ゲスト
(ka0000)
【春郷祭】花の騎士、募集!
マスター:紡花雪

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 6~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/16 07:30
- 完成日
- 2015/06/23 08:07
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●春郷祭にようこそ!
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるが、寄り合いに持ち込まれた村長からのSOSに対応もしなくてはならない。どちらにせよ、ジェオルジ一族は大忙しであることには変わりはないのだ。
●花の騎士パレード
『舞い踊る花の祭典 花の騎士パレード』
観光客向けに配られた春郷祭広告に、その見出しが躍っていた。
それは、とある村が主催する催しの広告だ。その村には、『春の七色』と呼ばれる、多色咲き誇る花畑がある。花の種類は多種多様で、主に世界中の花屋や貴族向けに出荷されているものだが、祭とあってはそれを活かさない手はない。それが、毎年行われている『花の騎士パレード』である。
『花の騎士パレード』では、人々が普段の装いに生花をいっぱい飾り付けて、踊りや奏楽を披露しながら街道を練り歩く催しなのだが、今年は少し内容が変わることになったのだ。今年の春郷祭では、遠き辺境の地で戦ったハンターの勇姿に花を手向け、讃えるべきだろう。それが、村長や村人たちのたっての希望だった。
そこで今年の『花の騎士パレード』では、村人たちに加え、ハンターたちに参加してもらいたい。彼らの戦闘衣装や装備を生花で飾り付けてもらい、剣舞や武闘の型などを披露しながら、観光客の喝采を浴びる形にしよう、ということになったのだ。
その一方で、例年と変わらないルールもある。美しく花を飾り付け、素晴らしい踊りや奏楽で観客を魅了した者には、『花の騎士王』もしくは『花の姫騎士』の栄冠が与えられるのだ。
「去年は、弦楽器と婚礼衣装に青系の花を飾ったお嬢ちゃんが、『花の姫騎士』だったよなぁ」
「そうそう。その前は、水車小屋の親父が『花の騎士王』だったな。普段のむさ苦しさが嘘みたいに、本物の王様みたいだったもんなぁ」
『花の騎士パレード』の実行委員である村人たちが、これまでのパレードを思い出しながら今年の計画を練っていた。
「ハンターたちに参加してもらうんなら、花摘みから一緒にやってもらうか?」
「そうさなぁ。俺たちが花を用意してもいいが、どうせなら彼らの独創性に任せたほうがいいだろ。鈴なりの小花から大輪まで、色もたくさん、何でも咲いてるからな!」
「おう。パレードのあとは、花の騎士の発表と、ハーブティーでお茶会でもするかな。ハンターたちをもてなさなくちゃいけねぇな」
当日が楽しみだ、と男たちは明るい笑い声をあげた。
花咲き乱れるジェオルジの春を、ハンターたちに楽しんでもらいたい。そのために村人たちは、パレードの準備に向けて大忙しとなるだろう。
同盟領内に存在する農耕推進地域ジェオルジ。
この地では初夏と晩秋の頃に、各地の村長が統治者一族の土地に集まって報告を行う寄り合いが行われる。その後、労をねぎらうべくささやかなお祭りが催されていたのだが、昨年の秋から状況が一変。同盟の商人や各地からの観光客が集まるお祭りとして賑わっていた。
そして今年の春。遠き辺境の地での戦いが終息に向かったのを見計らい、延期にしていた春の村長祭を開催する運びとなった。
今回は辺境のお祭りとの共催となり、より一層の盛り上がりが予想されるが、寄り合いに持ち込まれた村長からのSOSに対応もしなくてはならない。どちらにせよ、ジェオルジ一族は大忙しであることには変わりはないのだ。
●花の騎士パレード
『舞い踊る花の祭典 花の騎士パレード』
観光客向けに配られた春郷祭広告に、その見出しが躍っていた。
それは、とある村が主催する催しの広告だ。その村には、『春の七色』と呼ばれる、多色咲き誇る花畑がある。花の種類は多種多様で、主に世界中の花屋や貴族向けに出荷されているものだが、祭とあってはそれを活かさない手はない。それが、毎年行われている『花の騎士パレード』である。
『花の騎士パレード』では、人々が普段の装いに生花をいっぱい飾り付けて、踊りや奏楽を披露しながら街道を練り歩く催しなのだが、今年は少し内容が変わることになったのだ。今年の春郷祭では、遠き辺境の地で戦ったハンターの勇姿に花を手向け、讃えるべきだろう。それが、村長や村人たちのたっての希望だった。
そこで今年の『花の騎士パレード』では、村人たちに加え、ハンターたちに参加してもらいたい。彼らの戦闘衣装や装備を生花で飾り付けてもらい、剣舞や武闘の型などを披露しながら、観光客の喝采を浴びる形にしよう、ということになったのだ。
その一方で、例年と変わらないルールもある。美しく花を飾り付け、素晴らしい踊りや奏楽で観客を魅了した者には、『花の騎士王』もしくは『花の姫騎士』の栄冠が与えられるのだ。
「去年は、弦楽器と婚礼衣装に青系の花を飾ったお嬢ちゃんが、『花の姫騎士』だったよなぁ」
「そうそう。その前は、水車小屋の親父が『花の騎士王』だったな。普段のむさ苦しさが嘘みたいに、本物の王様みたいだったもんなぁ」
『花の騎士パレード』の実行委員である村人たちが、これまでのパレードを思い出しながら今年の計画を練っていた。
「ハンターたちに参加してもらうんなら、花摘みから一緒にやってもらうか?」
「そうさなぁ。俺たちが花を用意してもいいが、どうせなら彼らの独創性に任せたほうがいいだろ。鈴なりの小花から大輪まで、色もたくさん、何でも咲いてるからな!」
「おう。パレードのあとは、花の騎士の発表と、ハーブティーでお茶会でもするかな。ハンターたちをもてなさなくちゃいけねぇな」
当日が楽しみだ、と男たちは明るい笑い声をあげた。
花咲き乱れるジェオルジの春を、ハンターたちに楽しんでもらいたい。そのために村人たちは、パレードの準備に向けて大忙しとなるだろう。
リプレイ本文
●花畑においでよ
同盟領内、農業推進地域ジェオルジ――春郷祭の真っ盛りである。
春の風が花の香りを運んでくる。
『花の騎士パレード』が行われる村では、パレードに出場する人々が花畑に広がる彩り豊かな『春の七色』を摘みにやってきていた。村人にまぎれ、七人のハンターたちの姿もある。
青と白の花を飾り付けているのは、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)である。彼女は、花摘みの手伝いに来ている村人に飾り付けのテーマを問われ、それに答えていた。
「戦乙女のイメージなんです」
花が飾り付けらている白のドレスや鎧も、それに合わせたものだ。
その隣で、大輪の華やかな花を鬼面頬の耳元に、つる性の花を長い薄絹に飾っているのは、赤髪の若い男性、静架(ka0387)である。彼もまた、村の幼い少女に花飾りのテーマを訊かれていた。
「青の世界、極東に伝え聞く、軍神をテーマにしようと思います」
それに彼は、愛馬の照日にも飾りを用意し、パレードの順路に的として花籠を吊るせるよう、村人に頼んでいた。
白や淡い色の花を摘んで集めているのは、着物の若い女性、シェリー・ポルトゥマ・ディーラ(ka4756)である。
「拙者は、騎士じゃなくてサムライなんだけど」
元気いっぱいに、近くの村人に話していた。そして、飾り付けの花とは別に、小さめの花をたくさん摘んでいる様子だ。きっと、パレードで使うのだろう。
「花のアレンジってのは、奥が深ェもんよ」
漆黒のマスカレードに、黒に染められた着物をまとった男性、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)が不遜な声を上げた。彼の好きな色は黒、もちろん自身に飾り付ける花も黒色がある品種の花ばかりだ。
その近くで、青い髪に青い瞳の女性、イルム=ローレ・エーレ(ka5113)が摘む花をじっくりと選んでいる。胸元、サッシュ、レースアップブーツにそれぞれ違った種類の花を飾り、武器のエストックにも蔦や大輪の花をまとわせていた。
「ボクのテーマは、『祭典に訪れた者への幾万の感謝と幸福を』さ!」
どうやら、花言葉を調べた上で花を選んでいるようだ。
白銀の髪と天色の瞳に合わせるかのように、白色と寒色系の色の花を摘んでいるのは、リンカ・エルネージュ(ka1840)である。彼女は魔術師だが剣が好きで、騎士にも憧れているようだ。
「練習してきた剣技が役に立つ日が来たー!」
その様子は、とても楽しそうだ。
「パレードか……。せっかくなら、観てくれる人を楽しませてあげたいよね」
夜空のような暗い青のドレスをまとった女性、フィルメリア・クリスティア(ka3380)が言った。彼女は、ドレスの色を考慮して、白や青、そしてアクセントに赤色と黄色の花を飾っている。そして花言葉にも詳しく、気品、可憐、愛らしさなどの意味を持つ花を選んで探しているようだ。
爽やかな風が吹くたび、鮮やかな花びらが舞い、蜜の香りがふわりと舞う。順調に準備を進めるハンターたちを、晴れ渡った気持ちのいい空が見下ろしていた。
さあ、パレードに出掛けよう――。
●花宴の行進
青空に、祝砲が撃ち鳴らされた。
「さあさあ、『花の騎士パレード』の始まりだよ! 今年の『花の騎士王』もしくは『花の姫騎士』の栄誉は、誰に与えられるのか!?」
お祭りの司会進行役を務める村人が、マイクを手に高らかに宣言する。
小太鼓が弾み、笛の音が響く。弦楽器が流れるような旋律を奏で、パレードの先頭に並ぶ村の子供たちが、手を繋いで軽やかにステップを踏み鳴らす。揃いの衣装と花飾りは、花の騎士に付き従う妖精のようだ。
パレードの開始とともに、きん、と研ぎ澄まされた空気の中でユーリが覚醒する。十五歳で金髪の彼女だが、覚醒状態になると、肉体は美しく成長を遂げた大人の女性のものとなり、髪も白銀色に輝き足に届くほどに長く風に靡いた。ユーリは、試作振動刀「オートMURAMASA」とヴァイブレードナイフを両方手にして、軽やかに弧を描いて舞う。その度に、ガントレット「カンパネラ」の小さな鐘が、しゃらんと鳴った。
黄緑と白の花で飾られた乗用馬、照日に跨った静架は、白の花と銀の鈴で飾り付けがされている蒼い弓身の和弓を手にしていた。そして彼は大弓をくるりと回しながら、自身も馬上で軽やかに舞った。本来、静架は愛想を振りまく質ではなく、その自覚もある。だが、観客を楽しませるためには、まず自身が楽しむべきだろうと、持てる技量の粋を尽くす。
「拙者の舞、見せたげる!」
パレードの開始から覚醒状態にあったシェリーが、人々を惹きつけるように声を上げた。彼女は日本刀を納めたまま、体術の型を披露するように軽やかで機敏な体捌きを見せている。紅梅色の着物は春に相応しく、そこに重ねた純白の胴丸、そして飾り付けられた白や淡い色の花々は、彼女が舞うたびに優雅さを演出するが、その動きは武術のものであるため、その勇壮さは失われていない。またシェリーは、この序盤のうちにパレードの行進の空間を見極め、自身の舞刀の安全な距離を確保しているのだ。
そのとき、軽快なリズムと爽やかなメロディーが聴こえてきた。クラシックギターの奏楽だ。暗黒皇帝を自称する彼らしく、黒色を花をふんだんに飾ったデスドクロである。黒色の花に混じる花振りの立派な黄色の花が、豪奢で魅惑的な雰囲気を見事に演出している。馬上で披露されるギターの曲は、この日に相応しい楽曲だ。
「幸願う友よ! 騎士王の誕生に胸を躍らせ喝采を上げよう! 騎士の誕生に夢を見て、賛美の歌を捧げよう!」
観客に向かって歌うように声をかけたのは、イルムだ。舞刀士である彼女は、ゆったりと優雅に、そして細かいステップで奔放に舞いを披露する。花冠はミントで丁寧に編まれたもので、彼女が舞うたびに爽やかな香りを漂わせていた。イルムはエストックを抜き放つと、同じく舞刀士のシェリーに剣を向けて斬りかかった。きぃん、と高い音を立てて剣が合わされ、二人による即興の剣舞に観客たちが、おおおっと喝采を上げる。
リンカの足元では幾重もの魔法陣が展開し、そして収束されて消えた。氷色に染まって輝く髪には、大きな白い花で飾られたティアラ「ホワイトパール」が乗せられている。花でドレスアップされたルーンソードを優雅に振るうと、うっすらと光を通す刀身に浮かぶ薄青いルーン文字が軌跡を描いた。リンカが魔法を発動させると、緑に輝く風が彼女を取り巻いてきらきらと綺麗な光を散りばめた。
奏楽のリズムに合わせて、軽い身のこなしでステップを刻むのは、フィルメリアだ。飾った花を余すことなく魅せ、取り出した鉄扇を力強く流れるように、だが静かに穏やかに舞わせる。フィルメリアがくるりを舞って鉄扇を空高く放り上げると、観客の視線も、わあっ、とそちらに惹き寄せられた。その間に彼女は素早く降魔刀を抜刀し、美しく残像が残るほど軽く振るったあとで落ちてきた鉄扇を受け止め、刀と鉄扇の両方を手に剣舞に、ひらりふわりと清らかで荘厳な舞いへと変化させていった。
●戦いの舞いと花の美しさと
奏でられる音楽に舞う色とりどりの花びら。観客たちは拍手喝采でパレードを迎え、舞いの振り付けを真似て軽いステップで踊り出す者もいる。盛り上がりは、最高潮に達しようとしていた。
ユーリが、鋭く素早く足運びを変化させる。これまでの風のような爽やかさから、強さを感じさせる動きに変化した。一度、ヴァイブレードナイフと振動刀を納め、わずかな静謐のうちに周囲の状況を確認し、深呼吸をして意識の集中を高める。そして、強く地を踏みこんでから振動刀を抜き放った。震える空気を斬り裂き、しなる鞭のように全身が無駄のない動きとなり、音すらも断つ一閃となった。
パレードの途中、建物と建物の間に貼られた綱から吊るされた籠を、静架の大弓から放たれた矢が貫いた。反動で大きく揺らいだ花籠から、色とりどりの花びらが風の中に舞い散る。観客、特に女性たちが、きゃあ、と声を上げて喜んでいた。それにはもうひとつ、理由がある。静架は着物を袖を脱ぎ落とし、その鍛えた上半身を惜しげもなく見せつけていたからだ。若い女性たちが色めき立つのも当然だろう。
舞い踊る人々、楽しげな奏楽の中、イルムとの即興剣舞を終えたシェリーの周りに、一瞬の静寂が満ちる。精神を統一し、深い呼吸をひとつ。そしてシェリーは刀を抜き放ち、くるくると舞いながら日本刀「白狼」を躍動感たっぷりに取り回す。集めておいた小さな花を頭上に放り、ひらりと風に乗って舞った花びらを、一気に間合いを詰めて斬って散らせた。まるで、その場の空気すらも斬り裂くような一閃に、「白狼」が遠吠えを聴かせた。人々も、息を呑んで視線と心を奪われている。
徐々に、楽しい花宴が観客の感激に包まれていく中、馬を自由自在に操るデスドクロは、老いも若いも関係なく素敵なご婦人方に、しゅばっと抜き取った花を一輪、プレゼントする。ときに、正確な狙いで女性の手元にひらりと投げて届け、周囲に喝采が巻き起こった。
「万民を喜ばせてこその暗黒皇帝ってもんよ」
自信たっぷりに、デスドクロは馬頭の向きを変えた。
デスドクロと同じく、イルムも観客に声を掛けていた。独りきりで見物している少女を見つけると軽やかなステップで近付き、手品の要領で何も持っていない手に花を出現させて手渡す。
「一緒に踊り、ボクを彩る一輪の花になってくれないかな?」
優しい声で誘うように手を取り、少女と一緒になって舞い踊り、練り歩いた。
リンカは、花の美しさだけでなく、ハンターとしての力強さで観客を魅了する。精霊の力を借り、ルーンソードに炎を纏わせて剣を振るって舞う。水や雪の精霊を思わせる容姿の彼女の勇ましい姿に、観客は驚きと感激の声を上げた。美しく、強く、優しく、頼もしい――ハンターとしての彼女の資質が伺えるようだ。
演者も観客も関係なく、皆が手に手を取り合って楽しんでいる。フィルメリアは、変化した銀色の髪をフロスティーブルーのグラデーションで輝かせ、氷の紋様を身体に浮かび上がらせていた。覚醒状態になったフィルメリアは、鉄扇をしまって降魔刀のみでの剣舞に移った。足運びや重心移動を意識し、刀の軌跡を交互に重ねていった。そして強く地を踏みしめ、全身の発条を活かしてしなやかに円を描き、横一閃に空間を薙いだ。きりっと場が締まったところで、彼女は静かに降魔刀を納めた。
他のハンターたちも、パレードを終えようとしていた。
ユーリは納刀して一礼し、静架も和弓「蒼天」をくるりと回して身を引いた。デスドクロは、天に向けて炎を放って派手に終わらせる。イルムは一緒に練り歩いた少女に別れを告げ、リンカも観客に緑に光る風を投げかけて舞を終えた。そして、ひらひらと舞い落ちる花吹雪の中、シェリーが静かに「白狼」を鞘に納めた。
拍手が雨音のようにハンターたちに降り注ぐ。村人たちは、パレードの盛り上がりに歓喜し、涙する者もあった。「花の騎士パレード」は、かつてないほどの花宴となったのである。
●花は騎士を讃える
村の広場には、色とりどりの「春の七色」で飾られた舞台が用意されていた。そこには、村人たちやパレードを見物していた観光客が多数集まっている。それもそのはず、ここで、今年の「花の騎士王」または「花の姫騎士」が発表されるのだ。
「さあさあ! 花の精霊は誰の上に舞い降りたのか? 観客の皆さんの喝采、村の実行委員の投票により、決定しました! 選ばれたのは……」
集まった人々が息を呑む。ハンターたちも、期待と緊張と笑顔で、進行役の言葉を待っていた。
「……シェリー・ポルトゥマ・ディーラ嬢! 彼女が今年の、花の姫騎士です!」
わぁっと、広場に喝采が上がる。花籠や花束が放られ、甘く爽やかな香りが花びらとともに舞った。シェリーには次々に花束が手渡され、拍手と喝采が続く中でいつの間にか祝宴のテーブルが準備されていた。
「んー、楽しかった! みんなにも楽しんでもらえたみたいだし、ホント良かった!」
喜びの言葉を求められ、シェリーが言った。ハンターたちも、それぞれに彼女への賛辞と祝いの言葉を口にする。
祝宴のテーブルでは、ジェオルジ産のハーブティーが爽やかであたたかい春の香りを漂わせている。ユーリは村人と自身の営む雑貨喫茶『琥珀の林檎』の話をし、静架は感情を表に出すのが苦手ではあるが、村人には話しかけられると丁寧に言葉を返していた。
「ばっちりきっちり楽しんだか?」
デスドクロは、彼の周りに集まった村人たちに不遜な物言いで語りかけていた。イルムはハーブティーを楽しみながら村人ひとりひとりに、このパレードに参加できたことへの感謝を伝えている。気の回るリンカは、ティーポットを手にハーブティーを注いで回っていた。フィルメリアもまた、ハーブティーを楽しみながら、村人やハンターたちと穏やかに談笑をしていた。
春のジェオルジは、実に華やかで美しい。また、とても穏やかだ。
そして人々は、この華やかで笑顔あふれる花宴で、遠き辺境の地で戦ったハンターの勇姿を讃えることができたのだと、願わずにはいられない――。
同盟領内、農業推進地域ジェオルジ――春郷祭の真っ盛りである。
春の風が花の香りを運んでくる。
『花の騎士パレード』が行われる村では、パレードに出場する人々が花畑に広がる彩り豊かな『春の七色』を摘みにやってきていた。村人にまぎれ、七人のハンターたちの姿もある。
青と白の花を飾り付けているのは、ユーリ・ヴァレンティヌス(ka0239)である。彼女は、花摘みの手伝いに来ている村人に飾り付けのテーマを問われ、それに答えていた。
「戦乙女のイメージなんです」
花が飾り付けらている白のドレスや鎧も、それに合わせたものだ。
その隣で、大輪の華やかな花を鬼面頬の耳元に、つる性の花を長い薄絹に飾っているのは、赤髪の若い男性、静架(ka0387)である。彼もまた、村の幼い少女に花飾りのテーマを訊かれていた。
「青の世界、極東に伝え聞く、軍神をテーマにしようと思います」
それに彼は、愛馬の照日にも飾りを用意し、パレードの順路に的として花籠を吊るせるよう、村人に頼んでいた。
白や淡い色の花を摘んで集めているのは、着物の若い女性、シェリー・ポルトゥマ・ディーラ(ka4756)である。
「拙者は、騎士じゃなくてサムライなんだけど」
元気いっぱいに、近くの村人に話していた。そして、飾り付けの花とは別に、小さめの花をたくさん摘んでいる様子だ。きっと、パレードで使うのだろう。
「花のアレンジってのは、奥が深ェもんよ」
漆黒のマスカレードに、黒に染められた着物をまとった男性、デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013)が不遜な声を上げた。彼の好きな色は黒、もちろん自身に飾り付ける花も黒色がある品種の花ばかりだ。
その近くで、青い髪に青い瞳の女性、イルム=ローレ・エーレ(ka5113)が摘む花をじっくりと選んでいる。胸元、サッシュ、レースアップブーツにそれぞれ違った種類の花を飾り、武器のエストックにも蔦や大輪の花をまとわせていた。
「ボクのテーマは、『祭典に訪れた者への幾万の感謝と幸福を』さ!」
どうやら、花言葉を調べた上で花を選んでいるようだ。
白銀の髪と天色の瞳に合わせるかのように、白色と寒色系の色の花を摘んでいるのは、リンカ・エルネージュ(ka1840)である。彼女は魔術師だが剣が好きで、騎士にも憧れているようだ。
「練習してきた剣技が役に立つ日が来たー!」
その様子は、とても楽しそうだ。
「パレードか……。せっかくなら、観てくれる人を楽しませてあげたいよね」
夜空のような暗い青のドレスをまとった女性、フィルメリア・クリスティア(ka3380)が言った。彼女は、ドレスの色を考慮して、白や青、そしてアクセントに赤色と黄色の花を飾っている。そして花言葉にも詳しく、気品、可憐、愛らしさなどの意味を持つ花を選んで探しているようだ。
爽やかな風が吹くたび、鮮やかな花びらが舞い、蜜の香りがふわりと舞う。順調に準備を進めるハンターたちを、晴れ渡った気持ちのいい空が見下ろしていた。
さあ、パレードに出掛けよう――。
●花宴の行進
青空に、祝砲が撃ち鳴らされた。
「さあさあ、『花の騎士パレード』の始まりだよ! 今年の『花の騎士王』もしくは『花の姫騎士』の栄誉は、誰に与えられるのか!?」
お祭りの司会進行役を務める村人が、マイクを手に高らかに宣言する。
小太鼓が弾み、笛の音が響く。弦楽器が流れるような旋律を奏で、パレードの先頭に並ぶ村の子供たちが、手を繋いで軽やかにステップを踏み鳴らす。揃いの衣装と花飾りは、花の騎士に付き従う妖精のようだ。
パレードの開始とともに、きん、と研ぎ澄まされた空気の中でユーリが覚醒する。十五歳で金髪の彼女だが、覚醒状態になると、肉体は美しく成長を遂げた大人の女性のものとなり、髪も白銀色に輝き足に届くほどに長く風に靡いた。ユーリは、試作振動刀「オートMURAMASA」とヴァイブレードナイフを両方手にして、軽やかに弧を描いて舞う。その度に、ガントレット「カンパネラ」の小さな鐘が、しゃらんと鳴った。
黄緑と白の花で飾られた乗用馬、照日に跨った静架は、白の花と銀の鈴で飾り付けがされている蒼い弓身の和弓を手にしていた。そして彼は大弓をくるりと回しながら、自身も馬上で軽やかに舞った。本来、静架は愛想を振りまく質ではなく、その自覚もある。だが、観客を楽しませるためには、まず自身が楽しむべきだろうと、持てる技量の粋を尽くす。
「拙者の舞、見せたげる!」
パレードの開始から覚醒状態にあったシェリーが、人々を惹きつけるように声を上げた。彼女は日本刀を納めたまま、体術の型を披露するように軽やかで機敏な体捌きを見せている。紅梅色の着物は春に相応しく、そこに重ねた純白の胴丸、そして飾り付けられた白や淡い色の花々は、彼女が舞うたびに優雅さを演出するが、その動きは武術のものであるため、その勇壮さは失われていない。またシェリーは、この序盤のうちにパレードの行進の空間を見極め、自身の舞刀の安全な距離を確保しているのだ。
そのとき、軽快なリズムと爽やかなメロディーが聴こえてきた。クラシックギターの奏楽だ。暗黒皇帝を自称する彼らしく、黒色を花をふんだんに飾ったデスドクロである。黒色の花に混じる花振りの立派な黄色の花が、豪奢で魅惑的な雰囲気を見事に演出している。馬上で披露されるギターの曲は、この日に相応しい楽曲だ。
「幸願う友よ! 騎士王の誕生に胸を躍らせ喝采を上げよう! 騎士の誕生に夢を見て、賛美の歌を捧げよう!」
観客に向かって歌うように声をかけたのは、イルムだ。舞刀士である彼女は、ゆったりと優雅に、そして細かいステップで奔放に舞いを披露する。花冠はミントで丁寧に編まれたもので、彼女が舞うたびに爽やかな香りを漂わせていた。イルムはエストックを抜き放つと、同じく舞刀士のシェリーに剣を向けて斬りかかった。きぃん、と高い音を立てて剣が合わされ、二人による即興の剣舞に観客たちが、おおおっと喝采を上げる。
リンカの足元では幾重もの魔法陣が展開し、そして収束されて消えた。氷色に染まって輝く髪には、大きな白い花で飾られたティアラ「ホワイトパール」が乗せられている。花でドレスアップされたルーンソードを優雅に振るうと、うっすらと光を通す刀身に浮かぶ薄青いルーン文字が軌跡を描いた。リンカが魔法を発動させると、緑に輝く風が彼女を取り巻いてきらきらと綺麗な光を散りばめた。
奏楽のリズムに合わせて、軽い身のこなしでステップを刻むのは、フィルメリアだ。飾った花を余すことなく魅せ、取り出した鉄扇を力強く流れるように、だが静かに穏やかに舞わせる。フィルメリアがくるりを舞って鉄扇を空高く放り上げると、観客の視線も、わあっ、とそちらに惹き寄せられた。その間に彼女は素早く降魔刀を抜刀し、美しく残像が残るほど軽く振るったあとで落ちてきた鉄扇を受け止め、刀と鉄扇の両方を手に剣舞に、ひらりふわりと清らかで荘厳な舞いへと変化させていった。
●戦いの舞いと花の美しさと
奏でられる音楽に舞う色とりどりの花びら。観客たちは拍手喝采でパレードを迎え、舞いの振り付けを真似て軽いステップで踊り出す者もいる。盛り上がりは、最高潮に達しようとしていた。
ユーリが、鋭く素早く足運びを変化させる。これまでの風のような爽やかさから、強さを感じさせる動きに変化した。一度、ヴァイブレードナイフと振動刀を納め、わずかな静謐のうちに周囲の状況を確認し、深呼吸をして意識の集中を高める。そして、強く地を踏みこんでから振動刀を抜き放った。震える空気を斬り裂き、しなる鞭のように全身が無駄のない動きとなり、音すらも断つ一閃となった。
パレードの途中、建物と建物の間に貼られた綱から吊るされた籠を、静架の大弓から放たれた矢が貫いた。反動で大きく揺らいだ花籠から、色とりどりの花びらが風の中に舞い散る。観客、特に女性たちが、きゃあ、と声を上げて喜んでいた。それにはもうひとつ、理由がある。静架は着物を袖を脱ぎ落とし、その鍛えた上半身を惜しげもなく見せつけていたからだ。若い女性たちが色めき立つのも当然だろう。
舞い踊る人々、楽しげな奏楽の中、イルムとの即興剣舞を終えたシェリーの周りに、一瞬の静寂が満ちる。精神を統一し、深い呼吸をひとつ。そしてシェリーは刀を抜き放ち、くるくると舞いながら日本刀「白狼」を躍動感たっぷりに取り回す。集めておいた小さな花を頭上に放り、ひらりと風に乗って舞った花びらを、一気に間合いを詰めて斬って散らせた。まるで、その場の空気すらも斬り裂くような一閃に、「白狼」が遠吠えを聴かせた。人々も、息を呑んで視線と心を奪われている。
徐々に、楽しい花宴が観客の感激に包まれていく中、馬を自由自在に操るデスドクロは、老いも若いも関係なく素敵なご婦人方に、しゅばっと抜き取った花を一輪、プレゼントする。ときに、正確な狙いで女性の手元にひらりと投げて届け、周囲に喝采が巻き起こった。
「万民を喜ばせてこその暗黒皇帝ってもんよ」
自信たっぷりに、デスドクロは馬頭の向きを変えた。
デスドクロと同じく、イルムも観客に声を掛けていた。独りきりで見物している少女を見つけると軽やかなステップで近付き、手品の要領で何も持っていない手に花を出現させて手渡す。
「一緒に踊り、ボクを彩る一輪の花になってくれないかな?」
優しい声で誘うように手を取り、少女と一緒になって舞い踊り、練り歩いた。
リンカは、花の美しさだけでなく、ハンターとしての力強さで観客を魅了する。精霊の力を借り、ルーンソードに炎を纏わせて剣を振るって舞う。水や雪の精霊を思わせる容姿の彼女の勇ましい姿に、観客は驚きと感激の声を上げた。美しく、強く、優しく、頼もしい――ハンターとしての彼女の資質が伺えるようだ。
演者も観客も関係なく、皆が手に手を取り合って楽しんでいる。フィルメリアは、変化した銀色の髪をフロスティーブルーのグラデーションで輝かせ、氷の紋様を身体に浮かび上がらせていた。覚醒状態になったフィルメリアは、鉄扇をしまって降魔刀のみでの剣舞に移った。足運びや重心移動を意識し、刀の軌跡を交互に重ねていった。そして強く地を踏みしめ、全身の発条を活かしてしなやかに円を描き、横一閃に空間を薙いだ。きりっと場が締まったところで、彼女は静かに降魔刀を納めた。
他のハンターたちも、パレードを終えようとしていた。
ユーリは納刀して一礼し、静架も和弓「蒼天」をくるりと回して身を引いた。デスドクロは、天に向けて炎を放って派手に終わらせる。イルムは一緒に練り歩いた少女に別れを告げ、リンカも観客に緑に光る風を投げかけて舞を終えた。そして、ひらひらと舞い落ちる花吹雪の中、シェリーが静かに「白狼」を鞘に納めた。
拍手が雨音のようにハンターたちに降り注ぐ。村人たちは、パレードの盛り上がりに歓喜し、涙する者もあった。「花の騎士パレード」は、かつてないほどの花宴となったのである。
●花は騎士を讃える
村の広場には、色とりどりの「春の七色」で飾られた舞台が用意されていた。そこには、村人たちやパレードを見物していた観光客が多数集まっている。それもそのはず、ここで、今年の「花の騎士王」または「花の姫騎士」が発表されるのだ。
「さあさあ! 花の精霊は誰の上に舞い降りたのか? 観客の皆さんの喝采、村の実行委員の投票により、決定しました! 選ばれたのは……」
集まった人々が息を呑む。ハンターたちも、期待と緊張と笑顔で、進行役の言葉を待っていた。
「……シェリー・ポルトゥマ・ディーラ嬢! 彼女が今年の、花の姫騎士です!」
わぁっと、広場に喝采が上がる。花籠や花束が放られ、甘く爽やかな香りが花びらとともに舞った。シェリーには次々に花束が手渡され、拍手と喝采が続く中でいつの間にか祝宴のテーブルが準備されていた。
「んー、楽しかった! みんなにも楽しんでもらえたみたいだし、ホント良かった!」
喜びの言葉を求められ、シェリーが言った。ハンターたちも、それぞれに彼女への賛辞と祝いの言葉を口にする。
祝宴のテーブルでは、ジェオルジ産のハーブティーが爽やかであたたかい春の香りを漂わせている。ユーリは村人と自身の営む雑貨喫茶『琥珀の林檎』の話をし、静架は感情を表に出すのが苦手ではあるが、村人には話しかけられると丁寧に言葉を返していた。
「ばっちりきっちり楽しんだか?」
デスドクロは、彼の周りに集まった村人たちに不遜な物言いで語りかけていた。イルムはハーブティーを楽しみながら村人ひとりひとりに、このパレードに参加できたことへの感謝を伝えている。気の回るリンカは、ティーポットを手にハーブティーを注いで回っていた。フィルメリアもまた、ハーブティーを楽しみながら、村人やハンターたちと穏やかに談笑をしていた。
春のジェオルジは、実に華やかで美しい。また、とても穏やかだ。
そして人々は、この華やかで笑顔あふれる花宴で、遠き辺境の地で戦ったハンターの勇姿を讃えることができたのだと、願わずにはいられない――。
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雑談卓 デスドクロ・ザ・ブラックホール(ka0013) 人間(リアルブルー)|34才|男性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/06/14 15:16:59 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/14 15:03:23 |