ゲスト
(ka0000)
逆巻く炎
マスター:水貴透子
- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 多め
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2014/07/15 22:00
- 完成日
- 2014/07/23 15:43
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
その炎は生命(いのち)を食らう。
人間も雑魔も等しく、その炎に焼かれていく。
※※※
「すみません! 誰か今すぐ動ける人はいませんか!」
ハンターオフィスに案内人の声が響き渡る。
「火事が発生しており、集落の人間が巻き込まれた可能性があります!」
「情報は定かではありませんが、10名以上の人間が炎の中に取り残されている可能性が高いです!」
「危険な仕事ですが、どうか集落の住人達を助けるために、ご協力をお願い致します!」
案内人の言葉に、数名のハンター達が駆け寄る。
「ご協力感謝致します」
「周辺地図を渡しますが、火事のせいで地形は変わっているものと思ってください」
地図の中央には小さな集落があると書かれており、住人は20名足らず。
先に逃げ出した者達が助けを求めてきたのだ、と案内人は言葉を投げかけてくる。
「雑魔の姿はありませんので、雑魔との戦闘はないでしょう」
「……ですが、雑魔以上に厄介な炎がある事を忘れないでください」
案内人の言葉を聞き、ハンター達はすぐにオフィスを飛び出していった――……。
リプレイ本文
●炎の中に向かう者達
「私達が倒れては元も子もないわ、煙を吸わないようにしましょう」
ミランダ・ヴィオール(ka0419)は同じ目的で集まったハンター達に言葉を投げかける。
「救助する側が炎に巻き込まれたり、煙を吸って倒れたら、残された住人を助ける人がいなくなっちゃうからね、ちなみに私はバンダナを濡らして鼻と口を覆うつもりよ」
「そうだな、住人を助けるためにも…まず俺達は自分の身を守らなくちゃいけないんだよな」
リック=ヴァレリー(ka0614)はミランダの言葉に納得したように頷きながら答える。
(もう…あんな思いはしたくねぇ! 1人でも多く助けて見せる!)
とある事を思い出し、リックは強く手を握り締めながら心の中で呟いた。
「僕のこんなちっぽけな手でも差し伸べれば助かるかもしれない人達がいるなら、精一杯手を伸ばしてみせるよ……!」
超級まりお(ka0824)は今にも飛び出しそうな勢いで呟く。それだけ彼女が残された住人の事を心配しているという事なのだろう。
「悪いんだけど、水を貰えるかな? あと俺達が救助した後、すぐ治療に当たれるように多少でも医療の心得がある人が集まっていてもらえると助かるんだけど」
ロラン・ラコート(ka0363)が住人達に告げると、数名が手を挙げてロランの前に集まった。
「水ですけど、これくらいで大丈夫ですか?」
「問題ないよ、あまり沢山持って行っても動きにくくなるだけだし」
住人が差し出してきた水の入った筒を受け取りながら答える。
「とにかく! まだ炎の中に残されてる人がいるんだろ? だったら早く行かなくちゃな!」
ぐっ、と拳を強く握り締めながらゼル・アーガイア(ka0373)が叫んだ。
「助けられるんなら助ける! そこに理由なんていらないっしょ!」
「……そうだな、こうしている間にも危険が迫っているんだし急いだ方がいいのは同感だ」
ライル・ギルバート(ka2077)は、ゼルの言葉に頷きながら答える。
「きっと残されてる人達は怖くて仕方ないよね、早く助けて安心させてあげないと…!」
国貴(ka1936)は慌てたように、今回集まったハンター達に告げる。
もちろん他のハンター達も悠長に構えているつもりはない、ただ1人でも多くの住人を助けるためには情報を収集する必要もある。急がば回れ、という事だ。
「例え燃え盛る火が怖くても、人を見殺しになんて出来ません……! 取り残されている人達は、私達よりも怖い思いをしているはずですから……早く救出して安心させてあげたい」
櫻井 悠貴(ka0872)は呟く。出来れば誰1人欠ける事なく助けたい、そう思っていた。もちろんどのハンターも同じ事を思っていたが、櫻井はその気持ちが他のハンターよりも強いような気がした。
「必要な情報は聞いた頃か? そろそろ向かうとしようか」
ライルが呟き、ハンター達は住人の救助をするべく、行動を開始し始めた――……。
●燃え盛る森にて
今回、住人の救助を引き受けたハンター達は8名集まり、それを4つの班に分ける作戦を立てていた。
A班・ロラン、ライル。
B班・国貴、ゼル。
C班・ミランダ、リック。
D班・超級、櫻井。
捜索範囲も東西南北に別れ、短い時間で全部の場所を捜索出来るように、とも考えていた。
「住人にはぐれている者達のリストアップをしてもらったんだ、建物に居そうな住人の目星とかね、確実ってわけじゃないけど目安程度になると思うから情報を共有しておくよ」
ロランは逃げ出した住人達から聞いた情報をハンター達と共有して、同じ班のライルと共に燃え盛る森へ足を踏み入れたのだった。
※A班
「……げほっ、結構やばいかもしれないね」
水で濡らしたバンダナを口に当てながら、ロランが眉根を寄せながら呟く。
「水を被って森に入ったが、この調子じゃすぐに乾いて大変な事になりそうだ」
ライルもこれほど激しい炎は予想していなかったのだろう。忌々しそうに呟く。
「誰かいないか! 俺達は助けに来た! 声が聞こえたら返事をしてくれ!」
大きな声でライルが叫んだ時、か細い子供の声が聞こえた。
「ライル、地図ではこの先に孤児院があるとなっている。孤児院の子供も2人行方不明になっているらしいから、その子達かもしれない」
「……! 急ごう!」
2人は孤児院があるとされる場所に向かって駆けだす。
孤児院がある場所に向かうと、確かに子供が2人存在した。
「これは……!」
だが、建物そのものが炎に包まれており、いくらハンターであっても、その中に踏み込めば生きて戻れない事は容易に想像出来る。
(無理に窓を割れば火の勢いが増す、そうなったら子供達が助かる可能性も低くなる)
ロランはどうすれば子供達を助けられるか、必死に考えを巡らせる。
「助けて! 僕は大丈夫だけど、ユウ君は足を怪我しちゃって歩けないんだ……!」
窓から必死に助けを求める子供の言葉に、更に状況は悪化する。
「ロラン、残る方法は1つ。あの子供達にあそこから飛び降りてもらうしかない」
「……!」
ライルの言葉に、ロランは驚かなかった。
ロラン自身もその方法しかないと心の何処かで感じ取っていたから。
「そこから飛び降りろ! 必ず俺達が受け止める! だから勇気を出して降りて来い!」
ライルが子供達に向かって叫び、ロランも子供を受け止めるための準備を行う。
今回のハンター達は担架代わりに、と毛布を持って来ていた。
それを使えば、怪我をして歩けない子供に無理をさせる事もないだろう。
「わ、分かった……! 僕達、飛び降りるからちゃんと受け止めてね……!?」
涙でぐちゃぐちゃの表情を見せながら、先に足を怪我した方の子供が飛び降りてくる。
その子供はライルが受け止め、残ったもう1人をロランが受け止めた。
「……怪我はしてないが煙を吸って顔色が悪い、このまま抱きかかえて1度住人達の元に戻ろう、残りの救助はそれからだ」
ライルの言葉に頷き、まずはA班が2人を救助して住人達の元へと戻って行った。
※B班
「誰かいませんかー!? 僕達の声が聞こえていたら返事をして下さい!」
国貴は濡らしたバンダナをマスク代わりに使いながら、大きな声で叫ぶ。
少し離れた場所では、ゼルも同じように大きな声で捜索を行っている。
B班はお互いの意志疎通が出来る程度の距離を保ちながら、少し離れて捜索を行っていた。
くっついて捜索する事が悪いとは言わないが、今は同じ場所を探すより例えペアでも別々の場所を探した方が効率良いと国貴は考えたからだ。
「国貴! 悪いけどこっちに来てくれ! この瓦礫の向こうに人がいるみたいだ!」
ゼルの言葉が聞こえ、国貴は慌てて駆け寄った。
「…本当だ、瓦礫の向こうに3人の気配を感じる」
炎の音と恐怖でゼル達の言葉は聞こえていないらしく、女性達の泣き喚く声が聞こえる。
「この向こう側にいるから、ここを崩すにしても怪我をしないか心配だね……せめて、こっちの事に気づいてくれてたらいいんだけど」
国貴は困ったように呟く。
助けるためとはいえ、瓦礫を壊して怪我でもされたら本末転倒になってしまう。
「こっち側からなら壊せるんじゃない? 本当はそっち側を壊すのが一番いいんだろうけど、出来ない物は仕方ないし、今は救助優先で考えなくちゃ」
国貴が指差したのは、少しだけ炎の強い場所。
3人の女性が固まっている裏側を壊すのが一番いいのだが、そこを壊してしまえば余計な怪我をする事になってしまう。
だから、少々荒っぽいやり方ではあるけ救助のためには、どうしてもこの分厚い瓦礫を壊す必要があった。
「……分かった。ここの瓦礫は俺が壊すけど、救助者へのフォローはよろしくな!」
ゼルは『魔導ドリル』を装着して、なるべく威力を弱めに瓦礫を壊していく。
「きゃああっ!」
「大丈夫だよっ!」
突然壊れた瓦礫に女性達の悲鳴が聞こえたが、国貴がすぐさま女性達に声を掛けた。
「僕達は助けに来たんだ、これ以上火の勢いが強くならないうちにこっち側に来て……!」
国貴はこれ以上女性達が不安にならないよう、必死に言葉を選びながら話しかけている。
「ゼル君、一度戻った方がいいんじゃないかな? この人達を連れて捜索を続ける事は出来ないし……この人達だけじゃ、森の外に出られないと思うから」
「……そうだな」
ゼルは少し考えた後、国貴の提案に賛同するように頷く。
他に救助を待つ人の事も気になるけど、今は目の前の3人を安全な場所に連れていく事が先決だ、と自分の心に言い聞かせ、よろめく女性を支えながら森の外へ向かい始めた。
※C班
「肌がひりひりする、さっき来たばかりの私たちでさえこんな感じなんだから……救助を待つ人達の中には酷い火傷を負っている人もいるでしょうね」
ミランダの呟きに、リックも炎の熱さに眉根を寄せていた。
(……熱い、だが、この程度の熱さで俺の心を折れると思うな! 絶対に助けてみせる!)
リックは自分の心を奮い立たせるように、何度も『助けて見せる』と心の中で呟いている。
「さっき入った通信だと現在5名が救助されているみたいね、確か先に逃げた人達から聞いた人数は10名、ようやく半分が救助されたって所かしら……」
「俺達が森に入ってまだ大した時間が経ってないのに5人救助……大丈夫、やれる! 絶対に誰1人として死なせるものか、俺達が全員助けるんだから!」
「そうね、待って……何か聞こえない?」
「え?」
ミランダの呟きに、リックも耳を澄ませる。
すると確かに炎が侵蝕する音にまぎれて、男性の声が聞こえた。
「誰かいるのか!? わしはいいから、孫を……孫を連れていってくれ……!」
ミランダとリックが駆け寄ると、老人が瓦礫に足を挟まれて身動きとれずにいた。
その隣にはぐったりとしている男の子が倒れている。
「まさか、その子……っ!」
「まだ生きとる、わしを置いていけんと言い張って逃げようとせんかったんじゃ……煙で意識を失ってるが、今からでも連れ出してくれれば助かるはずじゃ! すまんが、その子だけでも連れていってくれんか……!」
「この子だけって、貴方はどうするの?」
「わしはもう構わん、足を挟まれて動けんし……瓦礫から足を抜く事が出来ても、怪我で歩く事さえ適わん、ここで死ぬ運命なんだろう」
老人の言葉に「ふざけるな!」とリックが大きな声で叫んだ。
「じいさん、あんたはそれで満足かもしれないけどこの子はどうなるんだ! 目が覚めて自分だけが助かったと知って、この子が平気でいられると思うのか!」
「私も同感ね、そんな事を知って平気でいられるような子ならこの状況でここに残ってないと思うし……この子のためにも、貴方も一緒に助かってもらわないと困るのよ」
「じゃが……」
「リック、きみの『ロングソード』をここに挟んでもらっていい? それをテコにして、この瓦礫を浮かせてみましょう、痛みが酷いでしょうけど瓦礫が浮き上がったら足を抜いて」
老人の言葉を聞かないまま、ミランダとリックは瓦礫を動かそうと努力を始める。一般人には動かすのが無理でもハンターが2人揃っていれば何とかなる。
「ぐっ……爺さん! 今のうちに、早く足を……!」
リックとミランダが『ロングソード』をテコにして瓦礫を浮かす。老人も痛みに表情を歪めながらも必死で瓦礫から足を抜く。
「リック、毛布は2人を乗せられるくらいの大きさかしら」
「ギリギリって所じゃないかな、どっちも歩けないだろうし……無理をしてでも乗せなきゃダメだろうな」
持参してきた毛布を担架の代わりにして、老人と子供を乗せ、2人は森の外を目指した。
※D班
「超級さん、現在7名が救助されたみたいです。A~C班は救助者を連れて一度外に出た後、再び捜索に当たっているようですが、他の救助者は見つからないみたいですね」
櫻井は『トランシーバー』で他のハンター達から聞いた情報を超級に伝える。
「恐らくA~C班の捜索区域に残されている人はいないでしょう、残り3名、いるとしたら私達の捜索範囲内になるかと思います」
「そっか……」
櫻井の言葉に、超級は頷きながら答える。
超級は火事で逃げられない人には3タイプいると思っている、判断が出来ない人、身体の不自由な人、閉じ込められた人――の3タイプ。
状況次第になるが、超級は閉じ込められた人を重点的に助けようと考えていた。
「……超級さん、あそこ、少し変じゃないですか?」
櫻井が指差したのは、集落の中にある家屋の1つ。
周りに色々な物がゴチャゴチャとしていて、自分達で逃げ場を塞いでいるような感じだ。
「窓を見て! 人がいる!」
窓を必死に叩く住人の姿を見つけ、櫻井と超級は慌ててそちらに向かう。
その家に近づき、どうして住人がここにいるのか分かった気がした。
「恐らく、これは外に積み上げていた物が火事のどさくさで倒れてしまったんですね」
不運な事にそれが玄関を塞いでしまい、裏口は既に火が回っているため、住人達は家の中にいるしか出来なかった事が伺える。
「これを1つずつ動かしていたら間に合わない……僕がこれを壊すよ」
超級は『リボルビングソー』を構え、櫻井に告げる。
「みなさん、下がっていて下さい! 玄関先の物を壊しますので、その後で逃げましょう!」
櫻井が家の中に残っている者達に告げ、自らも少し距離を取る。
その後、激しい音が響き、玄関を塞いでいた物が壊れ、中にいた住人達3名が外に出てくる。
もう少し櫻井と超級が来るのが遅ければ、家ごと焼けていただろうが、幸いな事に怪我もなく自分の足で歩けるほどだ。
「急ごう、ここもすぐ炎に飲まれてしまいます」
櫻井が告げ、3名の警護をしながら他の住人達が待つ場所へと向かい始めた――……。
●全員救助
ハンター達は集落に取り残された住人、すべての救助を行った。
10人全員がばらけていなかったという幸運もあったが、それは微々たるもので、10名全員の救助を行えたのはハンター達のおかげと言えるだろう。
住人達は住む場所は失ってしまったが、一番大事な命は失わずに済んだ。
それだけでも儲けものだ、とほとんどのハンター達が心の中で呟く。
その後、ハンター達は怪我人を病院に連れて行ったり力仕事をしたり、と住人達の手伝いを行った後、報告のために帰還していった――……。
END
「私達が倒れては元も子もないわ、煙を吸わないようにしましょう」
ミランダ・ヴィオール(ka0419)は同じ目的で集まったハンター達に言葉を投げかける。
「救助する側が炎に巻き込まれたり、煙を吸って倒れたら、残された住人を助ける人がいなくなっちゃうからね、ちなみに私はバンダナを濡らして鼻と口を覆うつもりよ」
「そうだな、住人を助けるためにも…まず俺達は自分の身を守らなくちゃいけないんだよな」
リック=ヴァレリー(ka0614)はミランダの言葉に納得したように頷きながら答える。
(もう…あんな思いはしたくねぇ! 1人でも多く助けて見せる!)
とある事を思い出し、リックは強く手を握り締めながら心の中で呟いた。
「僕のこんなちっぽけな手でも差し伸べれば助かるかもしれない人達がいるなら、精一杯手を伸ばしてみせるよ……!」
超級まりお(ka0824)は今にも飛び出しそうな勢いで呟く。それだけ彼女が残された住人の事を心配しているという事なのだろう。
「悪いんだけど、水を貰えるかな? あと俺達が救助した後、すぐ治療に当たれるように多少でも医療の心得がある人が集まっていてもらえると助かるんだけど」
ロラン・ラコート(ka0363)が住人達に告げると、数名が手を挙げてロランの前に集まった。
「水ですけど、これくらいで大丈夫ですか?」
「問題ないよ、あまり沢山持って行っても動きにくくなるだけだし」
住人が差し出してきた水の入った筒を受け取りながら答える。
「とにかく! まだ炎の中に残されてる人がいるんだろ? だったら早く行かなくちゃな!」
ぐっ、と拳を強く握り締めながらゼル・アーガイア(ka0373)が叫んだ。
「助けられるんなら助ける! そこに理由なんていらないっしょ!」
「……そうだな、こうしている間にも危険が迫っているんだし急いだ方がいいのは同感だ」
ライル・ギルバート(ka2077)は、ゼルの言葉に頷きながら答える。
「きっと残されてる人達は怖くて仕方ないよね、早く助けて安心させてあげないと…!」
国貴(ka1936)は慌てたように、今回集まったハンター達に告げる。
もちろん他のハンター達も悠長に構えているつもりはない、ただ1人でも多くの住人を助けるためには情報を収集する必要もある。急がば回れ、という事だ。
「例え燃え盛る火が怖くても、人を見殺しになんて出来ません……! 取り残されている人達は、私達よりも怖い思いをしているはずですから……早く救出して安心させてあげたい」
櫻井 悠貴(ka0872)は呟く。出来れば誰1人欠ける事なく助けたい、そう思っていた。もちろんどのハンターも同じ事を思っていたが、櫻井はその気持ちが他のハンターよりも強いような気がした。
「必要な情報は聞いた頃か? そろそろ向かうとしようか」
ライルが呟き、ハンター達は住人の救助をするべく、行動を開始し始めた――……。
●燃え盛る森にて
今回、住人の救助を引き受けたハンター達は8名集まり、それを4つの班に分ける作戦を立てていた。
A班・ロラン、ライル。
B班・国貴、ゼル。
C班・ミランダ、リック。
D班・超級、櫻井。
捜索範囲も東西南北に別れ、短い時間で全部の場所を捜索出来るように、とも考えていた。
「住人にはぐれている者達のリストアップをしてもらったんだ、建物に居そうな住人の目星とかね、確実ってわけじゃないけど目安程度になると思うから情報を共有しておくよ」
ロランは逃げ出した住人達から聞いた情報をハンター達と共有して、同じ班のライルと共に燃え盛る森へ足を踏み入れたのだった。
※A班
「……げほっ、結構やばいかもしれないね」
水で濡らしたバンダナを口に当てながら、ロランが眉根を寄せながら呟く。
「水を被って森に入ったが、この調子じゃすぐに乾いて大変な事になりそうだ」
ライルもこれほど激しい炎は予想していなかったのだろう。忌々しそうに呟く。
「誰かいないか! 俺達は助けに来た! 声が聞こえたら返事をしてくれ!」
大きな声でライルが叫んだ時、か細い子供の声が聞こえた。
「ライル、地図ではこの先に孤児院があるとなっている。孤児院の子供も2人行方不明になっているらしいから、その子達かもしれない」
「……! 急ごう!」
2人は孤児院があるとされる場所に向かって駆けだす。
孤児院がある場所に向かうと、確かに子供が2人存在した。
「これは……!」
だが、建物そのものが炎に包まれており、いくらハンターであっても、その中に踏み込めば生きて戻れない事は容易に想像出来る。
(無理に窓を割れば火の勢いが増す、そうなったら子供達が助かる可能性も低くなる)
ロランはどうすれば子供達を助けられるか、必死に考えを巡らせる。
「助けて! 僕は大丈夫だけど、ユウ君は足を怪我しちゃって歩けないんだ……!」
窓から必死に助けを求める子供の言葉に、更に状況は悪化する。
「ロラン、残る方法は1つ。あの子供達にあそこから飛び降りてもらうしかない」
「……!」
ライルの言葉に、ロランは驚かなかった。
ロラン自身もその方法しかないと心の何処かで感じ取っていたから。
「そこから飛び降りろ! 必ず俺達が受け止める! だから勇気を出して降りて来い!」
ライルが子供達に向かって叫び、ロランも子供を受け止めるための準備を行う。
今回のハンター達は担架代わりに、と毛布を持って来ていた。
それを使えば、怪我をして歩けない子供に無理をさせる事もないだろう。
「わ、分かった……! 僕達、飛び降りるからちゃんと受け止めてね……!?」
涙でぐちゃぐちゃの表情を見せながら、先に足を怪我した方の子供が飛び降りてくる。
その子供はライルが受け止め、残ったもう1人をロランが受け止めた。
「……怪我はしてないが煙を吸って顔色が悪い、このまま抱きかかえて1度住人達の元に戻ろう、残りの救助はそれからだ」
ライルの言葉に頷き、まずはA班が2人を救助して住人達の元へと戻って行った。
※B班
「誰かいませんかー!? 僕達の声が聞こえていたら返事をして下さい!」
国貴は濡らしたバンダナをマスク代わりに使いながら、大きな声で叫ぶ。
少し離れた場所では、ゼルも同じように大きな声で捜索を行っている。
B班はお互いの意志疎通が出来る程度の距離を保ちながら、少し離れて捜索を行っていた。
くっついて捜索する事が悪いとは言わないが、今は同じ場所を探すより例えペアでも別々の場所を探した方が効率良いと国貴は考えたからだ。
「国貴! 悪いけどこっちに来てくれ! この瓦礫の向こうに人がいるみたいだ!」
ゼルの言葉が聞こえ、国貴は慌てて駆け寄った。
「…本当だ、瓦礫の向こうに3人の気配を感じる」
炎の音と恐怖でゼル達の言葉は聞こえていないらしく、女性達の泣き喚く声が聞こえる。
「この向こう側にいるから、ここを崩すにしても怪我をしないか心配だね……せめて、こっちの事に気づいてくれてたらいいんだけど」
国貴は困ったように呟く。
助けるためとはいえ、瓦礫を壊して怪我でもされたら本末転倒になってしまう。
「こっち側からなら壊せるんじゃない? 本当はそっち側を壊すのが一番いいんだろうけど、出来ない物は仕方ないし、今は救助優先で考えなくちゃ」
国貴が指差したのは、少しだけ炎の強い場所。
3人の女性が固まっている裏側を壊すのが一番いいのだが、そこを壊してしまえば余計な怪我をする事になってしまう。
だから、少々荒っぽいやり方ではあるけ救助のためには、どうしてもこの分厚い瓦礫を壊す必要があった。
「……分かった。ここの瓦礫は俺が壊すけど、救助者へのフォローはよろしくな!」
ゼルは『魔導ドリル』を装着して、なるべく威力を弱めに瓦礫を壊していく。
「きゃああっ!」
「大丈夫だよっ!」
突然壊れた瓦礫に女性達の悲鳴が聞こえたが、国貴がすぐさま女性達に声を掛けた。
「僕達は助けに来たんだ、これ以上火の勢いが強くならないうちにこっち側に来て……!」
国貴はこれ以上女性達が不安にならないよう、必死に言葉を選びながら話しかけている。
「ゼル君、一度戻った方がいいんじゃないかな? この人達を連れて捜索を続ける事は出来ないし……この人達だけじゃ、森の外に出られないと思うから」
「……そうだな」
ゼルは少し考えた後、国貴の提案に賛同するように頷く。
他に救助を待つ人の事も気になるけど、今は目の前の3人を安全な場所に連れていく事が先決だ、と自分の心に言い聞かせ、よろめく女性を支えながら森の外へ向かい始めた。
※C班
「肌がひりひりする、さっき来たばかりの私たちでさえこんな感じなんだから……救助を待つ人達の中には酷い火傷を負っている人もいるでしょうね」
ミランダの呟きに、リックも炎の熱さに眉根を寄せていた。
(……熱い、だが、この程度の熱さで俺の心を折れると思うな! 絶対に助けてみせる!)
リックは自分の心を奮い立たせるように、何度も『助けて見せる』と心の中で呟いている。
「さっき入った通信だと現在5名が救助されているみたいね、確か先に逃げた人達から聞いた人数は10名、ようやく半分が救助されたって所かしら……」
「俺達が森に入ってまだ大した時間が経ってないのに5人救助……大丈夫、やれる! 絶対に誰1人として死なせるものか、俺達が全員助けるんだから!」
「そうね、待って……何か聞こえない?」
「え?」
ミランダの呟きに、リックも耳を澄ませる。
すると確かに炎が侵蝕する音にまぎれて、男性の声が聞こえた。
「誰かいるのか!? わしはいいから、孫を……孫を連れていってくれ……!」
ミランダとリックが駆け寄ると、老人が瓦礫に足を挟まれて身動きとれずにいた。
その隣にはぐったりとしている男の子が倒れている。
「まさか、その子……っ!」
「まだ生きとる、わしを置いていけんと言い張って逃げようとせんかったんじゃ……煙で意識を失ってるが、今からでも連れ出してくれれば助かるはずじゃ! すまんが、その子だけでも連れていってくれんか……!」
「この子だけって、貴方はどうするの?」
「わしはもう構わん、足を挟まれて動けんし……瓦礫から足を抜く事が出来ても、怪我で歩く事さえ適わん、ここで死ぬ運命なんだろう」
老人の言葉に「ふざけるな!」とリックが大きな声で叫んだ。
「じいさん、あんたはそれで満足かもしれないけどこの子はどうなるんだ! 目が覚めて自分だけが助かったと知って、この子が平気でいられると思うのか!」
「私も同感ね、そんな事を知って平気でいられるような子ならこの状況でここに残ってないと思うし……この子のためにも、貴方も一緒に助かってもらわないと困るのよ」
「じゃが……」
「リック、きみの『ロングソード』をここに挟んでもらっていい? それをテコにして、この瓦礫を浮かせてみましょう、痛みが酷いでしょうけど瓦礫が浮き上がったら足を抜いて」
老人の言葉を聞かないまま、ミランダとリックは瓦礫を動かそうと努力を始める。一般人には動かすのが無理でもハンターが2人揃っていれば何とかなる。
「ぐっ……爺さん! 今のうちに、早く足を……!」
リックとミランダが『ロングソード』をテコにして瓦礫を浮かす。老人も痛みに表情を歪めながらも必死で瓦礫から足を抜く。
「リック、毛布は2人を乗せられるくらいの大きさかしら」
「ギリギリって所じゃないかな、どっちも歩けないだろうし……無理をしてでも乗せなきゃダメだろうな」
持参してきた毛布を担架の代わりにして、老人と子供を乗せ、2人は森の外を目指した。
※D班
「超級さん、現在7名が救助されたみたいです。A~C班は救助者を連れて一度外に出た後、再び捜索に当たっているようですが、他の救助者は見つからないみたいですね」
櫻井は『トランシーバー』で他のハンター達から聞いた情報を超級に伝える。
「恐らくA~C班の捜索区域に残されている人はいないでしょう、残り3名、いるとしたら私達の捜索範囲内になるかと思います」
「そっか……」
櫻井の言葉に、超級は頷きながら答える。
超級は火事で逃げられない人には3タイプいると思っている、判断が出来ない人、身体の不自由な人、閉じ込められた人――の3タイプ。
状況次第になるが、超級は閉じ込められた人を重点的に助けようと考えていた。
「……超級さん、あそこ、少し変じゃないですか?」
櫻井が指差したのは、集落の中にある家屋の1つ。
周りに色々な物がゴチャゴチャとしていて、自分達で逃げ場を塞いでいるような感じだ。
「窓を見て! 人がいる!」
窓を必死に叩く住人の姿を見つけ、櫻井と超級は慌ててそちらに向かう。
その家に近づき、どうして住人がここにいるのか分かった気がした。
「恐らく、これは外に積み上げていた物が火事のどさくさで倒れてしまったんですね」
不運な事にそれが玄関を塞いでしまい、裏口は既に火が回っているため、住人達は家の中にいるしか出来なかった事が伺える。
「これを1つずつ動かしていたら間に合わない……僕がこれを壊すよ」
超級は『リボルビングソー』を構え、櫻井に告げる。
「みなさん、下がっていて下さい! 玄関先の物を壊しますので、その後で逃げましょう!」
櫻井が家の中に残っている者達に告げ、自らも少し距離を取る。
その後、激しい音が響き、玄関を塞いでいた物が壊れ、中にいた住人達3名が外に出てくる。
もう少し櫻井と超級が来るのが遅ければ、家ごと焼けていただろうが、幸いな事に怪我もなく自分の足で歩けるほどだ。
「急ごう、ここもすぐ炎に飲まれてしまいます」
櫻井が告げ、3名の警護をしながら他の住人達が待つ場所へと向かい始めた――……。
●全員救助
ハンター達は集落に取り残された住人、すべての救助を行った。
10人全員がばらけていなかったという幸運もあったが、それは微々たるもので、10名全員の救助を行えたのはハンター達のおかげと言えるだろう。
住人達は住む場所は失ってしまったが、一番大事な命は失わずに済んだ。
それだけでも儲けものだ、とほとんどのハンター達が心の中で呟く。
その後、ハンター達は怪我人を病院に連れて行ったり力仕事をしたり、と住人達の手伝いを行った後、報告のために帰還していった――……。
END
依頼結果
依頼成功度 | 大成功 |
---|
面白かった! | 5人 |
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MVP一覧
重体一覧
参加者一覧
サポート一覧
マテリアルリンク参加者一覧
依頼相談掲示板 | |||
---|---|---|---|
相談卓 ライル・ギルバート(ka2077) ドワーフ|27才|男性|闘狩人(エンフォーサー) |
最終発言 2014/07/15 20:52:33 |
||
依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2014/07/14 18:01:36 |