ゲスト
(ka0000)
山猫団! お頭、さらわれる。
マスター:水貴透子

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/06/26 22:00
- 完成日
- 2015/07/03 20:00
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
我ら、山猫団!
ハンターだけを狙う山賊とは、私達のことさ!
まぁ、1度も追いはぎとか成功してないんだけどな!
ビッグ、ミドル、スモールの3人を携えて、今日も今日とて楽しく山賊稼業。
――……のはずだったのに、なんで私がさらわれてるんだ!?
※※※
「お頭がー! 雑魔にさわられました!」
「お頭がー! それを言うなら、さらわれました!」
「お頭がー! オークっぽい奴の巣に落ちていきました!」
普段は神出鬼没の山猫団の3馬鹿が、なぜかハンターオフィスに来ていた。
それぞれ言っていることがバラバラなのだが、とりあえずお頭であるキャットがいなくなったらしい。
「……とりあえず、詳しく教えてもらえますか?」
案内人も引きつった表情で、3馬鹿に話しかけるが、それぞれがおいおいと泣いていて埒が明かない。
それでもなんとか、案内人根性で話を聞きだしたのだが……。
「つまり、山を歩いていたらお頭さんが足を滑らせて崖から落ちて行った……」
「慌てて3人で崖の下を見てみると、運悪く彼女は雑魔のいる場所に落ちて行ったと……」
帰ってきてる場合じゃないだろ、と言いたいところだが屈強な姿をしていても、彼らは一般人。
一般人は雑魔と戦うすべはなく、ここに戻ってきたのは結果的に良かったと言えるのかもしれない。
……お頭であるキャットが危険な状態というのは変わらないのだけれど。
「わかりました。すぐにハンターさん達に声をかけてみますので、お待ちください」
そう言って、案内人の女性は手が開いていそうなハンター達に声をかけ始めた。
リプレイ本文
●おかしら救出作戦
「迷子の猫さんを探しに行くんだよ! ついでに悪い人もやっつけちゃうんだから!」
桜庭 あかり(ka0326)はグッと拳を強く握り締めながら呟く。
どうやら桜庭は『キャット』を人間ではなく『猫』として認識しているらしい。
「そこの人達も元気出して! 猫さん、ちゃんと見つけるからね! はい、これあげる!」
桜庭は3馬鹿に『天然蜂蜜』を渡す。相手が好きかどうかは分からず、少し不安だったみたいだが、山猫団の3馬鹿は『天然蜂蜜』を喜びながら受け取り、どこからか食べ物を取り出し、それに塗りながら食べている。
「相変わらず食べ物に関しては動きが早いな……。それに、こんな事になったのも楽な生き方をしているからこういう目に遭うんだ」
厄介なのは雑魔なのか、それとも山猫団なのか、とシン・コウガ(ka0344)は言葉を付け足しながら呟いた。
(まぁ『天然蜂蜜』をもらって落ち着いているから、ライフルで脅かす必要はないか)
「またお前らかよ、まったく……とはいえ、あの嬢ちゃんを死なせるのは惜しいからな……ちゃちゃっと助けに行くか」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は苦笑気味に呟く。そんなエヴァンスの言葉に食いついたのは、彼の隣に立っていたジルボ(ka1732)だった。
「おかしら、とやらは女の子なのか! 待ってろよ、キャットちゃん! 俺が必ず助けてやるからな!」
ふんす、ふんす、と鼻息荒く言い、ジルボは今回一緒になった仲間達から少々引かれている。
「助けた礼にあんな事やこんな事も……!」
不純な動機が満載のジルボに、山猫団の3馬鹿が勢いよく言葉を投げかけた。
「おかしらは、そんなあんな事やこんな事をやる気になれる女の子ではありません!」
「おかしらは、ちっこいし、胸はぺったんこだし!」
「おかしらは、女の子というものから外れた存在なんですよ!」
「本当におかしらを助けたいのか……?」
山猫団の3馬鹿の言葉に、柊 真司(ka0705)が苦笑した表情を見せる。
「夜の森だし……探しづらい状況だが、手遅れになる前に救出しねぇとな」
「そうですよ! おかしらは自分らを養ってくれているんですから!」
「そうしてください! おかしらがいないと、自分らはどうにもなりません!」
「早くしてください! 何か食べ物ください!」
「お前ら、本当に大人なのか? 俺の知ってる大人と違う」
柊は額に手を当てながら呟く。
「大丈夫だよ! 絶対にざくろたちが助けるから! ざくろも冒険団長やってるから、団と聞くと、なんか他人じゃない気がするし!」
時音 ざくろ(ka1250)が山猫団の3馬鹿を安心させるようにニコッと微笑む。
「天国のおかしら! 出会いをありがとうございます!」
「地獄のおかしら! こんな美少女と出会えてラッキーです!」
「ピンチのおかしら! 自分達は新しいおかしらを見つけました!」
時音を見て、山猫団の3馬鹿のテンションは激しくアップした。
「び、美少女? ざ、ざくろは男! 男だから!」
慌てて『自分は男』と否定するけど、ここで引き下がるようなら山猫団なんてやっていない。
「いいえ! 女性です!」
「いいえ! きっと環境のせいで自分は男と偽って生きなきゃいけなかったんです!」
「いいえ! 一人称が自分の名前……萌え!」
山猫団に美少女認定されてしまった時音は、それから何度説明しても『男』だと信じてもらえなかった。
「キャットちゃん、最近姿を見ないと思ったら……こんなコトになってたのね」
天川 麗美(ka1355)がため息まじりに呟く。
「大丈夫、こう見えてもわたしは山猫団を保護したことがあるんですからね。つまり、保護者? わたしはママも同然ってことよね」
天川がひとり頷いていると…。
「ママ! お腹が空きました!」
「ママ! 喉も乾きました!」
「ママ! 彼女が欲しいです!」
天川がママと言ったせいか、山猫団の3馬鹿が天川の息子(赤の他人)となってしまった。
「あれ、何かヘンな気が……結婚してないのに、こんなムキマッチョの子供が3人……? しかも明らかにわたしより年上な気がしますよぉ」
「あの、ここで漫才もいいけど……早くいかないと、大変なことになるんじゃないかな?」
リサ・カーライル(ka2045)が最もなことを言い、ハンター達はそれぞれ動き始めたのだった。
●迷子の子猫ちゃん
山猫団の3馬鹿に、ハンター達はキャットが落ちた場所を教えてもらっていた。
「ここからかぁ、下は暗くて見えづらいね……」
時音が崖下を覗き込んでみるけど、夜ということもあり、何も見えない。
「よし、ざくろは『ジェットブーツ』で先に降りちゃうね」
「俺も行こう」
時音と柊は『ジェットブーツ』を使用して、先に崖から降りていく。
「俺も行く」
エヴァンスは『グレートソード・テンペスト』の力を利用して、崖から降りる。
「私は、このロープを木にでもくくりつけて、それを辿って降りてみようかな。下に行く人数は多ければ多いほどいいでしょうし」
リサはにっこりと微笑んだ後、近くの木にロープをくくりつけ始める。
それぞれがキャットを探すため、行動を開始し始めた。
※※※
「足跡は残されているな、この小さい方がキャットで……こっちは、オークか」
あれから暫く経ち、シンが崖下に降りると足跡の群れを見つけた。
「……人間の足跡? キャットは、猫じゃないの?」
シンの言葉に、桜庭はかくりと首を傾げながら呟く。どうやら、まだ桜庭は勘違いしたままのようだ。
「……現物を見れば分かる」
今は説明する時間も惜しいため、シンはあえて訂正することなく、夜闇の中を進んでいく。
「キャットちゃんの救出が最優先、麗美ちゃん、頑張っちゃいますよぉ。ただし、危ないですから戦闘の時はじっとしていてくださいねぇ。邪魔をすると流れ弾に当たっちゃうかも……うふふ」
天川は銃をちらっと見せながら、山猫団の3馬鹿に告げる。
「大丈夫だって、俺がちゃんと見てるし。俺がいかに頑張ったか、この3人にはおかしらに伝えてもらわなきゃいけないからなー、そしてジルボロマンスの始まりだ……!」
(……ロマンスが出来る相手じゃないってことは言わない方がいいですよねぇ)
天川はジルボの夢を壊してはいけない(面白いから)と思い、彼の言葉を訂正しない。
そのせいか、ジルボの中の『キャット』という人物はどんどん美化されていっていた。
「ジルボロマンスのために、筋肉達磨の御守りをしてやってるんだ、そう、すべてはジルボロマンスのために!」
「あら、大きな声が聞こえたと思ったら……」
ジルボの言葉が聞こえたらしく、リサと合流する。
「……というと、ここが落ちた地点になるのか」
「ええ、LEDライト……だっけ? これで、手がかりを探してみたんだけど、足跡が散乱していて、どれが一番新しい足跡なのか分からないんだよね」
リサはため息まじりに呟く。
そんな時だった。別行動をしていた時音から、キャットとオークを発見したという連絡が入ったのは……。
●戦闘開始、オークから子猫ちゃんを守りましょう
「な、なんだよ、お前は……!」
キャットを発見した時音は、オークとキャットの間に立ち、武器を構える。
「山猫団のお頭、だよね? 大丈夫、ざくろが守るから! ……おまえ達の相手はざくろだ……くらえ、デルタエンド!」
時音は『グレートソード・エッケザックス』を振り上げ、1匹のオークに攻撃を仕掛ける。
「おいおいおいおい、1人で2匹と戦うのか!? 私は戦力にならないぞ! 応援も出来ないぞ、お前がやばくなったら、私は逃げるからな!」
混乱しているらしく、心配と本音がだだ漏れになっている。
「大丈夫、すぐに仲間がくるから――……ほら、来た」
時音の言葉が終わったと同時に、エヴァンスがオークに攻撃を仕掛けた。
「よぅ、覚えてないかもしれんが、また会ったな。嬢ちゃん」
「おお! 我ら山猫団の理解者じゃないか! こんな所で会うとは奇遇だな、何してるんだ?」
「……一応、嬢ちゃんを助けにな」
エヴァンスがやってきてから、少し遅れ、柊も戦線に加わる。
「助けに来たぜ」
「すっげぇな、金色の目か! なんか金になりそうな色だ!」
「……助けに来た相手を値踏みか、とりあえず元気そうで安心した」
キャットの言葉に苦笑しながらも、柊はキャットの前に立ち、彼女に危険が及ばぬよういつでも庇える位置に立った。
「おかしらー! 心配しました!」
「おかしらー! 自分達、おかしらがいなきゃダメです!」
「おかしらー! ざくろちゃんに出会いました!」
山猫団の3馬鹿がキャットに駆け寄る。
「おやおや、随分と調子のいいことを言ってるねぇ……」
3馬鹿の変わり身の早さに、リサも苦笑している。
「あれ? 猫さん……あ、あれ? ま、まぁ、とりあえず倒しちゃうぞー!」
猫だと思っていた桜庭は、キャットと呼ばれる少女を見て首を傾げている。
けれど、とりあえず雑魔を倒すことを優先と考え「えくすなんとかー!!」と必殺技名になっているのか、なっていないのか分からない言葉を叫ぶ。
「おかしら! あの子、えくすなんとかですって!」
「おかしら! あの子、勇者じゃないですか!?」
「おかしら! あの子、おかしらより年下なのに立派です!」
「黙ってろ! まったくいつもいつも騒ぎを起こす厄病猫共が!」
3馬鹿の言葉を聞き、シンはやや怒った口調で呟き『アサルトライフル・ヴォロンテAC47』で援護射撃を行う。
「おかしら、自分トキめきます……!」
シンの頼りになる背中を見つめながら、ミドルがトキめいていたが、誰一人としてツッコミを入れなかったのは、恋する乙女な視線を向けるミドルが気持ち悪かったからだろう。
「お前らも運がなかったな、こいつはお前らが触れていい女じゃないぜ」
エヴァンスが呟き『チャージング』と『渾身撃』を繰り出した。
「こんな所でボケッとしてんな、もう少し下がれ!」
柊はまだ戦線上にいるキャットと3馬鹿に言葉を投げかける。
「あいつ、クール系かと思ったら意外と熱血だな。俺がやってやるぜー的な雰囲気を感じるぞ」
戦う姿を見て、勝手に熱血認定された事が気になったが、柊はとりあえず目の前のオークを倒すことに集中する。
「マテリアルと大地の女神の名において……(以下省略)……超・重・斬!」
時音が叫び、必殺技を決めるけど、その後に3馬鹿がアイドルを追っかける男性並の声援を送った事に、お頭であるキャットはやや引いていた。
「キャットちゃん、意外と大人しいわねぇ、これは必要なかったかしら」
天川が援護射撃を行いながら、おやつ&ツナ缶を取り出すと、光の速さでキャットはそれを奪う。
「相変わらずみたいで安心しましたよぉ」
「……キャットちゃんって、あんたか。俺の想像では、こう出るトコ出たグラマー系おかしらだったんだが……まぁ、これはこれで悪くないな」
「なんだ、そのいやらしい視線は! 私は女という部類に生まれてはいるが、女らしいところは皆無だぞ! はん、別に悔しくないけどな! ああ、悔しくないとも! 畜生、なんなんだ、お前は! 名を名乗れ!」
悲しさのあまり、目の前のジルボに八つ当たりをするキャットは今にも泣きそうだ。
「俺はジルボ――……」
「女好きのジルボだな、私は助けてもらって嬉しくないぞ! ぜーんぜん嬉しくないからな! 嬉しく思って欲しいなら、山賊稼業が出来る山をくれ! そうしたら嬉しがってやってもいい!」
「……なんだ、このツンデレなのか、そうじゃないのか分からない子は……とりあえず、これをやるから落ち着け」
ジルボは『白龍様サブレ』を取り出し、キャットに渡してやると、それもまた光の速さで彼女の腹の中におさまってしまった。
「うん? キャットはお菓子が好きなの? ポテトチップ、食べる? 私はこういう油っぽいものはなかなか受け付けなくてねぇ、あぁ……『ファイアアロー』」
リサは『ファイアアロー』を繰り出しながら、ごそごとポテトチップを取り出す。
「ぎゃー! しれっと火ぃ出すな! 山火事!」
「ああ、この火は相手に当たったらすぐ消えるから山火事にはならないよ」
おっとりとした口調から天然を思わせ、キャットは「なんか、怖い奴だな、おまえ」としみじみ呟いた。
そして、ドタバタしている最中にオーク2匹はハンター達によって無事倒されたのだった。
●山猫団、山に帰る
「えっ、この可愛い子がおかしらなの!? ごめん、もっと髭面マッチョかと……」
時音はキャットを見ながら驚く。
「美少女でたらしとか、羨ましすぎるぞ! 食うもんもある、美少女、性格いい、なんだ、私に対するあてつけ存在かっ!」
「お前の心が濁ってるから、そう思えるんだろ……はぁ、もういい加減まっとうな道に戻れ。ほっといても害はないのに、何で俺は説教してるんだろうな」
シンはため息をつきながら、キャットの頭をぐりぐりと撫でる。
「まぁ、いいじゃねーか。こういう奴らがいるのも楽しいだろうしよ」
エヴァンスが山猫団を庇うように言うと「ANIKI!」と3馬鹿から尊敬の眼差しを向けられる。
「お前怪我してるだろ。腹ンところを庇ってる」
柊が問いかけると「ぎゃっ、触るな! せ、せ、せ、せ……なんとかになるぞ!」
どうやら『せくはら』と言いたいらしい。
「いや、俺がそれをしたらリアルブルーでは犯罪だからな」
「はっ、腹黒シスターまでいるじゃねーか! 別に……別に嬉しくないぞ! 私は別に、お前の事を心友とは思ってないからな! 腐れ縁なだけだぞ!」
どうやら、助けに来てもらえて嬉しいらしい。
「キャットちゃん、俺頑張ったよね!?」
「怖い! 鼻息荒くして近寄ってくんな!」
幼子に近寄るジルボはやや切羽詰った何かを感じさせる。
「さて、今日こそ逃がさないようにしっかりとしなきゃね」
心友、もとい天川はビシッとロープを握り締める。その姿はさながら、シスターというより女王様と呼ばれる類のものに見える。
「断る! 私達を捕まえるというのなら……こいつを倒してからするんだな!」
「……俺かっ!?」
突然、脈絡なく盾にされたエヴァンスが叫ぶ。
「いや、別にお前らが捕まりたくないっていうなら、俺は止めてやるけど……」
エヴァンスが悩んでいる間に、3馬鹿はキャットを抱えてスタコラと走り出していた。
「……いい加減、更生施設みたいなものに入れた方がいいんじゃないか?」
シンが頭を抱えながら呟く。
しかし、見知らぬ山の中、これより30分後に遭難している山猫団を発見して、ハンター達と一緒にオフィスまで行くことになったのだが――……見知った場所に着いた途端、彼らは姿を消してしまっていた。
『次に会ったら、お前らの装備ぶんどってやるからな!』
この書置きだけを残して――……。
END
「迷子の猫さんを探しに行くんだよ! ついでに悪い人もやっつけちゃうんだから!」
桜庭 あかり(ka0326)はグッと拳を強く握り締めながら呟く。
どうやら桜庭は『キャット』を人間ではなく『猫』として認識しているらしい。
「そこの人達も元気出して! 猫さん、ちゃんと見つけるからね! はい、これあげる!」
桜庭は3馬鹿に『天然蜂蜜』を渡す。相手が好きかどうかは分からず、少し不安だったみたいだが、山猫団の3馬鹿は『天然蜂蜜』を喜びながら受け取り、どこからか食べ物を取り出し、それに塗りながら食べている。
「相変わらず食べ物に関しては動きが早いな……。それに、こんな事になったのも楽な生き方をしているからこういう目に遭うんだ」
厄介なのは雑魔なのか、それとも山猫団なのか、とシン・コウガ(ka0344)は言葉を付け足しながら呟いた。
(まぁ『天然蜂蜜』をもらって落ち着いているから、ライフルで脅かす必要はないか)
「またお前らかよ、まったく……とはいえ、あの嬢ちゃんを死なせるのは惜しいからな……ちゃちゃっと助けに行くか」
エヴァンス・カルヴィ(ka0639)は苦笑気味に呟く。そんなエヴァンスの言葉に食いついたのは、彼の隣に立っていたジルボ(ka1732)だった。
「おかしら、とやらは女の子なのか! 待ってろよ、キャットちゃん! 俺が必ず助けてやるからな!」
ふんす、ふんす、と鼻息荒く言い、ジルボは今回一緒になった仲間達から少々引かれている。
「助けた礼にあんな事やこんな事も……!」
不純な動機が満載のジルボに、山猫団の3馬鹿が勢いよく言葉を投げかけた。
「おかしらは、そんなあんな事やこんな事をやる気になれる女の子ではありません!」
「おかしらは、ちっこいし、胸はぺったんこだし!」
「おかしらは、女の子というものから外れた存在なんですよ!」
「本当におかしらを助けたいのか……?」
山猫団の3馬鹿の言葉に、柊 真司(ka0705)が苦笑した表情を見せる。
「夜の森だし……探しづらい状況だが、手遅れになる前に救出しねぇとな」
「そうですよ! おかしらは自分らを養ってくれているんですから!」
「そうしてください! おかしらがいないと、自分らはどうにもなりません!」
「早くしてください! 何か食べ物ください!」
「お前ら、本当に大人なのか? 俺の知ってる大人と違う」
柊は額に手を当てながら呟く。
「大丈夫だよ! 絶対にざくろたちが助けるから! ざくろも冒険団長やってるから、団と聞くと、なんか他人じゃない気がするし!」
時音 ざくろ(ka1250)が山猫団の3馬鹿を安心させるようにニコッと微笑む。
「天国のおかしら! 出会いをありがとうございます!」
「地獄のおかしら! こんな美少女と出会えてラッキーです!」
「ピンチのおかしら! 自分達は新しいおかしらを見つけました!」
時音を見て、山猫団の3馬鹿のテンションは激しくアップした。
「び、美少女? ざ、ざくろは男! 男だから!」
慌てて『自分は男』と否定するけど、ここで引き下がるようなら山猫団なんてやっていない。
「いいえ! 女性です!」
「いいえ! きっと環境のせいで自分は男と偽って生きなきゃいけなかったんです!」
「いいえ! 一人称が自分の名前……萌え!」
山猫団に美少女認定されてしまった時音は、それから何度説明しても『男』だと信じてもらえなかった。
「キャットちゃん、最近姿を見ないと思ったら……こんなコトになってたのね」
天川 麗美(ka1355)がため息まじりに呟く。
「大丈夫、こう見えてもわたしは山猫団を保護したことがあるんですからね。つまり、保護者? わたしはママも同然ってことよね」
天川がひとり頷いていると…。
「ママ! お腹が空きました!」
「ママ! 喉も乾きました!」
「ママ! 彼女が欲しいです!」
天川がママと言ったせいか、山猫団の3馬鹿が天川の息子(赤の他人)となってしまった。
「あれ、何かヘンな気が……結婚してないのに、こんなムキマッチョの子供が3人……? しかも明らかにわたしより年上な気がしますよぉ」
「あの、ここで漫才もいいけど……早くいかないと、大変なことになるんじゃないかな?」
リサ・カーライル(ka2045)が最もなことを言い、ハンター達はそれぞれ動き始めたのだった。
●迷子の子猫ちゃん
山猫団の3馬鹿に、ハンター達はキャットが落ちた場所を教えてもらっていた。
「ここからかぁ、下は暗くて見えづらいね……」
時音が崖下を覗き込んでみるけど、夜ということもあり、何も見えない。
「よし、ざくろは『ジェットブーツ』で先に降りちゃうね」
「俺も行こう」
時音と柊は『ジェットブーツ』を使用して、先に崖から降りていく。
「俺も行く」
エヴァンスは『グレートソード・テンペスト』の力を利用して、崖から降りる。
「私は、このロープを木にでもくくりつけて、それを辿って降りてみようかな。下に行く人数は多ければ多いほどいいでしょうし」
リサはにっこりと微笑んだ後、近くの木にロープをくくりつけ始める。
それぞれがキャットを探すため、行動を開始し始めた。
※※※
「足跡は残されているな、この小さい方がキャットで……こっちは、オークか」
あれから暫く経ち、シンが崖下に降りると足跡の群れを見つけた。
「……人間の足跡? キャットは、猫じゃないの?」
シンの言葉に、桜庭はかくりと首を傾げながら呟く。どうやら、まだ桜庭は勘違いしたままのようだ。
「……現物を見れば分かる」
今は説明する時間も惜しいため、シンはあえて訂正することなく、夜闇の中を進んでいく。
「キャットちゃんの救出が最優先、麗美ちゃん、頑張っちゃいますよぉ。ただし、危ないですから戦闘の時はじっとしていてくださいねぇ。邪魔をすると流れ弾に当たっちゃうかも……うふふ」
天川は銃をちらっと見せながら、山猫団の3馬鹿に告げる。
「大丈夫だって、俺がちゃんと見てるし。俺がいかに頑張ったか、この3人にはおかしらに伝えてもらわなきゃいけないからなー、そしてジルボロマンスの始まりだ……!」
(……ロマンスが出来る相手じゃないってことは言わない方がいいですよねぇ)
天川はジルボの夢を壊してはいけない(面白いから)と思い、彼の言葉を訂正しない。
そのせいか、ジルボの中の『キャット』という人物はどんどん美化されていっていた。
「ジルボロマンスのために、筋肉達磨の御守りをしてやってるんだ、そう、すべてはジルボロマンスのために!」
「あら、大きな声が聞こえたと思ったら……」
ジルボの言葉が聞こえたらしく、リサと合流する。
「……というと、ここが落ちた地点になるのか」
「ええ、LEDライト……だっけ? これで、手がかりを探してみたんだけど、足跡が散乱していて、どれが一番新しい足跡なのか分からないんだよね」
リサはため息まじりに呟く。
そんな時だった。別行動をしていた時音から、キャットとオークを発見したという連絡が入ったのは……。
●戦闘開始、オークから子猫ちゃんを守りましょう
「な、なんだよ、お前は……!」
キャットを発見した時音は、オークとキャットの間に立ち、武器を構える。
「山猫団のお頭、だよね? 大丈夫、ざくろが守るから! ……おまえ達の相手はざくろだ……くらえ、デルタエンド!」
時音は『グレートソード・エッケザックス』を振り上げ、1匹のオークに攻撃を仕掛ける。
「おいおいおいおい、1人で2匹と戦うのか!? 私は戦力にならないぞ! 応援も出来ないぞ、お前がやばくなったら、私は逃げるからな!」
混乱しているらしく、心配と本音がだだ漏れになっている。
「大丈夫、すぐに仲間がくるから――……ほら、来た」
時音の言葉が終わったと同時に、エヴァンスがオークに攻撃を仕掛けた。
「よぅ、覚えてないかもしれんが、また会ったな。嬢ちゃん」
「おお! 我ら山猫団の理解者じゃないか! こんな所で会うとは奇遇だな、何してるんだ?」
「……一応、嬢ちゃんを助けにな」
エヴァンスがやってきてから、少し遅れ、柊も戦線に加わる。
「助けに来たぜ」
「すっげぇな、金色の目か! なんか金になりそうな色だ!」
「……助けに来た相手を値踏みか、とりあえず元気そうで安心した」
キャットの言葉に苦笑しながらも、柊はキャットの前に立ち、彼女に危険が及ばぬよういつでも庇える位置に立った。
「おかしらー! 心配しました!」
「おかしらー! 自分達、おかしらがいなきゃダメです!」
「おかしらー! ざくろちゃんに出会いました!」
山猫団の3馬鹿がキャットに駆け寄る。
「おやおや、随分と調子のいいことを言ってるねぇ……」
3馬鹿の変わり身の早さに、リサも苦笑している。
「あれ? 猫さん……あ、あれ? ま、まぁ、とりあえず倒しちゃうぞー!」
猫だと思っていた桜庭は、キャットと呼ばれる少女を見て首を傾げている。
けれど、とりあえず雑魔を倒すことを優先と考え「えくすなんとかー!!」と必殺技名になっているのか、なっていないのか分からない言葉を叫ぶ。
「おかしら! あの子、えくすなんとかですって!」
「おかしら! あの子、勇者じゃないですか!?」
「おかしら! あの子、おかしらより年下なのに立派です!」
「黙ってろ! まったくいつもいつも騒ぎを起こす厄病猫共が!」
3馬鹿の言葉を聞き、シンはやや怒った口調で呟き『アサルトライフル・ヴォロンテAC47』で援護射撃を行う。
「おかしら、自分トキめきます……!」
シンの頼りになる背中を見つめながら、ミドルがトキめいていたが、誰一人としてツッコミを入れなかったのは、恋する乙女な視線を向けるミドルが気持ち悪かったからだろう。
「お前らも運がなかったな、こいつはお前らが触れていい女じゃないぜ」
エヴァンスが呟き『チャージング』と『渾身撃』を繰り出した。
「こんな所でボケッとしてんな、もう少し下がれ!」
柊はまだ戦線上にいるキャットと3馬鹿に言葉を投げかける。
「あいつ、クール系かと思ったら意外と熱血だな。俺がやってやるぜー的な雰囲気を感じるぞ」
戦う姿を見て、勝手に熱血認定された事が気になったが、柊はとりあえず目の前のオークを倒すことに集中する。
「マテリアルと大地の女神の名において……(以下省略)……超・重・斬!」
時音が叫び、必殺技を決めるけど、その後に3馬鹿がアイドルを追っかける男性並の声援を送った事に、お頭であるキャットはやや引いていた。
「キャットちゃん、意外と大人しいわねぇ、これは必要なかったかしら」
天川が援護射撃を行いながら、おやつ&ツナ缶を取り出すと、光の速さでキャットはそれを奪う。
「相変わらずみたいで安心しましたよぉ」
「……キャットちゃんって、あんたか。俺の想像では、こう出るトコ出たグラマー系おかしらだったんだが……まぁ、これはこれで悪くないな」
「なんだ、そのいやらしい視線は! 私は女という部類に生まれてはいるが、女らしいところは皆無だぞ! はん、別に悔しくないけどな! ああ、悔しくないとも! 畜生、なんなんだ、お前は! 名を名乗れ!」
悲しさのあまり、目の前のジルボに八つ当たりをするキャットは今にも泣きそうだ。
「俺はジルボ――……」
「女好きのジルボだな、私は助けてもらって嬉しくないぞ! ぜーんぜん嬉しくないからな! 嬉しく思って欲しいなら、山賊稼業が出来る山をくれ! そうしたら嬉しがってやってもいい!」
「……なんだ、このツンデレなのか、そうじゃないのか分からない子は……とりあえず、これをやるから落ち着け」
ジルボは『白龍様サブレ』を取り出し、キャットに渡してやると、それもまた光の速さで彼女の腹の中におさまってしまった。
「うん? キャットはお菓子が好きなの? ポテトチップ、食べる? 私はこういう油っぽいものはなかなか受け付けなくてねぇ、あぁ……『ファイアアロー』」
リサは『ファイアアロー』を繰り出しながら、ごそごとポテトチップを取り出す。
「ぎゃー! しれっと火ぃ出すな! 山火事!」
「ああ、この火は相手に当たったらすぐ消えるから山火事にはならないよ」
おっとりとした口調から天然を思わせ、キャットは「なんか、怖い奴だな、おまえ」としみじみ呟いた。
そして、ドタバタしている最中にオーク2匹はハンター達によって無事倒されたのだった。
●山猫団、山に帰る
「えっ、この可愛い子がおかしらなの!? ごめん、もっと髭面マッチョかと……」
時音はキャットを見ながら驚く。
「美少女でたらしとか、羨ましすぎるぞ! 食うもんもある、美少女、性格いい、なんだ、私に対するあてつけ存在かっ!」
「お前の心が濁ってるから、そう思えるんだろ……はぁ、もういい加減まっとうな道に戻れ。ほっといても害はないのに、何で俺は説教してるんだろうな」
シンはため息をつきながら、キャットの頭をぐりぐりと撫でる。
「まぁ、いいじゃねーか。こういう奴らがいるのも楽しいだろうしよ」
エヴァンスが山猫団を庇うように言うと「ANIKI!」と3馬鹿から尊敬の眼差しを向けられる。
「お前怪我してるだろ。腹ンところを庇ってる」
柊が問いかけると「ぎゃっ、触るな! せ、せ、せ、せ……なんとかになるぞ!」
どうやら『せくはら』と言いたいらしい。
「いや、俺がそれをしたらリアルブルーでは犯罪だからな」
「はっ、腹黒シスターまでいるじゃねーか! 別に……別に嬉しくないぞ! 私は別に、お前の事を心友とは思ってないからな! 腐れ縁なだけだぞ!」
どうやら、助けに来てもらえて嬉しいらしい。
「キャットちゃん、俺頑張ったよね!?」
「怖い! 鼻息荒くして近寄ってくんな!」
幼子に近寄るジルボはやや切羽詰った何かを感じさせる。
「さて、今日こそ逃がさないようにしっかりとしなきゃね」
心友、もとい天川はビシッとロープを握り締める。その姿はさながら、シスターというより女王様と呼ばれる類のものに見える。
「断る! 私達を捕まえるというのなら……こいつを倒してからするんだな!」
「……俺かっ!?」
突然、脈絡なく盾にされたエヴァンスが叫ぶ。
「いや、別にお前らが捕まりたくないっていうなら、俺は止めてやるけど……」
エヴァンスが悩んでいる間に、3馬鹿はキャットを抱えてスタコラと走り出していた。
「……いい加減、更生施設みたいなものに入れた方がいいんじゃないか?」
シンが頭を抱えながら呟く。
しかし、見知らぬ山の中、これより30分後に遭難している山猫団を発見して、ハンター達と一緒にオフィスまで行くことになったのだが――……見知った場所に着いた途端、彼らは姿を消してしまっていた。
『次に会ったら、お前らの装備ぶんどってやるからな!』
この書置きだけを残して――……。
END
依頼結果
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お頭救助隊 ジルボ(ka1732) 人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|猟撃士(イェーガー) |
最終発言 2015/06/26 21:45:39 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/06/25 23:03:36 |