珈琲サロンとぱぁずの新入り

マスター:佐倉眸

シナリオ形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
4~6人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/07/08 19:00
完成日
2015/07/17 01:07

みんなの思い出

思い出設定されたOMC商品がありません。

オープニング


 フマーレ商業区の一角に小さな喫茶店がある。
 珈琲サロンとぱぁず、いつも賑わっているこの店も、昼過ぎのティータイムを終えた頃は客もそれほど多くは無い。
 店の中で1箇所だけピンクのガラスを嵌め込んだ窓際に、2つのブーケが吊されて花弁を乾かしており、それを見上げるように置いた椅子に掛けて、ユリアはピンクのマグカップでローレンツの煎れた珈琲を飲む。
 ユリアの手には一通の手紙があった。
 ユリアの祖父、エーレンフリートの義理の父親――ユリアの曾祖父に当たる人物だが――が、ヴァリオスで営んでいた宝飾工房に、少女が弟子入りを志願したらしい。
 歳も若く、未だ幼い弟を1人連れている。
 エーレンフリートに技術があるわけではなく、あくまで義父の遺作を片付けようと工房を開けていた所へ転がり込んできた少女だ。
 名前をモニカと言うらしい。
 諸諸折り重なった事情により、ヴァリオスで2人行き場を無くしてしまったようだ。
 宝飾については、弟子入りを志願してくるだけの知識やセンスはあるようだが、この辺りにはそれを育てられる師はいない。
 このままこの寂れた工房にいるよりも、外へ出た方が良いだろう。モニカも工房の店番は退屈そうだ。
 モニカも、ここを宿にしてこの狭い界隈で燻るよりも、身を立てて自力で師を探して回りたい、と。彼女のみの振りを真剣に考えて、そんな結論に落ち付きそうだ。
 喫茶店を手伝わないかと、賑わっている店で、常連の多くがフマーレの職人、或いは彼等へ材料を届けたり、彼等の作った道具を売る商人だと紹介した。
 モニカは暫く迷っていたようだが、ピノと一緒に頭を下げた。

「――と、言うわけで、モニカと弟のピノを迎えに行ってやってくれ。お祖父ちゃんより」

 ユリアの手の中で手紙がかさかさと乾いた音を立てる。
 店の店員、エーレンフリートの旧知であるローレンツは笑いながら、それを見詰めた。

 手紙は2枚入っていた。2枚目はモニカやピノの容姿の特徴が細かく記されていた。
 そして末尾には、今日の日付が書かれていた。


 ユリアがこの手紙を受け取った朝。ヴァリオスの街道入り口では既に3人が場所の前で支度をしていた。
 一頭立ての小さな馬車は馭者が1人座っており、モニカは弟を胸に抱えて襷で括り、小さな荷台に2人の着替えや日用品を積み込んでいる。
 道中の護衛を依頼したハンター達にエーレンフリートが手を振って、こちらだと呼ぶ。
「――今日は、よろしくお願いします!」
 モニカがぺこりと頭を下げた。ピノもハンター達を振り仰ぐように見詰めてふにゃふにゃと笑っている。
 エーレンフリートはハンター達の無事を祈ると、モニカの肩を叩いて励ました。
「しっかりやってきなさい。君なら大丈夫だ。ああ、そうそう、孫娘によろしく伝えてくれ。どうせまだ喪服を脱がないんだろう。夏が来れば事故から一年だ、いい加減、立ち直らなくてはいけないと。周りが優しいからといって、甘えていてはいけないと。……それから、仮にも喫茶店の店長なんだから、珈琲くらい煎れなさい、ロロ君にいつまで任せっきりにしているんだと」
 早口に捲し立てて、溜息を吐くと、ピノの頭を皺だらけの手で撫でた。
「君も、頑張りなさい」

 いってきます、とモニカが馬車に乗り込んだ。
 モニカの小さな馬車と、ハンター達が出発し、その後ろ姿が見えなくなるとエーレンフリートは工房に帰った。
 彼が工房に着いた頃、街道には一時封鎖の看板が立つ。
 どうやら、ゴブリンの群が複数出たようだ。

 晴れ渡った初夏の空、見上げてモニカは腕を思い切り伸ばした。触れる風が心地良く、新生活は不安もあるがフマーレという職人の街への希望も大きい。
 とてもとても、楽しみだ。
「いい天気だねー」
 いい天気の日に出発出来て良かったね、と弟をあやす。
 ピノはきゃっきゃとはしゃいでいたが、不意に口をもごもごと空を指してむずがった。
「んー、どうしたの?」
 街道を挟む森、鳥がまるで逃げるように、一斉に飛び立っていった。


 街道の先、ゴブリンの群が現れた。
 1つは既に目標を街道を行く馬車に定め、ヴァリオスのある方向へ進んできている。
 もう1つは森の中、じりじりと覗うように茂みから覗いている。
 モニカの馬車よりも1つ速く出発した商人の幌馬車は1つ目の群に遭うことは無かったが、2つめの群のぎらぎらした目に見付かった。
 横倒しに壊れた馬車と食い散らかされた死体は道に広がって残ったまま、破れた幌が風に揺れている。

リプレイ本文


 馭者は手綱を取る、隣にピノを抱えたモニカを乗せて、小さく古い馬車が街道を走り出した。
 人の手が入っているとは言っても、森に囲まれた道。先の様子が不安だからと、馬車に先行したコントラルト(ka4753)は馬車と伝話の通じる距離を取って、同行のマキナ・バベッジ(ka4302)を気に掛けながら戦馬を操る。
 傍らを走る狛犬の鬣が風に戦いだ。
 マキナが前へ走り、足を止め、双眼鏡を覗く。
 直進する道の先、それらしい影は今のところ見られないが、木が視界を遮るカーブの先、不審に揺れる影を見た。
 後方へ伝え、先の遭遇に備えながら進む。
「この先……でしょう……」
「そうね。馬車が追い付いてしまう前に進みましょう」
 2人が先を急ぐ。

 飛び去って行く鳥を見上げたバジル・フィルビー(ka4977)は、その鳥たちの不可解な移動に、森へと目を向けた。
「注意しておいた方がいいのかな」
「――分かった……こういう時って、出てくるよね――うん……そうみたい……先のカーブ、危ないって」
 電話での通信を終えた白水 燈夜(ka0236)が頷いた。道の特徴を仲間と馭者に伝えると、ふぅ、と軽く溜息を吐き短杖を握り直す。
 ニオ・イフェチ(ka3227)とカリアナ・ノート(ka3733)もそれぞれ得物を手にしながら、モニカには笑顔を向けた。
「大丈夫や、ボクらが側におるさかいな」
 な、と覗き込むとモニカが小さく頷く。その視界から外れた手元でナイフを開いた。
「モニカおねーさんとピノさんも姉弟なのよね? 私も姉が3人いるのよ」
 朗らかに喋りながら、丈を超える杖を揺らし、周囲の森へも警戒を走らせる。

 彼等とモニカの馬車が進む先、先行した2人が足を止めている。
 マキナが身を屈めて、先を覗い、いた、と小さく唇を動かした。
「私が前で防ぎます。あなたは至急連絡を」
 コントラルトが囁き戦馬の横腹を蹴って奔らせた。
 馬上で剣を取り魔導機械の柄を握る。マテリアルを巡らせると針が回り、独特な意匠の剣が手に馴染んでいく。屈む身体を覆う程の大きさの盾も、マテリアルに応えるようにモーターの音を鳴らす。
 盾を構えてゴブリンの群に飛び込んでいった。
 連絡を終えたマキナも、クローブの中で左手に文様を浮かばせる。歯車が回転し、時計の針を回すその幻影の刻むリズムに乗ってマテリアルの熱が巡る。
 鋼線の長い鞭を束ねながら群を見据える。
「馬車とは離れて戦いたいわね」
「こちらに引き付けて、邪魔をするように、立ち回ります……」
 街道に現れたゴブリンは4匹。2匹が棍棒を構え、もう2匹がこぶし大の石を握っている。
 背後から近付く馬車の気配。

「馭者はんも、屈んどってな。馬、暴れさしたらあかんからな」
 ゴブリンがの影が遠く覗える辺りで、馬車を止める。バジルとカリアナは馬車の護衛に残り、ニオは長い射程を持つ銃に装填しゴブリンへ狙いを付ける。
「ん。危ないから、モニカ達も。さて……交通整理、だな」
 前の2人へ到着を知らせ、白水は馬車を背後に庇う様に立つ。掲げた杖から火球を放ち、その注ぐ中に捕らえたゴブリンを焼く。
 爆ぜて消える火球に合わせ、ニオが鉛を放ち的確に1匹を貫いた。
 マキナが鞭を翻して誘い、馬車に気付いたゴブリンへはコントラルトが電撃を纏わせた剣で動きを止める。
 全員が優先して狙った2匹のゴブリンは石礫を手放しながら倒れ、残りの2匹も息を荒げる。
 棍棒を振り上げて飛び出した1匹の前をコントラルトが盾で塞ぐ。攻撃を弾かれたゴブリンがゆらりと狙いを彼女へ向けた。
「大丈夫よ!」
 戦いの音にピノを抱き締めて怯えたモニカをカリアナが振り返って励ます。青い双眸でにっこりと笑って、堂々と胸を張ってみせる。
 大丈夫、守るから。モニカはピノの背をあやすように撫でて頷いた。
「……前を抜けてきそうな敵はいない、かな」
 ゴブリンの攻撃の先を見ながら、バジルが呟く。馬を宥める馭者を庇う様に立って、加勢は要るだろうかと杖を構えた。
 その場に出てきたゴブリンを排除し、それ以上の増援が無い事を確かめて、馬車は再び出発した。
 むにゃむにゃと眠ってしまったらしいピノが小さな口を動かして寝言に何かを言おうとしていた。


 これだけとは限らないからと、コントラルトとマキナは再度先行することを決め、コントラルトが戦馬を走らせ、マキナが遅れないようその後に続いた。
 互いに姿が見えなくなると、伝話に安全と知らせが入る。
 4人は周囲に気配が無い事を確かめながら馬車を進め、モニカや馭者に声を掛けながら先を目指す。
 日が高く昇りきる頃には、会話も弾み気落ちしていたモニカも明るさを取り戻していた。
 風が木木や茂る葉を揺らして、木漏れ日の温かな光が道に注ぐ。
 何度目かの安全の知らせが届いた頃、伝話を繋いでいたニオが顔に影を走らせる。彼の気配を悟ったらしいピノがむずがって小さな手を振り回した。
「――……せやね、ボクらでどうにかするわ――堪忍な。ちょぉと、止まったって」
 馭者が手綱を引くと、ニオはハンター集めてこの先の様子を伝えた。
 壊れた馬車と死体で道が塞がっている。その先の茂みに敵の気配が5匹以上。さっきの奴らよりも手強そうだ。
「私はモニカおねーさんの側で守るよ! 周りもちゃんと見ておかないといけないから」
「僕も側にいます。怖がらせないように……せめて、笑顔で」
「せやね、2人は離れへんように。ボクも気を付けとこか」
 カリアナとバジルが馬車のモニカを振り返って手を振った。何があったのだろうと首を傾げていたモニカが2人に釣られて微笑んだ。
 ニオは頷いて前へ出る。
「伊織、いい子にしような――モニカ、ちょっと遊んでてあげて。噛んだりしない、もふもふ、だよ」
 白水は連れた猫をモニカの眼前に抱き上げる。もふもふ、という言葉通りに柔らかな腹の毛並みへモニカがそっと手を伸ばし、指を潜らせた擽った。
 猫でモニカの気を引くと白水も前に、道の先の死体へ急いだ。

 散乱した馬車と死体の側に屈んで白水は溜息を吐く。閉じようとした瞼は顔に刻まれた傷によって切れていた。せめて顔の血と埃を払って、抱えると茂みの中へ隠す。離れて転がっていた腕も拾い、その側に隠した。脚を拾ってきたニオが揃えた死体を見詰め、頭を垂れて目を伏せる。
 幸いにもと言うべきか、元は大きな馬車の荷台も割れて、その一片は1人、2人で運べる程度の大きさになっていた。引き摺るようにそれを片付け、腹を食い破られた馬の前足と後ろ足を掴み茂みの中まで引き摺っていく。
 血の跡は残ったが元の凄惨さは静まった。
 2人が戻り馬車を進める。猫はモニカの膝の上で丸くなっていた。
「モニカ、ここから暫く伊織見てて」
「目ぇ閉じ取った方がええんとちゃう?」
「私とお喋りしよう、おねーちゃん」
 モニカが目を瞑って手探りで猫と弟の背を撫でながら、カリアナと喋る間にバジルは馬車の側を離れ茂みから覗いた幌を千切る。ここで斃れた者を示す文字だろう、その店名らしき文言の記された布を張り出した枝に括り付けた。
「後で……」
 このまま残しておくわけにはいかない、迎えに来る為の目印に残したそれが風にはためく姿が目に焼き付く。馬車から離れすぎない内に後を追って、モニカの側に戻った。
 伝話に連絡が入った。
「――……うん。わかっ……」
 遭遇と交戦の連絡、返事をする前に不自然に切れた声。伝話を仕舞うと、白水は先を指した。

 コントラルトが戦馬を止め、腕を伸ばしてマキナも制する。
「……先に、いそうね」
 連れていた狛犬を走らせる。馬車と死体を迂回して進み、すぐに戻ってきて1つ吠えた。
 血の臭いはまだ続いているらしい。
「身元が分かる物が無いでしょうか……」
 コントラルトが周囲を警戒し、マキナは死体の側に落ちていたペンダントを拾った。大粒の石を留めた台座の裏に名前らしき文字が刻まれている。死体となってしまった彼の持ち物だろう。
 マキナはニオに道の塞がれた状況と、先の警戒へ向かうことを伝えた。
 それから、然程進まずに、ゴブリンの群と遭遇した。
 道に現れたのは棍棒を構えた3匹だが、周囲にはまだ気配がある。
 一斉に襲いかかってくる攻撃を避けながらマキナは伝話を繋いだ。話し終えた一瞬の隙、一撃が脚に入った。大腿を叩かれて姿勢を崩したマキナの前にコントラルトが進み盾を構える。
「私が受け止めるわ」
「はい……」
 マキナは頷き、鞭を構える。長い鞭は一歩下がった所からでもゴブリンを狙うことが出来る。
 コントラルトが構える盾を抜けさせないように、鞭を撓らせて動くものから弾くように打っていった。


 3匹のゴブリンを相手に2人が押し始めた頃、馬車がその姿を捉えて止まった。
 劣勢を知ったゴブリンが茂みから更に3匹姿を見せ、計6匹の更に後方、他よりもややまともに武装したものがいた。
 その吠える声で3匹のゴブリンが石を掴んで構えた。
 馬車を庇いながら杖を向けた白水の黒い双眸が、マテリアルの巡る瞬間深い海の青に変わる。柔らかな黄色い羽の幻影が舞って消える中に放たれた霧。前に出ている6匹を取り囲むように広がり風に流されていく。
 ゴブリン達の動きは乱れるが、後方から吠える声に立て直し、うとうとと微睡むものはいても、それぞれの得物を手放すものはいない。
「統率がとれてるか。後のがボスだな」
 白水が狙いを切り替え杖を向ける。
「アレやね」
 ニオが銃を構えて狙いを定める。地面を踏みしめて大型の銃の反動を支えながら、狙い澄ます一撃、マテリアルを込めた鉛は違わすに後方の1匹へと向かっていく。
 カリアナとバジルも馬車を守りながらそれぞれ杖を向けた。
「私だってこれくらいできるんだから!」
 呪いを刻んだヤドリギの杖を翳し水の幻影を放つ。カリアナがその小柄な身体にマテリアルを騒がせて叩き付けるように放った水の幻影が、同じくゴブリン達を指揮する1匹へ向かって落ちる。
「モニカも、馭者さんも伏せていてね」
 バジルの手元向けた杖の先に嵌め込まれた宝石が陽光を浴びて輝いた。
 なにも無い空間に光が集まり小さな天使の形を成す。それを己が身の内へ招くと、光りの天使は溶け込むように姿を消して、代わりにバジルの背に金の翼の幻影が浮かんだ。動かないその翼を背負って放った影の塊は空間を縫って進み、後方のゴブリンに衝突し霧散した。
 立て続けに攻撃を加えられた1匹がふらついている。それを見た残りの6匹はふらふらと、逃げ出すように散り散りになっていく。
 棍棒を振り回すものも、石礫を構えているものもいる。何れも狙いが定まらない様子で、浮き足だっている。
 コントラルトが剣に電撃を纏わせて、石礫を持つ1匹の動きを止める。
「こちらを狙いなさい――さあ、次です」
 剣と盾を構え直しゴブリン達を見回した。
「深追いをするつもりはありませんが……戦うのでしたら……」
 マキナも向かってくる1匹を鋼線で弾き飛ばす。
 攻撃を受けたことで奮起したのかゴブリン達は武器を持って向かってくる。マキナの鞭とコントラルトの盾を抜けた1匹へ白水が水の幻影を落とし、もう1匹はニオが目を眇めて狙いを付ける。
 水と鉛に弾かれた2匹は、更に背後から影の塊に襲われた。
「まだ未熟だけど……!」
 カリアナがマキナを呼び、緑の風を纏わせる。
 風が斬り掛かってきたゴブリンのナイフの機動を逸らすと、その切っ先はマキナを掠めること無く通り抜け。背後から鋼線に沈んだ。
「ありがとうございます……」
 大きく数を減らし、或いは、数が減ったからか、馬車を目指そうとしたゴブリンの行く手を、大きな盾が遮った。コントラルトの盾が押し返すようにゴブリンのナイフを防ぎ、弾く。
「モニカは襲わせないわ」
 剣の切っ先を向けながらゴブリンを睨んだ。
 他の道を狙うゴブリンだが、何処もハンターが構えている。
 司令塔を欠いたゴブリン達へ、白水が再び霧を放った。
 霧に包まれて眠るゴブリンの始末を終えた。
「怪我したよね? 連絡の時に」
「ええ……」
 バジルに問われてマキナが頷く。杖から流れたマテリアルがその怪我をそっと癒やしていく。
 周囲を確認して馬車は再び走り始めた。

 その後、は問題も起こらずに日が落ちる頃にフマーレに辿り着いた。


 ユリアは馬車が停まる度にそわそわと落ち付かなく声を掛けている。街道でゴブリンが出ているという知らせも入り、不安は募るばかりだった。
 護衛を頼んだとは聞いていたけれど、と、上り始めた月を見上げた。
 また一台、馬車が着いた。ハンターに護衛された少女。そう聞いてユリアは慌てて駆け寄った。
「ユリアさんですよね。モニカです。モニカ・フィオリーノ。こっちは、弟です、ピノっていいますよろしくお願いします!」
 モニカも馬車を降りると、その特徴的な黒いドレスに弟を抱き抱えて走った。
「モニカ!」
 コントラルトが慌てた声を上げ、ハンター達もすぐに2人に続いた。
「伝言があったでしょう?」
 言われて思いだしたと、所々に、ええと、と迷いながら伝える。
「亡くなった人を悼むのは心の整理に必要よね。でも、ずっとそれに囚われてしまっていては、その亡くなった人にいつまでも心配かけてしまうんじゃないかしら?」
 コントラルトの言葉にユリアが寂しげに笑んで、モニカに手を差し出した。
 これからはあなたと一緒なのに、囚われていてはいけないわねと。
「よろしくね、モニカ、ピノ」
「はい! ユリアさん」
「君たちに、素敵なことが沢山起こりますように」
 ここまで2人とも、良く頑張ったね。とバジルはモニカとピノをそれぞれ労って。
「ん。……モニカ、とぱぁずは、カフェオレが美味しいんだ。優しくて良い所だしモニカならきっと頑張れるよ」
 俺も応援してる。猫を抱えて白水が囁いた。
「モニカさん、これから大変かもしれませんが……困ったことがあれば、相談に乗れると思いますので……」
 頑張って下さいね。静かな声で、けれど穏やかに染み入るような口調でマキナが言った。
「これから頑張ってね、何かあったらまた相談に乗るわ」
 コントラルトは、別れ際に3人の幸運を祈って声を掛け、街道の詰め所へ向かった。
「――報告があるからね。済んだら、珈琲をご馳走になりに行きたいな」
「僕も……届け物がありますから……」
 目印を残したバジルと、名前を刻んだペンダントを拾ったマキナもそれに続く。

 仕事はもう少しだけ続きそうだ。

依頼結果

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重体一覧

参加者一覧

  • お茶会の魔法使い
    白水 燈夜(ka0236
    人間(蒼)|21才|男性|魔術師

  • ニオ・イフェチ(ka3227
    人間(紅)|32才|男性|猟撃士
  • 真白き抱擁
    カリアナ・ノート(ka3733
    人間(紅)|10才|女性|魔術師
  • 時の守りと救い
    マキナ・バベッジ(ka4302
    人間(紅)|16才|男性|疾影士
  • 最強守護者の妹
    コントラルト(ka4753
    人間(紅)|21才|女性|機導師
  • 未来を思う陽だまり
    バジル・フィルビー(ka4977
    人間(蒼)|26才|男性|聖導士

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/07 03:27:14
アイコン 相談卓
マキナ・バベッジ(ka4302
人間(クリムゾンウェスト)|16才|男性|疾影士(ストライダー)
最終発言
2015/07/08 01:57:13