いだな。纏めてあの世に送ってやる!」
さらにクドリャフカ、渚が銃弾を撃ち込む。残された腕の動きが緩慢になるとともに、歪虚から声……一人の者ではない。老若男女ごちゃ混ぜになったうめき声のようなものが聞こえる。
(これが、柱にされた人々の嘆きでしょうか。でも……)
「それも終わりです」
渾身の力を込めてレイが最後の一撃を叩き込む。一際大きな声、まさにそれが断末魔であったのだろう。
歪虚は動きを止め、ぼとぼと落ちる腐肉と機械部品は地面に触れると塵となっていった。
「遺留品等は……残りそうもないか」
あれば対策の為に回収しようと考えていたアルバだったが、そう言うものは残りそうもない。
「……せめて、安らかに」
風と共に塵は飛び去る。毒ガスも歪虚とともに消えたのか、先程までとは別の場所にいるかのように空気が澄んでいた。
「大丈夫? 生きてる?」
クドリャフカは、すぐに倒れた仲間たちの介抱に向かう。戦闘不能は計4人。激しい戦いだったと言えよう。
「やれやれ……」
それを見ていた渚もまた無意識のうちに手にとっていた煙草の火を消して……しまうのは勿体ないと咥えながら、クドリャフカ達の手伝いを始めた。
ともあれ、こうしてハンターたちは歪虚の撃破に成功。街にも平和が戻ったのだった。
広場の中心。そこには1体の歪虚が鎮座している。歪虚からは毒ガスが放出されており、放置しておけばいずれ町全体を包んでしまうだろう。それを阻止するために、ハンターたちはやってきた。
「扱い辛くはあるが……この状態では致し方ないな」
不慣れな銃器を手にクローディオ・シャール(ka0030)は敵歪虚を睨む。以前の戦闘により大怪我を負いまだ癒えていないクローディオ。覚醒もままならぬ状態ではあったが、なんとか戦場までやってきていた。
「すまない……今回は後方からの支援に徹させてもらう」
そのクローディオを背に、幾人かのハンターが前進していく。
「素晴らしく馴れ合っちゃってまあ……」
いくつものゾンビたちが融合したかのような歪虚を見て抱いたのか、そんな感想を口にしつつ先頭を切るのは龍崎・カズマ(ka0178)。
「死人は素直に寝かせとけ、起こすんじゃねぇよ」
瞬脚を使用して誰よりも速く動く。それにレイ・T・ベッドフォード(ka2398)も続いていく。
「……おぞましい、ですね」
かつて人であったであろう素材で組み上げられた歪虚……ではない。それを作り上げた者の精神をこそおぞましいと感じるレイ。
「その無念、晴らして差し上げなくては」
「……本当に、醜い肉塊……」
決意を新たにするレイたちの背を追いかけていくのはターニャ=リュイセンヴェルグ(ka4979)。覚醒する前は「うぅ……なんだからあまり触りたくない敵です……」と弱気な態度を見せていたが、覚醒するとその態度が急変。冷酷な口調で歪虚に立ち向かう。
「確かに……出来るだけ迅速に処理しよう」
ターニャらを見送りながら、アルバ・ソル(ka4189)は先頭に立つカズマに対しウィンドガストを使用。緑に輝く風がカズマを取り巻く。
「それにしても、通りすがりにゴミをポイ捨てとかマナーがなってないね」
「あぁ……」
歪虚を眺めるクドリャフカ(ka4594)に応えた伊勢 渚(ka2038)。
(死体関連つうと……)
この歪虚を残していった敵……渚の脳裏に浮かんだのは2本の鞭を使う歪虚の姿だろうか。
「相変わらず人間を弄びやがって……絶対償わせてやる」
とはいえ今はこの敵を排除することが優先だ。クローディオ、クドリャフカとともに渚も射程を確保するために路上まで後退する。
「へぇ、此処があんたのテリトリーか……」
ウィンス・デイランダール(ka0039)は歪虚にある程度接近すると足を止めた。毒の範囲に入っているのは間違いない。現に体力が徐々に奪われている実感がある。そこであえてウィンスは深呼吸をした。
「……中々、上等なんじゃねーの?」
なぜそんな言葉を吐いたのか。その力に対する敬意か、それとも異形へと変えられた人々への憐憫なのか。それはウィンスにしか分からなかった。
●
ハンター4人が接近していく中、歪虚は弓を番える。離れるハンターたちに向い2本の矢を番える歪虚。
「……っ! まさかダブルシューティング? 器用な真似を……」
放たれた矢のうち一本はクドリャフカの肩に命中。非常に高い威力の攻撃だ。クドリャフカは致命傷とまではいかないもののかなりのダメージを負う。 ……覚醒中のクドリャフカですらそうなのだ。
「そん……な……」
もう一本の矢が突き刺さったクローディオが無事でいられるはずがない。慣れない遠距離武器を用いて少しでも援護を。そう考えていたクローディオだったが、その思いもむなしく持ち込んだ銃より圧倒的に長い射程を持つ弓により倒された。
「くそ……」
手に持つ盾でカバーするなり守る手段はあっただろうが……今になってそれを言っても始まらない。これ以上クローディオが攻撃されないように渚はクローディオを背にする形で盾を接地させ、その上に銃を置くことで照準を固定する。
この間、接近するハンターも歪虚からの攻撃に晒される。
中央やや下、ガントレットを装備した腕の先に三角形が浮かび、その頂点からそれぞれ光が投射される。
「これは……デルタレイ?」
思わずつぶやいたターニャの言う通り、その攻撃は機導師の扱うデルタレイに酷似している。まず走り込んできていたカズマ、そしてターニャ、ウィンスと歪虚に近い者がその光に狙われた。カズマ、ウィンスは回避する。だが、ターニャは不意を突かれたか。
「くっ……」
グレイブを盾に防御しようとするも間に合わず、直撃を被る。
さらに杖を持つ腕から撃たれた魔法弾。狙いはレイとウィンスの中間地点。
「今度はファイアーボールですか!?」
慌てて飛び退く2人。レイは躱したものの、先にデルタレイを躱していたウィンスは続く攻撃に対応が遅れ、武器を盾に爆風を緩和するしかない。
「……結構威力が大きいな。何発も喰らえないぞ」
そう呟きながらウィンスは態勢を立て直す。その間にデルタレイを掻い潜り至近に踏み込んでいたカズマ。それを阻止せんと二振りの剣が襲い掛かる。
(この軌跡……まずい!)
走り込む勢いに合わせて突き出された剣。躱さなければ即死しかねない、そんな一撃をカズマは体を僅かに逸らしながら躱す。だが息を吐いてはいられない。さらにもう一方からも剣戟。危険な軌道を描く剣をなんとか受け止めるカズマだが、受けた刀から衝撃が手に伝わる。
敵は歪虚自身だけではない。歪虚の最上段から放出されている霞のようなガス。これらに含まれた毒素が範囲内のハンターを蝕む。
だが、そんなことは意に介していられないとカズマは歪虚からの剣戟でよろめきながらも本体に肉薄。
「てめぇらが誰なのかは知らねぇし知る気もねぇ。だが、ヒトの技を使うなら……」
カズマの意志に呼応するかのように、手にした刀が低い唸りを上げる。
「ヒトとしての矜持って奴を見せてみろや!」
声を上げつつ振られた刃は歪虚を切り裂く。
カズマに続きウィンスが飛び込みながら武器を大きく天に掲げる。歪虚から生えた腕は不気味な見た目に反して規則的。
(それならこいつで……)
ウィンスは掲げたグレイブを縦に薙ぎ払う。斬り落とさた一本の腕が宙を舞った。
「ちっ……全部叩き斬ってやるつもりだったんだけどな」
柄に当たったか、単純に浅かったか……光属性の武器ゆえダメージは十分与えられてそうだが、そうそう全て思惑通りにとはいかないらしい。さらに、腕は本体から再度生え始めている。再生しきればまた攻撃を開始するだろう。
だが、それならその前にまた叩き斬ればいいだけの話だ。
「大ぶりな一撃ではありますが……動けない貴方たちが相手でしたら……!」
それに続こうとレイが大斧を振りかぶり、体を倒しながら勢いよく回転させる。360度全ての敵を薙ぎ払うラウンドスウィングだ。上手くいけばウィンスの薙ぎ払い同様かなりの効果が見込める。
「……なっ!?」
だが、失敗。刃は腕を掠めることすらせず、地面に叩きつけられ深く食い込む。
重く、巨大な斧を用いることで落ちた機動力。そこに通常とは違う縦方向へのラウンドスウィング。360度を攻撃範囲とするからこそ、下方に武器が通るぐらいには跳ぶ必要がありそれが足りなかったと見える。その結果レイは目測を誤り失敗したのだ。
突き刺さる斧をレイが引き抜く最中、デルタレイで態勢を崩されたターニャが体勢を持ち直し歪虚に向き直る。それに合わせるかのようにアルバが後方からウィンドガストを使用。ターニャの周囲を風が舞う。
「これで少しはマシでしょう」
「助かる……」
軽くアルバに向き礼を述べると、再度歪虚に視線を向けるターニャ。
「この肉塊め……消えろ」
淡々と呟きながら、ターニャは歪虚に踏み込んでいく。そして、禍々しくも美しいグレイブを上段に構え、歪虚に強打を撃ち込む。この武器も属性は光だ。かなりのダメージが与えられただろう。
「一気に行くぜ……銃撃のパーティータイムだ」
咥えた煙草を吐き捨てた渚。後方からクドリャフカとともに歪虚への攻撃を開始する。共に足を止め射撃に専念するシャープシューティングにより精度を高める。
渚はさらに射撃の瞬間マテリアルを込める高加速射撃を使用。高速かつ高威力の弾丸が歪虚を撃ち抜く。弾丸は当たり所が良かったか、歪虚の腐肉を貫通していく。
「この程度の距離で外す道理は無いからね」
クドリャフカはターゲッティングを使用して弓持つ腕を狙う。敵は動かない……とはいってもそれは本体部分。腕部分は常に攻撃、あるいは防御のために忙しなく動く。その為か若干狙いがずれ、弾丸は腕の根元辺りに当たった。
歪虚の方も反撃してくる。魔法弾がウィンスとカズマを巻き込むように爆ぜる。ウィンスはなんとか爆風から逃れるが、双剣を掻い潜るように接近していたカズマは背後から襲う爆風を躱せない。
さらにガントレットの腕から再度のデルタレイ。狙われたウィンスとレイは武器を盾に受け切る。ターニャも武器を盾に防御するが、光は武器を弾きターニャを撃ち抜いた。
「っ……ダメージを……受け過ぎた……」
これ以上はまずい。そう直感したターニャは一度距離を取ろうとする。だが……
(……あれ?)
足を踏み出そうと思った。でもその足が動かない。足だけではない。体中から力が抜け、ターニャはその場に倒れた。毒はこの時すでにターニャの体中にめぐり、その体力を奪い去っていたのだ。
カズマの方も息が荒い。ダメージに加え毒が体に回っているのだ。だが、このままでは終われない。
「行くぜ……!」
歪虚から生える腕の中でも低い位置にあった剣の腕。そこからの攻撃を躱しながらカズマは腕に足をかける。この腕を足場に歪虚を駆けあがる立体攻撃だ。丁度いい狙いどころがあった……クドリャフカが撃った銃弾の跡。そこから抉り取るように逆袈裟に刀を斬り上げる。弓の腕が飛ぶ。
「せいぜい支えろや!」
空に飛びあがれば後は落ちるのみ。斬り上げた刃を返し、両手で力強く刀を振り下ろし連撃。歪虚が深く切り裂かれる。
だが、カズマの攻撃もそこまで。歪虚を切り裂き地面に降り立ったカズマが着地するタイミングを狙ったのか、置かれるように差し出された剣がそのままカズマの胴を貫く。剣が引き抜かれるとともにカズマは口と傷口から血を噴き出すとその場に倒れた。
ウィンスは再度縦方向の薙ぎ払い。カズマが切り落としてくれた弓の腕。その下にある杖、ガントレットと纏めて薙ぎ払うべく武器を振り下ろす。
「……同じ手は何度も通じない、か……」
手に感じたのは硬質的な手応え。防御された。ダメージは多少通っただろうが切断には至らない。
逆側面ではレイが再度攻撃。
「今度こそ……!」
今度は距離を測り跳躍もギリギリ足りたか。こうなるとその重さによって生まれる遠心力は強い武器だ。弓を持つ腕と、その下の腕まで一気に斬り落とす。
その間も後方からは渚とクドリャフカが銃撃しダメージを与える。
前衛が毒に苦しみながらも弓の腕を破壊してくれている。そのおかげで2人は射撃に専念できている。
だが、やはり前衛の負担は大きい。歪虚は反撃。再度魔法弾とデルタレイを放つ。レイの斬り落とした腕が杖を持つのとは逆の腕だったのは不運だった。
ウィンスは魔法弾の爆風を防御。
「ぐっ……まだだ!」
声を上げるウィンス。だが、防御した武器をどけた瞬間光がウィンスを貫く。レイともども直撃を被ったウィンスは血を吐きながらグレイブを地面に突き立て体を支えようとする。だが、毒の影響にも晒されつづけたウィンスにはもう体力は残されておらず、武器にもたれるように力尽きた。
「ウィンス様!」
出来れば毒の範囲から連れ出したいところだったが……
「再生が始まっている……」
アルバの言う通り弓の腕が再度生え始めている。攻撃の手を休めるわけにはいかなかった。
●
「もう一度……!」
再度レイはラウンドスウィングを放とうとする。だが、大型武器を振り回したツケか、それとも毒の影響か。足元がもつれ倒れる。斧を振れない。
「……近くで見るとやはり悪趣味だな」
倒れたレイを援護するため、歪虚に接近したアルバは、魔法の発動体であるナイフを掲げる。
「現れ出でよ、紅蓮の火球」
次いで、そのナイフを勢いよく振り下ろす
「我が敵を討て!」
振り下ろされたナイフの先、歪虚に向い火球が飛び、爆ぜる。対ゾンビに火属性の魔法は効果的だ。
この間も渚は再度歪虚の体を撃ち抜く効果的な一撃を重ねていく。だが、歪虚の方も弓の腕が完全に再生しており、矢を番え始めている。
「狙撃屋の、仕事時だね!」
だが、攻撃はさせない。ターゲッティングを使用したクドリャフカ。青い瞳が狙うは弓の腕。渚にはやや及ばないがクドリャフカの銃もまた高い威力を持っている。銃撃は狙い通り命中し、腕は一発で吹き飛ばされた。
この時、歪虚からの魔法弾による爆風を防御していたレイは気付いた。今度は吹き飛ばされた弓の腕が再生し始めないことに。再生能力もデメリット無しでは使えないのは道理。恐らく歪虚の方の生命力も底を尽きかけているのだ。
「なるほど……畳み掛けるなら今か……!」
再度短剣を振り上げるアルバ。それを妨害するかのようにデルタレイが放たれる。爆風を防御した直後のレイは回避しきれず直撃。同様に狙われたアルバも攻撃態勢に入っていたため直撃を受け、大きなダメージを負う。
「これで、チェックメイトだ。喰らえ!」
血を吐きながらもアルバはナイフを振りおろし、再度火球が飛ぶ。
「押し切れそうだね、このまま行こう」
「あぁ……これで終いだな。纏めてあの世に送ってやる!」
さらにクドリャフカ、渚が銃弾を撃ち込む。残された腕の動きが緩慢になるとともに、歪虚から声……一人の者ではない。老若男女ごちゃ混ぜになったうめき声のようなものが聞こえる。
(これが、柱にされた人々の嘆きでしょうか。でも……)
「それも終わりです」
渾身の力を込めてレイが最後の一撃を叩き込む。一際大きな声、まさにそれが断末魔であったのだろう。
歪虚は動きを止め、ぼとぼと落ちる腐肉と機械部品は地面に触れると塵となっていった。
「遺留品等は……残りそうもないか」
あれば対策の為に回収しようと考えていたアルバだったが、そう言うものは残りそうもない。
「……せめて、安らかに」
風と共に塵は飛び去る。毒ガスも歪虚とともに消えたのか、先程までとは別の場所にいるかのように空気が澄んでいた。
「大丈夫? 生きてる?」
クドリャフカは、すぐに倒れた仲間たちの介抱に向かう。戦闘不能は計4人。激しい戦いだったと言えよう。
「やれやれ……」
それを見ていた渚もまた無意識のうちに手にとっていた煙草の火を消して……しまうのは勿体ないと咥えながら、クドリャフカ達の手伝いを始めた。
ともあれ、こうしてハンターたちは歪虚の撃破に成功。街にも平和が戻ったのだった。
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キカイな嘆きの塔 レイ・T・ベッドフォード(ka2398) 人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2015/06/07 20:59:54 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/05 23:31:54 |