• 春郷祭1015

【春郷祭】Let's コンテスト

マスター:岡本龍馬

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/06/10 19:00
完成日
2015/06/18 13:41

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
 この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
 そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
 今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるが、今回のジェオルジ村長祭はどんな催しが行われるのか。


 花に包まれた春郷祭。
 その見た目と香りは先の戦などなかったように思われるほど。
 だがそんな幸せいっぱいな平和空間にも戦いが存在する。
 戦いの特設会場に掲げられた横断幕には
『フラワーアートコンテスト』
 の文字が。
 一輪の花を束ねていくことで、その輝きを何倍にも引き立てる力の祭典。
 武器を手に取らずして行われる戦いは、平和を願う人々の心にも火をつけた。
 さぁさぁ一体どんな作品が出来上がるのか。

リプレイ本文

●花の祭典
 フラワーアートコンテストの会場には多くの来場客の姿があった。
 各々談笑にふけっている来場客たちだったが、司会者が壇上に上がったことで鳴りを潜めていく。
「お集まりのみなさん、お待たせしました。これより、フラワーアートコンテストを開催します!」
 呼応するように「わー!」という歓声が上がる。
「それでは早速、持ち込み作品のほうからご覧いただきましょう!」
 ベールをかけられているためその全貌は見えないものの、司会者の示す先には大小さまざまな作品が並べられていた。
「それではそれでは、一際目を引くこの作品からにいたしましょうか」
 まず最初に司会者が近づいたのは、3メートルはあろうかという巨大作品。
 そして、その製作者であるレイ・T・ベッドフォード(ka2398)にマイクを向ける。
「ずいぶんと大きな作品ですねぇ……作品名をお願いできますか?」
「作品名、『ヤクシー』です」
 なぜか目を逸らしながら言うレイ。
「ふむふむ『ヤクシー』ですか。これは楽しみですね。それではどうぞ!」
 ベールがとられ現れたのは……。
 鎌を持った巨人。ヤクシーだった。
 ざわざわとしたざわめきが会場に広がる。
「こ、これは文字通り『ヤクシー』ですね」
 直前まで元気だった司会者もたじたじといった様子を見せる。
 色々と精巧に表現されたヤクシーは植物の茎や蔓を編み上げて作られているようだが、それにどれだけの量を使用したのか、見るだけでは計り知れない。
「なんだか禍々しいものを感じるんだが、何で作ったんだ?」
 作品の並び上レイの隣にいた沖本 権三郎(ka2483)がたまらず問いかける。
「黒魔術に傾倒する姉上が育てた大量の食虫花です」
「食虫花……どおりで」
「この催しは合理的かつ穏便に処理する絶好の機会でしたから」
 すがすがしい顔でそう言うレイを見て、そういう経緯でこのサイズになったのか、と一人納得する権三郎がいた。

「さて、次の作品を見てみましょう」
 しばしレイの作品の自由観覧の時間を取った後に、次の作品に移動した司会者。
 彼の言葉と共に、権三郎の作品にかけられたベールが取り除かれると、その下からタンポポの花冠を通したすみれの生け花が姿を現す。
「そこにあるのは一輪ながらも、物足りなさを全く感じさせない。素晴らしい作品ですね」
 一個前の作品『ヤクシー』にはインパクト面で大きく引けをとっていたが、そこに込められた日本独特のわびさびは、その作品がこじんまりとした作品だったからこそ強く感じられる。
 ……しかし子供がそれを解するには少々難しいわけで。
「なんか、しょぼい」
 レイの作品を見てしまった後の子供たちが、素直な感想を述べる。
 そんな子供たちに権三郎は、
「こういうんは感じるもんだ、なぁ? 少年少女よ」
 そう語り掛けた。

「ネクストバッター、行ってみましょう!」
 司会者の声に合わせて取られるベールの向こう側から姿を現したのは、ミネット・ベアール(ka3282)の作品、カラフルに彩られたサラダボウルであった。
「斬新な作品ですが、これのテーマなどはあるのですか?」
「『食べれるフラワーアート』です!」
「ほほう。つまりこれは見た目だけでなくしっかり食べられる、と」
 なるほどなるほど、と頷く司会者。
 そこに、なにやらボトルを手にしたミネットが近づいていく。
「ふふふ、これはまだ完成ではありません……食べるにはこれが必要です!」
 どうやらその手に持っていたものはオリーブオイルドレッシングだったようだ。
 それをかけられた野菜たちはキラキラと光を反射し、まるで雨上がりのような輝きをたたえていた。
「幻想的ですね……これは食べるのがもったいないぞ!」
「花より団子って言うそうですが、そのどちらも目指してみました!」
「食べて楽しむもよし。見て楽しむもよし。素敵な作品に仕上がっているようだ!」
 そう言いながらよだれをたらしそうになっている司会者は前者の人間なのだろう。

「早くも後半戦に突入だー! それでは作品名をどうぞ!」
 ノリノリの司会者から紅薔薇(ka4766)へとマイクが向けられる。
「作品名は『薔薇の騎士』じゃ」
 紅薔薇の言葉が終わるのと同時に、作品のベールがとられた。
 そこに現れたのは、まさに薔薇の騎士。
 色とりどりの花を着飾ったマネキンはまるで、プレートアーマーを着て剣と盾を持っているかのよう。
 さらにはパーツごとに色を変えているため、かなり手が込んでいる。
「見事、としか言いようがないですねぇ……。あれ、しかし紅薔薇さんは東方のご出身では?」
「装備は西側に合わせた方が判りやすいと思ったのじゃ」
 さもありなん、という様子の紅薔薇。
「そうでしたか。では薔薇をふんだんに使った理由というのは?」
「薔薇が多いのは妾が一番好きな花だからなのじゃ」
「薔薇をまとった騎士。とてもクールな作品に仕上がっているぜ!」
 花というものは平和を象徴するものの一つである。
 ならば。その花に包まれた騎士はいったい何を表しているのだろう。

「さぁいよいよ最後の作品だ。どうぞ!」
 ベールの向こう側からはそこだけが世界と隔離され、清らかで平和な時間が流れているかのような光景が姿を現した。
 グエン・チ・ホア(ka5051)の作る極楽浄土の様相がそこにはあった。
 ベトナム国花として最有力候補に上がる「蓮」を中心にして作られたフラワーアレジメントは、落ち着いた雰囲気であるがゆえの自己主張をしていた。
 その空気間の違いに多くの人々の足も自然に止まる。
「言葉にして表現するのがためらわれてしまいますね……司会者泣かせな作品ですよ」
 ベールを取るまでは饒舌だった司会者も、グエンの作品に見惚れてか口数が少なくなっている。
 しかし何かを思い出したように慌ててマイクを取ると、
「ここでしばらく時間を取りますので、皆さんご自分の気に入った作品を今一度ごゆっくりご覧ください!」
 と連絡した。

●開幕! 即興勝負
「さてさてそれではそろそろ本日のメインイベント、即興勝負に移りたいと思います」
 わー!という歓声があがると、それが多少静まるのを待ってから話が再開される。
「ルールはいたって簡単。今から私が発表するテーマに沿って作品をこの場で作っていただきます。限られた時間の中でいかにして素晴らしい作品を作るのか、技術だけでなく発想力も求められるこの勝負」
 あえて司会者はここでいったん話を区切る。そして。
「テーマは……『戦勝記念』だ! どれも甲乙つけがたい持ち込み作品だったわけですが、この即興勝負ではどんなものが生み出されるのでしょうか。今から楽しみで仕方ありません!」
 司会者の元気な声を聞きながら出場者たちは準備に入っていた。
 そんな中、
「うーむ、食べれないのは苦手なんですよね……食が絡まないとやる気が出ないというか……」
 色々と用意されたものを見ながらミネットがつぶやいている。
 しばしの長考の後、閃いた、と顔をあげるミネット。
「そんな事よりサラダも食べたしデザート食べたくなってきました……デザート……これです!」
「それは大丈夫なのじゃろうか?」
 嬉々としているミネットに、紅薔薇がツッコミを入れる。
「どこまで趣向に沿ってるか分かりませんが、甘いものが食べたくなっては仕方ありません……うへへ」
「……」
 じゅるっという音が聞こえてきそうなミネットの様子に紅薔薇はジト目を飛ばすしかなかった。
「誰が作るか? 自分で作るしかありません。じゃあいつ作るか? 今でしょ!」
「問題ないとよいのう」
 紅薔薇はサムズアップするミネットにそう一言残して自分の準備に取り掛かった。

「これと、これと、これと……」
 端っこから全ての花を拾い上げていくグエン。
「これに、それと、これだ……っと」
 こちらも同じく端っこから全ての花を拾い上げていた権三郎とグエンの肩がぶつかった。
 お互いの手の中にあるものがほとんど同じであることに気づく二人。
「あなたも全種類使うのですね」
「いや、俺もまさか他にもいるとは思ってなかったよ」
 全種類使うということはそれ相応の工夫をしないと残念なものが完成してしまう。
 さればこそ。
「いっちょお互い頑張ろうじゃねぇか」
「ええ、お互い」
 励まし合い、それぞれの作業スペースへと向かうのだった。

 皆の準備が整ったことを確認すると、司会者がマイクを取った。
「制限時間が終了したら再び私のほうからご連絡を入れますので、それまでは自由に作っちゃってください! それでは……」
 刹那の後。
「スタート!」

 ~~Now Making~~

●完成の即興作品
「しゅーりょー! たーいむあっぷでーす!」
 司会者の宣言によって、各々の作業をしていた五人の手が止められる。
「ここから見る限りでも素晴らしい作品がそろっている様子。皆さんも首を長くして待っていたわけですし、早速紹介に移りましょう!」
 再び、わー!という声が空気を震わせた。

「先ほどとは逆の順番で見て行ってみましょう。トップバッターはホアさんです!」
 司会者の手が指し示す先には、とにかくたくさんの花で彩られた作品。
 観賞用や食用の植物、かたやラフレシアや食虫植物まで、ありとあらゆる花が用いられている。
 普通、そんなにも多くの種類を使えば作品としてカオスになるのが関の山だ。
 しかし、この作品にはそんな様子はなかった。
 ラフレシアや食虫植物が跋扈しているところに、雑草や野菜のような花が侵入し、次第にその勢力範囲を伸ばしていく。
 すると、そこかしこに数多の植物が入り乱れる。
 だが最終的には不毛の地となっていたところに素朴ながらも美しい花が咲く。
 なにも知らぬ者がこの作品を見ても、ただのカオスなものとしかとらえられないかもしれない。けれど『戦勝記念』というテーマを通して見たこの作品は、見事に今回の戦争の顛末を表しているように映ったことだろう。
「この度の戦いを見事に表現しているように感じさせ、しっかりとその向こうには美しさを秘めている。即興であることを忘れさせるできだ!」
 紹介をそう締めくくり司会者はノリノリで次の作品へと向かった。

「始めっからクライマックス! さてさて次はどんな作品がでてくるのか!」
 紅薔薇の作品は比較的大きめなものだった。
 木箱によって作られた、砦を思わせる印象的な建造物。そしてそれは赤を基調とする花によって隙間なく飾り立てられている。
「作品名が『戦勝の砦』と言うことですが、となるとやはり?」
「テーマが『戦勝記念』じゃから、戦場となったマギア砦をイメージしてみたのじゃ。ある意味では薔薇の騎士の方とも繋がった作品じゃな」
 砦を中心としたその周りのスペースにも赤色の花が敷き詰められており、言葉無くして件の戦場を彷彿とさせている。
 しかし。
「僕知ってるよ。赤はひーろーの色なんだよね!」
 無邪気に笑う子供には『戦勝の砦』はそう映ったようだ。
 激戦の末に勝利をおさめ、ヒーローの色に包まれる砦。
 もしかすると、この戦いで散っていった者たち全てがヒーローなのかもしれない。

「どんどん行ってみましょう。これは……」
「ぐへへぇ、できました!名づけて【荒廃した野に再び咲く一輪の花】」
 ミネットが司会者にやや食い気味にしゃべりだした。
 嬉しそうに話すミネットの手元にある作品は一切れ分のカステラくらいの大きさの土台にローズマリーが一輪挿されている。
 土台となっている部分は小豆と粗目砂糖に寒天をかけて作られており、そこから顔を出すローズマリーを一層引き立てる。
 荒廃してしまった台地から芽吹く一輪の花は、争いの終結とともに勝利や平和を表現しているようでもあった。
「一輪の花に込められた気持ちがひしひしと伝わってきますね。いいと思います」
 言葉を遮られた司会者はどこかしょんぼりとしていた。

「気を取り直して後半戦行ってみましょう!」
 次いで紹介されたのは権三郎の作品。
 用意された花が一輪ずつすべてつなげられているその光景はなかなかに壮観であった。
 重さの違うものなどがあり、ところどころ上がっているところがあったり逆に下がっているところもある。
 そして千羽鶴の要領でつりさげられたそれらは、下からLEDライトに照らされることで一つ一つ違った輝き方を見せていた。
「なんとも芸術性の高い作品ですね」
「かっはっは! 個性ってのは折り合って、そして照らされて輝くもんだろ?」
 一見バラバラに見える花たちの集合体。しかしそれは花それぞれの、十人十色の個性をものの見事に表現して魅せている。
 主張の強い大きな花もあれば、小さいながらも素朴なやさしさを持つ花もある。
 調和を取るという点を見れば、権三郎のこの作品は他の一段上を行っていた。

「いよいよ全てのクライマックスです! 最後を飾るのは持ち込みで巨大ヤクシーを作ってくれたこの人!」
 司会者の示す先には長方形型のレイの作品が。
 中央に一本の道がひかれ、その両端では「追憶」や「惜別」を意味するシオン、キンセンカ、そして「幸せ」を意味するカスミソウがゆれている。
 極めつけは道の中央に咲く誇り高きイキシアの花。
 レイの作品は、暗い過去を超克し、この先の未来へ一歩を踏み出さんとする者たちの道しるべとも言うべきものだった。
「ふむふむ、一本の希望の道、と言ったところでしょうか。でもまたどうして?」
「この戦いにおける被害は決して軽くはありません。ただその中で、先を照らすものであれたら。それ故にこういった形を」
 暗く沈んだ場所に差す光。きっと人々はそれを頼りに進んで行くのだろう。

 全ての作品を紹介し終わり、一番初めの壇上へと戻ってきた司会者。
 彼がマイクを握ると、思い思いの方向を向いていた観客の視線が司会者に集まった。
「いやーどうしましょうね。五名十作品がここに出揃ったわけですが……」
 司会者が作品へ順番に目を向けていくのにつられ、観客の首もそちらへ回る。
「ベッドフォードさん、沖本さん、べアールさん、紅薔薇さん、ホアさん。本日出場になった方々の作品にはどれも遜色がありませんで……」
 困った困った、と肩を落として見せる司会者。
 しかし。
「でもご心配なく。審査の場は別にちゃんと設けております。ここはこれでお開きにして、優劣など関係なく作品鑑賞に勤しむといたしましょう」

 それからコンテスト自体が一端終了した後も、しばらくは客足が途絶えることはなかった。

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参加者一覧

  • SKMコンサルタント
    レイ・T・ベッドフォード(ka2398
    人間(蒼)|26才|男性|霊闘士
  • 刃なき武器、折れぬ信念
    沖本 権三郎(ka2483
    人間(蒼)|35才|男性|霊闘士
  • ♯冷静とは
    ミネット・ベアール(ka3282
    人間(紅)|15才|女性|猟撃士
  • 不破の剣聖
    紅薔薇(ka4766
    人間(紅)|14才|女性|舞刀士
  • 多彩な技師
    グエン・チ・ホア(ka5051
    人間(蒼)|21才|女性|疾影士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 花よりタンゴ
レイ・T・ベッドフォード(ka2398
人間(リアルブルー)|26才|男性|霊闘士(ベルセルク)
最終発言
2015/06/10 18:15:18
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/06/10 18:13:57