ゲスト
(ka0000)
1日だけ孤児院を預かって下さい!
マスター:なちゅい

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/11 19:00
- 完成日
- 2015/06/18 21:14
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●大切な子供達を……
そこはとある場所にある孤児院。
訳合って、親と暮らせなくなった子供達が預けられた場所だ。
親が病死した子、あるいは歪虚の被害に合ってしまった子。中には親に捨てられた子も……。その境遇は様々だが、互いに大変な思いをしていることを理解しており、子供達は仲良く、助け合いながら日々を過ごしている。
子供達が楽しく生活できているのは、施設を預かる女性達の働きによるところも大きい。彼女達もまた親と死に別れ、ここで育った者ばかりだ。男性は大きくなると、ハンターになったり、聖堂教会へ入ったりと、この孤児院を去っていくが、残った女性数名が新たな孤児達を育てているのだ。
ほぼ休みなく、子供達の面倒を見ている院内の大人達。休みなどなくとも、子供達の笑顔が見られるならと、日々働いているのだが……。
ある日のこと。
そこは、孤児院の院長室。
「困ったわね……」
その施設を運営する院長は、白髪が混じり始めた女性だ。彼女は一枚の紙を見て、どうしようかと頭を悩ませている。
実は、この孤児院で育った女性が今度結婚するのだという。覚醒者となってハンターをしていた女性は、ここから遠い地で自営業を営む一般男性と結ばれ、夫の家業を手伝うことになったそうなのだ。
院長を含め、先生達は女性と縁が深く、式に呼ばれていたのだが……。その場所は遠い。覚醒者の女性が転移門で院長や先生数名を連れていくことはできるが、女性とは接点のなかった子供達まで式に連れていくのは極めて難しい。
詰まるところ、式に参加する為には、子供達を置いていく必要がある。転移門のおかげで、1日あれば式に参加することはできる。
ただ、その日、子供達の面倒を誰が見るのかという問題が出てしまうのだ。
「あの子、ハンターを紹介してくれるって言っていたけれど……」
どうやら、女性はハンターオフィスに掛けあって、その日は数名のハンターを孤児院へと派遣してくれるらしい。
「いい人に来てもらえればいいわね……」
院長は改めて女性からの便りに目を通した後、部屋の外で元気に駆け回っている子供達の声に耳を傾ける。子供達は、ハンターとうまく接することができるだろうかと、少しだけ不安を覚えてしまうのだった。
そこはとある場所にある孤児院。
訳合って、親と暮らせなくなった子供達が預けられた場所だ。
親が病死した子、あるいは歪虚の被害に合ってしまった子。中には親に捨てられた子も……。その境遇は様々だが、互いに大変な思いをしていることを理解しており、子供達は仲良く、助け合いながら日々を過ごしている。
子供達が楽しく生活できているのは、施設を預かる女性達の働きによるところも大きい。彼女達もまた親と死に別れ、ここで育った者ばかりだ。男性は大きくなると、ハンターになったり、聖堂教会へ入ったりと、この孤児院を去っていくが、残った女性数名が新たな孤児達を育てているのだ。
ほぼ休みなく、子供達の面倒を見ている院内の大人達。休みなどなくとも、子供達の笑顔が見られるならと、日々働いているのだが……。
ある日のこと。
そこは、孤児院の院長室。
「困ったわね……」
その施設を運営する院長は、白髪が混じり始めた女性だ。彼女は一枚の紙を見て、どうしようかと頭を悩ませている。
実は、この孤児院で育った女性が今度結婚するのだという。覚醒者となってハンターをしていた女性は、ここから遠い地で自営業を営む一般男性と結ばれ、夫の家業を手伝うことになったそうなのだ。
院長を含め、先生達は女性と縁が深く、式に呼ばれていたのだが……。その場所は遠い。覚醒者の女性が転移門で院長や先生数名を連れていくことはできるが、女性とは接点のなかった子供達まで式に連れていくのは極めて難しい。
詰まるところ、式に参加する為には、子供達を置いていく必要がある。転移門のおかげで、1日あれば式に参加することはできる。
ただ、その日、子供達の面倒を誰が見るのかという問題が出てしまうのだ。
「あの子、ハンターを紹介してくれるって言っていたけれど……」
どうやら、女性はハンターオフィスに掛けあって、その日は数名のハンターを孤児院へと派遣してくれるらしい。
「いい人に来てもらえればいいわね……」
院長は改めて女性からの便りに目を通した後、部屋の外で元気に駆け回っている子供達の声に耳を傾ける。子供達は、ハンターとうまく接することができるだろうかと、少しだけ不安を覚えてしまうのだった。
リプレイ本文
●張り切って頑張ろう!
朝――。
ハンター達は、孤児院へと足を運ぶ。
「孤児院かー。なんだか 懐かしいわね。 シスターとして仕事で手伝ったりもしてたし」
はしゃぐ子供の姿を見たセリス・アルマーズ(ka1079)は、以前、シスターだった頃に行っていた手伝いを思い出す。
「子供達が少しでも笑顔になってもらえるよう、頑張ります……!!」
鹿乃 梓(ka4972)は、リアルブルーで家庭科部に入っていたこともあり、家事は得意だと胸を張る。
一方で、傭兵である、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)。戦いを稼業とする彼は、人を守ることはできても、献身的に慈しんで育てることは多分できないと考えている。
「尊敬するよ、職員の方々」
休むことなく、子供達を見続ける院の先生達に、アルトは思わず敬服してしまう。
しかしながら、その職員達は全員外出予定で、13人もの子供を抱える孤児院を1日を預からねばならないのだ。
「『ハンターに頼めば大丈夫』って思って頂けるよう、がんばりましょう」
青山 りりか(ka4415)は気合を入れ、ぐっと拳を握った。
今日のことを新た締め聞いていた子供達がハンターの姿を認めると、興味津々に駆け寄ってくる。
レム・K・モメンタム(ka0149)は自分が育った、サルビアという名の孤児院を思い出していた。そこで育った過去があったからこそ、同じ出自のマルク・D・デメテール(ka0219)とネグロ・ノーチェ(ka0237)を連れてこの依頼を受けようと彼女は思ったのだ。
「まぁ、あいつらの相手をすると思えば……」
ネグロは言っているのは、サルビアの子供達のこと。一癖も二癖もある子供達の相手は大変だったが。この孤児院ではどうだろうか。
「はぁ、ったく……なんで俺がこんな事……」
レムに引きずられるようにしてこの場へ訪れていたマルクは、何とも大義そうだ。
「まっ、乗りかかった船だ」
口では仕方ないからと語る彼だが、内心では子供達に対して伝えたい思いを抱えていたのである。
子供達の為に。孤児院のスタッフの為に、そして、頼られるハンターとしての尊厳の為に。皆、それぞれの想いを胸に秘めながらも、孤児院へと入っていく。
●太陽が昇りきるまでに
「皆、おはようございます!」
梓が元気に挨拶すると、「おはようございます!」と元気な挨拶が返ってくる。子供達なりにハンター達を歓迎してくれている様子だ。
すでに職員達は出発している。メンバー達は早速、孤児院の仕事へと取りかかり始めた。
慌ただしく動くメンバー達。マルクやアルト、ネグロは井戸から水を汲んで運んできてくれている。
その水を使い、りりかは洗濯を行う。
りりかは育児経験こそないものの、クリムゾンウエストに来てからは必然的に炊事洗濯を覚えていた。
基本的には院に常備されている道具を使い、大量の洗濯物を1つずつ洗っていく。その手伝いを、梓と、水を運び終えたマルクが手伝ってくれていた。
事前に市場で買ってきていたレモンを使い、りりかは衣服についたシミや汚れにそのレモンの果汁を塗り込んで放置する。
「天然の漂白剤だし、たまには違う香りのお洋服を着るのも、いいかもしれないよね」
レモンのさわやかな匂いに、りりかは思わず笑みを浮かべる。
ただ、和んでばかりもいられない。目の前には18人分の洗濯物があるのだ。
「しかし、朝は慌ただしいですね、主婦の方の尊さを感じます……」
午前中に干し終えたい面々は忙しなく動く。
その頃、子供達の面倒を見ていたのはレムだ。
「悪いわね、手伝ってくれて。アンタぐらいの歳だと、まだまだ遊び足りないんじゃないの?」
手伝いをしてくれる15歳の少年少女。2人はこれまで、先生達に世話になってきたんだと主張する。だからこそ、自分達も力になりたいとだと。
自分とさほど変わらない年の子供達に、レムは感謝するのである。
ネグロも家事の合間に子供達へと声をかけ、相手をしていたし、赤ん坊と幼児2人はセリスが目を離さずあやしてくれている。
普段、金属鎧に身を包んでいるセリスだが、赤ん坊相手では流石にと思ったようで、鎧を脱いで普通の修道複姿になっていた。彼女を知る者としては、実にレアな姿だったことだろう。
とはいえ、1人で3人同時に見るのは非常に難しい。時折、梓に力を借りつつ、赤ん坊のおむつ替えや幼児達の世話を行っていたようだ。
炊事場にはアルトの姿があった。
予め買ってきてあった食材を使い、詰め合わせの弁当を作っていたのだ。彼女は、セリスに温めたミルクも届けてくれている。
外が晴れていたこともあり、食材がすぐ痛むということもなさそうだ。その為、サンドイッチやフルーツの詰め合わせなど、軽食を作ったアルト。
それらを弁当箱に詰め終えた直後、チャイムが鳴り響く。子供達に昼食を知らせる鐘だった。
外の物干し竿には沢山の洗濯物が風に吹かれている。仲間達の力を借りて洗濯を全て欲し終えたりりかは、青空と同じく晴れやかな表情をしていた。
●遊んで、寝て、働いて
一行は子供達と孤児院の庭で昼食を取る。それはまるでピクニックのようだ。
「おうおう、なんとも平和なこって」
一息ついたマルクは子供達を1人1人観察する。彼はこの後どうやって接しようかと頭の中で考えていたようだ。
アルトは8歳になる双子の女の子達に声を掛けていた。
「ボクも双子の妹がいるんだ」
そうなんだと声を揃える双子。雰囲気がそっくりなその双子に対し、アルトは妹とは全く性格が違うと、盛り上がっていた。
いつもとは違うハンター達の作った食事は、子供達を大いに楽しませる。片っ端からお弁当の中身をつかみ取っていく。
はしゃぎつつお弁当を食べる子供達を見て、レムはふと、昔の自分を思い出す。
(最初は、今ほど無邪気じゃなかった)
幼き日、レムは親を亡くした事実を受け入れられなかった。それは彼女にとって、あまりに理不尽な出来事だったのだ。
(だから、理不尽を覆す力が欲しくて、私はハンターになった)
孤児院で働くこの依頼は、レムは自分の原点を見つめ直すきっかけにもなったようだ。
子供達はまだまだ元気。昼食の後も元気に院内を駆け回る。
メンバー達は家事を再開する前に、子供達との楽しい一時を過ごすことにしていた。
外で遊ぶ男の子達にはマルクが付いている。
疾影士らしく跳躍等で機嫌取りをしていた彼だが、一緒に体を動かすことで子供達の体力作りを行おうと考えていたようだ。
多少スパルタだったが、転んで涙を浮かべる少年に対しては、気遣いを見せるマルク。礼を言われた彼は照れ隠しの為か、あさっての方向を向いていた。
アルトは連れてきたペットに小さな子供達の相手をさせている。梓やネグロも同伴し、子供達に危険がないかと気にかけていたようだ。
「苛めないであげてね」
連れてきたゴースロンはとりわけ人気で、その背に乗るのが奪い合いになってしまうほど。
喧嘩をする子供達を、赤ん坊を背負ったセリスが仲裁する。
「エクラ教は寛容の精神が教えです」
セリスは仲直りさせつつ、信仰する教えを子供達へと説いていた。
子供達がはしゃいでいる間、アルトは孤児院の外へも気を配る。子供達だけの孤児院を狙う輩がいるかもしれないと考えていたが、幸いにもそれは杞憂で済んだようだ。
その後、木陰にいた子供達は楽器を手にしていたアルトに、歌をリクエストしていた。
「それじゃ、いくよ!」
リュートで子供達の希望した曲を奏でるアルトは、やや低めの声で歌う。ネグロもそれに合わせてオカリナを吹いていた。
子供達の希望に応えた後、彼女は子守唄を歌う。少し疲れたのか、子供達は木陰ですやすやと可愛らしい寝顔を見せ始めた。
眠っている、といえば。
ミルクを飲んで満足した赤ん坊は、セリスの背ですやすやと眠っている。
幼児2人も寝ついたようで、一時ではあるが、セリスはようやく子供達の世話から解放されていたようだ。
その間に、セリス、りりか、梓の3人は忙しなく家事に精を出す。
広い院内を彼女達は箒で掃き、雑巾がけを行う。りりかはいつも以上に丁寧に掃除を行っていた。
りりかは外に干した洗濯物を取り込むのも忘れない。外が冷え込む前に、乾いている物から1つずつ取り込んでいく。そして、掃除の終わった部屋で、その洗濯ものを畳んでいった。
りりかの率先した働きもあり、子供達が目覚める前に洗濯物を片づけることができた。
そして、目覚めた子供達に梓がにっこりと差し出したのは、飴やマシュマロといった甘いおやつ。
「甘いものは正義です……! なんちゃって」
ネグロも一緒に、手にしていたポテトチップスを差し出す。
すでにお腹を空かせた子供達。お菓子を口にし、にっこりとハンター達に笑顔を見せていた。
●夕食を作ろう!
日が暮れかけてきた頃、梓が持ってきた食材を子供達にどーんと見せつけた。
「皆で晩御飯を作りましょう……! きっと、皆で作ったら美味しいですよ!」
女の子はもちろんのこと、外で遊ぶ男の子、そして、ハンター男性陣をも巻き込み、彼女は料理を作ろうと提案した。
「えー」
「めんどくさいー!」
口を揃えて、子供達は不満を口にする。
そこで、ここぞと出てきたのはマルクだ。
「守られるだけの存在になるな。互いに助け合い、守りあってこそ本当の仲間だ」
手伝いをしぶっていた子供達は、彼の言葉に目を丸くし、きょとんとしてしまっている。
彼は子供達の自主性を育てたいと考えていた。夕食の手伝いを渋る子供達を見て、いい機会だと思ったのだろう。
マルクはハンターとして、自身の体験を語る。そして、ある程度の生活スキルを身に着けることが自身の、そして仲間の為になると子供達に話し、そして諭していたのだ。
子供の1人が手を挙げ、続いてボクも私もと、しまいには全員が手を挙げる。子供達のその様子に、梓はとても嬉しそうだった。
ただ、いくら手伝いの手があるからといって、20人分作るとなれば大変だ。しかも、育ち盛りの子供達。それでも足りないくらいだ。
これまで1日、忙しなく家事を行ってきたレム。この人数を世話するのは実に大変だ。
それでも、昔自分がしてもらった事、そしてやってきた事である。それはなんとも心地良いものだ。
しかしながら、ハンター達と一緒に調理をする子供達は、初めての体験にあくせくしながらも、野菜を切る。
ただ斬るだけでは物足りない女の子達に、梓はニンジンを星型に切ってみせると、女の子達は目を輝かせて真似をし始める。ちょっと手を切ってしまう子がいたのはご愛嬌だ。
鍋を煮込んだり、ご飯を炊くのに必要な薪をアルトが割っていた。それを運ぶ子供達へ、彼女は自分の剣技を見せていたのだ。
男の子が投げた薪を、アルトが居合と連撃で4つに割ってみせると、ギャラリーからは拍手が巻き起こる。
(幼少時すごい! と思った記憶があるけど、これはボクが剣術が好きだったからかな?)
子供達の拍手を耳にしながら、彼女は自身の幼い日々を思い返していた。
そんなこんなで梓が中心となり、シチューが出来上がっていく。
(本当はカレーを作りたかったのですけれどね)
クリムゾンウェストでは、香辛料を揃えるのが少し難しい。彼女は已む無くシチューへと方針変更する羽目になったのだ。
それでも、漂うシチューの匂いに子供達の腹はもう限界だった。皿に盛られたシチューを子供達はがっつくように口へ運び始める。
「うわ、うめーーー!」
「先生のシチューも美味しいけど、こっちも美味しい!」
皆で作ったシチューとなれば、その美味しさも格別だ。子供達はあっという間に平らげ、おかわりを連発する。
楽しそうに食べる子供達の中で、男の子が何気にネグロの眼帯に興味を示す。それに手を掛けようとする子へ、ネグロは凄みを利かせて告げる。
「これが外れると、怖いヤツが酷いことをしにやってくるぞ」
それが、孤児院の先生達の言葉なら、真実味は薄かったろう。
しかし、それがハンターから出た言葉だったからこそ、真実味を持つ。その子はがたがたとその身を震えさせていた。
眼帯を外したくないネグロは内心、子供のその様子にホッとしていたようだ。
「アンタ達って、将来なりたいものとかあったりする?」
レムがスプーンを動かす手を止めて、子供達へと問いかける。
ここの子供達は、孤児院を出た大人達から外の世界のことを聞かされているのだろう。ハンターや教会に興味を持つ子がいる一方で、やっぱり孤児院がいいとこのまま先生になるつもりの子もいたようだ。
レムは頷きながら思う。中には精霊になりたいと突拍子もない夢もあったが、その全ては肯定されるべきだと考えていた。
(叶わないとしても、苦しい時に前に進む力を夢は与えてくれるから)
その夢はきっと子供達を大きくするんだと、レムは確信していた。
●手伝いを終えて……
夕食の片付けも終える頃、院長と先生達が戻ってくる。
院長から感謝の言葉を受け取ったメンバー達は、院の関係者全員に見送られ、帰路についた。
「ねぇ、たまにはサルビアの方にも戻らない?」
サルビア出身の3人。レムは、マルク、ネグロの2人へと提案する。
「辛い事があっても、夢があれば人は耐えていける。その事を、今の私達からサルビアの皆に伝えてあげたいの」
それは、幼き日の私に前を向かせてくれた原点だったからと、彼女は主張する。
「ただ生き残るって目標だけだと、いざって時に立ち上がるのが難しくなる」
自身に夢はないと断言するネグロ。ただ、彼は夢に向かって走る仲間の姿を見ている。
「だから、レムの言葉には同意できる」
同じ釜の飯を食したネグロの言葉に、レムは破顔する。
「俺はあそこから家出した身だが……戻るのは悪くねーって思ってる」
「ま、それもいいんじゃねぇか?」
たまに孤児院に顔を出せば、先生を安心させられるだろうと言うネグロに、マルクも笑って同意する。
「くくっ、心配性の副院長がどんな面見せんのか楽しみだなぁ、おい」
孤児院へと帰った3人を、その人達はどう出迎えてくれるだろうか。
また、りりかは1人、今日一日を振り返って思わず溜息をもらす。
「孤児院の方たちはいつもこのお仕事をされてるんですよね。すごいなぁ……」
りりかは思う。自分の母親も毎日、家事や自分の世話など、頑張ってくれていたのだろうなと。
「ありがたい、な」
いつか、リアルブルーに帰ることができたなら。母親にこう言いたい。……ありがとう、と。
朝――。
ハンター達は、孤児院へと足を運ぶ。
「孤児院かー。なんだか 懐かしいわね。 シスターとして仕事で手伝ったりもしてたし」
はしゃぐ子供の姿を見たセリス・アルマーズ(ka1079)は、以前、シスターだった頃に行っていた手伝いを思い出す。
「子供達が少しでも笑顔になってもらえるよう、頑張ります……!!」
鹿乃 梓(ka4972)は、リアルブルーで家庭科部に入っていたこともあり、家事は得意だと胸を張る。
一方で、傭兵である、アルト・ヴァレンティーニ(ka3109)。戦いを稼業とする彼は、人を守ることはできても、献身的に慈しんで育てることは多分できないと考えている。
「尊敬するよ、職員の方々」
休むことなく、子供達を見続ける院の先生達に、アルトは思わず敬服してしまう。
しかしながら、その職員達は全員外出予定で、13人もの子供を抱える孤児院を1日を預からねばならないのだ。
「『ハンターに頼めば大丈夫』って思って頂けるよう、がんばりましょう」
青山 りりか(ka4415)は気合を入れ、ぐっと拳を握った。
今日のことを新た締め聞いていた子供達がハンターの姿を認めると、興味津々に駆け寄ってくる。
レム・K・モメンタム(ka0149)は自分が育った、サルビアという名の孤児院を思い出していた。そこで育った過去があったからこそ、同じ出自のマルク・D・デメテール(ka0219)とネグロ・ノーチェ(ka0237)を連れてこの依頼を受けようと彼女は思ったのだ。
「まぁ、あいつらの相手をすると思えば……」
ネグロは言っているのは、サルビアの子供達のこと。一癖も二癖もある子供達の相手は大変だったが。この孤児院ではどうだろうか。
「はぁ、ったく……なんで俺がこんな事……」
レムに引きずられるようにしてこの場へ訪れていたマルクは、何とも大義そうだ。
「まっ、乗りかかった船だ」
口では仕方ないからと語る彼だが、内心では子供達に対して伝えたい思いを抱えていたのである。
子供達の為に。孤児院のスタッフの為に、そして、頼られるハンターとしての尊厳の為に。皆、それぞれの想いを胸に秘めながらも、孤児院へと入っていく。
●太陽が昇りきるまでに
「皆、おはようございます!」
梓が元気に挨拶すると、「おはようございます!」と元気な挨拶が返ってくる。子供達なりにハンター達を歓迎してくれている様子だ。
すでに職員達は出発している。メンバー達は早速、孤児院の仕事へと取りかかり始めた。
慌ただしく動くメンバー達。マルクやアルト、ネグロは井戸から水を汲んで運んできてくれている。
その水を使い、りりかは洗濯を行う。
りりかは育児経験こそないものの、クリムゾンウエストに来てからは必然的に炊事洗濯を覚えていた。
基本的には院に常備されている道具を使い、大量の洗濯物を1つずつ洗っていく。その手伝いを、梓と、水を運び終えたマルクが手伝ってくれていた。
事前に市場で買ってきていたレモンを使い、りりかは衣服についたシミや汚れにそのレモンの果汁を塗り込んで放置する。
「天然の漂白剤だし、たまには違う香りのお洋服を着るのも、いいかもしれないよね」
レモンのさわやかな匂いに、りりかは思わず笑みを浮かべる。
ただ、和んでばかりもいられない。目の前には18人分の洗濯物があるのだ。
「しかし、朝は慌ただしいですね、主婦の方の尊さを感じます……」
午前中に干し終えたい面々は忙しなく動く。
その頃、子供達の面倒を見ていたのはレムだ。
「悪いわね、手伝ってくれて。アンタぐらいの歳だと、まだまだ遊び足りないんじゃないの?」
手伝いをしてくれる15歳の少年少女。2人はこれまで、先生達に世話になってきたんだと主張する。だからこそ、自分達も力になりたいとだと。
自分とさほど変わらない年の子供達に、レムは感謝するのである。
ネグロも家事の合間に子供達へと声をかけ、相手をしていたし、赤ん坊と幼児2人はセリスが目を離さずあやしてくれている。
普段、金属鎧に身を包んでいるセリスだが、赤ん坊相手では流石にと思ったようで、鎧を脱いで普通の修道複姿になっていた。彼女を知る者としては、実にレアな姿だったことだろう。
とはいえ、1人で3人同時に見るのは非常に難しい。時折、梓に力を借りつつ、赤ん坊のおむつ替えや幼児達の世話を行っていたようだ。
炊事場にはアルトの姿があった。
予め買ってきてあった食材を使い、詰め合わせの弁当を作っていたのだ。彼女は、セリスに温めたミルクも届けてくれている。
外が晴れていたこともあり、食材がすぐ痛むということもなさそうだ。その為、サンドイッチやフルーツの詰め合わせなど、軽食を作ったアルト。
それらを弁当箱に詰め終えた直後、チャイムが鳴り響く。子供達に昼食を知らせる鐘だった。
外の物干し竿には沢山の洗濯物が風に吹かれている。仲間達の力を借りて洗濯を全て欲し終えたりりかは、青空と同じく晴れやかな表情をしていた。
●遊んで、寝て、働いて
一行は子供達と孤児院の庭で昼食を取る。それはまるでピクニックのようだ。
「おうおう、なんとも平和なこって」
一息ついたマルクは子供達を1人1人観察する。彼はこの後どうやって接しようかと頭の中で考えていたようだ。
アルトは8歳になる双子の女の子達に声を掛けていた。
「ボクも双子の妹がいるんだ」
そうなんだと声を揃える双子。雰囲気がそっくりなその双子に対し、アルトは妹とは全く性格が違うと、盛り上がっていた。
いつもとは違うハンター達の作った食事は、子供達を大いに楽しませる。片っ端からお弁当の中身をつかみ取っていく。
はしゃぎつつお弁当を食べる子供達を見て、レムはふと、昔の自分を思い出す。
(最初は、今ほど無邪気じゃなかった)
幼き日、レムは親を亡くした事実を受け入れられなかった。それは彼女にとって、あまりに理不尽な出来事だったのだ。
(だから、理不尽を覆す力が欲しくて、私はハンターになった)
孤児院で働くこの依頼は、レムは自分の原点を見つめ直すきっかけにもなったようだ。
子供達はまだまだ元気。昼食の後も元気に院内を駆け回る。
メンバー達は家事を再開する前に、子供達との楽しい一時を過ごすことにしていた。
外で遊ぶ男の子達にはマルクが付いている。
疾影士らしく跳躍等で機嫌取りをしていた彼だが、一緒に体を動かすことで子供達の体力作りを行おうと考えていたようだ。
多少スパルタだったが、転んで涙を浮かべる少年に対しては、気遣いを見せるマルク。礼を言われた彼は照れ隠しの為か、あさっての方向を向いていた。
アルトは連れてきたペットに小さな子供達の相手をさせている。梓やネグロも同伴し、子供達に危険がないかと気にかけていたようだ。
「苛めないであげてね」
連れてきたゴースロンはとりわけ人気で、その背に乗るのが奪い合いになってしまうほど。
喧嘩をする子供達を、赤ん坊を背負ったセリスが仲裁する。
「エクラ教は寛容の精神が教えです」
セリスは仲直りさせつつ、信仰する教えを子供達へと説いていた。
子供達がはしゃいでいる間、アルトは孤児院の外へも気を配る。子供達だけの孤児院を狙う輩がいるかもしれないと考えていたが、幸いにもそれは杞憂で済んだようだ。
その後、木陰にいた子供達は楽器を手にしていたアルトに、歌をリクエストしていた。
「それじゃ、いくよ!」
リュートで子供達の希望した曲を奏でるアルトは、やや低めの声で歌う。ネグロもそれに合わせてオカリナを吹いていた。
子供達の希望に応えた後、彼女は子守唄を歌う。少し疲れたのか、子供達は木陰ですやすやと可愛らしい寝顔を見せ始めた。
眠っている、といえば。
ミルクを飲んで満足した赤ん坊は、セリスの背ですやすやと眠っている。
幼児2人も寝ついたようで、一時ではあるが、セリスはようやく子供達の世話から解放されていたようだ。
その間に、セリス、りりか、梓の3人は忙しなく家事に精を出す。
広い院内を彼女達は箒で掃き、雑巾がけを行う。りりかはいつも以上に丁寧に掃除を行っていた。
りりかは外に干した洗濯物を取り込むのも忘れない。外が冷え込む前に、乾いている物から1つずつ取り込んでいく。そして、掃除の終わった部屋で、その洗濯ものを畳んでいった。
りりかの率先した働きもあり、子供達が目覚める前に洗濯物を片づけることができた。
そして、目覚めた子供達に梓がにっこりと差し出したのは、飴やマシュマロといった甘いおやつ。
「甘いものは正義です……! なんちゃって」
ネグロも一緒に、手にしていたポテトチップスを差し出す。
すでにお腹を空かせた子供達。お菓子を口にし、にっこりとハンター達に笑顔を見せていた。
●夕食を作ろう!
日が暮れかけてきた頃、梓が持ってきた食材を子供達にどーんと見せつけた。
「皆で晩御飯を作りましょう……! きっと、皆で作ったら美味しいですよ!」
女の子はもちろんのこと、外で遊ぶ男の子、そして、ハンター男性陣をも巻き込み、彼女は料理を作ろうと提案した。
「えー」
「めんどくさいー!」
口を揃えて、子供達は不満を口にする。
そこで、ここぞと出てきたのはマルクだ。
「守られるだけの存在になるな。互いに助け合い、守りあってこそ本当の仲間だ」
手伝いをしぶっていた子供達は、彼の言葉に目を丸くし、きょとんとしてしまっている。
彼は子供達の自主性を育てたいと考えていた。夕食の手伝いを渋る子供達を見て、いい機会だと思ったのだろう。
マルクはハンターとして、自身の体験を語る。そして、ある程度の生活スキルを身に着けることが自身の、そして仲間の為になると子供達に話し、そして諭していたのだ。
子供の1人が手を挙げ、続いてボクも私もと、しまいには全員が手を挙げる。子供達のその様子に、梓はとても嬉しそうだった。
ただ、いくら手伝いの手があるからといって、20人分作るとなれば大変だ。しかも、育ち盛りの子供達。それでも足りないくらいだ。
これまで1日、忙しなく家事を行ってきたレム。この人数を世話するのは実に大変だ。
それでも、昔自分がしてもらった事、そしてやってきた事である。それはなんとも心地良いものだ。
しかしながら、ハンター達と一緒に調理をする子供達は、初めての体験にあくせくしながらも、野菜を切る。
ただ斬るだけでは物足りない女の子達に、梓はニンジンを星型に切ってみせると、女の子達は目を輝かせて真似をし始める。ちょっと手を切ってしまう子がいたのはご愛嬌だ。
鍋を煮込んだり、ご飯を炊くのに必要な薪をアルトが割っていた。それを運ぶ子供達へ、彼女は自分の剣技を見せていたのだ。
男の子が投げた薪を、アルトが居合と連撃で4つに割ってみせると、ギャラリーからは拍手が巻き起こる。
(幼少時すごい! と思った記憶があるけど、これはボクが剣術が好きだったからかな?)
子供達の拍手を耳にしながら、彼女は自身の幼い日々を思い返していた。
そんなこんなで梓が中心となり、シチューが出来上がっていく。
(本当はカレーを作りたかったのですけれどね)
クリムゾンウェストでは、香辛料を揃えるのが少し難しい。彼女は已む無くシチューへと方針変更する羽目になったのだ。
それでも、漂うシチューの匂いに子供達の腹はもう限界だった。皿に盛られたシチューを子供達はがっつくように口へ運び始める。
「うわ、うめーーー!」
「先生のシチューも美味しいけど、こっちも美味しい!」
皆で作ったシチューとなれば、その美味しさも格別だ。子供達はあっという間に平らげ、おかわりを連発する。
楽しそうに食べる子供達の中で、男の子が何気にネグロの眼帯に興味を示す。それに手を掛けようとする子へ、ネグロは凄みを利かせて告げる。
「これが外れると、怖いヤツが酷いことをしにやってくるぞ」
それが、孤児院の先生達の言葉なら、真実味は薄かったろう。
しかし、それがハンターから出た言葉だったからこそ、真実味を持つ。その子はがたがたとその身を震えさせていた。
眼帯を外したくないネグロは内心、子供のその様子にホッとしていたようだ。
「アンタ達って、将来なりたいものとかあったりする?」
レムがスプーンを動かす手を止めて、子供達へと問いかける。
ここの子供達は、孤児院を出た大人達から外の世界のことを聞かされているのだろう。ハンターや教会に興味を持つ子がいる一方で、やっぱり孤児院がいいとこのまま先生になるつもりの子もいたようだ。
レムは頷きながら思う。中には精霊になりたいと突拍子もない夢もあったが、その全ては肯定されるべきだと考えていた。
(叶わないとしても、苦しい時に前に進む力を夢は与えてくれるから)
その夢はきっと子供達を大きくするんだと、レムは確信していた。
●手伝いを終えて……
夕食の片付けも終える頃、院長と先生達が戻ってくる。
院長から感謝の言葉を受け取ったメンバー達は、院の関係者全員に見送られ、帰路についた。
「ねぇ、たまにはサルビアの方にも戻らない?」
サルビア出身の3人。レムは、マルク、ネグロの2人へと提案する。
「辛い事があっても、夢があれば人は耐えていける。その事を、今の私達からサルビアの皆に伝えてあげたいの」
それは、幼き日の私に前を向かせてくれた原点だったからと、彼女は主張する。
「ただ生き残るって目標だけだと、いざって時に立ち上がるのが難しくなる」
自身に夢はないと断言するネグロ。ただ、彼は夢に向かって走る仲間の姿を見ている。
「だから、レムの言葉には同意できる」
同じ釜の飯を食したネグロの言葉に、レムは破顔する。
「俺はあそこから家出した身だが……戻るのは悪くねーって思ってる」
「ま、それもいいんじゃねぇか?」
たまに孤児院に顔を出せば、先生を安心させられるだろうと言うネグロに、マルクも笑って同意する。
「くくっ、心配性の副院長がどんな面見せんのか楽しみだなぁ、おい」
孤児院へと帰った3人を、その人達はどう出迎えてくれるだろうか。
また、りりかは1人、今日一日を振り返って思わず溜息をもらす。
「孤児院の方たちはいつもこのお仕事をされてるんですよね。すごいなぁ……」
りりかは思う。自分の母親も毎日、家事や自分の世話など、頑張ってくれていたのだろうなと。
「ありがたい、な」
いつか、リアルブルーに帰ることができたなら。母親にこう言いたい。……ありがとう、と。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/10 13:15:55 |
|
![]() |
相談卓 鹿乃 梓(ka4972) 人間(リアルブルー)|18才|女性|聖導士(クルセイダー) |
最終発言 2015/06/11 17:50:29 |