ゲスト
(ka0000)
さすがの歪虚だ、馬力が違いますよ
マスター:御影堂

- シナリオ形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
1,000
- 参加制限
- -
- 参加人数
- 4~8人
- サポート
- 0~0人
- マテリアルリンク
- ○
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/07/09 19:00
- 完成日
- 2015/07/15 16:49
みんなの思い出
思い出設定されたOMC商品がありません。
オープニング
●
「さすがの歪虚だ。馬力が違いますよ」
「いってる場合か! ハラミー、ほら、スピード上げて!」
「OK、カルビー。このハラミー様におまかせよ!」
そういってハラミーは魔導バイクのアクセルを全開にする。
遺跡調査を重ねに重ねて、手に入れた魔導バイクだ。
こんなところで壊されてたまるものか、とハラミーは意気込む。
ドッドッドッ、と音をたてて全速力で駆けるバイクを複数の馬が追いかける。
そいつらは普通の馬とは、まさに馬力が違う走りを見せていた。
全身が黒く、目は赤く光っていた。
角はないものの、目と目の間に血の色をした宝石のようなものが見える。
「なにか来るよ!」
「何かってなにさ!」
「攻撃っ!!」
「どっちから!?」
「えーと、わからんけど、きたぁああああああ」
カルビーの叫びに合わせてアクセルをさらに踏み込む。
エンジンが限界近くまで回転し、イケナイ音を立てる。
だが、その犠牲もあってタイヤの「跡」が炎に焦がされた。
「ひぃいいいいい」
「あ、あいつら脚を緩めるよ……」
「なんだっていい、とりあえず脱出だよ!」
「調査は丹念!」
「念入りに!」
「やばいの出現!」
「即退散っ!」
「命あっての……」
「「物種です!」」
力強い声を上げて、バイクが走る。
宿場まで戻った所で、魔導エンジンが完全に停止してしまった。
機導師として微弱ながらも力のあるハラミーだったが、この破壊にはお手上げだった。
「あたしのボーナスがぁああ!」
「仕方ないよ……そのおかげで助かったんだもん。また稼げばいいのよ」
嘆くハラミーをカルビーが落ち着かせる。
長年、2人は探検家としてコンビを組んでいた。
今回狙ったのは、とある草原に点在するというストーンヘンジの調査だった。
「あ、そういえば」
魔導バイクの悲しみから頭を切り替え、ハラミーが地図を取り出す。
丹念に端から端までマッピングをした地図だ。
ストーンヘンジの位置も、出来る限り記していた。
「あいつらが止まったのって、これのキワじゃないかな」
「ストーンヘンジ同士を線で結んだ、境界線ってこと?」
「そうそう」
うーん、とハラミーは頭をこねくり回す。
バイクを運転するのに必死でちゃんと見ていなかったことが悔やまれる。
「間違いないよ」
「さすがカルビー」
カルビーがすらっと地図に書き足しを行っていく。
馬と出会った場所、どういうルートで入ったのか、どういうルートで脱出したのか。
馬の炎の射程距離まで、ばっちりと覚えていた。
「ここに馬がいて、炎の着弾地点が……ここね」
「パーフェクトだ、カルビー」
ニッとハラミーが笑みを浮かべる。
「早速、ハンターに依頼して、にっくき馬共を懲らしめてもらうわよ!」
「馬刺し食べたいなぁ」
「そういえば、ここの名物って馬料理だっけ……」
「なんだか、そう聞くと」
しばし思案して、ぽつりとハラミーがこぼす。
「あの馬たちが悲劇のヒロインに思え……」
「「ないわねー」」
見事に声は揃っていた。
「さすがの歪虚だ。馬力が違いますよ」
「いってる場合か! ハラミー、ほら、スピード上げて!」
「OK、カルビー。このハラミー様におまかせよ!」
そういってハラミーは魔導バイクのアクセルを全開にする。
遺跡調査を重ねに重ねて、手に入れた魔導バイクだ。
こんなところで壊されてたまるものか、とハラミーは意気込む。
ドッドッドッ、と音をたてて全速力で駆けるバイクを複数の馬が追いかける。
そいつらは普通の馬とは、まさに馬力が違う走りを見せていた。
全身が黒く、目は赤く光っていた。
角はないものの、目と目の間に血の色をした宝石のようなものが見える。
「なにか来るよ!」
「何かってなにさ!」
「攻撃っ!!」
「どっちから!?」
「えーと、わからんけど、きたぁああああああ」
カルビーの叫びに合わせてアクセルをさらに踏み込む。
エンジンが限界近くまで回転し、イケナイ音を立てる。
だが、その犠牲もあってタイヤの「跡」が炎に焦がされた。
「ひぃいいいいい」
「あ、あいつら脚を緩めるよ……」
「なんだっていい、とりあえず脱出だよ!」
「調査は丹念!」
「念入りに!」
「やばいの出現!」
「即退散っ!」
「命あっての……」
「「物種です!」」
力強い声を上げて、バイクが走る。
宿場まで戻った所で、魔導エンジンが完全に停止してしまった。
機導師として微弱ながらも力のあるハラミーだったが、この破壊にはお手上げだった。
「あたしのボーナスがぁああ!」
「仕方ないよ……そのおかげで助かったんだもん。また稼げばいいのよ」
嘆くハラミーをカルビーが落ち着かせる。
長年、2人は探検家としてコンビを組んでいた。
今回狙ったのは、とある草原に点在するというストーンヘンジの調査だった。
「あ、そういえば」
魔導バイクの悲しみから頭を切り替え、ハラミーが地図を取り出す。
丹念に端から端までマッピングをした地図だ。
ストーンヘンジの位置も、出来る限り記していた。
「あいつらが止まったのって、これのキワじゃないかな」
「ストーンヘンジ同士を線で結んだ、境界線ってこと?」
「そうそう」
うーん、とハラミーは頭をこねくり回す。
バイクを運転するのに必死でちゃんと見ていなかったことが悔やまれる。
「間違いないよ」
「さすがカルビー」
カルビーがすらっと地図に書き足しを行っていく。
馬と出会った場所、どういうルートで入ったのか、どういうルートで脱出したのか。
馬の炎の射程距離まで、ばっちりと覚えていた。
「ここに馬がいて、炎の着弾地点が……ここね」
「パーフェクトだ、カルビー」
ニッとハラミーが笑みを浮かべる。
「早速、ハンターに依頼して、にっくき馬共を懲らしめてもらうわよ!」
「馬刺し食べたいなぁ」
「そういえば、ここの名物って馬料理だっけ……」
「なんだか、そう聞くと」
しばし思案して、ぽつりとハラミーがこぼす。
「あの馬たちが悲劇のヒロインに思え……」
「「ないわねー」」
見事に声は揃っていた。
リプレイ本文
●
「遺跡って聞くとロマンを感じますねぇ」
遠くに見えるストーンヘンジを眺め、メリエ・フリョーシカ(ka1991)はぽつり呟く。
「……冒険者とか探検家には余りいい思い出ないですけど―」
目を細めれば、奥側に黒い影が点々と見える。
ふぅと短く息を吐く。苦い経験を思い出したのだ。
「状況も、番人が居るのも重なるしなー。まぁ、今回は報酬が約束されてるから全然OKなんですけどねー」
後ろをちらりと見れば、ハラミーとカルビーの姿があった。
エリス・ブーリャ(ka3419)が二人へと、声をかける。
「おっすおっす、エリブーちゃんがやってきましたよー。お二人さん元気してた?」
近況や、今回の遺跡の狙いなどを聞き出しながらエリスは云々と相槌を打つ。
途中からは紅薔薇(ka4766)も加わって、襲われた当時の様子も確認する。
「あの遺跡も貴重な物かもしれんしのう。とりあえず、調査が終わるまでは傷つけんほうがいいと思うのじゃ」
「当たり前だよ! あれは、人類の偉大なる遺産!」
かもしれない、と二人は告げる。
実際のところは、調べてみないとわからない。
「あらあら、バイクを壊されちゃってご愁傷様ねー」
ふわりと会話に入ってきたのは、ノアール=プレアール(ka1623)である。
魔導バイクが限界をぶっちぎって停止したと聞いていた。
ストーンヘンジが近づくに連れ、大きくなる黒点にノアールは視線を向ける。
「バイクの仇、討たせてちょうだいね」
柔和な笑みの裏に隠された、何か、に裏打ちされた鬼迫が見えた。
ハラミーたちは、声を揃えてよろしくおねがいします、というのだった。
エリスたちからやや離れ、水流崎トミヲ(ka4852)はぷぷっと独り笑っていた。
「いやー。バイクより早いってRB的に考えたらそれ馬じゃなくて、UMAだよ、UMA」
そして、それは雑魔だっていう。
「そう、ZOUMA……ぷ。くく」
かしましい少女たちを遠く、トミヲは独り、後を追う。
遺跡が近づくに連れ、ミリア・コーネリウス(ka1287)は気合を入れなおしていた。
「誰か迷い込んだ人とかが犠牲になりかねないからな。退治しとかないと」
「……近づくと……危なそうです」
「宿場じゃ、馬刺しが有名らしいからな。興味本位で見に行ったら危ないからね」
馬刺しといえばと、シエル=ウンディーネ(ka4421)がくるりと探検家コンビを見やる。
「……ハラミー、カルビー、……お肉の名前。……美味しそう」
「馬刺しも同じぐらい旨いけどね」
「馬刺しが好き? 結構、ますます好きになるぞ」
唐突にガーレッド・ロアー(ka4994)がミリアに向けて声を発した。
怪訝そうに、いきなりどうした、と聞かれてガーレッドは肩をすくめた。
「あ、いや、何故か口が勝手に」
「さて、二人はここで待って。あとは、エリブーちゃんに任せなさい」
さっと魔導バイクにまたがり、エリスはコンビへ告げる。
軽快なエンジン音が響き、ハラミーは悔しそうな顔をする。
「後は任せて、ね?」
ノアールも述べて、エリスと並走していった。
その後ろを匍匐前進をしながら、トミヲが追いかける。
「見つかって撃たれるとか最悪だもんね……」
全速前進で匍匐前進をすれば、彼の言うDT魔力も溜める……イメージが湧くのだった。
●
「それでは、ここで」
境界線間際、ノアールは馬を止めた。
領域内へとエリスへと運動を補佐するマテリアルを与え、魔導銃を取り出す。
「魔導銃を使うのは久しぶりねー。腕がなるわ」
感触を確かめながら、エリスの背中を見送った。
「今回の敵はお午さんね。なんとかやってみましょー」
エリスはさっくりと射程範囲ぎりぎりまで近づくと、馬を止めた。
突然の闖入者に、馬の意識が一斉に向けられる。
エリスは素早くデルタレイを発動した。
面前に出現した三角形の光から、光線を発する。
「一体漏れるわね。まいったな」
ぱっと見れば、馬は四体いた。
ここへたどり着く間際に、横目で確認したが、四体しかいないようだ。
だが、馬だけに脚力は十分だ。
デルタレイの光も、二体には一飛に避けられていた。
「っと……急がないとね」
すぐさま、バイクのエンジンをかけ直す。
馬が一気に地を駆けるのがわかった。
背中に圧迫感を感じながら、一気にエリスは加速度を上げるのだった。
「追ってくるぞ、あの馬鹿」
ガーレッドは、四体の黒馬がエリスを全速力で追いかけるのを見ていた。
「ひとまず成功ですね」
愛馬ジールにまたがり、メリエが頷く。
釣り野伏の伏せ役として使命を全うすべくメリエたちも動き出す。
「さて、ジール。いつもどおりに、行こうか」
トミヲは腹で、馬の作り出す地響きを感じていた。
境界線のキワでエリスが魔導バイクがブレーキ音を響かせる。
馬が放った炎弾を、エリスは盾を微振動させ受け流しつつ耐えていた。
時折、炎は魔導バイクやエリス自身を焦がす。
馬の意識はエリスにのみ、向けられていた。
「来るっ」
二体が足を振り上げ、突っ込んできた。
今しかない。
「今こそ溢れよ! 我がDT魔力よ……」
小声で唱えながら、トミヲは眠気を誘う霧を発生させる。
霧は、直接エリスへ蹄を叩き降ろさんとする二体を巻き込んだ。
「残念だったな、トリックだよ」
楽しげにガーレッドは告げると、銃口を向けた。
その逆側では、紅薔薇が重厚なライフルを構える。
「ふむん。銃を持つのも、随分と久しぶりなのじゃ」
「私も同じ……魔法よりは大分マシですけれど」
「基本的に舞刀士は、銃への対処を訓練するときくらいにしか触らんしのう」
とはいえ、やるなら本気だ。
メリエはすっと息を吸うと――慟哭した。
「安全装置解除! オラ景気付けだ、一発貰えよ駄馬が!」
この銃声をきっかけに、ハンターたちが攻勢を仕掛ける。
メリエ、紅薔薇を始め、今回の戦いでは銃を得意とするものは少ない。
ミリアもその一人である。
しかし、的がぐーすかと寝ているなら別だ。
「この後の馬刺しへの景気付けだ!」
弾丸は前面にいた馬の胴部を穿つ。
衝撃で起きかけた馬へ畳み掛けるように、メリエや紅薔薇も引き金を引く。
ノアールは、攻撃力強化のエネルギーを分け与えると、自身も銃口を向ける。
「狙うのは、脚ね」
奇しくも、馬は起き上がり、ノアールの攻撃を避けてみせた。
続けて放たれたシエルの弓も避け、一度エリスを蹴り入れる。
「機導士はこんなこともできるんだよー」
魔導バイクのエンジンをかけ直していたエリスは、自身の盾を高速で動かして身を守る。
それでも、蹄の衝撃は身に伝わってくるようだった。
エリスは、後方で止まった二体を引きつけるべく動く。
馬の意識が、そちらへ向いた瞬間、
「危険なら、下がれよ」
ミリアがやや前進し、馬を射止める。
大丈夫という返事が聞こえてきた。
「おっと」
馬がこちらに口を向けていた。炎が来るか、と身構えた瞬間。
「OK!」という言葉とともに、馬の身体を一条の光が消し飛ばした。
収束した光の根本にいたのは、ガーレッドだ。
まるで、馬が攻撃するのに答えるかのようだった。
もう一体の眠る馬には、
「面白いやつだ、気に入った。倒すのは最後にしてやる」と宣言する。
今日もまた、自称別次元の男はにっと笑う。
●
「逃さないよ」
そそくさとストーンヘンジの影から、トミヲは這い出ていた。
馬たちがゆるやかに後退しようとしていたのだ。
この距離からならスリープクラウドが、入るはず。
「もう一度、溢れろ……我がDT魔力」
だが、馬たちは黒いしっぽを悠々と揺らし、鼻を鳴らしていた。
そして、視線がトミヲへ向いた。
「ぐ、気合がたりなかったか……っ!!」
気づかれたかと思った瞬間、目の前で炎が弾けた。
ちょうど防御の薄い脚部を炎は焼いていく。
「……っ!」
動こうとして、灼けたところに痛みが走った。
すぐに治るだろうが、ここで足を止めたのは致命的だ。
視線を向ければ、先に眠らせた馬も起き上がっているではないか。
トミヲのピンチに、仲間が動く。
「どこを向いてるのかな?」
デルタレイを再び放ち、エリスが注意を惹く。
エリスと紅薔薇も領域内へ踏み込んでいた。
起き上がった馬へは、
「……牽制、惹きつける」とシエルが弓を引く。
「ジール! ビビったら負けだ! 死な安だよ死な安っ!」
トミヲの近くへは、メリエが踏み込み、素早く銃を操っていた。
起き上がった馬が、他の馬と合流するころにはトミヲも冷静さを取り戻す。
「くっ……今度こそ僕のDT魔力で支えてみせる……!」
気合一閃、スリープクラウドを合流地点へぶっぱなす。
眠気を誘う霧は、合流したての一体以外を、眠らせるに至った。
馬の視線は、エリスへ向けられている。
「その首、いただくのじゃ」
好機と見て、紅薔薇が一歩飛び出す。
大上段に刃を掲げ、肉薄する。視線が向いたが、もう遅い。
すっと息を吸い込み、丹田からマテリアルを全身に巡らせる。
極められた構えから放つ一撃は、ギロチンの如き鋭さで馬に襲いかかる。
「むぅ、首は落とせなんだか」
あいにく、紅薔薇の刃は胴部を袈裟斬りにするに留まった。
振り向いた馬の首元に、ミリアの弾丸が入る。
だが、それも生命力高くいななく馬を止めるには、わずかに足りない。
「最後に倒すと言ったな、あれは嘘だ」
ガーレッドが不意に、告げる。そして、デルタレイを放ったのだ。
眠る二体を巻き込み、にやりと宣言した馬へとどめを刺す。
残念ながらここは崖ではないため、馬はドッと地面に倒れ込むのだった。
●
「漲れDT魔力! 我が裡より出し煉獄の炎よ! 彼の者を焼き払え!」
受けた分を返すように、トミヲが気合を入れる。
炎弾は、残っていた二体の馬を焦がすべく、弾けた。
見たかとトミヲは拳を握る。
「油断したら、先ほどと同じ結果じゃぞ!」
紅薔薇が釘を差しつつ、起き上がろうとした馬へ容赦なく剣を振り下ろす。
距離をとってエリスやノアールがデルタレイを放つ。
起き上がる前に、仕留めるためだ。
「……そろそろ……終わりです」
シエルが弓を放って告げる。
まずは一体。
スタミナが切れたのか起き上がりざまに、膝に矢を受けて崩れ落ちた。
「うちの馬をそこらのと一緒にされちゃ困るねぇ! 貴様よりもだっ! 駄馬ァ!」
残る一体へも、メリエが詰め寄る。
引き金を引き、馬の眉間を弾丸が貫く。
立ち上がることなく、最後の馬は土塊に還っていった。
「中に誰か残っているか? 馬の死体だけ……じゃない」
戦闘終了に我に返ったガーレッドが、ピシっと人差し指と中指を立てる。
目尻に添えて、いつもの決め台詞を放つ。
「次元の彼方でまた会おう!」
●
「こんなもんよ!」
戦いを終え、ハラミーたちを呼びに行ったエリスは活き活きとしていた。
とはいえ、戦いの傷はマテリアルを全身に巡らせても、治りきらない。
「大丈夫よ。ささ、調査始めちゃおう」
そういってハラミーたちを先導するのだった。
「結局、ここは馬に関する遺跡だったのかのう?」
紅薔薇は興味深げにストーンヘンジを眺めていた。
ハラミーとカルビーがなにやらメモしているのを見ながら、メリエもストーンヘンジに触れてみる。
「同行しててもいいんですよね?」
「もちのろん!」と気前よく二人は許可を出す。
「やっぱり、遺跡調査はロマンですからねぇ」
メリエの言葉に、二人は親指を立てていた。
調査には、ノアールも同行していた。
「マテリアルやそれらしい文様がないかしらね」
あるいは歪虚絡み……と刻まれた模様をノアールは丹念に見ていく。
「マテリアル、あるいは精霊の力に関する記述はありそうっす」
ハラミーがそう教えてくれた。
けれど、より詳しいことは一日では調べきれないだろう。
「UMAたち、ここから出られないみたいだったけど」
「マテリアルを滞留させるような……感じなのかしら?」
トミヲもおずおずとストーンヘンジに近づく。
「そういえば近くの宿場町の名物は馬肉らしいのじゃ」
「馬刺し! 馬刺し食べる!」
調査より身体を確かめていたミリアが、突然元気づいた。
その勢いに気圧されつつ、紅薔薇はこう提案した。
「あとで皆で食べに行ってみないかのう?」
もちろん、ミリアは乗り気だ。
他の面々も名物という馬刺しには興味を示していた。
トミヲはその中でふと真顔になる。
さて、ここで暴れていた馬……どこから来たのだろうか。
ふと馬が消えていった場所を見やる。いやいや、そんなまさか。
「…………いっそ興味あるな。食べて帰ろうか……」
独り懊悩するトミヲの側で、紅薔薇が声を上げた。
「そういえば、雑魔じゃったから、倒しても消えるだけで肉は取れんかったのう」
「取れたら、食べていたのか?」
トミヲの呟きは、紅薔薇には届かない。
やはり世界の何処かには、そんな馬刺しがあるのかもしれない。
「……うむ」と決意を固めるトミヲであった、
「……どうしました?」
シエルは調査の間、バイクの側でじっとしていたエリスに声をかけた。
エリスは、難しい顔でバイクの一点を見ていた。
部品が破損し、機動部がむき出しになっている。
「油断したなぁ~」
天を仰いだエリスにノアールが近づく。
「いいお店、教えてあげるわ」
マニアらしく壊れた部分を見ながら、どれぐらいかかりそうかも教えてくれた。
ハラミーのバイクも後で見るつもりらしい。
「とりあえず、馬刺しを食べて元気をつけるのじゃ!」
「そうだね」
バイクを引きながらエリスは、紅薔薇たちの後を追う。
世界の神秘も気になるが、馬刺しも同じぐらい気になるのだった。
「遺跡って聞くとロマンを感じますねぇ」
遠くに見えるストーンヘンジを眺め、メリエ・フリョーシカ(ka1991)はぽつり呟く。
「……冒険者とか探検家には余りいい思い出ないですけど―」
目を細めれば、奥側に黒い影が点々と見える。
ふぅと短く息を吐く。苦い経験を思い出したのだ。
「状況も、番人が居るのも重なるしなー。まぁ、今回は報酬が約束されてるから全然OKなんですけどねー」
後ろをちらりと見れば、ハラミーとカルビーの姿があった。
エリス・ブーリャ(ka3419)が二人へと、声をかける。
「おっすおっす、エリブーちゃんがやってきましたよー。お二人さん元気してた?」
近況や、今回の遺跡の狙いなどを聞き出しながらエリスは云々と相槌を打つ。
途中からは紅薔薇(ka4766)も加わって、襲われた当時の様子も確認する。
「あの遺跡も貴重な物かもしれんしのう。とりあえず、調査が終わるまでは傷つけんほうがいいと思うのじゃ」
「当たり前だよ! あれは、人類の偉大なる遺産!」
かもしれない、と二人は告げる。
実際のところは、調べてみないとわからない。
「あらあら、バイクを壊されちゃってご愁傷様ねー」
ふわりと会話に入ってきたのは、ノアール=プレアール(ka1623)である。
魔導バイクが限界をぶっちぎって停止したと聞いていた。
ストーンヘンジが近づくに連れ、大きくなる黒点にノアールは視線を向ける。
「バイクの仇、討たせてちょうだいね」
柔和な笑みの裏に隠された、何か、に裏打ちされた鬼迫が見えた。
ハラミーたちは、声を揃えてよろしくおねがいします、というのだった。
エリスたちからやや離れ、水流崎トミヲ(ka4852)はぷぷっと独り笑っていた。
「いやー。バイクより早いってRB的に考えたらそれ馬じゃなくて、UMAだよ、UMA」
そして、それは雑魔だっていう。
「そう、ZOUMA……ぷ。くく」
かしましい少女たちを遠く、トミヲは独り、後を追う。
遺跡が近づくに連れ、ミリア・コーネリウス(ka1287)は気合を入れなおしていた。
「誰か迷い込んだ人とかが犠牲になりかねないからな。退治しとかないと」
「……近づくと……危なそうです」
「宿場じゃ、馬刺しが有名らしいからな。興味本位で見に行ったら危ないからね」
馬刺しといえばと、シエル=ウンディーネ(ka4421)がくるりと探検家コンビを見やる。
「……ハラミー、カルビー、……お肉の名前。……美味しそう」
「馬刺しも同じぐらい旨いけどね」
「馬刺しが好き? 結構、ますます好きになるぞ」
唐突にガーレッド・ロアー(ka4994)がミリアに向けて声を発した。
怪訝そうに、いきなりどうした、と聞かれてガーレッドは肩をすくめた。
「あ、いや、何故か口が勝手に」
「さて、二人はここで待って。あとは、エリブーちゃんに任せなさい」
さっと魔導バイクにまたがり、エリスはコンビへ告げる。
軽快なエンジン音が響き、ハラミーは悔しそうな顔をする。
「後は任せて、ね?」
ノアールも述べて、エリスと並走していった。
その後ろを匍匐前進をしながら、トミヲが追いかける。
「見つかって撃たれるとか最悪だもんね……」
全速前進で匍匐前進をすれば、彼の言うDT魔力も溜める……イメージが湧くのだった。
●
「それでは、ここで」
境界線間際、ノアールは馬を止めた。
領域内へとエリスへと運動を補佐するマテリアルを与え、魔導銃を取り出す。
「魔導銃を使うのは久しぶりねー。腕がなるわ」
感触を確かめながら、エリスの背中を見送った。
「今回の敵はお午さんね。なんとかやってみましょー」
エリスはさっくりと射程範囲ぎりぎりまで近づくと、馬を止めた。
突然の闖入者に、馬の意識が一斉に向けられる。
エリスは素早くデルタレイを発動した。
面前に出現した三角形の光から、光線を発する。
「一体漏れるわね。まいったな」
ぱっと見れば、馬は四体いた。
ここへたどり着く間際に、横目で確認したが、四体しかいないようだ。
だが、馬だけに脚力は十分だ。
デルタレイの光も、二体には一飛に避けられていた。
「っと……急がないとね」
すぐさま、バイクのエンジンをかけ直す。
馬が一気に地を駆けるのがわかった。
背中に圧迫感を感じながら、一気にエリスは加速度を上げるのだった。
「追ってくるぞ、あの馬鹿」
ガーレッドは、四体の黒馬がエリスを全速力で追いかけるのを見ていた。
「ひとまず成功ですね」
愛馬ジールにまたがり、メリエが頷く。
釣り野伏の伏せ役として使命を全うすべくメリエたちも動き出す。
「さて、ジール。いつもどおりに、行こうか」
トミヲは腹で、馬の作り出す地響きを感じていた。
境界線のキワでエリスが魔導バイクがブレーキ音を響かせる。
馬が放った炎弾を、エリスは盾を微振動させ受け流しつつ耐えていた。
時折、炎は魔導バイクやエリス自身を焦がす。
馬の意識はエリスにのみ、向けられていた。
「来るっ」
二体が足を振り上げ、突っ込んできた。
今しかない。
「今こそ溢れよ! 我がDT魔力よ……」
小声で唱えながら、トミヲは眠気を誘う霧を発生させる。
霧は、直接エリスへ蹄を叩き降ろさんとする二体を巻き込んだ。
「残念だったな、トリックだよ」
楽しげにガーレッドは告げると、銃口を向けた。
その逆側では、紅薔薇が重厚なライフルを構える。
「ふむん。銃を持つのも、随分と久しぶりなのじゃ」
「私も同じ……魔法よりは大分マシですけれど」
「基本的に舞刀士は、銃への対処を訓練するときくらいにしか触らんしのう」
とはいえ、やるなら本気だ。
メリエはすっと息を吸うと――慟哭した。
「安全装置解除! オラ景気付けだ、一発貰えよ駄馬が!」
この銃声をきっかけに、ハンターたちが攻勢を仕掛ける。
メリエ、紅薔薇を始め、今回の戦いでは銃を得意とするものは少ない。
ミリアもその一人である。
しかし、的がぐーすかと寝ているなら別だ。
「この後の馬刺しへの景気付けだ!」
弾丸は前面にいた馬の胴部を穿つ。
衝撃で起きかけた馬へ畳み掛けるように、メリエや紅薔薇も引き金を引く。
ノアールは、攻撃力強化のエネルギーを分け与えると、自身も銃口を向ける。
「狙うのは、脚ね」
奇しくも、馬は起き上がり、ノアールの攻撃を避けてみせた。
続けて放たれたシエルの弓も避け、一度エリスを蹴り入れる。
「機導士はこんなこともできるんだよー」
魔導バイクのエンジンをかけ直していたエリスは、自身の盾を高速で動かして身を守る。
それでも、蹄の衝撃は身に伝わってくるようだった。
エリスは、後方で止まった二体を引きつけるべく動く。
馬の意識が、そちらへ向いた瞬間、
「危険なら、下がれよ」
ミリアがやや前進し、馬を射止める。
大丈夫という返事が聞こえてきた。
「おっと」
馬がこちらに口を向けていた。炎が来るか、と身構えた瞬間。
「OK!」という言葉とともに、馬の身体を一条の光が消し飛ばした。
収束した光の根本にいたのは、ガーレッドだ。
まるで、馬が攻撃するのに答えるかのようだった。
もう一体の眠る馬には、
「面白いやつだ、気に入った。倒すのは最後にしてやる」と宣言する。
今日もまた、自称別次元の男はにっと笑う。
●
「逃さないよ」
そそくさとストーンヘンジの影から、トミヲは這い出ていた。
馬たちがゆるやかに後退しようとしていたのだ。
この距離からならスリープクラウドが、入るはず。
「もう一度、溢れろ……我がDT魔力」
だが、馬たちは黒いしっぽを悠々と揺らし、鼻を鳴らしていた。
そして、視線がトミヲへ向いた。
「ぐ、気合がたりなかったか……っ!!」
気づかれたかと思った瞬間、目の前で炎が弾けた。
ちょうど防御の薄い脚部を炎は焼いていく。
「……っ!」
動こうとして、灼けたところに痛みが走った。
すぐに治るだろうが、ここで足を止めたのは致命的だ。
視線を向ければ、先に眠らせた馬も起き上がっているではないか。
トミヲのピンチに、仲間が動く。
「どこを向いてるのかな?」
デルタレイを再び放ち、エリスが注意を惹く。
エリスと紅薔薇も領域内へ踏み込んでいた。
起き上がった馬へは、
「……牽制、惹きつける」とシエルが弓を引く。
「ジール! ビビったら負けだ! 死な安だよ死な安っ!」
トミヲの近くへは、メリエが踏み込み、素早く銃を操っていた。
起き上がった馬が、他の馬と合流するころにはトミヲも冷静さを取り戻す。
「くっ……今度こそ僕のDT魔力で支えてみせる……!」
気合一閃、スリープクラウドを合流地点へぶっぱなす。
眠気を誘う霧は、合流したての一体以外を、眠らせるに至った。
馬の視線は、エリスへ向けられている。
「その首、いただくのじゃ」
好機と見て、紅薔薇が一歩飛び出す。
大上段に刃を掲げ、肉薄する。視線が向いたが、もう遅い。
すっと息を吸い込み、丹田からマテリアルを全身に巡らせる。
極められた構えから放つ一撃は、ギロチンの如き鋭さで馬に襲いかかる。
「むぅ、首は落とせなんだか」
あいにく、紅薔薇の刃は胴部を袈裟斬りにするに留まった。
振り向いた馬の首元に、ミリアの弾丸が入る。
だが、それも生命力高くいななく馬を止めるには、わずかに足りない。
「最後に倒すと言ったな、あれは嘘だ」
ガーレッドが不意に、告げる。そして、デルタレイを放ったのだ。
眠る二体を巻き込み、にやりと宣言した馬へとどめを刺す。
残念ながらここは崖ではないため、馬はドッと地面に倒れ込むのだった。
●
「漲れDT魔力! 我が裡より出し煉獄の炎よ! 彼の者を焼き払え!」
受けた分を返すように、トミヲが気合を入れる。
炎弾は、残っていた二体の馬を焦がすべく、弾けた。
見たかとトミヲは拳を握る。
「油断したら、先ほどと同じ結果じゃぞ!」
紅薔薇が釘を差しつつ、起き上がろうとした馬へ容赦なく剣を振り下ろす。
距離をとってエリスやノアールがデルタレイを放つ。
起き上がる前に、仕留めるためだ。
「……そろそろ……終わりです」
シエルが弓を放って告げる。
まずは一体。
スタミナが切れたのか起き上がりざまに、膝に矢を受けて崩れ落ちた。
「うちの馬をそこらのと一緒にされちゃ困るねぇ! 貴様よりもだっ! 駄馬ァ!」
残る一体へも、メリエが詰め寄る。
引き金を引き、馬の眉間を弾丸が貫く。
立ち上がることなく、最後の馬は土塊に還っていった。
「中に誰か残っているか? 馬の死体だけ……じゃない」
戦闘終了に我に返ったガーレッドが、ピシっと人差し指と中指を立てる。
目尻に添えて、いつもの決め台詞を放つ。
「次元の彼方でまた会おう!」
●
「こんなもんよ!」
戦いを終え、ハラミーたちを呼びに行ったエリスは活き活きとしていた。
とはいえ、戦いの傷はマテリアルを全身に巡らせても、治りきらない。
「大丈夫よ。ささ、調査始めちゃおう」
そういってハラミーたちを先導するのだった。
「結局、ここは馬に関する遺跡だったのかのう?」
紅薔薇は興味深げにストーンヘンジを眺めていた。
ハラミーとカルビーがなにやらメモしているのを見ながら、メリエもストーンヘンジに触れてみる。
「同行しててもいいんですよね?」
「もちのろん!」と気前よく二人は許可を出す。
「やっぱり、遺跡調査はロマンですからねぇ」
メリエの言葉に、二人は親指を立てていた。
調査には、ノアールも同行していた。
「マテリアルやそれらしい文様がないかしらね」
あるいは歪虚絡み……と刻まれた模様をノアールは丹念に見ていく。
「マテリアル、あるいは精霊の力に関する記述はありそうっす」
ハラミーがそう教えてくれた。
けれど、より詳しいことは一日では調べきれないだろう。
「UMAたち、ここから出られないみたいだったけど」
「マテリアルを滞留させるような……感じなのかしら?」
トミヲもおずおずとストーンヘンジに近づく。
「そういえば近くの宿場町の名物は馬肉らしいのじゃ」
「馬刺し! 馬刺し食べる!」
調査より身体を確かめていたミリアが、突然元気づいた。
その勢いに気圧されつつ、紅薔薇はこう提案した。
「あとで皆で食べに行ってみないかのう?」
もちろん、ミリアは乗り気だ。
他の面々も名物という馬刺しには興味を示していた。
トミヲはその中でふと真顔になる。
さて、ここで暴れていた馬……どこから来たのだろうか。
ふと馬が消えていった場所を見やる。いやいや、そんなまさか。
「…………いっそ興味あるな。食べて帰ろうか……」
独り懊悩するトミヲの側で、紅薔薇が声を上げた。
「そういえば、雑魔じゃったから、倒しても消えるだけで肉は取れんかったのう」
「取れたら、食べていたのか?」
トミヲの呟きは、紅薔薇には届かない。
やはり世界の何処かには、そんな馬刺しがあるのかもしれない。
「……うむ」と決意を固めるトミヲであった、
「……どうしました?」
シエルは調査の間、バイクの側でじっとしていたエリスに声をかけた。
エリスは、難しい顔でバイクの一点を見ていた。
部品が破損し、機動部がむき出しになっている。
「油断したなぁ~」
天を仰いだエリスにノアールが近づく。
「いいお店、教えてあげるわ」
マニアらしく壊れた部分を見ながら、どれぐらいかかりそうかも教えてくれた。
ハラミーのバイクも後で見るつもりらしい。
「とりあえず、馬刺しを食べて元気をつけるのじゃ!」
「そうだね」
バイクを引きながらエリスは、紅薔薇たちの後を追う。
世界の神秘も気になるが、馬刺しも同じぐらい気になるのだった。
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相談卓 ノアール=プレアール(ka1623) 人間(クリムゾンウェスト)|23才|女性|機導師(アルケミスト) |
最終発言 2015/07/09 17:04:00 |
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依頼前の挨拶スレッド ミリア・クロスフィールド(kz0012) 人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人 |
最終発言 2015/07/09 16:56:19 |