西方からの大規模な援軍が見込めない今。
　東方はハンター達に活躍に委ねられている。
　
　さて、護るにしろ、攻めるにしろそれを支えるのに必要なのは物資――すなわち兵站だ。
　『腹が減っては戦が出来ぬ』と言う言葉があるように、食事は重要だ。
　
　エトファリカ幕府はこの非常時に際して、予てより準備していた天ノ都の郊外にある非常用の蔵を開放することとなった。
　収められているのは食料が大多数を占める。
　飢饉等の非常時を想定していたからだ。
　コレを運び出し、天ノ都と届ける必要があった。
　
　しかし――。
　
　非常用の蔵は郊外に設置しているために辺りには雑魔が跋扈している。
　おいそれとは運び出せない状況だ。
　だが、時勢が変わった――ハンター達の協力を得れる様になったからだ。
　
　蔵を開ける幕府の役人に物資を運ぶための牛の引く荷車や大八車と人員がこのために準備された。
　後は、護衛のハンター達だけだ。
　
　無事に運び出して、天ノ都へと届けることができるのか？
　それはハンター達の活躍にかかっている。
　

　●いざ、蔵へ
　天ノ都の郊外にある非常用の蔵に物資を取りに行くためにハンターと人員が集められた。
　
「話があるのですが……」
「……何か？」
　Ｊ(ka3142)は輸送の人夫と役人に対して襲撃時の対応の協議を行った。
　人夫達は話し合っている。
「それと……」
　牛を宥める者や人夫の統率担当の選定、荷物利用の遮蔽を取り決めを行い、その統率者を決めた。
　人夫達は話し合い、統率者を決めたようだ。
「後は……」
　積み荷が空の場合は最悪、大八車を遮蔽に活用することを提案し、牛の面倒を見る者以外は鷹の急降下に備え、大八車の下への避難を依頼した。
「できれば……」
　復路では積荷よりも人夫や牛の安全を重視することを伝え、輸送力低下を防止する事とした。
　人夫たちは話を聞いて安心感が広がっている。
　Jによる事前打ち合わせが終わると、車列が動き始めた。
　
　車列は牛車を前に縦二列で配置し、大八車の隊列は道幅が許せば三列で牛車を追従する形となった。
　
「全力で護衛させて頂きます」
　騎乗して車列の最後列を直衛しているのはシルヴィア＝ライゼンシュタイン(ka0338)。
　装備している魔獣装甲の影響で二足歩行の龍のような外見をしている。
　周りのハンターと違いがよく分かる姿だ。
「周囲の警戒を厳かにしてください」
　Jは車列前方で直衛しながら斥候から情報収集と周知を行っている。
　情報の分析と周知はJの仕事だ。
「西方からの多くの援軍、嬉しい限りです。協力に応えるためにも、今回の輸送は絶対に成功させねばなりませんね」
　東方出身の麗奈　三春(ka4744)は気を引き締めて車列に近い位置で直衛している。
　是が非でもこの依頼を達成させようといきこんでいる。
「うまくいくといいなぁ……」
　リンカ・エルネージュ(ka1840)は車列から離れず、周囲を警戒している。
　上空も警戒して空を睨んでいる。
「何事も無ければいいのじゃが……」
　紅薔薇(ka4766)はバイクに乗り牛車のさらに前方で先導と前衛を行う。
　バイクに乗車して走る紅薔薇の髪が揺れる。
「やれるやれないではなく、やらなければならないのがハンター稼業の辛い所だな」
　重装馬に騎乗して斥候として周辺の警戒を行うロニ・カルディス(ka0551)。
　斥候と車列の間の距離は１００m程度まで離れて周囲を警戒している。
「まだ食べてない東方の料理は多いからな。こいつが届けば食べれるようになるなら気合が入るってもんだ」
　そんなことを言いながら、斥候として戦馬に騎乗して周囲を警戒しているレイオス・アクアウォーカー(ka1990)。
　ペットのパルムのソルトとシュガーにも手伝ってもらっている。
「ふむ、食う物を食わねば戦どころではないだろうしな。キッチリと送り届けなければ」
　戦馬に騎乗して斥候として周囲の警戒を行うバルバロス(ka2119)。
　トランシーバーで連絡を取り合っている。
　
「どうも最近は護衛依頼に縁がある気がする……お金の為お金の為……がんばろー」
　アメリア・フォーサイス(ka4111)も戦馬に騎乗して斥候を担当している。
　草むら等隠れられるような不審点があれば連絡を入れて、斥候へ向かう。
　
　さて、直衛にシルヴィア、リンカ、J、麗奈、紅薔薇の５名。
　斥候にロニ、レイオス、バルバロス、アメリアの４名という按分。
　これが、後にどのような結果になるかは……。
　
　輸送部隊は進む。
　見通しのいい平原を進んでいく。
　斥候部隊は周囲を囲むようにして警戒しながら斥候を行っている。
　
　怪しい場所、茂みを見つけては確認しながら進んでいく。
　斥候の配置はローテーションして行っている。
　だが――。
　
　●第一波
「敵襲だ！　敵数が多い！」
　左で斥侯していたロニが敵を見つける。
「敵襲だよ！　こっちも多いよ！」
　右で警戒していたアメリアも敵を見つける。
　
　左からは熊型雑魔と大鷹雑魔、右からは猪型雑魔と狼型雑魔が襲ってくる。
　粉塵を上げてやってる一団。
　左右から挟撃する形での襲撃。
　車列は移動を停止して防戦に備える。
「行かせはしない！」
　足止めに動くロニ。
　『レクイエム』を使い行動を阻害させ、『セイクリッドフラッシュ』を使って攻撃する。
　敵の足止めに成功するが数が多い。
　熊型雑魔の強力な攻撃を繰り出し、大鷹型雑魔が急降下して爪で攻撃を行っていく。
　『戦槍「ボロフグイ」』で攻撃しつつ、『シェルバックラー』で守る。
　しかし、上空の敵に対する手段がない。
　急降下してくる所に攻撃を当てるしか無い。
　
「ついてないなぁ……」
　アリシアは狼型に包囲される形になってしまった。
　多勢に無勢の形だ。
　リーダーらしき個体に『ライフル「ルインズタワー」』で攻撃を行うが、他の狼から攻撃を受ける。
　止まったところを猪形の突撃を受ける。

　トランシーバを使い連絡し合いながらバラけていた他の斥候は他の方向からの敵を警戒している。
　敵の襲撃を受けた時点で各斥候は孤立していた。
　直衛は向かってくる敵を警戒している。
　他の敵を警戒して動けない状態だ。
　その結果、現状――ロニとアメリアは孤立無援の状態だ。
　
　ロニは熊と対峙しながら大鷹と戦闘を続ける。
　熊は連携して攻撃してこないが数が多いため、苦戦している。
　その上に大鷹が攻撃をしてくる。
　
　アメリアは狼と戦闘をしているが、多勢に無勢な状況で囲まれて攻撃を受けながら戦闘を続けている。その上に、止まった所に攻撃を受けている。
　
　なんとか、ロニは敵を殲滅することに成功したが、酷くダメージを受けていいた。
　『ヒーリングスフィア』も使いきってしまっていた。
　アメリアも包囲していた狼を突破して撃破して猪も撃破することができたが、『マテリアルヒーリング』を使いきってしまった。
　
　襲撃が終わり、輸送部隊は動き出す。
　だが――斥候のロニとアメリアは敵の撃破と引き換えに負傷している。
　分散した斥候、そこにやってきた大群の敵を迎撃する形になった二人。
　迎撃に成功するも負傷してしまった。
　しかし、道半ばだ――二人は斥候を続ける。
　
　●第二波
　
　郊外の蔵まであと少し――という所で敵が襲撃してきた。
　
「敵だ！」
　第一波とは逆方向からやってくる敵を見つけたレイオス。
　共に警戒していたパルムを安全なとこへ逃がす。
　相当数の数の敵が押し寄せてきている。
　『和弓「蒼天」』を使い、接敵まで攻撃を続ける。
　もう一方では――。
「こっちからも敵だ！」
　バルバロスも第一波からの逆方向からやってくる敵を見つけた。
　バルバロスに向かってくる敵もかなり多い。
　
　レイオスに向かってくるのは大鷹と狼だ。
　大鷹に対して矢を撃つがうまいこと当たらない。
　狙いを狼にして攻撃をする。
　多少ではあるが接敵までに幾つかの狼を屠ることができた。
　
　バルバロスは大斧『ギガースアックス』を振りかざして攻撃をする。
　バルバロスの相手は熊型と猪形の敵だ。
　『ラウンドスウィング』を使い周囲の敵をなぎ払い、『クラッシュブロウ』を使って的に攻撃する。
　獅子奮迅の戦いをしていた。
　だが、敵が多く苦戦もしていた。
　
「オレを無視して進めると思うなよ！」
　取り囲む狼相手に『試作雷撃刀「ダークMASAMUNE」』で『なぎ払い』を使い敵を薙ぎ払って攻撃をする。
　だが、狼のほうが数が多く連携して攻撃を食らう。
　大鷹も急降下してレイオスを狙う。
　空と地上からの攻撃に苦労しながら戦闘を続ける。
　
　パワーとパワーがぶつかり合う戦場。
　バルバロスは大斧を振りまして熊や猪と対峙している。
　数多くの熊と猪との対処の為、傷を受けながらも敵を撃破しつつあった。
　
　どうにかして、狼を全滅させ大鷹を降りてきた時に攻撃して何とか全滅させることに成功したレイオスだが『マテリアルヒーリング』を使いきって、負傷だ。
　
　一方、バルバロスも敵を皆殺しにするつもりで戦い熊型と猪形を相手にしていた。
　敵を全滅させることに成功したが自己治癒を使いきってしまった上に負傷だ。
　
　こうして、第二波の敵を撃退することに成功して輸送部隊は進む。
　
　●帰還に向けて
　
　無事、輸送部隊を郊外の蔵へと辿り着き蔵を開けて積み荷を積み込み始める。
　ハンター達はその間も敵襲を警戒している。
　襲撃もなく積み込みが終わり帰路へつく。
　
　だが、無事にとは行かなかった。
　
「また……　敵だよ」
「敵だっ……！」
　前方左右に展開していたアメリアとロニが敵を発見する。
　
「斥候組の損害が限度を超えています。水際で阻止しますので戻ってきてください」
　Jは斥候組だけでは戦闘は難しいと考えて水際での防衛を提案した。
　斥候組は斥候時の戦闘で負傷しており、単独での戦闘は難しい。
　正面から熊、狼、猪、大鷹の大群がやってくる。
　第一波、第二波の数よりも多い敵が向かってきている。
「物資は最悪、次の機会に取りに行けば良い。だが長きに渡る戦いで失われた人口は、そう簡単に増えたりはしないのじゃ」
　紅薔薇を前衛に麗奈、リンカ、J、バルバロス、ロニと布陣し、その後方にレイオス、アメリアとなった。
　
「まずは足止めじゃな」
　紅薔薇は『試作光斬刀「MURASAMEブレイド」』で『縦横無尽』を使い周囲を攻撃して足止めさせる。
　多数の敵を足止めすることができたが、それでもなお向かってくる敵は多い。
「オレのメシを狙うとは良い度胸だ。返り討ちにしてやるぜ！」
　負傷ながらレイオスは気力を絞って弓の攻撃が開始される。
「近づけさせません！」
　リンカは『ファイアーボール』、『ライトニングボルト』を放って接近する敵を攻撃する。
　火球が飛んでいき敵を焼き尽くし、雷撃が敵を撃つ。
「混戦やむ無し……ですね」
　Jはこの状況に焦りを覚えていた――無事守りきれるか。
　Jは『オート「サイレント66」』で銃撃を開始。
　敵に銃撃を食らわしていく。
「……がんばろー」
　満身創痍ながら銃撃で迎撃するアメリア。
　敵のほうが多いため、外れるようなことはなかった。
　接敵しつつある敵に銃弾や矢や火球が飛んで行く。
　対する敵は攻撃を受けて少なからず数を減らしていく。
　しかし、それでも接近しつつある敵は多い。
　敵との接敵。
　ここを抜けられてしまっては輸送部隊に損害が出る。
　最終防衛線だ。
　麗奈は『大太刀「獅子王」』を抜刀し敵へと挑む。
「セイッ！」
　複数で来た狼に対しては斜めに切りおろすと同時に刀を返し二匹目への防御に備える。
　撃破すれども、尚も狼の数は多い。
「ハッ！」
　猪に対しては突進に合わせて、斜めに『疾風剣』を使用し、横っ腹を串刺しにして食い止める。
　確実に敵を仕留めているが――苦戦は免れない。
「クッ！」
　『受け流し』を使いながら防御主体で受け止め、味方の援護受ける。
　銃撃が、火球が飛んできて敵を攻撃する――しかし、まだ敵は健在だ。
　混戦した戦場で麗奈は動き回る。
「妾が相手じゃ」
　『剣心一如』を使い精神統一をして『縦横無尽』を使って自分の周囲に対し、素早く動きながら何度も斬りつけ広範囲に攻撃する。
　広範囲に敵を切りつけることに成功する。
「いかせぬ」
　熊に対して『二連之業』を放つ。
　あたった剣撃の瞬間にひねりを加えて攻撃をつなぎ、連続で攻撃する。
　敵対して有効打となり、屠ることができた。
「狼が厄介ですね」
　Jは『機杖「ピュアホワイト」』を使い『デルタレイ』で三角形が現れ、その頂点一つ一つから伸びた光が敵を貫く。
　伸びた光が狼を貫く。
　また、近距離の狼に対して『ファイアスローワー』により扇状に炎の力を持った破壊エネルギーを噴射して攻撃する。
　炎の力によって敵を焼きつくす。
「こうなったら！」
　『ルーンソード』に持ち替えて『ファイアエンチャント』を唱えるリンカ。
　赤い光が炎のように武器を取り巻きたなびく剣を振りぬいて敵に対して攻撃をする。
　赤い光を帯びた剣によって切り飛ばされる狼。
「来なければいいなと思っていましたが……やはりそう上手くは行きませんか……」
　シルヴィアは 『アサルトライフル「ヴォロンテAC47」』で『レイターコールドショット』によって冷気を纏った射撃を行い、攻撃を受けた敵は冷気によって体の動きを阻害された。
　阻害された敵を攻撃するシルヴィア。
「纏まった狼は厄介」
　『制圧射撃』で連続射撃により弾幕を張り、敵の行動を制する。
　敵の行動を制することに成功して隙を生み出す。
「あっちに行かせない」
　大鷹に対して羽を狙って撃ち落とすシルヴィア。
　大鷹に対して銃撃が威力を発揮する。
「ふんぬ！」
　重症ながらも大斧を振り回して敵を攻撃するバルバロス。
　振り回す大斧は敵を打ち付ける。
「ここが正念場だ」
　重症でスキルも使い果たしたため槍で敵を貫くロニ。
　槍だけでも強さをもっている。
　
　混戦するハンター達と虚歪。
　ハンター達の必死の抵抗で敵が減りつつある。
　混戦の結果――。
　
「危ないっ！」
　シルヴィアを襲う敵の攻撃をとっさに庇うバルバロス。
　庇ったことにより、蓄積されたダメージにより重体となって倒れてしまう。
「しくじった！」
　囲まれた狼と戦闘しているレイオス。
　ジリジリと押されていき――。
　斥候時に受けていたダメージが酷く、度重なる敵からのダメージを受けて重体となったレイオス。
「ここまでか……無念だ」
　ロニもまた、斥候時の敵の全滅と引き換えに重症を押した中での今回の戦闘。
　槍を使い、多くの敵を倒すも多勢な敵からの攻撃を受けて重体となった。
「どうして！？」
　斥候の時の勝利と引き換えに満身創痍になったアメリア。
　銃撃して敵を屠っていくも、一瞬、敵の接近を許してしまい攻撃を受けて重体になってしまった。
　
　斥候を担当していたハンター達はそのほとんどが斥候時のダメージが原因で重体へとなってしまった。
　
「あ！？」
　４名が重体となり、薄くなった防御線を突破する雑魔達。
　輸送部隊へと襲いかかる。
　すぐさま、ハンター達は追いかけて倒そうとしたが――。
　人夫と共に襲われ人夫と大八車に被害が出た。
　被害は大八車二台。
　それ以上の被害は防ぐことができたが、被害がでてしまった。
　
　ハンター達は敵を全滅させることに成功したが――元よりダメージを受けていた斥候組が重体となった。
　また、輸送部隊は一部突破され、すぐに撃滅したものの大八車二台に被害を出して輸送不可能となった。
　
　動けるものは警戒しながら天ノ都まで輸送部隊の警戒を行ったが、敵は襲ってくることはなかった。
　
　しかし、ハンター達から重体者をだし、輸送部隊にも被害がでた。
　完璧な依頼達成とは成らなかった。
　
　【東征】血路を開いて運べ　Fin