ゲスト
(ka0000)
キノコのくせになまいきだ!
マスター:のどか

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~6人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/18 12:00
- 完成日
- 2014/07/27 13:31
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
とある川の辺にある小さな村。飲用できる澄んだ水から得る恵みと共に生きるその村は、美しい絵になる家々が立ち並ぶちょっとした観光名所のような所であった。
村中に川から引かれた水路が巡り、小麦を挽くための水車や豊かな牧草地に放たれた家畜達。決して裕福な村ではないが、その心安らぐような環境で人々は心は豊かな日々を過ごしていた。
そんな美しい村に、ヤツが現れたのは唐突だった。
ヤツは澄み渡ったこの村にはふさわしくない、じめじめとした、そう……キノコだった。
ただし、只のキノコではない。
顔があり、手があり、足がある。
そしてマッスル。
「フッ、フッ、フゥゥゥン!」
村に現れたマッスルなキノコは昼下がりの村のメインストリートで己のキノコ美を何事かとあっけに取られている村人達に存分に見せつけると唐突に傍らの水車に手を伸ばした。
「フゥゥゥゥゥン!」
水を吸った重い大きな水車がキノコの片手で意図も簡単にもぎ取られる。
そうしてもぎ取った水車を両手で掴むと、砲丸投げのように勢いよくその車輪を投げ飛ばす。
「フヌゥゥゥゥン!」
水しぶきの尾を引きながら投げ飛ばされた水車はどこかの家の屋根にぐさりと突き刺さり、謎のアートが完成する。
続いてキノコは石造りの小屋の外壁に両手を伸ばすとそのままギリギリと全身の筋肉に力を込め始める。
「フオォォォォォン!」
高らかな雄たけびと共に石造りの小屋はベキベキと音を立てゆっくりと地面から浮上してゆく。
全身の筋肉に筋を浮かべ、キノコはニヤリと笑うとそのままバックドロップのように背後に小屋を投げ下ろす。
轟音の地響きと共に、メインストリートのど真ん中に世にも奇妙な逆さまの小屋が誕生する。
その様子をクチをあんぐりと開いて眺めていることしかできない村の住人達を見渡しながら、マッスルームは満足げに明後日の方向にポージングをキめると己のキノコ美を強調する。
それからも、キノコの筋肉が作り出す現代アートが村のあちこちに誕生して言ったのは言うまでも無かった。
「……というわけで依頼なんだけど、なにコレ。ルミちゃん、どう斡旋したらいいの?」
依頼書を片手にヒラヒラとさせながら、新人受付嬢は明らかにめんどくさそうに怪訝な表情を浮かべていた。
「マッスルって何? ってかキノコってどゆこと? 全く状況の想像がつかないんだけど!?」
そうブツブツと文句を言いながら書類を机の上に戻し、ハンター達に対して提示するにあたっての事項を書き整えてゆく。
しかし、真面目に書類を書こうとすればするほど眉間に皺はより始め、ペンを持つ手は震え始め、紙を押さえる左手も震え始め、仕舞いには肩も震え始め、依頼書にも皺が移り始める。
「あー! もう、こんなの真面目にやってらんないッ!」
最終的には切れやすい堪忍袋の緒が切れたようで、ガーっと開いたスペースに走り書きで何事か書き足すと、ズカズカと肩を揺らしながらハンター達が目にする掲示板に向かって行きバンと叩き付けるようにその依頼書を貼り付けた。
そうして新人受付嬢はくるりとハンター達の方へ向き直るとニッコリと満面の営業スマイルを浮かべて見せた。
「突然現れた雑魔にすっごく困ってる村の人たちが居るんだって。ハンターさん、何とかしてあげてネ☆」
それだけ言うと彼女はまたズカズカと肩を揺らしながら自分の作業机へと戻って行く。
なお、張り出された依頼書はその下半分を埋め尽くすようにでかでかとこう書いてあった。
『とにかくこのマッスルームを倒せ! 以上!!』
村中に川から引かれた水路が巡り、小麦を挽くための水車や豊かな牧草地に放たれた家畜達。決して裕福な村ではないが、その心安らぐような環境で人々は心は豊かな日々を過ごしていた。
そんな美しい村に、ヤツが現れたのは唐突だった。
ヤツは澄み渡ったこの村にはふさわしくない、じめじめとした、そう……キノコだった。
ただし、只のキノコではない。
顔があり、手があり、足がある。
そしてマッスル。
「フッ、フッ、フゥゥゥン!」
村に現れたマッスルなキノコは昼下がりの村のメインストリートで己のキノコ美を何事かとあっけに取られている村人達に存分に見せつけると唐突に傍らの水車に手を伸ばした。
「フゥゥゥゥゥン!」
水を吸った重い大きな水車がキノコの片手で意図も簡単にもぎ取られる。
そうしてもぎ取った水車を両手で掴むと、砲丸投げのように勢いよくその車輪を投げ飛ばす。
「フヌゥゥゥゥン!」
水しぶきの尾を引きながら投げ飛ばされた水車はどこかの家の屋根にぐさりと突き刺さり、謎のアートが完成する。
続いてキノコは石造りの小屋の外壁に両手を伸ばすとそのままギリギリと全身の筋肉に力を込め始める。
「フオォォォォォン!」
高らかな雄たけびと共に石造りの小屋はベキベキと音を立てゆっくりと地面から浮上してゆく。
全身の筋肉に筋を浮かべ、キノコはニヤリと笑うとそのままバックドロップのように背後に小屋を投げ下ろす。
轟音の地響きと共に、メインストリートのど真ん中に世にも奇妙な逆さまの小屋が誕生する。
その様子をクチをあんぐりと開いて眺めていることしかできない村の住人達を見渡しながら、マッスルームは満足げに明後日の方向にポージングをキめると己のキノコ美を強調する。
それからも、キノコの筋肉が作り出す現代アートが村のあちこちに誕生して言ったのは言うまでも無かった。
「……というわけで依頼なんだけど、なにコレ。ルミちゃん、どう斡旋したらいいの?」
依頼書を片手にヒラヒラとさせながら、新人受付嬢は明らかにめんどくさそうに怪訝な表情を浮かべていた。
「マッスルって何? ってかキノコってどゆこと? 全く状況の想像がつかないんだけど!?」
そうブツブツと文句を言いながら書類を机の上に戻し、ハンター達に対して提示するにあたっての事項を書き整えてゆく。
しかし、真面目に書類を書こうとすればするほど眉間に皺はより始め、ペンを持つ手は震え始め、紙を押さえる左手も震え始め、仕舞いには肩も震え始め、依頼書にも皺が移り始める。
「あー! もう、こんなの真面目にやってらんないッ!」
最終的には切れやすい堪忍袋の緒が切れたようで、ガーっと開いたスペースに走り書きで何事か書き足すと、ズカズカと肩を揺らしながらハンター達が目にする掲示板に向かって行きバンと叩き付けるようにその依頼書を貼り付けた。
そうして新人受付嬢はくるりとハンター達の方へ向き直るとニッコリと満面の営業スマイルを浮かべて見せた。
「突然現れた雑魔にすっごく困ってる村の人たちが居るんだって。ハンターさん、何とかしてあげてネ☆」
それだけ言うと彼女はまたズカズカと肩を揺らしながら自分の作業机へと戻って行く。
なお、張り出された依頼書はその下半分を埋め尽くすようにでかでかとこう書いてあった。
『とにかくこのマッスルームを倒せ! 以上!!』
リプレイ本文
●アイ・アム・マッスルーム
川のほとりの美しい村――だった場所に、今回の奇妙な依頼を受けたハンター達は集まっていた。
彼らが最初に目にする事になるのはその奇怪な『オブジェクト』の数々。水車は屋根に突き刺さるわ、家はひっくり返っているわ、塔は折れてるわ。そんなアミューズメント施設真っ青の村の情景が目の前に広がっていた。
そんな村の中心に立って粋なポーズを決めている1匹の雑魔。己の筋肉を誇張させながらその『アート』の数々を見て満足げに頷く。
「あれが件のマッスルーム(仮称)か……」
折れた塔の残骸に身を潜めながら川崎 隆雄(ka0354)はその様子を伺っていた。
「ん……奇々怪々。あんなモノが文字通り大手を振って歩くなどと言う理不尽を許しておくわけにはいかないな」
その隣で同じように様子を伺っていた鎮西 八葉(ka2408)は抑揚の無い声で頷いた。
今回、おそらく近接戦一辺倒と思われる相手に対してハンター達は多数の猟撃士が揃っていた。彼らはマッスルームが作り出したオブジェクトを利用して相手を観察しながら各々の戦いやすい位置取りを取るべく静かに接敵を試みていた。
「うぉぉ! マッスルーム! お前の筋肉見せてみろー!!」
「は、花ちゃん落ち着いて……」
そんな中で今にも戦場に躍り出そうな勢いの少女、飄 花(ka0205)を川崎が優しくなだめる。その溢れんばかりのマッソーを目に焼き付けるため……もとい、村の平和を守るために依頼に参加した花にとっては居ても経ってもいられない状況なのだろう。うずうずと好奇心の火が灯る目がぎらぎらと輝いている。
そんな隠密行動の中で一人、終始町中のマッスルアートを見つけてはわなわなと肩を震わせる男が一人。
「ば、バカな……俺のトレーニングはキノコにすら劣るのか……」
その男、いや漢、藤堂研司(ka0569)は愕然とした表情で己の身体を顧みる。鍛え上げた己のマッスル……しかしそれが無意味の産物であることをこれ以上に彼に痛感させるものは無かった。
「認めん! 認めんぞ! 野郎許せねぇ!!」
ここに約一名の一方的な怒り(八つ当たり)が発生した瞬間だった。
猟撃士達が己のポジションを確保した頃、示し合わせたように二人の勇敢なる男達がマッスルームの前へと躍り出た。文字通り獅子の形相を持つ男・雪ノ下正太郎(ka0539)と仕事人のオーラを纏う大柄の男・オウカ・レンヴォルト(ka0301)である。
その姿に気づき、ゆっくりと両手を腰(?)に当てながら二人に真正面から対峙するマッスルーム。ニヤリとその口元が吊り上り、フンと一つ息を吐く。
「マッスルーム……燃える相手だと感じる」
対峙する奇妙な緊張感の中、雪ノ下がごくりと唾を飲む。
不意に、マッスルームの両腕が腰から離されゆっくりっとその頭上へ持ち上げられる。何かを仕掛けてくるのか、ハンター達は咄嗟に身構えた。
「フゥゥゥゥン!」
その持ち上げられた腕をグンとその顔の両脇に持っていくと、唐突な見事なダブルバイセップスを決める。膨れ上がる上腕二頭筋。
流れるようにサイドチェスト。誇張される胸筋。
立て続けにサイドトライセップス。美しさを兼ね備える上腕三頭筋。
背を見せることすら恐れないダブルバイセップス・バック。迫力ある背筋。
そしてしゃくれ顎のドヤ顔と共にモスト・マスキュラー。その肉体美を余すことなく見せ付ける。
ハンター達はぽかんとした表情でそれを眺めていた。
「ブラヴォー、ブラヴォー!」
その様子を見てきゃっきゃと騒ぐ花の傍で、藤堂の頬を伝う一筋の涙。
「美しい……なんて美しいんだ」
あっけに取られるハンター達を自分の筋肉美に恐れ入ったと勘違いでもしたのか、人差し指を立てて「来いよ」とでも言いたげに合図を送るマッスルーム。
「……間近で見ると、気持ち悪い、な」
そんなオウカの呟きを他所に、戦いは始まったのだった。
●きのこのくせになまいきだ!
「前衛で俺達が踏ん張ればそれだけ後衛が有利になる……!」
精霊に祈りを捧げマテリアルを高めながらその身に気合を入れてゆく雪ノ下。
オウカもまた自身にマテリアルを流入させその身体能力を高める。
マッスルームに対峙する二人の男がその注意を引いている隙に猟撃士達は一斉に行動を開始する。
「雑魔相手は初めてだが…当たってくれよ」
オブジェクトの影から放たれる一発の強弾。その銃弾はマッスルームの眉間をビタリと撃ち抜く。
マッスルームが一瞬のよろめきを見せた。
「その筋肉に拍手!」
「ん……鎮西八葉、的中させます」
「俺の嫉妬とかなんかを思い知れぇぇぇぇ!」
その隙に同時に花、八葉、藤堂もまた物陰からその矢を放つ。
不意の狙撃にマッスルームも驚きを隠せず、しかしその腕を前面でクロスさせ真っ向から矢を、弾丸を受ける。
体中に弾痕を作るマッスルームであったが、村に反響する銃声の音がやがて消えて行くとドヤ顔でその胸元で腕組みをしてどっしりと構えた。
「ダメージは入ってるようだが、流石に頑丈だな……」
眉間を撃ち抜かれて尚雄々しく立つその様子を見て、川崎は静かに口走る。
当のマッスルームも狙撃者達を気にも留めない様子でぐんと目の前の雪ノ下に対してその距離を詰めた。
「ヌフゥゥゥゥン!」
吐き出される雄たけびと共に真正面から放たれる渾身のストレート。雪ノ下はマッスルームがそうしたように腕をクロスして身構え攻撃を受けるが、その防御を軽く貫く衝撃をその身に受ける。
「ぐぅ……なんて重い一撃だ!」
耐え切ることこそできるものの、地面に跡を作りその身を後方に押しやられる一撃に思わず感嘆の息を漏らす。
「だが、ここを動くわけには行かない!」
続いて再び自身に精霊の力を下ろす雪ノ下。その身体に堅牢な防御力を宿す。
囮となり後衛が攻撃する時間を少しでも長く稼ぐ事、そのために文字通り山となる覚悟が必要とされる。
「そちらに気を取られている隙は見逃さない」
正面から雪ノ下と対峙するマッスルームの横っ面に機導剣による1撃を浴びせるオウカ。
その手に感じる確かな手ごたえと共に、マッスルームも一瞬のひるみを見せる。
「そこ……見逃さない」
ひるんだマッスルームに対し、弓を引き絞る八葉の一射が風を切る。
その一射はマッスルームの膝を背後から貫き、的中。マッスルームがガクリと膝を折る。
「人の様に動く以上、その弱点もまた同じ……いくら鍛えた堅牢な身体でも鍛えられない場所があるもの」
顔に掛かる長い髪をかき上げながら八葉は小さく息を吐く。
「フゥゥン!」
膝を折ったマッスルームは己を奮起するようにガツンと地面に拳を打ち付けると膝に受けた矢の篦をべっきりと折り、傍らに投げ捨てる。そして鼓舞するようにモスト・マスキュラーもう一度決めると、大きく息を吐き出しずんと再びその身体で堂々と立ち上がった。
「……その意気や好し」
言いながらオブジェクトより姿を現す八葉。
「元々かくれんぼは性に合わない……なれば、背筋正しく相手をするまで」
そう言って、再び矢を引き絞る。
そんな彼女の様子を見て、マッスルームもまた気を良くしたかのように再び不適な笑いを上げ拳を振り上げる。
「フゥゥゥン!」
しかし、その拳が振るわれる先は八葉の元ではなく再び雪ノ下へ。
重い一撃が彼の芯を貫く。
「ぐぅ……!」
が、先の一撃ほどの衝撃をその身に感じず、一瞬違和感を感じる雪ノ下。防御に備えたせいもあるだろうが、それでもあまりに軽い一撃。その意味はすぐに知る事となる。
「ヌゥゥゥゥン!」
放たれた拳に続くように振るわれる逆の腕。その腕がギッシリと雪ノ下の脇から肩に掛けてをホールドする。
そのままマッスルームの胸に抱え込まれるような格好で、雪ノ下はその身を捕らえられてしまう。
「サブミッションか!?」
雪ノ下を助けるべく、川崎が銃弾を放つ。
その衝撃で一瞬マッスルームの足元がふらつくも雪ノ下を締め付ける力は弱まる事は無く、ギリギリとその肩を締め上げた。
「雪ノ下さん!」
藤堂と花もまた川崎と同じく救出を試みるが、その力を解くには及ばない。
しかし、その力を不意に解いたのはマッスルーム自身。同時に、雪ノ下を奇妙な浮遊感が襲う。
「お、おわっ!?」
その抱えられるような状態でふわりと地面を離れる雪ノ下の身体。彼を持ち上げるマッスルームの全身の筋肉が激しく緊張する。
「ヌフゥゥゥゥゥン!」
そうしてそのまま円盤投げのようにスローされる雪ノ下。
剛速球となった彼の身体は一直線に八葉の方へと向かう。
「オブジェを作った怪力……」
八葉は雪ノ下をひらりとかわすと再びその弓を引き絞る。
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
その背後でどこまでも飛んで行く雪ノ下は豆粒に見えるほどの距離でやがて失速し、ごろごろと地面を転がるようにしてようやく止まることができた。
「雪ノ下さんは犠牲になったのだー」
飛んで行った雪ノ下に両手を合わせながら念仏を唱える花。
「大丈夫、死んでないって……」
そんな花を再びなだめる川崎。この情景、もはや親子である。
「しかし、あれはなかなか厄介……」
八葉は視線を外さずにただぽつりとそう呟く。
豆粒になった雪ノ下はムクリとその身を起こしてこちらに駆け戻ってくるが、この距離では合流まで暫く時間が掛かるだろう。
「このままレンヴォルトさんも投げられてしまったら、次は俺らの誰か……ええい!」
何事か考えていた藤堂は咄嗟にオブジェクトを飛び越え、マッスルームの前へと躍り出る。そしてビシッと人差し指をマッスルームへ付き立てると、
「ヘイ、マッスルーム! てめぇの筋肉なんぞ見せかけだけのマッソーよ! そもそも菌糸よ!」
よく分からない挑発文句と共に、その上着をいそいそと脱いで行く。
「この俺の……!」
――丁寧に服を脱ぎ。
「鍛え抜かれた……!」
――丁寧に服を畳み。
「筋肉のが上と思い知れぇぇぇぇ!」
――マッスルームに負けじとモスト・マスキュラーを決める藤堂。
その(無意味な)筋肉が燦々と輝く太陽に照らされ輝いた。
「脱ぐと割りと凄い! ただの料理好きな気の良さそうなお兄さんじゃなかったー!」
新たに現れた筋肉の使い手にキャッキャとはしゃぐ花。
マッスルームもその筋肉を見て、対抗するかのようにダブルバイセップスで応える。
「かかってくるか!? かかってきやがれ! もう弓なんか必要ねぇ!!」
そう言いながら手に持つ弓のつるを掛け背中に背負い拳を振り上げる藤堂。マッスルームもまたその拳を高々と振り上げる。
「野郎ぶん殴ってやぁぁぁぁぁぁる!!」
そうして二つの筋肉が、二つの腕が激突する……!
「ゲブォ! な、ナイスパンチ……」
が、猟撃士の、ましてや魅せ筋で本物に勝てるわけも無くその一撃をモロに腹へと貰う藤堂(なお藤堂の一撃はマッスルームの体表でペチンといい音を鳴らした)。ロープを探すようにふらふらとその手が宙を舞う。が、当然リング上で無ければロープも無く、代わりにその手を掴んだのはマッスルームのムキムキの腕。
わきの下から差し込まれた太い腕は藤堂の身体にぐるりと巻きつき、綺麗に決まるコブラツイストへと流れる。
「ぐ、ぐぉぉぉぉぉ、ナイスサブミッション!!」
賞賛を称えながら関節の痛みに悶え苦しむ藤堂。二つの筋肉が折り重なるその暑苦しい絵面は正直地獄絵図に他ならない。
「なんかぬくい! これキノコの質感ではない! そして俺の汗でそこはかとなく気持ち悪いッ!!」
肉体的とはまた違う精神的な苦痛も受けつつ藤堂はその身を挺して雪ノ下がそうしたように後衛のための囮と化す。
「い、今だぁぁぁ! 俺ごと、俺ごと撃てぇぇぇ!」
「ん……その意思は無駄にしない」
藤堂の映画的にありがちな悲痛の叫びと共に放たれる八葉の矢。その矢は藤堂の頬すれすれを掠め、マッスルームの顔面(?)に突き刺さる。マッスルームの身体に刺さりながら己の顔の横でプルプルと頬を撫でる矢を見ながら藤堂は一瞬目を丸くする。
「やっぱ俺は撃たないでくれぇぇ! コイツだけを撃ってくれぇぇぇ!」
すぐに別の悲痛の叫びが上がった。
「だけど確かにチャンスはチャンス、無駄にはしないよ」
その面に強弾を撃ち込む川崎。先ほど撃ち抜いた眉間を的確に追撃する。
「二つの筋肉が折り重なって……最強に見える!」
文字通りお花畑でも見ているかのようなうっとりした表情で矢を射る花。
だがチャンスはそう長くは続かず、藤堂の身体が先の雪ノ下もそうであったようにふわりと浮遊感に包まれる。同時に、彼も覚悟を決めたのだろう。その時の表情はすがすがしく、また満足げなものであったと後にハンター達は振り返る。
「皆さんさようならぁぁぁぁぁぁ!!」
遠くなって行く叫びと共に、藤堂もまた豆粒となった。
「藤堂さんも犠牲になったのだー!」
その様子を眺めながらナムナムと手を合わせる花に見送られながら。
ビルドアップバトルに勝利したマッスルームはアイ・アム・ナンバーワンとでも言いたげに人差し指を天に向け、大空を仰ぎ見る。
「……これで、前衛はあと俺一人か」
豆粒になったばかりの藤堂とまだこちらに向かって走ってくる雪ノ下を横目にオウカがマッスルームへ対峙する。
「チャンスは作れてあと一回……ってとこだな」
そう呟きながら戦いの余韻にひたるマッスルームへ容赦ない機導剣による一撃を放つ。マッスルームは咄嗟に腕でその一撃を受けると、次の獲物を見つけたと言いたげな表情でオウカの前に立ちはだかる。そうして同じように振るわれる拳。オウカはそれをすんでの所でひらりと避ける。避けた事で文字通りフリーとなったマッスルームへ猟撃士達の矢弾が飛ぶ。
その中には超遠距離から放たれた一射も。
「流石にここまで飛ばされればもうお前の攻撃は食らわない! 弓は使わないって? 勝ちゃあいいんだ勝ちゃあ!!」
ある種ヤケクソに開き直った藤堂が豆粒に見える距離から恥ずかしげなくコンポジットボウを構えていた。
猟撃士達の一斉射撃を受けマッスルームは再び膝を折る。
「心意気は認めよう……」
再び機導剣による一撃を浴びせるオウカ。その一撃が、ついにマッスルームの堅牢な右腕を吹き飛ばした。
「ヌゥ……」
総攻撃を受け虚ろになりつつあるマッスルームの視線の先に写るのは凛と弓を番える少女の姿。
「真っ直ぐ……ただ真っ直ぐに」
静まり返った空気の中、ひょうふっと風を切る一本の矢。
「しかれども真っ直ぐに邪悪を調伏する……それが鎮西八葉の矢」
その一射は再三の攻撃を受け傷を深めていたマッスルームの眉間を深々と貫いた。
そうしてしばしの静寂の後、マッスルームは前のめりにその地に伏したのだった。
川のほとりの美しい村――だった場所に、今回の奇妙な依頼を受けたハンター達は集まっていた。
彼らが最初に目にする事になるのはその奇怪な『オブジェクト』の数々。水車は屋根に突き刺さるわ、家はひっくり返っているわ、塔は折れてるわ。そんなアミューズメント施設真っ青の村の情景が目の前に広がっていた。
そんな村の中心に立って粋なポーズを決めている1匹の雑魔。己の筋肉を誇張させながらその『アート』の数々を見て満足げに頷く。
「あれが件のマッスルーム(仮称)か……」
折れた塔の残骸に身を潜めながら川崎 隆雄(ka0354)はその様子を伺っていた。
「ん……奇々怪々。あんなモノが文字通り大手を振って歩くなどと言う理不尽を許しておくわけにはいかないな」
その隣で同じように様子を伺っていた鎮西 八葉(ka2408)は抑揚の無い声で頷いた。
今回、おそらく近接戦一辺倒と思われる相手に対してハンター達は多数の猟撃士が揃っていた。彼らはマッスルームが作り出したオブジェクトを利用して相手を観察しながら各々の戦いやすい位置取りを取るべく静かに接敵を試みていた。
「うぉぉ! マッスルーム! お前の筋肉見せてみろー!!」
「は、花ちゃん落ち着いて……」
そんな中で今にも戦場に躍り出そうな勢いの少女、飄 花(ka0205)を川崎が優しくなだめる。その溢れんばかりのマッソーを目に焼き付けるため……もとい、村の平和を守るために依頼に参加した花にとっては居ても経ってもいられない状況なのだろう。うずうずと好奇心の火が灯る目がぎらぎらと輝いている。
そんな隠密行動の中で一人、終始町中のマッスルアートを見つけてはわなわなと肩を震わせる男が一人。
「ば、バカな……俺のトレーニングはキノコにすら劣るのか……」
その男、いや漢、藤堂研司(ka0569)は愕然とした表情で己の身体を顧みる。鍛え上げた己のマッスル……しかしそれが無意味の産物であることをこれ以上に彼に痛感させるものは無かった。
「認めん! 認めんぞ! 野郎許せねぇ!!」
ここに約一名の一方的な怒り(八つ当たり)が発生した瞬間だった。
猟撃士達が己のポジションを確保した頃、示し合わせたように二人の勇敢なる男達がマッスルームの前へと躍り出た。文字通り獅子の形相を持つ男・雪ノ下正太郎(ka0539)と仕事人のオーラを纏う大柄の男・オウカ・レンヴォルト(ka0301)である。
その姿に気づき、ゆっくりと両手を腰(?)に当てながら二人に真正面から対峙するマッスルーム。ニヤリとその口元が吊り上り、フンと一つ息を吐く。
「マッスルーム……燃える相手だと感じる」
対峙する奇妙な緊張感の中、雪ノ下がごくりと唾を飲む。
不意に、マッスルームの両腕が腰から離されゆっくりっとその頭上へ持ち上げられる。何かを仕掛けてくるのか、ハンター達は咄嗟に身構えた。
「フゥゥゥゥン!」
その持ち上げられた腕をグンとその顔の両脇に持っていくと、唐突な見事なダブルバイセップスを決める。膨れ上がる上腕二頭筋。
流れるようにサイドチェスト。誇張される胸筋。
立て続けにサイドトライセップス。美しさを兼ね備える上腕三頭筋。
背を見せることすら恐れないダブルバイセップス・バック。迫力ある背筋。
そしてしゃくれ顎のドヤ顔と共にモスト・マスキュラー。その肉体美を余すことなく見せ付ける。
ハンター達はぽかんとした表情でそれを眺めていた。
「ブラヴォー、ブラヴォー!」
その様子を見てきゃっきゃと騒ぐ花の傍で、藤堂の頬を伝う一筋の涙。
「美しい……なんて美しいんだ」
あっけに取られるハンター達を自分の筋肉美に恐れ入ったと勘違いでもしたのか、人差し指を立てて「来いよ」とでも言いたげに合図を送るマッスルーム。
「……間近で見ると、気持ち悪い、な」
そんなオウカの呟きを他所に、戦いは始まったのだった。
●きのこのくせになまいきだ!
「前衛で俺達が踏ん張ればそれだけ後衛が有利になる……!」
精霊に祈りを捧げマテリアルを高めながらその身に気合を入れてゆく雪ノ下。
オウカもまた自身にマテリアルを流入させその身体能力を高める。
マッスルームに対峙する二人の男がその注意を引いている隙に猟撃士達は一斉に行動を開始する。
「雑魔相手は初めてだが…当たってくれよ」
オブジェクトの影から放たれる一発の強弾。その銃弾はマッスルームの眉間をビタリと撃ち抜く。
マッスルームが一瞬のよろめきを見せた。
「その筋肉に拍手!」
「ん……鎮西八葉、的中させます」
「俺の嫉妬とかなんかを思い知れぇぇぇぇ!」
その隙に同時に花、八葉、藤堂もまた物陰からその矢を放つ。
不意の狙撃にマッスルームも驚きを隠せず、しかしその腕を前面でクロスさせ真っ向から矢を、弾丸を受ける。
体中に弾痕を作るマッスルームであったが、村に反響する銃声の音がやがて消えて行くとドヤ顔でその胸元で腕組みをしてどっしりと構えた。
「ダメージは入ってるようだが、流石に頑丈だな……」
眉間を撃ち抜かれて尚雄々しく立つその様子を見て、川崎は静かに口走る。
当のマッスルームも狙撃者達を気にも留めない様子でぐんと目の前の雪ノ下に対してその距離を詰めた。
「ヌフゥゥゥゥン!」
吐き出される雄たけびと共に真正面から放たれる渾身のストレート。雪ノ下はマッスルームがそうしたように腕をクロスして身構え攻撃を受けるが、その防御を軽く貫く衝撃をその身に受ける。
「ぐぅ……なんて重い一撃だ!」
耐え切ることこそできるものの、地面に跡を作りその身を後方に押しやられる一撃に思わず感嘆の息を漏らす。
「だが、ここを動くわけには行かない!」
続いて再び自身に精霊の力を下ろす雪ノ下。その身体に堅牢な防御力を宿す。
囮となり後衛が攻撃する時間を少しでも長く稼ぐ事、そのために文字通り山となる覚悟が必要とされる。
「そちらに気を取られている隙は見逃さない」
正面から雪ノ下と対峙するマッスルームの横っ面に機導剣による1撃を浴びせるオウカ。
その手に感じる確かな手ごたえと共に、マッスルームも一瞬のひるみを見せる。
「そこ……見逃さない」
ひるんだマッスルームに対し、弓を引き絞る八葉の一射が風を切る。
その一射はマッスルームの膝を背後から貫き、的中。マッスルームがガクリと膝を折る。
「人の様に動く以上、その弱点もまた同じ……いくら鍛えた堅牢な身体でも鍛えられない場所があるもの」
顔に掛かる長い髪をかき上げながら八葉は小さく息を吐く。
「フゥゥン!」
膝を折ったマッスルームは己を奮起するようにガツンと地面に拳を打ち付けると膝に受けた矢の篦をべっきりと折り、傍らに投げ捨てる。そして鼓舞するようにモスト・マスキュラーもう一度決めると、大きく息を吐き出しずんと再びその身体で堂々と立ち上がった。
「……その意気や好し」
言いながらオブジェクトより姿を現す八葉。
「元々かくれんぼは性に合わない……なれば、背筋正しく相手をするまで」
そう言って、再び矢を引き絞る。
そんな彼女の様子を見て、マッスルームもまた気を良くしたかのように再び不適な笑いを上げ拳を振り上げる。
「フゥゥゥン!」
しかし、その拳が振るわれる先は八葉の元ではなく再び雪ノ下へ。
重い一撃が彼の芯を貫く。
「ぐぅ……!」
が、先の一撃ほどの衝撃をその身に感じず、一瞬違和感を感じる雪ノ下。防御に備えたせいもあるだろうが、それでもあまりに軽い一撃。その意味はすぐに知る事となる。
「ヌゥゥゥゥン!」
放たれた拳に続くように振るわれる逆の腕。その腕がギッシリと雪ノ下の脇から肩に掛けてをホールドする。
そのままマッスルームの胸に抱え込まれるような格好で、雪ノ下はその身を捕らえられてしまう。
「サブミッションか!?」
雪ノ下を助けるべく、川崎が銃弾を放つ。
その衝撃で一瞬マッスルームの足元がふらつくも雪ノ下を締め付ける力は弱まる事は無く、ギリギリとその肩を締め上げた。
「雪ノ下さん!」
藤堂と花もまた川崎と同じく救出を試みるが、その力を解くには及ばない。
しかし、その力を不意に解いたのはマッスルーム自身。同時に、雪ノ下を奇妙な浮遊感が襲う。
「お、おわっ!?」
その抱えられるような状態でふわりと地面を離れる雪ノ下の身体。彼を持ち上げるマッスルームの全身の筋肉が激しく緊張する。
「ヌフゥゥゥゥゥン!」
そうしてそのまま円盤投げのようにスローされる雪ノ下。
剛速球となった彼の身体は一直線に八葉の方へと向かう。
「オブジェを作った怪力……」
八葉は雪ノ下をひらりとかわすと再びその弓を引き絞る。
「おわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
その背後でどこまでも飛んで行く雪ノ下は豆粒に見えるほどの距離でやがて失速し、ごろごろと地面を転がるようにしてようやく止まることができた。
「雪ノ下さんは犠牲になったのだー」
飛んで行った雪ノ下に両手を合わせながら念仏を唱える花。
「大丈夫、死んでないって……」
そんな花を再びなだめる川崎。この情景、もはや親子である。
「しかし、あれはなかなか厄介……」
八葉は視線を外さずにただぽつりとそう呟く。
豆粒になった雪ノ下はムクリとその身を起こしてこちらに駆け戻ってくるが、この距離では合流まで暫く時間が掛かるだろう。
「このままレンヴォルトさんも投げられてしまったら、次は俺らの誰か……ええい!」
何事か考えていた藤堂は咄嗟にオブジェクトを飛び越え、マッスルームの前へと躍り出る。そしてビシッと人差し指をマッスルームへ付き立てると、
「ヘイ、マッスルーム! てめぇの筋肉なんぞ見せかけだけのマッソーよ! そもそも菌糸よ!」
よく分からない挑発文句と共に、その上着をいそいそと脱いで行く。
「この俺の……!」
――丁寧に服を脱ぎ。
「鍛え抜かれた……!」
――丁寧に服を畳み。
「筋肉のが上と思い知れぇぇぇぇ!」
――マッスルームに負けじとモスト・マスキュラーを決める藤堂。
その(無意味な)筋肉が燦々と輝く太陽に照らされ輝いた。
「脱ぐと割りと凄い! ただの料理好きな気の良さそうなお兄さんじゃなかったー!」
新たに現れた筋肉の使い手にキャッキャとはしゃぐ花。
マッスルームもその筋肉を見て、対抗するかのようにダブルバイセップスで応える。
「かかってくるか!? かかってきやがれ! もう弓なんか必要ねぇ!!」
そう言いながら手に持つ弓のつるを掛け背中に背負い拳を振り上げる藤堂。マッスルームもまたその拳を高々と振り上げる。
「野郎ぶん殴ってやぁぁぁぁぁぁる!!」
そうして二つの筋肉が、二つの腕が激突する……!
「ゲブォ! な、ナイスパンチ……」
が、猟撃士の、ましてや魅せ筋で本物に勝てるわけも無くその一撃をモロに腹へと貰う藤堂(なお藤堂の一撃はマッスルームの体表でペチンといい音を鳴らした)。ロープを探すようにふらふらとその手が宙を舞う。が、当然リング上で無ければロープも無く、代わりにその手を掴んだのはマッスルームのムキムキの腕。
わきの下から差し込まれた太い腕は藤堂の身体にぐるりと巻きつき、綺麗に決まるコブラツイストへと流れる。
「ぐ、ぐぉぉぉぉぉ、ナイスサブミッション!!」
賞賛を称えながら関節の痛みに悶え苦しむ藤堂。二つの筋肉が折り重なるその暑苦しい絵面は正直地獄絵図に他ならない。
「なんかぬくい! これキノコの質感ではない! そして俺の汗でそこはかとなく気持ち悪いッ!!」
肉体的とはまた違う精神的な苦痛も受けつつ藤堂はその身を挺して雪ノ下がそうしたように後衛のための囮と化す。
「い、今だぁぁぁ! 俺ごと、俺ごと撃てぇぇぇ!」
「ん……その意思は無駄にしない」
藤堂の映画的にありがちな悲痛の叫びと共に放たれる八葉の矢。その矢は藤堂の頬すれすれを掠め、マッスルームの顔面(?)に突き刺さる。マッスルームの身体に刺さりながら己の顔の横でプルプルと頬を撫でる矢を見ながら藤堂は一瞬目を丸くする。
「やっぱ俺は撃たないでくれぇぇ! コイツだけを撃ってくれぇぇぇ!」
すぐに別の悲痛の叫びが上がった。
「だけど確かにチャンスはチャンス、無駄にはしないよ」
その面に強弾を撃ち込む川崎。先ほど撃ち抜いた眉間を的確に追撃する。
「二つの筋肉が折り重なって……最強に見える!」
文字通りお花畑でも見ているかのようなうっとりした表情で矢を射る花。
だがチャンスはそう長くは続かず、藤堂の身体が先の雪ノ下もそうであったようにふわりと浮遊感に包まれる。同時に、彼も覚悟を決めたのだろう。その時の表情はすがすがしく、また満足げなものであったと後にハンター達は振り返る。
「皆さんさようならぁぁぁぁぁぁ!!」
遠くなって行く叫びと共に、藤堂もまた豆粒となった。
「藤堂さんも犠牲になったのだー!」
その様子を眺めながらナムナムと手を合わせる花に見送られながら。
ビルドアップバトルに勝利したマッスルームはアイ・アム・ナンバーワンとでも言いたげに人差し指を天に向け、大空を仰ぎ見る。
「……これで、前衛はあと俺一人か」
豆粒になったばかりの藤堂とまだこちらに向かって走ってくる雪ノ下を横目にオウカがマッスルームへ対峙する。
「チャンスは作れてあと一回……ってとこだな」
そう呟きながら戦いの余韻にひたるマッスルームへ容赦ない機導剣による一撃を放つ。マッスルームは咄嗟に腕でその一撃を受けると、次の獲物を見つけたと言いたげな表情でオウカの前に立ちはだかる。そうして同じように振るわれる拳。オウカはそれをすんでの所でひらりと避ける。避けた事で文字通りフリーとなったマッスルームへ猟撃士達の矢弾が飛ぶ。
その中には超遠距離から放たれた一射も。
「流石にここまで飛ばされればもうお前の攻撃は食らわない! 弓は使わないって? 勝ちゃあいいんだ勝ちゃあ!!」
ある種ヤケクソに開き直った藤堂が豆粒に見える距離から恥ずかしげなくコンポジットボウを構えていた。
猟撃士達の一斉射撃を受けマッスルームは再び膝を折る。
「心意気は認めよう……」
再び機導剣による一撃を浴びせるオウカ。その一撃が、ついにマッスルームの堅牢な右腕を吹き飛ばした。
「ヌゥ……」
総攻撃を受け虚ろになりつつあるマッスルームの視線の先に写るのは凛と弓を番える少女の姿。
「真っ直ぐ……ただ真っ直ぐに」
静まり返った空気の中、ひょうふっと風を切る一本の矢。
「しかれども真っ直ぐに邪悪を調伏する……それが鎮西八葉の矢」
その一射は再三の攻撃を受け傷を深めていたマッスルームの眉間を深々と貫いた。
そうしてしばしの静寂の後、マッスルームは前のめりにその地に伏したのだった。
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相談卓 雪ノ下正太郎(ka0539) 人間(リアルブルー)|16才|男性|霊闘士(ベルセルク) |
最終発言 2014/07/18 11:48:45 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/12 22:08:20 |