ゲスト
(ka0000)
【東征】竜狼の剣 ~後門雷刀~
マスター:朝臣あむ

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 難しい
- オプション
-
- 参加費
1,500
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/18 19:00
- 完成日
- 2015/06/26 04:13
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
東方本土の東側に位置する無数の島。その中の1つ、巨大な龍脈を抱える島に暴食の歪虚が集まり始めていた。
「あれがオルクス兵長の言っていた島……あそこで戦闘を……」
そう零した青白い肌に朽ちた軍服を纏う歪虚――アイゼンハンダーは、チラついた記憶を振り払うように眉を寄せると、眼下に見える景色に目を細めた。
リンドヴルムより見える景色がいつもと違う。それもその筈、ここ東方はこれまでいた地方とは趣の違う建物が存在しているのだ。故に彼女にはこの景色が少し珍しく見えているのかもしれない。
「あの建物が目標物ですか?」
島に存在する巨大な建物を指差すと、アイゼンハンダーはリンドヴルムに同乗するフルメットに和風装束の男に問い掛けた。これに先程まで鼻歌を歌っていた男が振り返る。
「イエース。ジャパニーズ様式の“城”デスネ。見た目も高さも、実にビューティフォーな出来デース♪」
「じゃぱにーず様式ですか?」
「ジャパニーズはリアルブルーの日本って国を言いマース」
成程。と頷く彼女を視界に、男は鼻歌を再開させる。そうして城の上空に差し掛かると、聞き取れないほど小さな舌打ちが男の口から零れた。
「……いけ好かないデスネ」
「何か言いましたか?」
「イ~エ、ナンでもアリマセーン。ワンちゃん、アイちゃんはココで降ろしてクダサ~イ♪」
トンッとリンドヴルムの背を叩いて催促すると、飛行する速度が一気に落ちた。これにアイゼンハンダーの腰が上がる。
「貴官はどうするのですか?」
「ミーは城に行きマース♪」
言葉に頷き、アイゼンハンダーは地上へと降下する。それを見届け、男は改めて城を見た。
上空に差し掛かり、先程よりも強く嫌な気配を感じる。
これは城――否、島全体を包む様に充満する憤怒の歪虚の気だ。きっと数刻前まで彼らがこの地で龍脈を汚し、住んでいた者を退け、我が物顔で島を占拠していたという証拠。
きっとおびただしい量の血が流れ、数えきれないほどの人と友人らが死に絶えただろう。けれどそれは十数年前の出来事だ。されど――
「胸クソ悪ぃデスネ~」
アイゼンハンダーがいない今、男は明らかな舌打ちを零した。
そして先程までの軽いノリではない、静かな声音でリンドヴルムに命じる。
「天守閣で降ろして下さい」
●
天守閣で降りた男は、崩れ落ちそうな瓦を見、零れそうな土壁を見て首を傾げた。
「想像以上に綺麗な状態デスネ」
酷く怠慢で気だるげそうな様子を見せながら土壁に手を添える。
触ってみてわかるが、時間の経過で朽ちた部分を除けば、城の状態はかなり良い。きっと城を守る為に闘った者達が、出来る限り傷付けまいとして闘ったのだろう。
「……強かったデスから、ネ」
ふっと零して手を放す。そうして鼻歌交じりに歩き出すと、迷う素振りを見せずに天守閣を下り始めた。
トントンと鼻歌に合せて下りる足が、1つ、また1つと階下へ向かう。そうして2階部分に辿り着くと、彼の足は唐突に止まった。
「ワオ♪」
ひゅ~っと口笛を吹いて見回すのは城の大広間だ。
謁見か何かで使用していたのだろう。上座らしき場所の後ろには重厚な扉が控え、そこへ向かう途中には先の闘いで持ち主を失った武器たちがそこかしこに転がっていた。
男はその中の1つ、扉の前に突き刺さった薙刀に目を留めるとゆっくりとした足取りで歩き始めた。
そして武器の前に来て「あぁ」と声を零す。
「この家紋は……そう……そうでしたネ。ここはユーのポジションでしたネ」
まるで懐かしむような声を零して笑うも一瞬。抜き取った薙刀の柄には、今は亡き滅びた御家の家紋が刻まれている。
子孫が存在するのかも、血を根絶やしにされたのかもわからない。かつての豪傑の一族の印。
彼らはここで憤怒の歪虚と闘い、最後の最後まで刃を振るって自らの城を守ろうとした。その気高き姿は今でも脳裏に焼き付いている。
「ユーは最高のサムライでした……ユーの指導者も……正に『兵どもが夢の跡』デスネ」
男は家紋を掌で包むと、眼前に立ち塞がる禍々しい気を放つ扉に向かった。そして一気に振り降ろす。
バキィンッ。
あまりにあっさり叩き割られた扉の向こうに現れた奇妙な結界の施された石が見える。
石は龍脈を正常に起動させる為に必要不可欠なもの。そして石を囲うように張られた結界は、憤怒の歪虚が龍脈の穢れを強固にするために張ったものだ。つまりこの結界をどうにかすれば龍脈の再起動は成される。
「Hello again?」
扉を叩き割る事で折れた薙刀を振って結界に近付く。そして間近で石を見た所で、男の口から何度目かの舌打ちが漏れた。
「巫子がいれば一発なんですけどネ~……マァ、イーでしょう」
本来であれば歪虚がここを去り、巫子が結界を破って龍脈に語りかければ土地は再起動する。けれどここに巫子が来たと言う情報はない。
あるのは辺境から派遣されたハンターたちが向かっていると言う情報だけだ。
「んふん? ……始まりましたカ?」
城外から賑やかな音が聞こえてくる。どうやらアイゼンハンダーがハンターと対面したらしい。
男はアイゼンハンダーが情緒不安定である事を承知で今作戦に同行させ、その性格を熟知した上で城外に置いてきた。
「アイちゃんはシリアス過ぎマース。ですがおかげで到着しそうデス」
男は一瞬だけ結界に触れると、折れた薙刀を突き入れた。
ガキィィィイイッ!
粉砕される薙刀。その姿を最後まで見届け、男は綻びの生じた結界を指で弾いた。
「こんなもんでショ。あとは――」
零し、後ろを振り返る。
複数の足音と共に現れたハンターの数は計算の範囲内。男はそれらを視界に留めながら、辺りに散らばる武器に目を向けて懐から赤い数珠を取り出した。
「さあショータイムの始まりデース……少しお相手いただきまショー♪」
数珠から切り離した6つの珠が黒い布を纏って武器の上に落ちると、それらは人の形を取って武器を取り上げた。
日本刀に薙刀、中には弓を持つモノもある。
驚くハンターを他所に男もまた近くに落ちていた武器を拾う。それはこの城の剣豪が最期まで使い続けた大太刀。どこまでも鋭く巨大な武器を片手で持ち上げて言う。
「ミーは紫電の刀鬼。ユーたちの言う”災厄の十三魔”の1人デース♪ 龍脈はこの後ろ……ユーたちに救えますか?」
クツリ。そんな笑いを零し、紫電の刀鬼は武器を持つモノたちに命じた。「ハンターを殺せ」と。
東方本土の東側に位置する無数の島。その中の1つ、巨大な龍脈を抱える島に暴食の歪虚が集まり始めていた。
「あれがオルクス兵長の言っていた島……あそこで戦闘を……」
そう零した青白い肌に朽ちた軍服を纏う歪虚――アイゼンハンダーは、チラついた記憶を振り払うように眉を寄せると、眼下に見える景色に目を細めた。
リンドヴルムより見える景色がいつもと違う。それもその筈、ここ東方はこれまでいた地方とは趣の違う建物が存在しているのだ。故に彼女にはこの景色が少し珍しく見えているのかもしれない。
「あの建物が目標物ですか?」
島に存在する巨大な建物を指差すと、アイゼンハンダーはリンドヴルムに同乗するフルメットに和風装束の男に問い掛けた。これに先程まで鼻歌を歌っていた男が振り返る。
「イエース。ジャパニーズ様式の“城”デスネ。見た目も高さも、実にビューティフォーな出来デース♪」
「じゃぱにーず様式ですか?」
「ジャパニーズはリアルブルーの日本って国を言いマース」
成程。と頷く彼女を視界に、男は鼻歌を再開させる。そうして城の上空に差し掛かると、聞き取れないほど小さな舌打ちが男の口から零れた。
「……いけ好かないデスネ」
「何か言いましたか?」
「イ~エ、ナンでもアリマセーン。ワンちゃん、アイちゃんはココで降ろしてクダサ~イ♪」
トンッとリンドヴルムの背を叩いて催促すると、飛行する速度が一気に落ちた。これにアイゼンハンダーの腰が上がる。
「貴官はどうするのですか?」
「ミーは城に行きマース♪」
言葉に頷き、アイゼンハンダーは地上へと降下する。それを見届け、男は改めて城を見た。
上空に差し掛かり、先程よりも強く嫌な気配を感じる。
これは城――否、島全体を包む様に充満する憤怒の歪虚の気だ。きっと数刻前まで彼らがこの地で龍脈を汚し、住んでいた者を退け、我が物顔で島を占拠していたという証拠。
きっとおびただしい量の血が流れ、数えきれないほどの人と友人らが死に絶えただろう。けれどそれは十数年前の出来事だ。されど――
「胸クソ悪ぃデスネ~」
アイゼンハンダーがいない今、男は明らかな舌打ちを零した。
そして先程までの軽いノリではない、静かな声音でリンドヴルムに命じる。
「天守閣で降ろして下さい」
●
天守閣で降りた男は、崩れ落ちそうな瓦を見、零れそうな土壁を見て首を傾げた。
「想像以上に綺麗な状態デスネ」
酷く怠慢で気だるげそうな様子を見せながら土壁に手を添える。
触ってみてわかるが、時間の経過で朽ちた部分を除けば、城の状態はかなり良い。きっと城を守る為に闘った者達が、出来る限り傷付けまいとして闘ったのだろう。
「……強かったデスから、ネ」
ふっと零して手を放す。そうして鼻歌交じりに歩き出すと、迷う素振りを見せずに天守閣を下り始めた。
トントンと鼻歌に合せて下りる足が、1つ、また1つと階下へ向かう。そうして2階部分に辿り着くと、彼の足は唐突に止まった。
「ワオ♪」
ひゅ~っと口笛を吹いて見回すのは城の大広間だ。
謁見か何かで使用していたのだろう。上座らしき場所の後ろには重厚な扉が控え、そこへ向かう途中には先の闘いで持ち主を失った武器たちがそこかしこに転がっていた。
男はその中の1つ、扉の前に突き刺さった薙刀に目を留めるとゆっくりとした足取りで歩き始めた。
そして武器の前に来て「あぁ」と声を零す。
「この家紋は……そう……そうでしたネ。ここはユーのポジションでしたネ」
まるで懐かしむような声を零して笑うも一瞬。抜き取った薙刀の柄には、今は亡き滅びた御家の家紋が刻まれている。
子孫が存在するのかも、血を根絶やしにされたのかもわからない。かつての豪傑の一族の印。
彼らはここで憤怒の歪虚と闘い、最後の最後まで刃を振るって自らの城を守ろうとした。その気高き姿は今でも脳裏に焼き付いている。
「ユーは最高のサムライでした……ユーの指導者も……正に『兵どもが夢の跡』デスネ」
男は家紋を掌で包むと、眼前に立ち塞がる禍々しい気を放つ扉に向かった。そして一気に振り降ろす。
バキィンッ。
あまりにあっさり叩き割られた扉の向こうに現れた奇妙な結界の施された石が見える。
石は龍脈を正常に起動させる為に必要不可欠なもの。そして石を囲うように張られた結界は、憤怒の歪虚が龍脈の穢れを強固にするために張ったものだ。つまりこの結界をどうにかすれば龍脈の再起動は成される。
「Hello again?」
扉を叩き割る事で折れた薙刀を振って結界に近付く。そして間近で石を見た所で、男の口から何度目かの舌打ちが漏れた。
「巫子がいれば一発なんですけどネ~……マァ、イーでしょう」
本来であれば歪虚がここを去り、巫子が結界を破って龍脈に語りかければ土地は再起動する。けれどここに巫子が来たと言う情報はない。
あるのは辺境から派遣されたハンターたちが向かっていると言う情報だけだ。
「んふん? ……始まりましたカ?」
城外から賑やかな音が聞こえてくる。どうやらアイゼンハンダーがハンターと対面したらしい。
男はアイゼンハンダーが情緒不安定である事を承知で今作戦に同行させ、その性格を熟知した上で城外に置いてきた。
「アイちゃんはシリアス過ぎマース。ですがおかげで到着しそうデス」
男は一瞬だけ結界に触れると、折れた薙刀を突き入れた。
ガキィィィイイッ!
粉砕される薙刀。その姿を最後まで見届け、男は綻びの生じた結界を指で弾いた。
「こんなもんでショ。あとは――」
零し、後ろを振り返る。
複数の足音と共に現れたハンターの数は計算の範囲内。男はそれらを視界に留めながら、辺りに散らばる武器に目を向けて懐から赤い数珠を取り出した。
「さあショータイムの始まりデース……少しお相手いただきまショー♪」
数珠から切り離した6つの珠が黒い布を纏って武器の上に落ちると、それらは人の形を取って武器を取り上げた。
日本刀に薙刀、中には弓を持つモノもある。
驚くハンターを他所に男もまた近くに落ちていた武器を拾う。それはこの城の剣豪が最期まで使い続けた大太刀。どこまでも鋭く巨大な武器を片手で持ち上げて言う。
「ミーは紫電の刀鬼。ユーたちの言う”災厄の十三魔”の1人デース♪ 龍脈はこの後ろ……ユーたちに救えますか?」
クツリ。そんな笑いを零し、紫電の刀鬼は武器を持つモノたちに命じた。「ハンターを殺せ」と。
リプレイ本文
響く喧騒、響く剣劇の音。全てを後方に控え、ハンターは城を目指していた。
「エトファリカ……まるで、歴史の教科書のような世界ですね」
目の前に立つ5階層の城。リアルブルーで言う所の日本の城のような佇まいのそれは、正に歴史の教科書からそのまま飛び出してきたかのような世界だ。
「ここでは男性の少し後ろを歩くのが美徳だったりするのでしょうか……うーん?」
戦場に在りながら緊張感のない思考を巡らせる秋桜(ka4378)の知る日本には、今でも昔の城が残っている。けれどそれらは観光地として存在するのみ。このエトファリカに存在する城の様に、今も使われ生きている城はきっとない。
「なんにせよ、ここが新天地っ」
そう心躍らせた時だ。
「あそこが入口だよ、急いで!」
声に秋桜の目が上がった。
そこに映ったのは浴衣だと言うことを気にする様子もなく戦場を駆ける少女――ミィリア(ka2689)だ。
彼女は皆の行く先を示すように最前を進む。その背には身の丈を越える大太刀が1つあるが、彼女の足が衰える気配はない。
此処は東方諸島の1つにして、戦場の真っ只中の島。中央に城を構えるこの地には、歪虚に汚染された巨大な龍脈が眠っている。彼らはこの龍脈を開放すべくこの島に来た。
「――、この先にツィカーデが……っ」
今回島に降り立った冒険者の数は、ここにいる8名の他に十数名存在する。その大半は城の外に出現したツィカーデこと災厄の十三魔『アイゼンハンダー』の相手で残っている。
「任せたのだろう。きっと大丈夫だ」
そうアルファス(ka3312)の肩を叩いたアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)に、彼の目が向かう。
城の外でアイゼンハンダーの相手をする者の中に、アルファスの妹も混じっていた。互いの無事を願い、互いの願いを聞く為に、違う戦場へと向かう兄妹。その胸中はこの場の誰よりも複雑だろう。
けれどアルファスはアデリシアの言葉を素直に受け取り、頷いた。
「そう、だね。ツィカーデは妹に託したんだ。彼女をこれ以上戦わせないために……だから僕は――」
決意を込めて一度伏せた目を開ける。その姿に微かな笑みを浮かべると、アデリシアは城へ到達したミィリアに向かって叫んだ。
「警戒を怠るなよ!」
「わかってるでござる!」
返事と共に開け放たれた扉にロイド・ブラック(ka0408)の眼鏡が光る。
「ふむ、妙に静かだな」
先程城にリンドヴルムが近付くのが見えた。現在その姿は城の上空にないが、何もせずに去ったとも考えにくい。
「城の中に敵が潜む可能性は充分ある訳だね」
度の無い眼鏡をする事で集中力を高めているだけあって洞察力は鋭い。そもそもロイド自身、こうした事に思考を傾けるのは苦ではない。
だからだろう。城へ足を踏み入れた時の違和感も敏感に感じ取った。
「何かあるとすれば上階かな?」
「それはどういう理由でだ?」
「そうですよね。物語とかで出てくる龍脈は大地を伝ってるイメージだから1階にありそうですけど……何で上?」
「強いて言うならば、ここが普通ではないからだろうか。あと……勘か」
アデリシアと日高・明(ka0476)の質問に答えたロイドの口角が上がっている。彼の言うように明確な理由はないのだろう。
もしかすると彼が持つ鋭敏視覚が与える「勘」がこの地の変化を感じ取っているのかもしれない。
「まあ、調べて行けばわかるかな!」
「そうだねー……で、何をすればいいんだっけ?」
「龍脈の解放だ」
「あ、そうそう。龍脈の解放、解放ー♪」
ふふ、と笑うラン・ヴィンダールヴ(ka0109)にナハティガル・ハーレイ(ka0023)の眉が上がる。
どうにもランは緊張感に欠ける。とは言え、アイゼンハンダーが居ても動じない姿、飄々としながらも時折見せる鋭い眼差しは、少なからず激戦を潜り抜けて来たハンターなのだと窺わせる。
「見た目で判断するのは早計だな」
ナハティガルはそう零すと、咥えていた火の無い葉巻を指に挟んだ。と、その時だ。
ゴゴゴゴゴゴッ。
城全体が大きく揺れた。まるで地震でも起きたかのような振動にこの場にいたハンター全員が天井を見上げた。
「この振動――」
「上だ!」
ロイドの勘は正しかった。
「何か変な音もしたよ、急ごう!」
咄嗟の事で消えた「ござる」口調。それだけミィリアは急いでいた。
それは彼女だけではない。振動を感じ取ったアルファスも同様だ。
「……捨てる気はないけど、命を掛けるには充分そうだね」
何かとてつもなく大きなモノがいる。そんな予感がした。
そしてその予感が間違いではなかったと、彼らは直ぐに思い知らされることになる。
●
「さあショータイムの始まりデース……少しお相手いただきまショー♪」
2階に到達したハンターを待ち受けていたのは、フルメットに和風装束の男だ。背に巨大な機械刀を携える姿は異形。
聞いていたどの歪虚とも当て嵌まらない男だが、秋桜だけが「あ」と声を上げた。
「変態戦隊の親玉……」
「変態戦隊?」
何それ。そう零す明に応える間もなく、答えが開示された。
フルメットの男が嵌った数珠の珠が、タイツを纏って人の形を取り始めたのだ。それは全部で6体。それぞれが落ちていた武器を拾い構える姿に、明は「ああ」と納得の声を零した。
「ミーは紫電の刀鬼。ユーたちの言う”災厄の十三魔”の1人デース♪ 龍脈はこの後ろ……ユーたちに救えますか?」
「紫電の刀鬼……災厄の十三魔が2体もこの島に」
僅かなハンターしか訪れていない島に大物が2体。ハッキリ言って分が悪いと言う言葉で片付ける事の出来ない状況だ。
けれど幸いなのは刀鬼の言う通り、彼の後ろに龍脈らしき結界が見える事か。しかもそこには既に亀裂が入り、あとひと押しすれば石を囲う結界は破壊できそうだ。
「さて、君子危うきに近付からず、ではあるのだが……どうした物かな、あの怪物は」
ミィリアの声を拾うロイドは、石と結界、そしてその前に立つ刀鬼を見て呟く。この声にミィリアの手が大太刀に伸びた。
「簡単な相手じゃないけど、外で耐えてくれてる仲間の為にもさっさと終わらせないと……」
アイゼンハンダーと戦う仲間の為、そしてこの地に住まう人々の為。太刀を抜き取ったミィリア。そんな彼女の傍で、杖を握り秋桜は眉を潜めていた。
「……とんでもなく強いとは思いましたが、まさか十三魔だとは……」
この中で唯一刀鬼と面識のある秋桜は、思考を巡らせて聞こえた名を反芻する。
紫電の刀鬼。
確か帝国の先代皇帝失踪時にその場にいたとされる歪虚だ。生い立ちやその後の動きは不明だが、出で立ちや振る舞いを見て思う所がある。
「考えるのは後にしな。災厄の十三魔直々のお出ましだ……気を抜くと速攻で殺られるぞ」
思考を遮る声にハッとする。
「まあ、俺も気になる部分はあるがな」
紫電の刀鬼と言う二つ名を聞いてナハティガルが想像したのは雷属性の技を使うSAMURAI。そしてもう1つは――
「見極めるためにも闘うしかないな」
踏み込む為の脚を伸ばして上体を低くする。長くしなやかな腕が槍を構えるままに滑ると、彼の両の瞳がヘテロクロミアに変化し、動いた。
「ここから結界までの距離は……ん、少し足りないかもしれません。が、撃ちます!」
獰猛な獣のような動きで飛び出したナハティガルに合わせて秋桜の杖が動く。空中で描いた螺旋が炎の渦を巻き、杖を通じて流れる秋桜のマテリアルがそれを拡大してゆく。
「ふぅん?」
刀鬼が1つ声を零した時だ。
渾身の力を込めた炎の弾が放たれる。
轟音を生み、ナハティガルの頭上を抜けて迫る炎に、刀鬼の首が傾げられる。そして何を思ったか、大太刀を伸ばすと僅かな口笛を零して炎を打ち返した。
「なっ!」
刀鬼の力で勢いこそ衰えたものの、炎はハンターたちを目掛けて飛んで来た。
「うわっ、なにそれ! ずるーい!」
「ハッハッハー♪ 開戦直後にミーを狙う方がずっるいデース。まずはライジンジャーの相手をするのが先デスヨ?」
炎を避けながら叫んだランに、ウインクらしき仕草を見せて笑う刀鬼。けれどその姿に隙らしき物は見えない。
それを見てアデリシアは感嘆の声を漏らす。
「成る程。道化を気取るような相手こそ厄介という訳だな……本気ではなさそうなのが救い、か?」
「うーん。有利な相手と戦うのは基本だけどー」
良く見れば雷神社たちの戦闘態勢が整っているではないか。ランはアデリシアの声に同意をしつつも、「やれやれ」と零して隻眼の目を細めた。そして敵同様に戦闘体勢を整えるべく覚醒する。
その姿に明がすかさず反応した。
「ランさん、その耳可愛いですね!」
「そうかい? 実は僕も気に入っているんだよね」
ヘラリと応え、白銀の毛に覆われた耳を動かす。そうすることで何かが変わる訳ではないが、覚醒した事で彼の神経は通常時よりも研ぎ澄まされていた。
気を巡らし、仲間の動きを五感で感じる。その上で目に移ったミィリアの動きを経て獲物が決まった。
「優秀な仲間がいるのはありがたいことだね」
言って構えたのは炎の斧だ。巨大すぎるその武器は、細身なランには不釣り合いに見える。それこそ振り上げたら最後、武器に倒されるのではと思うほど。けれど、彼は見た目以上の力で斧を持ち上げると、直線状で踏み込んで来た刀持ちの歪虚に向かって振り落とした。
「いやー……速いね……?」
斧が落ちる速度より敵の方が速い。その事実に驚くが、目で追えない速さではない。
後方に飛び退き態勢を整える敵に、ランは落ちたばかりの斧を引き上げて一歩を踏み出す。
「うん、追えないほどじゃないね」
ギラリと光る瞳が野性を宿し、敵の一挙一動を見逃さんと動く。そして攻撃に転じようとした時、側面より光が迫り、脇腹に強い痛みを感じた。
「っ、……そうだったね。敵は6体だった」
フッと笑みを零すも一瞬、次の瞬間には彼の斧が轟音を響かせた。
風を起こし、旋風で敵を振り払う姿に、後方で茶化すような口笛を刀鬼が吹く。けれどランはその音を気にも留めず、血塗られた脇腹を撫でると、吹き飛ばされた敵の1体に斧を振り降ろした。
パリキーンッ!
まるで硝子が弾ける音がし、先ほどまで動いていた敵が黒い布きれと武器のみの姿に戻る。これを受け、もう1体の敵に向かいながらランが叫ぶ。
「頭を狙うんだ!」
「だよね。いかにも核っぽい顔だよ!」
弓持ちながら素早い身のこなしで攻撃を避ける敵にミィリアは翻弄されていた。空振りをした刀身を引き戻しながら目の前にある核を見詰める。目の前に弱点がありながら当たらないもどかしさ。
それは雷神社に対峙した者、全てが味わっている悔しさだ。けれどこのまま手を拱いて時間を無駄にするのだけは避けたい。
「武士たるもの勝機を見逃さず、勝機は自ら生み出すべし!」
抱いた覚悟が、覚醒したその身にも影響する。舞い散る桜吹雪の幻影が、ヒラヒラとある筈もない風に揺らされて舞い落ちる。その姿は正に東方の国そのもの。
「ミィリアの……武士の一撃をうけるでござるっ!」
地面を引き摺る様に引き寄せた刃が、勢いを持って敵に迫る。だが、刃は敵の脇を滑って空を掻いてしまった。
一気に近付いた敵との距離。これを相手が見逃す筈もない。
「ミィリア氏!」
腕に矢の直撃を受けたミィリアにロイドが叫ぶ。
「アデリシア嬢、少し離れても?」
彼もまた、雷神社を相手する者の1人だ。鉤爪の雷神社を相手にする彼は、アデリシアの護衛も買って出ている。その彼の手を煩わせるなど言語道断。
「大丈夫……これは秘伝の策」
「秘伝?」
ミィリアの理に目を瞬くも一瞬。矢を受けたのとは別の腕で太刀を持つ彼女を見て理解した。
「ならばこれくらいは許してくれたまえ」
「私も援護しよう」
銃の利点は遠方より支援出来ることだ。
ロイドは長身の銃を構えると、両の手首に現れた仮面文様が淡く光るのを見て引き金に手を掛けた。それに合わせ、アデリシアの杖が光を帯びる。
そして銃弾と光の玉。その双方が複雑に織り交ざって雷神社に迫る。
パァンッ!
弾ける音と共に敵の番えた矢が飛んだ。これにミィリアの刃が動く。
「援護感謝。くらえ秘儀、肉を切らせてなんとやら――でござるっ!」
元々矢を番える為に出来ていた隙と、ロイドとアデリシアが生み出した隙。それらが有益に働いて完全なる空白を生み出した。
「成敗!」
斬ッ。と突き入れた刃が雷神社の核を貫く。すると敵は呆気ないほどすんなりと、黒い布と武器だけとなって床に転げた。
「うわぁぁああッ!」
「!」
突如響く声にミィリアの目が飛ぶ。直後、彼女の足が動いた。
その先に在るのは明だ。
雷神社の凄まじい速さの踏み込みに対応しきれず、吹き飛ばされる様にして剣劇と雷撃の双方を浴びたらしい。とは言え、そこは実戦経験のあるハンターだ。
刃は生身に受けた訳ではなく、自らの剣で受け止めたらしい。お蔭で外傷はないが、若干体は痺れている。
「つぅ、油断した……」
「立てるか? 来るぞ――」
ミィリアより早く彼の前に立ったナハティガルが問う。その声に頷きつつも直ぐに立つ事は出来なかった。
「仕方がない」
言うが早いか、ナハティガルは槍を構えると、床を蹴って急接近する雷神社を迎えた。
「っ、……空っぽの割には重い攻撃じゃねえか」
ギチギチと重なる武器。軋む音と睨み合う視線の中で、雷神社の顔に浮かぶ赤の玉が光った。
これに明が声を上げる。
「雷撃が来ます!」
なんとか立ち上がり「南無三!」と叫んで飛び出す。そしてナハティガルと敵の間に入ると、床に剣を挿して2度目の雷撃を受けた。だが今回は簡単に倒れない。
「おい! 下がれ!」
「……痛ぃ、痛いな」
本来なら避雷針の役目を剣に担わせて自身がノーダメージで切り抜ける筈だった。
だが雷より速く動くことは出来なかったらしい。それでも受けているダメージは先程ほどではない。とは言え、ビリビリと痺れる体があるのは事実。それでも再び武器に手を伸ばし、刀を振るモーションを見せる敵に目だけを向ける。
「守る……ボクは本場のサムライ……本場の太刀振舞を見せてやるんだっ」
「!」
まさか。ナハティガルの目が見開かれた。
それもその筈。雷撃を受けた衝撃で動けないと思っていた明が、迫る敵に向かって衝撃波を放ったのだ。
これには完全に油断していた敵も吹き飛んでしまう。無様に転がり、切れたタイツから雷を覗かせながら立ち上がる姿は手負いの獣だ。
そんな獣に明は膝を折りながら言う。
「……知らなかったかい? サムライの剣ってのは、風も切るんだぜ?」
半分以上は強がりだ。痺れの残る明はハナティガルに縋る視線を送りながら囁く。「後はお願いします」と。
「最後の始末まで成し遂げるのがサムライだろ」
憎まれ口を零しつつも彼を非難する気にはなれない。そもそも彼がいなければ自分が雷撃を受けていたかも知れないのだ。
「――死ねぇッ!」
落ちた刀を拾い駆け込んで来る敵に、渾身の力を込めて槍を突き入れる。
ガギィィンッ!
手と腕、耳に音を響かせながら砕ける核。次いで落ちた黒い布と武器に、ナハティガルが苦い視線を送る。そうしてそれらから視線を外すと、彼は膝を着いたままの明に手を差し伸べた。
「立てるか?」
「あ、はい……まだ指先がチリチリしてますけど、大丈夫です」
そう笑顔で手を取った彼に、無意識に安堵の息が漏れる。それを自覚して眉を潜めると、ナハティガルは自身の槍を握り締めた。
「残るはもう1体……」
それと。と、目を動かした先で、刀鬼が楽しげに大太刀を振り上げる姿が見えた。
●
褐色のナックルを突き入れたロイドは、素早く退く存在に追い討ちを掛けるよう踏み込むと、残る1体の歪虚を倒すべく刃を突き入れた。
「雷撃を扱うお前さんたちだが……耐性はどうかな?」
拳を打つ直前に起きる空気の渦。それが爆発することで彼の武器は大きな攻撃力を得る。だがこの武器自体が属性を持つわけではない。
では何が属性を持つのか。
「――エレクトリックショック、デスか」
ポツリ、零した刀鬼の視界で、雷撃に焼かれて煙を上げる雷神社が見える。だが残念な事に敵は止まらない。
雷神社はロイドと縮まった距離を活用し、鉤爪で彼の胸を抉るべく拳を突く。その動きは他の敵同様に素早い。
「ロイド!」
服を裂かれ、皮膚を裂かれたロイドに、アルファスが三角形の光を召喚。その1つ1つから光の線が向かう。
キュィィ……ッ。
3カ所を同時に攻める攻撃は敵に危機感を与えた。回避し、タイツを裂かれ、核が僅かに傷付く。それでも必死に攻める機会を伺う姿は敵ながら天晴。
「だが、そろそろ消えて貰うとしよう」
アルファスに注意が向いた一瞬の隙を突いて、ロイドが懐に飛び込む。そして顎を抉るパンチを繰り出すと、ナックルに秘められた空気の激が雷神社の核を砕いた。
パン、パン、パン。
広間に響き渡る拍手の音。この音にロイドの眉が寄った。
「……ふざけているな」
嫌悪を含めた声が届いたのかどうかはわからない。
ただ刀鬼は、拍手していた手を下げるとハンターたちを見回した。その姿は雷神社が撃破されたと言うのに何処か楽し気だ。
「ブラボー、ブラボーデ~ス♪ ユーたち、なかなかやりますネー♪」
彼の様子から察するに、雷神社が倒されるのは予想の範囲内だったのだろう。寧ろ敵対させ、倒すところを見ることでハンター側の力量を計っていたのだろう。その証拠に、彼は大太刀を振ることはしていないが、アデリシアから向けられる攻撃は全て回避し封じ込めていた。
「なんなんだ奴はッ」
鞭で動きを封じようと何度も挑戦したのだ。それなのに奴には掠りもしない。
それは共に刀鬼を封じようと動いていた秋桜も同じだった。
そもそも彼女は刀鬼がどれだけ素早いか、先に対峙した事で嫌と言うほどわかっている。だからこそストーンアーマーで動きを遅くすることが出来ないか模索したのだ。
「やはり力尽くで止めるしかないのか」
鞭を振るえば軽々と避け、土砂を放てば効きもしない。これでは素早い動きを封じる術などないではないか。
苛立つアデリシアだったが、力尽くで止めるとなると危険な賭けだ。そもそもハンターの目的は刀鬼を倒す事ではない。
彼らの目的は、刀鬼の後ろにある龍脈の解放なのだ。
「ここで手を拱いていても進まないよ。どこまでいけるかわからないけど、やってみるさだけさ!」
「そうだね、やるしかない!」
無策は身を滅ぼすだけだが、策を持って進めばいける。
そんな明とアルファスの声に結界撃破を第一目標とするミィリアたちも前を見た。2人が刀鬼を惹き付けてくれている間に結界へ近付くつもりなのだろう。
明は刀鬼の右側から、アルファスは左側から突っ込む。その姿に刀鬼の首が動いた。
「正面から直接、デスか……」
カメレオンでもない限り、視界を左右に振ることは不可能。それに加えて刀鬼は結界にも意識を注がなければならない。
それならば必ずこの攻撃で隙が生まれる筈だ。
少なくとも、アルファスや明はそう思っていた。だが――
ブォンッ!
マテリアルの力を借りて急接近したアルファスが、前を見据えたままの刀鬼を視界に機械刀を抜き取る。
そうすることで覗いた黒と白の竜が居合いに似た流れに合わせて空を掻く。そして全体重をその動きに乗せると、刀鬼の胴を引き裂くべく振り切った。そしてそれが悲劇を生む。
「――……っ」
風が唸り、空を切った反動で体が捩れる。そう彼の刃は刀鬼の目の前で空ぶった。しかもその時、寒いものが背筋を駆け上がった。
脳裏を過った妹の顔に祈りが浮かぶ。これで終わりなのか。そんな想いが浮かんだ瞬間、彼の体が側面からの衝撃によって飛んだ。
「ッ、……ぅ」
地面に叩き付けられる痛みと、背に伝う冷たい感触。それが自らの血だと気付いたのはもう少し後のこと。
彼は自身に駆け寄る存在に気付くと、霞む眼差しでその姿を見上げた。
「すまない、咄嗟のことで加減が出来なかった!」
アルファスに巻いた鞭を解いてアデリシアはヒールを施す。
どうやら間一髪の所で彼女が助けてくれたらしい。間に合わなければアルファスは刀鬼の太刀で貫かれていただろう。
そんな死を意識したアルファスの耳に、刀鬼の声が届いた。
「弱い、弱いデース」
アルファスと共に突っ込んで来た明の胴を蹴り上げ、彼の体を床に叩き付ける。
力の差は明らかだった。そもそも動きを目で追うのがやっと。正面から立ち向かうなど今の彼らには無理――そう実感せざる終えない結果がここにある。
そしてその事実は、刀鬼の言葉で現実味を増す。
「この程度で救世主……ちゃんちゃら可笑しくて、ヘソが茶そばを沸かしますネー♪」
「茶そばじゃなくて、茶でござる!」
「オーウ、ソーリーデース♪」
ワザとなのか。ワザと間違えたのか。
そう震えるミィリアだったが、そんな彼女とは別に、今の言葉に反応する者がいた。
(……救えるかと聞いてみたかと思えば、今度は”救世主”、か……やはり俺達を試しているのか……?)
ナハティガルは刀鬼を見た時から考えていた。
彼は「東方の戦士」ではないのかと。
ならば成すべき事は1つ。
「――俺が突っ込む。結界は頼んだぞ」
刀鬼を1人でどうにかできるとは思っていない。それでも申し出たナハティガルに、結界撃破を元より狙っていた面々が頷く。そしてそれを見た彼の足が飛んだ。
黒豹を思わせるしなやかな動きに合わせて、長物の槍が刀鬼の間合いを突く。
「“紫電”だか“ライジングソルジャー”だか知らねえが――その背中の魔導機械を何故使わない? 玩具って訳でも無いんだろう?」
機械剣を抜け。そう言外に語るがきっとこんな事では抜かない。
それは刀鬼の目的がハンターの撃破ではないから、そう思えるからだ。
そして案の定『奴』は刀を抜かなかった。その代り、正面から小細工なしに渾身の激を振り降ろすナハティガルに呆れた声が返る。
「この状況で使えと言う方が酷デスよ。死に急ぎますか? ボーイ」
言葉は実行力を伴う。
降り注ぐ槍を容赦なく叩き潰すべく動かされた太刀。それがナハティガルの胴に触れる寸前、刀鬼は軽やかなステップで後方に退いた。
「ワーオ♪ 銃弾のシャワーデース♪」
飛び退いた先へ先へと撃ち込まれる弾。軌跡を辿ればロイドの姿とぶつかる。
刀鬼はそれらを余裕で避けながら、ロイドを見、彼の傍に先程まであった存在たちを探した。そして結界の近くで見つける。
「フーウ? ノンノン、まだダメデス」
トンッと床を蹴った体が、重力を感じさせない軽やかさで宙返る。本来ならこの時こそが最大の攻撃地点。だがロイドの弾丸は刀鬼には届かない。
彼は体を回転させることで器用に弾を避けると、最後の仕上げにと太刀を床に突き刺して盾とした。
そして足が地を捉えた直後、異変が起きる。
ドゴォォオンッ!
轟音と震動。それらが辺りに響いた瞬間、ミィリアやラン、そして秋桜は思わぬ物を見て目を見開いた。
「刀鬼、……ぅあッ!」
先程までナハティガルの傍にいたと言うのに、何が起きたのか。
刀鬼は結界の傍に戻り、攻撃を見舞おうと動いていたランの前に突然現れた。その動きはまったく見えず、まるで――
「瞬間移動」
ロイドの声にランがハッとした時、彼は激しい蹴りによって床に叩き付けられた。そしてミィリアもまた床に叩き付けられる。
激しい衝撃に息を奪われる2人の元に、刀鬼の次なる手が向かう。だが仲間をみすみす潰す訳にはいかない。
ロイドは先程も当たらなかった銃を構えると、刀鬼に向けて放った。
「アハーン? そんなの当たりませんヨー?」
「練達の者には効かないのもまた、予想済みだ――が、効かなくとも問題ない!」
「ホワイ?」
再び打ち込んだ弾は刀鬼を含め、結界も射程に納めている。つまり刀鬼が良ければ結界も巻き込んで撃破できる。そういう算段だ。
そしてこの攻防を眩む視界の中で見ていたアルファスは、ある物を見付けて眉を潜めた。
「……こんなもの、あったか?」
「焦げ跡?」
治癒を施すアデリシアもまた、アルファスの視線につられて発見した。
床に敷かれた焦げた跡。直線を描き、結界に辿り着くその線は、まるで刀鬼が描いた線のようにも見える。
「ユーたちではミーを倒せまセーン。残念デース♪」
彼の言うように、今の彼らでは刀鬼を倒す事は出来ない。
然して残念でもない声音だが、ナハティガルにはその言葉に引っ掛かる物を感じた。だからつい問うてしまったのだ。
「――お前、この城を護る戦士だったんだろ?」
問いに、ヘルメットで伺えない目が向いた気がした。
ゾクリと背を掛ける悪寒を覚えて確証する。答えは「YES」だ、と。
「……だから人類の裏切者か。俺の眼には、そんな風にも見えないんだがな」
そう思うのは刀鬼の戦い方故だろうか。
殺そうと思えば速攻で殺せる力を持ちながら、彼はハンターを皆殺しにしない。まるで試すように闘い続ける姿はまるで自分らを導こうとしているかのようにも見える。
けれどそんな思いは彼の言葉で打ち消えた。
「……で? 倒すのを諦めマス? そんなハズないですよネ?」
足を左右に大きく開き、上体を下げて拳を構える異様な姿。だがどうしてか隙が見えない。
ここにきて初めて感じた闘気に、全員がゴクリと唾を呑む。
「ユーたちの目的は? ミーを倒すことデスか? それとも――」
答えはとっくに出ている。
動ける全員が、刀鬼のこの問いに動いた。
「イエース、OK♪」
本気で倒すつもりで突っ込んだナハティガルの槍が、刀鬼の拳を術って脇を抜ける。そして腕を絡め取られる様にして投げ飛ばされると、彼の上腕に痛烈な一打が落ちた。けれどこれで終わりではない。
「僕だってまだ動ける!」
「当然、俺もだ」
ランとロイド。その双方がナハティガルに集中した隙を突いて踏み込む。が、寸前の所で刀鬼の足が彼らの行く手を遮った。
吹き飛ばされる激しい痛みに、双方の内臓が傷付く。
口端から血を零し、それでもライフルに手を伸ばすロイドに刀鬼が微かな口笛を零した。だがそこまでだった。
「がっ!」
目を見開き、腹に落ちた足に息を詰める。そして朦朧とする意識の中で、彼は結界に最接近したミィリアを見た。
「この機を逃さず……渾身の衝撃派でござるッ!」
周囲のマテリアルがミィリアの力に呼応したかのように揺れる。そして渾身の一打を結界に叩き込むと、彼女は壊れる結界を視界に目を見開いた。
「――!」
「ミィリアちゃん!」
駆け込む秋桜が崩れるミィリアの体を抱き締める。
そして石に名残惜しげな視線を注ぐ刀鬼を見て叫んだ。
「刀鬼さん! あなたは東方の出身だと聞きました! 今は帝国の暴食の歪虚ですが、憤怒の歪虚が憎いのではありませんか?」
いきなり何を。そう振り返る刀鬼は、真剣な眼差しでこちらを見る秋桜を見た。
「でももう自分では難しいから、憤怒に対抗出来るか私達ハンターの実力を測ったのでは? それなら、密かに私達の導き役になって憤怒の歪虚を倒すまでの共闘も、出来ないのでしょうか……!」
「なっ!」
声はハンターの中から上がった。
無茶苦茶な提案だ、当然の反応だろう。だが言葉を向けられた刀鬼は驚く様子もなく、一歩秋桜に近付くと彼女の顔を興味深げに覗き込んだ。
「ブリリアントなお嬢さんデスね~。デモ、答えはドーデショー……デス」
「え」
「ミーが抜けるとボスにもプリンセスにも迷惑かけてますからネ~、セカンドステージは……って、ワーオ!」
突然、刀鬼が城の窓へ駆け寄った。
そしてそこから見える景色に何かを発見したのだろう。頭を抱えるようにして座り込み零す。
「ミーの移動手段がアリマセーン! アイちゃん、やってくれましたネェ~!!」
「移動手段がない?」
「ならば今のうちに叩くべきか?」
シリアスムードは何処へ消えたのか。この雰囲気にやるせない気持ちを抱くのは、刀鬼に捻じ伏せられた者たちだ。
「……アイツ、次はコロスで、ござる」
ミィリアは戦闘終了直前に叩き込まれた拳でダメージを受けたらしい。もしかしたらどこかの骨が折れているかもしれないが、それ以上に奴の今の態度が許せない。それでもそれをぶつける前に、刀鬼は城の窓に足を掛けてハンターを振り返った。
「デハ、ミーはこれにておさらばデース♪ でもコレは序章。頼みましたヨ――……!」
窓の外から響く「ユーが運んでくれるデスか~♪」と言う楽しげな声を残し、刀鬼は姿を消した。残された場所には静寂と、取り戻した龍脈がある。
今回の闘いはこれで終わった。けれど彼の言うようにこれは「序章」に過ぎない。東方を巡る戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
「エトファリカ……まるで、歴史の教科書のような世界ですね」
目の前に立つ5階層の城。リアルブルーで言う所の日本の城のような佇まいのそれは、正に歴史の教科書からそのまま飛び出してきたかのような世界だ。
「ここでは男性の少し後ろを歩くのが美徳だったりするのでしょうか……うーん?」
戦場に在りながら緊張感のない思考を巡らせる秋桜(ka4378)の知る日本には、今でも昔の城が残っている。けれどそれらは観光地として存在するのみ。このエトファリカに存在する城の様に、今も使われ生きている城はきっとない。
「なんにせよ、ここが新天地っ」
そう心躍らせた時だ。
「あそこが入口だよ、急いで!」
声に秋桜の目が上がった。
そこに映ったのは浴衣だと言うことを気にする様子もなく戦場を駆ける少女――ミィリア(ka2689)だ。
彼女は皆の行く先を示すように最前を進む。その背には身の丈を越える大太刀が1つあるが、彼女の足が衰える気配はない。
此処は東方諸島の1つにして、戦場の真っ只中の島。中央に城を構えるこの地には、歪虚に汚染された巨大な龍脈が眠っている。彼らはこの龍脈を開放すべくこの島に来た。
「――、この先にツィカーデが……っ」
今回島に降り立った冒険者の数は、ここにいる8名の他に十数名存在する。その大半は城の外に出現したツィカーデこと災厄の十三魔『アイゼンハンダー』の相手で残っている。
「任せたのだろう。きっと大丈夫だ」
そうアルファス(ka3312)の肩を叩いたアデリシア=R=エルミナゥ(ka0746)に、彼の目が向かう。
城の外でアイゼンハンダーの相手をする者の中に、アルファスの妹も混じっていた。互いの無事を願い、互いの願いを聞く為に、違う戦場へと向かう兄妹。その胸中はこの場の誰よりも複雑だろう。
けれどアルファスはアデリシアの言葉を素直に受け取り、頷いた。
「そう、だね。ツィカーデは妹に託したんだ。彼女をこれ以上戦わせないために……だから僕は――」
決意を込めて一度伏せた目を開ける。その姿に微かな笑みを浮かべると、アデリシアは城へ到達したミィリアに向かって叫んだ。
「警戒を怠るなよ!」
「わかってるでござる!」
返事と共に開け放たれた扉にロイド・ブラック(ka0408)の眼鏡が光る。
「ふむ、妙に静かだな」
先程城にリンドヴルムが近付くのが見えた。現在その姿は城の上空にないが、何もせずに去ったとも考えにくい。
「城の中に敵が潜む可能性は充分ある訳だね」
度の無い眼鏡をする事で集中力を高めているだけあって洞察力は鋭い。そもそもロイド自身、こうした事に思考を傾けるのは苦ではない。
だからだろう。城へ足を踏み入れた時の違和感も敏感に感じ取った。
「何かあるとすれば上階かな?」
「それはどういう理由でだ?」
「そうですよね。物語とかで出てくる龍脈は大地を伝ってるイメージだから1階にありそうですけど……何で上?」
「強いて言うならば、ここが普通ではないからだろうか。あと……勘か」
アデリシアと日高・明(ka0476)の質問に答えたロイドの口角が上がっている。彼の言うように明確な理由はないのだろう。
もしかすると彼が持つ鋭敏視覚が与える「勘」がこの地の変化を感じ取っているのかもしれない。
「まあ、調べて行けばわかるかな!」
「そうだねー……で、何をすればいいんだっけ?」
「龍脈の解放だ」
「あ、そうそう。龍脈の解放、解放ー♪」
ふふ、と笑うラン・ヴィンダールヴ(ka0109)にナハティガル・ハーレイ(ka0023)の眉が上がる。
どうにもランは緊張感に欠ける。とは言え、アイゼンハンダーが居ても動じない姿、飄々としながらも時折見せる鋭い眼差しは、少なからず激戦を潜り抜けて来たハンターなのだと窺わせる。
「見た目で判断するのは早計だな」
ナハティガルはそう零すと、咥えていた火の無い葉巻を指に挟んだ。と、その時だ。
ゴゴゴゴゴゴッ。
城全体が大きく揺れた。まるで地震でも起きたかのような振動にこの場にいたハンター全員が天井を見上げた。
「この振動――」
「上だ!」
ロイドの勘は正しかった。
「何か変な音もしたよ、急ごう!」
咄嗟の事で消えた「ござる」口調。それだけミィリアは急いでいた。
それは彼女だけではない。振動を感じ取ったアルファスも同様だ。
「……捨てる気はないけど、命を掛けるには充分そうだね」
何かとてつもなく大きなモノがいる。そんな予感がした。
そしてその予感が間違いではなかったと、彼らは直ぐに思い知らされることになる。
●
「さあショータイムの始まりデース……少しお相手いただきまショー♪」
2階に到達したハンターを待ち受けていたのは、フルメットに和風装束の男だ。背に巨大な機械刀を携える姿は異形。
聞いていたどの歪虚とも当て嵌まらない男だが、秋桜だけが「あ」と声を上げた。
「変態戦隊の親玉……」
「変態戦隊?」
何それ。そう零す明に応える間もなく、答えが開示された。
フルメットの男が嵌った数珠の珠が、タイツを纏って人の形を取り始めたのだ。それは全部で6体。それぞれが落ちていた武器を拾い構える姿に、明は「ああ」と納得の声を零した。
「ミーは紫電の刀鬼。ユーたちの言う”災厄の十三魔”の1人デース♪ 龍脈はこの後ろ……ユーたちに救えますか?」
「紫電の刀鬼……災厄の十三魔が2体もこの島に」
僅かなハンターしか訪れていない島に大物が2体。ハッキリ言って分が悪いと言う言葉で片付ける事の出来ない状況だ。
けれど幸いなのは刀鬼の言う通り、彼の後ろに龍脈らしき結界が見える事か。しかもそこには既に亀裂が入り、あとひと押しすれば石を囲う結界は破壊できそうだ。
「さて、君子危うきに近付からず、ではあるのだが……どうした物かな、あの怪物は」
ミィリアの声を拾うロイドは、石と結界、そしてその前に立つ刀鬼を見て呟く。この声にミィリアの手が大太刀に伸びた。
「簡単な相手じゃないけど、外で耐えてくれてる仲間の為にもさっさと終わらせないと……」
アイゼンハンダーと戦う仲間の為、そしてこの地に住まう人々の為。太刀を抜き取ったミィリア。そんな彼女の傍で、杖を握り秋桜は眉を潜めていた。
「……とんでもなく強いとは思いましたが、まさか十三魔だとは……」
この中で唯一刀鬼と面識のある秋桜は、思考を巡らせて聞こえた名を反芻する。
紫電の刀鬼。
確か帝国の先代皇帝失踪時にその場にいたとされる歪虚だ。生い立ちやその後の動きは不明だが、出で立ちや振る舞いを見て思う所がある。
「考えるのは後にしな。災厄の十三魔直々のお出ましだ……気を抜くと速攻で殺られるぞ」
思考を遮る声にハッとする。
「まあ、俺も気になる部分はあるがな」
紫電の刀鬼と言う二つ名を聞いてナハティガルが想像したのは雷属性の技を使うSAMURAI。そしてもう1つは――
「見極めるためにも闘うしかないな」
踏み込む為の脚を伸ばして上体を低くする。長くしなやかな腕が槍を構えるままに滑ると、彼の両の瞳がヘテロクロミアに変化し、動いた。
「ここから結界までの距離は……ん、少し足りないかもしれません。が、撃ちます!」
獰猛な獣のような動きで飛び出したナハティガルに合わせて秋桜の杖が動く。空中で描いた螺旋が炎の渦を巻き、杖を通じて流れる秋桜のマテリアルがそれを拡大してゆく。
「ふぅん?」
刀鬼が1つ声を零した時だ。
渾身の力を込めた炎の弾が放たれる。
轟音を生み、ナハティガルの頭上を抜けて迫る炎に、刀鬼の首が傾げられる。そして何を思ったか、大太刀を伸ばすと僅かな口笛を零して炎を打ち返した。
「なっ!」
刀鬼の力で勢いこそ衰えたものの、炎はハンターたちを目掛けて飛んで来た。
「うわっ、なにそれ! ずるーい!」
「ハッハッハー♪ 開戦直後にミーを狙う方がずっるいデース。まずはライジンジャーの相手をするのが先デスヨ?」
炎を避けながら叫んだランに、ウインクらしき仕草を見せて笑う刀鬼。けれどその姿に隙らしき物は見えない。
それを見てアデリシアは感嘆の声を漏らす。
「成る程。道化を気取るような相手こそ厄介という訳だな……本気ではなさそうなのが救い、か?」
「うーん。有利な相手と戦うのは基本だけどー」
良く見れば雷神社たちの戦闘態勢が整っているではないか。ランはアデリシアの声に同意をしつつも、「やれやれ」と零して隻眼の目を細めた。そして敵同様に戦闘体勢を整えるべく覚醒する。
その姿に明がすかさず反応した。
「ランさん、その耳可愛いですね!」
「そうかい? 実は僕も気に入っているんだよね」
ヘラリと応え、白銀の毛に覆われた耳を動かす。そうすることで何かが変わる訳ではないが、覚醒した事で彼の神経は通常時よりも研ぎ澄まされていた。
気を巡らし、仲間の動きを五感で感じる。その上で目に移ったミィリアの動きを経て獲物が決まった。
「優秀な仲間がいるのはありがたいことだね」
言って構えたのは炎の斧だ。巨大すぎるその武器は、細身なランには不釣り合いに見える。それこそ振り上げたら最後、武器に倒されるのではと思うほど。けれど、彼は見た目以上の力で斧を持ち上げると、直線状で踏み込んで来た刀持ちの歪虚に向かって振り落とした。
「いやー……速いね……?」
斧が落ちる速度より敵の方が速い。その事実に驚くが、目で追えない速さではない。
後方に飛び退き態勢を整える敵に、ランは落ちたばかりの斧を引き上げて一歩を踏み出す。
「うん、追えないほどじゃないね」
ギラリと光る瞳が野性を宿し、敵の一挙一動を見逃さんと動く。そして攻撃に転じようとした時、側面より光が迫り、脇腹に強い痛みを感じた。
「っ、……そうだったね。敵は6体だった」
フッと笑みを零すも一瞬、次の瞬間には彼の斧が轟音を響かせた。
風を起こし、旋風で敵を振り払う姿に、後方で茶化すような口笛を刀鬼が吹く。けれどランはその音を気にも留めず、血塗られた脇腹を撫でると、吹き飛ばされた敵の1体に斧を振り降ろした。
パリキーンッ!
まるで硝子が弾ける音がし、先ほどまで動いていた敵が黒い布きれと武器のみの姿に戻る。これを受け、もう1体の敵に向かいながらランが叫ぶ。
「頭を狙うんだ!」
「だよね。いかにも核っぽい顔だよ!」
弓持ちながら素早い身のこなしで攻撃を避ける敵にミィリアは翻弄されていた。空振りをした刀身を引き戻しながら目の前にある核を見詰める。目の前に弱点がありながら当たらないもどかしさ。
それは雷神社に対峙した者、全てが味わっている悔しさだ。けれどこのまま手を拱いて時間を無駄にするのだけは避けたい。
「武士たるもの勝機を見逃さず、勝機は自ら生み出すべし!」
抱いた覚悟が、覚醒したその身にも影響する。舞い散る桜吹雪の幻影が、ヒラヒラとある筈もない風に揺らされて舞い落ちる。その姿は正に東方の国そのもの。
「ミィリアの……武士の一撃をうけるでござるっ!」
地面を引き摺る様に引き寄せた刃が、勢いを持って敵に迫る。だが、刃は敵の脇を滑って空を掻いてしまった。
一気に近付いた敵との距離。これを相手が見逃す筈もない。
「ミィリア氏!」
腕に矢の直撃を受けたミィリアにロイドが叫ぶ。
「アデリシア嬢、少し離れても?」
彼もまた、雷神社を相手する者の1人だ。鉤爪の雷神社を相手にする彼は、アデリシアの護衛も買って出ている。その彼の手を煩わせるなど言語道断。
「大丈夫……これは秘伝の策」
「秘伝?」
ミィリアの理に目を瞬くも一瞬。矢を受けたのとは別の腕で太刀を持つ彼女を見て理解した。
「ならばこれくらいは許してくれたまえ」
「私も援護しよう」
銃の利点は遠方より支援出来ることだ。
ロイドは長身の銃を構えると、両の手首に現れた仮面文様が淡く光るのを見て引き金に手を掛けた。それに合わせ、アデリシアの杖が光を帯びる。
そして銃弾と光の玉。その双方が複雑に織り交ざって雷神社に迫る。
パァンッ!
弾ける音と共に敵の番えた矢が飛んだ。これにミィリアの刃が動く。
「援護感謝。くらえ秘儀、肉を切らせてなんとやら――でござるっ!」
元々矢を番える為に出来ていた隙と、ロイドとアデリシアが生み出した隙。それらが有益に働いて完全なる空白を生み出した。
「成敗!」
斬ッ。と突き入れた刃が雷神社の核を貫く。すると敵は呆気ないほどすんなりと、黒い布と武器だけとなって床に転げた。
「うわぁぁああッ!」
「!」
突如響く声にミィリアの目が飛ぶ。直後、彼女の足が動いた。
その先に在るのは明だ。
雷神社の凄まじい速さの踏み込みに対応しきれず、吹き飛ばされる様にして剣劇と雷撃の双方を浴びたらしい。とは言え、そこは実戦経験のあるハンターだ。
刃は生身に受けた訳ではなく、自らの剣で受け止めたらしい。お蔭で外傷はないが、若干体は痺れている。
「つぅ、油断した……」
「立てるか? 来るぞ――」
ミィリアより早く彼の前に立ったナハティガルが問う。その声に頷きつつも直ぐに立つ事は出来なかった。
「仕方がない」
言うが早いか、ナハティガルは槍を構えると、床を蹴って急接近する雷神社を迎えた。
「っ、……空っぽの割には重い攻撃じゃねえか」
ギチギチと重なる武器。軋む音と睨み合う視線の中で、雷神社の顔に浮かぶ赤の玉が光った。
これに明が声を上げる。
「雷撃が来ます!」
なんとか立ち上がり「南無三!」と叫んで飛び出す。そしてナハティガルと敵の間に入ると、床に剣を挿して2度目の雷撃を受けた。だが今回は簡単に倒れない。
「おい! 下がれ!」
「……痛ぃ、痛いな」
本来なら避雷針の役目を剣に担わせて自身がノーダメージで切り抜ける筈だった。
だが雷より速く動くことは出来なかったらしい。それでも受けているダメージは先程ほどではない。とは言え、ビリビリと痺れる体があるのは事実。それでも再び武器に手を伸ばし、刀を振るモーションを見せる敵に目だけを向ける。
「守る……ボクは本場のサムライ……本場の太刀振舞を見せてやるんだっ」
「!」
まさか。ナハティガルの目が見開かれた。
それもその筈。雷撃を受けた衝撃で動けないと思っていた明が、迫る敵に向かって衝撃波を放ったのだ。
これには完全に油断していた敵も吹き飛んでしまう。無様に転がり、切れたタイツから雷を覗かせながら立ち上がる姿は手負いの獣だ。
そんな獣に明は膝を折りながら言う。
「……知らなかったかい? サムライの剣ってのは、風も切るんだぜ?」
半分以上は強がりだ。痺れの残る明はハナティガルに縋る視線を送りながら囁く。「後はお願いします」と。
「最後の始末まで成し遂げるのがサムライだろ」
憎まれ口を零しつつも彼を非難する気にはなれない。そもそも彼がいなければ自分が雷撃を受けていたかも知れないのだ。
「――死ねぇッ!」
落ちた刀を拾い駆け込んで来る敵に、渾身の力を込めて槍を突き入れる。
ガギィィンッ!
手と腕、耳に音を響かせながら砕ける核。次いで落ちた黒い布と武器に、ナハティガルが苦い視線を送る。そうしてそれらから視線を外すと、彼は膝を着いたままの明に手を差し伸べた。
「立てるか?」
「あ、はい……まだ指先がチリチリしてますけど、大丈夫です」
そう笑顔で手を取った彼に、無意識に安堵の息が漏れる。それを自覚して眉を潜めると、ナハティガルは自身の槍を握り締めた。
「残るはもう1体……」
それと。と、目を動かした先で、刀鬼が楽しげに大太刀を振り上げる姿が見えた。
●
褐色のナックルを突き入れたロイドは、素早く退く存在に追い討ちを掛けるよう踏み込むと、残る1体の歪虚を倒すべく刃を突き入れた。
「雷撃を扱うお前さんたちだが……耐性はどうかな?」
拳を打つ直前に起きる空気の渦。それが爆発することで彼の武器は大きな攻撃力を得る。だがこの武器自体が属性を持つわけではない。
では何が属性を持つのか。
「――エレクトリックショック、デスか」
ポツリ、零した刀鬼の視界で、雷撃に焼かれて煙を上げる雷神社が見える。だが残念な事に敵は止まらない。
雷神社はロイドと縮まった距離を活用し、鉤爪で彼の胸を抉るべく拳を突く。その動きは他の敵同様に素早い。
「ロイド!」
服を裂かれ、皮膚を裂かれたロイドに、アルファスが三角形の光を召喚。その1つ1つから光の線が向かう。
キュィィ……ッ。
3カ所を同時に攻める攻撃は敵に危機感を与えた。回避し、タイツを裂かれ、核が僅かに傷付く。それでも必死に攻める機会を伺う姿は敵ながら天晴。
「だが、そろそろ消えて貰うとしよう」
アルファスに注意が向いた一瞬の隙を突いて、ロイドが懐に飛び込む。そして顎を抉るパンチを繰り出すと、ナックルに秘められた空気の激が雷神社の核を砕いた。
パン、パン、パン。
広間に響き渡る拍手の音。この音にロイドの眉が寄った。
「……ふざけているな」
嫌悪を含めた声が届いたのかどうかはわからない。
ただ刀鬼は、拍手していた手を下げるとハンターたちを見回した。その姿は雷神社が撃破されたと言うのに何処か楽し気だ。
「ブラボー、ブラボーデ~ス♪ ユーたち、なかなかやりますネー♪」
彼の様子から察するに、雷神社が倒されるのは予想の範囲内だったのだろう。寧ろ敵対させ、倒すところを見ることでハンター側の力量を計っていたのだろう。その証拠に、彼は大太刀を振ることはしていないが、アデリシアから向けられる攻撃は全て回避し封じ込めていた。
「なんなんだ奴はッ」
鞭で動きを封じようと何度も挑戦したのだ。それなのに奴には掠りもしない。
それは共に刀鬼を封じようと動いていた秋桜も同じだった。
そもそも彼女は刀鬼がどれだけ素早いか、先に対峙した事で嫌と言うほどわかっている。だからこそストーンアーマーで動きを遅くすることが出来ないか模索したのだ。
「やはり力尽くで止めるしかないのか」
鞭を振るえば軽々と避け、土砂を放てば効きもしない。これでは素早い動きを封じる術などないではないか。
苛立つアデリシアだったが、力尽くで止めるとなると危険な賭けだ。そもそもハンターの目的は刀鬼を倒す事ではない。
彼らの目的は、刀鬼の後ろにある龍脈の解放なのだ。
「ここで手を拱いていても進まないよ。どこまでいけるかわからないけど、やってみるさだけさ!」
「そうだね、やるしかない!」
無策は身を滅ぼすだけだが、策を持って進めばいける。
そんな明とアルファスの声に結界撃破を第一目標とするミィリアたちも前を見た。2人が刀鬼を惹き付けてくれている間に結界へ近付くつもりなのだろう。
明は刀鬼の右側から、アルファスは左側から突っ込む。その姿に刀鬼の首が動いた。
「正面から直接、デスか……」
カメレオンでもない限り、視界を左右に振ることは不可能。それに加えて刀鬼は結界にも意識を注がなければならない。
それならば必ずこの攻撃で隙が生まれる筈だ。
少なくとも、アルファスや明はそう思っていた。だが――
ブォンッ!
マテリアルの力を借りて急接近したアルファスが、前を見据えたままの刀鬼を視界に機械刀を抜き取る。
そうすることで覗いた黒と白の竜が居合いに似た流れに合わせて空を掻く。そして全体重をその動きに乗せると、刀鬼の胴を引き裂くべく振り切った。そしてそれが悲劇を生む。
「――……っ」
風が唸り、空を切った反動で体が捩れる。そう彼の刃は刀鬼の目の前で空ぶった。しかもその時、寒いものが背筋を駆け上がった。
脳裏を過った妹の顔に祈りが浮かぶ。これで終わりなのか。そんな想いが浮かんだ瞬間、彼の体が側面からの衝撃によって飛んだ。
「ッ、……ぅ」
地面に叩き付けられる痛みと、背に伝う冷たい感触。それが自らの血だと気付いたのはもう少し後のこと。
彼は自身に駆け寄る存在に気付くと、霞む眼差しでその姿を見上げた。
「すまない、咄嗟のことで加減が出来なかった!」
アルファスに巻いた鞭を解いてアデリシアはヒールを施す。
どうやら間一髪の所で彼女が助けてくれたらしい。間に合わなければアルファスは刀鬼の太刀で貫かれていただろう。
そんな死を意識したアルファスの耳に、刀鬼の声が届いた。
「弱い、弱いデース」
アルファスと共に突っ込んで来た明の胴を蹴り上げ、彼の体を床に叩き付ける。
力の差は明らかだった。そもそも動きを目で追うのがやっと。正面から立ち向かうなど今の彼らには無理――そう実感せざる終えない結果がここにある。
そしてその事実は、刀鬼の言葉で現実味を増す。
「この程度で救世主……ちゃんちゃら可笑しくて、ヘソが茶そばを沸かしますネー♪」
「茶そばじゃなくて、茶でござる!」
「オーウ、ソーリーデース♪」
ワザとなのか。ワザと間違えたのか。
そう震えるミィリアだったが、そんな彼女とは別に、今の言葉に反応する者がいた。
(……救えるかと聞いてみたかと思えば、今度は”救世主”、か……やはり俺達を試しているのか……?)
ナハティガルは刀鬼を見た時から考えていた。
彼は「東方の戦士」ではないのかと。
ならば成すべき事は1つ。
「――俺が突っ込む。結界は頼んだぞ」
刀鬼を1人でどうにかできるとは思っていない。それでも申し出たナハティガルに、結界撃破を元より狙っていた面々が頷く。そしてそれを見た彼の足が飛んだ。
黒豹を思わせるしなやかな動きに合わせて、長物の槍が刀鬼の間合いを突く。
「“紫電”だか“ライジングソルジャー”だか知らねえが――その背中の魔導機械を何故使わない? 玩具って訳でも無いんだろう?」
機械剣を抜け。そう言外に語るがきっとこんな事では抜かない。
それは刀鬼の目的がハンターの撃破ではないから、そう思えるからだ。
そして案の定『奴』は刀を抜かなかった。その代り、正面から小細工なしに渾身の激を振り降ろすナハティガルに呆れた声が返る。
「この状況で使えと言う方が酷デスよ。死に急ぎますか? ボーイ」
言葉は実行力を伴う。
降り注ぐ槍を容赦なく叩き潰すべく動かされた太刀。それがナハティガルの胴に触れる寸前、刀鬼は軽やかなステップで後方に退いた。
「ワーオ♪ 銃弾のシャワーデース♪」
飛び退いた先へ先へと撃ち込まれる弾。軌跡を辿ればロイドの姿とぶつかる。
刀鬼はそれらを余裕で避けながら、ロイドを見、彼の傍に先程まであった存在たちを探した。そして結界の近くで見つける。
「フーウ? ノンノン、まだダメデス」
トンッと床を蹴った体が、重力を感じさせない軽やかさで宙返る。本来ならこの時こそが最大の攻撃地点。だがロイドの弾丸は刀鬼には届かない。
彼は体を回転させることで器用に弾を避けると、最後の仕上げにと太刀を床に突き刺して盾とした。
そして足が地を捉えた直後、異変が起きる。
ドゴォォオンッ!
轟音と震動。それらが辺りに響いた瞬間、ミィリアやラン、そして秋桜は思わぬ物を見て目を見開いた。
「刀鬼、……ぅあッ!」
先程までナハティガルの傍にいたと言うのに、何が起きたのか。
刀鬼は結界の傍に戻り、攻撃を見舞おうと動いていたランの前に突然現れた。その動きはまったく見えず、まるで――
「瞬間移動」
ロイドの声にランがハッとした時、彼は激しい蹴りによって床に叩き付けられた。そしてミィリアもまた床に叩き付けられる。
激しい衝撃に息を奪われる2人の元に、刀鬼の次なる手が向かう。だが仲間をみすみす潰す訳にはいかない。
ロイドは先程も当たらなかった銃を構えると、刀鬼に向けて放った。
「アハーン? そんなの当たりませんヨー?」
「練達の者には効かないのもまた、予想済みだ――が、効かなくとも問題ない!」
「ホワイ?」
再び打ち込んだ弾は刀鬼を含め、結界も射程に納めている。つまり刀鬼が良ければ結界も巻き込んで撃破できる。そういう算段だ。
そしてこの攻防を眩む視界の中で見ていたアルファスは、ある物を見付けて眉を潜めた。
「……こんなもの、あったか?」
「焦げ跡?」
治癒を施すアデリシアもまた、アルファスの視線につられて発見した。
床に敷かれた焦げた跡。直線を描き、結界に辿り着くその線は、まるで刀鬼が描いた線のようにも見える。
「ユーたちではミーを倒せまセーン。残念デース♪」
彼の言うように、今の彼らでは刀鬼を倒す事は出来ない。
然して残念でもない声音だが、ナハティガルにはその言葉に引っ掛かる物を感じた。だからつい問うてしまったのだ。
「――お前、この城を護る戦士だったんだろ?」
問いに、ヘルメットで伺えない目が向いた気がした。
ゾクリと背を掛ける悪寒を覚えて確証する。答えは「YES」だ、と。
「……だから人類の裏切者か。俺の眼には、そんな風にも見えないんだがな」
そう思うのは刀鬼の戦い方故だろうか。
殺そうと思えば速攻で殺せる力を持ちながら、彼はハンターを皆殺しにしない。まるで試すように闘い続ける姿はまるで自分らを導こうとしているかのようにも見える。
けれどそんな思いは彼の言葉で打ち消えた。
「……で? 倒すのを諦めマス? そんなハズないですよネ?」
足を左右に大きく開き、上体を下げて拳を構える異様な姿。だがどうしてか隙が見えない。
ここにきて初めて感じた闘気に、全員がゴクリと唾を呑む。
「ユーたちの目的は? ミーを倒すことデスか? それとも――」
答えはとっくに出ている。
動ける全員が、刀鬼のこの問いに動いた。
「イエース、OK♪」
本気で倒すつもりで突っ込んだナハティガルの槍が、刀鬼の拳を術って脇を抜ける。そして腕を絡め取られる様にして投げ飛ばされると、彼の上腕に痛烈な一打が落ちた。けれどこれで終わりではない。
「僕だってまだ動ける!」
「当然、俺もだ」
ランとロイド。その双方がナハティガルに集中した隙を突いて踏み込む。が、寸前の所で刀鬼の足が彼らの行く手を遮った。
吹き飛ばされる激しい痛みに、双方の内臓が傷付く。
口端から血を零し、それでもライフルに手を伸ばすロイドに刀鬼が微かな口笛を零した。だがそこまでだった。
「がっ!」
目を見開き、腹に落ちた足に息を詰める。そして朦朧とする意識の中で、彼は結界に最接近したミィリアを見た。
「この機を逃さず……渾身の衝撃派でござるッ!」
周囲のマテリアルがミィリアの力に呼応したかのように揺れる。そして渾身の一打を結界に叩き込むと、彼女は壊れる結界を視界に目を見開いた。
「――!」
「ミィリアちゃん!」
駆け込む秋桜が崩れるミィリアの体を抱き締める。
そして石に名残惜しげな視線を注ぐ刀鬼を見て叫んだ。
「刀鬼さん! あなたは東方の出身だと聞きました! 今は帝国の暴食の歪虚ですが、憤怒の歪虚が憎いのではありませんか?」
いきなり何を。そう振り返る刀鬼は、真剣な眼差しでこちらを見る秋桜を見た。
「でももう自分では難しいから、憤怒に対抗出来るか私達ハンターの実力を測ったのでは? それなら、密かに私達の導き役になって憤怒の歪虚を倒すまでの共闘も、出来ないのでしょうか……!」
「なっ!」
声はハンターの中から上がった。
無茶苦茶な提案だ、当然の反応だろう。だが言葉を向けられた刀鬼は驚く様子もなく、一歩秋桜に近付くと彼女の顔を興味深げに覗き込んだ。
「ブリリアントなお嬢さんデスね~。デモ、答えはドーデショー……デス」
「え」
「ミーが抜けるとボスにもプリンセスにも迷惑かけてますからネ~、セカンドステージは……って、ワーオ!」
突然、刀鬼が城の窓へ駆け寄った。
そしてそこから見える景色に何かを発見したのだろう。頭を抱えるようにして座り込み零す。
「ミーの移動手段がアリマセーン! アイちゃん、やってくれましたネェ~!!」
「移動手段がない?」
「ならば今のうちに叩くべきか?」
シリアスムードは何処へ消えたのか。この雰囲気にやるせない気持ちを抱くのは、刀鬼に捻じ伏せられた者たちだ。
「……アイツ、次はコロスで、ござる」
ミィリアは戦闘終了直前に叩き込まれた拳でダメージを受けたらしい。もしかしたらどこかの骨が折れているかもしれないが、それ以上に奴の今の態度が許せない。それでもそれをぶつける前に、刀鬼は城の窓に足を掛けてハンターを振り返った。
「デハ、ミーはこれにておさらばデース♪ でもコレは序章。頼みましたヨ――……!」
窓の外から響く「ユーが運んでくれるデスか~♪」と言う楽しげな声を残し、刀鬼は姿を消した。残された場所には静寂と、取り戻した龍脈がある。
今回の闘いはこれで終わった。けれど彼の言うようにこれは「序章」に過ぎない。東方を巡る戦いは、まだ始まったばかりなのだ。
依頼結果
依頼成功度 | 成功 |
---|
面白かった! | 9人 |
---|
ポイントがありませんので、拍手できません
現在のあなたのポイント:-753 ※拍手1回につき1ポイントを消費します。
あなたの拍手がマスターの活力につながります。
このリプレイが面白かったと感じた人は拍手してみましょう!
MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
![]() |
作戦相談! ミィリア(ka2689) ドワーフ|12才|女性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2015/06/18 03:31:22 |
|
![]() |
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/14 17:55:12 |