ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】深夜の花畑で
マスター:深夜真世

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~9人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/08 19:00
- 完成日
- 2015/06/16 15:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●前口上
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるが、今回のジェオルジ村長祭はどんな催しが行われるのか。
●本編
ここは、ジェオルジ領のとある飲食店。
「え? お祭りがあるの?」
小さなエルフ娘のフラ・キャンディ(kz0121)は思わず席から立ち上がった。昼食のスープが揺れるがなんとかこぼれることはなかったようで。
「確かこの地方の祭りはささやかなものじゃったはずじゃが……」
同席する老人、ジル・コバルトはフラに落ち着きなさいと声を掛けた後、店員に確認した。
「はい。昨年の秋からですね。にぎやかになったのは」
おかげで観光客も増えて店としてはうれしい限りです、と微笑する店員。まとった衣服に造花を差していたり店内の花飾りに力を入れたりという雰囲気作りからして、祭りの盛大化が地域に喜んで受け入れられているのだと分かる。
「どんなことするの? どんなことするの?」
フラ、立ったまま後ろに踵を交互に跳ね上げるように足踏みして話をねだる。
「祭りは逃げませんから落ち着いてくださいね、お嬢さん」
店員はにこやかに大人の対応。そして指折り数え上げる。
「花にかかわる催しがやはり多いですね。あとはパンをみんなで焼いたり、ステージがあったり……」
「なあ、何とかならんかの?」
ここで店内でやや大きな声が。店員もフラもジルも振り返る。
「祭りが大きくなったのはいいが、どこも自分のところで手一杯だよ。何せここだって普段より客が多いんだ。祭り目当てに来た人にしっかり対応するためには人は出せないんだよ」
どうやら地域の顔役と店長が話し合っているようだ。
「すいませんね。祭りがにぎわうのはいいんですが、人手が足りなくなっているんですよ」
店員がフラとジルに言い訳した。
先の2人はまだ話している。
「夜に客が来るわけではあるまい」
「夜にしっかり休まないと人員が疲弊してしまいます。疲弊していれば普段はしないミスも多くなってきます。一日だけの祭りじゃないんです。無理は絶対に禁物なんです。こういうときこそハンターに依頼すべきでは?」
「そりゃ分かっとるが、そのハンターも客として来たがるに違いないし……」
ここで2人、押し黙る。
誰も楽しい祭りは参加者として楽しみたい。ハンターに依頼しても人が集まるとは限らないのだ。
しかも、よりによって仕事は夜間らしい。
「あの……」
ここでフラ、2人に近寄った。
「ボクでよかったら、お手伝いするよ?」
「これ、フラ。内容も聞かずに!」
慌てて追ってきたジルが止めるが、フラは真っ直ぐ2人を見詰めている。
「いや、子供には……」
「おお、それなら手伝ってくれるハンター募集の手伝いをしてくれないか?」
この2人に良心はあった。
深夜のまつり会場警備に子供は向かないと判断し、募集の手伝いにすり替えた。
これでジルも納得するのだが……。
フラ、納得しない。
「夜にこっそり祭りを楽しめるなんて、それはそれで楽しいよっ!」
というわけで結局、フラも深夜の会場警備の仕事を受けるのだった。
そんなこんなで深夜番、求ム。
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるが、今回のジェオルジ村長祭はどんな催しが行われるのか。
●本編
ここは、ジェオルジ領のとある飲食店。
「え? お祭りがあるの?」
小さなエルフ娘のフラ・キャンディ(kz0121)は思わず席から立ち上がった。昼食のスープが揺れるがなんとかこぼれることはなかったようで。
「確かこの地方の祭りはささやかなものじゃったはずじゃが……」
同席する老人、ジル・コバルトはフラに落ち着きなさいと声を掛けた後、店員に確認した。
「はい。昨年の秋からですね。にぎやかになったのは」
おかげで観光客も増えて店としてはうれしい限りです、と微笑する店員。まとった衣服に造花を差していたり店内の花飾りに力を入れたりという雰囲気作りからして、祭りの盛大化が地域に喜んで受け入れられているのだと分かる。
「どんなことするの? どんなことするの?」
フラ、立ったまま後ろに踵を交互に跳ね上げるように足踏みして話をねだる。
「祭りは逃げませんから落ち着いてくださいね、お嬢さん」
店員はにこやかに大人の対応。そして指折り数え上げる。
「花にかかわる催しがやはり多いですね。あとはパンをみんなで焼いたり、ステージがあったり……」
「なあ、何とかならんかの?」
ここで店内でやや大きな声が。店員もフラもジルも振り返る。
「祭りが大きくなったのはいいが、どこも自分のところで手一杯だよ。何せここだって普段より客が多いんだ。祭り目当てに来た人にしっかり対応するためには人は出せないんだよ」
どうやら地域の顔役と店長が話し合っているようだ。
「すいませんね。祭りがにぎわうのはいいんですが、人手が足りなくなっているんですよ」
店員がフラとジルに言い訳した。
先の2人はまだ話している。
「夜に客が来るわけではあるまい」
「夜にしっかり休まないと人員が疲弊してしまいます。疲弊していれば普段はしないミスも多くなってきます。一日だけの祭りじゃないんです。無理は絶対に禁物なんです。こういうときこそハンターに依頼すべきでは?」
「そりゃ分かっとるが、そのハンターも客として来たがるに違いないし……」
ここで2人、押し黙る。
誰も楽しい祭りは参加者として楽しみたい。ハンターに依頼しても人が集まるとは限らないのだ。
しかも、よりによって仕事は夜間らしい。
「あの……」
ここでフラ、2人に近寄った。
「ボクでよかったら、お手伝いするよ?」
「これ、フラ。内容も聞かずに!」
慌てて追ってきたジルが止めるが、フラは真っ直ぐ2人を見詰めている。
「いや、子供には……」
「おお、それなら手伝ってくれるハンター募集の手伝いをしてくれないか?」
この2人に良心はあった。
深夜のまつり会場警備に子供は向かないと判断し、募集の手伝いにすり替えた。
これでジルも納得するのだが……。
フラ、納得しない。
「夜にこっそり祭りを楽しめるなんて、それはそれで楽しいよっ!」
というわけで結局、フラも深夜の会場警備の仕事を受けるのだった。
そんなこんなで深夜番、求ム。
リプレイ本文
●
宵の口の春郷祭。
人々は歌い踊り、料理に舌鼓を打ち、そして――。
「なにしよんな、ワレェ」
「何じゃと、おどりゃあ!」
何があったか、喧嘩する者も。
「……はいよ、そこまで」
ぼっ、とその横で狐火が現れる。殴ろうとする手を止める二人。
そこにいたのは覚醒した時雨 凪枯(ka3786)だった。
「喧嘩は祭りの花たぁいうけどね? 楽しく飲んだ方がお得だよ」
言った瞬間、たもとをばさりとなびかせ動く。
「おっと、今はまだ勤務時間じゃなかったか?」
凪枯、煙管をくゆらせ愉快そうに笑う。
その足元には、喧嘩をしていた二人が尻餅を付いていた。
この時、フラ・キャンディ(kz0121)は賑わいから外れた小屋の前でぼんやり座っていた。
「やあ。フラ」
そこへネーナ・ドラッケン(ka4376)が到着。
「ネーナさん、来てくれたんだね」
「縁があるというのは素晴らしい事。別段祭りを一緒に過ごすような者もいない。だから警護でもなんでも問題なく引き受けるよ」
ネーナの目が微笑でほころぶ。
「警備だけど祭りは祭りだよ。一緒に楽しんでお仕事、しよっ」
「……楽しんで、良いの?」
フラの言葉に、新たにやって来た白い少女、nil(ka2654)が聞いた。
「ま、若いうちは大いに楽しんどくべきだ」
答えたのは一緒だった元傭兵、ライナス・ブラッドリー(ka0360)。
「だったら、楽器演奏で合間に盛り上げるくらいはしてもよいのかな?」
ネーナの言葉にライナス、「いいんじゃねぇか?」。
と、ここで二人が顔を上げた。
いつの間にか横に、岩波レイナ(ka3178)が立っていた。興味深そうに二人の話を聞いていたのだが、自分に視線が集まり焦る。
「べ、別に歌っていいんだとか思ったわけじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよ!」
レイナ、激しくツン。
その時だった!
「お祭りお祭り~♪」
「お祭にぎやかで楽しそうです! バラ園も大きくてとっても綺麗でしたっ!」
賑やかな二人組の娘は……。
「ベガちゃん、お祭り大好きなのっ。警備しっかりするよー」
天真爛漫な方が、シェリアク=ベガ(ka4647)。
「私、緋乃宮姫翠っていいます! よろしくお願いしますっ!!」
こっちも天真爛漫だよ、緑の髪が特徴的な緋乃宮 姫翠(ka5031)。
ぺこ、と元気よくお辞儀した姫翠の頭からふわりと何かが掛けられた。
ベガが掛けたようだ。
「これは……たすき?」
「そーなの、即席のたすきなのっ。お揃いで、警備してるって目印になるんだよっ」
姫翠に説明して自分も掛ける。
白地に紫色の花が刺繍されていた。
「『守護』って花言葉があるんだよっ」
「へえ……花柄のたすき……」
ベガの説明に、ふらふらっと焔之迦(ka3896)が寄って来た。
受け取って自分に掛けようとしたところで、ぶるぶると顔を振る。
「あ、あたしにはちょっと似合わないかな……」
「女の子なら誰でも似合うのっ」
ベガ、ためらう焔之迦に強引に掛ける。
「え、ええと……」
さらにためらったのは、弓月・小太(ka4679)。女の子っぽいが、れっきとした男の子である。
「んもう、みんな一緒の目印なんだからいいのっ」
ベガ、小太にも勢い良く掛ける。
「そうだ。ボク、まだ来てない人に届けて来るねっ」
ここでフラが駆け出した。
「あー、また……」
ネーナはやれやれとついていくのだった。
●
一方、凪枯。
待ち合わせの小屋へと向かっていた。
「……珍しいかい?」
ふと止まって振り返ったのは、子供がついて来ていたから。
子供、不思議そうに覚醒した凪枯の狐尻尾や狐火に見とれている。
「なんでこんな所でフラフラしてるんだい?」
しゃがんで聞くと、子供は拗ねた。言いたくないのだろう。
「もうすぐ暗くなる。子供の一人歩きはよくなさいね」
「……あの子は?」
ようやく子供は口をきいた。指差す先に、フラとネーナ。「凪枯さぁん」と手を振っている。
「フラちゃん、ちょいと覚醒してみな?」
「ボク?」
言われた通りに覚醒する。髪飾りを取ると、ふわっと不自然に髪が広がった。
「見ての通りこの子は仲間でお仕事中。……一緒にお仕事、するかい?」
子供、頷いた。たすきを身に着けた凪枯の裾を握っている。
「フラちゃん、あたしゃちょいと先に警備してくるよ」
凪枯、子供と一緒に警備に行く。
ぎゅっと子供がしがみついていた。
実際、警備は暗くなるまでの方が大変だった。
「おねーさんにまかせておくのっ♪」
ベガは迷子を見つけて両親探し。
「おおっととと……」
別の場所では酔客がふらふら。
「……酒はほどほどに。羽目をはずしすぎて迷惑をかけてしまうのはダメだね」
ネーナ、酔客が花に突っ込んでしまう前に背後から逆手を掴んで止めてやる。
「ネーナさん、あっちに連れて行こう」
フラと一緒に左右から肩を抱え、休むことのできる場所へと連行。
別の場所でも。
「はいはい、酒は飲んでも飲まれるな。よ! 水、あげるから、確り帰るのよ!」
こちらではレイナが酔客に対応中。
そうこうしているうち、ついに祭りの灯は消える。
「今日は月が綺麗でいい夜ですねぇ。夜のお花畑というのも何かいい雰囲気なのですよぉ」
バラ園を回る小太は……突然足を止めた。
突然出くわした男女二人が抱き合ったまま、びく、と身を固めていたのだ。男の手は女性の胸。
「え、ええと……お、お熱いのはいいのですが、一応ここは夜は立ち入り禁止なのでぇ。べ、別の場所でお願いしますぅっ」
……小太、わたわたしつつ自分が逃げてたり。
●
深夜。
バラ園では囁くような会話とかすかな衣擦れの音。
そして、こっそり気配を隠している人物も。
どうやら恋人たちの秘め事を覗いている者がいるようだ。
「おい」
その背中に野太い声。
「ん……ひ、ひいっ!」
覗き男は振り向くなり、一目散に逃げて行った。
ライナスがいたのだ。
「こりゃお早いお帰りで。……この体格と風貌とはいえ、ああまで怯えられるのもな」
ぽり、と頭をかく。
「月も花も綺麗だから、皆、来るのね……」
一緒にいるnilが歌うように呟く。
「…っと、nilはあの二人を。俺を真似せんでいいぞ?」
「? 注意、分かった」
ライナスに言われてカップルに近寄る。
「……此処、深夜は立ち入り禁止。バラも休みたいに違いない」
幸い、カップルはnilに頭を下げて帰って行く。
「……帰って行った」
「ああ、お疲れさん」
知らず、先のカップルが座っていたところに座った。
「綺麗……」
「そうだな。昼間とは違う」
大輪の薔薇が咲き乱れる散歩道と、それを照らす月。
「白薔薇の夜……淡く光彩を放っているよう、か」
「不思議」
びく、とライナスは隣に座るnilを見た。
自分は、まるで人魂のよう、と思っていた。
今回は、nilにこんな夜の世界もあることを見せたくて仕事を引き受けた。
この場所にこの時間に存在すること。
在りのままの世界は、そこに寄り添うことで初めて姿を見せる。
nilは、どうだろう。
「……向こうの世界でも、ライナスは、ライナスだった…?」
この視線に、nilはそう問うてきた。
「どうだろうな……」
片目がうずいた。
「どうしたの?」
「あの中に俺の妻や子供も居るのだろうか。大切で何にも代え難い……いや」
ぽう、と浮かび上がる白薔薇を見て言ったライナス、nilに向き直った。
そして突然、肩車した。
「……なぁ、nil。俺の、娘にならないか?」
一回転して、頭上に問う。
「……これがライナスが見ている景色、なのね」
「そうだ。一緒の目線で一緒の景色を見て……心の繋がりの、そんな家族、だ」
「……ライナスは、私が家族でも、良いの…?」
nil。
育ったのは山奥のなにも無い村。家族も居なく、名前すら無い。
「nilじゃないと…意味が無いんだよ」
ライナスはもう一回転。
nilは心に生まれた新たな思いにそっと手をあてがうのだった。
●
しばらくのち。
今度は月明かりに、くるくる回りなが歩く人影が浮かんだ。
「召しませ召しませ♪ コーヒー召しませ~♪」
姫翠である。
ひらひらの衣装をなびかせて、首に蝶結びにした緋色のリボンをなびかせて。
両手を広げて気分よく。
「はっ!」
姫翠、突然止まった。
「すごく……いい匂いです」
バラの香りに気付いたのだ。夜で見えにくい分、しっかりと感じられたのかもしれない。
「香り……」
姫翠、ピンとくると巡回ルートを急ぎだした。
その後、待機する小屋で。
「あれ?」
ネーナがいい香りに気付いた。
「珈琲、淹れました。苦いのは苦手ですから、砂糖とミルクをたっぷり入れて飲みます! 皆さんもいかがですか?」
姫翠、にこにこ。
「姫翠ちゃんも一緒にお話ししようっ」
ベガ、こっちこっちと手招きする。
「何を話してるんです?」
「あー、あまり気にしないでいいよ」
少し距離を置く凪枯がによによしながら煙管をもてあそんでいる。
「がーるずとーく! 大人な会話してるんだよー」
「大人な会話?」
ベガの言葉に首をかしげる姫翠。
「うん。ネーナちゃんはこんなでしょ? フラちゃんもこんなの。アクセサリーもつけて、みんなお洒落だよね~」
「ちょ……触らないで」
「あん、おへそはだめだよ~」
言いつつベガはネーナとフラのへそあたりを指先で、ぴとっ。
「ベガさんもおへそ出してるし、焔之迦さんもそうですよね~」
小太がぽそり。
「あ、あたしは別にお洒落なんか……」
焔之迦、真っ赤になっている。
「焔之迦は可愛いというより綺麗だね」
「! ……ちょっと巡回してくる」
ネーナに言われて焔之迦、照れつつ出て行った。
「姫翠は小さな肩を出してて可愛いよね」
「えへへー」
「べ、別にあたしは薄着してないんだからねっ」
ネーナ、今度は姫翠に言うが、へそだけ隠して肩など出して薄着しているレイナが敏感に空気を読み取って真っ赤になっていた。
「あたしも出てくる」
と、仕事に立つ。
「フラさん、どんな歌や踊りが好きですか? 私は元気が出るお歌だったり、ほのぼの出来るお歌が好きです」
「え? えっと、元気が出るのが好きかなぁ」
姫翠がフラに近寄って真正面からのぞき込む。
「そうじゃないかって思いました。でも、何かこう…もっと賑やかなものが好きなイメージがっ」
今度は横から小太が。
「小太ちゃんすごいの……がーるずとーくについて来てるの……」
「まあ、ぱっと見ただけでは分からないし」
感心するベガに、うんうん頷くネーナ。
「もっと賑やかって……そうそう。焔之迦さんとも話したよ。旅立った故郷について」
「今までどんな所を旅してきたんですか? 私も色々な所に行きたいので教えてくれると嬉しいですっ!」
姫翠、話題に食いついた。さらにフラに詰め寄って……どしんと一緒に布団に倒れたり。
「あ~、仮眠もとるんだよな」
さすがにこの騒ぎに、最初は温かく見守っていたライナスも注意。横でnilはしっかり仮眠を取っているが。
「月明かりが綺麗すぎて星が見えにくいかもだけど、お外に行くのっ」
ベガの一言で、皆で巡回に出掛けた。
●
「月夜に咲く薔薇……」
先に出た焔之迦は一人で歩いていた。さすがにバラ園に誰もいない。
そのうち、気分が乗って来た。先の姫翠は踊ったが、焔之迦の場合は……。
「こういう場所で綺麗なドレス着て、素敵な殿方と寄り添ったりとか……とかっ……!」
急に立ち止まって、ぽわわん、と乙女な妄想。
おっと、イケないとこまで想像したようでいやんいやんと腰をくねらせているぞ。
「はっ!」
突然、我に返った。
ばっ、ばっ、と周囲を見渡す。誰もいない。
見られてはいないのだが……。
「薔薇はね、無遠慮に触れる者を許さないんだよ? 華を愛でるつもりなら、シラフになってから出直しな!」
凛とした声で、人差し指を立ててお説教。もちろん誰もいない。
先の妄想に照れているらしい。
「……べ、別に、あ、憧れてないし……そんな夢みたいな事、実際にあるわけないし!」
おや、肩を落とした。
ため息をつく。
「……夢みたいなこと、かぁ」
夜空を見上げた。
フラとは、旅立ちの経緯を話した。
彼女は掟だったらしい。
自分はどうだ?
「掟じゃないけど……無理やり誰かと……は嫌だから飛び出した」
空を見上げつつ、思い出す。母の面影、父の背中。そして姉たち。
そして膝を抱えてしゃがみ込んだ。
「部族の皆にも、見てもらいたいな……」
そっとバラに、手を添える。
こちら、レイナ。
「月が綺麗。花も綺麗。綺麗なモノはあの方のモノ」
LEDライトを振りながらバラ園を歩いている。
「勢いで追っかけてこんなところまで来ちゃったけど……」
おや、突然両手で頬を包んだぞ?
「会えて、お話までさせて貰ったりなんかしちゃって、凄く良くして貰って」
ぽー、となんだか浮かれ気分。
いや。
いきなり頭抱えだした。
「あー! お邪魔だったら如何するのレイナ!!」
何やら葛藤があるようで。
さらに、「至極感激の極みだけれど…」とか「でも! ああー」とか「うう、勢いは良いのよ。勢いは」とか、「でもやっぱり迷うモノは迷う…わね…」とか。
ぽーっとしたり、地獄の底に落ちたみたいな表情したり。
「月は欠けて満ち、花は咲いて枯れて、また咲く」
ぽつ、とつぶやいた一言。
これが気に入った。
「あー、もう! しんみりするなんてあたしらしくないわ! 確りするのよレイナ! 今はこれ以上無い位の幸せを、大切にするのよ!」
変わらなくちゃかな、との思いを振りほどく。
そして歌うのだ。
「月が綺麗。花も綺麗。綺麗なモノはあの方のモノ。あの方の、声。姿。全て……」
巡回は、続く。
●
「こういう静かな感じもいいですねぇ。何か落ち着いて…」
小太、月明かりに導かれ一人で静かな場所に。
「少し吹いてみたくなっちゃいましたぁ」
緩やかに横笛を奏で始めた。
もちろん、周囲の警備は一身に受け持つつもりだ。
その音色がかすかに聞こえる場所で。
「お星様のベガは月明かりに負けない明るさだから……あった。私はやっぱりベガが好き、夏の大三角なのっ!」
ベガが夜空を指差している。
「フラちゃんは好きなお星様とか星座あるのかなー?」
「ええと……星座は良く知らないけど、冬の星が好きかな?」
フラが静かなのは、横で姫翠が寄りかかって寝息をたてていたから。
「それじゃベガちゃんが教えてあげるね♪」
というわけで、少し静かにきゃいきゃい。
フラはちょっと不安そうだ。
そこで、ネーナが立ち上がった。空高い月を背後に、赤い瞳をうっすら細める。
「あとで眠かったらボクがついていてあげよう。昔、母が歌ってくれた子守唄を奏でてあげる」
「ありがとう」
ここにはいないみんなの気遣いも感じながら、フラは「これが仲間なんだね」と思っていた。
その晩、バラ園は荒らされることはなかったという。
宵の口の春郷祭。
人々は歌い踊り、料理に舌鼓を打ち、そして――。
「なにしよんな、ワレェ」
「何じゃと、おどりゃあ!」
何があったか、喧嘩する者も。
「……はいよ、そこまで」
ぼっ、とその横で狐火が現れる。殴ろうとする手を止める二人。
そこにいたのは覚醒した時雨 凪枯(ka3786)だった。
「喧嘩は祭りの花たぁいうけどね? 楽しく飲んだ方がお得だよ」
言った瞬間、たもとをばさりとなびかせ動く。
「おっと、今はまだ勤務時間じゃなかったか?」
凪枯、煙管をくゆらせ愉快そうに笑う。
その足元には、喧嘩をしていた二人が尻餅を付いていた。
この時、フラ・キャンディ(kz0121)は賑わいから外れた小屋の前でぼんやり座っていた。
「やあ。フラ」
そこへネーナ・ドラッケン(ka4376)が到着。
「ネーナさん、来てくれたんだね」
「縁があるというのは素晴らしい事。別段祭りを一緒に過ごすような者もいない。だから警護でもなんでも問題なく引き受けるよ」
ネーナの目が微笑でほころぶ。
「警備だけど祭りは祭りだよ。一緒に楽しんでお仕事、しよっ」
「……楽しんで、良いの?」
フラの言葉に、新たにやって来た白い少女、nil(ka2654)が聞いた。
「ま、若いうちは大いに楽しんどくべきだ」
答えたのは一緒だった元傭兵、ライナス・ブラッドリー(ka0360)。
「だったら、楽器演奏で合間に盛り上げるくらいはしてもよいのかな?」
ネーナの言葉にライナス、「いいんじゃねぇか?」。
と、ここで二人が顔を上げた。
いつの間にか横に、岩波レイナ(ka3178)が立っていた。興味深そうに二人の話を聞いていたのだが、自分に視線が集まり焦る。
「べ、別に歌っていいんだとか思ったわけじゃないんだからねっ! 勘違いしないでよ!」
レイナ、激しくツン。
その時だった!
「お祭りお祭り~♪」
「お祭にぎやかで楽しそうです! バラ園も大きくてとっても綺麗でしたっ!」
賑やかな二人組の娘は……。
「ベガちゃん、お祭り大好きなのっ。警備しっかりするよー」
天真爛漫な方が、シェリアク=ベガ(ka4647)。
「私、緋乃宮姫翠っていいます! よろしくお願いしますっ!!」
こっちも天真爛漫だよ、緑の髪が特徴的な緋乃宮 姫翠(ka5031)。
ぺこ、と元気よくお辞儀した姫翠の頭からふわりと何かが掛けられた。
ベガが掛けたようだ。
「これは……たすき?」
「そーなの、即席のたすきなのっ。お揃いで、警備してるって目印になるんだよっ」
姫翠に説明して自分も掛ける。
白地に紫色の花が刺繍されていた。
「『守護』って花言葉があるんだよっ」
「へえ……花柄のたすき……」
ベガの説明に、ふらふらっと焔之迦(ka3896)が寄って来た。
受け取って自分に掛けようとしたところで、ぶるぶると顔を振る。
「あ、あたしにはちょっと似合わないかな……」
「女の子なら誰でも似合うのっ」
ベガ、ためらう焔之迦に強引に掛ける。
「え、ええと……」
さらにためらったのは、弓月・小太(ka4679)。女の子っぽいが、れっきとした男の子である。
「んもう、みんな一緒の目印なんだからいいのっ」
ベガ、小太にも勢い良く掛ける。
「そうだ。ボク、まだ来てない人に届けて来るねっ」
ここでフラが駆け出した。
「あー、また……」
ネーナはやれやれとついていくのだった。
●
一方、凪枯。
待ち合わせの小屋へと向かっていた。
「……珍しいかい?」
ふと止まって振り返ったのは、子供がついて来ていたから。
子供、不思議そうに覚醒した凪枯の狐尻尾や狐火に見とれている。
「なんでこんな所でフラフラしてるんだい?」
しゃがんで聞くと、子供は拗ねた。言いたくないのだろう。
「もうすぐ暗くなる。子供の一人歩きはよくなさいね」
「……あの子は?」
ようやく子供は口をきいた。指差す先に、フラとネーナ。「凪枯さぁん」と手を振っている。
「フラちゃん、ちょいと覚醒してみな?」
「ボク?」
言われた通りに覚醒する。髪飾りを取ると、ふわっと不自然に髪が広がった。
「見ての通りこの子は仲間でお仕事中。……一緒にお仕事、するかい?」
子供、頷いた。たすきを身に着けた凪枯の裾を握っている。
「フラちゃん、あたしゃちょいと先に警備してくるよ」
凪枯、子供と一緒に警備に行く。
ぎゅっと子供がしがみついていた。
実際、警備は暗くなるまでの方が大変だった。
「おねーさんにまかせておくのっ♪」
ベガは迷子を見つけて両親探し。
「おおっととと……」
別の場所では酔客がふらふら。
「……酒はほどほどに。羽目をはずしすぎて迷惑をかけてしまうのはダメだね」
ネーナ、酔客が花に突っ込んでしまう前に背後から逆手を掴んで止めてやる。
「ネーナさん、あっちに連れて行こう」
フラと一緒に左右から肩を抱え、休むことのできる場所へと連行。
別の場所でも。
「はいはい、酒は飲んでも飲まれるな。よ! 水、あげるから、確り帰るのよ!」
こちらではレイナが酔客に対応中。
そうこうしているうち、ついに祭りの灯は消える。
「今日は月が綺麗でいい夜ですねぇ。夜のお花畑というのも何かいい雰囲気なのですよぉ」
バラ園を回る小太は……突然足を止めた。
突然出くわした男女二人が抱き合ったまま、びく、と身を固めていたのだ。男の手は女性の胸。
「え、ええと……お、お熱いのはいいのですが、一応ここは夜は立ち入り禁止なのでぇ。べ、別の場所でお願いしますぅっ」
……小太、わたわたしつつ自分が逃げてたり。
●
深夜。
バラ園では囁くような会話とかすかな衣擦れの音。
そして、こっそり気配を隠している人物も。
どうやら恋人たちの秘め事を覗いている者がいるようだ。
「おい」
その背中に野太い声。
「ん……ひ、ひいっ!」
覗き男は振り向くなり、一目散に逃げて行った。
ライナスがいたのだ。
「こりゃお早いお帰りで。……この体格と風貌とはいえ、ああまで怯えられるのもな」
ぽり、と頭をかく。
「月も花も綺麗だから、皆、来るのね……」
一緒にいるnilが歌うように呟く。
「…っと、nilはあの二人を。俺を真似せんでいいぞ?」
「? 注意、分かった」
ライナスに言われてカップルに近寄る。
「……此処、深夜は立ち入り禁止。バラも休みたいに違いない」
幸い、カップルはnilに頭を下げて帰って行く。
「……帰って行った」
「ああ、お疲れさん」
知らず、先のカップルが座っていたところに座った。
「綺麗……」
「そうだな。昼間とは違う」
大輪の薔薇が咲き乱れる散歩道と、それを照らす月。
「白薔薇の夜……淡く光彩を放っているよう、か」
「不思議」
びく、とライナスは隣に座るnilを見た。
自分は、まるで人魂のよう、と思っていた。
今回は、nilにこんな夜の世界もあることを見せたくて仕事を引き受けた。
この場所にこの時間に存在すること。
在りのままの世界は、そこに寄り添うことで初めて姿を見せる。
nilは、どうだろう。
「……向こうの世界でも、ライナスは、ライナスだった…?」
この視線に、nilはそう問うてきた。
「どうだろうな……」
片目がうずいた。
「どうしたの?」
「あの中に俺の妻や子供も居るのだろうか。大切で何にも代え難い……いや」
ぽう、と浮かび上がる白薔薇を見て言ったライナス、nilに向き直った。
そして突然、肩車した。
「……なぁ、nil。俺の、娘にならないか?」
一回転して、頭上に問う。
「……これがライナスが見ている景色、なのね」
「そうだ。一緒の目線で一緒の景色を見て……心の繋がりの、そんな家族、だ」
「……ライナスは、私が家族でも、良いの…?」
nil。
育ったのは山奥のなにも無い村。家族も居なく、名前すら無い。
「nilじゃないと…意味が無いんだよ」
ライナスはもう一回転。
nilは心に生まれた新たな思いにそっと手をあてがうのだった。
●
しばらくのち。
今度は月明かりに、くるくる回りなが歩く人影が浮かんだ。
「召しませ召しませ♪ コーヒー召しませ~♪」
姫翠である。
ひらひらの衣装をなびかせて、首に蝶結びにした緋色のリボンをなびかせて。
両手を広げて気分よく。
「はっ!」
姫翠、突然止まった。
「すごく……いい匂いです」
バラの香りに気付いたのだ。夜で見えにくい分、しっかりと感じられたのかもしれない。
「香り……」
姫翠、ピンとくると巡回ルートを急ぎだした。
その後、待機する小屋で。
「あれ?」
ネーナがいい香りに気付いた。
「珈琲、淹れました。苦いのは苦手ですから、砂糖とミルクをたっぷり入れて飲みます! 皆さんもいかがですか?」
姫翠、にこにこ。
「姫翠ちゃんも一緒にお話ししようっ」
ベガ、こっちこっちと手招きする。
「何を話してるんです?」
「あー、あまり気にしないでいいよ」
少し距離を置く凪枯がによによしながら煙管をもてあそんでいる。
「がーるずとーく! 大人な会話してるんだよー」
「大人な会話?」
ベガの言葉に首をかしげる姫翠。
「うん。ネーナちゃんはこんなでしょ? フラちゃんもこんなの。アクセサリーもつけて、みんなお洒落だよね~」
「ちょ……触らないで」
「あん、おへそはだめだよ~」
言いつつベガはネーナとフラのへそあたりを指先で、ぴとっ。
「ベガさんもおへそ出してるし、焔之迦さんもそうですよね~」
小太がぽそり。
「あ、あたしは別にお洒落なんか……」
焔之迦、真っ赤になっている。
「焔之迦は可愛いというより綺麗だね」
「! ……ちょっと巡回してくる」
ネーナに言われて焔之迦、照れつつ出て行った。
「姫翠は小さな肩を出してて可愛いよね」
「えへへー」
「べ、別にあたしは薄着してないんだからねっ」
ネーナ、今度は姫翠に言うが、へそだけ隠して肩など出して薄着しているレイナが敏感に空気を読み取って真っ赤になっていた。
「あたしも出てくる」
と、仕事に立つ。
「フラさん、どんな歌や踊りが好きですか? 私は元気が出るお歌だったり、ほのぼの出来るお歌が好きです」
「え? えっと、元気が出るのが好きかなぁ」
姫翠がフラに近寄って真正面からのぞき込む。
「そうじゃないかって思いました。でも、何かこう…もっと賑やかなものが好きなイメージがっ」
今度は横から小太が。
「小太ちゃんすごいの……がーるずとーくについて来てるの……」
「まあ、ぱっと見ただけでは分からないし」
感心するベガに、うんうん頷くネーナ。
「もっと賑やかって……そうそう。焔之迦さんとも話したよ。旅立った故郷について」
「今までどんな所を旅してきたんですか? 私も色々な所に行きたいので教えてくれると嬉しいですっ!」
姫翠、話題に食いついた。さらにフラに詰め寄って……どしんと一緒に布団に倒れたり。
「あ~、仮眠もとるんだよな」
さすがにこの騒ぎに、最初は温かく見守っていたライナスも注意。横でnilはしっかり仮眠を取っているが。
「月明かりが綺麗すぎて星が見えにくいかもだけど、お外に行くのっ」
ベガの一言で、皆で巡回に出掛けた。
●
「月夜に咲く薔薇……」
先に出た焔之迦は一人で歩いていた。さすがにバラ園に誰もいない。
そのうち、気分が乗って来た。先の姫翠は踊ったが、焔之迦の場合は……。
「こういう場所で綺麗なドレス着て、素敵な殿方と寄り添ったりとか……とかっ……!」
急に立ち止まって、ぽわわん、と乙女な妄想。
おっと、イケないとこまで想像したようでいやんいやんと腰をくねらせているぞ。
「はっ!」
突然、我に返った。
ばっ、ばっ、と周囲を見渡す。誰もいない。
見られてはいないのだが……。
「薔薇はね、無遠慮に触れる者を許さないんだよ? 華を愛でるつもりなら、シラフになってから出直しな!」
凛とした声で、人差し指を立ててお説教。もちろん誰もいない。
先の妄想に照れているらしい。
「……べ、別に、あ、憧れてないし……そんな夢みたいな事、実際にあるわけないし!」
おや、肩を落とした。
ため息をつく。
「……夢みたいなこと、かぁ」
夜空を見上げた。
フラとは、旅立ちの経緯を話した。
彼女は掟だったらしい。
自分はどうだ?
「掟じゃないけど……無理やり誰かと……は嫌だから飛び出した」
空を見上げつつ、思い出す。母の面影、父の背中。そして姉たち。
そして膝を抱えてしゃがみ込んだ。
「部族の皆にも、見てもらいたいな……」
そっとバラに、手を添える。
こちら、レイナ。
「月が綺麗。花も綺麗。綺麗なモノはあの方のモノ」
LEDライトを振りながらバラ園を歩いている。
「勢いで追っかけてこんなところまで来ちゃったけど……」
おや、突然両手で頬を包んだぞ?
「会えて、お話までさせて貰ったりなんかしちゃって、凄く良くして貰って」
ぽー、となんだか浮かれ気分。
いや。
いきなり頭抱えだした。
「あー! お邪魔だったら如何するのレイナ!!」
何やら葛藤があるようで。
さらに、「至極感激の極みだけれど…」とか「でも! ああー」とか「うう、勢いは良いのよ。勢いは」とか、「でもやっぱり迷うモノは迷う…わね…」とか。
ぽーっとしたり、地獄の底に落ちたみたいな表情したり。
「月は欠けて満ち、花は咲いて枯れて、また咲く」
ぽつ、とつぶやいた一言。
これが気に入った。
「あー、もう! しんみりするなんてあたしらしくないわ! 確りするのよレイナ! 今はこれ以上無い位の幸せを、大切にするのよ!」
変わらなくちゃかな、との思いを振りほどく。
そして歌うのだ。
「月が綺麗。花も綺麗。綺麗なモノはあの方のモノ。あの方の、声。姿。全て……」
巡回は、続く。
●
「こういう静かな感じもいいですねぇ。何か落ち着いて…」
小太、月明かりに導かれ一人で静かな場所に。
「少し吹いてみたくなっちゃいましたぁ」
緩やかに横笛を奏で始めた。
もちろん、周囲の警備は一身に受け持つつもりだ。
その音色がかすかに聞こえる場所で。
「お星様のベガは月明かりに負けない明るさだから……あった。私はやっぱりベガが好き、夏の大三角なのっ!」
ベガが夜空を指差している。
「フラちゃんは好きなお星様とか星座あるのかなー?」
「ええと……星座は良く知らないけど、冬の星が好きかな?」
フラが静かなのは、横で姫翠が寄りかかって寝息をたてていたから。
「それじゃベガちゃんが教えてあげるね♪」
というわけで、少し静かにきゃいきゃい。
フラはちょっと不安そうだ。
そこで、ネーナが立ち上がった。空高い月を背後に、赤い瞳をうっすら細める。
「あとで眠かったらボクがついていてあげよう。昔、母が歌ってくれた子守唄を奏でてあげる」
「ありがとう」
ここにはいないみんなの気遣いも感じながら、フラは「これが仲間なんだね」と思っていた。
その晩、バラ園は荒らされることはなかったという。
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シェリアク=ベガ(ka4647)
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/07 19:55:43 |
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班分け用 時雨 凪枯(ka3786) 人間(リアルブルー)|24才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/06/08 01:22:58 |