ゲスト
(ka0000)
祖父の畑
マスター:鳴海惣流

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/10 07:30
- 完成日
- 2015/06/12 08:52
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●男の見た光景
「そんな……嘘だろ……」
男は我が目を疑った。視界に広がる見慣れた麦畑に亜人――コボルド達がいた。
追い払ってやろう。怒る男を引き止めたのは、彼の妻だった。
「あなたにもしものことがあったら、亡くなったおじい様も悲しむわ」
男は唇を噛んだ。幼い頃に両親が病気で他界して以降、祖父が男手ひとつで育ててくれた。
亡くなったとの知らせを受けて、実家となる祖父の家へ駆けつけたのが数日前。葬儀も終わり、畑を思い出した。
来てみればこの有様だ。たくさんの思い出を、亜人達に汚されたような気がした。
「祖父さんの畑を、あんな奴らに荒らされたままなんて我慢できない!」
今にも飛びかからんばかりの勢いで、男が声を荒げた。
「相手はコボルドなのよ。あなたひとりで、何ができるというの。まずは村の人たちに相談してみましょう」
●村の会議
すぐにでも全員で畑を撮り返そうと言う男に、老齢の村長が申し訳なさそうな顔をする。
「コボルドといえど、ワシらみたいな民間人にはかなりの脅威になる。武器を持って挑んだところで、返り討ちにあうのがおちだ」
村長の家に集まってるのは、男と男の妻、尊重と尊重の妻、それに相談役の中年男性の合計五人だった。
「じゃあ、俺の祖父さんの畑を見捨てるっていうんですか!」
「そうは言っておらん。お前の祖父さんは、わざわざ村の外に畑を耕す変わり者ではあったが、村人からは好かれていた。無論、ワシもだ」
「だったら!」
男が言葉を続けようとするのを、相談役が手で制した。
「すぐにでも祖父の畑から、奴らを追い出したいお前の気持ちもわかる。だが、俺たちがコボルドを倒せると思うのか」
「やってみなければわからない!」
「冷静になれ」
そう言ったのは村長だ。
「目の良い村人にこっそり様子を見に行ってもらったが、コボルドはどうやら五匹ほどいるようだ。しかも常に揃ってるわけではないらしい」
男が「え?」と眉をひそめた。
「日中と夜とで、畑にいるコボルドの数が違うようだ」
「まさか……背後に何者かがいて、コボルドたちを操っているのでは?」
相談役の男が慌てた様子で言った。どうやら恐怖や不安を覚えたらしい。
今にもすがりついてきそうな相談役を見ながら、村長は首をゆっくりと左右に振った。
「断定はできんが、見てきた者の話では、コボルトたちは連携してるように思えなかったそうだ。個々がどこからか勝手に集まり、それぞれ居ついてしまったのだろうな。恐らく、居心地がよかったのだろう。お前の祖父が丹念に耕してきた畑だからな」
再び村長に視線を向けられた男が憤る。
「だからこそ! 大切な畑を奴らから取り返したいんですっ! 無事に戻ったら、この村の実家に入るつもりです。祖父の跡を継いで、畑をやります。妻も了承してくれてますし」
「そうか……若い者が村に増えるのは歓迎だ。コボルドをなんとかするのも同意見だが、迂闊に手を出して奴らの怒りを買えば村を攻めてきかねない」
「それなら、どうするんですか」
相談役に尋ねられた村長は、あぐらをかいていた膝を手で叩いた。
「村への危険を回避するためにも、コボルドどもを殲滅せねばならん。ならばこそ、その道のプロに依頼してみようと思う」
●ハンターオフィスにて
手にした書類を眺めながら、担当者が依頼について説明する。
「今回の依頼は、祖父の畑をコボルドから取り戻してほしいという内容です。畑は村から少し離れた場所にあるため、住民の被害は出ていません。ですが今後、村へ危害が及ぶ危険性も考慮して、コボルドを殲滅の上、畑を取り戻してほしいとのことです」
ギルドに寄せられた情報によれば、コボルドが五匹。現段階ではそれがすべてと思われる。
「発見されるコボルドの数は、時間帯によってバラつきがあるようです。日中に五匹。夜に三匹見つかっています。畑の近くには広めの林があり、姿が見えない時はそちらにいる模様です。コボルドたちに連携してる様子はなく、個体が五匹集まってる感じだそうです」
コボルドたちは畑を溜まり場代わりに使っている。村の存在には気づいていない。チームとして行動しているわけではないので、一匹がやられて振りだと判断すれば、仇をとるよりも逃げようとする可能性が高い。
「確実に戦闘になると思われますので、しっかりとした準備の上、依頼にとりかかってください」
「そんな……嘘だろ……」
男は我が目を疑った。視界に広がる見慣れた麦畑に亜人――コボルド達がいた。
追い払ってやろう。怒る男を引き止めたのは、彼の妻だった。
「あなたにもしものことがあったら、亡くなったおじい様も悲しむわ」
男は唇を噛んだ。幼い頃に両親が病気で他界して以降、祖父が男手ひとつで育ててくれた。
亡くなったとの知らせを受けて、実家となる祖父の家へ駆けつけたのが数日前。葬儀も終わり、畑を思い出した。
来てみればこの有様だ。たくさんの思い出を、亜人達に汚されたような気がした。
「祖父さんの畑を、あんな奴らに荒らされたままなんて我慢できない!」
今にも飛びかからんばかりの勢いで、男が声を荒げた。
「相手はコボルドなのよ。あなたひとりで、何ができるというの。まずは村の人たちに相談してみましょう」
●村の会議
すぐにでも全員で畑を撮り返そうと言う男に、老齢の村長が申し訳なさそうな顔をする。
「コボルドといえど、ワシらみたいな民間人にはかなりの脅威になる。武器を持って挑んだところで、返り討ちにあうのがおちだ」
村長の家に集まってるのは、男と男の妻、尊重と尊重の妻、それに相談役の中年男性の合計五人だった。
「じゃあ、俺の祖父さんの畑を見捨てるっていうんですか!」
「そうは言っておらん。お前の祖父さんは、わざわざ村の外に畑を耕す変わり者ではあったが、村人からは好かれていた。無論、ワシもだ」
「だったら!」
男が言葉を続けようとするのを、相談役が手で制した。
「すぐにでも祖父の畑から、奴らを追い出したいお前の気持ちもわかる。だが、俺たちがコボルドを倒せると思うのか」
「やってみなければわからない!」
「冷静になれ」
そう言ったのは村長だ。
「目の良い村人にこっそり様子を見に行ってもらったが、コボルドはどうやら五匹ほどいるようだ。しかも常に揃ってるわけではないらしい」
男が「え?」と眉をひそめた。
「日中と夜とで、畑にいるコボルドの数が違うようだ」
「まさか……背後に何者かがいて、コボルドたちを操っているのでは?」
相談役の男が慌てた様子で言った。どうやら恐怖や不安を覚えたらしい。
今にもすがりついてきそうな相談役を見ながら、村長は首をゆっくりと左右に振った。
「断定はできんが、見てきた者の話では、コボルトたちは連携してるように思えなかったそうだ。個々がどこからか勝手に集まり、それぞれ居ついてしまったのだろうな。恐らく、居心地がよかったのだろう。お前の祖父が丹念に耕してきた畑だからな」
再び村長に視線を向けられた男が憤る。
「だからこそ! 大切な畑を奴らから取り返したいんですっ! 無事に戻ったら、この村の実家に入るつもりです。祖父の跡を継いで、畑をやります。妻も了承してくれてますし」
「そうか……若い者が村に増えるのは歓迎だ。コボルドをなんとかするのも同意見だが、迂闊に手を出して奴らの怒りを買えば村を攻めてきかねない」
「それなら、どうするんですか」
相談役に尋ねられた村長は、あぐらをかいていた膝を手で叩いた。
「村への危険を回避するためにも、コボルドどもを殲滅せねばならん。ならばこそ、その道のプロに依頼してみようと思う」
●ハンターオフィスにて
手にした書類を眺めながら、担当者が依頼について説明する。
「今回の依頼は、祖父の畑をコボルドから取り戻してほしいという内容です。畑は村から少し離れた場所にあるため、住民の被害は出ていません。ですが今後、村へ危害が及ぶ危険性も考慮して、コボルドを殲滅の上、畑を取り戻してほしいとのことです」
ギルドに寄せられた情報によれば、コボルドが五匹。現段階ではそれがすべてと思われる。
「発見されるコボルドの数は、時間帯によってバラつきがあるようです。日中に五匹。夜に三匹見つかっています。畑の近くには広めの林があり、姿が見えない時はそちらにいる模様です。コボルドたちに連携してる様子はなく、個体が五匹集まってる感じだそうです」
コボルドたちは畑を溜まり場代わりに使っている。村の存在には気づいていない。チームとして行動しているわけではないので、一匹がやられて振りだと判断すれば、仇をとるよりも逃げようとする可能性が高い。
「確実に戦闘になると思われますので、しっかりとした準備の上、依頼にとりかかってください」
リプレイ本文
●村へ到着
依頼を請け負ったハンターたちが該当の村へ到着したのは、夕方を過ぎた頃だった。
出迎えてくれたのは村長と、祖父の畑を取り戻したがっている男性だった。村長の家へ案内された一行は休みがてら、改めて事情を聞く。
「想いの残された場所を、このままにする訳にはいかない。亡くなったじいさんの為にも、畑を取り戻さないとな!」
話を聞き終えたあとで、最初に口を開いたのはダイ・ベルグロース(ka1769)だった。多少なりとも農業の知識があるだけに、他人事ではないように思えた。
ダイの隣で頷いたのはミオレスカ(ka3496)だ。
「美味しい食べ物の、元となる畑は、大事にしないといけませんね」
料理が少しだけ得意な彼女にとって、食材はとても重要で大事だ。生み出す畑が荒らされるのを放置はできない。
ドワーフでありながら、エルフのミオレスカに悪い感情を持たないアニス(ka0306)も笑顔で同意する。
友人で冒険団仲間の時音 ざくろ(ka1250)が一緒なのもあり、ずいぶんと嬉しそうだ。
「依頼人さんのお祖父さんとの思い出の詰まった畑、それは大切な宝物……そんな宝を守るのも冒険家の勤めだもん!」
決意表明をするように言ったざくろに続き、アニスも拳を握り締めながら元気な声を出す。
「大切な畑を荒らすなんて! 絶対に許さないんだからね! おじいちゃんだって言ってたよ。人の物を盗るのは、ドロボーだって!」
それまで黙っていたOswald(ka5093)も、礼儀正しい動作で頷く。
「及ばずながら、私もお手伝いをいたしましょう」
村長と男が「ありがとうございます」と同時に頭を下げた。
「……畑がコボルドの集会所に、か……大人しく林で暮らしていれば良かったのだが、こうなっては情けはいらん……潰す」
虚無的な感じを漂わせつつも、No.0(ka4640)が言った。
「よろしくお願いします」
依頼者の男に再度お願いされたNo.0は、了承しつつも軽く頭を下げる。
「自分達も気をつけるが、もしかしたら畑を荒らすことになるかもしれない」
「覚悟しています。祖父の畑を……よろしくお願いします」
●作戦会議
村長の家で一行は作戦会議を開く。視界が悪い夜よりも、五匹が揃う日中に仕掛けることで一致した。次は具体的な作戦内容を決める。
「村長さんのお話では、コボルドたちは午前七時頃には五匹が揃うようです。一時的にでも畑からいなくなってくれればと思っていたのですが、どうやら必ず一匹はどのような時間帯においても存在するみたいです」
ミオレスカが村長から聞いた情報を、全員に披露する。
大きな机を真ん中で囲むように立っている一同が頷く中、ダイが「なるほどな」と言った。
「それならコボルドたちを、畑から追い立てるのがいいかもれないな」
同意したのはざくろだ。
「畑、荒らしたくないもんね。ざくろは林の入口に罠を仕掛けて、コボルドたちを待ち伏せるよ!」
「林の中に逃がさないのはもちろん、可能であれば、畑と林の中間地点を戦場にしたいですね」
そう言ったあとでミオレスカは、二手に分かれるのであれば、自分も待ち伏せ班を希望すると告げた。
「俺は追い立てる側に回ろう。コボルドが五匹揃ってるのを確認後、林の逆方向から仕掛ける。なるべく手加減をしながらだ。一気に攻めて早期に逃げられると、罠を仕掛けるのが間に合わず、面倒な事態になる」
No.0の発言によって作戦が決定。決行の明朝に備えて、各自、村長に与えられた部屋で休むことになった。
●作戦開始
早朝。畑からやや離れた木の上で、アニスが下にいるNo.0へ報告する。
「コボルドが五匹になったよ」
「わかった。すぐに連絡する」
No.0は手に持ったトランシーバーで、林に潜伏中のミオレスカへ連絡する。
林からコボルドが出て、畑に勢揃いしたところで行動開始となる。
まずは逃げられた場合を考慮して、待ち伏せ班であるミオレスカとざくろが動く。
潜伏中の木の根元付近に縛っておいたロープを掴み、別の木と繋げる。同時に林の入口付近の草を結んでおき、足元用の罠を充実させる。
次にざくろの発案で、土に水を撒く。泥濘を作っておけば、コボルドが林の中に逃げ込んでも、残った足跡から追いかけやすいと判断した。
待ち伏せ班がテキパキと行動する中、追い立て班の中の二人――Oswaldとアニスがコボルドたちの動向を窺い続ける。
近づきすぎて存在を察知されると厄介なので、離れた場所、それも木に登っての偵察を行っている。
「ざくろと離れちゃったのは残念だけど、これも大切な畑を守る為! ボクも負けないように元気出していくよ!」
元気な声を上げるアニスとは別の木の上で、Oswaldがコボルドを見ながら呟く。
「鬼……ですか、こちらの世界には、本当にいるのですね……」
野鳥観察が趣味で、よく木に登って没頭しているだけあって、どことなく余裕もある。
そんなOswaldの表情が一変する。急にコボルドたちが、林とは逆の方に動き出したせいだ。
頭上から報告を受けたダイが、ペットの柴犬のコタローとともに走り出す。
「相手は高度な知能を持たないコボルドだ。予想外の行動をしても不思議はない。すぐに対処しよう」
ダイの背中を追いかけつつ、No.0はトランシーバーで待ち伏せ班に連絡する。
「原因は不明だが、コボルドたちが動き出した。林の方面へ誘導するために、攻撃を開始する。予定より早まってしまったが、大丈夫か?」
応答したのはざくろだった。
「なんとかなると思うよ。そっちにアニスいるよね。一緒に悪いコボルドやっつけて、畑の安全取り戻そう!」
木から降りたアニスが、トランシーバーから聞こえてきたざくろの声に「うんっ」と返した。
トランシーバーをしまったNo.0が、アックスブレードを両手に構える。
その先を走るダイが、ファミリアアタックで攻撃。予想外の行動を取っていた一匹のコボルドに狙いを定める。
逃げ道を塞ぐように追い立て、林とは反対方向へ向かっていたコボルドを元の位置まで押し戻す。
そこにNo.0、アニス、Oswaldの三人も到着する。
「コラーッ! ボク、怒ってるンだぞっ! がお――っ!」
攻めの構えから踏み込みを見せ、強烈な一撃をアニスが戻ったばかりのコボルドに見舞う。
吹き飛ばされた姿に、他のコボルドたちが驚く。突然の襲撃を受け、半ばパニクリながらも反撃に転じる。
すぐに逃がさないようにするため、簡単に倒さず防御に専念する。
敵が人間で倒せそうと判断したのか、コボルドは逃げるよりも向かってきた。
「向かってきたな。迎撃するより……距離を取る。コボルドを……畑から移動させる」
No.0が、両手で持つ武器で敵の攻撃を受け流しながら提案した。
「そうだな。頭に血をのぼらせてるみたいだし、簡単にこちらを追いかけてくるだろう」
ダイの見立てどおり、畑から移動する追い立て班の面子を、コボルドたちが目を血走らせて追ってくる。
畑と林の中間地点まで到達する。足を止めたNo.0が、向かってくるコボルドたちを睨みつける。
「お前たちはここで潰す……」
事前に使用した攻性強化により、威力を増した一撃をコボルドの一匹にお見舞いする。
攻撃を受け止めきれなかったコボルドが断末魔の悲鳴を上げる。
ここまでの反撃を予期してなかった残り四匹のコボルドが、強い戸惑いを見せる。
「ボーっとしていたら、危険ですよ。私が斬ってしまいますからね」
アニスがダメージを与えて、動きが鈍っていたコボルドとの距離をOswaldが一気に詰める。
「いきますよ、疾風剣!」
半身の姿勢で水平に構えた日本刀の白狼が、対象のコボルドを貫き切った。
自分も続くと、アニスが声を張り上げる。
「ボクは誇り高きウルスラの戦士! 悪いコボルドはお仕置きだ!」
攻勢に転じたアニスの戦斧が、コボルドの肩を斬り裂く。致命傷にならずとも、戦意を失わせるには十分すぎる威力だった。
単純に向かってきていたなら、一撃で仕留められていた。本能で不利を察したコボルドが戦闘意欲を低下させ、逃げようとしていたのが致命傷にできなかった原因だった。
「逃げてもいいが、そっちは地獄だぞ……」
No.0が呟く中、ダイが鞭を大きく振って音を立てながら、ペットの柴犬のコタローと一緒にコボルドを追い立てる。
追撃から逃れたいコボルドが懸命に目指すのは林の方向。待ち伏せられてるとも知らずに走り続ける。
そのうちの一匹。アニスの斧でダメージを追っていたコボルドの眉間に、一本の矢が突き刺さる。
林の中に潜伏し、撃ち抜く機会を窺っていたミオレスカが放った矢だった。高加速射撃により、他のコボルドにも狙いを定める。
まともに食らったコボルドは絶命し、残り二匹となる。林に近づかれたところで、ミオレスカが武器を弓から魔導拳銃に持ち変える。
「矢では止まりませんか。ある意味、勇気がありますが、そこまでです」
魔導拳銃による制圧射撃で、コボルドの足が止まる。生まれた隙を逃さず、隠れていた茂みからざくろが飛び出した。エンブレムナイフで、素早く中空に三角を描く。
「くらえ、デルタエンド!」
現れた光の三角形の頂点一つ一つから、光が伸びていく。一匹のコボルドが胸を貫かれて絶命する。
もう一匹は偶然に転び、意図的ではないにしろ光の一撃を回避した。
攻撃を外したのを理解した直後、コボルドを追い立てるアニスとざくろの目が合った。
「アニス、そっちは任せたよ!」
「うんっ! いっくよー! それーッ!」
転んでいたコボルドがなんとか起き上がった直後、アニスの戦斧で胴体を薙ぎ払われる。
「お待たせ、ざくろ! えへへ、上手くいったね♪」
最後の一匹のとどめをさしたアニスが、笑顔でぴょんぴょん飛び跳ねる。
「……どうやら、片付いたみたいだな」
No.0が絶命したコボルドの数を数える。間違いなく五匹だ。
「念のため、林の中に残党がいないか見て回っておこう」
超聴覚を使ったダイが中心となり、畑周辺の見回りを行う。
脅威が近くに存在しないのを確認後、改めて全員で平和になった畑まで移動する。
「では、村に戻るか。依頼者も首を長くして待ってるはずだ」
全員が賛成するかと思ったダイの言葉に、ミオレスカが首を左右に振った。
「その前に、使わなかった罠を片づけましょう」
「せっかく仕掛けたのに、使いませんでしたね」
Oswaldの言葉に、ミオレスカは笑みを浮かべる。
「使わなくて済んだのなら、それが一番です。順調に依頼を達成できた証なのですから」
「そうだね。でも、ちょっと残念だったかな。コボルドが遠くへ逃げようとしていたら、ジェットブーツで追いついて、大剣の超重錬成で一刀両断しようと思ってたからね。マテリアルと大地の女神の名においてざくろが命じる、剣よ今一度元の姿に……超・重・斬ってね」
「ハハハ。ざくろ君には残念な展開だったかもしれないな。さあ、皆で罠を片づけようじゃないか」
ダイが言って、ミオレスカが頷く。
「ええ、お願いします」
●作戦終了後
村に戻った一行は村長の家で、依頼者の男性と村長にコボルド殲滅の報告を行った。
「ありがとうございます。きっと亡くなった祖父も、皆さんに感謝しているはずです」
村長と一緒に、依頼者の男性が深々と頭を下げた。隣には彼の妻もいる。
「依頼は果たしたが、もし良かったら、畑の後始末も手伝わせてもらいたいんだが、いいかな?」
ダイの提案に、男性が恐縮する。
「そ、そこまでしてもらうわけには……そ、それに祖父がひとりでやっていた畑なので、道具もあまりありませんし」
「それなら大丈夫だ。スコップ程度なら持参してるからな」
「用意がいいですね」
ミオレスカが実に優しそうな笑顔を作る。
それを受けてダイも豪快に笑う。
「それなりに農業の心得あるし、畑を立て直すためには、力仕事も必要だからな」
力こぶを作るダイを、依頼者の男性や妻が頼もしそうに見つめる。
「では、申し訳ありませんが、お願いできますか」
「任せてくれ。皆はどうする?」
「もちろん、お手伝いします」
そう言ったのはミオレスカだ。ざくろやアニスも、すぐに同意する。
「私も協力しましょう」
Oswaldが言うと、側に立っていたNo.0が小さく頷いた。
「俺も手伝う」
「ようし。そうと決まれば張り切って作業するか!」
「うふふ、そうですね」
やたらとウキウキするダイの姿を見て、ミオレスカが笑う。近くではざくろも楽しそうにしている。
村長の家からこぼれた笑い声が、亡くなった祖父の心情を現すかのような真っ青な空に吸い込まれていく。
きっと近い将来、祖父の想いを引き継いだ孫が畑を輝かせるだろう。ハンターの誰もが、そう確信していた。
依頼を請け負ったハンターたちが該当の村へ到着したのは、夕方を過ぎた頃だった。
出迎えてくれたのは村長と、祖父の畑を取り戻したがっている男性だった。村長の家へ案内された一行は休みがてら、改めて事情を聞く。
「想いの残された場所を、このままにする訳にはいかない。亡くなったじいさんの為にも、畑を取り戻さないとな!」
話を聞き終えたあとで、最初に口を開いたのはダイ・ベルグロース(ka1769)だった。多少なりとも農業の知識があるだけに、他人事ではないように思えた。
ダイの隣で頷いたのはミオレスカ(ka3496)だ。
「美味しい食べ物の、元となる畑は、大事にしないといけませんね」
料理が少しだけ得意な彼女にとって、食材はとても重要で大事だ。生み出す畑が荒らされるのを放置はできない。
ドワーフでありながら、エルフのミオレスカに悪い感情を持たないアニス(ka0306)も笑顔で同意する。
友人で冒険団仲間の時音 ざくろ(ka1250)が一緒なのもあり、ずいぶんと嬉しそうだ。
「依頼人さんのお祖父さんとの思い出の詰まった畑、それは大切な宝物……そんな宝を守るのも冒険家の勤めだもん!」
決意表明をするように言ったざくろに続き、アニスも拳を握り締めながら元気な声を出す。
「大切な畑を荒らすなんて! 絶対に許さないんだからね! おじいちゃんだって言ってたよ。人の物を盗るのは、ドロボーだって!」
それまで黙っていたOswald(ka5093)も、礼儀正しい動作で頷く。
「及ばずながら、私もお手伝いをいたしましょう」
村長と男が「ありがとうございます」と同時に頭を下げた。
「……畑がコボルドの集会所に、か……大人しく林で暮らしていれば良かったのだが、こうなっては情けはいらん……潰す」
虚無的な感じを漂わせつつも、No.0(ka4640)が言った。
「よろしくお願いします」
依頼者の男に再度お願いされたNo.0は、了承しつつも軽く頭を下げる。
「自分達も気をつけるが、もしかしたら畑を荒らすことになるかもしれない」
「覚悟しています。祖父の畑を……よろしくお願いします」
●作戦会議
村長の家で一行は作戦会議を開く。視界が悪い夜よりも、五匹が揃う日中に仕掛けることで一致した。次は具体的な作戦内容を決める。
「村長さんのお話では、コボルドたちは午前七時頃には五匹が揃うようです。一時的にでも畑からいなくなってくれればと思っていたのですが、どうやら必ず一匹はどのような時間帯においても存在するみたいです」
ミオレスカが村長から聞いた情報を、全員に披露する。
大きな机を真ん中で囲むように立っている一同が頷く中、ダイが「なるほどな」と言った。
「それならコボルドたちを、畑から追い立てるのがいいかもれないな」
同意したのはざくろだ。
「畑、荒らしたくないもんね。ざくろは林の入口に罠を仕掛けて、コボルドたちを待ち伏せるよ!」
「林の中に逃がさないのはもちろん、可能であれば、畑と林の中間地点を戦場にしたいですね」
そう言ったあとでミオレスカは、二手に分かれるのであれば、自分も待ち伏せ班を希望すると告げた。
「俺は追い立てる側に回ろう。コボルドが五匹揃ってるのを確認後、林の逆方向から仕掛ける。なるべく手加減をしながらだ。一気に攻めて早期に逃げられると、罠を仕掛けるのが間に合わず、面倒な事態になる」
No.0の発言によって作戦が決定。決行の明朝に備えて、各自、村長に与えられた部屋で休むことになった。
●作戦開始
早朝。畑からやや離れた木の上で、アニスが下にいるNo.0へ報告する。
「コボルドが五匹になったよ」
「わかった。すぐに連絡する」
No.0は手に持ったトランシーバーで、林に潜伏中のミオレスカへ連絡する。
林からコボルドが出て、畑に勢揃いしたところで行動開始となる。
まずは逃げられた場合を考慮して、待ち伏せ班であるミオレスカとざくろが動く。
潜伏中の木の根元付近に縛っておいたロープを掴み、別の木と繋げる。同時に林の入口付近の草を結んでおき、足元用の罠を充実させる。
次にざくろの発案で、土に水を撒く。泥濘を作っておけば、コボルドが林の中に逃げ込んでも、残った足跡から追いかけやすいと判断した。
待ち伏せ班がテキパキと行動する中、追い立て班の中の二人――Oswaldとアニスがコボルドたちの動向を窺い続ける。
近づきすぎて存在を察知されると厄介なので、離れた場所、それも木に登っての偵察を行っている。
「ざくろと離れちゃったのは残念だけど、これも大切な畑を守る為! ボクも負けないように元気出していくよ!」
元気な声を上げるアニスとは別の木の上で、Oswaldがコボルドを見ながら呟く。
「鬼……ですか、こちらの世界には、本当にいるのですね……」
野鳥観察が趣味で、よく木に登って没頭しているだけあって、どことなく余裕もある。
そんなOswaldの表情が一変する。急にコボルドたちが、林とは逆の方に動き出したせいだ。
頭上から報告を受けたダイが、ペットの柴犬のコタローとともに走り出す。
「相手は高度な知能を持たないコボルドだ。予想外の行動をしても不思議はない。すぐに対処しよう」
ダイの背中を追いかけつつ、No.0はトランシーバーで待ち伏せ班に連絡する。
「原因は不明だが、コボルドたちが動き出した。林の方面へ誘導するために、攻撃を開始する。予定より早まってしまったが、大丈夫か?」
応答したのはざくろだった。
「なんとかなると思うよ。そっちにアニスいるよね。一緒に悪いコボルドやっつけて、畑の安全取り戻そう!」
木から降りたアニスが、トランシーバーから聞こえてきたざくろの声に「うんっ」と返した。
トランシーバーをしまったNo.0が、アックスブレードを両手に構える。
その先を走るダイが、ファミリアアタックで攻撃。予想外の行動を取っていた一匹のコボルドに狙いを定める。
逃げ道を塞ぐように追い立て、林とは反対方向へ向かっていたコボルドを元の位置まで押し戻す。
そこにNo.0、アニス、Oswaldの三人も到着する。
「コラーッ! ボク、怒ってるンだぞっ! がお――っ!」
攻めの構えから踏み込みを見せ、強烈な一撃をアニスが戻ったばかりのコボルドに見舞う。
吹き飛ばされた姿に、他のコボルドたちが驚く。突然の襲撃を受け、半ばパニクリながらも反撃に転じる。
すぐに逃がさないようにするため、簡単に倒さず防御に専念する。
敵が人間で倒せそうと判断したのか、コボルドは逃げるよりも向かってきた。
「向かってきたな。迎撃するより……距離を取る。コボルドを……畑から移動させる」
No.0が、両手で持つ武器で敵の攻撃を受け流しながら提案した。
「そうだな。頭に血をのぼらせてるみたいだし、簡単にこちらを追いかけてくるだろう」
ダイの見立てどおり、畑から移動する追い立て班の面子を、コボルドたちが目を血走らせて追ってくる。
畑と林の中間地点まで到達する。足を止めたNo.0が、向かってくるコボルドたちを睨みつける。
「お前たちはここで潰す……」
事前に使用した攻性強化により、威力を増した一撃をコボルドの一匹にお見舞いする。
攻撃を受け止めきれなかったコボルドが断末魔の悲鳴を上げる。
ここまでの反撃を予期してなかった残り四匹のコボルドが、強い戸惑いを見せる。
「ボーっとしていたら、危険ですよ。私が斬ってしまいますからね」
アニスがダメージを与えて、動きが鈍っていたコボルドとの距離をOswaldが一気に詰める。
「いきますよ、疾風剣!」
半身の姿勢で水平に構えた日本刀の白狼が、対象のコボルドを貫き切った。
自分も続くと、アニスが声を張り上げる。
「ボクは誇り高きウルスラの戦士! 悪いコボルドはお仕置きだ!」
攻勢に転じたアニスの戦斧が、コボルドの肩を斬り裂く。致命傷にならずとも、戦意を失わせるには十分すぎる威力だった。
単純に向かってきていたなら、一撃で仕留められていた。本能で不利を察したコボルドが戦闘意欲を低下させ、逃げようとしていたのが致命傷にできなかった原因だった。
「逃げてもいいが、そっちは地獄だぞ……」
No.0が呟く中、ダイが鞭を大きく振って音を立てながら、ペットの柴犬のコタローと一緒にコボルドを追い立てる。
追撃から逃れたいコボルドが懸命に目指すのは林の方向。待ち伏せられてるとも知らずに走り続ける。
そのうちの一匹。アニスの斧でダメージを追っていたコボルドの眉間に、一本の矢が突き刺さる。
林の中に潜伏し、撃ち抜く機会を窺っていたミオレスカが放った矢だった。高加速射撃により、他のコボルドにも狙いを定める。
まともに食らったコボルドは絶命し、残り二匹となる。林に近づかれたところで、ミオレスカが武器を弓から魔導拳銃に持ち変える。
「矢では止まりませんか。ある意味、勇気がありますが、そこまでです」
魔導拳銃による制圧射撃で、コボルドの足が止まる。生まれた隙を逃さず、隠れていた茂みからざくろが飛び出した。エンブレムナイフで、素早く中空に三角を描く。
「くらえ、デルタエンド!」
現れた光の三角形の頂点一つ一つから、光が伸びていく。一匹のコボルドが胸を貫かれて絶命する。
もう一匹は偶然に転び、意図的ではないにしろ光の一撃を回避した。
攻撃を外したのを理解した直後、コボルドを追い立てるアニスとざくろの目が合った。
「アニス、そっちは任せたよ!」
「うんっ! いっくよー! それーッ!」
転んでいたコボルドがなんとか起き上がった直後、アニスの戦斧で胴体を薙ぎ払われる。
「お待たせ、ざくろ! えへへ、上手くいったね♪」
最後の一匹のとどめをさしたアニスが、笑顔でぴょんぴょん飛び跳ねる。
「……どうやら、片付いたみたいだな」
No.0が絶命したコボルドの数を数える。間違いなく五匹だ。
「念のため、林の中に残党がいないか見て回っておこう」
超聴覚を使ったダイが中心となり、畑周辺の見回りを行う。
脅威が近くに存在しないのを確認後、改めて全員で平和になった畑まで移動する。
「では、村に戻るか。依頼者も首を長くして待ってるはずだ」
全員が賛成するかと思ったダイの言葉に、ミオレスカが首を左右に振った。
「その前に、使わなかった罠を片づけましょう」
「せっかく仕掛けたのに、使いませんでしたね」
Oswaldの言葉に、ミオレスカは笑みを浮かべる。
「使わなくて済んだのなら、それが一番です。順調に依頼を達成できた証なのですから」
「そうだね。でも、ちょっと残念だったかな。コボルドが遠くへ逃げようとしていたら、ジェットブーツで追いついて、大剣の超重錬成で一刀両断しようと思ってたからね。マテリアルと大地の女神の名においてざくろが命じる、剣よ今一度元の姿に……超・重・斬ってね」
「ハハハ。ざくろ君には残念な展開だったかもしれないな。さあ、皆で罠を片づけようじゃないか」
ダイが言って、ミオレスカが頷く。
「ええ、お願いします」
●作戦終了後
村に戻った一行は村長の家で、依頼者の男性と村長にコボルド殲滅の報告を行った。
「ありがとうございます。きっと亡くなった祖父も、皆さんに感謝しているはずです」
村長と一緒に、依頼者の男性が深々と頭を下げた。隣には彼の妻もいる。
「依頼は果たしたが、もし良かったら、畑の後始末も手伝わせてもらいたいんだが、いいかな?」
ダイの提案に、男性が恐縮する。
「そ、そこまでしてもらうわけには……そ、それに祖父がひとりでやっていた畑なので、道具もあまりありませんし」
「それなら大丈夫だ。スコップ程度なら持参してるからな」
「用意がいいですね」
ミオレスカが実に優しそうな笑顔を作る。
それを受けてダイも豪快に笑う。
「それなりに農業の心得あるし、畑を立て直すためには、力仕事も必要だからな」
力こぶを作るダイを、依頼者の男性や妻が頼もしそうに見つめる。
「では、申し訳ありませんが、お願いできますか」
「任せてくれ。皆はどうする?」
「もちろん、お手伝いします」
そう言ったのはミオレスカだ。ざくろやアニスも、すぐに同意する。
「私も協力しましょう」
Oswaldが言うと、側に立っていたNo.0が小さく頷いた。
「俺も手伝う」
「ようし。そうと決まれば張り切って作業するか!」
「うふふ、そうですね」
やたらとウキウキするダイの姿を見て、ミオレスカが笑う。近くではざくろも楽しそうにしている。
村長の家からこぼれた笑い声が、亡くなった祖父の心情を現すかのような真っ青な空に吸い込まれていく。
きっと近い将来、祖父の想いを引き継いだ孫が畑を輝かせるだろう。ハンターの誰もが、そう確信していた。
依頼結果
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作戦掲示板 No.0(ka4640) 人間(リアルブルー)|20才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/06/10 05:01:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/07 18:16:24 |