ゲスト
(ka0000)
【幻導】 ナルガンド塔、探索
マスター:桐咲鈴華

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/25 07:30
- 完成日
- 2015/07/01 17:45
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
ビャスラグ山北で発見された謎の塔――ナルガンド塔。
一体、誰が何の為に建造したのか。
それは今でも分からない。
しかし、多くの者はこの塔に注目する理由は他にある。
伝説の刺青を持つスコール族の族長ファリフ・スコール。彼女を呼び掛ける者が、この塔の中にいる。
聖地の大巫女は大幻獣だと推論を述べるが、未だその結論は見えていない。
塔周辺の探索と雑魔退治の為、ファリフは再び塔へと向かう。
一方、同じようにナルガンド塔へ動き出す影が存在した。
東から移動する影もまた、この大幻獣を求めて動き出したのか――。
●
「……本当、この塔は一体、何なんでしょうかね……」
聳え立つ塔を間近で見上げながら、エフィーリア・タロッキは呟く。彼女は『アルカナ』と呼ばれる歪虚群を調査するタロッキ族の代表であり、此度ファリフが感じた『呼びかけ』について、エフィーリアもまた推論をつけていたのだった。
(……アルカナの『塔』では、ないようですね。しかし、未だかつて感じた事のない気配を、感じます……)
エフィーリアは塔を見上げて呟く。『アルカナ』は大アルカナを模した歪虚群だ。『塔』のカードとの関連性を思い、実際に現地へと赴いてみたのだが、当ては外れたようだ。
「……しかし、この感じる気配は、只事ではなさそうなのは確か、ですね……」
エフィーリアは視線を戻し、集ってくれたハンター達に呼びかける。
「……ファリフ様が受け取ったと言われる『呼びかけ』、求めていたものとは違うとはいえ、同じ辺境出身として放置する訳にはいきませんね。……当初の予定とは些か違いますが、改めて依頼を。この塔の内部を、共に調査して頂けるでしょうか」
改めて頭を下げるエフィーリア。かくしてハンター達は、改めてこの塔の調査に出向くことになったのだった。
一体、誰が何の為に建造したのか。
それは今でも分からない。
しかし、多くの者はこの塔に注目する理由は他にある。
伝説の刺青を持つスコール族の族長ファリフ・スコール。彼女を呼び掛ける者が、この塔の中にいる。
聖地の大巫女は大幻獣だと推論を述べるが、未だその結論は見えていない。
塔周辺の探索と雑魔退治の為、ファリフは再び塔へと向かう。
一方、同じようにナルガンド塔へ動き出す影が存在した。
東から移動する影もまた、この大幻獣を求めて動き出したのか――。
●
「……本当、この塔は一体、何なんでしょうかね……」
聳え立つ塔を間近で見上げながら、エフィーリア・タロッキは呟く。彼女は『アルカナ』と呼ばれる歪虚群を調査するタロッキ族の代表であり、此度ファリフが感じた『呼びかけ』について、エフィーリアもまた推論をつけていたのだった。
(……アルカナの『塔』では、ないようですね。しかし、未だかつて感じた事のない気配を、感じます……)
エフィーリアは塔を見上げて呟く。『アルカナ』は大アルカナを模した歪虚群だ。『塔』のカードとの関連性を思い、実際に現地へと赴いてみたのだが、当ては外れたようだ。
「……しかし、この感じる気配は、只事ではなさそうなのは確か、ですね……」
エフィーリアは視線を戻し、集ってくれたハンター達に呼びかける。
「……ファリフ様が受け取ったと言われる『呼びかけ』、求めていたものとは違うとはいえ、同じ辺境出身として放置する訳にはいきませんね。……当初の予定とは些か違いますが、改めて依頼を。この塔の内部を、共に調査して頂けるでしょうか」
改めて頭を下げるエフィーリア。かくしてハンター達は、改めてこの塔の調査に出向くことになったのだった。
リプレイ本文
●探索開始
ビャスラグ山から突如として発見された塔、ナルガンド塔。スコールの族長ファリフ・スコールが感じた呼びかけ、その答えはこの中にあるのだろうか……。
タロッキ族の代表エフィーリア・タロッキと、その呼びかけに応じたハンター達は塔の中に入り、探索を開始することにした。
「山奥の塔ですか。まさに遺跡ですね。何か神聖なお方が、いらっしゃるのでしょうか」
ミオレスカ(ka3496)は薄暗い塔内部にLEDライトを当てながら呟く。山脈内にて最近発見された未開の塔に、ファリフの感じた呼びかけ。予感めいたものをミオレスカは感じていた。
「塔の探索なんて、冒険ものではお約束の感じでわくわくしますよね。やっぱり幻獣が居るんでしょうか。どんな姿なんでしょう……」
ソフィ・アナセン(ka0556)は未知の塔の探索に心を躍らさせていた。この塔に潜む秘密、神秘、募るロマンに胸を膨らませている。
「幻獣、ですか。……精霊の類という話ですが、族長殿を何の為に呼ぶのか……その真意を確かめたいものです」
アリオーシュ・アルセイデス(ka3164)は光の当たった所を頭に記憶しつつ、ぽつりと独りごちる。幻獣はマテリアルの塊とも言うべき神秘的な存在だ。族長ファリフを呼ぶのにも何か理由がある、そう踏んでいるようだ。
「だけど、のんびりもしてられないよね~。危険な歪虚が来ない保証もないし、今日中に調べ切らないとだね」
「そうね、塔全体をどこまで探索できるかわからないけど、出来る限り調査しないとね」
十色 エニア(ka0370)と白金 綾瀬(ka0774)は一行の言葉に続くように言う。塔の探索まで来れたとはいえ、未だここは歪虚の支配領域だ。長く滞在するのは危険とし、エフィーリアは予め探索期間は一日と区切っていた。許された時間の間に、可能な限り情報を集めなければならない。
「よっしゃ、調査するには兎にも角にも、塔内をうろついてる奴らをどうにかしねーとな」
ぱんっ、と拳と掌を合わせて気合を入れるのはケンジ・ヴィルター(ka4938)。ここは歪虚の支配領域にずっとあった塔であり、雑魔が棲息しているとの話だ。掃討しなければ、安全な探索は見込めないだろう。
「……そうですね、良くない気配がします。皆様、どうか警戒を」
エフィーリアの言葉に一行は頷くと、慎重に探索を開始した。
●塔内部、探索
「それにしても古い塔ですね、そこかしこがぼろぼろです」
ソフィが周囲を見回しながら言う。塔の壁や床は所々が剥がれたり、崩れ落ちたりしており、外から光が差し込むおかげでそれほど暗くはない。だが、穴があくほど老朽化しているということは衝撃には耐えられないということだ。塔全てが脆い訳ではないだろうが、それでも確実に『弱い場所』はそこかしこにある。
「踏み抜かないように注意しないとね。……戦いになった時尚更、避けた所が崩れたなんて事になったら笑い話じゃ済まないわ」
綾瀬は特に、戦闘になったときの事を考えて周囲に目星をつけていた。激しい戦いになったとすれば、足場には特に気をつけなければならないからだ。綾瀬がチェックしていくのにあわせ、ケンジもまた壁を軽く叩いてみたり、床を踏みしめて状態を細かく確認していた。
「一階層ずつ安全確保して進むとなると、軍務を思い出すわ。第一ブロック・オールクリア。次! みたいなカンジで進むやつ」
「あぁ、わかる気がするね~」
同調し、同じように壁を叩いたりして注意深く確認しているエニアが反応を返す。彼は建物の弱い所というよりは、罠の有無を確認していた。侵入者を阻む落とし穴や、仕掛けといったものがないかを念入りにチェック。物陰などもくまなく調べてみたが、どうやらそういったものはないらしい。
「うん、クリアーってやつだね。アリオーシュさん、一階層は大丈夫みたい」
「了解です」
皆の集めた情報はアリオーシュの作る地図に集約していく。老朽化している箇所、戦闘に耐えうるスペース、罠の有無等、仔細に書記し、マッピングしていった。一階の間取りを調べきるのにはそう長い時間は要さず、二階層へ進む階段も見える場所にある。
「そこまで広くはないのですね……」
ミオレスカは呟く。この塔は中央の部屋を廊下がぐるりと取り囲んでいる円柱の塔のようで、直径もおよそ30mあるかないか、といったところだろう。今まで山に隠れて発見されなかったのも、そこまで大きくなかったせいもある。
「さて、中央の部屋の扉はこれですかね……鍵は、閉まってないようですが」
ソフィが注意深く扉を開ける。が、中にはこれといったものはない。石造りの部屋、というだけであり、何をする部屋なのかという情報は何ひとつなかった。だが……。
「ん、なんだこりゃ。……木片?」
ケンジが木片を発見する。砂を被ってて気付きにくかったが、それは木箱か何かに使われている木片だった。
「……加工された痕跡のある木片、ですね。木箱か、樽か。……何れにせよ、ここに何かがあったという裏付けでしょう。……恐らく、歪虚に持ち去られた後という事になるでしょうが」
それを見てエフィーリアが呟く。ここに人が居た、という証拠を見つけた一行は、そのまま二階へと上がり、次なる階層の探索をする。
「うへ、二階はひどいね」
エニアが思わず漏らす。二階の崩落具合は一階よりも酷く、崩れた天上の瓦礫が山のように積み上がっていたり、壁には大穴が空いて外の景色が見えたりしている。
「あ、あれはなんでしょうか……鎧?」
そんな瓦礫の山の中、ミオレスカが遠くに打ち捨てられている鎧を見つける。
「……鎧、ですね。……もしや、死体?」
アリオーシュが怪訝そうな視線を送る。鎧は人間の使う装備。言うなれば人間がここに居た何よりの痕跡だ。帝国の騎士やハンターのものであるならば、ここに打ち捨てられている時点で持ち主の生死は火を見るより明らかであるが……。
「……いえ、まって。……気をつけて下さい、あれは」
エフィーリアが制すると同時に、鎧はカチャリ、と音を立てる。その僅かな動きを皮切りに、全身甲冑の鎧はカチャカチャと音を立てて動き出した。それも1体だけではない。見えるだけで4体の甲冑が剣や弓を携えてこちらに迫ってくる。
「おお!? 何だ何だ!? 中身あんのか? 寝てたのか!?」
「そんな訳ないでしょー! リビングアーマーって奴だよ!」
ケンジのおちゃらけた言動にツッコミを入れつつ、覚醒して大きく前に踏み出るエニア。動く甲冑が剣を振り翳す動きに対して、風を纏う腕でその動きを振り払う。
「はっ!」
そのまま逆の手でスタッフを振るい、水の弾丸を甲冑に叩きこむ。ガシャリと音を立てて飛び散る甲冑の中身は当然空洞であり、すぐさま元の形に組み直る。
「厄介ね。粉々にしないと止まらないのかしら」
綾瀬がアサルトライフルを構え、制圧射撃を繰り出す。敵は意思なく迫って来る鎧である為、行動阻害は効かなかったが、その分弾丸がまともに直撃し、鉄が大きく穿たれる。
「ボロい塔の中で動きまわる鎧とか、ちょっとしたホラーじゃんか! けど、斬れるならそんな怖い相手じゃねーな!」
ケンジは武器を水平に構え、一気に間合いを詰めて鎧を刺し貫く。先程エニアの水弾を受けて脆くなっていた鎧は穿たれる剣閃に砕け散る。
残った敵の動きもそこまで速くはなく、魔術師であるエニアが纏う風の衣やケンジの剣捌きに受け流されてまともに攻撃は当たらない。そこへ後方から、弓を番えて放とうとしていた別の鎧へ
「させませんよ……」
アリオーシュがその鎧へ向かって光の弾を放つ。放たれた光弾は鎧の肩を穿ち、狙いを逸らさせる。そこへ更にミオレスカの冷気を纏う弾丸が放たれ、関節が凍りついて動かなくなる。
「えっーと、動かないでくださいね?」
動かなくなった鎧へケンジの斬撃が叩き込まれて沈静化する。一体一体を倒すのに時間はかかるが、概ねかすり傷程度で済む快勝をハンター達は成し遂げる。
「……お疲れ様でした、これで塔の探索を続けられますね」
エフィーリアが労いの言葉と共に傷が比較的深い者へ回復を施すと、ハンター達は塔の探索を再開する。
二階層の大部分は崩落しており、中央の部屋も三階層から崩れてきた瓦礫のせいで探索はほぼ不可能だった。老朽化していた床もあり、ハンター達は無理せず3階層へと上がっていく。
三階層は床が抜けて2階層へ落ちてしまっており、穴だらけだ。注意して進まなければ穴が大きくなってしまうだろう。一行は慎重に頑丈な所を探して注意深く進んでいく。
アリオーシュが身体にロープを巻いて命綱を作りつつ、綾瀬がそれを持つ。アリオーシュは足をかけつつ慎重に床を踏みしめていき、先頭を歩いていく
「皆様、どうかくれぐれも気をつけ、て…………っ」
注意を促そうとしたエフィーリアが、ふらりと足をもつれさせて、穴の方に倒れこむ。
「あ、危ないっ……!」
その手をエニアが取り、引っ張って戻す。勢いがつき、ぽすっとエニアがエフィーリアを抱きとめる形になる。
「あ……あ、す、すみません、私とした事が……ありがとうございます、エニア様……」
「ぇと……雇い主だし、ね?」
ちょっと照れくさそうに顔を掻くエニア。そんなハプニングはあれど、一行は無事三階層目を抜ける事に成功し、四階へと登っていった。
「第三ブロック、オールクリア、ってな。さて、四階はどうなるかなっと……」
ケンジが見回し、警戒しながら四階へ到達する。相変わらず壁を叩いてはいるが、隠し扉や仕掛けのようなものはない。シンプルな塔だ。
「となると、あとはこの中だけですかね……」
ソフィが中央の扉を指す。四層目もこれまでと同じく、部屋をぐるりと取り囲む廊下と上下への階段しかなかった。つまり、残す所はこの部屋と、屋上のみということだ。
「開けるね……」
エニアが注意深く、扉を開ける。その部屋は一階層目と違い、奥には何やら、壁画のようなものがあった。
「あれは、一体……」
ソフィが興味深そうに覗きこもうとしたのを、綾瀬が制した。
「待って、何かいる」
薄暗い部屋の中、ずるずると蠢く何かがある。LEDライトを動かして当てると、映し出されたのは巨大なトカゲだった。負のマテリアルを帯びて、凶暴化している。
「雑魔です……! 警戒してください!」
ミオレスカの言葉と共に、トカゲは爪を振りかざして襲いかかってくる。
「させない、よっ!」
「先手必勝ってな!」
前に出たエニアとケンジがトカゲの進路に立ち塞がる。トカゲは足を止め、エニアを薙ぎ払おうとするが、吹き付ける風が爪を僅かに逸らせる。だが、その大きな爪を避けきる事は出来なかったか、浅い傷がエニアに出来る。
「うっ、く……毒か、しらっ……!」
じわり、とエニアの白い肌が変色する。
「今、回復を……!」
すかさずアリオーシュがキュアを唱え、エニアの毒を取り除く。ケンジは攻撃した隙を狙って斬撃を放つも、トカゲの鱗は硬く、ダメージを与えにくい。
「ちっ、硬いな……!」
ソフィも同じく魔法による攻撃を積極的に試みる。しかしトカゲの鱗に阻まれ、炎はダメージが通りにくいように見えた。風の斬撃による魔法に切り替え、その硬い鱗に少しずつ傷を作っていく。
やがてトカゲはすぅっ、と息を吸い込む。何かが来る、と察知したエニアはショットアンカーを取り出し、天井に打ち込んだ。次の瞬間、ぶわっと刺激臭のするブレスが前衛に向けて放たれる。エニアはショットアンカーの動きで素早く天井に登って回避するも、ケンジはまともに浴びて身体が麻痺してしまう。ブレスに対しての対策をとっていなかったのだ。
「や、べっ……!」
トカゲはその巨体を振り、ケンジを尻尾で弾き飛ばそうとする。そこへミオレスカと綾瀬の弾丸が直撃し、身体の一部を凍結させた。
「大丈夫ですか!」
「ゆっくり下がりなさい。麻痺はこっちで治すから……!」
カチカチ、と凍結していくトカゲの身体。その動きは目に見えて緩慢になっているように感じた。
「ん? あ、変温動物だから冷気に弱いのか。好都合、だね!」
天井からアンカーを抜いて飛び降りたエニアは、そのまま水の弾丸を生成してトカゲに叩きつける。
「そこ、見えましたっ!」
大きく仰け反ったそこへ、ソフィの風の刃が急所を捉えた。喉を切り裂かれたトカゲはやがて体温を奪われて絶命し、消滅した。
「危ない所でしたね……今、治しますから……」
「はは、ドジっちまった……悪い」
アリオーシュがケンジの麻痺を取り除き、エフィーリアが傷を負った皆を癒していく。
安全を確保したところで、一行は壁画の前に立った。描かれているのは、小高い丘に立ち天へと吠える、三つ首の狼の姿だった。その丘の下で、黒く異形の存在と、小さな犬が無数に横たわっているように見えた。
「……これは、一体?」
ソフィは興味深くその壁画を眺め、アリオーシュは正確に模写をする。
「……恐らく、大幻獣の姿、でしょうか」
エフィーリアが壁画を眺める。丘に立つのが大幻獣だとすると、丘の下で横たわるこれらは……。
「ん~……歪虚、かな?黒いのはそうだよね? けど、なんか普通の犬みたいなのもたくさん同じ所にいるよね……これ、なんだろ?」
エニアが絵をじっくりと眺め、考察する。
「……なんだか、この狼さん、悲しそうなのです」
ミオレスカが天に吠える狼を見て、感想を漏らす。一行が改めて見ると、言われてみればその狼はどこか物悲しげに描かれているように見えた。
だが、それでも。この壁画が何を意味するのかは、この時点では彼らはまだ知り得なかった。
そして一行は、塔の頂上に到達する。ビャスラグ山が一望できる非常に美しい風景に、探索で疲れた身体も感動を覚える。だが、頂上には何の姿も無かった。
「幻獣は居ませんでしたか……今回の収穫は、壁画だけでしょうか」
「うーん、ハズレなのかな? でも、ファリフの族長が呼ばれてる以上、またここに用があるよね?」
がっかりするソフィに対し、エニアは持参したロープを各所に垂らしている。ショートカットを作っているようだった。これならば三階から登ってすぐ窓を伝い、屋上へ辿り着く事が出来る。
「地図も出来ましたし、また来た時にはもう少しスムーズに到達出来るでしょう」
アリオーシュのマッピングにより、安全に通ってこれるルートも確立している。
謎の壁画、そして人の痕跡……これらの結果は一体、何を意味するのだろうか。
何かの予感を感じ取りながら、一行はひとまず、ナルガンド塔を後にするのだった。
ビャスラグ山から突如として発見された塔、ナルガンド塔。スコールの族長ファリフ・スコールが感じた呼びかけ、その答えはこの中にあるのだろうか……。
タロッキ族の代表エフィーリア・タロッキと、その呼びかけに応じたハンター達は塔の中に入り、探索を開始することにした。
「山奥の塔ですか。まさに遺跡ですね。何か神聖なお方が、いらっしゃるのでしょうか」
ミオレスカ(ka3496)は薄暗い塔内部にLEDライトを当てながら呟く。山脈内にて最近発見された未開の塔に、ファリフの感じた呼びかけ。予感めいたものをミオレスカは感じていた。
「塔の探索なんて、冒険ものではお約束の感じでわくわくしますよね。やっぱり幻獣が居るんでしょうか。どんな姿なんでしょう……」
ソフィ・アナセン(ka0556)は未知の塔の探索に心を躍らさせていた。この塔に潜む秘密、神秘、募るロマンに胸を膨らませている。
「幻獣、ですか。……精霊の類という話ですが、族長殿を何の為に呼ぶのか……その真意を確かめたいものです」
アリオーシュ・アルセイデス(ka3164)は光の当たった所を頭に記憶しつつ、ぽつりと独りごちる。幻獣はマテリアルの塊とも言うべき神秘的な存在だ。族長ファリフを呼ぶのにも何か理由がある、そう踏んでいるようだ。
「だけど、のんびりもしてられないよね~。危険な歪虚が来ない保証もないし、今日中に調べ切らないとだね」
「そうね、塔全体をどこまで探索できるかわからないけど、出来る限り調査しないとね」
十色 エニア(ka0370)と白金 綾瀬(ka0774)は一行の言葉に続くように言う。塔の探索まで来れたとはいえ、未だここは歪虚の支配領域だ。長く滞在するのは危険とし、エフィーリアは予め探索期間は一日と区切っていた。許された時間の間に、可能な限り情報を集めなければならない。
「よっしゃ、調査するには兎にも角にも、塔内をうろついてる奴らをどうにかしねーとな」
ぱんっ、と拳と掌を合わせて気合を入れるのはケンジ・ヴィルター(ka4938)。ここは歪虚の支配領域にずっとあった塔であり、雑魔が棲息しているとの話だ。掃討しなければ、安全な探索は見込めないだろう。
「……そうですね、良くない気配がします。皆様、どうか警戒を」
エフィーリアの言葉に一行は頷くと、慎重に探索を開始した。
●塔内部、探索
「それにしても古い塔ですね、そこかしこがぼろぼろです」
ソフィが周囲を見回しながら言う。塔の壁や床は所々が剥がれたり、崩れ落ちたりしており、外から光が差し込むおかげでそれほど暗くはない。だが、穴があくほど老朽化しているということは衝撃には耐えられないということだ。塔全てが脆い訳ではないだろうが、それでも確実に『弱い場所』はそこかしこにある。
「踏み抜かないように注意しないとね。……戦いになった時尚更、避けた所が崩れたなんて事になったら笑い話じゃ済まないわ」
綾瀬は特に、戦闘になったときの事を考えて周囲に目星をつけていた。激しい戦いになったとすれば、足場には特に気をつけなければならないからだ。綾瀬がチェックしていくのにあわせ、ケンジもまた壁を軽く叩いてみたり、床を踏みしめて状態を細かく確認していた。
「一階層ずつ安全確保して進むとなると、軍務を思い出すわ。第一ブロック・オールクリア。次! みたいなカンジで進むやつ」
「あぁ、わかる気がするね~」
同調し、同じように壁を叩いたりして注意深く確認しているエニアが反応を返す。彼は建物の弱い所というよりは、罠の有無を確認していた。侵入者を阻む落とし穴や、仕掛けといったものがないかを念入りにチェック。物陰などもくまなく調べてみたが、どうやらそういったものはないらしい。
「うん、クリアーってやつだね。アリオーシュさん、一階層は大丈夫みたい」
「了解です」
皆の集めた情報はアリオーシュの作る地図に集約していく。老朽化している箇所、戦闘に耐えうるスペース、罠の有無等、仔細に書記し、マッピングしていった。一階の間取りを調べきるのにはそう長い時間は要さず、二階層へ進む階段も見える場所にある。
「そこまで広くはないのですね……」
ミオレスカは呟く。この塔は中央の部屋を廊下がぐるりと取り囲んでいる円柱の塔のようで、直径もおよそ30mあるかないか、といったところだろう。今まで山に隠れて発見されなかったのも、そこまで大きくなかったせいもある。
「さて、中央の部屋の扉はこれですかね……鍵は、閉まってないようですが」
ソフィが注意深く扉を開ける。が、中にはこれといったものはない。石造りの部屋、というだけであり、何をする部屋なのかという情報は何ひとつなかった。だが……。
「ん、なんだこりゃ。……木片?」
ケンジが木片を発見する。砂を被ってて気付きにくかったが、それは木箱か何かに使われている木片だった。
「……加工された痕跡のある木片、ですね。木箱か、樽か。……何れにせよ、ここに何かがあったという裏付けでしょう。……恐らく、歪虚に持ち去られた後という事になるでしょうが」
それを見てエフィーリアが呟く。ここに人が居た、という証拠を見つけた一行は、そのまま二階へと上がり、次なる階層の探索をする。
「うへ、二階はひどいね」
エニアが思わず漏らす。二階の崩落具合は一階よりも酷く、崩れた天上の瓦礫が山のように積み上がっていたり、壁には大穴が空いて外の景色が見えたりしている。
「あ、あれはなんでしょうか……鎧?」
そんな瓦礫の山の中、ミオレスカが遠くに打ち捨てられている鎧を見つける。
「……鎧、ですね。……もしや、死体?」
アリオーシュが怪訝そうな視線を送る。鎧は人間の使う装備。言うなれば人間がここに居た何よりの痕跡だ。帝国の騎士やハンターのものであるならば、ここに打ち捨てられている時点で持ち主の生死は火を見るより明らかであるが……。
「……いえ、まって。……気をつけて下さい、あれは」
エフィーリアが制すると同時に、鎧はカチャリ、と音を立てる。その僅かな動きを皮切りに、全身甲冑の鎧はカチャカチャと音を立てて動き出した。それも1体だけではない。見えるだけで4体の甲冑が剣や弓を携えてこちらに迫ってくる。
「おお!? 何だ何だ!? 中身あんのか? 寝てたのか!?」
「そんな訳ないでしょー! リビングアーマーって奴だよ!」
ケンジのおちゃらけた言動にツッコミを入れつつ、覚醒して大きく前に踏み出るエニア。動く甲冑が剣を振り翳す動きに対して、風を纏う腕でその動きを振り払う。
「はっ!」
そのまま逆の手でスタッフを振るい、水の弾丸を甲冑に叩きこむ。ガシャリと音を立てて飛び散る甲冑の中身は当然空洞であり、すぐさま元の形に組み直る。
「厄介ね。粉々にしないと止まらないのかしら」
綾瀬がアサルトライフルを構え、制圧射撃を繰り出す。敵は意思なく迫って来る鎧である為、行動阻害は効かなかったが、その分弾丸がまともに直撃し、鉄が大きく穿たれる。
「ボロい塔の中で動きまわる鎧とか、ちょっとしたホラーじゃんか! けど、斬れるならそんな怖い相手じゃねーな!」
ケンジは武器を水平に構え、一気に間合いを詰めて鎧を刺し貫く。先程エニアの水弾を受けて脆くなっていた鎧は穿たれる剣閃に砕け散る。
残った敵の動きもそこまで速くはなく、魔術師であるエニアが纏う風の衣やケンジの剣捌きに受け流されてまともに攻撃は当たらない。そこへ後方から、弓を番えて放とうとしていた別の鎧へ
「させませんよ……」
アリオーシュがその鎧へ向かって光の弾を放つ。放たれた光弾は鎧の肩を穿ち、狙いを逸らさせる。そこへ更にミオレスカの冷気を纏う弾丸が放たれ、関節が凍りついて動かなくなる。
「えっーと、動かないでくださいね?」
動かなくなった鎧へケンジの斬撃が叩き込まれて沈静化する。一体一体を倒すのに時間はかかるが、概ねかすり傷程度で済む快勝をハンター達は成し遂げる。
「……お疲れ様でした、これで塔の探索を続けられますね」
エフィーリアが労いの言葉と共に傷が比較的深い者へ回復を施すと、ハンター達は塔の探索を再開する。
二階層の大部分は崩落しており、中央の部屋も三階層から崩れてきた瓦礫のせいで探索はほぼ不可能だった。老朽化していた床もあり、ハンター達は無理せず3階層へと上がっていく。
三階層は床が抜けて2階層へ落ちてしまっており、穴だらけだ。注意して進まなければ穴が大きくなってしまうだろう。一行は慎重に頑丈な所を探して注意深く進んでいく。
アリオーシュが身体にロープを巻いて命綱を作りつつ、綾瀬がそれを持つ。アリオーシュは足をかけつつ慎重に床を踏みしめていき、先頭を歩いていく
「皆様、どうかくれぐれも気をつけ、て…………っ」
注意を促そうとしたエフィーリアが、ふらりと足をもつれさせて、穴の方に倒れこむ。
「あ、危ないっ……!」
その手をエニアが取り、引っ張って戻す。勢いがつき、ぽすっとエニアがエフィーリアを抱きとめる形になる。
「あ……あ、す、すみません、私とした事が……ありがとうございます、エニア様……」
「ぇと……雇い主だし、ね?」
ちょっと照れくさそうに顔を掻くエニア。そんなハプニングはあれど、一行は無事三階層目を抜ける事に成功し、四階へと登っていった。
「第三ブロック、オールクリア、ってな。さて、四階はどうなるかなっと……」
ケンジが見回し、警戒しながら四階へ到達する。相変わらず壁を叩いてはいるが、隠し扉や仕掛けのようなものはない。シンプルな塔だ。
「となると、あとはこの中だけですかね……」
ソフィが中央の扉を指す。四層目もこれまでと同じく、部屋をぐるりと取り囲む廊下と上下への階段しかなかった。つまり、残す所はこの部屋と、屋上のみということだ。
「開けるね……」
エニアが注意深く、扉を開ける。その部屋は一階層目と違い、奥には何やら、壁画のようなものがあった。
「あれは、一体……」
ソフィが興味深そうに覗きこもうとしたのを、綾瀬が制した。
「待って、何かいる」
薄暗い部屋の中、ずるずると蠢く何かがある。LEDライトを動かして当てると、映し出されたのは巨大なトカゲだった。負のマテリアルを帯びて、凶暴化している。
「雑魔です……! 警戒してください!」
ミオレスカの言葉と共に、トカゲは爪を振りかざして襲いかかってくる。
「させない、よっ!」
「先手必勝ってな!」
前に出たエニアとケンジがトカゲの進路に立ち塞がる。トカゲは足を止め、エニアを薙ぎ払おうとするが、吹き付ける風が爪を僅かに逸らせる。だが、その大きな爪を避けきる事は出来なかったか、浅い傷がエニアに出来る。
「うっ、く……毒か、しらっ……!」
じわり、とエニアの白い肌が変色する。
「今、回復を……!」
すかさずアリオーシュがキュアを唱え、エニアの毒を取り除く。ケンジは攻撃した隙を狙って斬撃を放つも、トカゲの鱗は硬く、ダメージを与えにくい。
「ちっ、硬いな……!」
ソフィも同じく魔法による攻撃を積極的に試みる。しかしトカゲの鱗に阻まれ、炎はダメージが通りにくいように見えた。風の斬撃による魔法に切り替え、その硬い鱗に少しずつ傷を作っていく。
やがてトカゲはすぅっ、と息を吸い込む。何かが来る、と察知したエニアはショットアンカーを取り出し、天井に打ち込んだ。次の瞬間、ぶわっと刺激臭のするブレスが前衛に向けて放たれる。エニアはショットアンカーの動きで素早く天井に登って回避するも、ケンジはまともに浴びて身体が麻痺してしまう。ブレスに対しての対策をとっていなかったのだ。
「や、べっ……!」
トカゲはその巨体を振り、ケンジを尻尾で弾き飛ばそうとする。そこへミオレスカと綾瀬の弾丸が直撃し、身体の一部を凍結させた。
「大丈夫ですか!」
「ゆっくり下がりなさい。麻痺はこっちで治すから……!」
カチカチ、と凍結していくトカゲの身体。その動きは目に見えて緩慢になっているように感じた。
「ん? あ、変温動物だから冷気に弱いのか。好都合、だね!」
天井からアンカーを抜いて飛び降りたエニアは、そのまま水の弾丸を生成してトカゲに叩きつける。
「そこ、見えましたっ!」
大きく仰け反ったそこへ、ソフィの風の刃が急所を捉えた。喉を切り裂かれたトカゲはやがて体温を奪われて絶命し、消滅した。
「危ない所でしたね……今、治しますから……」
「はは、ドジっちまった……悪い」
アリオーシュがケンジの麻痺を取り除き、エフィーリアが傷を負った皆を癒していく。
安全を確保したところで、一行は壁画の前に立った。描かれているのは、小高い丘に立ち天へと吠える、三つ首の狼の姿だった。その丘の下で、黒く異形の存在と、小さな犬が無数に横たわっているように見えた。
「……これは、一体?」
ソフィは興味深くその壁画を眺め、アリオーシュは正確に模写をする。
「……恐らく、大幻獣の姿、でしょうか」
エフィーリアが壁画を眺める。丘に立つのが大幻獣だとすると、丘の下で横たわるこれらは……。
「ん~……歪虚、かな?黒いのはそうだよね? けど、なんか普通の犬みたいなのもたくさん同じ所にいるよね……これ、なんだろ?」
エニアが絵をじっくりと眺め、考察する。
「……なんだか、この狼さん、悲しそうなのです」
ミオレスカが天に吠える狼を見て、感想を漏らす。一行が改めて見ると、言われてみればその狼はどこか物悲しげに描かれているように見えた。
だが、それでも。この壁画が何を意味するのかは、この時点では彼らはまだ知り得なかった。
そして一行は、塔の頂上に到達する。ビャスラグ山が一望できる非常に美しい風景に、探索で疲れた身体も感動を覚える。だが、頂上には何の姿も無かった。
「幻獣は居ませんでしたか……今回の収穫は、壁画だけでしょうか」
「うーん、ハズレなのかな? でも、ファリフの族長が呼ばれてる以上、またここに用があるよね?」
がっかりするソフィに対し、エニアは持参したロープを各所に垂らしている。ショートカットを作っているようだった。これならば三階から登ってすぐ窓を伝い、屋上へ辿り着く事が出来る。
「地図も出来ましたし、また来た時にはもう少しスムーズに到達出来るでしょう」
アリオーシュのマッピングにより、安全に通ってこれるルートも確立している。
謎の壁画、そして人の痕跡……これらの結果は一体、何を意味するのだろうか。
何かの予感を感じ取りながら、一行はひとまず、ナルガンド塔を後にするのだった。
依頼結果
参加者一覧
サポート一覧
依頼相談掲示板 | |||
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【相談卓】サーチ&デストロ~イ 十色・T・ エニア(ka0370) 人間(リアルブルー)|15才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/06/25 04:04:41 |
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【質問卓】 十色・T・ エニア(ka0370) 人間(リアルブルー)|15才|男性|魔術師(マギステル) |
最終発言 2015/06/24 06:56:46 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/25 03:12:42 |