ゲスト
(ka0000)
生きる理由、死ぬ理由
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2014/07/14 22:00
- 完成日
- 2014/07/22 00:35
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
どうして、生きていなくちゃいけないの?
大切な人もいなくなった、守りたい家族もいなくなった。
僕だけが1人生き残って、どうして生きていなくちゃいけないの?
※※
絶望は突然やってくるって本当だった。
あの日までは、普通に暮らしていたのに……。
決して裕福な暮らしではなかったけど、貧しいなりに楽しく生きていた。
お父さんがいて、お母さんがいて、妹がいて……。
それだけで、僕は良かったのに。
※※※
「シンはどうしている?」
集落の長が複雑そうな表情で、若い男性に声をかける。
「相変わらずですよ。ぼんやりと空を見て、何も話そうとしないし、答えようとはしない」
「……目の前で家族を失ったのだから当然と言えば当然か」
シンと呼ばれた少年は、家族で森に行った時、雑魔に遭遇して家族を殺されてしまった。
「父親と母親が自分らを盾にして、あの子を守ったというのに……あの子は、生きる気力を失ってしまった」
「それに、森にはまだ雑魔が残っているんですよね。討伐依頼を出したが、いつになったら来るのやら……」
「た、大変です!」
2人が話している時、ひどく慌てた表情で女性が部屋に入ってくる。
「どうした?」
「シンが、いなくなったんです!」
「なっ……」
女性の言葉を聞き、2人は青ざめる。
生きる気力を失った少年が姿を消した。
そんな子供が、どんな行動に出るか、大人には容易に想像する事が出来たから――……。
リプレイ本文
●子供探しと雑魔退治のために
雑魔退治の依頼を受けて、ハンター達が集落に向かうと騒ぎが起こっている事に気づいた。
「なにやら騒がしい様子、雑魔以外の事でも起こっているのでしょうか?」
フェリ・ボーランジェ(ka2079)は緊迫感に包まれた集落を見つめながら呟く。
「討伐対象は雑魔1匹、油断なく掛かれば苦労はないかな?」
イスカ・ティフィニア(ka2222)は渡された資料を見つめ、小さなため息を漏らす。
「とりあえず、雑魔の情報を聞いて、ちゃちゃっと終わらせようよ」
フラン・レンナルツ(ka0170)がハンター達に話しかけ、集落の中に足を進めた。
それから簡単な事情を聞き、ハンター達は2つの班に分かれて行動する作戦を立てた。
情報収集班・ラピス(ka1333)、フェリ・ボーランジェ(ka2079)、エルティア・ホープナー(ka0727)の3名。
探索先行班・シュタール・フラム(ka0024)、ガイウス=フォン=フェルニアス(ka2612)、鬼灯 玲那(ka1679)、イスカ、フランの5名。
「どこで雑魔を目撃したか、その場所を判る範囲で構わないので教えてくれ」
シュタールは集落に住む男性に聞き、短い時間ながらも情報を聞きだそうとしている。
「情報収集もいいが、こうしている間にも少年に危険が迫っておるのじゃ、早々に出立すべきではないか?」
ガイウスが先行班のハンター達に言い放ち、情報収集は残る3名に任せ、一足先に森の中へと入って行ったのだった。
「それじゃ、ここに平穏を取り戻すためにも情報をお願いします」
フェリは集落の住人達に向かって話しかける。
(今はまだこうして小さな戦いをこなしていくしかないけれど、いずれは大元と戦えるぐらいの……いいえ、根元から断てるぐらいの力をつけなきゃね)
ラピスは心の中で呟きながら、集落の住民達が話す情報を頭の中に叩きこんでいく。
「雑魔については姿、行動、過去に目撃されたエリアを教えて頂ける?」
エルティアは表情を変える事なく、集落の住人に問い掛ける。
「あと、行方不明の少年の容姿、性格、家族の情報――……家族が殺された場所、今回の事に関わっていそうな事、すべてを教えてもらうわ」
「そうだな。失敗出来ないからこそ、急ぐばかりでもないはず。むしろ子供の安全のためにも得られる情報はすべて得ておきたいな」
エルティアの言葉に、ラピスが頷きながら呟く。
「ゆっくりしている時間はありません、雑魔の事、少年の事……すべてお話下さい」
フェリの言葉を聞き、住人達は自分達が知りえる情報のすべてをハンターに託した。
一方、先行して森に入って行ったハンター達は…。
「……さすがにこれだけ広いと、雑魔と子供探しってのは少し厄介だな」
周りを警戒しながら、シュタールが苦笑気味に呟く。
「確か雑魔は犬型って住人が言ってたよね、犬狩り……人相手なら腐るほどやってきたんだけどな」
小さなため息を漏らしつつ、フランが呟く。
「そういえば、腹ごなしをしてこなかったな。干し肉でも齧りながら歩くか、もしかしたら干し肉の匂いにつられて雑魔登場、なんて展開もありえるかもしれないからね」
軽口を叩くように、フランは持参してきた干し肉を齧りながら捜索を再開する。
「雑魔の目撃場所や被害場所、少しだけど聞いて来たよ。詳しい事は集落に残った人達の情報収集に頼るとして、闇雲に動くより被害があった所を回ってみた方がいいかな?」
鬼灯は住人から渡された地図を見ながら、首を傾げて呟く。
「情報収集班から連絡が入った……森の奥にある湖を餌場にしているらしいよ」
魔導短伝話で情報収集班と連絡を取りながら、イスカが先行班のハンター達に話しかける。
「やっぱり餌場は水辺付近って事か、私の考えとほぼ同じだね」
イスカの言葉を聞き、鬼灯も頷く。
「確か、行方不明になった少年は家族を目の前で失ったと言っておったの、年若い少年であれば受け止められなかったのも頷けるというもの」
ガイウスはやや悲痛な表情を見せながら呟く。
(しかし、亡き親御さんや妹御さんが紡いだ命……これをこのまま失うのはあまりに悲しい事じゃ、これ以上の悲しみの連鎖を続けてはならぬ)
長く生きているからこそ、まだ始まったばかりの少年の人生に生きる力を取り戻して欲しいとガイウスは願っていた。
「行方不明の少年……シンについて、ちょっと嫌な事を聞いたよ。住人いわく後追いを考えているんじゃないか、だって」
イスカの言葉に先行班のハンター達は黙り込んだ。予想していなかった事態ではないけど、考えていた以上に急がなければならない事に気づいたから。
「少年が何を考えているのかなんて、ボクには関係ないけど……さすがに目の前で死なれたら夢見が悪くなりそうだ」
フランが肩を竦めながら呟く。
関係ない、とは言っているけど少年の気持ちは少年にしか分からない。
だから必要以上に過保護に扱うつもりはない、というのがフランの心境なのだろうか。
「家族の所に行きたい、その気持ちは分からなくはないけど……その子には、自分が生き残った意味を考えて欲しいね」
情報収集班からの話を聞き、イスカはため息混じりに呟く。
「そうじゃの、楽しい事も悲しい事も生きていればこそじゃ。今この瞬間にも少年に危険が迫っているかもしれん、悠長にしておる時間はないぞ」
ガイウスは先行班のハンター達に告げ、彼らは少しだけ歩くスピードを速めた。
●生きる権利と死ぬ権利
ハンター達が雑魔と少年を探している頃、問題の少年は家族を失った湖に来ていた。
「……遅くなっちゃったけど、ようやく覚悟を決めたよ。僕もそっちに行く……父さん達のいないここで生きていくのは、つらくて仕方ないんだよ……」
少年が涙を零しながら呟いた時、背後から「ぐるるる……」と唸り声が聞こえてくる。
少年は唸り声が聞こえる方を向き、そのまま目を閉じる。
まるで、雑魔が自分を狙うのを待ち望んでいたかのように――。
「手前の相手はこっちだ!」
シュタールは叫び『機導砲』で、少年に食いかかろうとしている雑魔を攻撃する。
「少年、ここは危険じゃから後ろに下がるのじゃ」
「……邪魔、するな……! 僕は、あいつに殺してもらうんだ! 父さん達を殺したあいつに、僕も同じ場所に連れていってもらうんだから!」
まるで激昂するかのように、少年はハンター達に向かって叫んだ。
「少年が生き残ったのは、この時代が生かしたからじゃ。ワシはこの時代の生き字引として、お主を助ける、ワシの誇りにかけてもな」
ガイウスが少年を抱え、雑魔から距離を取る。
少年は酷く暴れたが、そこはハンターと一般人、ましてや相手は子供。力の差は明らかだ。
「いいか? 俺達の後ろから出るんじゃないぞ?」
シュタールが少年に言葉を投げかけるが、その表情には明らかに不満の色が見え、従うつもりがない事を悟らせる。
「シン、ボク達の言葉に従うか従わないか……それは関係ない。君がボク達の仕事を邪魔するつもりなら、邪魔されないよう君を拘束する事も考えているんだからね」
フランは『アサルトライフル』で雑魔を攻撃しながら、フランが少年に話しかける。
彼女の表情を見れば、その言葉が冗談ではないと子供でも感じ取る事が出来る。
「……貴方の事情なんて知らない。ただ血の繋がりがなくても心配してくれる人はいるわ」
合流した情報収集班のエルティアは少年の手を掴みながら呟く。
「生きるという事は何かを犠牲にするという事。貴方のご両親は自分を犠牲にして、貴方を生かした……シン、貴方は今亡くなった家族皆の命を抱いて居るの」
エルティアの言葉に、少年は唇を強く噛みしめながら俯いている。
「色々と話したい事はあるけど、まずは邪魔者に退場願わなくちゃいけないね」
イスカは『ショートソード』を強く握り締めて『ランアウト』で一気に雑魔との距離を縮めて『スラッシュエッジ』で強力な一撃を繰り出す。
「少年、ワシは何があっても少年を死なす事はせんぞ」
ガイウスは『プロテクション』を少年に使用しながら呟き、負傷したハンター達の傷を癒すため、後衛で陣を構える。
「歪虚は悲しみを増やすだけの忌まわしい存在……小細工なし、真っ向から叩き潰します」
フェリは『ドリルナックル』を装着した手を振り上げ、雑魔に攻撃を仕掛ける。
だが、雑魔は予想以上に素早い動きをしており、フェリの攻撃は避けられる。
「そっちばかり気にしていいの?」
雑魔を挟みこむような陣形を取り、ラピスが雑魔に言葉を投げかける。
もちろん言葉が通じるとは思わず、ラピスは返事を待つ事なく『クラッシュブロウ』で攻撃を仕掛けた。
フェリの攻撃を避ける事で精一杯だった雑魔は、ラピスの攻撃をまともに受け、地面に倒れる。
「なかなかすばしっこいが……動かなくなった場所を狙うのは、簡単さ」
シュタールは雑魔が起き上がる瞬間を狙い『機導砲』を放つ。
「おっと、逃げる時間はボクが作らせないよ」
フランは『アサルトライフル』から『オートマチックピストル』に武器を持ちかえて『エイミング』と『強弾』を使用して、雑魔に攻撃を仕掛けた。
「……逃がさない、好き勝手暴れたくせに旗色が悪くなると逃げる――なんて、ちょっと都合が良すぎなんじゃないかな」
鬼灯は愛用の『日本刀』で、雑魔の動きを封じるため手足を狙って勢いよく振り下ろす。
「どれだけ素早くても、割り込んで斬りつけられれば避けられないでしょ。それにもう逃げ回りたくても、それを実行する足がないけど」
鬼灯は軽く『日本刀』を振って、こびりついた血を払い落としながら呟く。
「さすがにそれで速さ勝負は出来ないな、残念だよ」
イスカは『ショートソード』を構え『スラッシュエッジ』で雑魔を攻撃する。
(そういえば、さっきワシに雑魔が攻撃を仕掛けようとした時……妙な感覚がしたんじゃが、あれは気のせいじゃろうか?)
ガイウスは誰かの祈りを感じたような気がしたが、今は目の前の出来事を片づける方が先決だと判断して深くは考えなかった。
「様々な場所から狙われ、貴方に逃げ場はない……悪あがきはやめた方がいいと思うわ」
エルティアは『重藤弓』を構え、雑魔の傷口を狙い、矢を放つ。
「……今度は外しません」
フェリは冷たい眼差しを雑魔に向け、地面を蹴って雑魔に向かって駆けだす。
彼女が走り出したのを見て、鬼灯、イスカ、ラピスもほぼ同時に駆けだし、少年の家族を殺した雑魔は、その報いを受け、無残な姿でこの世を去る事になった――……。
●少年が残された意味
「怪我はないか?」
雑魔を退治し終えた後、シュタールが少年に話しかける。
少年は言葉こそ返さなかったけど、小さく頷いて答えた。
「そうか、それなら――……」
シュタールが呟いた後、少年の頭に鈍い痛みが走った。
それがゲンコツをされたのだと理解するのに、数秒の時間を要した。
「何で殴られたか分かるか? 1人でこんな場所に来て、危ねぇだろ!」
「……死ぬつもりで来たんだ、危なくて上等なんだよ!」
「私は特別関与するつもりはないけど、1つだけ言いたい事がある。取り返しのつかない行動をする前によく考える事ね、両親の気持ち、周りの気持ち、あと自分の気持ち。その上で決断したなら、どんな結末を選ぼうといいんじゃない?」
鬼灯の言葉は一見すると冷たいものに聞こえるが、間違った事は言っていない。他人がどう言おうと自分自身の進む道を選ぶのは、自分でしかないんだから。
「……私が家族を失った時、後追いを考えました」
ぽつり、とフェリが呟く。
自分と似たような経験をした少年を放ってはおけなかったのだろう。
「ですが、家族の残してくれたこの命……自分自身で断つなんて出来ませんでした。だから私は決めたんです、家族を奪った根本……歪虚をこの世から消滅させると」
感情のこもった言葉に、少年はもちろんハンター達でさえ言葉を挟む事が出来なかった。
「貴方も捨てるつもりの命なら、その命を復讐に使ってみてはいかがです? それも貴方が選べる道の1つだと思いますよ」
フェリはそれだけ言うと、少年の側から離れた。
「復讐……それも残された者の使命になるのかもしれないけど、きみのしたいようにすればいい。今回みたいに自暴自棄になるのではなく、しっかりした目的を持つなら復讐も道の1つだろう。復讐とは言っても、歪虚と戦う事で救われる人が増えるのは確かだからね。けど、命は大事に、俺が言えるのはそれだけかな」
イスカは人差し指で頬を掻きながら呟く。
「何事も生きてこそじゃ、生きてこそ先がある。死に向き合い、時代に向き合い、自分に向き合い、そして未来に向き合うのじゃ。まぁ、説教はこれくらいにしてまずは親御さん達を弔おうかのぅ、オヌシが進む道はまずそこからじゃ」
「待って、これだけは渡しておきたいの」
ラピスは持っていた荷物の中から小さな包みを取り出した。
彼女自身も言いたい事は沢山あったが、親を失った子供を叱咤したくなかった。
だからこそ、残された少年が生きていくため、家族が生きる事を願っていたという証を探した。
「貴方の家、勝手に入らせてもらった……けど、おかげでこれを見つけたよ」
「……これ、何?」
「お父さんやお母さん、そして妹さんからの手紙。きみ、親御さん達と森に行った日が誕生日だったんだってね」
手紙は未開封のまま、それを見つけたラピス自身も見てはいない。
だけど、これがきっと何かの証になると信じて家から持ち出してきたのだ。
「多分、森から戻って来て渡すはずだったんだろうね。見つかりにくい場所に隠してあった」
少年は震える手で手紙を読み始め、ぼろぼろと涙を零し始めた。
それに書かれていたのは、生まれて来てくれてありがとう、とシンプルな言葉。
だけど、今の少年にとっては一番大事な言葉だったのかもしれない。
「……ごめんなさい、僕、どうしていいか分からなくて……」
その言葉を聞いて、ハンター達は少しだけ分かった気がした。
少年が死に場所を求めていたのではなく、生きる場所を求めていたという事に。
年相応に大きな声で泣き叫ぶ少年の姿を見つめながら、ハンター達は今後こんな風に泣く人を作ってはいけない、と心の中で決意を固めた――……。
END
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/09 00:54:14 |
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【相談卓】雑魔討伐作戦 イスカ・ティフィニア(ka2222) 人間(クリムゾンウェスト)|20才|男性|疾影士(ストライダー) |
最終発言 2014/07/13 01:37:56 |