• 聖呪

【聖呪】奪われた魔導銃

マスター:秋風落葉

シナリオ形態
ショート
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
6~8人
サポート
0~0人
マテリアルリンク
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/07/13 09:00
完成日
2015/07/20 01:44

みんなの思い出

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オープニング


 貴族の男は地図を見ていた。時に北部亜人地帯と呼ばれる、グラズヘイム王国内でもあまり治安が良くない地域を男の視線がさまよい……やがて目線は己の手元に戻る。
 男の視線の先には、一枚の手紙があった。
「魔導銃を使うゴブリンどもが現れた……か」
「は。リーダーと思しき者は、人語を完全に理解していたという噂もございますな」
 先ほどまで、室内の気配はこの貴族の男のものだけであったはずだった。しかし、音もなく現れた人影が彼の独り言にそう答える。
「うむ……ここに子細が書かれておる。『あの方』もお耳が早い。もうご存知とは」
 文面に目を走らせながら、男は影へと言葉を続けた。
 グラズヘイム王国にとって由々しき事態だというのに、男はひげに覆われた口を吊り上げている。楽しくて仕方がないという風情である。
「ゴブリンの亜種と思われる者が多数出没し、あの地の領主も手を焼いているそうです」
「うむ」
 男は報告を聞きながらも手紙に目を通し続け……眼球がある一点を見据えたまま止まった。そこに、興味深い一文があったのだ。
「さすが……と言おうか。わたしではきっとこのような発想は思い浮かばなかったであろう!」
 男は手紙を手に目をぎらつかせ、影のように存在する者へと振り返った。
「苦境に陥っている領主を助けるぞ!」
「は?」
 影は微動だにしなかったが内心首を傾げた。貴族の男は影の反応を気にした様子もなく、大げさな手振り身振りと共に声高に宣言する。
「そうだ。かの地をゴブリンどもの魔の手から救うため、領主殿へと魔導銃を贈ろう!」
 影は主の言葉を心中で反芻する。自分の主人がそのような援助を行う理由が分からなかったからだ。
 ――かの地の領主が疲弊すること。
 ――ゴブリン達の侵攻が王国を揺るがすこと。
 いずれも、彼の目の前の主にとっては大きな意味を持つことであった。そして、主が心酔している『あの方』にとってもそれは同様のはず。……ただ、それはこの国の大部分を占める者達と違う意味でだが。
 貴族の男は上機嫌に言葉を続ける。楽しくて仕方がないというように。手紙で示唆されていた内容が、まるで自分の考えであったかのように。
「これは仮定の話だがな……そのゴブリンどもが、魔導銃を積んだ馬車のことを知ったらどうすると思う?」
「!?」
「かの地の領主も今は苦境だ。輸送隊を護衛する人員も大した数は用意できぬであろうなあ」
「……かしこまりました」
 主が言わんとすることを理解した影は頭を下げ、部屋を音もなく辞した。


「クッ……ワシとしたことが、ニンゲンどもにしてやられるとは……」
 リトルラプターに乗ったデルギンは歯軋りする。先日の戦いを思い起こして。
「ハンター……といったか。あの不可思議な力……ワシにも使うことが出来れば……」
 デルギンは手の平を天へと向け、力強く握りしめる。
 剣を振ることで衝撃を飛ばす者、光の障壁で弾丸の威力を削ぐ者、複数の敵を眠りへと誘う者……。
 中でも、あの眠りをもたらす雲を生み出す力は恐ろしい。あの時は運良くその力に抵抗できたものの、今度も上手く逃れられるとは限らない。
「対応を考えておく必要があるな……」
 デルギンはそこで一旦思考を打ち切ると、自分が引き連れる者達を振り返った。
 先の村では消耗した軍勢も、新たにはぐれゴブリンなどを軍に編入することで、数の問題だけは解決した。今は、己が支配する地域へと帰還するところである。しかし……。
 何よりも大きな損失は貴重な銃を半分失ってしまったことだ。もちろん、銃を扱えるゴブリンを失ったこともけして無視できるものではないが。
 とある時期から、並のゴブリンとは比較にならないほどの知恵を身につけたデルギンだったが、さすがに銃――この世界で魔導銃と呼ばれるもの――を扱える者と扱えない者がいることの理由までは分からなかった。
「射手に関してはまた新たに適した奴も見つかるであろう。だが、銃は……」
 デルギン達ゴブリンは、この地で長きにわたって人間達と戦っていた。彼らが使っている銃は、その時に人間達から強奪したものである。さすがに、デルギンも銃の造り方は分からない。
「デルギン!!」
「む? どうした?」
 己の部下が駆け寄ってくるのを認め、デルギンは声をかけた。近寄ってきたゴブリンはデルギンの直属の部下であり、魔導銃を扱える者でもある。
 デルギンは部下の耳打ちに目を見開いた。
「それは本当であろうな!?」
「ナカミはワカラナイ、でもウマとカゴがやって来るのはホントウ……ニンゲンもスクナイ」
「なるほど……」
 デルギンはニヤリと笑って振り向き、己が引き連れるゴブリン達を見据えて声高に叫ぶ。
「同志達よ! 獲物だ!」


「まさか、俺達を助けてくれるとはな」
「ああ、これで、あの忌々しいゴブリンどもを返り討ちに出来る!」
 他の地方から援助という形でもたらされた無数の魔導銃。それを積んだ複数の馬車が森を切り開いてつくられた道の上を走っていた。
 先ほど物資の受け取りを済ませ、城へと戻る途中である彼らの顔は笑顔で一杯であった。ゴブリンに対処できる武器が手に入ったことはもちろんのことだが、グラズヘイム王国の貴族が自分達の苦境を助けてくれたことが純粋に嬉しいのだ。先の戦いで王は亡くなってしまったが、システィーナ王女の下、やはり王国は一枚岩なのだと……亜人や歪虚などには負けることはないと……そう思えたのだ。
 そして、笑顔のまま男は絶命した。突如飛来した銃弾が彼の眉間を貫いたのだ。
 それとほぼ同時に大量の矢が降り注ぐ。それは原始的なものであったが、輸送隊の面々をうちのめすに十分な数と威力であった。
 上がる悲鳴。馬は暴れていななき、あるいは絶命して倒れる。バランスを失い、横倒しになる馬車。
「シシシ……かかれ、同志達よ!」
 まだ状況を理解できない兵士達の耳に、非情な号令が響き渡った……。

リプレイ本文


 とある依頼を片付け、その帰途についていたハンター達の前に突如現れた光景。それは略奪にあったらしき輸送隊の一団であった。
 生き残りの兵士から強奪されたモノを聞きだしたハンター達は、兵士の遺言に応える形で略奪者の群れを追跡した。
 そして今ハンター達の目に見えてきたのは、ゴブリン達の一群であった。五十体はいるであろうその群れを見て、鵤(ka3319)はひとりごちる。
「やれやれ、仕事の後にまた一仕事ってかぁ? いやんなっちまうなおい。さっさと終わらせてビールの一杯でも飲みたいところだねぇ」
 彼がそう口にするのも無理はない。事実、ハンター達が覚醒できる時間はあとわずかだ。スキルも先の戦いで消耗してしまっている。
「ゴブリンなんかに魔導銃なんて代物、奪われる訳にはいかないわ。荒事は苦手だけど、機械が関わってるなら話は別。やってやろうじゃない」
 そう。ロベリア・李(ka4206)の言葉の通り、今回、ゴブリン達が略奪したのは数多の魔導銃である。
(魔導銃使うゴブリンも、最近少なくねーって聞いてっけど、まさかデルギンの仕業、です? もしそーなら、前に仕留め損なった責任も、ちったーある、です)
 今回の襲撃者に心あたりがある八城雪(ka0146)。事実、彼女は数日前に魔導銃を操るゴブリン達との戦いを経験していた。その時、ゴブリンを指揮していた者の名はデルギンという。
「Hmm...士筒使いのゴブリン? 以前も戦いましたネー」
 クロード・N・シックス(ka4741)もその際、雪と一緒に戦った。先ほど、仕事を終わらせて早く酒にありつきたいと言った鵤も同様だ。
「ま、もう一仕事くれー、しても良い、です」
 魔導バイクの上でルーサーンハンマーをぶん、と振る雪。
 幸い、遠目に見える亜人達はのんびりと行軍していた。ほとんどの者が魔導バイクや馬に騎乗しているハンター達なら、短い時間で追いつき、戦いをしかけることも可能であろう。


「テメーら、このまま帰れると思うんじゃねー、です!」
 ルーサンハンマーを手に魔導バイクを駆る雪。
 いきなり後ろから響いてきた爆音にゴブリン達は振り向き……目を見開いた。明らかな敵意と共に自分たちの群れへと突撃してくる者たちの姿が見えたから当然だ。
 慣れぬ御者を務めるゴブリンは、ただならぬ事態に慌てて馬に鞭を打つ。ただ、指示の出し方がまずかったのか、馬はほとんど速度を上げなかった。
 魔導銃を持った何体かのゴブリンはハンター達へと銃を構え、引き金を引く。しかし、発砲音がしたのは一部の銃だけであった。
 その内の一発の銃弾が雪を捉えるが、彼女の前進は止まらない。
 剣や槍を持つゴブリン達もそれぞれ迎撃しようと動きだした。しかし亜人達三体の胴体を光の柱が貫く。胸に風穴を開けられたゴブリンらはそのまま大地に崩れ落ちた。
「ゴブリンさんはおとなしくしてればやっつける必要はないのに、人を襲うから『めっ』しないといけないの」
 佐藤 絢音(ka0552)は戦馬「ちはたん」に乗り、戦場を縦横無尽に走りながらデルタレイをところ構わずぶっ放している。彼女は実年齢6歳の、台が無いと馬にも乗れないような小さな女の子であった。しかし、先ほどゴブリン達を光線で絶命させたのはこの少女である。
「作れもしない道具を扱うなど、身を滅ぼす元になるでしょう。彼らのためにその禍根、断ち切って差し上げましょう」
 ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401)は仲間と併走しつつ、味方を巻き込まない間合いでセイクリッドフラッシュを行使した。数体の亜人は光の波動をまともに受け、地面へと倒れこんだ。
 騒然となったゴブリン達の一団へと、新たに迫る者達がいる。
「轢かれたくなかったらどいたどいたーーっ!!」
 口上とともに魔導バイクでゴブリンの群れへと突っ込むロベリア。
 オルドレイル(ka0621)、J(ka3142)、鵤もそれぞれバイクに跨り、ゴブリン達の最後尾の列へと突撃を敢行した。
 彼女達四人の目的は、亜人達の群れの先頭にある荷を積んだ馬車だ。積荷はもちろん魔導銃である。
 数体の亜人は高速で迫り来る謎の乗り物から慌てて身を回避した。ハンター達はバイクを操り、彼らの間を縫うように、走り抜ける。
 丁度その時一体のゴブリンが撃った魔導銃の銃弾が、すりぬけようとしたロベリアを襲った。その瞬間に彼女はスキル、防御障壁による光の壁を展開させ、その威力を弱めることに成功する。
 嵐のように駆け抜けていったバイクたちを見送るのもつかの間、ゴブリン達は災厄がまだ自分たちの身近に存在することに気付いたが、もう襲い。
 雪はゴブリン達に近づくと思い切り得物を振り回した。巻き込まれたゴブリン達は陶器のごとく粉砕され、赤いものを撒き散らしながら吹き飛ぶ。
 絢音もその後ろで馬を走らせる。今彼女の脳裏にあるのは、ゴブリン達によって無残に命を奪われた輸送隊の兵士達の姿だ。
(へいしさんはかわいそうだけど、今はゴブリンさんとせんそーみたいな状態だから仕方ないの……あやね達がやっつけるように、ゴブリンさんも生き残るために人を襲うの)
 絢音の心中の声の通り、最近は王国内でのゴブリンとの戦いが激しくなっている。
 一体のゴブリンはそんな少女に狙いをつけた。魔導銃から放たれた弾丸が彼女の側をかすめていった。さらに槍をもったゴブリン達が彼女へと踊りかかる。一つの穂先が彼女の腕を捉えた。
 絢音は痛みをこらえ、アルケミストデバイスから咄嗟に炎の力を解放し、ゴブリンの群れを迎え撃った。
(でも、なかよくできれば一番なの)
 自分のスキルにより崩れ落ちるゴブリン達を見て、絢音は呟いた。悲しいことにこの光景が現実であり、絢音のそれは叶わぬ願望であった。
「Youたちの相手はこのワタシ! 双旋棍のクロードが勇姿、目に焼き付けてGo to Hell!!」
 メンバーの中で唯一徒歩であるクロードが、やや遅れる形で亜人の一群へと駆け込んだ。狙うは魔導銃を持つゴブリンだ。
「大人しくその士筒を降ろすことネ! 抵抗すると殴られる回数が増えますヨ?」
 もちろんゴブリンはその言葉に耳を貸さず、近寄るクロード目掛けて魔導銃をぶっ放す。
 左右のトンファーをかざし、弾丸の勢いを殺すことに成功するクロード。勢い良く踏み込み、そのまま右の旋棍「光輝燦然」を叩き付けた。
 ゴブリンは悲鳴とともにうずくまり、やがて倒れると意識を失った。
「他人のモノを盗ったらドロボウ! ドロボウはぶちのめされるサダメなのデス!」
 クロードは新たな敵を求めて駆け出し、再び得物を振るった。
 ガーベラは馬を走らせながら、最近のゴブリン達の異様なふるまいについて考えていた。今回の略奪も、統制の取れた待ち伏せ部隊による襲撃と思われるふしがあった。
「頑張った子には御褒美をあげないといけないわね」
 と口にしながら彼女が考えていることはただ一つ。皆殺しである。
 ガーベラが考えているように、ここ最近のゴブリンの行動には、明らかに今まではありえなかった知性のきらめきがあり、そのような輩を生かしておいては、今後に影響すると考えてのことだ。
 ガーベラは先の言葉を体現する為、セイクリッドフラッシュで手近なゴブリン達をまとめて始末した。


 先ほど、強引にゴブリン達の壁を突破した四人のハンター達。
 中でもJのバイクは「ナグルファル」という速度に特化した代物であった。瞬く間に最前列の馬車を含む一団へと肉迫した。
 Jはマテリアルを集中させ、かざした機杖「ピュアホワイト」から紅蓮の炎を解き放った。破壊のエネルギーが扇状に広がり、馬車の護衛であるゴブリン達を呑み込んで行く。
 もちろんゴブリン達も指をくわえて見ていたわけではない。彼らの持つ槍の穂先がJへとめがけて繰り出される。しかしJはそれを盾で見事に弾き返した。
 オルドレイルはその間に荷馬車の正面へと回り込み、進行を妨害する。御者のゴブリンは慌てて馬に指示を出そうとするも……はたと気付く。回避の指示は何をどうすればいいのか、ということに。
 そうこうしている間にバイクを巡航速度に切り替えた鵤からデルタレイが放たれた。戸惑う御者を含めた三体のゴブリンを光線が貫き、皆同時に大地へと崩れ落ちた。
 御者を失い、また、戦いに巻き込まれて恐慌状態に陥いりつつあった馬は明後日の方へと駆け出そうとするも、Jが荷馬車の車軸を撃ち壊し、移動を阻害する。馬はよろめいたものの何とか横転もせず、ことなきを得た。
 オルドレイルは馬を殺すことでゴブリン達の行動を妨害することも考えていたが、幸いその手段を取る必要は無くなったようである。彼女は再びバイクを走らせる。
 馬車の防衛を行いつつ、同時にゴブリンも可能な限り排除するのだ。オルドレイルは刀「雷切」の柄を握り締める。
 Jも馬車の側に陣取り、ゴブリン達による馬車の再奪還に備える。すでに一部のゴブリン達は逃走を開始しており、どさくさにまぎれて積荷を奪われないようにするためだ。
 雪も同じ頃、魔導バイクの速度を落としてもう一台の馬車へと車体を寄せた。御者を務めるゴブリンは近づいてきたエンジン音に首をめぐらす。
「こいつは、返してもらう、です」
 巨大な武器を持ち、返り血を浴びている雪。彼女と目が合った御者は慌てて馬を降り、走り去っていく。雪はゴブリンは追わずにゆっくりと馬を誘導し、積荷を無事に回収することを優先する。
 魔導銃を扱えるゴブリン達は劣勢を挽回せんと、狙いを定めてトリガーを引く。戦場に数発、銃弾が発射される乾いた音が響いた。凶弾がハンター達へと襲い掛かる。
 オルドレイルをはじめとする何人かは銃弾の衝撃によろけるものの、何とか乗り物から落ちずにこらえた。
 鵤は先頭の馬車の側から離れず、再びデルタレイを放つ。
「そっちが銃を置いて帰るなら、こちとら戦う理由ないのよねぇ。おたくらは死なないおっさんらは楽できる。お互いの為に手ぶらでささっと帰ってくんなぁい?」
 鵤は馬車に近づこうとする相手もターゲットにし、順次屠っていく。
「素直に魔導銃を置いてけば、命までは取らないわ。よーく考えることね!」
 ロベリアのアルケミストデバイスからは電撃が放たれ、魔導銃を持つゴブリンを焼いた。ゴブリンは電撃のショックにたまらず銃を取り落とす。
 ほとんどのゴブリンは人語を解してはおらず、彼らの呼びかけに反応する者はいなかった。しかし、J達が馬車の側で睨みを効かせていること、魔導銃を持たぬ者はあまり狙われないこと。一部の目ざといゴブリン達はそのことに気付き、自分たちが生き残るためにもっとも適した行動を取り始めた。
 剣や槍を持つ者は馬車に決して近づかないように、そして銃を持つ者はそれを放りだし、それぞれ北に向かって逃走しだしたのである。
 もちろん、まだハンターへと抵抗をやめない者達もいる。まだまだ数の上ではゴブリン達の方が優位なのだ。当然ハンター達はそんな亜人達に容赦はしなかった。
「これが本場のまどーじゅーなの」
 絢音は「ちはたん」に乗ったまま、銃を取り出す。
「あやねのまどーじゅーはちょっと使いにくいけど、威力はおりがみつき、なのよ。あたまぐらい簡単にふっとばせるのよ」
 彼女が持つのは試作型魔導銃「狂乱せしアルコル」。絢音がトリガーを引くと同時に生まれたのは、その名にふさわしい剣呑な砲火と咆哮。
 少女は反動に思い切りのけぞったものの、放たれた弾丸は彼女の宣言通り、一体の亜人の頭を軽々と吹き飛ばした。
 オルドレイルはやや離れた位置にいるゴブリン目掛けて魔導バイクを加速させる。敵の接近に気付いたゴブリンは銃口を彼女へと向け、即座に引き金を引いた。しかし銃弾はオルドレイルの側をかすめただけであった。
 もう一度狙いを付け直すゴブリンであったが、再度トリガーを引く時間は与えられなかった。オルドレイルはバイクですり抜けざまに、刀「雷切」で亜人を切って捨てた。
 ガーベラはこの戦いで何度目かになるセイクリッドフラッシュを放ち、複数のゴブリン達を光の波動で打ち倒す。
 性懲りもなく馬車にちょっかいをかけようとする亜人も、Jが容赦のない攻撃を繰り出して後悔をする暇も与えない。
 もはや戦いの趨勢は決した。
 ゴブリン達が持つ魔導銃の威力は油断のならないものであったが、統制のとれていない散発的な射撃ではハンター達を凌駕するほどの効果はなかったのである。
 クロードは最後に残った敵をトンファーで打ちのめすと、周囲を見回す。
「あのときはLeaderを逃がしたケド、今回は……いないのカナ?」
 先日、ゴブリンらしからぬ用兵で銃兵を巧みに指揮した敵を戦場に求めるクロード。
 しかしその姿はどこにも見えず、彼女の視界に映るのは、ようやく静けさを取り戻した戦場の風景だけであった。


 ガーベラのヒーリングスフィアや各自が使用できるマテリアルヒーリングの効果により、ハンター達の傷はほとんどがふさがった。とはいえ、連戦だったこともあり、ハンター達の治癒に関するスキルはもうほとんど底をついてしまった。長居は無用であろう。
 彼らは地面に転がる魔導銃を拾いあげた。激しい戦闘において形が歪んだものもいくつかあるようだが、持ち帰って修理を行えば再利用可能と思われる程度の損傷であった。
 ハンター達は見事に亜人達から魔導銃を取り返した。しかし、それはあくまで彼らの手が届く範囲にあったものだけに過ぎない。
 彼らの視線の先には、ずっと遠くまで続く轍とゴブリン達の足跡がある。もちろんそれはゴブリン達が逃げていった方角に伸びている。
 ハンター達がこの戦場に辿り着く前に、残りの略奪品はすべてゴブリンの領域へと持ち去られた、そう考えざるを得なかった。
「元の数がわかりゃ、いくつ盗られたかわかる、です」
 雪はそう言いながら、落ちていた最後の魔導銃を拾って馬車へと載せた。彼女は先ほど輸送隊が襲撃を受けていた現場に戻り、今回の件の手がかりを求めるつもりであった。
 壊れてしまった馬車の車軸は、ロベリアが何とか車輪が回る程度に修理をほどこした。ハンター達はゆっくりと馬車を引き、移動を開始する。幸い、ゴブリン達が追いかけてくるということもない。
「……まったく、西方の亜人は盗賊じみた行為が好きみたいですネ。士筒使いにも武人のSpiritを持った方はいるのに……あのゴブリンは違いマス」
 周囲への警戒を怠らないハンターたちの中でクロードはぽつりと呟く。
「ンー……いずれは打ち倒さないとダメですネ。彼は良くない存在デス」
 今回の件に関わっているであろう、魔導銃の使い手デルギン。
 クロードはかの敵と今度こそまみえ、その体に左右のトンファーを叩き込めることを願ってやまなかった。

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重体一覧

参加者一覧

  • バトル・トライブ
    八城雪(ka0146
    人間(蒼)|18才|女性|闘狩人

  • 佐藤 絢音(ka0552
    人間(蒼)|10才|女性|機導師

  • オルドレイル(ka0621
    人間(紅)|23才|女性|闘狩人

  • ガーベラ・M・ベッドフォード(ka2401
    人間(紅)|28才|女性|聖導士
  • 世界は子供そのもの
    エラ・“dJehuty”・ベル(ka3142
    人間(蒼)|30才|女性|機導師
  • は た ら け
    鵤(ka3319
    人間(蒼)|44才|男性|機導師
  • 軌跡を辿った今に笑む
    ロベリア・李(ka4206
    人間(蒼)|38才|女性|機導師
  • 双棍の士
    葉桐 舞矢(ka4741
    人間(紅)|20才|女性|闘狩人

サポート一覧

マテリアルリンク参加者一覧

依頼相談掲示板
アイコン 相談卓
ロベリア・李(ka4206
人間(リアルブルー)|38才|女性|機導師(アルケミスト)
最終発言
2015/07/12 23:38:55
アイコン 依頼前の挨拶スレッド
ミリア・クロスフィールド(kz0012
人間(クリムゾンウェスト)|18才|女性|一般人
最終発言
2015/07/09 19:57:02