ゲスト
(ka0000)
蛇だと思った? スライムだよ!
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/19 07:30
- 完成日
- 2015/06/27 08:30
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
蛇。
胴体が長く、にょろっとした奇怪な生物。
あるものはその姿に嫌悪感を覚え、あるものはかわいいという。
ぬめっとした身体で地を這い、獲物を丸呑みにする姿は畏怖を感じさせる。
それゆえか、場所によってはカミサマとして崇められることもあるとか……。
ここ、シュガも蛇の精霊を大切にしている街の一つである。
いたるところに蛇の文様が見え、蛇をモチーフにした金細工もつくられていた。
元々は炭鉱として栄えていた町だが、今は果樹と酪農を中心としていた。
炭鉱と繋がるように作られた街のため、周囲に視線を巡らせば穴がかいま見える。
「問題は、倒していいのかどうかだ」
シュガを治める領主は、頭を抱えていた。
廃坑の一つに、大蛇が出ると噂になっていたからだ。
「被害はまだ出ていないのでしょう?」
「わざわざ、廃坑に入らないから、被害がないだけだ。向こうからでてきたら、変わるだろう」
渋い顔で部下の言葉をはねのける。
領主にとって、街人の安全は絶対に守らなければならないという確固たる思いがあった。
部下も思いは同じである……が、問題が一つ。
「蛇……なんですよね」
そう、蛇なのだ。
おかげで精霊ではないかという話も持ち上がり、見に行こうとする者がいる。
自警団へ協力を仰ぎ、件の廃坑入り口は見張らせることにしたのだが。
何かが起こるのも時間の問題である。
「これがムカデや蜥蜴であったなら、話は早かったのだが」
「えぇ、困ったものです」
「一度、自警団に調査させるしかないのぅ」
●
数日後、同じく領主の部屋。
「調査報告が上がってきましたよ」
「聞かせてもらおうか」
自警団は確かに廃坑を這いずりまわっている生物を目撃した。
特徴としては、細長い胴体、半透明の身体、頭がなく全体的にベタベタしている。
「……蛇?」
「蛇ではないですよね、これ」
報告書を読み上げるごとに、疑念は確信に変わる。
特に、分裂する様を見たという報告には二人とも顔色を悪くした。
世の中には、そうやって子孫を残す生物もいると聞くが……これほど大きくはないだろう。
「うーん」
どうしたものかと悩んでいると、外から足音が聞こえてきた。
メイドが慌てて来客を告げる。
話を聞けば、解決の糸口を持ってきそうな来客であった。
「珍しいスライムがいると聞いたのだがのぅ」
くせのある笑い声を出しながら、その男はやってきた。
自称スライム博士のスライと名乗る男は、蛇の概要を聞いてすっぱりと答えた。
「スライムじゃの。歪虚じゃ……」
「歪虚!?」
領主と部下が同時に声を上げた。
スライはくっくっくと笑いながら、続ける。
「左様。身体的特徴、分裂、ぬめりから見ても間違いない」
もっともスライは自警団をだまくらかして、確認した後であったが。
珍しくもスライムはスライム、対処するべき人々は決まっている。
「面白いものが見れた例に、私が依頼をしに行くぞい」
「代行していただけるのでしたら、是非」
「くっく、面白い戦いになりそうじゃな」
廃坑は狭く、二人並べばギチギチである。
ヘビ型スライムは、廃坑の無数の穴を通って現れる。
移動速度は早くないが、逃げられると厄介だ。
「スネークライムと名付けるかのう」
スネークライムとの戦いは、厳しい物になるかもしれない。
蛇。
胴体が長く、にょろっとした奇怪な生物。
あるものはその姿に嫌悪感を覚え、あるものはかわいいという。
ぬめっとした身体で地を這い、獲物を丸呑みにする姿は畏怖を感じさせる。
それゆえか、場所によってはカミサマとして崇められることもあるとか……。
ここ、シュガも蛇の精霊を大切にしている街の一つである。
いたるところに蛇の文様が見え、蛇をモチーフにした金細工もつくられていた。
元々は炭鉱として栄えていた町だが、今は果樹と酪農を中心としていた。
炭鉱と繋がるように作られた街のため、周囲に視線を巡らせば穴がかいま見える。
「問題は、倒していいのかどうかだ」
シュガを治める領主は、頭を抱えていた。
廃坑の一つに、大蛇が出ると噂になっていたからだ。
「被害はまだ出ていないのでしょう?」
「わざわざ、廃坑に入らないから、被害がないだけだ。向こうからでてきたら、変わるだろう」
渋い顔で部下の言葉をはねのける。
領主にとって、街人の安全は絶対に守らなければならないという確固たる思いがあった。
部下も思いは同じである……が、問題が一つ。
「蛇……なんですよね」
そう、蛇なのだ。
おかげで精霊ではないかという話も持ち上がり、見に行こうとする者がいる。
自警団へ協力を仰ぎ、件の廃坑入り口は見張らせることにしたのだが。
何かが起こるのも時間の問題である。
「これがムカデや蜥蜴であったなら、話は早かったのだが」
「えぇ、困ったものです」
「一度、自警団に調査させるしかないのぅ」
●
数日後、同じく領主の部屋。
「調査報告が上がってきましたよ」
「聞かせてもらおうか」
自警団は確かに廃坑を這いずりまわっている生物を目撃した。
特徴としては、細長い胴体、半透明の身体、頭がなく全体的にベタベタしている。
「……蛇?」
「蛇ではないですよね、これ」
報告書を読み上げるごとに、疑念は確信に変わる。
特に、分裂する様を見たという報告には二人とも顔色を悪くした。
世の中には、そうやって子孫を残す生物もいると聞くが……これほど大きくはないだろう。
「うーん」
どうしたものかと悩んでいると、外から足音が聞こえてきた。
メイドが慌てて来客を告げる。
話を聞けば、解決の糸口を持ってきそうな来客であった。
「珍しいスライムがいると聞いたのだがのぅ」
くせのある笑い声を出しながら、その男はやってきた。
自称スライム博士のスライと名乗る男は、蛇の概要を聞いてすっぱりと答えた。
「スライムじゃの。歪虚じゃ……」
「歪虚!?」
領主と部下が同時に声を上げた。
スライはくっくっくと笑いながら、続ける。
「左様。身体的特徴、分裂、ぬめりから見ても間違いない」
もっともスライは自警団をだまくらかして、確認した後であったが。
珍しくもスライムはスライム、対処するべき人々は決まっている。
「面白いものが見れた例に、私が依頼をしに行くぞい」
「代行していただけるのでしたら、是非」
「くっく、面白い戦いになりそうじゃな」
廃坑は狭く、二人並べばギチギチである。
ヘビ型スライムは、廃坑の無数の穴を通って現れる。
移動速度は早くないが、逃げられると厄介だ。
「スネークライムと名付けるかのう」
スネークライムとの戦いは、厳しい物になるかもしれない。
リプレイ本文
●
蛇を信仰するシュガの街。
文様の映える街並みを抜けて、無数ある廃坑の一つへハンターたちは向かっていた。
確かめるようにランタンをかざすCelestine(ka0107)は、ふと後ろを向いて呟く。
「こんなに沢山の身内と一緒の依頼は初めてですわ」
「みんな、セレス様を守るアルよ!」
「いえ、3人を私が護りますわ」
李 香月(ka3948)の言葉に、やんわりとCelestineが返事をするが……。
「お姉ちゃん……心配。だから、頑張る」
Celestineの思いとは裏腹に、新城 楽羅(ka3389)がぐっと小太刀を握る。
「楽羅、肩に力が入ってる」
優しくイレーヌ(ka1372)が楽羅の緊張を解す。
楽羅は、香月と一緒に深呼吸をする。
「これで大丈夫アル」
「呼吸は大事よね。いざというときも、落ち着きが必要だもの」
ふわりと隣で眺めていたアティニュス(ka4735)が、声をかけた。
「それにしても、もぐら叩きとは古風なものを」
もぐら叩きは、古風。
そんな情報を頭に入れつつ、Celestineは他のメンバーに目配せした。
「一緒に頑張りましょう、期待していますわ」
「きみは、大丈夫かしら?」
いざ廃坑に入るというところで、アルラウネ(ka4841)は柏部 狭綾(ka2697)の様子が気にかかった。
仄かに顔を上気させ、「……スライム……」と呟いていたのだ。
「……えと、聞こえてるよね?」
「え、あ」
目をぱちくりさせ、さらに顔を赤くする。
何かを振り払うように、強く首を横に振った。
「……だ、大丈夫」
「なら、いいのだけれど……それにしても」
アルラウネは、ふとした疑問を口にする。
依頼書にあった、かすかな違いなのだが。
「スライムは、ぬめぬめなのか、ベトベトなのか」
「え」
「ん?」
狭綾が再び顔を赤くする。
が、今度は気合を入れるように銃のグリップを強く握りしめて、すぐに落ち着いた。
「……ここで見事スライムを倒してっ、『あんなこと』忘れるのだから……」
強い意志をもって、廃坑の暗闇を睨む。
闇を晴らすように、狭綾はLEDライトのスイッチを入れるのだった。
その面子の中にあって、白一点。
No.0(ka4640)は静かに思う。
(それにしても……俺以外は皆女性だが……)
レイヴェンは前と後ろに視線をやる。
Celestine一行は互いを守りぬこうという意志だろうか。
互いへの気合に満ちていた。
一方の狭綾は何か別のベクトルなのだが。、
(……彼女たちが妙に気合が入っているのは気のせい、かな……)
当たりにしろ、ハズレにしろ悪い方向に出なければいいのだが。
とっとと蛇形のスライムとやらを、仕留めてしまおうと思うのであった。
●
「狭い……うー」
廃坑の道の狭さに楽羅は唸り声を上げる。
「せっかくの物干竿がー……」と置いてきた大太刀に思いを馳せる。
この狭さで大立ち回りは難しい、が、一方の香月は長物を持ってきていた。
「スライムの穴に刺突すればいいアル」
「あー、その方法が」
「二人とも、これで少しは見えてますか?」
会話を続ける楽羅たちへ、後ろからCelestineがランタンを掲げる。
「問題ないよ、セレスお姉ちゃん……っと」
不意に楽羅が身構える。どうやら、スネークライムの出現場所が見えたらしい。
後ろに目配せして、突き進む。
その前にCelestineは、
「これで少しでも楽になればいいのですが。was yea ra accrroad pauwel oz fayra yor !」
香月の猴棍に炎の力を付与し、朱に染め上げた。
最前列を楽羅と香月が、続いてアティニュスとアルラウネが警戒しつつ進む。
狭綾が最後に円環の道へ入ったことを確認し、Celestineが振り返る。
「cYAz doodu nafan granme! これで死角を減らしますわ」
土壁を形成し、死角になりそうな穴をふさぐ。
後ろから狙われてもたまらないのだ。
「……これがそうかしら」
廃材を拾い上げたアルラウネが、目を細める。
狭綾がライトの光を当てると、きらりと光る液体が見えた。
指先で少し触れて、すぐさま拭う。
「気をつけたほうがいいわね」
灼けるような痛みが、指先に奔った。
本当にスネークライムの粘液だとすれば、単なる体当たりも危険になる。
「それはそうと」
粘液のない部分を持ち、アルラウネは穴へ突き入れる。
アティニュスや狭綾もそれに倣い、適当な物体を、気をつけつつねじ込む。
「……」
レイヴェンは、斧状態のアックスブレードを穴の天部へ突き当てて、崩す。
無論、廃坑全体に影響がないように慎重に柄を動かす。
「おや」
不意にレイヴェンが声を漏らす。
同じ違和感をアティニュスも感じたらしい。瞳に警戒の色が宿る。
「やれやれ、塞いでいる最中なのだがな」
イレーヌが呆れた視線を楽羅たちの先へ向ける。
スネークライムだが、数は報告されていなかった。
二匹のスネークライムが同時に出現したのだ。
同時に強酸を口……のような部分から吐き出した。
「……あ」
その矛先は、楽羅に集中していた。直撃こそ避けたものの、露出した部分に灼けつく痛みが奔る。
「だ、大丈夫だから」
心配させないよう声をかけてから、小太刀を手に強く踏み込む。
奇しくも切っ先は空を切るが、その脇を黒い塊が通りぬけ、スネークライムを穿った。
イレーヌのシャドウブリットである。
香月も攻撃を繰り出すが、意外と素早く抜けられる。
二匹が一度、穴へ姿を隠した時、
「ひゃん……!」とアルラウネの悲鳴があがった。
●
「やってくれたわね~」
埋めていた穴から突き出た、三匹目にアルラウネは直撃を受けていた。
出てきた穴をふさぐ様に太刀を振るう。
夜明けの光のような軌跡を残した刃は、スネークライムの逃げ道を潰した。
「いきなり出てくるなんて……」
狭綾は、スネークライムの出現に咄嗟に反応した。驚きとともに、距離をとったのである。
狭い道にひしめく人の間から、その姿を睨めつける。
「今度はそっちが」
驚く番、と引き金を引く。
別の穴を目指していたスネークライムの前面を撃ちぬく。
スネークライムが一瞬、縫い止められた。
「斬り伏せるわよ」
アティニュスが動きの止まったスネークライムに、いの一番に切り込む。
意識がこちらへ向く前に、まずは一太刀。さらに、勢いをそのままに捻りを入れてもう一撃与える。
感触は弱いが、確実に破片を散らす。
「……っ」
だが、その破片から飛び散る液体が皮膚にかかると痛みが走った。
「アイヤー! 絡みつかれたアルウウウ!!」
アティニュスと逆側から肉薄した香月が、絶叫する。
狭い洞窟内では声はよく響く、ぴりりと香月自身も鼓膜が振動した。
「服を溶かすつもりでしょう! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
よくわからないことを叫ぶが、残念なことに服は溶けない。
この液体が厄介なのは、服を溶かさず、浸透し肌を灼くということだ。
「熱を帯びているわけではなさそうだが」
穴の塞がった壁を背に、イレーヌが様子を見る。
スネークライムは、攻撃を受けながらも何とか別の穴へ身をねじ込もうとしていた。
「逃しはしない」
穴ごと潰すようにイレーヌが、シャドウブリットを放つ。
これを避けたスネークライムへ、レイヴェンが追撃する。
「同意だ」とイレーヌ同様穴を突き崩しつつ、返す刀でスネークライムを引きずり出す。
その際に体液を引っ被るが、気にせず構え直した。
中腹へ攻め込んできた一匹に集中している場合ではない。
穴に潜った二体もどこから飛び出してくるかはわからないのだ。
敵に隣接できていないアルラウネやアティニュスらが、そそくさと穴を埋める。
「楽羅ちゃん、そっちへ向かっているわ」
風の音、小石の音……集中すれば空洞内の異音に気がつける。
アティニュスは落ち着いて、楽羅に伝える。
「ひとつほってはー、なんとやらー」
適当な数え歌を歌いながら、楽羅は2つある内の片方を埋める。
崩れないよう、慎重に……そして塞がなかった方から飛び出たスネークライムを迎え撃つ。
「逃さないよ、っと」
攻撃を食らいつつ踏み込んで、刃を入れる。
感触は、やはり浅い……というか頼りなくぶよぶよしていた。
それでもゼリーをすくうスプーンのように、スネークライムを削る。
「これで逃げ場はないよね」
出てきた穴をふさぐ様に、楽羅は立ちふさがる。
構わず突っ込んできたスネークライムを、風刃が横殴りにした。
「余り無茶はしないでくささいね」
楽羅の動きにハラハラしながら、Celestineが告げる。
お姉ちゃんが傷つくくらいなら、という言葉を楽羅は引っ込める。
Celestineの気持ちがわからないほど、鈍感ではないのだ。
「was yea ra yehar viega oz fhyu! 効いてください!」
再度、Celestineは風刃を放つ。
「あ」と狭綾が同時に声を漏らした。
冷気を帯びた弾丸が、狭綾の銃によってスネークライムに届けられたところであった。
粘り気のある粘液が、より硬化しスネークライムの動きを鈍らせたのだ。
そこへCelestineのウィンドスラッシュである。
「まずは一匹ですか」
トドメであることを示すように、スネークライムの体は粘液に崩れ落ちていった。
●
Celestineが今一度、土壁を貼り直す頃、穴の半数以上は埋められていた。
狭綾たち後衛を中心に寄せて、その周囲の穴は完全に塞ぐ。
後は、前後のどちらからスネークライムが出てきても対処しきるだけだ。
「ここから、一気に……だな。とりあえず、アルラウネには」
イレーヌがすっとやわらかな光でアルラウネの傷を癒やす。
灼いた肌が、落ち着いていく。
「助かるわ」と礼を返したアルラウネの視線がぴりっと動く。
同時にレイヴェンも剣タイプに変更した、アックスブレードを構える。
「……増えた……」
間を持ってレイヴェンが告げる。
そう、スネークライムは明らかに一匹増えていた。
アルラウネたちと逆側では、楽羅たちがすでに一匹と戦っている。
では、目の前になぜ、二匹居るのか。
「質量は同じ、あせらず対処するわよ」
「そういうことね」
納得したアルラウネは、円を意識した体捌きでスネークライムを狙う。
一瞬、吐出された酸を腕に受けつつも大きく息を吸い込み、マテリアルを全身に巡らせる。
意識を丹田から全身へ、踏み出した脚へ、切っ先へ向ける。
「浅い。けど……」
くるりと射線を通したところへ、狭綾の弾丸が奔る。
レイターコールドショット、相手は冷気に襲われる。
半端に穴に入ったスネークライムの身体をアルラウネは引きずりだす。
「ゃぁ……!?」
ぬぷりとした感触に思わず声を上げたが、
「……な、何でもない……っ、わよ?」とそのままスネークライムを地面にたたきつけた。
「……終わり」
質量は変わらない。
つまりは、分身を遂げたということだ。
狭綾の攻撃で動きが鈍ったところをアルラウネが引きずり出す。
そこへ、レイヴェンが切り込んだ。
分身は、すでに痛手を負っていたスネークライムの足掻きだった。半分まで減った質量をさらに半分にすれば、四分の一ということだ。ここにアルラウネから始まるレイヴェンまでの連続攻撃。
耐えられるはずがないのである。
「避けられたら、意味ないわね」
紅い剣筋を残しながら、アティニュスは息をつく。
スネークライムの動きは、動物に比べ鈍いとはいえ、避けられることもあった。
反撃の体当たりを最低限の動きでかわし、今度は連撃に結ぶ。
強酸を振りまき、アティニュスの刃から逃げようとするスネークライムを狭綾の弾丸が阻む。
「分裂したのは失敗だったね」
イレーヌが感想を述べ、シャドウブリットでとどめを刺す。
スネークライムが崩れるのを見届けると、すぐさま身体を反転させた。
●
楽羅と香月の戦いも終りへ近づいていた。
「穴に逃げても無駄アル!」
そのための長物だ、といわんばかりに香月はスネークライムを後ろから追い立てる。
次に出てきたところでは、楽羅が待ち構えていた。
「えい」
刃から伝わる感触は、やはり拙く思えるが、確実にスネークライムの体はほそっていた。
一気にたたみかけようと、踏み込みざまに小太刀へとマテリアルを込める。
刃先がスネークライムに吸い込まれた時、楽羅は短く悲鳴を上げた。
「これは……強烈ですね」
遠目で見ていたCelestineも、その様子に目をむく。
まるでプラナリアの如く、頭から裂けて二匹へと再生したのだ。
スネークライムの分裂……なのだろうが、
「アイヤー……」と香月の表情が示す通り、気味が悪い。
「固まっている場合ではありませんわ!」
Celestineは気を取り戻し、詠唱を重ねて風刃を放つ。
香月の猴棍が捉えていたスネークライムが、この一撃で廃坑に沈む。
「お姉ちゃんたちには向かわせないんだから!」
残っていた一匹も、進路を楽羅に阻まれながらあがいていた。
反転したイレーヌがシャドウブリットを放ち、狭綾も冷気を弾丸に帯びさせて追撃。
多勢に無勢な上に、自ら再生力を減じたのだ。
「終わりましたわね」
Celestineがほっと一息つく。
とりあえずは、誰も大事には至らなかったようだ。
●
今一度、廃坑内を周回しスネークライムの全滅を確認する。
アースウォールの効果が消えたところで、廃坑を後にした。
「おつかれ……さま、でした」
体内のマテリアルを活性化させながら、楽羅がいう。
ところどころ灼けた肌が、じわりと癒やされていく。
「楽羅ちゃん。あんまり無茶はしないでくださいね」
そっと頭を撫で付けながら、Celestineがいう。
「……お姉ちゃんたちに怪我、させたくなかったから」
それに、イレーヌねーとアティねーもいたから、と二人を見る。
「頼りにされているということかしら?」
「……」
アティニュスが嬉しそうにいい、イレーヌは気恥ずかしそうに視線を外した。
香月が「妾はどうアル?」とCelestineに聞いて、
「もちろん、頼りにしていますわ」と答えてもらい、満足そうにしていた。
少し離れた所で、レイヴェンは狭綾が確かめるように頷いているのを見た。
「……もう、大丈夫」
自分に言い聞かせるように、狭綾は声に出す。
「終わったわね」
「はい」
アルラウネに声をかけられる。
どうやら何かしら克服出来たらしい、とアルラウネの目には映っていた。
それぞれの思いを胸に、スネークライム討伐は終わりを告げる。
次なるスライムはいかなる存在なのか。
新たなる発見がされる日は……そう遠くないのだろう。
蛇を信仰するシュガの街。
文様の映える街並みを抜けて、無数ある廃坑の一つへハンターたちは向かっていた。
確かめるようにランタンをかざすCelestine(ka0107)は、ふと後ろを向いて呟く。
「こんなに沢山の身内と一緒の依頼は初めてですわ」
「みんな、セレス様を守るアルよ!」
「いえ、3人を私が護りますわ」
李 香月(ka3948)の言葉に、やんわりとCelestineが返事をするが……。
「お姉ちゃん……心配。だから、頑張る」
Celestineの思いとは裏腹に、新城 楽羅(ka3389)がぐっと小太刀を握る。
「楽羅、肩に力が入ってる」
優しくイレーヌ(ka1372)が楽羅の緊張を解す。
楽羅は、香月と一緒に深呼吸をする。
「これで大丈夫アル」
「呼吸は大事よね。いざというときも、落ち着きが必要だもの」
ふわりと隣で眺めていたアティニュス(ka4735)が、声をかけた。
「それにしても、もぐら叩きとは古風なものを」
もぐら叩きは、古風。
そんな情報を頭に入れつつ、Celestineは他のメンバーに目配せした。
「一緒に頑張りましょう、期待していますわ」
「きみは、大丈夫かしら?」
いざ廃坑に入るというところで、アルラウネ(ka4841)は柏部 狭綾(ka2697)の様子が気にかかった。
仄かに顔を上気させ、「……スライム……」と呟いていたのだ。
「……えと、聞こえてるよね?」
「え、あ」
目をぱちくりさせ、さらに顔を赤くする。
何かを振り払うように、強く首を横に振った。
「……だ、大丈夫」
「なら、いいのだけれど……それにしても」
アルラウネは、ふとした疑問を口にする。
依頼書にあった、かすかな違いなのだが。
「スライムは、ぬめぬめなのか、ベトベトなのか」
「え」
「ん?」
狭綾が再び顔を赤くする。
が、今度は気合を入れるように銃のグリップを強く握りしめて、すぐに落ち着いた。
「……ここで見事スライムを倒してっ、『あんなこと』忘れるのだから……」
強い意志をもって、廃坑の暗闇を睨む。
闇を晴らすように、狭綾はLEDライトのスイッチを入れるのだった。
その面子の中にあって、白一点。
No.0(ka4640)は静かに思う。
(それにしても……俺以外は皆女性だが……)
レイヴェンは前と後ろに視線をやる。
Celestine一行は互いを守りぬこうという意志だろうか。
互いへの気合に満ちていた。
一方の狭綾は何か別のベクトルなのだが。、
(……彼女たちが妙に気合が入っているのは気のせい、かな……)
当たりにしろ、ハズレにしろ悪い方向に出なければいいのだが。
とっとと蛇形のスライムとやらを、仕留めてしまおうと思うのであった。
●
「狭い……うー」
廃坑の道の狭さに楽羅は唸り声を上げる。
「せっかくの物干竿がー……」と置いてきた大太刀に思いを馳せる。
この狭さで大立ち回りは難しい、が、一方の香月は長物を持ってきていた。
「スライムの穴に刺突すればいいアル」
「あー、その方法が」
「二人とも、これで少しは見えてますか?」
会話を続ける楽羅たちへ、後ろからCelestineがランタンを掲げる。
「問題ないよ、セレスお姉ちゃん……っと」
不意に楽羅が身構える。どうやら、スネークライムの出現場所が見えたらしい。
後ろに目配せして、突き進む。
その前にCelestineは、
「これで少しでも楽になればいいのですが。was yea ra accrroad pauwel oz fayra yor !」
香月の猴棍に炎の力を付与し、朱に染め上げた。
最前列を楽羅と香月が、続いてアティニュスとアルラウネが警戒しつつ進む。
狭綾が最後に円環の道へ入ったことを確認し、Celestineが振り返る。
「cYAz doodu nafan granme! これで死角を減らしますわ」
土壁を形成し、死角になりそうな穴をふさぐ。
後ろから狙われてもたまらないのだ。
「……これがそうかしら」
廃材を拾い上げたアルラウネが、目を細める。
狭綾がライトの光を当てると、きらりと光る液体が見えた。
指先で少し触れて、すぐさま拭う。
「気をつけたほうがいいわね」
灼けるような痛みが、指先に奔った。
本当にスネークライムの粘液だとすれば、単なる体当たりも危険になる。
「それはそうと」
粘液のない部分を持ち、アルラウネは穴へ突き入れる。
アティニュスや狭綾もそれに倣い、適当な物体を、気をつけつつねじ込む。
「……」
レイヴェンは、斧状態のアックスブレードを穴の天部へ突き当てて、崩す。
無論、廃坑全体に影響がないように慎重に柄を動かす。
「おや」
不意にレイヴェンが声を漏らす。
同じ違和感をアティニュスも感じたらしい。瞳に警戒の色が宿る。
「やれやれ、塞いでいる最中なのだがな」
イレーヌが呆れた視線を楽羅たちの先へ向ける。
スネークライムだが、数は報告されていなかった。
二匹のスネークライムが同時に出現したのだ。
同時に強酸を口……のような部分から吐き出した。
「……あ」
その矛先は、楽羅に集中していた。直撃こそ避けたものの、露出した部分に灼けつく痛みが奔る。
「だ、大丈夫だから」
心配させないよう声をかけてから、小太刀を手に強く踏み込む。
奇しくも切っ先は空を切るが、その脇を黒い塊が通りぬけ、スネークライムを穿った。
イレーヌのシャドウブリットである。
香月も攻撃を繰り出すが、意外と素早く抜けられる。
二匹が一度、穴へ姿を隠した時、
「ひゃん……!」とアルラウネの悲鳴があがった。
●
「やってくれたわね~」
埋めていた穴から突き出た、三匹目にアルラウネは直撃を受けていた。
出てきた穴をふさぐ様に太刀を振るう。
夜明けの光のような軌跡を残した刃は、スネークライムの逃げ道を潰した。
「いきなり出てくるなんて……」
狭綾は、スネークライムの出現に咄嗟に反応した。驚きとともに、距離をとったのである。
狭い道にひしめく人の間から、その姿を睨めつける。
「今度はそっちが」
驚く番、と引き金を引く。
別の穴を目指していたスネークライムの前面を撃ちぬく。
スネークライムが一瞬、縫い止められた。
「斬り伏せるわよ」
アティニュスが動きの止まったスネークライムに、いの一番に切り込む。
意識がこちらへ向く前に、まずは一太刀。さらに、勢いをそのままに捻りを入れてもう一撃与える。
感触は弱いが、確実に破片を散らす。
「……っ」
だが、その破片から飛び散る液体が皮膚にかかると痛みが走った。
「アイヤー! 絡みつかれたアルウウウ!!」
アティニュスと逆側から肉薄した香月が、絶叫する。
狭い洞窟内では声はよく響く、ぴりりと香月自身も鼓膜が振動した。
「服を溶かすつもりでしょう! エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
よくわからないことを叫ぶが、残念なことに服は溶けない。
この液体が厄介なのは、服を溶かさず、浸透し肌を灼くということだ。
「熱を帯びているわけではなさそうだが」
穴の塞がった壁を背に、イレーヌが様子を見る。
スネークライムは、攻撃を受けながらも何とか別の穴へ身をねじ込もうとしていた。
「逃しはしない」
穴ごと潰すようにイレーヌが、シャドウブリットを放つ。
これを避けたスネークライムへ、レイヴェンが追撃する。
「同意だ」とイレーヌ同様穴を突き崩しつつ、返す刀でスネークライムを引きずり出す。
その際に体液を引っ被るが、気にせず構え直した。
中腹へ攻め込んできた一匹に集中している場合ではない。
穴に潜った二体もどこから飛び出してくるかはわからないのだ。
敵に隣接できていないアルラウネやアティニュスらが、そそくさと穴を埋める。
「楽羅ちゃん、そっちへ向かっているわ」
風の音、小石の音……集中すれば空洞内の異音に気がつける。
アティニュスは落ち着いて、楽羅に伝える。
「ひとつほってはー、なんとやらー」
適当な数え歌を歌いながら、楽羅は2つある内の片方を埋める。
崩れないよう、慎重に……そして塞がなかった方から飛び出たスネークライムを迎え撃つ。
「逃さないよ、っと」
攻撃を食らいつつ踏み込んで、刃を入れる。
感触は、やはり浅い……というか頼りなくぶよぶよしていた。
それでもゼリーをすくうスプーンのように、スネークライムを削る。
「これで逃げ場はないよね」
出てきた穴をふさぐ様に、楽羅は立ちふさがる。
構わず突っ込んできたスネークライムを、風刃が横殴りにした。
「余り無茶はしないでくささいね」
楽羅の動きにハラハラしながら、Celestineが告げる。
お姉ちゃんが傷つくくらいなら、という言葉を楽羅は引っ込める。
Celestineの気持ちがわからないほど、鈍感ではないのだ。
「was yea ra yehar viega oz fhyu! 効いてください!」
再度、Celestineは風刃を放つ。
「あ」と狭綾が同時に声を漏らした。
冷気を帯びた弾丸が、狭綾の銃によってスネークライムに届けられたところであった。
粘り気のある粘液が、より硬化しスネークライムの動きを鈍らせたのだ。
そこへCelestineのウィンドスラッシュである。
「まずは一匹ですか」
トドメであることを示すように、スネークライムの体は粘液に崩れ落ちていった。
●
Celestineが今一度、土壁を貼り直す頃、穴の半数以上は埋められていた。
狭綾たち後衛を中心に寄せて、その周囲の穴は完全に塞ぐ。
後は、前後のどちらからスネークライムが出てきても対処しきるだけだ。
「ここから、一気に……だな。とりあえず、アルラウネには」
イレーヌがすっとやわらかな光でアルラウネの傷を癒やす。
灼いた肌が、落ち着いていく。
「助かるわ」と礼を返したアルラウネの視線がぴりっと動く。
同時にレイヴェンも剣タイプに変更した、アックスブレードを構える。
「……増えた……」
間を持ってレイヴェンが告げる。
そう、スネークライムは明らかに一匹増えていた。
アルラウネたちと逆側では、楽羅たちがすでに一匹と戦っている。
では、目の前になぜ、二匹居るのか。
「質量は同じ、あせらず対処するわよ」
「そういうことね」
納得したアルラウネは、円を意識した体捌きでスネークライムを狙う。
一瞬、吐出された酸を腕に受けつつも大きく息を吸い込み、マテリアルを全身に巡らせる。
意識を丹田から全身へ、踏み出した脚へ、切っ先へ向ける。
「浅い。けど……」
くるりと射線を通したところへ、狭綾の弾丸が奔る。
レイターコールドショット、相手は冷気に襲われる。
半端に穴に入ったスネークライムの身体をアルラウネは引きずりだす。
「ゃぁ……!?」
ぬぷりとした感触に思わず声を上げたが、
「……な、何でもない……っ、わよ?」とそのままスネークライムを地面にたたきつけた。
「……終わり」
質量は変わらない。
つまりは、分身を遂げたということだ。
狭綾の攻撃で動きが鈍ったところをアルラウネが引きずり出す。
そこへ、レイヴェンが切り込んだ。
分身は、すでに痛手を負っていたスネークライムの足掻きだった。半分まで減った質量をさらに半分にすれば、四分の一ということだ。ここにアルラウネから始まるレイヴェンまでの連続攻撃。
耐えられるはずがないのである。
「避けられたら、意味ないわね」
紅い剣筋を残しながら、アティニュスは息をつく。
スネークライムの動きは、動物に比べ鈍いとはいえ、避けられることもあった。
反撃の体当たりを最低限の動きでかわし、今度は連撃に結ぶ。
強酸を振りまき、アティニュスの刃から逃げようとするスネークライムを狭綾の弾丸が阻む。
「分裂したのは失敗だったね」
イレーヌが感想を述べ、シャドウブリットでとどめを刺す。
スネークライムが崩れるのを見届けると、すぐさま身体を反転させた。
●
楽羅と香月の戦いも終りへ近づいていた。
「穴に逃げても無駄アル!」
そのための長物だ、といわんばかりに香月はスネークライムを後ろから追い立てる。
次に出てきたところでは、楽羅が待ち構えていた。
「えい」
刃から伝わる感触は、やはり拙く思えるが、確実にスネークライムの体はほそっていた。
一気にたたみかけようと、踏み込みざまに小太刀へとマテリアルを込める。
刃先がスネークライムに吸い込まれた時、楽羅は短く悲鳴を上げた。
「これは……強烈ですね」
遠目で見ていたCelestineも、その様子に目をむく。
まるでプラナリアの如く、頭から裂けて二匹へと再生したのだ。
スネークライムの分裂……なのだろうが、
「アイヤー……」と香月の表情が示す通り、気味が悪い。
「固まっている場合ではありませんわ!」
Celestineは気を取り戻し、詠唱を重ねて風刃を放つ。
香月の猴棍が捉えていたスネークライムが、この一撃で廃坑に沈む。
「お姉ちゃんたちには向かわせないんだから!」
残っていた一匹も、進路を楽羅に阻まれながらあがいていた。
反転したイレーヌがシャドウブリットを放ち、狭綾も冷気を弾丸に帯びさせて追撃。
多勢に無勢な上に、自ら再生力を減じたのだ。
「終わりましたわね」
Celestineがほっと一息つく。
とりあえずは、誰も大事には至らなかったようだ。
●
今一度、廃坑内を周回しスネークライムの全滅を確認する。
アースウォールの効果が消えたところで、廃坑を後にした。
「おつかれ……さま、でした」
体内のマテリアルを活性化させながら、楽羅がいう。
ところどころ灼けた肌が、じわりと癒やされていく。
「楽羅ちゃん。あんまり無茶はしないでくださいね」
そっと頭を撫で付けながら、Celestineがいう。
「……お姉ちゃんたちに怪我、させたくなかったから」
それに、イレーヌねーとアティねーもいたから、と二人を見る。
「頼りにされているということかしら?」
「……」
アティニュスが嬉しそうにいい、イレーヌは気恥ずかしそうに視線を外した。
香月が「妾はどうアル?」とCelestineに聞いて、
「もちろん、頼りにしていますわ」と答えてもらい、満足そうにしていた。
少し離れた所で、レイヴェンは狭綾が確かめるように頷いているのを見た。
「……もう、大丈夫」
自分に言い聞かせるように、狭綾は声に出す。
「終わったわね」
「はい」
アルラウネに声をかけられる。
どうやら何かしら克服出来たらしい、とアルラウネの目には映っていた。
それぞれの思いを胸に、スネークライム討伐は終わりを告げる。
次なるスライムはいかなる存在なのか。
新たなる発見がされる日は……そう遠くないのだろう。
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相談掲示板 Celestine(ka0107) エルフ|21才|女性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/06/18 14:19:37 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/15 22:05:58 |