ゲスト
(ka0000)
また逢う為の架け橋
マスター:鷹羽柊架

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/13 22:00
- 完成日
- 2014/07/20 23:44
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
辺境は各地に部族があり、特色もさまざま。
日々の生活の糧を得る手段も部族によって違う。
とある部族では機織や染色で賄っているところもある。その部族の長の娘でとても働き者の織女がいた。
名前をリュラという。
ウェーブがかった青みがかった豊かな黒髪、白みがかった銀の瞳は夜空に輝く星のようだと称えられる美しい女性。
仕事に打ち込む娘に少しでも女としての幸せをと思って、友好部族からこれまた働き者の運び屋のナスルの嫁にと見合いをもちこんだ。
この二人、会った瞬間に一目ぼれ。あれよあれよと結婚が進み、ゴールイン。
だが、この時から二人に変化が起きていたのを誰も気づかなかった。
結婚準備で二人の仕事時間が削られるのはよくある事。結婚して落ち着いたので、仕事はどうなっているだろうかと思ったら、まったくもって仕事をしてない。
お互い愛し合っているために仕事なんかどうでもいいという状態になってしまった。
二人揃って人気職人であるため、業績が落ちたら生活に支障が出る。
怒った両部族長から別居結婚を言い渡された。
ただ、年に一度、会ってもいいと条件をつけて……。
それから数年後、この二人は一日千秋の思いで日々の仕事に励み、こっそり手紙を送ったり一年に一度の逢瀬を待っていた。
●
ここは要塞都市【ノアーラ・クンタウ】。
切り立った崖の上にそびえ立つ大きな城壁に護られている都市。
さまざまな種族や出身国の人々が行きかう。
そのとある工房に納品にやってきた運び屋の男が自分より年上の男に泣き付いていた。
「知らん! てめえでやれ」
つっぱねる男に泣きすがる運び屋の男はナスルと言う。
「そんなぁ~~! シェダルさ~~ん!」
「こっちが忙しいの分かってるだろうが!」
ギロリと、睨みつけるシェダルは本当に怖いが、ナスルはそれよりも凌駕するものがある。
「それはそうですがぁあああああ。リュナに会いたいんですよぉおおおおおお!!」
キツく突っぱねるシェダルであるが、内心、今回の納品も無理を言わせたこともあり、何とかしてあげたいのは山々だが、仕事を優先しなければならない。
「ナスルくん、男に乗り換えたの?」
ひょっこり現れたのはフォニケという工房の別チームに配属されている女性だ。
「フォニケさぁあああん! リュナに会いたいんですよーー!」
「そろそろ約束の日よね。何、シェダルがまた無理言ったの?」
ちろりと、フォニケが非難の眼差しを向けると、「無理させた後だ」と答えるシェダル。
「まだ時間があるんですが、リュナのところには最近、雑魔がでるんですよ! 護衛して下さい!」
「……あー」
ナスルの言葉にフォニケは納得した。
実はこのナスル、怖がりなのだ。
辺境部族には大人と認められる為の試練が存在しており、ナスルの部族は動物を狩り、指定の部族まで届けるという試練があり、認められて大人となる。
前述の通り、ナスルは怖がりのために試練を三回落ちてお情けで認められたという状態。狩るまでに時間がかかったが、届ける作業に関しては的確丁寧。届け先の部族長こと、リュナの父親に誉められたらしいのが結婚のきっかけのようだった。
「それなら、ハンターに依頼したら?」
「ハンターですか、噂は聞いたことありますが」
「彼らならきっと護衛してくれるわ。私も依頼したけど、とってもいい子達ばかりだったのよ」
「はい、そうします!」
一条の光を見つけたナスルはハンターオフィスへと走っていった。
日々の生活の糧を得る手段も部族によって違う。
とある部族では機織や染色で賄っているところもある。その部族の長の娘でとても働き者の織女がいた。
名前をリュラという。
ウェーブがかった青みがかった豊かな黒髪、白みがかった銀の瞳は夜空に輝く星のようだと称えられる美しい女性。
仕事に打ち込む娘に少しでも女としての幸せをと思って、友好部族からこれまた働き者の運び屋のナスルの嫁にと見合いをもちこんだ。
この二人、会った瞬間に一目ぼれ。あれよあれよと結婚が進み、ゴールイン。
だが、この時から二人に変化が起きていたのを誰も気づかなかった。
結婚準備で二人の仕事時間が削られるのはよくある事。結婚して落ち着いたので、仕事はどうなっているだろうかと思ったら、まったくもって仕事をしてない。
お互い愛し合っているために仕事なんかどうでもいいという状態になってしまった。
二人揃って人気職人であるため、業績が落ちたら生活に支障が出る。
怒った両部族長から別居結婚を言い渡された。
ただ、年に一度、会ってもいいと条件をつけて……。
それから数年後、この二人は一日千秋の思いで日々の仕事に励み、こっそり手紙を送ったり一年に一度の逢瀬を待っていた。
●
ここは要塞都市【ノアーラ・クンタウ】。
切り立った崖の上にそびえ立つ大きな城壁に護られている都市。
さまざまな種族や出身国の人々が行きかう。
そのとある工房に納品にやってきた運び屋の男が自分より年上の男に泣き付いていた。
「知らん! てめえでやれ」
つっぱねる男に泣きすがる運び屋の男はナスルと言う。
「そんなぁ~~! シェダルさ~~ん!」
「こっちが忙しいの分かってるだろうが!」
ギロリと、睨みつけるシェダルは本当に怖いが、ナスルはそれよりも凌駕するものがある。
「それはそうですがぁあああああ。リュナに会いたいんですよぉおおおおおお!!」
キツく突っぱねるシェダルであるが、内心、今回の納品も無理を言わせたこともあり、何とかしてあげたいのは山々だが、仕事を優先しなければならない。
「ナスルくん、男に乗り換えたの?」
ひょっこり現れたのはフォニケという工房の別チームに配属されている女性だ。
「フォニケさぁあああん! リュナに会いたいんですよーー!」
「そろそろ約束の日よね。何、シェダルがまた無理言ったの?」
ちろりと、フォニケが非難の眼差しを向けると、「無理させた後だ」と答えるシェダル。
「まだ時間があるんですが、リュナのところには最近、雑魔がでるんですよ! 護衛して下さい!」
「……あー」
ナスルの言葉にフォニケは納得した。
実はこのナスル、怖がりなのだ。
辺境部族には大人と認められる為の試練が存在しており、ナスルの部族は動物を狩り、指定の部族まで届けるという試練があり、認められて大人となる。
前述の通り、ナスルは怖がりのために試練を三回落ちてお情けで認められたという状態。狩るまでに時間がかかったが、届ける作業に関しては的確丁寧。届け先の部族長こと、リュナの父親に誉められたらしいのが結婚のきっかけのようだった。
「それなら、ハンターに依頼したら?」
「ハンターですか、噂は聞いたことありますが」
「彼らならきっと護衛してくれるわ。私も依頼したけど、とってもいい子達ばかりだったのよ」
「はい、そうします!」
一条の光を見つけたナスルはハンターオフィスへと走っていった。
リプレイ本文
要塞内のハンターオフィスにて依頼人を待っていたら、時間ぴったりに現れたのは一人の優男。
「あ、お待たせしてすみません。皆さん、お疲れ様です」
ぺこぺこと腰が低い様子で現れたのは依頼人のナスルだった。
「あ、いえ、こちらは早くに着きましたもので……」
同じように頭に手をやり、腰が低い様子で答えるのはユーノ・ユティラ(ka0997)。
腰の引くさはその場にいた全員が「なんだか似てる……」という感想を持ってしまうくらいだった。
「とりあえず、向かいませんか。早く会いたいでしょう?」
話を切り上げようとし、クラーク・バレンスタイン(ka0111)が声をかけるとナスルは嬉しそうに頷いた。
ナスルの馬車が置いてある場所に行き、ハンター達は先に打ち合わせした通りに動き出す。
先の見張り番はカイ(ka0104)、ユーノ、神凪 宗(ka0499)の三人。
ユーノが「夜がいいんですが……」と呟いていたが、順番なのでとナスルが説得して見張りをやってもらう。
残りは体力温存も兼ねて残りの三人は荷台へと乗り込む。
「毛布やクッションがあるのはありがたい、遠慮なく使わせてもらうかの」
先に乗り込んだフラメディア・イリジア(ka2604)がたたんである毛布を広げて、クッションの一つを水雲 エルザ(ka1831)に渡す。
「あら、ふかふかですね」
渡されたクッションを両手で挟んでエルザが笑む。
布地は細かく、柔らかい手触りだ。リアルブルーのクッションにより近いさわり心地はとてもよい。
「それはリュナが作ったものです。中に入っている羊毛も柔らかくしています」
「そうなのですね。色もきれい……」
エルザの腕の中のクッションは空色の布地だ。
「そう言ってくれるのは嬉しいです。ハンターの皆さんは美的感覚も優れていると聞いているので、リュナも誉められているのを知ったら喜びます」
自分が誉められたように喜ぶナスルにハンター達は口元をほころばせる。
「なんだか、リアルブルーで聞いたような話だな」
毛布の上に座ったクラークが呟く。
「織姫と彦星の話ね」
「それは何なのじゃ?」
反応したのはエルザだ。豊かな髪を揺らし、小首を傾げるのはフラメディア。
「では、移動中にお話しましょうか」
「リアルブルーのお話は楽しみですね、それでは行きましょう」
愛しい妻に会う為、ナスルは馬を走らせた。
馬車を走らせてつつ荷台のエルザはリアルブルーの一部の地域に定着されている御伽噺を話した。
「なんて辛いでしょう……」
己の境遇と全く似た御伽噺に涙するナスルだった。
「さて、いいころですし、休憩をしましょうか」
エルザの提案に全員が賛成した。
馬車の荷台には幌がついており、日除けの為に全員中に入る。
塩を舐め、水を飲む。一息着くと、交替となる。
次の待機組は静かというか、気持ちよさそうにユーノが寝ていた。夜行性なのか、先ほど先行していた時はどこか眠そうだった。
ちろりとユーノの寝顔を確認してから宗はナスルの方を見やる。
「人通りがあるな」
今歩いている道は少ないながらも人が通る。
「この辺りは要塞へ出入りしている人の流通経路の一つです。戦える人もいるだろうし、まだマシです」
「問題はこの大きな道を外れたリュナがいる村の近くにです……」
「虚無がいるのだな」
宗の呟きに黙りこんでいたカイが宗をみやる。
「出れば戦えばいい」
それだけ言ってカイは再び沈黙した。休憩中とはいえ、馬車に乗るのも体力がいるのだ。
体力は温存し、なくてもよい戦闘にカイは備えていた。
「お願いします」
固い声音のナスルが見据えるのはまだ見ぬ妻の村近くだろう。
そろそろ、分岐点が近いのだろう。
「しっかりと護衛しますよ」
クラークが穏やかにナスルに話しかけた。
次の交替に起こされたユーノは眠い目を擦りつつ、毛布の温もりにうしろ髪引かれつつ護衛に入る。
先ほどまで綺麗に舗装されてないが、この地帯ではまだ綺麗で大きな道を歩いていたが、今は少し細い道へと入っている。
「この調子なら、もう一回の交代で村に着きます」
ナスルがつとめて明るい声音でハンター達に声をかける。
「そうだといいですね……」
怯えつつ、ユーノが呟く。
「この向こうは大きな岩場とかもありますが、馬車一台は通れます」
ナスルは指で示す先はまだ見えないが、暫くすれば見えてくるだろう。
まずは向かわなければならない。
一時間もしないうちにナスルが言っていた岩場が見えてきた。
「思ったよりは見通しはいいか」
ぐるりと周囲を見やった宗が言うが、道は一列でないと通れないようだった。
カイが前を歩き、ユーノと宗が後ろを守る。
生暖かい風が吹き、岩場の砂が崩れる音がした。びくりとユーノが横を向けば、驚いて息を吸い込んで声にならない悲鳴を上げる。
「うわわっ! で、でたー!」
何とか声を上げて味方に知らせたユーノは反射的にマジックアローを発動させる。
宗とカイが顔を上げると、岩場の上で鹿がマジックアローをかわしていた。
ただの鹿ならばいいが、今、ハンター達の目の前にいる鹿は目玉が飛び出さんばかりにぎょろりとしており、苛立ったようにひづめの先で着地先の岩を叩いている。
角も自分達が知る鹿の角とは全く違う形状をしており、前へ生えている部分が赤黒く、その色が血である事を本能で感じ取る。
馬車の中にいた三人も飛び出してきて他の雑魔に備える。
状況を察したナスルの馬が突然興奮しだし、慌ててナスルが「どう! どう!」と声をかけている。
馬の異変に察したクラークが周囲を見やると、馬車の前方向に鹿一体がこちらへと向かっていた。
「ナスルさん、鹿はこちらで迎撃します。馬を宥めたら走らせてください」
「わかりました」
クラークがナスルに指示を与えると前に出たのはカイだ。
まずはクラークがアサルトライフルを構え、意識を集中する。鹿もクラークに狙いを決め、駆け出した。
一騎打ちのような瞬間……。
風が吹いているのに感じなくなるほどクラークはマテリアルをアサルトライフルにこめる。
的確に引き金を引き、撃ち出された弾丸が鹿へと走る。
鹿はクラークの攻撃に気づき、跳躍をした。空を切るはずの弾丸は鹿の左足の膝を打ち抜いた。体勢を崩した鹿は地に転ぼうとしたが、その着地点にはロングソードを構えるカイがいた。
太陽の光を受け、反射する刀身に鹿は警戒し、人や動物を傷つける為に特化した角を下に向ける。
角から降りる鹿にカイは角を剣でなぎ払う。真っ向から受け止めたり、角を斬ろうとは考えなかった。
次の近接を見据えたカイは剣を再び構え、鹿の動きを見る。
駆け出す鹿よりカイの動きは早かった。
鹿は角を下げたが、カイは寸でで交わし、強く踏み込んだ。上段より大きく剣を振り降ろした時、カイの剣は鹿の首を捉えた。
切り口は浅かったものの、致命傷を与えるには十分なもの。衝撃に耐え切れなかった鹿はそのまま地に倒れ、前足で駆ろうとしたが、そのまま息絶えた。
「カイさん!」
クラークが視覚に反応し、カイへ警戒の声を上げた。
馬車の後ろ側では連携して四人で鹿の対処をしていたが、最初の一体の対処の時にもう一体、鹿が増えていた。
「エルザ殿!」
「了解です!」
フラメディアの呼びかけにエルザが反応し、彼女に狐に似た耳と尻尾が現れた。軽やかに地を駆り、鹿の向かう方向を自分へと向かわせる。馬車を壊させるわけには行かない為、鹿の気をそらせ、自分達に攻撃を向かせなければならない。
くるりと鹿の方へ身体を向けたエルザは手に持っていたフラジェルムを走らせる。
空気を切り裂き、鹿の足元近くの地を威嚇に鞭を叩きつける。前足を上げて驚いた鹿はエルザへと方向を転換する。
鹿を翻弄する為にエルザが走り、鹿を誘導させる。彼女はしなやかな跳躍を見せると、獲物が消えたとばかりに鹿が戸惑ったが、跳躍したエルザの後に待ち構えていたのはフラメディアだ。
エルザを追っていた鹿が、獲物たるエルザの姿を見失い、動きを止めたのをフラメディアは見逃さない。
「中々いい鹿じゃのう」
不敵な笑みを浮かべたフラメディアが狙うは前足だ。素早く動き、ひづめに当たれば十分な攻撃となる。思い切り武器を両手でしっかり剣を握り締め、マテリアルを込める。
懐に飛び込んだフラメディアは力の限り、鹿の前足目掛けて一気に斬りおとした。
駆ける事が出来なくなった鹿は自慢の角をハンター達に向けることすら出来ず、フラメディアの剣に首を落とされた。
鹿を一体倒して安堵していたユーノだが、それもつかの間だった。
「あ、ああっ! ス、スケルトンですよーー! ぼ、僕達を狙ってますよーーー!」
ユーノの叫びに宗が反応し、彼の視線の先を探せば、後方からスケルトンがすぐ傍にいる。どうやら、鹿は陽動役のようだった。
「敵は敵なりにしっかり組んでいるようだな」
宗の淡い青色のオーラが揺らめきは彼の闘争心の現れのようにも見えてしまう。
パゼラードをしっかり握り、宗は脚にマテリアルを集中させる。
移動した先は道の横だ。少し高い岩に足を乗せ、宗が前方を見やれば、カイとクラークがスケルトンと戦っていた。
「スケルトンの挟み撃ちだ!」
宗が叫ぶと、エルザとフラメディアが分かれようとしたが、更に鹿が現れて二人はその対処に入った。
「次から次へと……っ」
歯噛みする宗だが、今は敵を倒すのが先決だ。
「援護を頼む!」
宗がユーノに叫び、自身はスケルトンへと駆ける。
「え、援護ですね! 撃ちます!」
えい! と気合を入れてユーノがマジックアローを放つ。
衝撃を伴って弾けるような音がし、スケルトンは痺れたように一瞬止まった。
マジックアローの後ろを走る宗は身体中にマテリアルを潤滑させて満たしていく。
刀身の短い武器を持つ宗と60cm程の刃を持つスケルトンでは間合いが違う。隙を見つけ、懐に飛び込み、確実に叩かねばならない。
気合と共に繰り出されたスラッシュエッジはスケルトンの首から肋骨、骨盤までも砕いていった。
「やった……」
宗がスケルトンを倒したのを確信したユーノが仲間達を見やると、戦闘は終了していた。
「さて、馬の興奮が鎮まる前に血抜きをやるかの」
「手伝います」
フラメディアが率先として鹿の解体をはじめると、クラークが手伝いに入る。
「麻袋もありますので、荷台の側面に括りつけてください」
馬を宥めつつ、ナスルが声をかけると、カイが荷台の側面に括りつけてあった麻袋を取り出してクラークに投げる。
●
皆の協力あって、食料までも取れたのは僥倖だとナスルは嬉しそうだった。
「よかったですね、土産が出来て」
クラークの言葉にナスルは「皆さんのお陰です」と答える。
「これだけの肉が獲れたんじゃし、皆で美味しく食べようでないかの」
「賛成です♪」
フラメディアが提案すれば、エルザも同感のようだ。
「もうすぐ、村に着きますよ」
ナスルが声をかけると、荷台にいるカイは沈黙を持って頷き、宗はゆっくりと水を飲む。ユーノは戦闘の緊張感が抜けて横になっていた。
村に着く頃にクラークが見たのは女性の人影。
「もしかして……」
クラークがナスルに視線を向けると、彼はとても嬉しそうな顔をしたので、皆まで言わなくていいと思い、穏やかに口を閉ざす。
「ナスルーーー!」
「リュナーーー!」
夫婦が一年ぶりに再会できた。
村に着くと、風の噂で聞くハンターを間近で見れると村人達が歓迎してくれた。
「肉を持ってきたのじゃ、皆で食べようぞ?」
ハンター達の差し入れに村人たちは急いで広場で火をおこし、肉を焼く用意を始める。
「わ、綺麗ですね」
「ありがとうございます」
リュナの作った織物を見てエルザは表情を明るくする。リュナの作ったものは全て売約済みであり、買えはしなかったが、目の保養には十分なもの。
折角ピュアウォーターを覚えたのに道中は一切出番がなかったユーノだが、最近雨に恵まれていない村の飲み水用にと借り出され、ピュアウォーターを使ってほしいと言われた。
「どこかに泥水あっただろ、掘り起こせ!」
「あれ、あの兄ちゃん、どこいった!」
「私……ここにいます……」
頭に手をやりつつずっと、同じ場所にいたユーノに村人は謝る。
ピュアウォーターを使い切ったが、村人達には大層感謝されていた。
夕食は村人皆で焼肉。
新鮮なご馳走に皆大喜びだった。
「美味しいですね」
鹿肉に興味があったクラークも満足そうであった。
夕食もそこそこ終わったが、村人たちは宴会に突入していた。
とっぷりと日も暮れて星が瞬いていた。
「星、見に行きませんか?」
ユーノが声をかけると、ハンター達は賛成した。
賑やかな宴会は悪くはないが、それなりに疲れはある。
「こちらを持っていくといいですよ」
リュナがハンター達に敷物を渡してくれた。
高台に上がると、村の宴会の喧騒が少し遠のく。夏の夜風が吹けば音は高台にいるハンター達だけのものになったようだ。
敷物をそれぞれ敷いて座ったり、そのまま草の上で寝転んだり、ハンター達は思い思いに星を眺める。
「こちらにも星はあるのですね」
「輝きもやはりそれぞれ違うようですね」
リアルブルーの夜空を思い出すハンター達はクリムゾンウェストの星の違いを見ようと確認する。
「昼にお話した織姫と彦星はリアルブルーでは星に例えられているのですよ」
「他にも、逸話があるのですか?」
エルザの言葉に反応したユーノが返せばあると、宗が答えた。
「星ほどの輝きに見合うまでの高みに登れるか……」
ぽつりとフラメディアが呟く。
「我次第じゃが、このように輝く星を見れば、考えてしまうのぅ」
くつりと何処か艶やかに笑むフラメディアの言葉にカイはゆっくり瞬くと、流れる星を見た。
流れ行く星は次第に輝きを失い、消え行く。
どこへ向かうかは、これからのハンター達の宿命のように定まっていないのかもしれない。
「あ、お待たせしてすみません。皆さん、お疲れ様です」
ぺこぺこと腰が低い様子で現れたのは依頼人のナスルだった。
「あ、いえ、こちらは早くに着きましたもので……」
同じように頭に手をやり、腰が低い様子で答えるのはユーノ・ユティラ(ka0997)。
腰の引くさはその場にいた全員が「なんだか似てる……」という感想を持ってしまうくらいだった。
「とりあえず、向かいませんか。早く会いたいでしょう?」
話を切り上げようとし、クラーク・バレンスタイン(ka0111)が声をかけるとナスルは嬉しそうに頷いた。
ナスルの馬車が置いてある場所に行き、ハンター達は先に打ち合わせした通りに動き出す。
先の見張り番はカイ(ka0104)、ユーノ、神凪 宗(ka0499)の三人。
ユーノが「夜がいいんですが……」と呟いていたが、順番なのでとナスルが説得して見張りをやってもらう。
残りは体力温存も兼ねて残りの三人は荷台へと乗り込む。
「毛布やクッションがあるのはありがたい、遠慮なく使わせてもらうかの」
先に乗り込んだフラメディア・イリジア(ka2604)がたたんである毛布を広げて、クッションの一つを水雲 エルザ(ka1831)に渡す。
「あら、ふかふかですね」
渡されたクッションを両手で挟んでエルザが笑む。
布地は細かく、柔らかい手触りだ。リアルブルーのクッションにより近いさわり心地はとてもよい。
「それはリュナが作ったものです。中に入っている羊毛も柔らかくしています」
「そうなのですね。色もきれい……」
エルザの腕の中のクッションは空色の布地だ。
「そう言ってくれるのは嬉しいです。ハンターの皆さんは美的感覚も優れていると聞いているので、リュナも誉められているのを知ったら喜びます」
自分が誉められたように喜ぶナスルにハンター達は口元をほころばせる。
「なんだか、リアルブルーで聞いたような話だな」
毛布の上に座ったクラークが呟く。
「織姫と彦星の話ね」
「それは何なのじゃ?」
反応したのはエルザだ。豊かな髪を揺らし、小首を傾げるのはフラメディア。
「では、移動中にお話しましょうか」
「リアルブルーのお話は楽しみですね、それでは行きましょう」
愛しい妻に会う為、ナスルは馬を走らせた。
馬車を走らせてつつ荷台のエルザはリアルブルーの一部の地域に定着されている御伽噺を話した。
「なんて辛いでしょう……」
己の境遇と全く似た御伽噺に涙するナスルだった。
「さて、いいころですし、休憩をしましょうか」
エルザの提案に全員が賛成した。
馬車の荷台には幌がついており、日除けの為に全員中に入る。
塩を舐め、水を飲む。一息着くと、交替となる。
次の待機組は静かというか、気持ちよさそうにユーノが寝ていた。夜行性なのか、先ほど先行していた時はどこか眠そうだった。
ちろりとユーノの寝顔を確認してから宗はナスルの方を見やる。
「人通りがあるな」
今歩いている道は少ないながらも人が通る。
「この辺りは要塞へ出入りしている人の流通経路の一つです。戦える人もいるだろうし、まだマシです」
「問題はこの大きな道を外れたリュナがいる村の近くにです……」
「虚無がいるのだな」
宗の呟きに黙りこんでいたカイが宗をみやる。
「出れば戦えばいい」
それだけ言ってカイは再び沈黙した。休憩中とはいえ、馬車に乗るのも体力がいるのだ。
体力は温存し、なくてもよい戦闘にカイは備えていた。
「お願いします」
固い声音のナスルが見据えるのはまだ見ぬ妻の村近くだろう。
そろそろ、分岐点が近いのだろう。
「しっかりと護衛しますよ」
クラークが穏やかにナスルに話しかけた。
次の交替に起こされたユーノは眠い目を擦りつつ、毛布の温もりにうしろ髪引かれつつ護衛に入る。
先ほどまで綺麗に舗装されてないが、この地帯ではまだ綺麗で大きな道を歩いていたが、今は少し細い道へと入っている。
「この調子なら、もう一回の交代で村に着きます」
ナスルがつとめて明るい声音でハンター達に声をかける。
「そうだといいですね……」
怯えつつ、ユーノが呟く。
「この向こうは大きな岩場とかもありますが、馬車一台は通れます」
ナスルは指で示す先はまだ見えないが、暫くすれば見えてくるだろう。
まずは向かわなければならない。
一時間もしないうちにナスルが言っていた岩場が見えてきた。
「思ったよりは見通しはいいか」
ぐるりと周囲を見やった宗が言うが、道は一列でないと通れないようだった。
カイが前を歩き、ユーノと宗が後ろを守る。
生暖かい風が吹き、岩場の砂が崩れる音がした。びくりとユーノが横を向けば、驚いて息を吸い込んで声にならない悲鳴を上げる。
「うわわっ! で、でたー!」
何とか声を上げて味方に知らせたユーノは反射的にマジックアローを発動させる。
宗とカイが顔を上げると、岩場の上で鹿がマジックアローをかわしていた。
ただの鹿ならばいいが、今、ハンター達の目の前にいる鹿は目玉が飛び出さんばかりにぎょろりとしており、苛立ったようにひづめの先で着地先の岩を叩いている。
角も自分達が知る鹿の角とは全く違う形状をしており、前へ生えている部分が赤黒く、その色が血である事を本能で感じ取る。
馬車の中にいた三人も飛び出してきて他の雑魔に備える。
状況を察したナスルの馬が突然興奮しだし、慌ててナスルが「どう! どう!」と声をかけている。
馬の異変に察したクラークが周囲を見やると、馬車の前方向に鹿一体がこちらへと向かっていた。
「ナスルさん、鹿はこちらで迎撃します。馬を宥めたら走らせてください」
「わかりました」
クラークがナスルに指示を与えると前に出たのはカイだ。
まずはクラークがアサルトライフルを構え、意識を集中する。鹿もクラークに狙いを決め、駆け出した。
一騎打ちのような瞬間……。
風が吹いているのに感じなくなるほどクラークはマテリアルをアサルトライフルにこめる。
的確に引き金を引き、撃ち出された弾丸が鹿へと走る。
鹿はクラークの攻撃に気づき、跳躍をした。空を切るはずの弾丸は鹿の左足の膝を打ち抜いた。体勢を崩した鹿は地に転ぼうとしたが、その着地点にはロングソードを構えるカイがいた。
太陽の光を受け、反射する刀身に鹿は警戒し、人や動物を傷つける為に特化した角を下に向ける。
角から降りる鹿にカイは角を剣でなぎ払う。真っ向から受け止めたり、角を斬ろうとは考えなかった。
次の近接を見据えたカイは剣を再び構え、鹿の動きを見る。
駆け出す鹿よりカイの動きは早かった。
鹿は角を下げたが、カイは寸でで交わし、強く踏み込んだ。上段より大きく剣を振り降ろした時、カイの剣は鹿の首を捉えた。
切り口は浅かったものの、致命傷を与えるには十分なもの。衝撃に耐え切れなかった鹿はそのまま地に倒れ、前足で駆ろうとしたが、そのまま息絶えた。
「カイさん!」
クラークが視覚に反応し、カイへ警戒の声を上げた。
馬車の後ろ側では連携して四人で鹿の対処をしていたが、最初の一体の対処の時にもう一体、鹿が増えていた。
「エルザ殿!」
「了解です!」
フラメディアの呼びかけにエルザが反応し、彼女に狐に似た耳と尻尾が現れた。軽やかに地を駆り、鹿の向かう方向を自分へと向かわせる。馬車を壊させるわけには行かない為、鹿の気をそらせ、自分達に攻撃を向かせなければならない。
くるりと鹿の方へ身体を向けたエルザは手に持っていたフラジェルムを走らせる。
空気を切り裂き、鹿の足元近くの地を威嚇に鞭を叩きつける。前足を上げて驚いた鹿はエルザへと方向を転換する。
鹿を翻弄する為にエルザが走り、鹿を誘導させる。彼女はしなやかな跳躍を見せると、獲物が消えたとばかりに鹿が戸惑ったが、跳躍したエルザの後に待ち構えていたのはフラメディアだ。
エルザを追っていた鹿が、獲物たるエルザの姿を見失い、動きを止めたのをフラメディアは見逃さない。
「中々いい鹿じゃのう」
不敵な笑みを浮かべたフラメディアが狙うは前足だ。素早く動き、ひづめに当たれば十分な攻撃となる。思い切り武器を両手でしっかり剣を握り締め、マテリアルを込める。
懐に飛び込んだフラメディアは力の限り、鹿の前足目掛けて一気に斬りおとした。
駆ける事が出来なくなった鹿は自慢の角をハンター達に向けることすら出来ず、フラメディアの剣に首を落とされた。
鹿を一体倒して安堵していたユーノだが、それもつかの間だった。
「あ、ああっ! ス、スケルトンですよーー! ぼ、僕達を狙ってますよーーー!」
ユーノの叫びに宗が反応し、彼の視線の先を探せば、後方からスケルトンがすぐ傍にいる。どうやら、鹿は陽動役のようだった。
「敵は敵なりにしっかり組んでいるようだな」
宗の淡い青色のオーラが揺らめきは彼の闘争心の現れのようにも見えてしまう。
パゼラードをしっかり握り、宗は脚にマテリアルを集中させる。
移動した先は道の横だ。少し高い岩に足を乗せ、宗が前方を見やれば、カイとクラークがスケルトンと戦っていた。
「スケルトンの挟み撃ちだ!」
宗が叫ぶと、エルザとフラメディアが分かれようとしたが、更に鹿が現れて二人はその対処に入った。
「次から次へと……っ」
歯噛みする宗だが、今は敵を倒すのが先決だ。
「援護を頼む!」
宗がユーノに叫び、自身はスケルトンへと駆ける。
「え、援護ですね! 撃ちます!」
えい! と気合を入れてユーノがマジックアローを放つ。
衝撃を伴って弾けるような音がし、スケルトンは痺れたように一瞬止まった。
マジックアローの後ろを走る宗は身体中にマテリアルを潤滑させて満たしていく。
刀身の短い武器を持つ宗と60cm程の刃を持つスケルトンでは間合いが違う。隙を見つけ、懐に飛び込み、確実に叩かねばならない。
気合と共に繰り出されたスラッシュエッジはスケルトンの首から肋骨、骨盤までも砕いていった。
「やった……」
宗がスケルトンを倒したのを確信したユーノが仲間達を見やると、戦闘は終了していた。
「さて、馬の興奮が鎮まる前に血抜きをやるかの」
「手伝います」
フラメディアが率先として鹿の解体をはじめると、クラークが手伝いに入る。
「麻袋もありますので、荷台の側面に括りつけてください」
馬を宥めつつ、ナスルが声をかけると、カイが荷台の側面に括りつけてあった麻袋を取り出してクラークに投げる。
●
皆の協力あって、食料までも取れたのは僥倖だとナスルは嬉しそうだった。
「よかったですね、土産が出来て」
クラークの言葉にナスルは「皆さんのお陰です」と答える。
「これだけの肉が獲れたんじゃし、皆で美味しく食べようでないかの」
「賛成です♪」
フラメディアが提案すれば、エルザも同感のようだ。
「もうすぐ、村に着きますよ」
ナスルが声をかけると、荷台にいるカイは沈黙を持って頷き、宗はゆっくりと水を飲む。ユーノは戦闘の緊張感が抜けて横になっていた。
村に着く頃にクラークが見たのは女性の人影。
「もしかして……」
クラークがナスルに視線を向けると、彼はとても嬉しそうな顔をしたので、皆まで言わなくていいと思い、穏やかに口を閉ざす。
「ナスルーーー!」
「リュナーーー!」
夫婦が一年ぶりに再会できた。
村に着くと、風の噂で聞くハンターを間近で見れると村人達が歓迎してくれた。
「肉を持ってきたのじゃ、皆で食べようぞ?」
ハンター達の差し入れに村人たちは急いで広場で火をおこし、肉を焼く用意を始める。
「わ、綺麗ですね」
「ありがとうございます」
リュナの作った織物を見てエルザは表情を明るくする。リュナの作ったものは全て売約済みであり、買えはしなかったが、目の保養には十分なもの。
折角ピュアウォーターを覚えたのに道中は一切出番がなかったユーノだが、最近雨に恵まれていない村の飲み水用にと借り出され、ピュアウォーターを使ってほしいと言われた。
「どこかに泥水あっただろ、掘り起こせ!」
「あれ、あの兄ちゃん、どこいった!」
「私……ここにいます……」
頭に手をやりつつずっと、同じ場所にいたユーノに村人は謝る。
ピュアウォーターを使い切ったが、村人達には大層感謝されていた。
夕食は村人皆で焼肉。
新鮮なご馳走に皆大喜びだった。
「美味しいですね」
鹿肉に興味があったクラークも満足そうであった。
夕食もそこそこ終わったが、村人たちは宴会に突入していた。
とっぷりと日も暮れて星が瞬いていた。
「星、見に行きませんか?」
ユーノが声をかけると、ハンター達は賛成した。
賑やかな宴会は悪くはないが、それなりに疲れはある。
「こちらを持っていくといいですよ」
リュナがハンター達に敷物を渡してくれた。
高台に上がると、村の宴会の喧騒が少し遠のく。夏の夜風が吹けば音は高台にいるハンター達だけのものになったようだ。
敷物をそれぞれ敷いて座ったり、そのまま草の上で寝転んだり、ハンター達は思い思いに星を眺める。
「こちらにも星はあるのですね」
「輝きもやはりそれぞれ違うようですね」
リアルブルーの夜空を思い出すハンター達はクリムゾンウェストの星の違いを見ようと確認する。
「昼にお話した織姫と彦星はリアルブルーでは星に例えられているのですよ」
「他にも、逸話があるのですか?」
エルザの言葉に反応したユーノが返せばあると、宗が答えた。
「星ほどの輝きに見合うまでの高みに登れるか……」
ぽつりとフラメディアが呟く。
「我次第じゃが、このように輝く星を見れば、考えてしまうのぅ」
くつりと何処か艶やかに笑むフラメディアの言葉にカイはゆっくり瞬くと、流れる星を見た。
流れ行く星は次第に輝きを失い、消え行く。
どこへ向かうかは、これからのハンター達の宿命のように定まっていないのかもしれない。
依頼結果
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相談卓 クラーク・バレンスタイン(ka0111) 人間(リアルブルー)|26才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2014/07/13 13:42:09 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/11 22:29:54 |